梅木紀秀議員(日本共産党、京都市左京区) 2004年6月14日

 

日本共産党の梅木紀秀です。通告しております数点について、知事ならびに関係理事者に質問いたします。

 

高速道路・マイカー優先から公共交通優先へ、交通政策の転換を

 

【梅木】まず、生活交通の確保と国の交通政策のあり方についてうかがいます。

本年1月、京都交通が経営破たんし、現在、会社更生手続きがすすんでいますが、全国どの地域でも、バス事業者の経営は苦しく、通院・通学など住民の生活交通をどう確保するかは全国的な課題であり、国の交通政策が問われています。

国土交通省の資料では、乗合バスの乗客は、1968年の99億人をピークに、2001年には46億人に半減していますが、同時期に、マイカーの保有台数は、172万台から4210万台に、およそ24倍にもなっています。政府は、高速道路をはじめとした道路整備に巨額の投資をおこない、国策としてマイカーの普及をすすめる一方で、鉄道や路線バスなど地域生活交通の維持には極めて不熱心で、地方まかせにしてきました。

先進国では鉄道やバスなど公共交通の運行費を公的に支援するのは当たり前です。アメリカでは、運行費全体に占める運賃収入の割合は43%、フランスは55%、ドイツは60%ですから、4割から6割は公的支援によって賄われています。ところが、わが国の場合、1兆円といわれる地方バスの運行経費に対して、国庫補助はわずか73億円で、1%にもなりません。KTRなど鉄道への国の運行費補助は一切ありません。一方、高速道路などの道路建設費は、今年度1兆8725億円です。73億円がいかに少ないか、国のマイカー優先、公共交通切捨て政策の実態と改善の方向は明らかです。

環境問題からもマイカー優先の交通政策の転換が求められています。先日、NHKの番組で、日本と同じように、中国やインドでマイカーが増えれば、地球環境が大変なことになること、このため、ヨーロッパではLRT(新型路面電車)の導入やパークアンドライドなど公共交通優先の具体的な取り組みがすすんでいることが紹介されていました。ところが日本政府の実態は先ほど紹介したとおりで、道路公団の問題を見ても、高速道路偏重、マイカー中心の旧態依然とした政策のままです。先日閣議決定された2004年版「環境白書」では、「地球温暖化対策がすすんでおらず」「京都議定書の目標達成が困難である」と報告されていますが、交通政策でも、肝心の政府の政策転換がすすんでいないことが問題なのです。

6月の「府民だより」は1面で、「環境破壊をくい止めるために『もう遅い』という言葉はありません。地球のためにできること、今から始めてみませんか?」と地球温暖化防止の取り組みを府民に呼びかけています。そこで知事にうかがいます。京都府の「政府予算に関する重点要望」では、「高速道路の整備」が交通分野での要望の柱になっていますが、京都議定書の目標達成という観点からも、まず一番に、「マイカー優先から公共交通優先への政策転換」を提案すべきではありませんか。また、鉄道やバスなど公共交通の運行費に対して欧米並みの補助、国の財政負担を求めるべきではありませんか、御所見をお示しください。

【知事】生活交通の確保については、私は欧米、アメリカに3年間住んでいましたけれども、まさにアメリカの例では高速道路網が完全に出来上がっており、公共交通の分担率というのは、当時ですと日本の5分の1以下みたいなところがあり、そういったものに頼りすぎた反省として、今、たぶん欧米では公共交通のよさというのが見直されているという風に思っている。欧米水準からいえば、少なくとも、京都の高速交通網は寸断されており、これは高速交通道路網とは言い難いような状況で、ずいぶん欧米からは遅れたものにしか見えないのではないかと思う。しかし、日本の交通網を考える上で、私はやはり日本の交通手段が特に公共交通の発達により支えられてきまして、それもパブリックセクターだけでなく、プライベートセクターでも非常に発達を遂げた歴史がある。こういうことは、私は十分に尊重をして、これからの交通政策にあたるべきであると思っている。

 府としても、公共交通の重要性を考えながら、生活交通の基盤である道路、鉄道、バスなど総合的に整備することが大切だと考えており、JR山陰本線や奈良線、KTR、京都市営地下鉄などの鉄道網、さらには生活交通バスなどの公共交通網の整備・充実に取り組み、国に対しても必要な財源措置を要望しているところ。

