● 京都府議会12月定例会で かみね史朗議員が行った代表質問をご紹介します。

 

京都府議会2004年12月定例会 代表質問

かみね 史朗日本共産党、京都市右京区2004128

 

被災者生活再建支援法の改正を国に求めるとともに、

融資だけでなく中小業者、農家、漁業者への直接助成を行え

【加味根】

最初に、台風23号と新潟中越地震で亡くなられた方々と被災された方々に心からお悔やみとお見舞いを申し上げます。そして、本府をはじめ市町村、関係者のみなさん、ボランティアのみなさんのご奮闘に心からお礼申し上げます。

私ども日本共産党府会議員団は、被災直後から議員団あげて地元議員とともにくまなく被災地に入り、被災者の方々の切実な訴えをお聞きし、被災者救援、災害復旧、生活再建のための要望を再三にわたり京都府や国に申し入れ、その実現のために全力をあげてきました。私、この中で痛感したのは、被災者のみなさんの切実な願いに、政治が最大限の力を尽くしてこたえなければならないということであります。

そこで、まず台風23号の災害対策についてです。わが議員団は、先月29日に51項目の災害対策の要望を持って関係省庁と直接交渉をおこないました。この中でいくつかの成果がありました。法律の適用の問題では、屋根の応急修理、住宅周辺や併用住宅の店舗部分の土砂撤去も現場の判断で災害救助法を弾力的に適用する。被災者生活再建支援法も、若い世帯との同居の場合、生計が別であれば別世帯とみなし法律を適用する。同じ場所に建て直すのが危険な場合は、近隣に建て直す際も対応する。防災体制の整備については、被害にあった地域を中心に防災無線の整備を進めていく。宮津市の大手川の河川激甚災害対策特別緊急事業については、府から正式な申請があれば対応する。右京区の桂川罧原堤の護岸損壊についても災害復旧をおこなうなどであります。

しかし、国において、住宅再建に対する個人補償がいまだ実現していないなど改善を要する問題はたくさん残されています。にもかかわらず先の国会で野党が共同提案していた、住宅本体の建築や補修に公的支援をおこなう被災者生活再建支援法改正案が、自民、公明両党によって廃案にさせられたことは許せないことであります。

そこで第一に、おたずねいたします。災害救助法や被災者生活再建支援法の適用については、政府の回答で改めて個々の実態に応じて弾力的に運用することが明らかにされており、本府においても法律の弾力的運用を市町に指導し、被災した住民の方々が一人でも多く救援できるように対応すべきですが、いかがですか。宮津市大手川の特別緊急事業については、速やかに申請手続きを終え、事業に着工できるようにとりくむべきです。いかがですか。同時に根本的な問題として、被災者生活再建支援法を改正し、所得・年齢等の要件を緩和し、生活支援の枠をさらに広げるとともに、住宅再建への個人補償を実現することを強く国に求めるべきだと思いますが、いかがですか。お答えください。

第二に、中小零細業者、農家、漁業者の方々の再建の努力に対し、本府において助成制度を創設することについてであります。決算委員会総括質疑でわが党新井議員が「福井では越前漆器や和紙などの地場産業の業者のために300万円の助成を実施している。本府でも助成を」と質問したのに対して、知事は「電源立地の交付金でやれる所と違う」と拒否されました。

しかし、業者や農家、漁業者のみなさんの実態は、融資だけで対応できるような生易しいものではありません。私が1114日に訪問した加悦町の機織業者の方は、「織機12台や原材料、仕掛品が水没し数千万円の被害になる。融資だけでなく、助成もしてほしい」と訴えておられました。大江町では、縫製工場のミシン30数台が浸水でだめなり、全員解雇される問題が起こっています。また沈没した漁船の損壊が著しく保険を使っても新しい漁船などとても買えない。修理費用も多額にのぼり負担しきれないと聞きました。大江町では、バイク店の新車のバイクが全て水没して駄目になり、飲食店も全て水に流されるなど、商業者の方々も立ち上がれないような状態です。舞鶴市や宮津市内の業者の方々も同様です。

このように甚大な被害を受けた中小零細業者や農家、漁業者の方々の再建のためには、機械や設備などの修理・復旧・購入だけでも多額の資金が必要であり、すでに多額の融資を受けておられる状況の中で、融資対策だけでなく、営業の再建を直接支援する助成がどうしても必要であります。知事の積極的な答弁を求めます。

【知事】 災害救助法について、府としては被害に実態に見合った応急救助が可能となるよう、被災直後から法律の弾力適用を国に求めてきた。その結果、住宅応急修理で原状復旧が可能となるなど弾力的運用が今回の台風23号災害に認められ、先月当該市町に通知し、すでに実施している。一方、被災者生活再建支援法については、国から住宅被害の認定にかかる弾力的な運用について認められたところだが、建替え費用に充当できないなどまだまだ本質的な問題が残されている。こうしたことから、府では、今回の被災地が社会的に弱い立場にある方々が多い地域であって、地域の復興は住宅の再建なくしてあり得ないとの考えに立ち、先の11月臨時議会において可決いただいたとおり、苦しい財政状況の中でも全国最高水準となる府独自の支援措置を講じ、全力をあげて被災者の生活再建に取り組んでいるところ。

 しかし、これほど大規模な災害においては、本質的な被災者の生活再建支援は本来国が責任を果たすべきものであるので、これまでから全国知事会等を通じ、解体・撤去費用にとどまらず、住宅本体の建築・補修に要する経費を支給対象にすることや所得要件の緩和など被災者生活再建支援法の拡充を求めてきており、今回の台風後も国に対し強く要望を行ったところで、今後とも機会ある毎に主張していきたい。

 大手川については、今回の台風による被害をふまえ、概ね5カ年で準備を完了させる河川激甚災害対策特別緊急事業の導入について、直ちに国に対して緊急要望を行ったところで、現在対策にむけて具体的な協議を進めている。

 商工業者への支援は、被災直後から、府広域振興局、府織物機械金属振興センター等に特別経営相談窓口を開設し、保証協会等と協力して、今後の経営等についてきめ細かな相談を行ってきたところであり、すでに200件以上の相談を受けている。この中で、府北部には小規模な零細企業が多いことから、「おうえん融資」とは別枠で1000万円まで無担保無保証人で利用することができるようにするとともに、中小企業者・組合向けには無担保で8000万円まで利用可能な台風第23号非常時緊急融資を1116日に創設した。この制度は借入時の当面の負担と月々の返済額の軽減を図るため、据え置き期間については過去に例のない2年という長期に設定するとともに、融資期間についても運転・設備資金とも府の制度融資に中で最も長い10年としている。あわせて制度融資の中でも過去最低の金利となる年10%の固定金利とするなど、全国最高水準の有利な条件で利用いただけるようにしている。この制度を有効に活用いただけるよう、土曜日も特別経営相談窓口を開設するなど、金融機関や保証協会等と連携し融資の迅速化に努めている。

