2004年6月定例府議会での西脇郁子議員の一般質問と答弁を紹介します。

西脇郁子(日本共産党、京都市下京区)  2004年6月11日

 

日本共産党の西脇いくこです。通告しております数点について、知事ならびに関係理事者に質問いたします。

 

 

「安心・子育てテレホン事業」の継続と、児童相談所等の相談体制のさらなる充実を

毎年1000件以上の相談件数や、25件もの虐待相談を受け、重要な役割

 

先日、長崎県の小学校内で6年生の女子児童が、同級生を切りつけ殺してしまうという、痛ましい事件が起こりました。お亡くなりになった、御手洗さとみさんに対しまして、心からご冥福をお祈りいたします。今回の事件は、国民に大きな衝撃を与えました。こうした不幸な事件が、二度と起こらないように心から望むものです。

今、長引く不況のもとで、長時間労働、リストラや競争社会の激化、有害情報の氾濫など、子育てをめぐる状況はますます大変になり、子育て不安はいっそう広がっています。だからこそ、今ほど身近な児童相談所や保育園、子育て電話相談、児童養護施設などの子育て支援体制の充実が、必要な時はないと考えます。

そこで本府が、この9月末で廃止しようとしておられる「安心・子育てテレホン相談事業」について質問します。

この事業は、府下では唯一、宇治児童相談所で行われており、毎年1000件以上もの相談があります。平成14年には、25件もの明確な虐待相談が含まれているとのことです。相談の中には、虐待が疑われる、いわゆる虐待予備軍だと思われる内容や、児童相談所での面接が必要とされる深刻な内容があること、また、リピーターの相談者や子育て専門雑誌等にも紹介されていることから、他府県からの相談者も含まれているとのことです。

本府の子育て支援情報のホームページには、「安心・子育てテレホン」の案内とともに、ミニコラムのコーナーには、電話相談員さんが相談活動での思いを、次のようにつづられています。

「虐待で保護された、生後数ヶ月の赤ちゃんに出会ったことがあります。目が合うと、にっこり笑うはずの月齢の赤ちゃんは、どこか遠いところを見ているように無表情でした。顔や体には何箇所も痛々しい傷跡があり、赤ちゃん特有のやわらかいあどけない顔立ちのその姿は、私には、羽をもぎ取られた、傷だらけの天使に見えてなりませんでした。

あるとき、「自分の赤ちゃんを叩く、ける、突き落とす、このままでは、もっとひどいことをしそうで自分が怖くなる。」との電話を受けたことがありました。毎日の様子を聞いていくと、一人ぼっちで追い詰められている、この人の今がひしひしと伝わってきます。

とにかく電話をしたというところに、何とかしたいというこの人の意思を感じて聞き続けると、そこには、先ほどの赤ちゃんと同じように心が傷つき、疲れ果てた母親の姿がありました。心の傷を目の当たりにすることはできませんが、どちらも傷だらけなのです。」と。私はこのコラムを読んで、改めて「子育て・安心テレホン」の役割の重さを感じました。

このように、宇治児童相談所ではこれまで、「いのちの電話」などの相談員も務めておられる方など、専門性の高い6名の電話相談員さんが、相手の話をじっくり聞いて、相談者の気持ちを受け止める努力を続けてこられました。虐待相談などは、児童相談所では敷居が高くても、電話相談の中で、児童相談所にスムーズにつなげていくことが可能であり、虐待してしまう不安を持っている親にとっても、これは極めて重要です。このことは、児童相談所内に設置された電話相談部門の大きなメリットでもあります。

 

虐待相談受理件数は、年々増え3年前の2、5倍に

 

さらに、府下の児童相談所の虐待相談の合計受理件数は、平成14年度には238件で、3年前の2・5倍にもなっていることからも、電話相談事業は、虐待の予防的役割も大きく果たしていると思いますが、この点についてはどうお考えでしょうか。

この「安心・子育てテレホン事業」は継続すべきとの、わが党議員団の質問に対する本府のこれまでの答弁は、「さまざまな分野での相談機能体制は充実してきている。」「さらに、身近な市町村、保育所等の子育て支援センターなどでの相談対応も、可能になっている。」とのことでした。

今の市町村のわずかな相談体制では、不十分。それでも電話相談は廃止するのか!

