本庄 孝夫議員(日本共産党
日本共産党の本庄孝夫です。日本共産党府会議員団を代表して、知事ならびに関係理事者に質問します。
いま、政府がすすめる「地方分権」「三位一体改革」の名によって、地方自治・住民自治破壊がすすめられています。これを許さず、真の地方自治を確立するのかどうか、そして、「自治体が住民の暮らしと福祉を守るという本来の役割」を果たすのかどうかが問われています。
山田知事が、「改革ナビ」をもとにすすめられている改革とは、本当に地方自治を前進させることになるのでしょうか。「自立と自助を求める」「要望型の行政から受益者負担型の行政に」などと主張し、府民の暮らしを守る組織としての、自治体の役割と責任を放棄する方向に、府政を変えようとしているのではありませんか。
議会軽視、理不尽な洛東病院の廃止方針は許されない
府の責任放棄のやり方に厳しく抗議し、その撤回を求める
【本庄】その典型の1つが、いま大問題となっている府立洛東病院の廃止問題です。
府立洛東病院は、1876年(明治9年)の創設以来の歴史を受け継ぎ、1973年(昭和48年)に「脳卒中をはじめとする循環器系疾患の予防、診断、治療から、医学的リハビリテーションまでの一貫した治療を行なう病院」として、先駆的な整備が行なわれ、京都府のリハビリ医療のさきがけとして、30年以上の経験と実績を持つ府民の財産であり、地域のかけがえのない病院でもあります。
そして京都府は、洛東病院の将来方向について、99年9月議会で、「京都府内におけるリハビリテーション医療の中核として、整備の方向を検討する」と答弁し、昨年の2月議会でも「来年度から病棟再編による、新しいリハビリ病棟の新設などの充実・強化を図り、特色ある病院づくりをすすめていく」と答弁してきました。
そこで伺います。知事は9月10日の記者会見で、「府立病院のあり方検討委員会の『意見』を尊重し、今年度末に廃止する方向」と早々と打ち出しました。これは、この議会答弁をくつがえすもので、議会軽視ではありませんか。先ず、お答えください。
「何歳になっても『生きる』ということは、息をしているというだけでなく、普通の生活をしながら『生きる』ということです」。これは、洛東病院の存在意義をしっかりとらえた患者からのメッセージです。
夫が脳卒中で半身不随となり、洛東病院でリハビリを受けられた患者の家族は、「洛東病院のリハビリ病棟は人気があり、入院まで1か月待ちました。療法士さんらの献身的な訓練のおかげで、車椅子で基本的な生活ができるようになり、恩は一生忘れません。毎朝着替えの訓練をしてくれるなど、民間では絶対にできないことばかりです。素晴らしい病院をもっと発展させてほしい」と語っておられます。
いま、理不尽な「廃止方針」に、患者はもちろん、家族や職員、府民の中に不安や疑問、怒りが広がっています。知事は、この患者や家族の声にどう答えるのですか。
今回の問題点の第1は、「結論先にありき」の異常ともいえるやり方で、洛東病院の廃止がすすめられていることです。この7月20日に突如、「府立病院のあり方検討委員会」を立ち上げ、直後の7月26日、8月17日、9月6日のわずか3回、6時間ほどの議論で「廃止」に向けた検討が急ピッチですすめられました。さらに並行して、8月20日には「外部監査報告」が、当初、監査人も「9月中旬に中間まとめ」としていたにも関わらず、盆休みも返上し、突貫作業で出すという異常ぶりです。これを受けて9月6日、現在地での存続は適当とはいえず・・府立医大への重点化をはかる」という、「あり方委員会」の最終意見が取りまとめられ、10日に知事が、この「意見を尊重する」と廃止の方向を表明されました。この間、わずか1ヵ月半です。
第2は、京都府のリハビリ政策が明らかにされていないことです。京都府は、リハビリ専門医などの声を聞かれたのでしょうか。また「リハビリ医療検討委員会」が開かれたのでしょうか。外部監査でも、「より高い役割発揮へ、府のリハビリ政策の真面目な議論がされることが前提である」と明記され、「あり方検討委員会」でも、「京都府が今後展開しようとするリハビリテーション施策について、全体ビジョンを明らかにするように」と求めているではありませんか。また、4年前の外部監査報告では、「急性期、回復期、維持期の分野において、脳血管、心臓、呼吸器、骨関節疾患、外傷などにも対応できる機能を整備し、訪問、在宅リハビリやスポーツリハビリを含めた『総合リハビリ』病院をめざすなど、時代のニーズに対応した施策を講じるべき」との検討方向が打ち出されているではありませんか。
そこで知事にお伺いします。4年前の外部監査、府議会の答弁にもとづき、この間、京都府はどんな努力や取り組みをされてきたのか、明らかにして下さい。府がすすめてきたのは、結核病棟と精神科外来の廃止、医師の頻繁で短期間の異動、救急病院指定の取り下げや研修医派遣の中止、そして施設・設備の老朽化の放置ではなかったでしょうか。外部監査でも、「担当医師が猫の目のように代わる体制にあっては、適正な医療供給体制にあるとはいえない」と指摘されたように、府民・患者の要求に背を向けた「立ち枯れ政策」を続け、経営困難の原因をつくってきた責任をどうお考えですか。お答え下さい。
さらに、知事の記者会見では、府立医大の外来病棟等の整備計画を明らかにされましたが、着手に2年、整備に5・6年、オープンは7年後の平成23年度の予定です。京都府のリハビリ政策も出されていない段階で、洛東病院の「来年度廃止」を決めれば、30年にわたって培われてきた洛東病院の、リハビリ医療を中断させるだけにとどまらず、京都府のリハビリ医療の重大な後退を招くということです。しかも、府立医大の機能整備は、急性期リハビリと地域リハビリ支援だけです。府立医大の現在のリハビリは、整形外科を中心に行なっており、これまでの洛東病院の回復期リハビリ中心の機能も担えないし、「総合的なリハビリ医療」とはいうものの、小児、難病、脊椎損傷、高次脳機能障害などの政策医療を、府立医大に期待することは不可能ではないでしょうか。お答え下さい。