 農林漁業者についても、一日も早い経営の再建・安定化を図るため、11月臨時議会で議決いただいた補正予算を活用し、パイプハウスをはじめとする共同利用施設や農地の普及にむけて営農計画の把握や工法の検討等に努めている。さらに、個人の機械施設等の復旧についても無利子の緊急特別融資制度の効果的利用が図られるよう関係者に対する説明会の開催に努めている。今後、市町村や関係機関とも緊密に連携し、中小企業者や農林漁業者の皆さんに対する災害普及のための支援策としていっそう活用していただくよう全力をあげたい。

 

知事の姿勢は、新潟、福井の両県知事とは大違い

業者の事業継続意欲を喪失させることのないよう

助成措置の検討を

【加味根・再質問】

知事の答弁を聞いておりますと、住民の福祉の増進を図るという、そういう京都府の役割がどれだけ頭の中におありなのか、そういう疑問を強く感じました。甚大な被害を受けた府北部の産業再建のための助成制度、こういう質問には全く答えられませんでした。福井県や新潟県の知事さんと大違いだというふうに私は思いました。新潟県はこの12月補正予算で、伝統的工芸品生産設備等復旧支援事業を創設されまして、復旧事業の一部を補助することを決定されました。福井県知事の助成制度の提案理由説明を読ませていただきましたが、こんなふうに指摘されています。「今回の災害が引き金となっての廃業等により、伝統工芸品という福井が誇る産業・文化や産地の地域コミュニティーの存続が危ぶまれているところであり、産地が一丸となった再生への取り組みを緊急に支援することが求められています」。この現状認識は本府に通じるものがあるのではないでしょうか。11月の本府議会の決議でも「農林水産業、商工業等の事業継続意欲を喪失させることのないよう万全な支援等を行うこと」と求めています。知事は、事業継続意欲を喪失させるような実態があるという現状認識を持っておられないのかどうか、助成制度を検討する考えはないのかどうか、改めて質問いたします。

【知事】 台風23号の支援についてだが、それぞれ地域によって濃淡があると思う。私は、地域において、住宅再建がなければ地域の再建はあり得ないという立場で、これは福井、新潟と比べていただいて結構だが、京都府が一番高い水準で、一番手厚い住宅再建を行う。営業についても、融資制度について、これは全国最高水準になる。そういう融資制度を持って、今一生懸命職員が事業者の方々と再建に向かって努力しているところ。

 

実効ある伝統地場産業振興条例の制定を

住宅改修助成制度の創設、緊急地域雇用創出事業の継続を

【加味根】

次に、きびしさを増す京都経済の対策についてです。

年末を迎えた今日、大企業の輸出が鈍ったとたんに日本の景気は急降下してきています。79月期の国内総生産は前期と比べて名目でゼロ成長にとどまりました。サラリーマンの給与は昨年より39000円も減り6年連続でマイナスです。失業率は近畿では52%と高い水準が続いています。京都経済も依然としてきびしい状況です。京都中小企業家同友会がおこなった景況調査では、全産業でマイナス142となり、とくに府中北部の落ち込みが大きいことがわかりました。大企業がリストラを進め、不安定で低賃金の雇用に置き換え、下請け代金を買い叩く。そのうえ小泉内閣が、1000万円以上の売り上げの中小零細企業すべてに消費税納税の負担を押しつけ、年金改悪など国民犠牲の政治を推し進めているからです。さらに今後、定率減税の廃止で33000億円もの増税や消費税アップまですすめようとしています。とうてい許せないことであります。

こうしたなかで、京都府が、府民の雇用を守り、中小零細企業と伝統地場産業を力強く支援していくことが求められています。中小企業基本法は、平成11年に改正され、「地方公共団体は、中小企業に関し、その地方公共団体の区域の自然的経済的社会的諸条件に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有する」と定め、都道府県の役割を強化しました。しかし、本府の経済政策はどうでしょう。京都のものづくりを全体として伸ばす政策を進めていかなければならないのに、ITやベンチャーの支援に偏ったものになってきているといわざるを得ません。例えば、平成16年度の当初予算をみますと、ベンチャー関連予算83000万円にたいし、緊急雇用をのぞく伝統産業振興の予算は16000万円で5分の1にすぎません。このような偏った経済政策を改め、京都のものづくり全体をしっかり支援する政策に転換すべきであります。まず知事の御所見をお伺いいたします。

次に具体的な経済対策ですが、第一に、伝統地場産業への支援についてです。本府は今、和装・伝統産業の再生・発展のために条例化を検討しています。遅きに失したとはいえ歓迎いたします。

わが議員団は、平成10年に和装産業をはじめとした伝統地場産業振興条例大綱を発表し、たびたび本府議会の場で条例の制定を主張してきました。伝統的工芸品は、文化的価値を有する国民の財産であり、世界に誇る日本の宝です。伝統産業の存続のために産地の主体的な取り組みを基本としながら、その発展を行政として積極的に支援していく必要があります。

 私の地元京都市右京区には京友禅にかかわる多くの従事者がおられます。私の友人もその一人で、25年以上糸目・糊置の仕事をしてこられました。しかし生活はきびしく、毎日12時間から13時間働きに働いて昨年の年収は330万円です。その上、揮発性のオイルなど材料費が値上がりし、生活を圧迫しています。こうした従事者の生活と労働条件を改善し、明るい見通しと希望が持てるように応援しなければ、後継者も続かないし、伝統産業を再生、発展させることはできないと思います。

そこでおたずねしますが、条例化を検討する前提として、伝統地場産業の実態を詳しく調査することが必要です。伝統産業を支えておられる従事者の方々の生活実態もしっかり把握することが大切です。いかがですか。二つには、その上で業種別に行政関係者、業界関係者、職人、学者・研究者などからなるそれぞれの産業振興対策協議会のような組織を作り、調査、研究、協議の上で業種・産業別の基本指針を策定すべきです。三つには、支援策の内容として、伝統的技術・技法の継承、改善のための方策および後継者の育成策を講じることです。後継者育成で実効のある支援として期待されているのが、賃金助成、奨学金助成です。是非検討すべきです。また新製品の開発、販路の拡大、技術の高度化、経営の合理化など試験研究機関の充実、経営指導体制の強化を図ること。伝統・地場産業従事者の就労と生活の安定に寄与する施策、伝統地場産業が息づくまちづくりをすすめること。協同組合などへの指導と支援、税負担の軽減、制度融資をはじめとした金融対策を講じることなどが必要です。いかがですか、お答えください。

第二に、地域活性化に効果が実証され、住宅の耐震化やバリアフリー化などを促進する住宅改修助成制度の創設についてです。この2年間実施された市町での地域経済への波及効果は明らかです。