 私は、宇治児童相談所の担当地域の各市町村に、直接お話を伺いましたが、「家庭児童相談室の相談員は、わずか1人から2人体制で担当職員は、他の業務に終われて大変。」「保健センターも対象は主に乳幼児で、医療分野の相談が中心であり、学童期以降の子どもへの対応は不十分。」「保育所のなかの子育て支援センターも現場の保育士さんの配置基準が変わっていないため、通常の保育業務を行うだけで精一杯。」「小さい町村では、相談員研修なども含め、専門体制がとりにくい。」などの声が、率直に出されていました。また、宇治児童相談所の方からも、今の市町村の状況の中で、「今後、相談者を、いったいどこに紹介すればいいのか。」と、戸惑いの声も出ています。多くの市町村での現在の子育て支援体制は、これまで府が答弁されたような状況には、なっていないのです。

また、本府はこれまで、「今後は、通常の業務の中での対応が、可能。」だとも答弁されていますが、この点につきましても、大いに疑問が残るところです。

宇治児童相談所ではこれまで、6名の相談員体制に加え、1名の受付け業務担当職員と7名体制でしたが、受付け専門職員が廃止になり、その代わりに2年前より、新たに虐待サポートチームとして、2名の加配があり、現在8名の相談員体制となっています。実質1名の相談員の増員ではありますが、受付専門職員が廃止になったことにより、「それまでの受付け事務職員が担当しておられた事務処理が、すべて相談員に分担されることとなり、本来の多忙な相談活動に加え、大きな負担になっている。」と、お聞きしています。さらに、一時保護所の保育士も、常勤体制から非常勤体制になり、残業も含め、常勤職員の精神的・肉体的負担は、増えるばかりです。

こういった現在の市町村や、児童相談所の相談体制の厳しい状況のもと、「安心・子育てテレホン」事業がなくなれば、今後はこれまでのように、電話相談者の不安や悩みに丁寧に対応することが難しいと思いますが、それでも電話相談は廃止されるおつもりですか。 

改めて、子育て支援に重要な役割を果たしている「安心・子育てテレホン」事業の継続と、児童相談所の相談体制の、更なる充実を強く要望いたします。

【保健福祉部長】 安心・子育てテレホン」事業は、子育て支援に対するニーズが増大する中、家庭が抱える子どもたちに関する、さまざまな悩みに対応してきたが、近年、母子保健法や児童福祉法等の改正により、住民に身近な市町村の役割が強化され、乳幼児の健康指導や育児相談は市町村保健センターで、育児不安等の子育て相談は、地域子育て支援センターや保育所等で実施されている。児童相談所では、高度な専門性を生かし、児童虐待などの困難な事例に対応することが、重要な役割として、今求められていることから、乳幼児の健康・食事・しつけなどの相談がほとんどを占める「安心・子育てテレホン」事業については、現在、市町村で実施されている相談事業にゆだねることし、本年9月で終了する。

市町村の子育て支援家庭への相談体制については、保健センターが全市町村に設置されていることや、保健師がここ10年間で約100名増員され、地域子育てセンターが3箇所から33箇所に増加している等、整備されている。今後は、市町村の資質向上や地域子育て支援センター等、市町村の相談機能の充実について、児童相談所や保健所と専門性を生かしながら、積極的に進めるとともに児童相談所での、虐待をはじめ、非行などの相談についても、いっそう取組みを強めるとともに、市町村はじめ、関係団体とも連携し、総合的な子育て支援を取組んでいきたい。

 

【西脇再質問】 児童相談所の中にある電話相談事業は、先ほどもこれは他の市町村では変えられない、独特の重要な役割をしていると申したわけですが、そのメリット、役割ということについて、どう府として認識しているのか。改めて伺います。

 もう一点は、本府は昨年12月に、『ストップザ児童虐待』というタイトルのCD−ROM。これは、府民の啓発用にということでしたが、270万円の事業で1500枚作成されたばかり、ともお聞きしています。そのCDの中にも、「安心・子育てテレホン」事業が、イラスト入りで案内されています。このCDは、昨年12月に京都で開催された「日本の子ども虐待防止研究会」の中で、全国の都道府県にも配られ、紹介されたようですが、それにもかかわらす、突然今年の2月の予算委員会で、電話相談事業の廃止が打ち出される。これは、全く理解ができません。この点についてもご説明をお願いするとともに、「安心・子育てテレホン」事業の継続を、改めて要望いたします。