この洛東病院問題に見られるやり方は、知事のいう「住民発・住民参画・住民協働」とはほど遠いもので、府民や関係者の声も聞かない官僚的体質を示すものです。また、住民の命と健康を守るという、自治体の責任を放棄するものです。わが党議員団は、こうしたやり方に厳しく抗議するとともに、その撤回を求めるものです。
【知事】この間、府議会ではリハビリ医療の中核施設化、時代のニーズに対応した対策など、さまざまな提言や意見をいただいた。こうした意見や平成11年の包括外部監査報告をふまえ、洛東病院のあり方についてさまざまな検討を行なうとともに、内科系、外科系を総合したリハビリテーション実施にむけての整形外科外来の開設や、病棟再編による回復期リハビリの実施などリハビリの充実など地域医療の充実を図るとともに、厳しい経営環境に対処するため、施設の老朽化に対応してできる限りの改修や、RI検査システムなど高額医療機器の設備投資を行なう一方、府立医大医療センターとの連携による医師確保に努めつつ、収入確保の観点から、外来診療時間の延長や、地域連携懇の設置による関係医療機関との連携による患者の確保、費用適正化の観点から人員配置の見直しや業務の一部委託化などさまざまな経営改善策を講じてきた。
しかし、洛東病院が立地する
このため、洛東病院のあり方についても再度包括外部監査を実施するとともに、府立病院のあり方検討委員会での幅広い見地からの検討をお願いしているが、その結果、洛東病院の政策医療性はほぼなくなっていると主張され、民間医療機関とも競合している。また現在の施設を建て替え、リニューアルする場合には約50億円という巨額の投資を必要とする一方、政策性、政策医療性とあわせて考えると府立病院として運営することは疑問である、今日のリハビリ課題に対応するには、高度の医療機能と総合的な診療体制を有し、教育、研究機能と、人材養成の機能を併せ持つ、大学病院でこそ効果が期待できるとし、府立医大に大きな役割を求めることなど多角的な検討をふまえてご意見をいただいた。
こうしたなか、今般府立医大についてリハビリ医療の充実も展望し、外来診療棟整備計画設計にかかわる補正予算を提案させていただき、また洛東病院については廃止する方向で検討させていただきたいという考え方を示しまして、あわせて審議いただきたいと考えている。
府立医大のリハビリ医療については京都府でしか実施できない政策医療をめざし、洛東病院におけるリハビリが脳血管神経疾患等、内科系を中心としているのに対し、再生医療等高度医療に支えられた内科系、外科系をあわせた小児や脊椎損傷も含めた急性期リハビリを平成17年4月から実施する予定である。また老人保険や介護保険などリハビリのニーズが多様化する中、府立医大に集積された人材を活用してリハビリ人材の再教育など府内における急性期から回復期、維持期に至る総合的なリハビリの充実・発展を期するようにしたい。
なお、洛東病院を廃止する場合には、何よりも現に洛東病院を利用されている患者さんが必要な医療を継続して受けることができることが大前提であり、府としても最大限の配慮が必要と考えている。今後、患者さん一人一人のご希望、ご意向を丁寧にお聞きし、周辺医療機関等との連携をすすめ、地域医療の確保をはかりながらご理解を求めるとともに府議会の審議を賜りながら検討をすすめて参りたい。
廃止が決定していないもとで、患者を追い出すようなことはやめるべき
【本庄・再質問】洛東病院廃止問題における議会軽視の件ですが、さきほど知事は、「府議会のご理解を得ながら」というふうに言われました。そしてまた、患者のみなさんに対しては「廃止する場合には」丁寧に対応する、という趣旨の答弁をなさいました。そうしたら今、すでに洛東病院では、10日の知事の記者会見を受けて、病院長名で「廃止前提」の文書がだされ、入院患者に「配布」、外来患者には「待合掲示」、そして、関係医療機関には「郵送」で出されています。もし、まだ議会で結論が出されていない、そして廃止が決定していない、こういうことであるのなら、早々と患者を追い出すようなことはやめるべきではないか。そういう点で議会軽視ではないのか、このことを重ねてお聞きするものです。
【知事】いま申し上げたように、まさに議会にもおはかりし、廃止の方向で検討を進めさせていただいているので、これから審議をいただきながらそういった形を確定させていきたいと考えている。
住民不在のやり方は、市町村合併押しつけにも共通
【本庄】このような住民の声を尊重しないという姿勢は、市町村合併にも現われています。
京都府は、この間、「合併は市町村が決めること」と言いながら、実際には「小規模自治体は生き残る道はない」と、強引に合併圧力をかけてきました。合併新法に先駆けて府の「支援委員会」を設置するなど、総務省の先を行こうとする知事の姿勢は、いまや全国的にも突出した異常なものとなっています。この点でいくつかの問題点について伺います。
第1に、まちの将来を決めることについて、住民参加がどれだけ保障されているのかという問題です。丹後旧6町の住民投票条例を求める署名は、有権者の約4割、大江・三和・
第2に、住民の声も聞かずにつくりあげようとする自治体が、どういうものであるのかも明らかになってきています。それは京丹後市の例に顕著です。 京丹後市では、合併前のハコモノ建設などの結果、旧町が持ち寄った基金が約17億円にまで激減。逆に地方債残高は、合併協議でいつも比較にあがった同規模の
問題は、それだけではありません。例えば、
知事は、この間、「公の責任」を問い直し、「住民自らの受益と負担、責任のもとに選択し実行することが原点」、その上で「住民自らの手でできないことは行政に付託する」と強調されていますが、こうした住民と行政の役割分担論は、結局、「行政に甘えるな」と、本来の自治体の役割を放棄する方向にすすめようというのではありませんか。知事は、行政の広域化・大規模化による弊害、公的責任の後退についてどう考えますか、あわせてお答え下さい。
