光永 敦彦議員(日本共産党、
日本共産党の光永敦彦です。通告に基づき、知事ならびに関係理事者に質問いたします。
難病の小児患者を持つ家族とそのサポート組織への支援措置の具体化を
【光永】まず、難病の子どもの家族支援について伺います。
私の地元、
先日、この「ファミリールームからんこえ」に伺いました。冷蔵庫や食器、布団まであり、4月開設以来、福岡や高知、北海道など申し込みがあいつぎ、利用者は「気遣って下さる人がいることにとても感謝しました。正直、家にいるようで、本当におちつきました」「入院してから1ヵ月半ぶりの外泊でホッとしています。元気になってまた、家族が一緒に暮らせるまで頑張ります」などの声で溢れていました。「社会の役に立てるのが幸せ。そんな気持ちで頑張っています」と述べられた川本さんの言葉が私は大変印象的でした。
また、同じく
このように、実費程度で宿泊でき、なおかつサポート体制もある「第二の自分の家」として家族に安らぎを与えています。しかし、ボランティアで支えられており、運営は非常に不安定です。「布団のクリーニング代や水光熱費を捻出するのが精一杯」「減免制度などできないでしょうか」という声も出されています。調べてみますと、こうした難病の子どもの家族を支援するための宿泊施設は、全国に64団体85施設があるといわれ、少しずつ増えていることはたいへん喜ばしい限りです。そこで伺います。こうした支援のための施設について、運営の実績、ノウハウなどがまだまだ未確立で、ご苦労もたいへん多いことから、京都府として関係者から直接要望を聞く場をもち、負担軽減制度などを含めた対応の検討をはじめてはいかがですか。
さて、大阪には府立母子医療総合センターの敷地内に「慢性疾患児家族等宿泊施設」があります。ここは、家族が宿泊でき、遠方から外来に来られる方の前泊、さらに外泊許可が出された子どもが遠方の実家に帰るのが体力的にも金銭的にも大変な場合、親と子が一緒に宿泊できるなど、フレキシブルな対応がされています。5室ある利用は平均70%以上で、県外の方も多く利用されています。また、兵庫県立子ども病院にも「ファミリーハウス」があり、平成15年度利用率は90.8%で、京都の方も8人利用されています。いずれも、病院が窓口となって、ワンストップサービスで宿泊の手配がされているのが特徴です。
平成10年12月11日、当時厚生省の「慢性疾患児家族宿泊施設整備事業の実施について」とする通知には「先端医療を行う医療機関は、・・・遠隔地から多数の子どもが受診に来ており、付き添い家族は長期間の滞在を余儀なくされている。家族の経済的負担を軽減するとともに、入院児童の情緒不安を解消するため、家族が宿泊し、子どもとの親子のふれあいができる部屋を医療機関等に整備する」とあります。これをうけて、本府の2つの民間病院を含む全国で40ヵ所の施設整備が実施されました。ところが、残念ながらこの国の制度は、平成10年度かぎりの単年度予算となってしまいました。
本府には、京都府立医科大学附属病院をはじめ、小児科および子どもの難病などに対応する医療機関があります。府立医科大学附属病院の場合、小児科全体で平均在院日数は平成15年度14.5日、小児心臓血管外科は、府北部からもこられますし、府外の患者は50%近くとなっています。現在、子ども病院は原則付き添いが認められていないので、家族は自力でホテルなどを探し宿泊されています。「病院として具体的な対応はできていない」「ファミリールームがあれば殺到するでしょうね」とのお話を伺いました。今回明らかにされている外来診療棟整備計画に、小児医療センターの整備がのべられ、記者会見で知事は「家族の支援施設とか、こういうものを整備して、本当にお子さんが安心して入院治療を受けられる体制をつくっていく」と述べられておられます。少なくとも大阪や兵庫をはじめ、全国の例にならい、ご苦労されている家族の支援施設にふさわしいものを検討すべきですが、いかがですか。また、当面、府立医大附属病院として、子どもの家族の実情を把握すること、付き添い家族が近くで安心して過ごせる場の情報提供と連携をとってはどうでしょうか。お答えください。
