2004年6月定例府議会での加味根史朗議員の一般質問と答弁を紹介します。

加味根史朗(日本共産党、京都市右京区)  2004年6月11日

相次ぐ大型店進出 商店街や小売市場、中小零細の小売店に打撃

交通問題や生活環境の悪化など京都のまちづくりにも否定的影響

最初に、大型店の進出規制と小売商業の振興についてです。私の地元京都市右京区にダイヤモンドシティが開店して3ヵ月たちました。この大型店は、大店法廃止後の京都市内での初めての大規模商業施設でした。小売市場振興組合や商店連盟をはじめ多くの中小零細の小売店の方々から「もう大型店はいらない」と反対の声があがりましたが、京都市は「まちづくり条例」にもとづき2万2000平方メートルという大規模な売場面積を認め、建設されました。

この大型店は、周辺の商店街や小売市場などに深刻な影響を与えています。地元の西京極学区のほほえみ通商店街の会長さんは、「影響は大きい。魚屋さんは半分も売上げが落ちている」。右京区西院の小売市場の役員さんは、「今でも10%は売上げがダウンしている」。下京区の七条通商店街の役員さんも、「売上げが悪くなったことか確かだ」。小売市場振興組合の役員さんは、「西京区の小売市場でも影響がある」といっておられます。

1690台の駐車場をもつ大型店ですから、地域の生活環境にも影響を与えています。9号線に面して出店したために、交通渋滞はますますひどくなりました。また営業時間が午後11時までと深夜に及び、住宅地の静けさが損なわれ、青少年への影響も心配されています。

京都市の2002年の資料によると、500平方メートルをこえる大型店は253店もあり、販売額全体の31%、売り場面積では43%も占めるようになりました。そういうなかで従業員4人までの小売店は、5年前と比べて1906軒も減りました。

そこで質問いたします。ダイヤモンドシティの出店をはじめ、大型店の相次ぐ進出が、京都の商店街や小売市場、中小零細の小売店の経営に打撃を与え、さらに交通問題や生活環境の悪化など京都のまちづくりに否定的影響をもたらしていると考えますが、知事はどのように認識されていますか、お答えください。

暮らしよい「まちづくり」のために 大型店出店のルールづくりを

次に、大型店の出店にあたってのルールづくりについて質問します。政府は、大店法を撤廃したときに、かわって大店立地法、中心市街地活性化法、都市計画法「改正」などいわゆる「街づくり三法」を制定しました。しかし、大型店の立地そのものを規制するはずの「改正」都市計画法を活用して大型店出店を有効に規制できた地方自治体は、全国で一件もありません。また、大店立地法で大型店が周辺地域の「生活環境の保持」を配慮すべき範囲は、駐車場の確保、騒音、廃棄物対策など極めて狭いものです。一方、同法は、「地域的な需給状況を勘案することなく」として、地方自治体に対して、大型店出店によって一番影響をうける商店街、中小商店への影響に配慮することや深夜営業の制限など生活環境を守ることをかえって抑制する役割を果たしています。

いま大型店をめぐる京都の情勢は新たな段階を迎えています。京都府と京都市は、今後京都市南区と向日市のキリンビール跡地の再開発のなかで巨大な商業施設を誘致しようとしています。京都市内では、さらに下京区にスーパーマツモトが4000平方メートルで、京都駅でビッグカメラが出店を計画しているのをはじめ、府内各地でも精華町や八幡市、福知山市などで大型店の進出が計画されているといわれています。さながら大型店の進出ラッシュです。こうした事態を野放しにすれば、府内各地の既存の商店街、小売市場、中小零細小売店にさらに重大な打撃となります。

私どもは、地域の主人公である住民が、暮らしよい「まちづくり」のためには、規制緩和一辺倒の政策ときっぱり手をきり、大型店の野放しの出店を抑えるとともに、地域の商店街、中小商店の値打ちが発揮される「まちづくり」のルールが必要であると考えます。