 さらに今年度から、渋滞緩和をはじめ、公共交通機関への利用促進を図り、環境への負荷を低減させる交通体系を目指し、交通需要管理推進事業に取り組むこことしており、これの取り組みを通し、国に対し必要な働きかけも行ってまいりたい。

 

生活交通確保、地域交通計画づくりへ、府が積極的役割を果たせ

 

【梅木】つづいて、本府の交通政策について、うかがいます。

3年前、2001年の6月議会で、私は新潟県の取り組みを紹介し、通院・通学など生活交通を確保する「地域交通計画」を市町村ごとに検討するよう提案しました。残念ながら、当時京都府では、府内に何本の路線バスが走っているか、何台スクールバスや福祉バスが走っているか、実態さえ把握しておらず、国と府の補助金の配分がおもな仕事という状況でした。その後、スクールバスや福祉バスの台数の把握やモデル事業の実施など一定進んできました。さらに、今月4日に開かれた、京都交通のバス路線を考える第1回「ワーキング会議」では、「地域交通の青写真を示す」とのことですし、京都大学の中川助教授の講演内容からも、今後の積極的な政策展開を期待したいと思います。

国土交通省も、昨年3月、はじめて「バス交通シンポジウム」を開き、自動車交通局長は「地球温暖化、大気汚染、高齢化などにより乗合バスの果たす役割はますます大きくなっている」と開催の趣旨を語っています。また、昨年11月には金沢市で、第2回「オムニバスサミット」が開かれ、全国から自治体やバス事業者が838人参加して、各地の取り組みを交流しています。基調講演で、岐阜大学の竹内教授は、「すべての市民が市内を移動できることは、基本的人権に属すること」であり、「行政が本気で市民の足を守る計画をつくる必要がある」。そして、「市民の活動範囲は、市町村の境を越えて都市圏に広がっている」ことから、「一つの都市圏がまとまって一つの公共交通政策を立案することが必要」だと提案しておられます。

本府の場合、今年度から広域振興局体制がスタートしましたが、府民の生活交通確保のために、各広域振興局に生活交通の担当者を配置し、市町村の交通計画づくりを支援すること、同時に、広域振興局ごとに広域交通計画をまとめてはいかがでしょうか。知事の考えをお聞かせください。

【知事】公共交通を取り巻く状況は、バス、鉄道とも利用者が減少する厳しい減少にある中で、この度、府中北部の13市町という非常に広域にわたる路線バスを運行する京都交通株式会社が会社更生法適用にいたったことを契機に、今年4月、京都交通株式会社問題にかかるワーキンググループを立ち上げた。ワーキンググループには、公共交通に詳しい学識経験者や先進的な取り組みをされているバス・タクシー事業者など実務専門家の参画も得て、広域振興局の担当者も加わり、府と関係市町が一体となって地域の実情も反映した生活交通の基本的考え方の大枠を取りまとめ、その中で、より便利で、効率的、効果的な生活交通への転換も念頭に、白紙の状態から地域交通のあり方を検討することとしており、まずは中北部13町における、まさに広域的な地域戦略としての議論に全力をあげてまいりたい。今後、これらの取り組みの成果も見ながら、地域に身近な生活の足を確保に取り組む市町村に積極的に支援を行うことにより、府全域にわたり地域の生活交通が住民の立場に立ってより良いものとなるよう努力してまいりたい。

 

生活交通確保への市町村の財政負担の掌握、府の財政支援の検討・強化を

市町村担当者への情報提供、研究・交流の取り組みなど、きめ細かな対応を

 

【梅木】さて、全国的にはこの3年間、通院・通学をはじめ生活交通の確保について、さまざまな実験的な取り組みがすすんでいます。

福島県小高町では、商工会が主体になって「おだかE-まちタクシー」という無線とカーナビを駆使した乗合のデマンドタクシーが走っています。町営バスを走らせるには、年間3,000万円近くかかるけれども、乗合タクシーなら1,000万円でできるという商工会の提案で、商工会がタクシー会社から1時間2100円でタクシーを借り上げ、利用者は30分前までに申し込めば、自宅から目的地まで1回300円で乗車できます。小高町は面積92平方キロ、人口1万4,000人の町で、園部町より一回り小さな町ですが、遠い人で通院のために2700円かかっていたタクシー代が、300円ですむこと、乗合タクシーの中で新しい友人ができ、外出が楽しくなったなどと好評です。乗車人数も当初1日80人だったものが、現在では120人から130人に増え、町の負担は昨年度920万円で済んでいます。帰りは馴染みの商店で電話を借りて、タクシーを申し込んだ後、商店街で買い物をするそうです。オペレーターとして商工会は新規職員を3名、採用しており、生活交通の確保と同時に地域経済にも貢献しています。