【保健福祉部長】難病の小児患者支援施設については、全国的には難病の子どもや家族のため宿泊施設の設置が医療機関を中心として民間団体等で進められており、府においても現時点では4カ所、うち3カ所は医療機関において設置されているものと承知している。このうち、府立医大附属病院においては、先天性心疾患や白血病など難病の小児患者に対する高度な治療を行っており、付き添いを希望される家族もいることから、子ども病院において、家族が宿泊するための家族控室を男性用、女性用、それぞれ一室整備して対応しており、また病院外で宿泊を希望する家族に対しては宿泊施設の紹介を行うなど、相談に応じている。さらに、今回、整備する小児医療センターでは、各診療科に混在する入院治療を一元化し小児一人ひとりに対して高度な治療を実施するなど治療環境を整えることとしており、家族控室、相談室など家族支援施設を大幅に拡充し、患者を支える家族にも配慮した施設なりを検討している。
難病の子どもへの民間支援施設については、取組みが始まったばかりであり、今後、よく実情の把握に努めたい。
【光永・要望】難病の子どもの家族支援については、今後、府立医大病院の小児医療センターが整備されると聞いているが、いざ施設がオープンしたら、そこに畳の部屋一つだけあって複数の家族が寝なければならないと、こういうことにならないように、しっかりと整備していただきたい。これは要望しておく。
【光永】次に、産業廃棄物の中間処理施設の建設について伺います。
平成14年12月、
私も建設予定地を見て、地元の皆さん方からもお話を伺ってまいりました。また、現在業者から明らかにされている資料をみまして、私はいくつかの重大な問題があると言わざるを得ません。
その第一は、施設のあり方についてです。予定地はわずか2230平米の中に、焼却施設、汚泥乾燥施設、粉砕施設、発砲スチロール減容機、凝集沈殿処理装置、中和処理機などで、受け入れ対象物は、廃プラスチック、医療系廃棄物、汚泥、動植物残渣、廃油、灰酸、灰アルカリをはじめ、ありとあらゆる産業廃棄物を対象にしています。これだけの広さにすべてを対象とするような施設建設が果たして可能でしょうか。しかも焼却施設をもつことで、塩化ビニール系、プラスチック類の焼却によるダイオキシンの発生、廃プラスチック類からの環境ホルモンの影響が心配されます。
第二は、そもそもこの工業団地造成時の企業誘致目的と合致しているのかという問題です。大井工業団地設立当初、工業団地の誘致企業選定の条件として、公害の少ないクリーンなハイテク企業の誘致をすることを
第三は、立地条件についてです。
建設予定地の500メートル以内に南桑中学校があり、その周辺には太田保育園をはじめ、住宅隣接地です。周辺を医療系廃棄物などを積載したトラックが行き来することは、住民にとっては大きな不安です。また、計画案では、排水は一切出さないとなっていますが、廃酸・廃アルカリを中和させた排水を焼却し水蒸気としてとして大気中に拡散することになります。
こうした点から、常識的に考えるなら亀岡盆地の真ん中にある大井工業団地内に中間処理施設を設置することは、ありえない話です。
先日、
産業廃棄物中間処理施設建設に係る許可権限を有する京都府知事として、住民の安心と安全を最優先する立場に立たれるのなら、こうした不適切な場所であり、ましてや地元住民の反対がある以上、設置を認めるべきでないと考えますがいかがですか、お答えください。
【企画環境部長】産業廃棄物処理施設の設置にあたっては、廃棄物処理法により施設の安全性の確認や排出基準などに基づく審査に加え、生活環境影響調査も必須となっており、生活環境保全上の見地から関係市町村あるいは利害関係者の意見を求めた上で、大気汚染、騒音、悪臭等にかかる学識経験者の意見をもお聞きし、自然環境に悪影響がないことを確認することとなっている。さらに、本府では、地域の皆さんの理解が大切と考えており、本件についても事業者に対し、地元に事業計画を十分に説明し理解を得るように指導している。今後とも、産業廃棄物処理施設の許可にあたっては、これらの手続きを的確に行いたい。
経営手法の導入で、行政の公的責任を投げ捨てることは許されない
【光永】次に事務・事業のアウトソーシングについて伺います。