それは、第一に、大型店が出店する際は、その地域の住民と地方自治体に対し、商店街など地域の商業環境、住民の生活環境、街づくり計画など、地域環境に対する影響評価に関する事前の情報提供を義務づけ、立地予定地の住民への説明、自治体との協議をへて合意を得る仕組みをつくること。とくに巨大なショッピング・センター建設や郊外立地店など商圏が複数の市町村にまたがるものは都道府県に広域調整審議会を設置し、規制・調整するシステムをつくることが必要であると思います。

第二に、中心市街地や商店街の活性化の計画に支障をきたす大型店の出店は原則禁止にし、市町村と都道府県が出店地域を誘導していく仕組みをつくること。大型店が撤退する場合は、一定期間の予告と関係地方自治体に対する事前協議と代償措置を義務づけること。 

第三に、深夜営業による交通騒音、照明等による生活・住環境の悪化を防止し、青少年や女性などの安心、安全の確保のため、直ちに大店立地法の指針に深夜営業の制限を盛り込むとともに、地方自治体が独自に実効ある規制ができるようにすることが必要だと思います。

このように大型店の進出を規制し、商店街や中小商店を守る「まちづくり」のルールづくりを、法律の改正を含めて国に強く求めていくべきだと思いますが、御所見をお聞かせください。

都道府県でも、こうしたルールづくりの取り組みが始まっています。昨年7月に福島県は副知事を本部長とする「中心市街地活性化推進本部」の諮問機関として「福島県広域街づくり検討会」を設立し、今年3月に「街づくりの観点から大型店の出店調整が必要」との内容を盛り込んだ「提言」を県に提出しました。

「提言」では、「個別出店計画ごとに関係市町村の意見を聴取し、県として出店の適否を意見表明する仕組みを構築する」「県の意見に事業者の対応が不適切で、関係市町村のまちづくりに重大な影響を及ぼす場合、事業者に勧告など必要な措置を講じる」こととされています。

本府としても、大型店の出店に対して、独自のルールづくりを真剣に検討すべきだと思いますが、御所見をお聞かせください。

 

商工部長 大型店問題だが、大型店の出店はその立地する地域によって影響や課題が異なるものと考えている。府としては、大店立地法については京都市内の案件は京都市長の権限であるがそれ以外については、あくまで地域の発展とまちづくりの推進を図るという立場に立ち、地元市町村の意見を充分尊重しながら庁内に設置した「まちづくり推進連絡協議会」において関係部局管の連携をはかるとともに、有識者で構成された大規模小売店舗立地審議会の意見をふまえるなど公正かつ適切な対処に努めている。京都府としてのルール作りについては地方分権の時代にあって、それぞれの市町村が地域の創意工夫を生かし、交通対策をはじめそれぞれの総合的なまちづくりをいかに進めるのかという視点から、大型店の立地や小売商業の振興について考えていくことが重要であると認識している。現在、国において大店立地法の指針の見直し等について検討が行なわれているが、こういった地方の自主性が反映されるよう国に意見を述べているところである。

 

【加味根再質問】 大型店の問題ですが、京都府の総合計画の中でも商店街を活性化させていくというのは重要な課題として位置づけられています。そのなかで、今の答弁を聞いていると、大店立地法に基づく対応という事を依然として進めていくということです。商店街の周辺に大型店が大店立地法にもとづいてどんどん自由に出店されるようになり、それで商店街が衰退廃業に追いこもれる、こういう現実があるわけで、こういう状態を放置しておいて、これでどうして商店街の活性化ができるのかと私は思います。ヨーロッパやアメリカでは、1980年代に郊外型の大型店がどんどん進出し商店街が衰退するという現実を受けて、90年代に大型店の出店については許可制にして商店街を守るという取り組みがされました。日本でもそういう見直しをする時期に来ているのではないかと感じています。その焦点が大店立地法の13条です。地方自治体については、需給状況を勘案することなくということで、地方自治体の権限として大型店の出店を制限したり調整したりする権限をこの法律で規制したわけです。これを見直すべきときに来ていると思います。その点、知事はどのように考えられますか、特に13条の問題ですね。地方分権といわれているのですから、京都府独自に大型店の出店にあたって、ものが言える、もっと権限強化をはかっていく、そのためにこの13条の撤廃を求められたらどうかと思いますがいかがですか。あらためてお聞きしたいと思います。