この住宅改修助成制度は、甚大な被害を与えた新潟中越地震を通じてますます切実な課題になっているのではないでしょうか。住宅の耐震化工事は、地震から住民の命を守るために、必要不可欠であり、その促進のためには行政による助成措置がどうしても必要であります。京都府内には、耐震化が義務づけられた昭和56年以前にたてられた木造住宅は、京都市内を含めて274200棟もあります。京都府内でも、いつ直下型地震が起きても不思議ではないといわれます。いま京都市議会では、わが党市会議員団が提案した木造住宅耐震改修工事費助成条例案と住宅改修工事費助成条例案を議題として、審議を行っています。本府として、当面、住宅の耐震化工事に対する助成制度の実施を決断すべきであります。答弁を求めます。

第三に、雇用問題についてです。「緊急地域雇用創出特別交付金」が、来年3月で打ち切られようとしていますが、この継続を求める声が今大きく広がっています。雇用情勢が依然厳しい時に、臨時的な雇用確保に一定成果をあげてきたこの基金を打ち切ってしまうのは、あまりにも問題が大きいといわなければなりません。厚生労働省は、交付金事業を新たな施策に引き継ぐとしていますが、来年度の概算要求はたったの70億円です。1000億円をこえる交付金とはケタ違いに少ないうえに、助成対象も狭められ交付金に変わる施策とは到底呼べません。知事、本府の雇用対策を強力に進めるためにも、緊急地域雇用創出特別交付金の継続を強く政府に求めるべきだと思いますが、いかがですか。「伝統工芸・技の探求」の事業や京の伝統工芸品教育活用推進事業費など職人さんの仕事確保に役立ち、府民にも好評を博している事業は府独自ででも継続すべきであります。いかがですか。お答えください。

【知事】 京都の経済の活性化については、私はIT産業やベンチャーも、伝統産業も、ともに京都にとってたいへん重要な産業と考えており、それぞれの分野において必要な施策を積極的に講じている。京の職人さん雇用事業とか伝統工芸品の雇用事業を除いて指摘されるのはちょっと理解できないところがある。また、商工予算の方も、ファンドの方の話も入っているので、そういった面で単純な予算の比較というのは難しいのではないかなと思う。要は中身の問題となるが、全国初の無担保無保証人制度を導入した中小企業融資制度、実質100億円規模の西陣織・京友禅等産地活性化基金事業や雇用創出金による職人さんの仕事づくりなど全国トップレベルの様々な施策を展開し、京都経済の基盤を支えるものづくり産業を支援している。

伝統産業の実態把握については、京都市や西陣織工業組合とともに定期的に西陣機業調査を実施しているほか、日頃から職員が産地に足を運び直接声を伺うなど、きめ細かな実情把握に努めている。また、アクションプランにおいても、検討委員会において、学識経験者や業界関係者などが委員となり、意見を聞きながら施策のあり方について検討を進めている。こうした中、例えば後継者の育成については、全国唯一の専門学校である京都伝統工芸専門学校の開設や府立陶工高等技術専門学校の運営、若手職員の海外派遣や各種研修事業への支援を行うとともに、技術・技法の伝承については府独自の伝統工芸品指定や京の名工の表彰、貴重な技術・技法の調査・記録事業の実施、また、産地組合や事業グループの取組みによる新商品開発や販路開拓に対する支援、さらに事業開拓を目指すものとして学校教育等を通じた着物や伝統工芸にふれる機会づくり、着物のパスポート発行など「着物の似合うまちづくり京都」事業の推進など、金融対策も含め、雇用創出事業も含めて、わが国最大の伝統産業産地を有する京都府として、全国のモデルとなるような様々な事業を実施している。

緊急地域雇用創出特別交付金については、国に対し、新たな制度の創設も含め事業の継続を強く求めているところで、伝統産業を担っているのは職人さん一人ひとりの力であり、こうした職人さん達を支えるため、その仕事づくり事業を実施しているところだが、今後のあり方については、「京都産業活性化プラン」での論議もふまえ検討を進める。

住宅改修助成制度は、いくつかの市町村では、それぞれの地域状況をふまえながら、主に不況・雇用対策として独自に取り組まれている。府としては、これまでから府営住宅ストック総合活用事業などに取り組んでおり、こうした施策が相まって地域経済へ波及することを期待している。住宅の耐震化工事に対する助成制度については、多くの既存の制度が十分活用されていないのが現状であり、今後、耐震改修工法の調査・検討を進め、制度上の課題について引き続き研究したい。

 

まったく道理も大義もない洛東病院廃止は、

断じて許されない

【加味根】

次に、山田知事のもとで府政が大きく変えられようとしている問題について質問します。

京都府という地方自治体の役割は、地方自治法第1条に明記されているように「住民の福祉の増進を図る」ことが基本であります。今、山田知事のもとで、京都府のこの大切な役割が投げ捨てられようとしているのであります。

今議会に提案された府立洛東病院の廃止条例案に、そのことが端的に現れています。知事は、決算特別委員会の総括質疑で、わが党の島田けい子議員の質問にたいして、「私も洛東病院にいったが、印象的だったのは高価な機械の上にビニールが置かれていたので、聞くとこの前天井から汚水が降ってきた。機械が壊れたら困るのでビニールをかけてあるとのことだった。本当に建替えが可能かどうか、その判断を早くしなければ、行政を担うものとして責任を果たせない」と答えました。

しかし知事、あなたが洛東病院を視察されたのは、4年も前の総務部長のときではありませんか。それを、つい最近、洛東病院に行ったかのように言い、水漏れを他人事のように言うのは、府立病院の設置者であることを忘れた無責任な発言ではありませんか。知事のこの答弁に、いま多くの患者さんや病院の管理職を含む職員、広範な府民のみなさんから、激しい怒りの声が巻き起こっています。患者家族の会のみなさんの抗議に対して、知事の代わりに本府の担当職員が謝ったそうですが、知事自身が謝るべきではありませんか。お答えください。

私、洛東病院に行って調べてみましたが、知事は、4年前に松原署を視察したあとに短時間立ち寄られて以後は一度も洛東病院を視察していません。しかも、技師の方に話を聞くと、知事が行かれた当時、高価な機械である「ガンマ線カメラ」のうえに汚水が降ってきた事実もないではありませんか。

知事は、リハビリ病院はのべ30ヵ所に増え、洛東病院の意義はなくなったと答弁されました。しかし、それは総合リハビリテーション施設と回復期リハビリテーション病棟の合計です。これにはダブリがあって、例えば、洛東病院は其々で1ヵ所ずつカウントされています。病院数としては21ヵ所であります。しかも、洛東病院のように回復期のリハビリ病棟を持っている病院は11病院しかないというのが事実であります。この事実を認められますか。お答えください。

京都のリハビリテーション研究会の会長さんが、洛東病院の廃止についてコメントをよせておられます。「関西のリハビリテーション医療が関東に比べて10年遅れ、京都はさらに遅れている。リハビリ医療の旗振り役を果たす公的センターもネットワーク組織もない。府立医大の急性期リハビリ医療のセンター構想は遅かったとはいえ当たり前のことですが、そのことで回復期リハビリ医療をおこなってきた洛東病院をなくしていいことにはならない。リハビリ医療を民間に丸投げする発想は行政の医療責任放棄としか思えません」。このようにきびしく批判されています。