京都府内でも、スクールバスの混乗や福祉バスの活用など、実験的な取り組みが様々にすすんでいます。市町村の担当者のみなさんに電話でお聞きしたところ、府への要望の第一は財政的な援助です。ところが、交通対策課は、各市町村の財政負担の状況を、把握していません。地方課の数字はありますが、部分的な数字であり、民間バスへの援助、町営バスの経費、スクールバス、福祉バスの経費などすべてが把握されているわけではありません。これでは有効な生活交通の確保策は検討できません。まず、財政負担の全体像を把握し、従来型の赤字バス路線への補助だけでなく、必要な財政支援を検討、強化すべきです。

その他にも、市町村担当者は全国的な取り組みなどを知る機会がない、近隣自治体の担当者とも交流の機会がないとのことでした。府として、市町村担当者の研究・交流の機会を設けてはいかがでしょうか。

また、住民の自主的な取り組みも広がっています。亀岡市畑野町では、市中心部の病院まで、バス代が往復2000円もかかることや、高校生の1カ月間の通学定期代が2万7,000円もかかることから、住民有志が手弁当で「夢バス」を運行しはじめました。府内各地でこのような取り組みが広がっています。安全確保の点からも、本来公的な運行が望まれますが、自主的な取り組みへの公的支援も課題となっています。府としてまず、このような住民団体の相談窓口を設置し、実態に即した財政支援の仕組みを検討、具体化すべきと考えますが、いかがですか。また、京都府でも交通問題のシンポジウムなどを開催し、民間バス事業者の参加も得て、市町村担当者、NPOや住民団体の創意的な力を引き出して、生活交通確保、地域交通計画をつくりあげる、そのイニシアチブを府が持つべきであります。知事の考えをお聞かせください。

【企画環境部長】生活交通の確保については、府としては、過疎地域等における住民の足の確保を行うため、これまでから市町村等が運行するバスに対して、補助してきたところ。その際、既存資源の有効活用を行う観点から、スクールバスや福祉バスへの一般住民混乗の導入を働きかけてきたところで、すでに府内6市町において実施されているが、これらについても交付税措置額を超える経費は府の補助対象となる。また、昨年度、市町村が新たな生活交通確保の取り組みを行う際に、検討会の設置、住民ニーズの把握、さらに実証運行等も対象とする補助制度を創設するとともに、これまでの市町村直営に加えて地域住民が運行主体であるバスについても、市町村が補助する場合については府も支援してきた。さらに、これまでから市町村に対し、生活交通に対する先進的な取り組みの事例紹介等を行ってきたところだが、住民の方の相談も含め、生活交通の確保における市町村の役割はますます重要となることから、府としても府生活交通対策地域協議会や今回設置したワーキンググループも活用し、先進事例の情報提供など市町村支援に努めている。

 

電子府庁づくり「効率化」を住民福祉の向上、個人情報保護に優先させることは許されない

 

【梅木】次に、電子府庁について質問します。

5月12日の京都新聞夕刊に、「電子府庁」実現へ始動という記事が掲載されました。総務部長は、「電子化によって内部コストを削減」し「新しい行政の業務スタイルを京都から示したい」「全国の自治体のモデルとなる世界最先端のシステムを構築したい」と大変な意気込みですが、総務省の情報政策企画官として電子自治体づくりに邁進された総務部長が、京都府をフィールドとして電子府庁を実現しようという意気込みはわかりますが、「全国のモデル」だとか「世界最先端のシステム構築」など、先を争うことが府民の利益になるのでしょうか。

山梨県では、県内の全市町村が参加して、総合事務組合をつくり、住民票や印鑑証明、所得証明等の交付申請をインターネットで受付を行い、コールセンターでは住民や企業からの電話や電子メールによる問い合わせに、民間企業のオペレーターが対応しています。札幌市など多くの自治体で民間委託がすすんでいます。政府のIT戦略本部は「E―JAPAN戦略U」で、「電子化にあたって可能なものは民間委託を原則とする」としており、「電子化」と同時にアウトソーシング(外部委託)をすすめようとしています。