 

【保健福祉部長】 この事業は、制度としては児童相談所と一緒にやるということは、想定されていません。府の事業として、適切な場所で実施する。府の場合はたまたま、宇治の児童相談所が中央相談所ということから行っている。事業の意義については、相談内容には、非常に一般的なものから、高度な難しいものもあります。それぞれの役割分担と市町村との連携協力の中で、適切に個別課題については対応していきたい。

 CD−ROMの件は、去年の秋以降、16年度以降の政策検討の中で決定してきたもの。経過措置として、今年半年間9月末まで実施をするとしている。

 

地産地消のさらなる推進には、コーディネートに徹する担当者の配置が不可欠

 

次に、本府での学校給食の地産地消の推進について、質問いたします。

学校給食は、子どもの食習慣や食事マナーを正すだけではなく、地域の農林漁業を学ぶ「食農教育」の基本であり、既に全国で、学校給食に地元産の農産物を取り入れる取り組みが、豊かな学校給食を目指す方々や農業関係者、自治体などの努力により、広がっています。平成15年度の政府の農業白書におきましても、「こうした地域農産物を活用する取り組みは、地域内やわが国全体の食料自給率の向上につながり、環境保全にも資することから、引き続き、地域の関係者が一体となった、更なる推進が望まれる。」と、明言されています。

鳥取県では、学校給食への県内産食材使用率の県平均は、平成12年度の20%から、平成14年度には25%にと、全国平均の21%を大きく上回っています。鳥取県の学校給食をはじめとした、地産地消の取り組みが進んだ大きな要因は、まず市町村の取組み状況を、どの部局の担当者よりも、詳しく把握している知事の積極的な取組み姿勢とともに、3年前に作られた地産地消推進室の担当者のご努力も、大変なものがあった。地産地消推進室では、各市町村のそれぞれの現場と、県庁内のすべての部局をつなぐコーディネート役に徹しているとの話も聞きました。また、一例ですが、県内産大豆を用いた豆腐の加工業者に呼びかけ、その販売を県内の全スーパーに働きかけていくという取り組みも、進めてこられたということです。

本府でも、地産地消の取組みの一環として、「いただきます・地元産プラン」を策定されましたが、このプラン策定前の検討会議や、府民からのパブリックコメントを通じての意見のなかにも、「供給の仕組みづくりについて、地域で具体化するには、生産者を組織し、学校栄養職員、調理員等の間をつなぐコーディネーターが必要。」との意見が出されていました。本府では農林水産部と教育委員会が連携して行われるとのことですが、学校給食だけにとどまらず、鳥取県のように府内産農水産物等の地産地消を、積極的にすすめていくためには、府庁内の部局を横断し、意見を取りまとめていく地産地消推進室のような専門の担当者が配置された部署が、ぜひとも必要と考えますが、いかがでしょうか。

先ほどの鳥取県では、県教育委員会が、県下の市町村ごとに、地元産・県内産・国内産・外国産ごとの学校給食用食材の生産地別使用状況と、野菜・果物・魚介類等の主な品目ごとの生産地の状況調査を実施し、県内の学校給食食材状況を、細かく把握しておられます。まず、地産地消をすすめる場合、この調査は当然必要と考えますが、本府では現在、どこまで把握をしておられますか。また、本府での当面の地元産・府内産・国内産食材の使用割合の目標は、どう設定されていますか。

 あわせて、大量の調理を一箇所の給食センターでまかなう方式では、1回に大量の野菜などの食材がそろえられる農家や、農家の集団、流通業者でなければ対応できないという問題が、指摘されています。さらに、長岡京市、向日市、舞鶴市、大山崎町などでは学校給食の民間委託化もすすんでいます。城陽市でも来年一月より民間委託化が予定されているとお聞きし、京都市でも中学校給食は、4年前より、民間委託による弁当給食が、養護学校でも本年4月より民間委託でのクックチルド方式が実施されています。民間委託の場合、食材の品揃えの問題と併せて、経済コストがより優先されるもと、わずかな人数の職員配置のなかで、短時間で効率的に調理することが求められます。これまで民間委託された多くの給食センターでは、土つき野菜や不揃いなものは敬遠されるということや、現在のところ、民間業者が購入した食材についても、完全にチェックできていないという問題点も出ているというお話も、小学校の栄養職員さんからお伺いいたしました。

