予算特別委員会・知事総括質疑(2004年3月22日)

光永 敦彦(日本共産党 左京区)

高齢者の高額医療費の償還払いについて

【光永】まず、高齢者の高額医療費の償還払いについて伺います。

 ご承知のとおり、老人保健法等の改正により、一昨年10月1日より70歳以上の高齢者に定率一割負担が導入された結果、たとえば、窓口での医療費負担額が月1700円から6000円になる。これほどの負担増に、「少ない年金で、その上、高い医療費。これでどうして暮らしていけというのか」との声があがるのも当然のことです。こうしたなか、高齢者や関係者の切実な声におされ、高額医療費については、8000円あるいは12000円を超えた分については償還されるという制度になりました。

ところが、実際に制度が始まってみると、医療機関の窓口で1万円を超える請求に、「年金4万円で医療費を払えない」という事態が起こりました。そのうえ、一定額を超えた分を申請しないと、いったん払ったお金が返ってこないということで、予算委員会の書面審査でも、3万6951件、2億1300万円、平均1件5760円が、本来高齢の患者さんの手元に戻らなければならないのに戻っていないということになっています。

 そこで伺います。市町村では、償還手続きの案内を18市町村ですべての対象者に行うなど、いろんな努力がなされているにもかかわらず、2億1300万円、3割も患者さんの手元に払った医療費が返らないことについて、知事はどう考えておられますか。まず、お答えください。

【知事】やはり、額的には多いと感じている。この制度が始まったのは昨年10月からで、周知期間の問題もあるし、この間、私どもも、この制度について出来る限り便利に使っていただけるように(と努力し)、現在44市町村のうち37市町村では、1回だけ申請すれば生涯有効になる。1年間だけ有効というところがまだ7つあるので、ご協力を求めていきたいが、そういった面で着実に、制度の周知をはかっていくことにより、生涯有効となれば、1回、役場に行って登録していただければよいわけで、改善の方向には動いていただけるものではないかと思っている。

「受領委任払い」方式を京都府でも実施すべき

【光永】大変、多額な金額で、患者さんがいったん窓口で払われるということで、市町村で改善の努力がされていることは、私も承知していますが、また、国も改善を求める努力を市町村に周知されたことも知っていますが、名古屋市などで実施されているすべての高齢者の事前申請で、8000円、12000円をこえた部分は自動的に返って来るという制度の改善、あるいは、中山間地では、郵便局に支払い窓口がないから不便だという点の改善を求めておきたいが、問題は、いったん窓口で1割分を支払わなければならないことが一番の問題です。

 「8000円でも大変なのに、それを1000円超えたからといって、病気の体をおして、バスにのって、わざわざ役所に行けない。それだけでもお金がかかる」だとか、「検査をするのに1万円とられたが、これから検査に行くのにどうしたらよいのか」という不安の声があがり、「いただいた薬を分けて飲む。計画どおりに飲まない」という話まで出ています。これでは、本来、医者に早くかからなければならない方が、医者から遠ざかる事態となり、重症になってしまう。こういうことで、8000円を超えた部分も返ってこないということで、二重、三重の負担に患者さんのところではなっています。

こうした、本来、窓口でたくさん払わなければならないというこの制度そのものの改善が必要だと考えます。

そこで、「受領委任払い」を実施すべきだと私は考えています。予算の書面審査でも少しふれましたが、新潟県で、国保連合会などが主体となり、包括的な「受領委任払い」制度を実施されています。これによって、高齢者の負担の軽減はもちろん、市町村の負担も軽減されます。京都府域で実施すべきだと考えますが、いかがですか。

【知事】現在、市町村の方でも、この制度実施に向けて徹底をはかり、制度が始まってからは、償還のある方について、1人ひとりにお手紙を差し上げて、「あなたは償還が受けられますよ」ということをしている。そういう市町村の努力を多とすべきではないか。

高額医療費の問題は、高齢者に限らず、私ども、全部おなじ立場にある。たぶん、委員も行った時に払われて、ある程度、高額になった場合には返ってくるという制度の中で、いま、やられている。これは、若年者も一緒で、すべての医療保険等も同じで、その中で、どういうところでやっていくのかという問題は、制度全体を通じて考えていかなければ、単に非常に複雑な形の手間だけになってしまうので、そういった設計も含めて、国の中で総合的に検討されるべきではないかと考えている。高齢者のみなさんに対しても、そういった全体の中で、どういう形で負担していただけるかという問題が、今回、提起されているわけで、ご理解をいただきたい。