【知事】合併が市町村の住民の意思をふまえて行なわれるべきものであることは繰り返し申し上げてきた。この住民の意思決定についてはわが国の地方自治制度は代表民主制を根幹としており、合併の是非についても住民から選ばれた首長や議員が十分に議論を尽くして判断を行なう仕組みとなっている。これを補完するものとして条例制定の直接請求手続き等が地方自治法に規定されているが、条例の制定改廃は基本的に当該地方公共団体の議会の権限とされている。議会の権限とされているものについて、まさに議会が判断されていることについて、その判断を尊重すべきことは、これは地方自治の根幹ではないかと思います。住民サービスについて、合併に際して住民のニーズや厳しい財政状況などを総合的に勘案し、将来のまちづくりの展望を確かなものとするため、関係市町村間で異なる事務や施策をどのように統合すべきかと調整が行なわれますが、その結果抑制されるサービスもあれば充実されるサービスもあります。京丹後市の場合も同様であるのに前者のみを取り出して議論するのは、私はフェアな議論だと思わない。大体そうしたことも総合的に検討されたうえで合併を決断された地元の判断を尊重すべきことは、地方自治から言を俟たないと思う。
法定協議会が休止された地域に残っている府の職員は引き上げるべき
【本庄・再質問】先ほど知事は、合併の手続きは議会の権限、判断に基づくものだ、というふうにお答えいただきましたが、例えば宮津・与謝地域では、いま法定協議会が休止され、各市町から派遣されていた職員は帰った状況であります。ところが府の職員2名はまだ合併協議会におられます。これは府が、1市4町合併を何がなんでもすすめたいということではないでしょうか。市町村の自主的判断というのなら、この2名も引き上げるべきではありませんか。こういうやり方こそ、改めるべきだと申し上げております。お答えください。
【知事】法定協議会については、すでに解散したのではないかと思っている。そう、休止をした。職員のほうは現在、振興局のほうに引き上げて、そこで振興局の業務を行っているので、指摘の点は当たらない。
国の責任放棄、地方切り捨てである地方交付税大幅削減にきっぱり反対せよ
【本庄】関連して、地方財政問題についてお伺いします。
地方自治、住民自治を守るうえで、いま自治体関係者に求められていることは、三位一体改革と称して、地方財政を切り捨てようとする国のやり方に、きっぱりと反対することです。
いま政府は、地方の財源である地方交付税を大幅に削減してきています。8月末の経済財政諮問会議では、民間議員から交付税制度の抜本改悪案が提出されましたが、そもそも経済財政諮問会議は、「地方の国への過度の依存を改め、その自立性を高める必要がある」と強調してきました。地方交付税については、その「財源保障機能は過大」だとして、バッサリ削減しろと提案しています。また、これにより自治体間の格差が生まれても、それは「多様な個性と競争の活性化」につながるとまで言い切っています。
こうした地方交付税の大幅削減は、府内の自治体に何をもたらすでしょうか。
いまこそ、地方交付税の削減でなく充実強化をもとめる、自治体関係者あげてのたたかいが必要と考えますが、知事はいかがお考えですか、改めてお示し下さい。
【知事】地方交付税について、地方税とともに市町村の安定的な行政運営を担保するものであるにもかかわらず、昨年度の予算編成時に突然臨時財政対策債を含めて12%もの大幅な削減がなされ、各市町村における予算編成作業に大きな混乱が生じた。このため私は府内市町村長とともに本年2月には地方交付税等の大幅削減に対する緊急提言、また本年5月には三位一体の改革に対する意見書を国等に提出するとともに、さらに全国地方六団体として本年5月地方財政危機突破に関する緊急決議を行なって、まさに自治体関係者が一体となって国に対し強力な運動を行なってきた。こうした動きを反映して、本年4月のいわゆる麻生プランや6月の「骨太の方針2004」おいては、地方税、地方交付税等の一般財源総額の確保について一定の方針が示された。今後、三位一体の改革のなかで進められる税源移譲にともない、税源の偏在により財政力格差が拡大することも想定されることから、地方団体の財政運営に支障がないように必要な交付税総枠の確保を求めていくことは当然。
義務教育費の国庫負担金廃止は、教育の機会均等、水準確保の投げ捨て
知事はあくまで「やむをえない」と推進の立場に立つのか
【本庄】また、義務教育費の国庫負担金の問題です。地方6団体の削減案では、国が教職員給与の半額を負担している「義務教育費国庫負担金」について、2006年度までに中学校分8500億円を削減する。2009年度までに小学校分を含めて全廃するとしています。
しかし、これを廃止すれば、自治体の多くが財政難に直面しているもとでは、教育予算が削られ、教育水準の低下や自治体間格差が生まれ、憲法と教育基本法に明記された教育の機会均等の保障、全国的な教育水準の確保はできません。
ところが、知事は、記者会見で、義務教育費の国庫負担金廃止について「やむを得ない」と発言されました。しかし、削減・廃止の代わりに税源を移譲すると言っても、もともと地方自治体の財政力には大きな格差があります。40道府県の税源移譲額が国庫負担金を下回り、減額となるではありませんか。日本PTA全国協議会が、「義務教育費国庫負担制度の堅持」を求める、緊急アピールを採択されたのは当然のことであります。
そこで伺います。憲法26条は、国民が「等しく教育を受ける権利」を持ち、「義務教育はこれを無償とする」と述べていますが、知事は、地方自治体のもつ財政力の格差が、義務教育の格差に直結するような、今回の国庫負担金の削減・廃止について、あくまで「やむを得ない」などと推進の立場に立たれるのですか。また、憲法の要請する教育の機会均等、水準確保、無償制の原則が否定されてよいとお考えなのですか。明確にお答え下さい。
