2004年2月定例会を終えて(談話)

 

2004年4月1日
日本共産党京都府会議員団
        団長 松尾 孝


1、京都府議会2月定例会は、3月26日に閉会した。今議会には、2004年度一般会計・特別会計予算案をはじめ、「男女共同参画推進条例」「産廃税条例」などの案件が提案されるとともに、議会開会中に丹波町で鳥インフルエンザ感染が発生し、これへの対策が求められるなど、重要な議会となった。
 わが党議員団は、府民の切実な願いをもとに論戦を展開し、府民の暮らしと営業を守るため奮闘するとともに、ムダな大型公共事業を継続しながら、府民に犠牲を押しつける一般会計予算案、流域下水道事業と港湾事業特別会計予算案、水道事業会計予算案と「府営水道料金に関する条例改正」の5件と追加提出の桂川右岸雨水対策事業「いろは呑龍」の契約案件、丹後大規模公園用地取得に反対し、他の議案に賛成した。

2、新年度予算案については、すでに団長談話(2月27日)で、その特徴を明らかにしたが、国の「三位一体改革」の名による地方交付税等の大幅な削減が強行されるもとで、住民サービスの切捨て、住民・市町村への犠牲押し付けの道をすすむのか、それとも大型開発事業などムダづかいにメスをいれ、住民の暮らしを守る予算とするのかが問われた。
 予算案には、府民の粘り強い運動とわが党議員団の議会における積極的な提案に応えて「小規模企業おうえん融資」の創設、「あんしん借換融資」の12月までの延長、少人数学級選択実施導入により21市町で実現した。また討論と審議を通じて、国保の一部負担金減免制度について「市町村に基準を明確にするよう助言している」との答弁、医師の臨床研修の必修化にともなう病院の医師不足について「医師確保を支援する」との答弁、教員の過重な超過勤務について人事委員会が「さらに、任命権者(教育長)に要請する」との答弁、振興局の統廃合についても「土木事務所のないところに駐在的なものを置く」との答弁など、府民要求の前進を勝ち取った。これらは、府民の切実で具体的な要求にもとづく論戦が大きな力であることを示すものであった。