知事は、廃止条例案の提案説明の中で、「患者の転院が順調に進む」といいました。洛東病院の廃止が議会で決まってもいないのに、入院患者さんを追い出す冷酷な対応ではありませんか。入院患者さんから、こんな声が出ています。「今年になって府下や奈良、大阪とあらゆる病院へ転院の願いに行ったが、入院を受けてもらうことができず困っています。廃院となれば患者は死を待つだけです」。知事は、患者さんのこうした痛みに心を寄せることもできないのでしょうか。

新たに明らかになってきたことは、洛東病院廃止後の跡地に松原警察署を移転させる計画が、知事部局から警察にもちこまれているということであります。住民無視もはなはだしいではありませんか。

以上のように、洛東病院の廃止には何の道理も根拠もありません。そもそも洛東病院の廃止を提言した「府立病院あり方検討委員会」に本府の代表として参加し議論をリードしたのは、保健福祉部など福祉や医療の専門職ではありません。島津製作所から本府の経営合理化のために配属された経営戦略室の職員です。知事は、行政経営品質リーダーであるその職員を任命し、洛東病院を廃止するために、初めから強引にことを進めてきたのであります。私は、医療への公的責任を投げ捨てて当然とする知事の姿勢に怒りをもって抗議するものであります。

いま、洛東病院をつぶすな、公的責任でリハビリテーションを充実せよという声が府民の中で大きく広がっています。京都府知事に出された請願署名は短期間の間に3万人以上も寄せられました。お隣の兵庫県では、総合リハビリテーションセンターがあります。300床の中央病院を核に、地域で困難な特殊・高度・専門性の高い医療の提供と生活リハビリ、職業リハビリなど先導的なサービスを実施するとともに、102次医療圏毎に県立病院を軸としたリハビリ医療の中核施設を配置し、全県的な整備を進めています。これは厚生労働省の指針に沿った取り組みであります。こうした例にこそ学び、府立医大病院と洛東病院を核とした公的なリハビリ医療の発展を検討していくべきであります。従って洛東病院の廃止条例案は、撤回すべきであります。明確な答弁を求めるものであります。

【知事】 現病棟は、昭和48年に整備されており、施設の老朽化が進行し、毎年、水漏れやガス漏れ、汚水漏れが起きており、施設の早期修繕を要する状況となっている。そのことについては、私自身が視察した際にも、委員長や事務長から説明を受け、その後も担当部局から報告を受けながら、現在の施設のままで運営していくかどうかの問題意識を持って検討を進めてきたもので、決算特別委員会においては、まさにこの事実を申し上げたところ。今後、病院として運営するためには、建替えを行うのか否か、医療情勢の変化や経営状況の見通し等もふまえ選択を迫られてきたが、包括外部監査や府立病院のあり方検討委員会から、「現病棟廃止が適当」あるいは「現在地での存続は適当とは言えない」という厳しい提言をいただく中、判断を先送りすることなく、明確にしていくことが設置者としてのとるべき責任であると考えている。

 リハビリを実施する病院については、リハビリを行う病院にかかる基準としては、総合リハビリ施設基準や回復期リハビリ病棟等の基準があり、現在、府内において、総合リハビリ施設基準を満たす病院は19病院、回復期リハビリ病棟を満たす病院は11病院。このうち双方の基準をともに満たす病院は9病院あるが、これらの病院においては、例えば療法士については総合リハビリ施設基準として8名、回復期リハビリ病棟として3名、合計11名以上のリハビリ体制の整備を進めているところで、このようなデータを申し上げたところ。なお、回復期リハビリ病棟だけを取り上げても、府内において基準を取得する病院は、この一年間でも新たに4病院126床の増加と急速に増加している。

 次にリハビリテーション施設について、急性期、回復期、維持期の各段階における多様なリハビリテーションニーズに対し、京都府のみならず民間医療機関や福祉施設、市町村等様々な主体がかかわっているところであり、こういった様々な主体との連携の中で地域のリハビリテーションを高めて行くことが府に課せられた重要な役割だと考える。こうした府に求められる役割を効果的に推進するためには、民間病院との役割分担をふまえ、施策を選択・集中していくことが必要。このため、府立医大附属病院に質の高い急性期リハビリの充実と、今議会にお願いしている府全域を視野に入れた地域リハビリの支援を行うリハビリテーション支援センターを整備していこうとするもの。府の有する財源や人的資源を効果的・総合的に生かすリハビリ施策の展開を目指すものであることを理解いただきたい。

 

ごまかし答弁で逃げるのでなく、

知事は患者さんの声を聞くべき

【加味根・再質問】 洛東病院の問題ですが、水漏れの問題、4年前に行っているのに、ついきのう行ってきたかのように言い、そして水漏れを放置しているのですから、その無責任ぶりを患者さんや府民の皆さんが批判をされている。ここに今の府政の姿が端的にあらわれているというふうに私は思います。知事の答弁は、回復期のリハビリテーションの京都の立ちおくれということを覆い隠しているような答弁でなかったか。確かに、今回初めて回復期のリハビリ病棟を持っている病院は11だと認めました。これはまあ当然のことですけれども、11しかないということの危機感を正しく持つ必要があるのではないでしょうか。私は患者さん自身の声が、京都のリハビリ医療がいかにおくれているか、いかに洛東病院が今大きな役割を果たしているかということを証明しているというふうに思います。

例えば、この前、洛東病院に行って患者さんの家族に聞きましたけれども、 「ある総合リハビリテーション施設に入院していたが、そこでは全くリハビリ訓練がされずに、この洛東病院に来て初めて、リューマチで骨折をして身動きとれない妻がベッドで立ち上がる訓練を続けて回復してきている。こういう病院はなくさないでほしい」。こういう患者さんの声というのはやはり、今のリハビリ医療の立ちおくれ、そして洛東病院の存在意義をはっきり示しているというふうに思います。

知事は、知事になられてから一度も洛東病院は視察されていないし、患者さんの声も聞いていない。私は、「府民発・府民協働」をスローガンにされるのならば、速やかに患者さんの声を聞く場を持つべきではないかと思うのですが、この点について再度お考えをお聞きしたいと思います。

【知事】 水漏れについては、これは毎年起きているんですね。正直言いまして。14年も起きているし、15年も、16年も起きているわけだし、私どもこういう報告を受けながらしっかりと現状を把握してやっているわけだから、あたかも4年前にしか水漏れ事故が起きてないようなことを言うのは、それは違うんではないかなと思う。それから、説明については、患者さんについては、まさに個々の患者さんによって事情が違う。この患者さんの声をしっかりと反映して適切な医療確保ができるのは、これは担当しているお医者さん。ですから私は、お医者さんがしっかりと対応していただく、患者さんの医療確保に全力をあげて、見込みが立っている現状をふまえて提案しているわけで、そういった専門的な見地からの意見を尊重していくことが私は必要ではないかと思う。