【知事】三位一体改革とは、単に地方の軽減や財源をめぐる国対地方の綱引きではなく、より府民の身近なところで、政策決定、税金の使途決定が行なわれ、府民の意向にそった行政が行なわれるようわが国を分権型社会に改革するための改革である。そのためには、国、地方を通じる非常に厳しい財政環境の中で、安定した行政を続けることができるよう補助金改革や税源移譲等が不可欠だと考える。義務教育は憲法上国の責任であり、財源を含めて国が責任を持って行なうべきものであることは当然である。補助金改革に当たってもまずは国が政策的に奨励する補助金を一般財源化、地方の裁量を生かすことを優先すべきであり、率先して義務教育の一般財源化を求めてきたわけではない。しかし、16年度当初予算における京都府の義務教育費約1400億円弱ですが、そのうち国庫負担金は半分以下の503億にしか過ぎない。すでに義務教育費国庫負担金だけで義務教育の水準維持をできるような状態にはない。しかもこの2年間で義務教育の国庫負担金は二割近い100億円も減少している。私はどうして小中学校の先生の給料の半分だけ、それも退職金や共済負担金を除いたものを確保すれば教育の水準確保、均等がはかられるのか理解はできない。このような中で、私どもは交付税も300億減額される中で義務教育の水準維持に全力をあげてきているのは地方だと思っている。京都府でもさらに上乗せして京都式少人数教育の実施など義務教育の充実を独自に進めてきた。義務教育の議論は単に国庫負担金の議論ではなく、京都府で言えば1400億円近い義務教育の財源をいかに確保するかというもっとスケールの大きい問題。私はそのなかで少しでも安定的に財源確保を図るためには、苦渋の決断ではあるが分権型社会への移行という基本を総合的に考え、今回の3兆円の削減案に賛成した。教育をうける権利や、義務教育を無償にするといった憲法上の要請が保障されるべきことは当然であり、法令で国が基準を定めた上、国は必要な財源を総合的に確保すべき。このため地方六団体の国庫補助負担金に関する改革案において国は義務教育における地方公共団体との適切な役割分担をふまえ、その責務を法律上明記するとともに、都道府県間において教育費の水準に著しい格差が生じることがないよう法令に明記するなどの措置についても考慮すべきとしている。私は負担金と水準の議論を混同すべきではないと考える。
憲法改悪ではなく、9条を生かして世界に働きかけることこそ必要
【本庄】つぎに、戦後史の中で最も危険なものとなっている、憲法第9条「改正」をめぐる問題です。
自民党、公明党が支える小泉内閣は、戦後初めて戦闘が続く地域に実戦部隊を派遣し、さらには歴代内閣の解釈改憲をも投げ捨て、多国籍軍への参加まで強行しました。
そればかりか、かねてから憲法9条の改定を公言してきた小泉首相は、「集団的自衛権を行使できるように憲法を改正すべきだ」と発言をエスカレートさせ、民主党岡田代表も「憲法を改正して、国連決議があれば、海外での武力行使ができるようにすべき」と述べました。こうした背景には、米国のパウエル国務長官らの「日米軍事同盟の障害となっている憲法を見直すべき」という発言に見られるように、「米国の海外での戦争に、日本が武力行使をもって参戦せよ」というアメリカの圧力があります。
去る6月10日、ノーベル賞を受賞された作家の大江健三郎さんや、京都でも活躍されている哲学者の梅原猛さん、鶴見俊輔さんなど、著名な文化人・9氏がアピールを発表されました。そこには、「日本国憲法は、いま、大きな試練にさらされています。ヒロシマ・ナガサキの原爆にいたる残虐な兵器によって、5千万を超える人命を奪った第2次世界大戦。この戦争から、世界の市民は、国際紛争の解決のためであっても、武力を使うことを選択肢にすべきではないという教訓を導きだしました。・・・私たちは、平和を求める世界の市民と手をつなぐために、あらためて憲法9条を激動する世界に輝かせたいと考えます。」と訴えられています。
何よりも、憲法9条についていえば、どんな世論調査を見ても、これを守るべきだという国民が6割前後と多数であります。これは、おびただしい戦争の犠牲を経て打ち立てた9条に対して、日本国民の多くが尊い価値を見いだし、誇りをもっていることを示すものです。
21世紀の世界の大勢は、国連憲章の平和のルールを尊重した「戦争のない世界」を志向しています。憲法9条はこの流れのさきがけとしての人類的価値をもつものであるということは明らかではないでしょうか。
日本共産党は、戦前・戦後、ひとすじに戦争反対を貫いてきた党として、憲法改悪に反対する一点での広い国民的共同を築き、改憲のたくらみを許さないために奮闘するものです。
そこで知事に伺います。府民の安全・安心をいつも言われますが、その大前提である日本の平和を守るため、憲法の改悪ではなく、9条を生かして世界に働きかけることこそ必要と、政府に求めるべきではありませんか。いかがですか、お答え下さい。
【知事】国権の最高機関である国会において、平成12年1月、共産党も含む与野党の国会議員で構成される憲法調査会が衆参両院に設置され、日本国憲法について議論が行なわれているが、平和を守るという基本的な議論については異論ないと思う。私も平和を基本理念として憲法を身近なものとして関心をもち、また将来のわが国のあり方について自由闊達な議論が行なわれるべきものと考える。
「戦争する人間づくり」のための教育基本法改悪は許されない
【本庄】さらに、「海外で戦争をする国づくり」をめざす憲法改悪と一体としての「戦争する人間づくり」のための教育基本法「改正」の問題です。
そのねらいは、自民党議員とともに民主党の45名の国会議員が参加する「教育基本法改正促進委員会」で、民主党の西村真悟議員があけすけに述べたように、「お国のために命を投げ出してもかまわない日本人を生み出す」ことにあります。