効率のみを追求し、「民間委託を原則」とする自治体の電子化は、大問題です。ましてや、行政に蓄積されている市民の個人情報を民間に委ねることは許されません。460万人ものヤフーBB加入者の個人情報が漏れた事件では、インターネットカフェから、いとも簡単に情報を抜き出したというではありませんか。そのほかにも警察の捜査情報が流出する事件など相次いでいますが、コンピューターのセキュリティーに完全ということはありません。効率化を住民の福祉の向上や、個人情報保護に優先することは許されません。

ITは人類の未来を豊かにする可能性をもった道具であり、自治体の業務においても有効に活用されるべきです。しかし、単純に「スピードアップだ」「効率化だ」と先を急いで、個人情報が漏れたり、ITの導入そのものが目的化し、肝心の行政と住民の関係が、非人間的で冷たい関係になったのでは、何のためのITかということになります。また、電子府庁の推進で、IT化に対応できない中小零細業者が不利な扱いを受けることはありませんか。お年寄りなどITになじめない府民に不便を押し付けることにはなりませんか。先を競うのではなく、慎重の上にも慎重を期すこと、ITを活用することで、住民の自治の力が高まり、住民の暮らしが豊かになることが、目的であることを忘れてはなりません。

住民自治の前進という観点から、電子府庁を推進する意義について、また個人情報の保護について、さらに「世界最先端」を競うことの意味について、総務部長の見解をお聞かせください。

また、コンピューター関係の契約は「地方公共団体の物品又は特定役務の調達手続きの特例を定める政令」で随意契約が認められているとはいうものの、本府のコンピューター関係の契約を、京都府公報から拾い上げてみたところ、昨年度だけでもおよそ20億円もの随意契約がおこなわれており、そのほとんどがIT大手企業あるいは、その関連会社です。

電子府庁の実施に当たって、随意契約が妥当かどうか、業務委託先や契約金額が妥当かどうかなどをチェックするシステムが必要だと考えますが、どのように考えておられるかお聞かせください。

【総務部長】IT、すなわち情報技術は、府民の皆様との情報共有や行政運営の効率化などのために非常に有効な手段であることから、従来より、ホームページや電子メールなどを活用し、府民の皆様との情報のやり取り、施策を企画立案する際の情報の収集、市町村や国との情報のやり取りを充実させるとともに、庁内LANを活用して業務の効率化を進めてきた。一方、今後の地方分権の本格的進展を見据えたときに、国からの法令や通達などに頼るという行政の方向性を反転させ、府民発・府民参画・府民共同の行政運営を行うための体制作りが不可欠なことから、府民の皆様のニーズに迅速かつ的確に対応し、限られた財源と人材を活用して、最大限の効果をもたらす行政のマネージメントを可能とする業務の仕組みづくりを行うために、電子府庁推進プロジェクトが設置され、情報技術を活用した業務改革への作業に着手したところ。

 今後、府民の皆さんの必要とする情報について、即時に対応できるようコールセンターを構築したり、情報公開を充実することを図るとともに、行政の内部業務の状況を点検し、データの二重入力や重複事務を解消することなどにより、業務の見直しを図ることとしている。

 このように、電子府庁の推進は、府庁の内部業務の大幅な簡素・効率化を図ることにより、直接府民に接する業務や企画立案業務への重点化を可能とするとするもので、それぞれの自宅からインターネットを通じた24時間のサービスを望まれる府民の方には、そのようなサービスを提供するとともに、窓口や電話での対応を望まれる府民の方には、さらにその充実を図るなど、従来以上に丁寧な行政運営を行おうとするもの。

 個人情報の保護については、外部からの脅威に対しては、データベースを適切に設計し、ファイヤーウォールなどのセキュリティー技術を活用する一方、内部からの脅威に対しても、職員の守秘義務の再徹底、アクセスログの管理による不正利用の防止を図るとともに、先の個人情報保護条例の改正により、アウトソーシングをした場合にも受託者にも職員と同様の条例の罰則の対象とするなど、先進的なITとルールの徹底により、個人情報の万全の安全を確保することとしている。