PFI法にはじまり、構造改革特区法、地方独立行政法人法、指定管理者制度の導入を含んだ地方自治法の改正など、この数年で相次いで成立した法律は、「地方分権」「自治体構造改革」の名のもとですすめられてきました。補完性の原理、NPM理論を背景に作られた「総合規制改革会議」は、2003年の第三次答申で「公共サービスの民間解放の促進」に焦点をあて、「PFI、指定管理者制度の活用促進、公共サービスのアウトソーシングの推進などをすすめる」と提言しました。日本経団連の2004年版「経営労働政策委員会報告」は、「行政においては、規制緩和を通じて行政サービスを民間に解放し、この分野の膨大な潜在的需要を顕在化させ」ると、自治体の市場化を大企業のビジネスチャンスと位置づけるなど、「どれだけ儲かるか」という観点から考えていることは明らかです。他方で、小泉内閣の「三位一体改革」により地方の切り捨てが行われる中、地方自治体の税財源が圧迫され、財政的視点から「構造改革」に走るという状況も広がってきました。こうしたもとで整備されてきたのが自治体の事務・事業のアウトソーシングと、そのツールとしての指定管理者制度や地方独立行政法人などです。
東京・
指定管理者制度や独立行政法人化をはじめ、本府がアウトソーシングによって進められようとしている事態は、地方自治法第1条の2、「地方公共団体は、住民の福祉の増進を図ることを基本として、地域における行政を自主的かつ総合的に実施する役割を広く担うものとする」という、住民の福祉の向上や人権の保障などの公共性の放棄につながると考えますが、いかがですか。
さて、滋賀県では、本年2月定例会で地方分権推進対策特別委員会から報告がされました。そこでは、障害児を対象とした入所施設について、「事業の性質上、負担金および事業収益の増大化、あるいは第三者評価による経済性、効率性の追求にはなじまず、入所者へのマンツーマンでの支援が欠かせないことから、人員削減等による効率化はサービス水準の低下のおそれ」があるとし、「現状を維持すべき」との報告が出されています。このように公立大学や医療施設をはじめ、行政機関は、一律に経済性・採算性で図ることがそもそもなじまないものです。
ところが、本府が先ごろ発表した「京都府経営改革プラン(仮称)検討素案」では、「行政の運営手法を根本的に見直し、行財政体質の構造改革が必要」とのべ、骨子には、「経営改革の視点」として、「集中と選択による施策の重点化」「府民・民間企業・市町村との役割分担と協働」など、これまでの量的減量のみならず、アウトソーシングで、行政の経営改革を本格的にすすめる方向が述べられています。その矢面に立たされたのが、まず洛東病院ではないでしょうか。経済性、効率性がなじまないものにこの方向をすすめることは、地方自治の根本をゆがめ、行政の公的役割を投げ捨て、京都府を変質させるものではないでしょうか。いかがですか、お答え下さい。
さて、本年四月に全国で始めて設置された秋田県の公立大学法人「国際教養大学」は中期目標の中の「業務運営の改善及び効率化に関する目標」で、「教職員の業績評価を処遇に反映させ」るとし、「財務内容の改善に関する目標」では、「人員配置を必要最小限として、徹底した業務の合理化をはかり、経費の節減を図る」となっています。結局、経費削減が大きな目標となり、研究者の地位や身分が不安定になるなど、学術の条件が貧困になる可能性があります。まさに、大学の自治と学問の自由を傷つけることにつながるのではないでしょうか。
本府では、昨年3月に「府立の大学あり方懇話会」による提言、そして、本年6月には21世紀の府立の大学検討会議による「府立の大学改革の基本方向」が出されました。その文書には、「府立の大学の発展にむけて全力で取り組んでいく」ことが述べられています。そこで、あらためて府立大学および府立医科大学のこれまでの果たしてきた役割について、どう評価されているのかお聞かせください。
この「基本方向」には、高度な教育研究の視点、学生の視点、府民の視点など改革の視点が示され、教育研究の方向や地域貢献の方向のフレームが述べられています。ところが、組織・運営の方向となると、「公立大学法人制度の導入、連携・統合等の具体的検討」と、まず、法人化ありきと受け止められるものとなっています。私は2月定例会で、地方独立行政法人法にかかわって、府立両大学について質問し、知事は「経営目標を明確にし、その運営を効率化して、できる限り税金を有効に使うことを考えるのは、私はこれは当然のことではないかというふうに考えております」と答弁されました。そこで伺います。府立両大学の課題を解決し、発展をはかるために、なぜ、府立であり続けることが駄目なのかについて、明確な答弁を求めるものです。