国中を不幸にした戦前の教育の反省から生まれた教育基本法は、「憲法の理想を実現するための教育」「真理と平和を希求する人間の育成」を、日本の教育の基本に据えました。そして、その第1条で教育の目的を「人格の完成」とし、一人ひとりが人間として大事にされ、個性・能力を全面的に発展させること、また戦前の国の教育統制への反省にたって、第10条で「教育は不当な支配に服することなく」として、教育が行政権力の不当な支配を受けてはならないとしました。
ところが、去る6月16日、自民・公明両党が、教育基本法の「改正」を大筋の内容で合意しましたが、それは教育基本法の民主的原則の根幹を壊そうとするものです。
1つには、「教育の目的」に、「国を愛する」ことを明記していることです。愛国心とは本来、国民1人ひとりの見識や自主性に委ねられるべき問題であり、特定の内容を押しつけることは、国民の内心の自由を侵害することにつながりかねないことです。
2つには、第10条の条文を、「教育行政は、不当な支配に服することなく」と、行政権力による教育の不当な支配を禁止した条文を、子どもや父母、国民による教育行政批判を封ずる中身に、180度変えようとしていることです。
3つには、「政府は、教育の進行に関する基本的な計画を定めること」とし、政府が上から教育内容を教育現場に押しつける根拠となる条文を盛り込もうとしていることです。
これらに共通しているのは、憲法26条が保障する、国民が主人公となった教育の権利を否定し、それを国家による「教育権」に置き換えようという、時代逆行の立場でしかありません。
そこで、知事ならびに教育委員長にお尋ねします。先ず、「人格の完成」を目的とする教育基本法について、それを特定の主張で歪めることについて、どうお考えですか。また、先に紹介した西村議員の「お国のために命を投げ出してもかまわない日本人を生み出す」との発言を、「良し」とされるのかどうか、お答え下さい。さらに、府教委が学校現場に向けて発行する「指導の重点」から、「憲法と教育基本法」の文言が3年前から削除されていますが、なぜ今の時期に削除されたのか、お答え下さい。
【知事】この法律は日本の教育の基本を確立するため、昭和22年3月に制定された。しかし、少年犯罪の増加、いじめ、不登校、学級崩壊、新規学卒者の就職問題など、わが国の教育は多くの課題を抱えており、国においては現在平成15年3月の中央教育審議会の答申をふまえ、教育基本法のあり方について、教育改革フォーラムやタウンミーティングの開催など国民的な議論がある。先の報道機関の全国世論調査によると教育基本法の改正問題については68%の方が関心があり、またはある程度関心があると答えており、今の時代の教育のあり方について、私は地域の現場で教育の実践に責任を有する者の一人として、さまざまな議論が行なわれることは大変重要だと考える。このなかで、国際化が進展するとともに、こどもたちが国際協調のためにもそれぞれの立場の違い、おかれた環境の違いを理解することが必要であり、自分のアイデンティティーを確立していくことの必要性について、私は問題意識はすべての方々と同じだと考える。今後子どもたちの一番身近な学校の現場の意見が、より取り入れられる分権型をめざすなかで、一人でも多くの人が関心をもって議論を見守ることが大事だと考える。
【教育委員長】平成15年3月の中央審議会答申では、「郷土や国を愛する心を育むことは日本人としてこれからの国際社会を生き抜くうえできわめて大切である」と述べられている。わが国の教育のあるべき方向や姿についてはいろいろな場で論議が積極的に積み重ねられ、よりよいものになるのが大切であり、ご指摘の議員発言についてもさまざまな意見の中の一つであると理解している。文部科学省も、全国各地で説明会や公聴会の開催にとりくんでいるが、今後とも広く国民的な論議が展開され、合意がはかられていくことが望ましい。なお、教育行政が憲法や教育基本法にのっとって行われるというのは当然。当該年度の教育活動の重点課題と努力点を示す「指導の重点」においては、あえて記載していない。
府立高校の適正規模を全国で最大の1学年8学級とした根拠は何か
定時制高校の募集定員を堅持し、一年生の30人学級実現を
【本庄】次に、高校教育制度について質問いたします。
第1に、「府立高校改革推進計画」の柱の1つになっている「高校統廃合」の問題です。今回の推進計画では、「府立高校の適正規模の確保」として、「全日制の規模」を「1学年8学級程度」とし、「既存の複数の高校統廃合」をすすめるとしていますが、全国の多くの道県では、1学年の適正規模を「4学級〜8学級」としています。生徒数で見ると、4学級の480人から8学級の960人まで、地域性などの実情に合わせて設定されています。ところが、京都だけ「1学年8学級程度」と、最大規模の学校を「適正」としているのです。
全国でも、全日制高校の75%は900人以下であり、800人以下の高校は64%にのぼりますが、全国の4分の3の高校は「望ましくない規模」の高校となるのでしょうか。あらためて適正規模の客観的な根拠は何なのか、示してください。
また、「定時制・通信制の再編整備」では、8月末発表の「来春の募集定員」で、定時制では鳥羽高校の募集定員が40人削減され、市立高校定時制の65人削減と併せて
そこでお伺いします。今年度、
【教育長】多様化した生徒の進路希望に対応する講座展開や弾力的な教育課程の編成、あるいは部活動、学校行事、生徒会活動における活力ある教育活動の展開や生徒同士の相互啓発による人間形成などの観点から、学年制の全日制高校では1学年8学級程度を標準的な規模として示した。
定時制の募集定員については、府内中学3年生数が昨年に比べ約1400人も大幅に減少していること、また定時制入学者の多くが全日制を希望しているという実態をふまえ、全日制の受け入れ枠を広げた。その結果、府立高校全体の収容率は昨年度より広がっている。また定時制の学級編成については画一的に30人とするのではなく、授業においては30人を下回る習熟度別の少人数授業などを行うとともに、それぞれの学校、生徒の状況に応じて加配教員を措置し、最も生徒数の多い学校においても生徒13人に対して一人の教員を配置するなどきめ細かい指導の充実に努めている。