【商工部長】 商店街の活性化ができるのかというご質問だが、先ほど答弁したとおり、市町村において大型店の出店に対し地域の創意工夫を生かして地域の活性化を図るということで、そういう視点から大型店出店をご検討いただいている。そのように理解している。

 

小売市場の活性化のため 協同組合の取り組みの支援を

あわせて商店街や小売市場、中小小売店の振興についてお聞きしたいと思います。私は、ある小売市場の役員さんから、小売市場の活性化のため京都と大阪、兵庫の小売市場で協同組合を作り、共同仕入れを実現し定着させるとともに、さらにITを活用した産直取引の発注・配送情報のネットワークを構築し、「生鮮に強い小売市場」づくりや顧客サービスの向上に取り組んでいる経験の一端をお聞きいたしました。この取り組みは、食品流通高度化緊急プロジェクト事業として2002年度に農林水産省の補助をうけて始められたそうです。資本力のない小売市場が協同して活性化のために努力されていることは、大変すばらしいと感じました。

こうした協同組合の取り組みは、農林水産省ばかりか京都府においても推奨されるべきものであり、大いに支援すべきものと思いますが、本府としてどのように評価され、対応されようとしているのか、御所見をお聞かせください。

商工部長 小売市場の共同仕入れ等にかかるネットワーク事業については、日ごろから小売市場団体とも意見交換を行なっており、具体的な相談があればお話を伺いたい。

 

丹波町下山地区の家畜排泄物の処理について

次に、家畜排泄物の処理についてであります。畜産経営による公害が各地で問題になっていますが、先日丹波町下山地区の現地調査をおこなってきました。下山地区では、10ヵ所の牧場があり、一昨年6月の時点で乳牛が子牛を含めて1158頭飼育されています。その糞尿の量は膨大で、日量75.8トン、年平均の排泄量は2万7667トンにも及びます。この処理には大きな問題があり、私ども議員団として改善をつよく求めてまいりました。知事は、「畑川流域における家畜排せつ物の適切な処理は、重要な課題であり、関係地域の畜産農家や町の施設整備等の取り組みに対し、引き続き指導に努め、問題の解消を図ってまいりたい」と答弁され、対策強化を約束されました。しかし、その後2年近くたっていますが、現状はほとんど変わっていません。

住民の方からは、畑に牛糞を運び込んではかき混ぜているが、30センチ以上は堆積しているのではないかという話が出されました。現にきついアンモニアで草もはえていないところが多くあり、事実上牛糞の捨て場になっていると感じました。また実際、大量に野積みされている現場も確認しました。雨の後、糞尿がどんどん流れている状況も確認しました。下山グリーンハイツの住民の方からは、「水道水を畑川から取水しているが、この川に糞尿が流れ込み、水道水が汚染されて飲めない事態が何度も発生している。何とかしてほしい」と切実な声が出されました。

「家畜排泄物の管理の適正化および利用の促進に関する法律」は、牛糞の野積みなど家畜排泄物の不適切な処理を禁止し、これを改善するための適正な管理と処理施設の整備を促進し、もって畜産業の健全な発展に資することを目的としています。この法律は、5年前に成立しましたが、罰則規定の適用は、処理施設の整備を待って今年11月1日からとされてきました。住民のみなさんは、法施行を前にして今度こそ畜産公害を根絶してほしいと願っています。