【知事】アウトソーシングについては、従来から2つの方向で進めている。一つは、地方公共団体として、より効率的・効果的に行政サービスを提供するために民間の活力やノウハウを活用するもので、例えば府としては庁舎の清掃や税の電算処理など業務委託を積極的に進めてきた。もう一つは、府民参画を実現し、府民本位の行政を担う手段の一つとして、NPO等との協働関係のもとに行われるもの。これは直接的な効率性を目指すものではない。前者は、民間の活力や競争原理を導入することにより効率的かつ効果的な府民サービスの向上が期待できる。もちろん「公」としてサービスの基準の徹底は必要だが、こうした民間活力により民間自身も競争によって磨かれていく中で、民間活力が京都の活性化にも貢献するのではと思っている。もちろん全てをアウトソーシングすると言っているのではなく、あとは調和の問題ではないかと思う。それから、例えば病院のように事業収入があるところでは、その採算性を明らかにしていくことは行政の責務だと思っている。それにより収支を明確にする中で、政策目的について府民に適切な選択をしていただける。府政は府民の税金で運営されているわけで、少しでも無駄を省く経営改善をすることは当然だし、こうした視点による府政運営を通じ、トータルとして府民サービスや府民満足の向上につなげていくことが真の行政責任だと思っている。
府立の両大学は、ともに100年を超える長い歴史の中で、多くの優秀な人材を輩出し、教育・研究・高度医療など府民の大切な機関として地域の発展に寄与してきた。従って今議会にも府立医科大学の府民の健康拠点としての機能増進を図るべく予算をお願いしている。なお、公立大学の法人制度は、単年度予算や公務員制度の特例をもうけ、第三者評価のもと、中期的に弾力的な運営を行うことにより課題解決を図り、将来にわたる発展を可能にしようとするもの。仮に府立の大学が公立大学法人化したとしても、出資や運営交付など京都府が設立する大学として京都府の責任にかわりはない。あくまで府立の大学は府立。
【光永・再質問】いろいろ答弁をいただいた。私はNPOとの協働も必要だと思うし、府政の改革も必要だと考えている。しかし、問題はその中身と方向だ。結局、その内容が住民発ではなくて、国発、あるいは総務省発、こういうことになったらダメなわけで、つまり具体的には、いろんなツールを使ってどんどんアウトソーシングをしていく、そのアウトソーシングの先に企業が儲けの対象にして参入してくる、それ以外のところは切り捨てられる。こういうことになったら困る。いわば、府民の生の暮らしを守るという視点が、今回の方向では私は欠落しているのではないかというふうに考えている。そこで、アウトソーシングで、住民の生の暮らしをどう守るのかということについて、その根拠を示してほしい。
あわせて、京都府として、企業や民間の参入には何らかの規制がされるのかどうか、お聞きしたい。
もう一点。府立の両大学については、先ほどの答弁は、直営で実施することももちろん検討するということなのか、これは確認したい。
【知事】少々質問の趣旨がわかりにくいところがあるが、民間に委ねるとすぐに住民の権利が侵害されるというのは、私は何か民間というものに対し、非常に不信感を持たれているように気がして、ちょっと趣旨がわからないが、私どもは基準を明確にして、評価をきちんとして、情報公開をしていく。そういうことでサービスの水準を維持していくことによって、民間の活力が増すことによって、これはやはり京都の活性化につながることだと考えている。こういうことなどを通じ、きちんとサービス水準の維持については我々はもちろん全力を尽くしたい。
大学の公立法人化については、いま検討している最中だが、まあ京都大学は国立大学だと思うし、京都国立博物館も民間の民営化されたものではないので、あとはどういう形で、効率的に効果的に運営するのか、ツールをしっかりと選んで対応していきたい。