2004年6月定例会を終えて(談話)

 

2004年7月1日

日本共産党京都府会議員団

団長  松尾  孝

 

1、京都府議会6月定例会は、6月22日に閉会した。今議会には、「福祉のまちづくり条例の一部改正」「府税条例の一部改正」など条例関係が7件、その他が5件が提案され、最終日に追加提案された教育委員会委員と収用委員会委員の2件の人事案件を含め計14件の議案が提案された。わが党議員団は、「老年者控除の廃止」を含む「府税条例の一部改正」と生計同一の妻に対する府民税の均等割非課税措置廃止が含まれた「府税条例の一部改正の専決処分」の2議案に反対し、他の議案には賛成した。

 

2、今議会は、国会での年金法案の強行採決、イラクへの自衛隊派兵と多国籍軍への参加、有事関連7法案の強行など、日本の進路と国民にとって重大な事態が進行するなかで開かれ、憲法や府民の命とくらしに対する知事や各政党の姿勢が厳しく問われた議会であった。わが党議員団は、積極的な論戦で、知事の政治姿勢をただすとともに、府民の暮らしと営業を守るため奮闘した。

 

3、自衛隊のイラク派兵について、知事は明確な態度の表明を避けるだけでなく、今までの姿勢さえも大きく後退させた。2月議会で、知事は「戦闘活動が行なわれていないところが前提。それが崩れるようなことがあれば勇気ある撤退を」と答弁したが、今回、わが党議員の「今こそ、平和を取り戻すためには自衛隊は撤退せよと言うべき」との質問に対し、「悪化しているという状況は新聞報道にもあるので、国はきちんと国民に対し説明責任を果たすべき」と答弁した。これは、イラク全土が戦闘地域であることが明らかになっているにもかかわらず、撤退を求めず、知事として国にものが言えない姿勢を露呈したものであり、厳しく批判されるべきである。

 イラクからの自衛隊撤退を求めて、わが党議員団は意見書を提出したが、他の会派は反対した。さらに、民主・府民連合が「イラクの真の主権回復を」との意見書を提出したが、これは、国連決議と法整備により、「積極的に参画できる環境整備」をめざし、自衛隊の派兵を合法化しようとするものであり、わが党議員団は反対した。

 

4、有事関連7法への態度では、戦争協力・地方自治破壊にどのような態度を取るのかも厳しく問われた。知事は、戦争協力、地方自治破壊の特定公共施設利用法について、国民保護と侵害排除のための措置が「円滑かつ効果的に行なわれることを目的にしたもの」と積極的に評価した。また、国民保護法制について、わが党議員は、憲法違反の人権蹂躙法案であることを指摘し、元自衛官を職員に採用し、進めようとしているマニュアル作りを中止することを厳しく求めた。しかし、知事は、自らが国に対して積極的に制定を求めてきた経過を述べ、「いかなる誹謗中傷があろうと促進する」と戦争協力体制を積極的に推進することを明言した。

 

5、市町村合併を巡っては、今後さらに押しつけ合併を強行するため、勧告権などの知事権限を強化した新法が自民、公明、民主などによって成立させられた。全国の多くの知事が、この「勧告権」に慎重な態度を表明しているなかで、山田知事は「場合によっては行使する」とマスコミ調査に答えている。このような「合併押しつけ」の姿勢が、今議会の答弁でもいっそう明らかになった。宮津与謝の合併協議会が、事実上の破綻となっているにもかかわらず、知事は「京都府市町村行政改革支援委員会」をテコに露骨な介入を行なってきた。党議員は、宮津与謝の合併協での支援委員の発言や相楽の町長の発言など、事実を示して、合併新法の先取りであるこのようなやり方をあらため、支援委員会を解散することを強く要求した。知事は、「府の仲介をお願いしたいという声が上がっている」「必要な支援をするのは当然」と強弁したが、批判の前に「(支援委員会の助言は)何ら強制を伴うものではない」と答えざるをえなかった。

 

6、今議会では、山田知事自身が、「景気が回復しつつある」と答弁し、与党会派もこぞって「景気は回復基調」「雇用は拡大」と同調、「山田知事の企業誘策や中小企業金融対策、雇用拡大策などが力になっている」と知事を誉めたたえた。わが党議員は、府民の生活実感とは遠くかけはなれた実態であり、小泉政権誕生の2年間で、京都の製造品出荷額は1兆2千億円、21%、従業員も1万6千人余り減少、中小企業や地場産業に大きな痛みが押しつけられていることを明らかにした。そして、わが党議員団は、「地域経済振興条例」の制定など中小企業、地場産業対策の抜本的強化と、広域振興局単位の地域振興計画の策定を強く求めた。知事は、中小企業が厳しい状況であることは認めながらも、「全国でトップの施策を総合的に実施している」と答えた。雇用問題では、4万人の雇用拡大の計画が、常用雇用ではなく臨時雇用であることが明確になり、与党議員からも「常用雇用の拡大が必要」との発言が出るなど、知事が言うほど楽観的な事態ではないことも示された。