そこで質問いたしますが、第一に家畜排泄物の管理処理施設の整備についてです。丹波町の計画によると、下山地区では、JAが所有する現在の処理施設を拡充する計画ですが、遅々として進んでいません。実情を聞きますと、この処理施設は国や府の助成を受けて旧丹波町農協が整備し、大合併のなかでJA南丹からJA京都にひきつがれたものですが、故障がたえずこの数年来有効に稼動していません。JA南丹、JA京都が営業部門・不採算部門切り捨ての中で修理費用を一切負担せず、丹波町と農家がその都度負担してきたと聞いていますが、しっかりした整備ができていなかったのではないかと思います。そしてJA京都はいま、この施設を残存簿価4000万円で買い取るよう農家に押し付けているのです。農家はやむなく買い取りを承諾したとのことですが、その資金や返済計画をどうするのか、困惑しているとのことであります。こういう経過から、府として、農家負担を極力抑え、早急に施設の拡充、改善が軌道に乗るよう町と協力し問題の解決にあたるべきだと思いますが、いかがでしょうか。

また、下山地区で最大の牧場は個人経営で、550頭を飼育していますが、長年にわたって畑への投機を続けてきた業者です。自力で施設を建設していますが、本当に所有する牛の糞尿をすべて処理できる能力があるのか、本府としてどのように把握されていますか。もし処理できないとすれば施設の拡充が必要ですが、どのように指導されますか、お伺いいたします。

第二に、畑に運び込まれた膨大な牛糞の処理についてです。牛糞の野積みや畑への投機の状態は、今年11月以降は法律で禁止されるものと思いますが、本府はどのように対処する考えですか、明らかにしてください。

 

【農林水産部長】 家畜排泄物の処理についてであるが、丹波町下山地域の共同処理施設については、丹波町がJAの施設を譲り受けて整備することとしており、現在町と農家で負担のあり方について調整がされている。府としても円滑に事業が進むように指導している。この地域の大規模畜産農家については、新たに排水の出ない攪拌型醗酵処理施設が昨年12月から稼動しており、既存の処理施設とあわせ、この農家の使用規模にあった施設規模であると考えている。この施設が適切に使用されるよう丹波町とあわせて指導していきたい。過去に農地に搬入された家畜排泄物については、丹波町とともに野積みの解消を強く指導し、徐々に畑地化も進みつつある。今後とも、作物の栽培による農地としての利用等環境改善を指導していきたい。

【加味根再質問】  家畜排泄物の処理についてお答えがありましたが、私達も見に行きましたが大量に牛糞が運ばれて、畑地作りというけれども実際には捨場になっているという状況です。今の答弁では、畑になってきているからその様子を見ていくという答弁だったように私は聞こえましたが、これでは周辺の住民の方々も納得できません。家畜排泄物処理法の規定でいきますと、これは不適切な状態と私は判断するのですが、現状の認識、法律に照らして不適切な状態といえないのかどうか、その辺明確な答えがなかったような感じがしますので、明確にお答えをいただきたい。都道府県知事として調査し指導監督あるいは命令までできる権限がこの法律にはありますので、調査を行っていただき、住民のみなさんの不安がなくなるよう事態が改善できるように万全のとりくみをしていただきたい。もう一度その点を伺いたい。

【農林水産部長】 家畜排泄物についてであるが、先ほど答えたようにこれまでから強く指導してきたところであり、引き続き丹波町と改善指導を行なっている。

 

下山グリーンハイツの水道 水道事業組合に引継ぎを

関連して、下山グリーンハイツの水道についてお伺いいたします。現在この団地の水道を供給してきた会社が倒産し、水道事業認可が切れる今年10月半ば以降は、新たな事業者に引き継がなければなりません。自治会のみなさんは、丹波町と瑞穂町の水道事業組合に引き継いでほしいと願っています。

しかし丹波町は現在、引き継ぎを明言されておらず、自治会のみなさんは大変心配されています。水道事業を認可し、適正な運営を指導する責任をもつ本府として、丹波町や瑞穂町に対し、当然10月から引き継ぐよう指導していただきたいと思います。あわせて、みのりヶ丘、清風台も同様に対処すべきと思いますが、御所見をお伺いいたします。