 

「経営改革プラン」は、効率性優先で公的責任を投げ捨てるもの

民間のもうけ確保、株式会社参入に道を開く「指定管理者制度」

【加味根】

次に、「経営改革プラン」について伺います。

洛東病院を廃止しようとする京都府の考え方の根底には、「経営改革プラン」で強調されている「経営手法」の導入があります。知事は決算委員会総括質疑で、「経営と言った場合…府民の視点からの経営」だといわれましたが、この間の洛東病院問題、府営住宅へのPFI導入の経過からは、「府民の立場」や「府民の視点」とは全くかけ離れた姿が浮き彫りになってきました。

第一に、「住民の福祉の増進」を目的とする地方自治体、「公」の仕事は、決して経営効率や採算性のみで計ることはできないのであります。先に兵庫県でのリハビリ医療の例を紹介しましたが、京都と同じく山間部と都市部をあわせもつ兵庫県では、過疎・山間地も含めた県内全体のリハビリ医療にうんと力をさく。ところが、府北部をはじめマンパワーの不足が深刻な京都府では、もともとリハビリ医療が遅れているのに、洛東病院の廃止を打ち出す。やっていることが全く逆さまではないでしょうか。知事が再三強調する「経営観点の導入によるメリット」とは、結局、「不採算」「効率性」を口実に福祉や医療を切り捨てるものではないでしょうか。これでは地方自治体本来の役割、行政の公的責任を投げ捨てることにつながりませんか。まずお答え下さい。

わが議員団の洛東病院問題の追及に、知事は、廃止の判断をしたのは「税金の配分の問題」だと答えられました。要するに、税金の投資効果がないというわけです。しかし、バブル崩壊で完全に破たんしたリゾート開発の後始末、丹後大規模公園には50億円もの税金を投入する。これと「リハビリなら洛東」と誰もが評価する洛東病院の整備・拡充に税金を投入するのとでは、どちらが府民に役立つかは歴然としているのではないでしょうか。いかがですか。「税金の配分」「選択と集中」と言うのなら、不要不急のムダな大規模事業をやめればいいではないか。こういう府民の声にどう答えられますか。お答えください。

「経営改革プラン」のもう一面の問題は、「公民の役割分担」の名の下に、大手企業のもうけのため、これまで公共で行ってきた仕事を開放するというものであります。

例えば、指定管理者制度です。「公の施設」の管理委託を、これまでは公的責任を果たすため、自治体の管理権限のもと、自治体が2分の1以上を出資する法人などに限定してきましたが、その枠を取り払って株式会社を含む民間に丸投げしようというものです。さらに病院、福祉施設、学校、図書館などの公共施設についても、民間事業者・株式会社が管理・運営できる仕組みづくりが進められています。これは、もともと財界の強い要望であり、「官から民へ」のかけ声のもと、国・地方自治体の業務・施設を民間に開放してビジネスチャンスを増やそうとする基本戦略に基づくものです。民間の営利が優先されれば、住民の平等利用、利用者の権利保障、住民福祉の向上など、自治体がほんらい果たすべき公的責任が大きく後退する危険があります。

そこで、今議会に提案されております条例案に関して、いくつか伺います。

第一に、今回の条例案が、「地方自治法の改正に伴うもの」に限定されていないという問題です。地方自治法では「公の施設」について指定管理者制度を導入するとされましたが、条例案は第六条で、「公用又は公共用に供されていない府の施設」について法人等に利活用させることができるとなっています。これは他府県の条例にない府独自の特殊な規定です。これは、文化博物館、文化会館、フラワーセンターなどの管理運営にまで株式会社の参入を認めようというものではないでしょうか。なぜ、対象をわざわざ広げなければならないのですか。まず知事のご所見を伺います。

第二に、条例案が地方自治法第2441項の規定から踏み出して、「施設の効果的、効率的な管理・活用」をうたっていることです。しかし、「公の施設」の設置趣旨はあくまで公共性の確保にあり、この点で自治体が公的責任を果たすことこそ優先されるべきです。効率性の追求を目的とする条項は削除すべきと考えますが、いかがですか。また、地方自治法でいう兼業禁止規定についても明記すべきと考えますが、いかがですか。

第三に、公共サービスの水準の確保についてです。指定管理者の選定要件については、団体の活動実績、専門性、技術、人材の確保等が担保されるべきと考えます。また、労働関係法規の遵守がはかられること、職員については正規・常勤雇用を基本とすること、さらに公的業務を担うにふさわしい賃金・労働条件が確保されるべきと考えますが、どう対処されますか。水準確保のため、施設の管理・運営にかかる透明性の確保、住民への情報公開、利用者・住民参加の保障が必要と考えますが、いかがですか。あわせてお答え下さい。

【知事】 「経営改革プラン」については、厳しい財政状況の下、府民福祉の向上を進めるためには、分権時代にあった簡素で効果的・効率的な府民本位の府庁づくりによって、限られた財源と人材で最大限の行政サービスが提供できる抜本的な体質改善を新たな視点で進め、財政運営の仕組み自体を変革していくことが今求められている。このため「経営改革プラン」では、組織業務プロセスの見直しと行政マネージメントサイクルの導入等によって、効果的・効率的な行政経営体制の確立等をはかりながら、将来の財政見通しを見据えた適切な財政運営を行うこととしている。こうした中、医療施策については、9月補正予算で府立医大附属病院の外来診療棟の大規模改修のための設計予算、さらに今議会では、同病院でのリハビリテーション機能の充実関連予算をはかっているところで、おそらく今後、医療福祉関係に一番思い切った投資をしていく、そういう覚悟で今臨んでいる。さらに、公共事業については、15車線的道路整備や評価制度の実施により、ダムや大規模公園の事業見直しにより、将来にわたり累計で約1000億円程度の健全化の効果を上げてきた。今後も、公共事業の効率性、実施過程の透明性をはかるため事前評価や再評価等を実施し、府民の視点から必要な事業を選択し、集中的に実施していきたい。

指定管理者制度は、地方自治法改正に対応し、「公の施設」の管理について導入するもので、今回その手続を定める条例を提案している。同様に、府民福祉の増進のために活用している普通財産についても、適正な手続を定めようとするもの。「公の施設」の管理に関する効率性については、地方自治法においても、「地方公共団体は最小の経費で、最大の効果を上げるようにしなければならない」と明記されており、府民から預かる税金で管理を行う施設である以上、私は当然のことであると考えている。

また、指定管理者の指定は、行政処分とされ、法律上首長の兼業禁止については適用がないとされているが、今回の条例に規定している選択・選定要件に従い、厳格な審査・指定における府議会での厳正な判断という一連の透明で公正な手続をとることで適正な指定を行いたいと考えている。