 

7、府民の要求と議員団の論戦のなかで、新たな前進も勝ち取られた。

府営水道の過大な水需要予測の見直しについて、知事は、「学識経験者等による府営水道水需要予測検討委員会を設置」した事を明らかにした。わが党議員団は、一貫して過大な水需要と府営水道の水利権の見直し、ダム事業からの撤退を要求してきたが、今回の委員会の設置は、その指摘と公共事業の見直しの流れを無視しえなくなったものである。

また、党議員は、地域の切実な問題として、開発業者の倒産により管理不可能となっている丹波町下山グリーンハイツの水道問題をとりあげ、府の責任でただちに解決するよう求めた。理事者は、水道管理事業を倒産した業者から町の水道事業組合に引き継がせる旨を答弁し、党議員団は、住民の不安に応え、切実・緊急な要望の解決に尽力した。

府民の足を守る問題では、従来型の赤字バス路線への補助だけでなく、必要な財政支援を求めた党議員の質問に対して、「市町村における生活交通の展開実態、それを前提とした補助」と答弁し、スクールバスや福祉バス等に対する補助などの実施を回答した。

 

8、財政危機を口実に、今年度多くの府民サービスが切り捨てられ、府民のくらしと願いにそむく事態が進んでいる。今議会で、党議員がとりあげた「宇治児童相談所の安心・子育てテレホン事業の廃止」は、佐世保市の小学校での小学生の同級生殺害事件など、子育てをめぐる環境の悪化と関心が大きく広がっているにもかかわらず、府民の願いに背をむける冷たい府政の実態を如実に示すものであった。9月末で廃止が予定されている「子育て・安心テレホン事業」は、毎年1000件以上の相談があり、児童虐待の防止などに大きな役割を果たしてきた。党議員は、相談の中身や体制にもふれ、全国にも紹介された優れた事業であり、廃止を撤回せよと迫った。しかし理事者は「それぞれの役割分担と市町村の連携強化の中で適切に処理」と全く実態に目をつぶった回答に終始し、府民の切実な要望に冷たく対応する姿勢を変えようとしなかった。

 

9、請願は、「自衛隊はイラクから撤退をすることを求める請願」17件、「障害を持つ全ての子どもの豊かな発達を保障する特別な手立てに関する請願」「アメリカの輸入牛肉に対する全頭検査方を貫き、食の安全を守ることを求める請願」の計21件(いずれも党議員のみ紹介)が提出されたが、わが党議員を除く与党会派の反対で不採択となった。

意見書は、わが党は「イラクからの自衛隊の撤退を求める意見書」「WTO農業交渉に関する意見書」「アメリカ産牛肉の輸入再開に関する意見書」「介護保険・介護予防対策の充実を求める意見書」の4意見書を提案したが、いずれも与党会派の反対により否決された。

アメリカ産牛肉の輸入再開問題は、国民の安全にとって極めて重要な問題であり、当然採択されるべき意見書であったが、民主・府民連合や公明党も反対した。議会終了後、アメリカで連続してBSE感染の疑いのある牛が見つかり、反対した与党会派の姿勢は厳しく問われている。

鳥インフルエンザに関する新たな融資制度等を求める意見書が、わが党議員団の努力で委員会提出となり、全会一致で採択された。これは、移動制限区域外の風評被害を受けた養鶏業者への損失補てんやJA 組合員以外への融資の改善を国に求めるなど、被害を受けた府民の要望を反映したものである。

 

10、自民党は、会議中の文教常任委員会で、教育基本法の改正を求める意見書提出の意向を表明した。これは、憲法と教育基本法の改正を狙う自民党の全国的な動きの一環であった。これに対し、教育基本法を守ろうとする府民や団体は、各会派に対して提出させない要請活動を行なった。結果的に、教育基本法改悪に対する府民の不安と運動が反映し、与党会派の調整が成功しなかったことにより、自民党は意見書の提出を断念した。

 

 6月議会は、参院選公示直前の状況の中で、各会派・党派の本質が極めて鋭く問われる議会であった。わが党議員団は、府会での論戦を受け、日本の政治の本当の改革が問われるこの参議院選挙で、比例代表と選挙区での勝利と日本共産党の前進を勝ち取るために、全力をあげるものである。