 また、システムの開発や運用、調達については、委託先を選定するに当たり、コストだけでなく技術水準などに対して、有識者等による総合的な評価を行い、そのプロセスを公開するなど、調達基準の透明性、公平性を確保した適正な執行を行うこととしている。

 いずれにしても、電子府庁の推進は、住民自治の推進と住民の利益の向上につながるものであると確信をしているので、「全国のモデル」「世界最先端」を目指すという意気込みで全力をつくす所存である。

 

府の公共事業再評価審査委員会

 現地調査、府民意見の聴取など、実質的審議への抜本的改善はかれ

 

【梅木】次に公共事業の再評価のあり方について質問します。

今日の深刻な財政危機を招いた主たる原因が、無駄なハコモノ建設、大型公共事業であることは明らかで、全国的に公共事業の削減、見直しがすすんでいます。先日も国の10年間の公共事業について、事前の見積もりの甘さなどから、事業費が当初額の2倍以上に膨らんだ事業が100件もあること、最高で11・9倍の例も報告されました。どの県でも公共事業再評価や事前評価、事後評価にも取り組み始めています。本府においても6人の委員からなる公共事業再評価審査委員会が設置されていますが、これまで、すべて当局の判断と食い違うという結論はありませんでした。南丹ダムのように98年度の再評価審査委員会では「継続が妥当」という結論が、4年後の委員会では「中止」という結論になる場合も、当局の方針を追認する結果になっています。一方、知事は「私が全面的に事業を見直して、南丹ダムの中止を決めた」と昨年12月議会で、畑川ダムの中止を求めた私の代表質問に答弁されましたし、南丹ダムが必要だと言ってきた自民党も「知事の英断で南丹ダムは中止した」と知事を持ち上げています。裏返すと、「公共事業再評価審査委員会の権威、あるいは存在意義はどこにあるのか」と疑問を持たざるを得ません。

3月10日の再評価審査委員会を私自身、直接傍聴させていただきましたが、この日も、審査結果は当局提案どおりでした。1週間前に資料が渡されるということですが、委員会当日、説明を受けた後に、直ちに審査結果を求めるという運営に問題があるのではないでしょうか。

ダム建設の見直しで注目された長野県の場合、副知事を責任者とする行政内部の公共事業再評価委員会がまず再評価を行い、その検討結果を学識経験者など13名の委員からなる「公共事業評価監視委員会」が吟味し、審査結果を「意見書」や「提言」としてまとめています。昨年度の場合、53件の事業について、通年で審査しています。第1回目に、53件の事業について、行政内部の再評価の結果が報告され、以後毎月1泊2日で4回、現地視察を含めて調査と審議をみっちりと行っています。「意見書」は、継続か中止かだけでなく、改善すべき点などが指摘され、これを踏まえて行政側の再評価委員会が、「対応方針」を検討しています。

また、宮城県では、企画部の行政評価室を事務局に「行政評価委員会」が設置され、県民への情報開示、県民参加による行政評価を行っています。政策評価、大規模事業評価、公共事業再評価の3つの部会があり、公共事業再評価部会は長野県と同じく、通年で現地調査と会議を繰り返し行い、審議結果を意見書にまとめ、当局からも意見書に対する対応方針が提出されています。このような審議が必要なのではないでしょうか。

このような審議に近づけるためには、現在のように、委員会当日、説明後直ちに判断を下すという運営を、まず改めるべきです。また、再評価審査委員会に独立した事務局を設け、現地調査や府民の意見を聴取する機会も設定し、通年で、積極的な審議を行えるよう改善すべきだと考えますが、いかがですか。

【土木建築部長】公共事業の再評価制度は、事業化して10年を過ぎた事業について、事業者自らが事業の点検、見直し、評価を実施し、その透明性、客観性を確保するため、第三者委員会の意見を受けるもの。平成15年度には、計5回の委員会を開催し、38件の事業を審査し、事業中止が2件、一部中止が1件、さらに継続する事業についても、様々な見直しを行っており、再評価は公共事業の早期完成やコスト縮減などに極めて大きな役割を果たしてきていると考えている。

 委員会の運営にあたっては、透明性の確保に最大限努め、委員会の会議や資料の公開はもとより、年度の早い時期に審査対象事業の一覧を公表して府民の皆様方から意見の募集を行い、各委員会の開催約1週間前には事業概要を公表して改めて意見募集を行い、委員には必要資料を事前送付するとともに、必要に応じ現地調査や直接の住民意見の聴取を実施するなど、審議の充実と府民の皆様の意見の反映に努めている。