医師会や関係団体などと協力し、検討してはどうか

【光永】理解はできません。つまり、収入・所得が全然、高齢者と働いておられる方では違うわけですから。ましてや、以前の制度でしたら、最高月3400円でいけたのに、それが8000円と膨れ上がった。それをさらに超えて負担が窓口でかかるという制度になっているところに、いま大きな問題があります。しかも、払ったお金が2億1300万円も返っていないわけです。ですから、ここの制度にメスを入れていかなければならない。もちろん、これは国でやるべきだと思いますが、先ほど述べたように、新潟県では、県として努力してやっておられるわけですから、ぜひ、医師会や関係団体などとも協力して、検討していただきたい。このことを強く求めて、次の質問に移ります。

 

市町村合併と小規模自治体への支援について

【光永】次に、市町村の合併と小規模自治体への支援について伺います。

わが党はこれまで一貫して、国による強制合併は許さない、本府としても合併の強制をすべきでない、小規模自治体の自立支援をしっかりとすべき、と繰り返し求めてきました。

ところが、国は、昨年11月の「地方制度調査会の最終答申」を受けて、来年3月末で期限切れになる市町村合併特例法に代わる新法を閣議決定し、通常国会に提出する準備をしていますが、その内容は、合併の促進で都道府県知事の権限・役割を強化するのが特徴で、まさに合併の強制誘導だと考えます。仮にこの方向で進むなら、ますます知事の立場が問われてきます。

これまで知事は、昨年12月のわが党の市町村合併についての質問に対して、「どんな場合でも私は、都道府県が市町村の意向を踏まえないような合併の構想を策定して、勧告や斡旋等を行っても、うまくいくはずがない」と述べられました。

そこで、まず、伺います。改めて市町村合併について、知事としての立場はいかがですか。合併することもしないことも、あくまで市町村および住民の判断で行われるべきだと考えられますか。お答えください。

【知事】地方分権時代を迎えて、まさにいま、基礎的自治体というもののあり方が大きく問われている。本当に、住民の思いやニーズに応えられるかどうかというところで、いま市町村は、大変きびしい状況の中で、そのあり方を一生懸命、検討しているところ。私は、その中で市町村合併を選択することも、一つの行財政基盤の充実・強化の方策の一つで、有効な手段の一つだと思う。ただ同時に、これは地方自治の根幹に関わることだし、市町村合併を行うにあたっては、市町村間の非常に詳細な協議が必要。ありとあらゆる面について、計画をつくって協議をしていくわけだから、市町村が自主的に行わなければ、うまくいくものではないと思っている。府としては、あくまでも、こうした自主的な市町村の努力をお手伝いし、助言する立場にあると思っている。だからといって、府が全くそういった立場から離れたものであるとは思っていない。だから、各地域の自主的なとりくみに対して、市長会、町村会と緊密に連携しながら、積極的に支援してきたし、そういった中で、合併については、関係市町の提案をうけて関係市町村の議会が議決し、それを最後は、京都府議会が、つまり京都府が決めるという手続きになっていることをご理解いただきたい。最後は、京都府が決めて、合併が議会の議決により決まるということである。

宮津・与謝1市4町の法定合併協議会について

【光永】市町村で、合併の問題、是非も含めて決めていく。それを、自立していく市町村もあるわけですから、そこを支援していくのも京都府の大きな役割だと、私は考えます。

そこで、具体的に伺います。

(パネルを示しながら)宮津・与謝1市4町の合併問題の最近の経過について、ここに、事実だけを示しました。2月6日の「第16回新市建設計画策定小委員会」の会議録には、「これ以上協議を進めても調整できないと判断し、今後の協議会にこれを報告する」ということが載っています。私も読みました。2月18日の合併協議会にその主旨が報告されて、確認されました。その後、2月28日に予定されていた合併協議会が延期されたことも、ご存知のとおりです。

とりわけ、京都の場合は、府として振興局長や地方課長なども、合併協議会委員として、あるいは新市建設計画策定小委員会委員としても参加されておりますから、これに書かれたことは、よくご存知だし、その中身についてもよくご存知と思います。