【保健福祉部長】 下山の簡易水道事業についてだが、府としては継続して安全な給水が確保されるよう水道事業者である開発会社、丹波町、丹波町瑞穂町水道事業組合と調整をはかってきた。その結果、開発会社に対する水道事業の認可期限である本年10月以降は水道事業組合が給水地域に編入し、それまでの間は地元自治会が水道事業経営を行なう方向で検討されている段階と聞いている。みのりヶ丘についてはすでに給水区域に含まれており、順次計画的に給水を実施できるように取り組まれている。引き続き安全で安定した水道事業が円滑に進むように必要な指導助言を行なっていきたい。

 

鳥インフルエンザ問題 再びこのような事態を繰り返さないために 

最後に、鳥インフルエンザ問題について質問します。4月13日に終息宣言がだされて2ヶ月経ちました。生産、流通、消費の全般に大混乱を引き起こし甚大な被害を与えましたが、いま、ようやく落ち着きを取り戻しつつあります。昼夜を分かたずご努力いただきました関係者の皆さんに心から敬意を表する次第です。

さて、今回の最大の教訓は日頃の予察・予防体制の強化がいかに大事かということであります。これは府の専門家会議が今後の課題の第一に指摘しており、国会でも家畜伝染病予防法の所定の改正が行なわれました。再びこのような事態を繰り返さないためにも府としての取り組み強化が必要でありますが、いま具体的にどう進めていますか、先ずお伺い致します。

 

【山田知事】 高病原性鳥インフルエンザ対策についてであるが、今回の事案では多くの農家のみなさんや関係業界に大きな被害が及び、京都府でも防疫措置に多大な労力と費用を要し、地域住民に不安をあたえた。今回のような事態を二度と繰り返したくないという思いは私自身が最も強く思っている。しかし、この伝染病は感染力が極めて強いうえ感染ルートも解明されていない中で、予防措置を徹底することはきわめて難しい状態にある。このため、農家のみなさんが、少しでも異常があれば連絡をしていただける環境作りが重要であり、国に対し強く要請してきた結果、鳥インフルエンザ総合対策が決定実施され、家伝法も改正された。しかし、SARSのように今年はほとんど発生を見ないままで終わっていくのか、それともコイヘルペスのようにウィルスの活動に適した時期が来ればまた大きく発生を見るのか、全く予断を許さないのが現状。それだけに府としてはきめ細かな巡回指導等を通じて農家との信頼関係づくりにつとめ、またリスクコミュニケーションなどの食の安全の確立のための施策に努めるとともに、国に対してさらに予防措置の開発、感染ルートの解明、発生農家等に対する充分な補填措置、都道府県が行なう防疫措置に対する支援強化、都道府県を越え、また海外から進入してくるこの強力な感染症に対して、国としてその責務を充分に果たすよう強く要請している。

 

30キロ圏外についても独自の補償措置を講ずるべき

次に生産者の支援対策です。30キロ圏内は出荷制限が行なわれ、解除後売れ残った卵は焼却処分されました。これについてはキロ当たり142円の国の補償が行なわれ、さらに平飼の赤卵などブランド卵には府が上積み補償を行ないました。しかし30キロ圏外についてはなにもありません。確かに出荷はしたのですが「京都の卵」ということでまともに売れない、大変な損害を受けています。ある大規模業者の例ですが通常のスーパーなどへのパック詰め販売は完全にとまり、殆どがダンボール箱詰のスポット販売となりました。

販売価格は平均キロ86円とのことで、仮に損失補填があった場合と比較すると運賃、返品回収分などを合わせ1000万円からの違いになるとのことであります。また、特別の餌を使いブランド卵を生産してきた2000羽規模の養鶏農家も「何とかさばいてはきたが、残った分はJAへ出荷した。売上はかなり落ち込み、府独自の上乗せ補償を受けた場合と比較すれば大変な違い」とのことでした。