山城通学圏の問題多い入試制度は見直しを
【本庄】第2に、「入学者選抜制度」の問題です。今年度、山城南と北、2つの通学圏を1つに拡大し、複雑な選抜制度を導入した「山城通学圏」の入試では、多くの子どもたちの「15の春」を泣かせました。
その1つは、単独選抜の導入と前期・中期・後期などの受験機会の複数化で、「競争と選別」がいっそう強化されたことです。高校ごとに合格者を決定する単独選抜で、同じ成績でも希望する高校の順位によって、「合格・不合格」が分かれて、入試の「公平性」が損なわれ、また、10%枠の前期「特色選抜」は、4.16倍となり多くの不合格者を出すとともに、選考基準が明らかにされない「不透明さを残す」など、「選抜制度」への信頼が崩れています。
2つは、単独選抜の導入によって、これまでの通学圏で合格者を決定する「総合選抜」がつぶされ、府教委のいう「セーフティーネット」が働かなかったことです。前期「特色選抜」に続く中期「一般選抜」では、311人が不合格となりました。昨年の156人、1昨年の24人と比べても異常な事態であり、複雑な選抜制度の弊害を子どもたちがまともに受けたといえます。来年度入試で、中学校の進路指導をゆがめる「輪切り指導」に、いっそう拍車がかかることは必至です。
3つには、通学範囲が大きく広がり、経済的な負担や学校生活への影響、安全面への不安を広げていることです。「通学費が大変、通学時間も長くなり、クラブで帰宅が8時、9時」という状況や、出身中学校の数が、これまでの5校から20校へと4倍となった高校も現われました。地元の高校に通う生徒が大幅に減り、地元の高校という意識、大切な地域との連帯感が薄れることへの危惧も広がっています。
そこで教育委員会にお伺いします。本年度の「山城通学圏」の入試についてどのように総括されているのですか。決して府教委が言うような「希望する学校を選べる」「選択する機会が広がる」制度などでなく、「合格しそうな学校を選ばされているだけ」などと、厳しい批判が出されているではありませんか。さらに、7月に地教委関係者や中学校長などが出席の「第1回山城地域における府立学校再編整備にかかる懇談会」でも、「毎年、選抜制度などを変更しすぎている。マイナス面もあったのではないか」「高校は今まで地域性を重視してきた。地域性が薄れていくことが心配」「行きたい学校が選べなかった生徒もいる。中退者が多くなっていないか」などの声も出されているではありませんか。直ちに「山城通学圏」の選抜制度の見直しが必要だと思いますが、いかがですか。お答え下さい。
【教育長】山城地域の選抜制度については、中学生が希望する高校を今まで以上に選択できる制度を目指し、山城北、南通学圏の統合をはじめ、単独選抜の実施、受験機会の複数化などの改善をはかった。その結果、ほとんどの生徒が第一志望の高校に入学しており、校長からはこれまで以上に目的意識の高い生徒が入学したこと、また部活動への入部率が上がるなど学校が活性してきたと報告を受けている。今後とも中学校や高校など関係者の意見を十分聞きながら選抜制度のさらなる充実に努めていきたい。
関西電力美浜原発3号機で重大事故
知事は、全原発の総点検と老朽化原発の段階的廃止を国と関西電力に求めよ
【本庄】次に、美浜原発の事故に関わってお伺いします。
8月9日に発生した、関西電力美浜原発3号機の配管破裂・蒸気噴出事故は、11人もの死傷者を出す、国内最悪の原発事故となりました。
私たち日本共産党府会議員団は、この事故を受けて、8月23日には、関西電力本社に対して申し入れをおこない、また、8月30日には、美浜原発と高浜原発に現地調査を行ない、停止中の原発内部にも入り、所長らに安全管理の徹底を厳しく求めてきました。
今回の事故で明らかになったのは、電力会社は安全を軽視してコスト削減を優先し、国は点検を事業者任せにしているという、ずさんな安全管理でした。調べてみますと、関電は、原子力関係修繕費を95年に1170億円だったものを、昨年度には706億円まで半分近くに減らしてきました。そして、原発を1日止めると約1億円の損失がでるとして、これまで3か月ぐらいかけていた定期検査を、わずか三十数日間までどんどん短くしてきたのです。このような中で関電は、今回の水量測定装置「オリフィス」下流部配管の肉厚検査を、28年間1度も行なわないという想像もできないミスを犯し、事故を起こしたのです。
原子力安全・保安院の調査によると、関電と検査会社との間で、事故を防ぐチャンスが少なくとも6回もあったにもかかわらず、それがことごとく見逃されてきました。原子力という危険なものを扱っているという自覚が全くない電力会社と、それを見逃し続けた国の無責任な安全管理によって、5人の尊い命が奪われたのです。
そこで伺います。安全管理の姿勢に、まるで真剣さが見られない関西電力に対し、悲惨な事故の再発防止の確約を、知事として強く迫るべきだと思いますが、いかがですか。
これまでも、原発の重大事故は繰り返されてきました。関電が一昨年までの14年間に国に報告した原発事故は、65件にものぼります。そのなかには、91年に美浜原発2号機で、わが国で初めて緊急炉心冷却装置を作動させた重大事故がありました。さらに95年の
ところが、歴代の京都府知事の姿勢はまったく不十分なもので、たとえば、5年前の
第1に、すべての原発を徹底して点検するとともに、老朽化した原発は段階的に廃止すべきだということです。いま福井県には、設計当時の耐用年数30年を超える原発が4基もあり、他の原発も次々に30年を迎えます。しかし、国と関西電力は、それらを今後さらに10年も20年も運転継続するとしています。府民の不安の声にこたえて、少なくともすでに30年を経過している美浜原発1号機、2号機、高浜1号機、そして重大事故を繰り返している美浜3号機は早急に廃止すべきであると、国や関西電力に、知事が強く求めるべきだと思いますが、いかがですか。