ところが、報道によると、1市4町の合併について、3月10日に「市町村行政改革支援委員会」が京都府庁で開催され、今後、合併協議会に助言をする予定であると言われています。
そこで、再度2点伺います。
合併協議会で合意ができていないもとで、しかも1市4町という枠組みでの協議も整っていない中で進んできたわけですから、合併協議会のあり方は、解散の方向に向かっていると私は考えますが、まず第1点、知事の見解はいかがですか。もう一つは、「京都府市町村行政改革支援委員会」の開催について、いったい、誰から、いつ、どんな形の要請で実施されたのか、明らかにしてください。

【知事】平成16年3月5日に、合併協議会から支援要請をいただいているところである。それにもとづいて、3月10日に、第1回支援委員会を開催したところ。私は、まず市町村が自主的に合併に向かって頑張っている。それに対して、私どもは、法定協議会の委員になるなどして支援している。それと同時に、これから出てくるのは、市町村間で色々な面で対立している事態がたしかにある。それぞれの意見の食い違いが出てくるので、それぞれのところで、私はこう思う、私はこう思う、という話がある。そういう時に、私どもは、とくに仲介の労をとってもらいたいという話がくれば、やっぱり、市町村が一生懸命頑張っているのを府として手伝わないというのは、知らん顔をするというのは、かえって無責任だと思うので、一生懸命、これから仲介の労をとるようなことはしていかなければならないと思っている。それにあたっては、出来る限り、客観的な立場でものを言っていく必要があると思っており、支援委員会等について、有識者の方に入って頂いているので、そういう方の意見を参考にしながら、仲介の労を願うのであれば、とっていきたいと思っている。

これで「合併の強制をしていない」といえるのか

【光永】いま言われたことはおかしい。なぜかといいますと、先ほど言いましたように、京都府は合併協議会の委員で入っているわけで、そこで、1市4町の枠組みでの論議が整っていないことを京都府は知っているわけです。知っていながら、一方では、支援委員会の開催を合併協議会の会長名で要請がきたという。それなら、協議会会長名で(要請が)来た時に、合併協議会の委員の1人としても、あるいは知事としても、「1市4町の枠組みで協議をまずした上で、京都府に要請をするのが筋ではないか」という助言をすべきだと私は思います。開催されて合意されていないことを知りながら、これについて黙っておいて、合併協議会から正式に要請が来たことを理由に、協議会について助言をするということになっているわけです。京都府は、話がわかっていて、こういう風に要請が来たという形をとって、京都府は出ていっているという話になっています。どうして、これで、「合併の強制をしていない」と言えるのですか。その根拠について明らかにしてください。

【知事】合併協議会の申請内容がどういうものかというと、「合併協議会で意見の調整がつかなかった。従って、合併協議の進行が非常に難しくなる中で、今後、宮津・与謝地域における望ましい市町村の姿等に対する客観的な立場からの助言をお願いしたい」というのがきたので、言っておられることとは何も矛盾していない。まさに、そういう中で、合併協議会の方から、望ましい姿について客観的な立場から教えてくださいといわれたわけだから、助けるのは当たり前のことで、言っておられることは筋が通らないと思う。

【光永】知事の言っておられることの方が、筋が通らない。京都府は委員として(合併協議会に)入っている。そこでの協議が整っていないのに、形として、合併協議会の名前で京都府に(要請が)来たわけです。そうしたら、「(協議が)整っていないので、そこで整えるべきではないか」ということを言うのが、まず筋です。そのことを言わないで、(会長が勝手に京都府に)要請した後で、各合併協議会委員に「要請しました」ということを事後承認で報告しているわけです。だから、これは京都府が、こういう風に強制していると言われても仕方がない事態だと思います。それでも、強制していないと言うのですか。

【知事】「意見の調整がつかず、非常にこれから合併協議会で議論することが難しくなったから、まず、府の方で、客観的な意見をお願いします」という話をしているわけだから、それを「うちは知らない」「お前のところで決めろ」といったら、これは無責任きわまるどころか、府としての役割を果たしていないことになる。まさに、私どもは、法定協議会から助けを求められたわけで、それに真摯に応えるのが京都府の役割だと思う。これを、「そんなものは知らないよ」というのでは、京都府というのは、本当にどれほど冷たい都道府県だということになる。

【光永】京都府も合併協議会の委員に入っているわけです。京都府の職員も入っているわけでしょう。そこが、1市4町でやろうという流れの中で、京都府も多くの職員が入って論議をしてきているわけです。ですから、そこで、しっかりと論議した上で、結論を出していくということが非常に大事だということを言っているわけです。しかも、現実の流れでいうと、先ほど述べたように、解散の方向の流れが出てきているわけです。それを、無理やり1市4町におしとどめようとするから、手続き論としても、中身としてもおかしい話になります。