3、予算審議を通じて、第一に300億円を超える地方交付税等の削減を住民サービスの切捨て、住民犠牲で乗り切ろうとするものであることが、明らかとなった。救急医療対策費や地域での政策医療を担う医療機関への運営補助の削減、安心介護の窓口運営助成、高齢者介護予防事業の縮減、市町村がすでに予算化している低所得者の就職助成金の一方的な廃止、安心子育てテレフォン事業の年度途中の廃止など医療と福祉分野での相次ぐ削減、さらに中小企業団体中央会、商工会・商工会議所等育成費の削減など、府民の暮らしと営業にかかわる事業を大幅に削減した。
 第二に、すでに破綻が明確となっている大型開発事業などムダづかいにはメスが入れられていないことが明らかになったことである。丹後リゾート公園は「海と星の見える丘公園」と名称が変更され、規模が縮小されたが、それでも事業費は用地費を含めて43億円もかかるものである。しかも今回2月補正で用地取得した部分は、阪急や西武環境開発などが開発を予定しながら、身勝手な撤退をした後始末を府がおこなうものである。丹後地域の振興のためには、大規模公園建設を中止し、国道178号伊根・養老バイパス建設などを急ぐべきである。また、舞鶴・和田埠頭建設も、港湾計画の目標年次である2005年を目前にして、外国貿易の取扱貨物量は、目標720万トンに対し、2003年度は61万トンと10分の1以下であることが明らかとなった。さらに、「大型船に対応するために大深水のバースが必要。コンテナ対応が必要」と計画された和田埠頭について、増加が見込まれてもコンテナは年間8000個程度で「大型船が2回入港すれば済んでしまうではないか」との問いに、理事者は「大型船が満載して入港することは想定していない」と答弁し、大型船対応の「大深水バース」の必要性がないことが明らかとなった。
 また、桂川右岸雨水対策事業「いろは呑龍」計画も、西羽束師川、新川の改修をすすめ、小型の貯留管で対応すれば浸水対策を早期に、安上がりでできるにかかわらず、500億円もの事業である。この事業を大林・鴻池・三井住友と大手ゼネコンが請け負ったことを見れば誰のための事業かは明らかである。
 自民党は賛成討論で「共産党はムダな大型公共事業というが、山田知事は積極的に見直している」と弁護したが、こうした事実を見れば、まったく的外れの非難である。それよりも、自民党は山田知事が見直した南丹ダム建設やサッカースタジアム、丹後リゾート公園の建設を積極的に推進してきたことこそ恥じるべきである。
 また、府営水道の給水人口予測を70万人としている計画の見直しを求めたが、企業局長は「ドラスティックに状況が変わってきており、精査しなければならない」とその見直しの必要性を認め、水利権についても、全国的には「転用」の事例が多くあることを認めざるをえなくなった。これは、わが党議員団が繰り返し求めてきた水需要予測の見直しの必要性を認めたもので、当然、水利権の見直しも必要となるものである。
 さらに、京都府が青年の雇用に役立つものとしてその活用に大きな力を注いでいる「私のしごと館」は、国の事業であるが、総事業費が580億円で、維持費も年間15億円もかかることが明らかとなった。しかもその財源は、厳しくなっているという「雇用保険特別会計」であり、府の関連事業は、この大型箱物事業を支援するものとなっている。
 同和対策「奨学金償還対策事業」は、今後も70億円必要であり、府財政を大きく圧迫することは明らかであるにかかわらず、なんら見直しがされようとしていない。
 こうしたムダづかいにメスを入れることこそ、今求められているのである。

4、今議会の特徴は、わが党議員団が、地方自治を守る論戦をリードしたことである。
 政府の「三位一体改革」が地方財政の切捨てにあり、地方財政を深刻な危機に陥れることが明らかとなった。わが党議員団は、これまでから「三位一体改革は国の地方への財政を切り捨てることにある」と指摘してきた。また、自民、公明、民主など与党会派が「三位一体改革の推進を求め」てきたことを厳しく批判するとともに、いまこそ自治体関係者が力をあわせて、地方財政切捨ての「三位一体改革」に反対し、地方交付税の維持・確保、国の当然の責任を果たすための国庫補助・負担金の確保を求めることを呼びかけた。知事も「怒りを感じざるを得ない」「他の知事や市町村長と連携し、国に厳しい対応をしていかなければならない」と表明した。
 しかし、もともとこの「三位一体改革」による国庫補助・負担金や地方交付税の大幅削減は、昨年7月の小泉内閣による「骨太方針第3弾」で明らかにされていたものである。  
 これまで「三位一体改革」で地方税・財源確保に幻想をもっていた自治体関係者の中でもこれが大きく崩れ、住民と地方に痛みを押しつける小泉内閣と自治体関係者との矛盾が激しくなっている。
わが党は、広範な自治体関係者との共同を広げ、地方自治を守り、住民の暮らしを守る地方自治体実現のため奮闘するものである。