こういった、府下での学校給食の給食センター化や民間委託化への流れは、学校給食での地産地消の推進という本府の方針や、国の評価とも逆行するのではと考えますが、この点についての知事の見解を求めます。

 

【知事】地元産農産物の学校給食への利用を推進することは、京都府内の農産物の消費拡大とともに、何よりも京都の次代を担う子どもたちが、地域の豊かさや魅力を知り、地域との関わりを深める中で、地域への愛着とこれを守り育てる心を育み、健全な成長を促していく。スローフードという言葉がありますが、大変重要と考え、昨年度アクションプランとして「いただきます・地元産プラン」を策定し、取組みを推進してきた。今年度このプランに基づき、それぞれの地域にあったやり方で、地元農産物を利用する仕組みづくりを推進するとともに、京野菜等地元野菜給食の日を設定するモデル校づくり等を支援している。プランの検討にあたっては、野菜など地元産利用について、量や規格が揃いにくいこと、調理に手間がかかっていること等が、課題として上がっていますが、既に京都府内の市町村で、生産者と学校関係者が連携して、地元産野菜を利用しているケースや、給食センター方式であっても、年間を通して地元産野菜を優先して利用しているケース等、さまざまな取組みが進められている。このような市町村の取組みを尊重し、その上で各市町村の取組みを、さらに効果的に広げるための支援策や、京都の産物もたくさんあるので、府内の子どもたちが市町村域をこえて、都市と農村の交流等、地産地消推進をしていく市町村を支える役割を果たしていきたいと思い、農業改良普及センターを中心に、今後とも積極的に支援していきたい。近く、市町村の先進的な取組みを府内全体に広げていくため、町内の関係部局と市町村長とで構成する協議会を設置し、これを推進母体として、地元産京野菜等の給食への利用を積極的に推進する等、府が総合的なコーディネーターの役割を果たし、地産地消を推進していく。

【教育長】学校給食にどのような食材を使用するかは、学校の設置者である市町村で判断され、決定されている。学校給食の地域の産物を活用することは、児童生徒に地域の産業や文化に関心をもたせるとともに、郷土愛を育んだり、地域との結びつきを実感させる等、教育的効果があるもの。すでに、一部の地域においては、地元野菜や生産物を使った給食が実施されておりますが、食材の安定供給や価格面の課題もあり、今後、関係部局とも連携し、推進に努めていきたい。尚、学校用の給食は多種多様であり、市町村ごとに流通経路が異なることや、特産品の多くは、旬の時期だけ消費されていること等から、地元産、府内産使用状況の実態把握は、極めて困難な状況があるが、昨年度の地場産物活用状況によると、府内の地場産の使用率は、全国平均を上回る23%となっている。

【農林水産部長】給食センター方式でも、地元産食材を積極的に利用している事例もあり、調理方式の違いが給食への地元農産物利用の直接な障害になるとは考えていない。

 

学校給食パンへの輸入小麦の使用をやめ、一日も早く安全な府内産小麦パンへ

 

あわせて府内産小麦についてお尋ね致します。2001年に、農民連食品分析センターで行ったパン類の残留農薬分析結果によりますと、学校給食用のパンから、マラチオン、フエニトロチオン等の有機リン系農薬が、検出されています。千葉県では、2年前に、国産小麦を3割導入した結果、殺虫剤の残量もみごとに3分の1減ったということですが、この点からも、一日も早く学校給食のパンを、輸入小麦粉から安全な府内産小麦に切り替えることが必要です。

そこでお尋ね致しますが、本府として、京都府内の学校給食用のパンについて、残留農薬等の検査をされたことがありますか。または、各市町村で検査を行われていた場合、その結果について把握されていますか。

当面、まず輸入小麦の使用をやめて、国内産小麦粉に切り替えることが、今すぐ必要だと考えますが、その点についてはいかがお考えですか。

 農林水産省が取りまとめた、平成14年度の全国の学校給食における国産小麦の消費拡大の取組状況によれば、学校給食用パンに国産小麦を使用している都道府県は、本府を含め25道県となっています。全国的には、パンの国産小麦使用割合が20%を超える県は、16県になり、埼玉県の場合、現在は、全国初の県内産小麦100%のパンが、実現しています。