第2に、世界の水準から見て異常に遅れている日本の安全体制について、私は、国際原子力機関の示す基準通り、原発の推進機関と規制機関とを分離し、原子力安全・保安院を独立させて十分な体制と権限を与えるべきだと思います。事業者任せでない安全点検が必要です。また、さらに危険なプルサーマル計画は絶対に中止すべきです。あわせて国に迫るべきだと思いますが、いかがですか。
第3に、京都府の原子力発電所防災計画の想定は、近隣の高浜原発だけに対応するものとなっており、まったく不十分です。これまでも指摘してきたように、防災計画の範囲を全府下に広げるべきです。「安全神話」を出発点にして、10キロ圏内だけの防災にこだわる国に対しても、防災の現場から法律の見直しを求めるべきだと考えますが、いかがですか。お答えください。
【知事】事故発生の翌日に、私自ら関西電力会長に直接、再発防止策の確立等を要請した。8月12日には、国に対しても、事業所指導等を要請した。また、9月13日に開催した京都府原子力防災専門委員会では、関西電力からの事故の発生状況、再発防止に向けての取り組みについて報告を求め、検証を実施したところ。現在、関西電力では、すべての原子力発電所について、再発防止のための点検を実施中である。なお、原子力発電所に対する国の安全規制については、経済産業大臣のもとに設置された原子力安全保安院と内閣府に設置された中立的立場の原子力安全委員会によるダブルチェック体制で行なわれており、運転期間が30年を迎える原子力発電所についても、事業者が技術的評価を実施したうえ、以降10年間の長期保全計画を策定し、国が責任をもって評価していくよう、今後とも求めていきたい。
これは、プルサーマル計画についても同様で、原子力発電所の安全管理に責任をもつ国において、原子力安全委員会等の専門的見地からの意見をふまえ、検討されているものだが、今回の美浜3号機の2次系排管破損事故により、原子力発電所の安全性について不安が広がっている現状においては、まず、府民の不安解消をはかることが先決との立場から、国に、事業者への再発防止策の確立を要請しているところである。
京都府の地域防災計画で示された防災対策を重点的に充実すべき地域の範囲は、過去、内外で発生した原子力施設事故の検証や専門的な見地から国が定めている防災指針の基準では最も広い10`圏内を対象として設定している。
京都府警の5年間の捜査費・旅費41億円に不正流用の疑念
知事は、真相究明の固い決意をもっているか
【本庄】次に、法を守ること、法令順守にかかわる問題です。
先ず、京都府警の旅費及び報償費の問題です。全国の警察で旅費や報償費の不法支出、裏金が大問題になっています。先日、北海道警では、かつて京都府警本部長を勤められた芦刈道警本部長が、98年から2000年の国費の捜査費と道費の捜査報償費、合わせて約14億円の殆どすべてが裏金化されていた「不正支出」であることを認め、全面謝罪と11億円あまりを返還することを明らかにしました。また、宮城や静岡、福岡など多くの県でも不法支出が指摘され、全国的に同じ仕組みの警察の裏金づくりが、横行しているのではないかとの疑念が大きく広がっています。
今回、問題になっている国費や府費の捜査費と旅費の総額は、京都府警では、この5年間で41億円にのぼります。これだけの巨額の税金が、不正流用されていたのではと府民が疑念を持っても不思議ではありません。こうした疑念をもたれるようなことは、決してあってはならないことであり、全ての事実を明らかにすることが求められています。本当に府民が納得できるような調査がおこなわれなければ、府警や京都府に対する信頼は地に落ちるといっても過言ではありません。
この間、マスコミは京都府警についても、現職警官の証言として「裏金作りは任務の1つとみなされ、幹部はプールされた金庫の金の大半を自由に使うことができた」「捜査費の協力者の名前をでっち上げるため、領収書の名前は電話帳から抜粋して書いた」「裏帳簿を作り、上納が行われていた」「幹部への餞別に数百万円が流用されていた」など、通帳や裏帳簿を示して、驚くべき実態を相次いで報道しました。わが党議員団にも、府民からの怒りや徹底した糾明を求める多くの声とともに、報償費の請求のため、「架空の名前で領収書を作った。筆跡を変えるために左手を使ったり、女性の文字に似せて書いた」という生々しい情報も寄せられています。こうしたことが、事実であったのかなかったのか、徹底した調査が必要です。
そこで、まず警察本部長にお伺いします。わが党議員団は7月2日、問題の全容解明を求める申し入れを警察本部長に行ない、調査を求めてきましたが、警察本部長は旅費や捜査費・報償費にかかわる、これらの疑惑の解明にあたって、どのような姿勢で臨んでおられるのですか。単に「調べた」ではなく、こうした疑惑に答え府民に事実を証明する責任が、求められていると思いますが、いかがですか。また、警察内部の調査では、調査する側に、疑惑に関与していた人物が含まれることが当然ありえます。そのために、外部の第三者を交えた調査をおこなうべきではありませんか、いかがですか。
関連して、全ての当事者から圧力のかからない聞き取り調査が必要です。例えば、パトカーや白バイなど、パトロールにも旅費が支払われ、その総額は1億円を超えると思われます。この旅費が、一人ひとりの警察官に渡っていたのかという疑惑があります。また、かつて京都府警では、「業務証明書」や捜査員一人ひとりに渡された「公務証明書」など、いわゆる無料パスがJRから発行されていました。警察官がこの証明書を使いながら、旅費の請求がおこなわれていたとすれば不正請求であり、本人に渡されず、裏金に回されていなかったのか。警察車両乗務員、業務証明書や公務証明書を使用した全ての当事者からの聞き取り調査をおこなうべきだと思いますが、いかがですか。