5、知事は、府の財政を困難にする国のやり方には抗議の意思を示すが、国の地方交付税削減などによって市町村合併を強要するやり方には、これに追随し、その推進役を担っている。
 宮津・与謝の法定合併協議会では、2月18日の協議会で野田川町長がこれまでの協議の結果、「住民の誰もが納得できるまちづくりをするために、協議を打ち切ってもらいたい」と議会と住民との協議をもとに「合併協議会を解散」することを求めた。本来なら、この段階で、協議の前提である1市4町の枠組みが成り立たなくなり、解散することが当然であった。ところが京都府は20日に、各市町長に「府に調整させてほしい」と働きかけ、3月5日に合併協会長名で「支援委員会の助言を求める要請」がだされ、これをもとに「支援委員会」の名で、あらたに府が介入をはじめたことは重大である。
 知事は総括質疑で「合併協議会から要請をいただいている」「合併協議会から助けを求められた」からだと言い逃れをしようとしたが、合併協議会では一度も「要請」の協議はおこなわれていない。このことは理事者も認めざるを得なくなって「協議会は継続したもので、会長はその意思を代表している」との詭弁で、「会長」個人がおこなった要請を「協議会の要請」と取り繕った。
 また、笠置・和束両町長からの要請にもとづく支援委員会の助言についても、2町の今後の行財政運営を助言するだけでなく「合併」について助言することについて、「相楽7町村合併は、議会の意思で任意協議会は解散している。東部4町村合併についても加茂町の態度は明らかになっている。それなのに支援委員会が4町村もしくは7町村の合併が望ましいという助言をすれば、これは自治への介入ではないか」とのわが党議員の指摘に「どんな助言がされるか、事務局としてはいえない」と言い逃れせざるをえなくなっている。
 京都府が設置した「市町村行政改革支援委員会」は、行きづまり、破綻している合併協議を推し進めるため、府が「客観的」装いで介入する「合併推進」のための委員会でしかないことが浮き彫りとなった。
 また、市町村振興補助金と市町村振興基金が「使い勝手のよいものにする」との口実で、それぞれ「市町村未来づくり」交付金、基金に改定されたが、国民健康保険事業助成費などを統合し、総額で6億円近く削減している。これは、国が地方交付税や国庫補助負担金を削減していることに追いうちをかけるものであり、地方自治振興に逆行するものである。
 知事はわが党議員団の追及に「合併は、市町村が自主的におこなうもの」「府としては規模の大小にかかわらず、自立をめざそうとする市町村を積極的に応援していきたい」と答えたが、この実行を求めて引き続き奮闘するものである。

6、本議会開会中の2月27日に発覚した丹波町における鳥インフルエンザ問題は、国民に大きな衝撃を与え、養鶏農家はもちろん、鶏肉・鶏卵取り扱い業者や小売店に大打撃を与えた。府議会は事態の緊急性から本会議を開催し、全会派一致で国への「意見書」と府の万全の対策を求める「決議」を採択した。わが党は、西山とき子参院議員を本部長とする対策本部を立ち上げ、28日に現地調査、さらには関係農家や業者への訪問などで要望を聞き、それを「意見書」「決議」に反映させるため奮闘するとともに、予算委員会での各部局審査や総括質疑でその実現をめざした。
 特に、家畜伝染病予防法が想定していない20万羽を超える鶏の殺処分、埋却、消毒作業に府職員をはじめ市町村職員だけでは対応しきれないこと、また、南丹家畜保健衛生所などの家畜防疫員が不足していることを明らかにし、国の責任で対処するよう支援なども求め、松尾団長が西山参院議員とともに農水大臣に直接申し入れるなど奮闘した。
 府議会と国会での論戦を結んで、養鶏農家や関連業者への損失補てんなど求め、府も補正予算で移動制限区域内の養鶏農家への損失補てん、農家への末端金利ゼロの融資制度、関連業者への緊急融資、風評被害を防ぐための「府民だより号外」の発行などが実現した。
 さらに国会での西山参院議員の奮闘で、セーフティーネット5号指定と国民金融公庫の「衛生環境激変対策特別貸付制度」の発動が実現した。
 今後、30キロ圏外農家や取り扱い業者への損失補てん、損失額の実態に見合った算定、セーフティーネット3号指定(地域指定)の実現、さらに今回の教訓を生かした家畜伝染病予防法や防疫マニュアルの改正など引き続き関係者と力あわせて奮闘するものである。