 指定管理者のこうした選定にあたっては、労働関係を含む関係法令を遵守し、施設の設置目的に沿った適切な管理ができることは当然の前提である。また、施設の管理運営の透明性の確保についても、管理基準や業務範囲は府議会での議決を経て定める個々の設置条例で定められ、さらに、指定管理者の指定についても、府議会の議決をいただいた上で行うもの。管理業務の実施状況や利用状況等については、事業報告書の提出を求めることとしており、その内容については、当然、情報公開の対象となる。今後ともできる限り、府民参加、情報公開とも充実、対応していきたいと考えている。

 

「自由度の拡大」どころか地方財政切り捨ての「三位一体改革」

【加味根】

次に、地方財政問題について伺います。

国と地方のやりとりを通じて、「三位一体改革」の狙いが、国の都合による地方財政切り捨てであることが、ますますハッキリしてきました。

まず、国庫補助負担金です。政府は、20056年の2年間で28380億円の補助負担金の廃止・縮減を決めました。その焦点の一つは、義務教育国庫負担金を8500億円削減する、また、生活保護費の負担率引き下げについては結論を先送りにしたものの、2005年度中には検討するとしたことです。今回、「はじめに3兆円の削減ありき」で始まった国と地方の「改革」論議は、結局、教育・福祉をないがしろにし、国の責任を後退させる形となりました。その影響は甚大です。義務教育費国庫負担制度は、教育の機会均等、義務教育の無償制という憲法に基づく国民の教育権を保障する根幹の制度ですが、削減だけ先に決めて、後から中央教育審議会で「あり方を幅広く検討する」というのでは、全くの本末転倒です。また、生活保護費の負担率が引き下げられれば、現在検討中の母子加算の廃止や社会保障改悪による生活保護費の総額抑制とあわせ、人権侵害まで起こしている受給制限にいっそうの拍車をかけることは必至であります。

その上、地方交付税について、「歳出削減に努める」「地方財政計画の合理化」をはかるなどとして、来年度以降も削減していく方向が示されたことは重大です。「三位一体」で国庫補助負担金が削られる。そのうえ補助金削減額に見合った税源移譲は保障されない。地方間でアンバランスがうまれるのに、地方交付税は切り捨てられるというのでは、地方自治体は本来の機能を果たすことができません。

知事は、先の議会で、義務教育費の国庫補助負担金削減について、あくまで賛成の立場に立たれるのかと聞いたわが党の質問に対し、「苦渋の決断ではあるが、分権型社会への移行という基本を総合的に考え、3兆円の削減案に賛成した」と答弁されました。しかし、総額20兆円となる補助負担金の7割は、福祉・教育むけのものであり、その多くが義務教育や老人医療制度、国保、介護保険、生活保護など、法令で義務づけられた国の負担金です。これらは、地方的アンバランスの避けられない地方税収などを充てるのでなく、国庫負担金制度による確実な財源の保障によって、国が法令上の責任をまっとうすべきものです。「地域の自由度を拡大する」「負担金事務の煩雑さをなくす」と言うのなら、それは今の制度の中で使い勝手の良い制度に改善すればよいのであり、分権、分権といって、結局は国の財政的責任だけが後退したということは絶対に認めてはなりません。

最初から、国の狙いは、ある程度の税源移譲と引き替えに、国庫負担金や地方交付税などの地方財政を大幅に切り捨てることにあります。だから、「地方の裁量が広がる」どころか、実際には使える財源が大幅に縮小される市町村の現場では「このままでは財政が破たんする」という悲鳴が上がっているのです。知事、「三位一体改革」への幻想は捨てるべき時ではないでしょうか。いったん、「三位一体」の枠組から離れて、ムダと口利きの温床となってきた公共事業を中心とする個別補助金制度は整理して、地方がみずからの基準と裁量で効率的に事業がすすめられるよう総合補助金制度とすること、また、教育や福祉にかかる国庫補助負担金については国の財政的責任を果たさせること、さらに、地方交付税の削減でなく維持・充実に努めることを国に強く求めるべきではありませんか。いかがですか。

【知事】 三位一体改革をはじめとする地方分権の本来の趣旨は、受益と負担の関係を明確にし、より住民に身近なところで政策決定、税金の使途決定が行われ、住民の意向に沿った行政をするということ。分権についての重要性について、今の加味根議員の質問には、まったくそれが触れられてないということに私は少々寂しい気がする。一方で、国の財政状況が厳しいことは十分に認識している。そのような中にあり、三位一体の改革等、地方分権の進展こそがこの国の展望を開くものである以上、その責任を放棄することは許されず、今後ともねばり強く働きかけることが必要であると考える。

こうした中で、生活保護負担金の取り扱いの結論が先送りされたことは、市町村に大きな影響を与えるものであり、大きな懸念をしている。今後、市町村とも連携し、国が責務を果たすよう求めて参りたい。また、義務教育を守るために真に必要なことは、すでに4割を切ってしまった義務教育国庫負担金を守ることではなく、義務教育費の総額をいかに確保し維持しながら、府民の求める望ましい教育を行うかということであり、教育の保障という制度の大枠は国が責任を持ちながら、地方の裁量の余地のある部分について自由度を拡大し、必要な財源を地方に移譲するよう主張してきたところ。なお、議員ご指摘の総合補助金制度についても、今年度交付金化された公共事業の実態を見ると、従前の補助制度とは大きな違いがないところで、最終権限が国に残るものでは地方の自主性・独自性が発揮できるかどうかは、たいへん、実情を見ても疑問に思っている。

 いずれにせよ現在の地方財政制度においては、地方の歳出と地方税収との乖離について、国が責任を持って地方交付税によって措置をすることとなっており、国のこの責任についても今後強く求めて参りたい。

 

国の財政削減を前提にした合併強要

 ― 総務部長発言は大問題

【加味根】

関連して、市町村合併についてです。国が地方財政を削減する一方で、地方に押しつけられているのが市町村合併です。京都府がこうした国のお先棒を担ぎ、府内各地で合併押しつけに躍起になっていることは、住民の利益や自治をまったく理解しないものとして指弾されなければなりません。

聞くところによれば、1025日、相楽郡町村長会に出席した府総務部長は「三位一体改革は難しい段階に入っている。地方交付税は78000億円の削減がされるし、補助金も減らされる。恒久減税も見直される。この状況なので、町村合併を進めてほしい」「合併期日は新市計画を3月末までにしないといけない。はじめるならすぐ手をつけてやってもらわないといけない」という趣旨を発言されたそうですが、とんでもありません。こうした総務部長の発言は、国の地方財政切り捨てを当然の前提としている点でも、市町村合併を押しつける点でも、二重の意味で間違いだと考えますが、知事の見解はいかがですか。

【知事】 総務部長の発言は、今後、国・地方を通じて、財政をめぐる諸情勢がいっそう厳しくなることが見込まれる中、とりわけ深刻な影響を被る小規模町村においては、行財政基盤の充実にむけて合併も含めた様々な議論を行うことが大切であるという旨を述べたものと聞いている。加味根議員の発言は、先の洛東病院の職員の発言も、まさに又聞きの発言を自分勝手に解釈され、跡地の問題もそうだが、発言されている。私は、そちらの方が問題ではないかなと思う。