  30キロ圏内、圏外の違いは出荷制限のある、なしで、圏内は売ることを禁じたから補償する、圏外は売れたのだから補償しない、という一律的な対応をしたのでは、いま述べましたとおり真に不平等であります。知事は今回、農家の強い要求に応え、府独自の補償を上乗せする措置を講じられましたが、同様に圏外についても独自措置を講ずるべきではないでしょうか。行政の不平等はあってはなりません。ぜひ検討していただきたいと思いますがいかがでしょうか。

また、防鳥網についても同様の問題があります。カラスの感染が問題になる中で圏内外を問わず防鳥網の設置を府が指導した経過があります。圏内は助成するが圏外はしないということでは理解が得られません。行政への不信を招くだけであります。ただちに改善すべきと考えますが、いかがでしょうか。お答えください。

 

【農林水産部長】  高病原性鳥インフルエンザにかかる養鶏農家への支援対策であるが、圏域区域内の農家に対する補填対策、は家畜伝染病予防法に基づいて鶏卵や鶏の出荷を制限することにより生じた損失について講じているものであり、地域外の農家に同様の措置を講ずることは困難であると考えている。しかしながら、多くの農家が風評被害などの大きな影響を受けたのも事実であり、府としては府内産の鶏卵や鶏肉を積極的にPRしてきた。今後とも関係団体による消費拡大の取り組みに対し積極的に支援していきたい。

 防鳥ネットの措置については、制限区域内の養鶏農家を対象に鳥インフルエンザの蔓延防止のために臨時・緊急の対策として実施したものであるが、今後とも要望があれば既存の事業での対応も考えられるので、相談していただきたい。

 

融資 農協組合員外も農業信用基金協会の保証可能に指導を

流通関係、営業店などの風評被害対策、補償を

融資の問題ですが、経営継続資金・経営維持資金など国の制度に府が利子補給を行なう低利融資対策が講ぜられました。30キロ圏内で補償を受ける農家、業者でも繋ぎ資金が必要です。まして圏外の場合、融資は絶対です。ところがこの融資の利用にあたって、農協組合員でないという理由で農業信用基金協会の保証が受けられないという問題が起こっています。そこで国は4月6日付け通達で、「出資金を払って協会に加入し保証を受けるよう改善指導を行ないましたが、京都ではどうなっていますか、府として基金協会にどう指導していますか、お答えください。

最後に卸から小売など流通関係、焼き鳥など営業店の問題です。風評被害は相当なもので、私たちの調査でも昨年同月の半分、或いは更にひどい状況も少なくありませんでした。関係者の皆さんからは「融資ではなく何らかの補償措置を」などの切実な声が寄せられていました。知事も終息宣言会見のなかで、風評被害などに対し経営支援に全力を挙げる旨述べられましたが、あらためて実状を調査し具体化していただきたいと思います。いかがでしょうか、お答えください。

 

【農林水産部長】  養鶏農家への融資対策については、農協組合員以外の農家も多いことに加え、補償制度に関する国の支援措置が不十分なことなど、制度の実効性を確保するためには、なお課題が残されている。引き続き国に対し改善要望を強く行なっている。鶏肉鶏卵等を扱う中小企業への経営支援についてだが、京都市と協調して高病原性鳥インフルエンザ緊急融資を3月18日にいち早く創設した。また融資の別枠確保のため、セーフティネット保証の指定を国に対し要望した結果、焼き鳥屋をはじめ鶏肉の卸売りや小売業などが7業種が不況業種に指定された。さらに鳥インフルエンザ終息宣言後もイベントや各種広報により、風評被害の防止をはかってきた。今後とも生産者や流通関係業者による消費拡大に向けたPRの取り組みなどに対して積極的な支援を行なっていきたい。

【加味根再質問】鳥インフルエンザの問題では、実際に圏外の業者の方で1000万円からの損害が生まれているという現実的な問題として出てきているわけで、そういうことも勘案して被害状況、損失の状況などを調査もしていただいて検討していただくことをお願いしたい。