7、今議会には「男女共同参画推進条例案」が提案された。わが党議員団は、これまでから男女の性別による固定的な役割分担をなくし、とりわけ雇用の場での男女差別をなくすため、「あけぼのプラン」の見直しなどを提案するとともに、昨年9月議会には「男女平等条例案」を提案し、その実現のために奮闘した。今回の条例案は、こうした議会でのわが党の奮闘とともに、広範な女性団体など関係者の運動におされて提案されたものである。しかし、その中には、公明党や民主党の議員からも指摘されたように、「男女平等」「女性の社会参加」に背を向ける自民党などの攻撃に押され、男らしさ女らしさや家族のあり方を固定的に考えると思われる表現が挿入された。わが党議員団は、こうした文言の削除と実効性を保障するための第三者による「苦情処理機関」を設けるよう修正案を提案した。この提案は、議会における公明党や民主党の討論から見れば、当然、議会の多数で成立が可能であったにかかわらず、公明、民主の道理ない態度によって否決された。これは実効性ある条例の制定を求める府民の厳しい批判は避けられないものである。
 また、「産業廃棄物税条例案」「市街化調整区域における開発にかかる条例案」などが提案された。わが党議員団は「産業廃棄物税条例案」が「発生抑制・再使用・再利用」をかかげながら京都市焼却場における産廃の「あわせ焼却」や府外への持ち出しを対象にしていないこと、特別徴収方式を採用したため、排出事業者への直接の発生抑制につながらない懸念があること、中小零細企業など減免制度がないこと、小規模事業所に対しては、税負担による誘導でなく発生抑制やリサイクルへの技術支援と援助が必要であることなどを指摘し、条例の目的に沿った今後の見直しを求めたうえで賛成した。
 「市街化調整区域における開発」を緩和しようとする条例案については、過疎化がすすむ農山村でIターンやJターンへの対応、さらには直売所の設置等を例外的に可能とするものであり賛成したが、調整区域での無秩序な開発とならないよう厳格な対応を求めた。

8、わが党議員団は、「有事法制関連7法案等の廃案を求める意見書案」「地方交付税等の削減に反対し、維持・充実を求める意見書案」を提案するとともに、民主・府民連合提案の「基礎年金の国庫負担を2分の1に早急に引き上げること」を求めた意見書をはじめ、提案された8意見書案に賛成した。
 有事法制関連7法案は、アメリカの戦争に地方自治体をはじめ、国民を総動員するものであることを明らかにする討論を行った。知事は、これまでから「有事の際、府民を保護するための法律が必要」と全国知事会などでも有事法制に積極的態度をとってきた。1月には京都市との間で「大規模な災害等の発生に伴う航空消防防災活動に関する協定」を締結したが、その対象に「武力攻撃災害・テロ災害」も含めている。ここには知事が、憲法を守り、平和のためには、なんら積極的行動をおこなわないだけでなく、政府の危険な有事体制づくりを積極的にすすめようとする立場が明らかとなっている。これは平和を願う府民の願いと逆行するものである。
 公明党が「65歳まで働ける雇用環境の整備を求める意見書案」を提案したが、これは参議院選挙を前に、年金支給開始年齢の引き上げをおこなってきた公明党の責任を覆い隠すものであり、同時に、60歳定年どころか、定年前に退職においやる大企業のリストラを自民・公明が応援していることを厳しく批判した。

9、いよいよ参議院選挙まで、あと3ヵ月となった。日本の平和と国民の暮らしにとってきわめて重要な選挙である。総選挙を契機に民主党が自民・公明党の悪政と対決するのではなく、「政権担当能力を示す」として、憲法の改悪や消費税増税を競いあう状況にあるだけに、わが党の躍進を実現することは、国民の願いに応えた平和と暮らしを守る力を大きくすることでもある。比例代表での市田書記局長をはじめ5人の絶対確保、京都選挙区での西山とき子参院議員の勝利に向け、わが党議員団は総力を挙げて奮闘するものである。