【加味根・指摘】相楽郡の町村長会で総務部長が発言されたこと、これはある町議会で、現に、総務部長がこんな発言をされたということで、私が紹介した内容については明らかにされているところであります。国の地方財政削減を当然視する、あるいは市町村合併を押しつける、こういうふうに受け取られるような発言をしているから町議会でもこれが問題になっているわけでありまして、そんな発言はすべきではないということを指摘しておきます。

 

労働条件改善や育児休業制度の普及など、子育て支援策の強化を

高すぎる教育費、子どもの医療費など経済的負担の軽減を

【加味根】

次に、少子化対策についてです。

日本女性の出生率は毎年最低記録を更新しつづけ、129にまで下がりました。京都府の出生率は115で東京都に次いで全国ワースト2位となっています。日本は、子どもを生み育てることが大変な社会になっています。これまでの政治が、国民のくらしを痛めつけ、個人の生活も家族の一員としての責任も無視した「働かせ方」を野放しにしてきたからです。安心して子どもを生み育てることができる社会にするためには、こうした社会のあり方を変え、人間らしい社会をとりもどすことが必要です。

 そこで、お伺いいたします。第一に、労働条件の改善についてです。私は、母子寡婦福祉連合会の結成50年記念誌を見せていただきました。末尾に「いま一番困っていること」がつづられています。「正社員でいる以上、残業を断れない。毎日何時に終われるかわからない。2日に一度くらいは帰りが9時前。ひどいときには11時、12時になる。せめて子どもが起きている間に帰りたい」。また「有給休暇が取りにくい。帰宅時間が遅く、子どもと接する時間がない」。こうした苦情があふれています。このような劣悪な労働条件を改善しなければ、安心して子どもを生み育てることはできません。

この際本府として、子育て世代の労働実態を調査すべきであります。そして、国と協力しながら、子育てと両立できない劣悪な労働条件を改善するために事業所への指導援助を進めるべきであります。いかがですか。お答えください。

 第二に、育児休業制度の普及についてです。本府が今年6月に実施した調査報告書によると、育児休業制度の規定がある事業所は、全体で63%にとどまっており、10人から29人規模の事業所では47%、5人から9人規模では15%と立ち遅れています。育児休業取得者に対する育児休業期間中の金銭援助をしている事業所は、14%に過ぎません。自由意見を見ますと、「中小企業にとって負担の重いことだ」「補助制度を充実してほしい」という声がたくさん寄せられています。

育児休業制度を普及し、育児休業に対して金銭援助をする企業を増やすためには、それを促進する国の助成制度を中小零細企業に手厚く充実することが必要です。本府として、国に対し強く求めるとともに、国の助成制度に上乗せするような積極的な中小企業支援制度をつくるべきであると考えますが、いかがですか。お答えください。

第三に、子育ての経済的負担を軽減する問題です。内閣府の外郭団体である家計経済研究所が子育てについて調査しています。「子どもを欲しくない」と答えた人にその理由を尋ねたところ、「教育費・養育費の負担が大きいから」と答えた人が65.4%で第1位でした。子どもを持つことをためらう理由に、子育てにかかるお金の問題は小さくないことがうかがえます。

子育ての負担のなかでもっとも重いのが教育費であります。文部科学省の平成14年の調査によると、保護者が支出する子ども一人当たりの年間の教育費は、公立小学校で29万円、公立中学校で43万円、私立中学校で123万円、公立高校で52万円、私立高校で103万円。4年生の私立大学では205万円で、家庭から出されているお金は155万円にものぼります。

そもそも世界人権規約では、初等教育はもちろん、中等、高等教育においても、無償教育を漸進的に導入し、すべての子どもたちに教育を受ける機会を均等に保障することがうたわれています。わが国は、この規約の規定の実施を留保するばかりか、毎年のように高校や大学の入学料、授業料を値上げし、世界の無償化の流れに逆行しているのであります。本府も、こうした国の教育費負担増の政策を当然のように推し進めてきました。

子育てしやすい社会をつくろうというのであれば、子育ての大きな障害のひとつである教育費負担増の政策を見直すべきであります。特に義務教育の無償化に近づける努力が求められます。学校教育のために各家庭が支出した生徒1人あたりの全経費は、小学校で年間92000円、公立中学校で163000円にものぼります。このなかで少なくとも学校の各教科などの授業で必要な教材費や児童会、運動会などの教科外活動費は無償化すべきであります。また府立高校と府立大学・府立医科大学の入学料や授業料を23年おきに値上げする方式をやめ、今の金額で凍結すること。私学の学費負担軽減のための助成をさらに増額すること。さらに府民の教育費負担の軽減のための対策を検討することを強く求めるものであります。知事の答弁を求めます。

次に子どもの通院の医療費助成制度についてです。向日市の市民グループ・乳幼児ネットのアンケート調査によると、小学校入学前の子どもを持つお母さん224人の中で、昨年の9月から現在までに1ヵ月の通院費が8000円を越えたことがあると答えた方は34人にすぎませんでした。しかし、今の通院医療費でも、家計を大きく圧迫していることがわかりました。アンケートの意見をみますと、「3人も小さい子どもがいると、すぐ風邪をもらい、月の医療費が3倍かかる。何とかして欲しい」「3歳を過ぎると医療費が高いので、よっぽどじゃないと病院へ行かなくなった」。本府の対応は、医療費の重さで苦しみ、病院に行くことすら控えている現実を放置する結果になっています。

本府と同じ通院の医療費助成制度の自治体は、今や京都市や宇治市など8市だけであります。本府が制約をなくせば、府内どこでも安心して子どもを病院に連れて行けるようになります。あらためて通院医療費の助成について制限を速やかになくすよう求めます。いかがですか。知事の積極的な答弁を求めます。

【知事】 少子化対策を進める上で、仕事と家庭の両立を図ることが大切であり、「未来っ子いきいき応援プラン」においても柱の一つとして施策の検討を行っている。府では、労働経済事情を把握するために計画的に実態調査を実施してきたが、今年度は特に育児休業制度等に関する実態調査を行った。その結果によれば、直近の全国調査と比較すると、育児休業制度の普及率は全国の614%に対し、京都が631%になるなど概ね全国平均を上回る水準にある。ただ課題として、小規模の事業所では育児休業制度の普及率が低い水準にとどまっている。今後、労働時間短縮や育児休業制度の普及・促進などを進め、多様な働き方の実現を図るため、次世代育成支援対策推進法に基づく京都府行動計画を策定するととともに、中小企業をはじめ多くの企業において一般事業行動計画が策定されるよう支援することにより、雇用関係の改善に努めたい。なお、国の育児療育支援奨励金においては、支給限度額が大企業30万円に対し、中小企業40万円とされているなど、助成金制度のほとんどが中小企業により手厚い制度となっており、少しでもその周知に努めているが、さらに助成制度の活用・促進に努めたい。今後も、京都労働局や経営者団体とも連携しながら、企業等への育児休業制度にかかる法制度等の周知・啓発等に努め、育児休業が取得しやすい環境作りや府民の意識改革をはかっていきたい。