 今年度からは、再評価に加え、事前評価や事後評価についても第三者委員会で審議いただくなど、今後とも公共事業の評価制度のいっそうの充実・改善を図ってまいりたい。

 

生活交通確保対策でも、IT問題でも、肝心要の問題に答えるべき

 

【梅木・再質問】見事に私の聞きたいことには答えていただいていないなというのが印象です。私、積極的に提案をさせていただいているんです。例えば、生活交通の確保の問題について、この間のワーキング会議の資料を見せていただきました。その中で、中川先生も、利用目的に応じた生活交通の確保策ということで、私がいろいろ勉強してきて、提案もしていることと同じようなことを書いてあって、その一番下に「行政投資の費用対効果も参考に、地域実態に応じて選択をする」というふうに書いてある。そうしたら、費用対効果を考えようとしたら、その地域に市町村がどれだけの行政的な投資を行っているのかということをせめて把握する必要があるのではないかということを、私は質問をしているわけです。それについて把握するのかどうか、そのことはひとつお答えいただきたいと思います。

知事は高速道路の話をされましたけれども、アメリカでは高速道路が中心だとか、いろんなところが反省をしてきて高速道路を一部取り崩す、ソウルでもそうでした。私も見てきましたけれどもね。そうやって、生活交通をどう確保していくのかということが、地球温暖化防止のために今必要になっていると。中国やインドでどんどんマイカーがふえてきているわけでしょう。そのときに、日本はどうするのかということを私は問うているんです。高速道路偏重から、公共交通優先、地球温暖化防止というところにどう移っていくのかということについての考えを聞いているんです。そこのところを、アメリカのことを話して、それで答弁になっているように思うのはおかしいと私は思います。

それから、ITの問題についても心配されている点を私は質問したわけです。私自身も、ITは便利だと思うし、インターネットも活用させていただいております。だけれども、そこでどうやって個人情報を保護するのか、お年寄りの皆さん方が取り残されることがないのか、中小企業の皆さんが対応できなくて取り残されることはないのか、そこのところをどういうふうに府として見ていくのかということを質問しているのに、とうとうと自慢げに話をして、何も私の質問に答えていない。そういう意味で具体的に質問しますけれども、知事は前に、民間委託について一定の指針をつくるというふうに答えましたね。ですから、その点についてはシステムづくりということで、チェックするシステムを何か指針なりをつくるか、アウトソーシングについても指針をつくるか、そういう方向について総務部長はどう考えているのか。この点をお答えいただきたいというふうに思います。

そのほかのことについては、また委員会で質問させていただきたいというふうに思います。

【総務部長】再質問の件だが、先ほども述べたとおり、電子府庁の大きな意義は内部業務を簡素化・効率化することによって、直接府民の皆様に接する業務などに重点化をはかるということであるので、オンラインでのサービスを望まれる方には、そういう道筋を新たに設けるし、窓口でのサービスを望まれる方には、さらにその充実をはかるということなので、先ほどお年寄り等のデジタルデバイドの話をされたが、それにも十分に対応する方向で進めている。個人情報の保護については、これも先ほど述べたとおり、外部からの脅威に対しては、もっともっとデータベースの設計自身を盗まれにくいものにする、あるいはファイヤーウォールなどのセキュリティー技術を作っていく。内部からの脅威についても、様々な対応を取っていくことになります。それから、アウトソーシングそのものは、民間への業務の外部委託はITだけに限るわけでなく、全体の話になるので、とくに電子府庁を進める上では全体の流れの中に沿って必要なものを適宜・適切にやることになるが、先ほど申したとおり、個人情報については、委託先の職員の方も(府)職員と同様、守秘義務等が、情報の収集に対しては、罰則もかかっているので、そういう形で、先進的な技術と同様、ルールの徹底によって個人情報の安全確保には万全をつくしてまいりたい。

【企画環境部長】生活交通については、府としては、生活交通の主体、主体的に生活交通を守る第一線にいるべき市町村、この市町村に対する補助を中心に補助体系を組んでいるし、また、そうあるべきと考えている。当然のことながら、市町村における生活交通の展開実態、それを前提にした補助という前提で、スクールバス、あるいは福祉バス等に対する補助を回答させていただいた。