【警察本部長】6月29日に、国費旅費にかかる不正疑惑が報道されたことを受け、府警ではただちに、総務部長を長とする総勢60名体制の予算執行調査チームを設置し、活動旅費の執行、その一括管理に関する実態調査に着手した。また、捜査費支給をめぐる疑惑についても、予算執行調査チームの体制を強化したうえで、その実態解明にあたっている。今後とも、継続して調査をすすめ、実態の解明をはかるとともに、その結果については、適時、公表していきたい。
「外部の第三者を交えた調査を行なうべきではないか」との指摘については、捜査費・旅費にかかる支出証拠書類については、個人に関する情報、事件捜査にかかる情報等が記録されており、個人のプライバシー保護、犯罪捜査等への支障が生じることのないよう、その取り扱いには十分な配慮が必要と考えている。また、限られた陣容で問題点を正しくかつ速やかに把握するためには、事務の内容に精通したものにより、厳しく内部で調査することは、実態を解明するうえで意義のあることだと考えている。もとより、外部の機関である会計検査院、京都府監査委員の監査に真摯に対応し、予算の執行状況について十分に検証していただくことは当然のことである。
聞き取り調査の対象について、予算執行調査チームによる調査は、旅費を執行している全所属の職員を対象に必要な調査を実施している。これらの職員の中には、当然、警察車両乗務員や業務証明書を使用する鉄道警察隊等の職員も含まれている。公用車を使用し、あるいは業務証明書等を使用して公共交通機関に乗車した場合には、交通実費は支給していないが、旅行の距離等に応じて日当や旅行雑費が支給されることになっている。今後とも継続して、精力的に調査をすすめ、実態解明につとめていく。
【本庄】次に監査委員にお伺いします。先ず、捜査報償費の監査です。これまで、捜査報償費の監査はおこなわれていたのですか。今年3月の警察常任委員会で、府警は、この報償費の捜査協力費の件数の25%が、「仮名領収書」であると認めましたが、実際に支払われていたかどうか、その領収書を書いた捜査員一人ひとりから、どのような事件で誰に渡したのか、聞き取り調査をおこなったことがあるのですか。お答え下さい。
【代表監査委員】警察の捜査報償費について、この間、他の都道府県において不適正な事例が判明するなかで、監査委員としても重大な関心をもって対応してきたが、本府においても、様々な報道がされたことから、知事の強い意向もうけて、地方自治法第199条第5項にもとづく特別な監査を実施しているところ。
平成11年度から15年度までの刑事部各課を対象として、9月1日から、知事部局の協力もえて実施しているが、今後、さらに監査をすすめる中で、捜査員からの聞き取り調査についても実施することとしている。
【本庄】次に知事にお伺いします。先程から述べているように、この問題は税金の使い道にかかわる不正疑惑問題です。府民の税金を預かる知事として、問われている責任は重大です。北海道警の不正全容解明に決定的な役割を果たしたのは、予算執行者の知事による特別監査の要請でした。宮城県でも、知事が不正解明への毅然とした態度を示す中で、事実が明らかになっていったのです。知事は、事態を明らかにする決意がありますか。全国では、警察が「捜査の秘密保持」を理由に、文書公開や関係者の聞き取りになかなか応じないのが実情です。知事が真相究明のために固い決意を表明することを求めるものです。
また、突っ込んだ調査をするために、監査委員に対して、昨年度だけでなく5年間の、さかのぼった監査を求めるべきだと思いますがいかがですか、お答え下さい。
【知事】府民の安心・安全の確保に中心的な役割をになう警察では、府民の信頼を得ることが何よりも重要。捜査費について、他府県において問題となり、本府でも報道されるなか、監査委員に対して、監査の実施を要請し、特別な監査が実施されているところである。現在、監査委員において、過去5年を対象に、監査が行なわれている。
市町村が府と連携協議を進めるためには、山田知事の後援会「啓祥会」に入らなければならないのか
【本庄】次に
「啓祥会」のパンフレットには「山田啓二さんの、日常の政治活動を支援するため設立」とあります。また、副会長には草木慶治・前副知事が座り、連絡先として事務局長に中田行雄・元府議会事務局長が記載され、府出身者を中心にした後援会であることは明確です。この助役は「府との連携協議は重要」「今の府政に協力したいとの思いから」と、マスコミのインタビューに答えていますが、市町村が「府との連携協議を進めるため」には、山田知事の後援会に入らなければならないのでしょうか。本当にそんなことがあるのですか、お答えください。いま、府出身の市長や助役は、12市のうち10市を占めています。今回、たまたま明らかになり大問題になりましたが、市町村の府出身者が「府との連携協議が必要」と山田知事の後援会の勧誘に動いたら、公私混同どころではありません。公正な府政などありえません。
【知事】この後援会は、私の活動を応援する有志の方々により設立されたもの。この件について、
故荻野恵子先生の過労死を公務災害と認定する逆転勝訴の判決
高裁の判決を尊重し、1日も早く遺族を救済するよう強く要望する
【本庄】最後に、公務員労働者のいのちと健康、過労死認定請求についてであります。
去る9月16日に大阪高等裁判所は、故荻野恵子先生の公務災害認定請求・控訴審判決で、一審の京都地裁判決を破棄し、過労死を公務災害と認定する逆転勝訴の判決を下しました。荻野先生は、
私は、山田知事が支部長を努める公務災害補償基金京都府支部が、子どもたちの目の前で意識をなくし、44歳で帰らぬ人となった荻野先生の、その死を公務災害と認めた高裁の判決を尊重し、1日も早くご遺族を救済されるよう強く要望し、私の質問を終わります。ご清聴ありがとうございました。