 子育ての経済的負担の軽減は、義務教育においては、経済的に恵まれない児童・生徒への支援として、各市町村において、学用品や体育実施用具、修学旅行や郊外活動費に対する補助が行われている。府立高校や府立の授業料等については、府立の学校の運営が受益者である生徒・学生の負担と府民の方々の税金で成り立っていることをふまえ、その公平性を保つことが重要であるが、特に経済的に負担が困難な生徒・学生に対しては授業料の減免措置を講じ、特に入学料については、16年度入学生から減免制度も導入したところで、さらに奨学資金の貸し付けなど手厚い措置を講じている。私立学校については、毎年、補助単価の改定や時々の課題に応じた制度の充実をはかるとともに、学費軽減補助制度や授業料減免補助制度等、高水準の措置を整備しているところ。また、先の台風23号により被害を受けた方々に対しても、府立高校や府立の大学の授業料等の減免や授業料の減免を行った私立高校に対する補助など、できる限りの支援策を講じている。

 乳幼児医療助成制度については、平成159月に制度を拡充し、制度の対象を小学校修学前までに引き上げるとともに、所得制限を設けることなく助成するなど全国的にも高い水準になるよう精一杯の支援を行っているところ。通院医療については、負担の上限を明らかにし、親御さんにとって安心して医療を受けていただけるよう配慮した。最近の実績では、月平均1500件程度利用されており、一人あたりの助成額も月額で2万円を超える例も多く、保護者の負担軽減に大きな役割を果たしていると評価している。当面は、この制度の定着に努めたい。

 

過大な府営水道の水利権の放棄

丹生ダム、大戸川ダム、天ヶ瀬ダムからの撤退表明を

【加味根】

次に、府営水道の水利権とダムの問題について伺います。先の決算特別委員会総括質疑で、知事は淀川水系における京都府営水道の水利権について、毎秒03立方メートルが不要であり、放棄する方針を明らかにしました。これは、わが党議員団が今日まで一貫して過大な水需要計画の見直しを要求し、不要な水利権の放棄を求めてきたことの正しさを証明したものです。

わが党議員団は、1985年に現在の府営水道の計画が策定された時点から、その人口予測や水需要予測が過大であり、府民に大きな負担を強いることを指摘し、水需要予測の見直しを一貫して求めてきました。ところが、京都府はこれまで4度の「見直し」を行ったとしてきましたが、給水域内人口70万人、府営水の最大供給量1日約24万立方メートルとの見通しを変えず、到達時期をずらすだけで施設の拡大を続け、供給市町に対し過大な責任水量を押し付け、水道料金の大幅値上げを余儀なくさせてきたのであります。その責任は重大です。

わが議員団は、さらに丹生ダム毎秒02立方メートル、大戸川ダム毎秒01立方メートル、天ヶ瀬ダム再開発毎秒06立方メートル、計09立方メートルの暫定水利権確保計画は、ムダなダム建設計画と一体のものであり、そのために80億円近い府民負担が生じることを明らかにし、水利権の放棄を強く求めてきました。しかし、全く本府は耳を貸そうとしませんでした。一例を上げましょう。20022月議会でのわが党議員の「不要な水利権は放棄すべきだ」との指摘に対し、当時の荒巻知事は「御意見のように丹生ダムの水利権を返上したら、宇治市などの水道がとまるんですよ。議員及び共産党は、その責任を全部負ってくれますか。この問題はそういう問題であることをご理解いただきたい」と述べていたのです。

そこお聞きしますが、水利権放棄の方向を示したのは一歩前進ですが、「府営水道事業懇談会」の「水需要見直し」計算では、09立方メートルが不要とされており、府民負担の減少のためにさらに思い切った決断が必要です。また、03立方メートルは丹生ダム・大戸川ダムの設定水利権であり、両ダム計画からの撤退だと思われますが、いかがですか。さらに天ヶ瀬ダム再開発からの撤退も決断すべきだと思いますが、いかがですか、お答えください。

【知事】 府営水道の水利権は、安心安全な府民生活を確保するためには、水の安定的な供給が不可欠である。需要量に見合う水利権だけでは、渇水時のときの供給に支障が生じるおそれがあるので、これは理解いただけると思うが、安定供給を維持するためには、渇水時を見込んだ安全度を見込む。国の基準で定められているが、この安全度を見込んでおく必要があり、府営水道の場合、毎秒05トン程度の安全分を考慮することが必要となる。今回、府営水道事業経営懇談会にも諮って予測した水需要予測におけるピーク時の平成32年の府営水量に見合う水利権215トンに、安全分を加えた265トン程度が必要で、現在の水利権296トンのうち暫定水利権の一部、03トン程度は水源として減量可能と判断したところ。

 なお、暫定水利権03トンの具体的な内容については、現在、河川管理者である国と協議をしている。

 

イラクの自衛隊派兵の延長に、知事は断固反対すべき

【加味根】

最後に、イラク問題であります。ファルージャへの米軍の無差別攻撃が開始されてから3週間たちました。イラク赤十字のスポークスマンは、「この攻撃のなかで6000人以上の人々が死んだ可能性がある。人道上の大惨事だ」と訴えています。戦争犯罪そのものではありませんか。

ところが小泉首相は、おびただしい犠牲者が出たことがはっきりした後も「一定の成果を上げた」といっています。なんと恐ろしい発言でしょう。そして自民党、公明党と一緒になって、国民の多数の反対を無視し、自衛隊のイラク派兵の延長を強行しようとしています。これは、侵略戦争と住民虐殺の共犯者となって、イラク国民をすべて敵に回し、世界から孤立する泥沼の道であります。自衛隊派兵が延長されると、来年1月には、京都の福知山や大久保、桂駐屯地などを含む「中部方面隊」による「第5次イラク派遣」が予定されているとの報道があります。知事、府民の命を守るためにも自衛隊の派兵の延長に断固反対すべきであります。知事の明確な答弁を求め、私の質問を終わります。ご静聴ありがとうございました。

【知事】 自衛隊の活動は、イラクの人々はもとより、わが国を含む国際社会の平和と安定につながることを目的として、医薬品の供給や経済基盤の復興など、イラク特措法に基づいた人道支援が行われているところ。自衛隊のイラク派遣は、わが国の外交・安全保障政策の根幹に関わる重要な問題であり、また、派遣隊員の安全に直結する問題である。従って、政府は、国際社会におけるわが国の役割について、また、派遣延長の是非など今後の自衛隊の活動について、その説明責任を国民に見える形で果たし、慎重な判断をいただきたいと考えている。

 いずれにしても、様々な国際的協力・強調のもとで、イラクの人々の平和の日々が一日も早く訪れることを願うところ。