本府の場合、農林水産省が品種改良した小麦「ニシノカオリ」は、たんぱく質含有量が多くパンに適しているということから、平成15年10月学校給食用パンの奨励品種に採用されています。本年中に「ニシノカオリ」が山城地域で13ヘクタール栽培され、30トンの収穫が予定されているとお聞きしています。学校給食用小麦の生産拡大を積極的に図っていくことは、農家の皆さんにとりましても、大豆等とともに、米の転作に代わる、今後の有力な作物のひとつになるのではと期待いたします。今後は南丹地域も含め、50ヘクタール、150トンに拡大し、3年後を目途に、外国産との混合率を10%から20%に高めていかれるそうですが、その場合どれくらいの小麦の量が必要となりますか。また、その確保のための具体的な計画についてお聞かせください。

 

【教育長】 府内の給食実施校へは、平成14年度から、財団法人京都府学校給食会が、府内産小麦を10%使用したものを提供しており、また、残留農薬検査については、年2回実施しているが、毎回基準値以下で、安全性には問題ない。

【農林水産部長】 「ニシノカオリ」については、当面年間150トンを生産目標としているが、仮に配合率を20%とした場合、府内の給食用パンへの需要はまかなえる。

 

安全性の根拠がないまま、輸入再開されかねないBSE問題

アメリカの圧力に屈せず、食の安全・安心最重点の交渉へ、いま知事が発言を

 

最後にBSE問題について質問します。

昨年12月のアメリカでのBSE発生にともない、日本がアメリカ産牛肉の輸入禁止措置を取って6ヶ月たちましたが、今アメリカからの輸入解禁を求める圧力が続まっています。

4月4日には日米協議が再開され、5月18・19日には日米のBSE専門家や政府担当者による作業部会が開かれました。今後、6月に米国、7月には東京で引き続き会合が開かれ、これらの会合の結果を踏まえて8月には日米局長会議を開き、牛肉輸入解禁の合意を目指すとされています。

またこれと並行して、5月23日のOIE国際防疫事務局総会では、国際基準の緩和が決定され、この、いわば外濠を埋めるような事態とあわせ、国内では政府の食品安全委員会が、BSE対策の要である全頭検査の有効性、特定部位除去の安全性の検証に入るという、内濠を埋めるような動きが今進んでいます。

これまでの日米協議の中心争点は、全頭検査と危険部位の除去問題です。先日の日米の会合の中で、検査対象となる牛の頭数については、米国は今年6月から検査頭数を4万頭から27万頭に拡大すると示唆していますが、市場に出るアメリカ国内全体の3500万頭の0.8パーセントにしかなりません。さらに、このサンプリングの基本は、神経症状を示す牛や歩行困難牛等、リスクの高い牛を中心とした検査だとしています。この点については、日本がもし、米国の基準で検査した場合、国内でこれまで見つかった11頭の感染牛のうち、2頭しか発見できなかったと報道されています。また、米国は、特定危険部位の除去は30ヶ月以上の牛を対象にするといっていますが、日本の場合、昨年10月には生後3ヶ月の牛が、11月には21ヶ月の牛がBSEに感染していることが確認されていることからみても、現在の米国のBSE検査内容は、安全性の確保からは程遠い状況となっています。また、牛の生育履歴を確認するトレーサビリテイーを導入していないため、月令判定が困難との指摘もあります。日本の圧倒的国民から支持され、専門家からも評価されている日本の全頭検査を、アメリカの圧力で見直すことは許されません。 

 そこで知事にお尋ねします。知事として府民の食の安全・安心を守る上で、ずさんなアメリカのBSE検査体制のもとで、米国産牛肉が安全性の根拠がないまま輸入再開されかねない問題について、どうお考えですか。

京都府においても国に対して、アメリカの輸入圧力に屈せず、米国産牛肉の全頭検査と危険部位の完全除去を求め、あくまでも消費者にとっての食の安全・安心の確保を、最重点においた措置をとるように、強く求めていただく必要があると思いますが、いかがですか。

 

【農林水産部長】 農畜産物の輸入に当たっては、安心安全の確保が大切なことは、当然のこと。現在、輸入再開に関して、日米両国で協議が続けられていますが、わが国は全頭検査等、国産牛肉と同等の措置がアメリカ産牛肉について講じられていることを基本として、協議に臨んでいると伺っている。