2月18日に第17回合併協議会が行われました。28日に予定されていた(合併協議会は)延期されました。こんな話がでています。2月20日頃、ちょうど合併協議会で「新市建設計画策定小委員会で調整整わず」という結論が報告された翌々日に、京都府が宮津・与謝に出向いて、「調整をしたいので了承してほしい」と説得に回ったという話まで、漏れ伝え聞きます。まさに、これは、不調に終わった直後に、京都府が出向いていって市町村を回って、合併は1市4町の枠組みでやるべきだということを府から推進している、いわば強制しているということになっています。これを強制と言わずして、何というのでしょうか。

野田川町は、(合併協議会からの)離脱もありうると表明されました。それは、それぞれの町議会や住民でよく論議して、合併をしない選択をし、合併しても良くならないという判断をされて、合併しなくても、自分たちの自立の町をつくろうではないかという選択もあるのではないかという結論の中で、出されてきたものであると考えています。ここを支援するのが京都府の役割なのに、全然違う方向を、いまやっているわけです。ですから、こういうやり方、行政への介入を絶対にやめるべきだと強く求めたい。

【知事】野田川町も、合併協議会の議事録を見せていただいたが、合併自身について「合併しない」ということではなく、みんな一応、これからの市町村のあり方について、どうしたらよいのかということを、大変苦しむ中で模索している。今回の枠組み云々ではなくて、まさに、宮津・与謝について、どういう形が望ましいのか、一生懸命に考えている。野田川町が、例えば、「われわれは、もう唯一つの町村でがんばって生きていきます」と、法定協議会離脱の決議をされたという話は聞いていないし、どちらかと言うと、聞いているのは、「どういう合併がいいのか」とか、いろんな形で模索している中で、府に対して意見を求められてきている時に、「これを助けずして、誰を助けるのか」という感じがする。

ただ、私どもとしては、あくまで出来る限り、客観的な数値とか客観的な情勢を示しながら、最終的な判断としては、市町村が行うし、市町村が行わなければ、合併はできないので、そういったことを助けていく、調整・支援していく。こういう立場から、これからの支援委員会という形で、これは、私ども直接やっているわけではない。地方課長がやっているわけでもなく、振興局長がやっているわけでもない。まさに、第三者の委員にお願いして、やっているもの。それから、法定協議会に入っているのは、京都府が入っているのではなく、有識者としての地方課長であり、振興局長が入っているわけだから、京都府に対して支援要請があれば、当然、行動するのは当たり前だと思う。

「住民が主役」の自治体らしい自治体づくりに力をつくせ

【光永】いくら説明されましても、具体的経過でいいますと、京都府が地元に行って、「1市4町の枠組みでなんとかなりませんか」と言ってきた事実は消せません。これを、合併への強制だと言っているわけです。

今、国の「三位一体改革」という形で、地方の財政も自治体のあり方も大きく問われている事態の中で、そういう時にこそ、自主的に自立の道を歩む、小さくても輝く町づくりも進めるという流れが、全国でも京都府内でも、そういう道を選択しよう、あるいは選択したというところが沢山あります。そこを支援するということも、京都府の役割です。それをやらないで、とにかく、合併をしろという風に足しげく地元に足を運んで、強要するようなやり方は、絶対にやめるべきです。これは、地方自治の破壊につながるということを厳しく指摘し、また、自治体らしい自治体づくりに全力をあげていただくことをお願いして、質問を終わります。

 

(資料)宮津・与謝1市4町合併問題 最近の経過

12月17日  第15回合併協議会

1月21日  第16回合併協議会 

1月29日  京都府市町村行政改革支援委員会発足

2月 6日  第16回新市建設計画策定小委員会

2月18日  第17回合併協議会 

2月28日  第18回合併協議会が延期される

3月 1日  野田川町長 「合併協議会の解散について(要請)」を会長宛に提出

3月 5日  京都府に対し「市町村行政改革支援委員会」の助言を要請

3月 8日  合併協議会会長 「助言依頼について」の文書を各委員に送付

3月10日  京都府市町村行政改革支援委員会

3月15日  合併協議会会長 「解散の要請について(回答)」を野田川町長に送付

3月18日  野田川町長 本会議で「単独で離脱することもあり得る」と答弁