光永 敦彦 (日本共産党・京都市左京区)  2004年2月26日

 

日本共産党の光永敦彦です。知事ならびに関係理事者に質問をします。

 

府北部の医師・看護師などマンパワーの確保

深刻な実情に応え、地域の医療を守る緊急対策を

 

【光永】まず医師、看護師等のマンパワーの確保について伺います。

医療・保健の府民的ニーズは年々高まっている中、それを支えるマンパワーの確保は喫緊の課題となっています。先日、「医師よ来て 切実 細る地域の命綱」と題する全国の自治体病院の調査結果が報道されていました。その中では、「医師の確保が難しい」と答えた病院は82%、今後の見通しも「難しくなる」と答えた病院が85%と報道されています。

 医師の臨床研修の必修化とそれに関わるスーパーローテート方式の導入は、大きな影響を与えるものです。国家試験に合格した医師が病院で行う臨床研修はこれまで任意でしたが、2004年度から必修となります。病気を的確に診療できる基礎的能力を養成するために、内科、外科、小児科、産婦人科、地域・保健医療を順に学ぶというものです。この必修化にともない、来年度から2年間は基本的に医局に研修医が入らないため、従来、研修医が担っていた仕事を補うために医師の引き上げが始まっていると言われています。

私は、先日、京都府の北部地域の病院や医師会を訪ね、医師や看護師等の状況について伺ってまいりました。

 舞鶴市民病院で医師が13人退職するなどの事態もありますが、ある病院では、これまで府立医大から医師派遣を受けてこられましたが、この4月から引き上げることがきまり、その結果、内科医師が1名となる事態に直面されています。これでは地域の医療に重大な影響がでることになるため、大阪をはじめかけまわって医師確保に奔走されておられました。また別の病院でも医師が引き上げれられる予定で「派遣の継続をお願いしたい」と訴えても「私立病院にまで派遣することはできない」との一点張りだそうです。

 また、看護師の場合も深刻です。ある病院では、「看護師が減って補充できないために、夜勤が10回、11回の月もある。看護師の高齢化もあいまって、このままだと病棟閉鎖を余儀なくされる」、また、「準夜、深夜の通し勤務のあと、日勤の看護師が足りないために、午前中だけ続けて働く」などの事態もうかがいました。さらに、介護保険の導入で新たに施設整備がすすんだ老人保健施設などからも、「看護師の世話をして欲しい」との声まで出されています。ある医師会職員の方は「看護師が足らないというより、いないんだ」と述べられました。

京都府保健福祉統計年報で調べますと、丹後圏域の場合、全看護師に占める20歳代の割合が21%、准看護師を合わせると15%にしかならず、他の圏域と比べても極端に若い看護師の人数が少なくなっています。これでは、「10年どころか5年先の看護体制すら見通せない」という声があがるのも当然です。しかも、看護師を養成する機関は北部では看護師3年過程で、京都府立看護学校があるのみですが、進学を除いて北部の民間や公的病院への就職は毎年ほとんどないというのが実情です。

 理学療法士や作業療法士も「募集しているが、3年間一人も応募がない」など不足が常態化していても、養成は京都の場合、京都大学医療技術短期大学のみとなるなど、他府県と比べてもまったく不十分なものになっています。

このようにマンパワーが確保できないことは、地域の医療そのものの後退に直結します。事態は一刻の猶予もないのです。

現在、平成16年度から20年度までの5年間の計画で「京都府保健医療計画」案が示されています。その中に2次医療圏ごとの現状と課題として、丹後医療圏では「へき地医療充実のための医療従事者の確保」と述べられています。この間、府立与謝の海病院の施設整備が一定すすみましたが、丹後の医療は与謝の海病院だけでなりたっているのではありません。知事は、丹後地域全体のマンパワーの確保と定着のための方策はなにも示していないではありませんか。

そこで伺います。知事は、医師や看護師のマンパワーの確保、とくに丹後地域での現状について、どう認識されていますか。お答えください。

 また、「地元で養成してほしい。せめて府立看護学校の定員を10%でも増やして欲しい」との声もあがっています。こうした声にどう応えられますか。

 さらに、H14年度にナースセンターを通じて就職された方416名のうち、丹後には1人も就職されていません。今予算では、事務費の削減などとして、京都府ナースセンターへの補助金が減額されています。ナースセンターの北部への再就職巡回相談は年1度、ブランクを感じずに医療機関等へ復帰できるための看護力再開発講習会は、北部では実施されていないなどの現状を抜本的に改善し、京都府ナースセンターやハローワークなど関係機関と連携し、北部での相談会回数や体制を増やすこと、講習会を北部でも開催することなど、確保対策を強化すべきと考えますが、いかがですか。

 また、理学療法士や作業療法士の北部での育成と確保の方策はどうされますか。野田川町では、平成7年から実施された「社会福祉施設等従事者修学資金貸与事業」は、進学や在学中をのぞけば、3人以外がすべて野田川町内の福祉施設の職員として働いておられるように、地元定着に大きな力を発揮しています。こうした努力を支援するためにも、育成と確保を一貫して行い、さらに巡回指導などができる体制を整えたリハビリセンターを中北部に設置することが必要と考えますが、いかがですか、お答えください。

これまで事実上、すべて市町村合併後の対策とし後回しにしてきた本府の姿勢を改め、地域の医療をまもるためマンパワー確保の緊急対策をとることを強く求めるものであります。

【保健福祉部長】医療機関に従事している医師数は、人口10万人あたり全国平均が195・8人に対し、京都府は257・8人と全国3位の水準にあるが、本年4月からの卒後医師に対する臨床研修の義務化等にともない、へき地等において医師不足の状況が予測されることから、各医療機関において医師確保に向けた懸命な努力が傾注されている厳しい状況である。京都府としても、自治医科大学での医師養成によりへき地等に勤務する医師を確保するとともに、近く策定予定の「新保険医療計画」に府立医科大学と連携した医師確保の充実について盛り込むこととしており、こうした施策も講じる中で府北部地域の医師確保を支援することとしている。

 看護師については、病床100床あたりの看護職員数が全国で12位と全国上位の状況にあるが、看護体制の充実化などにより看護職員の需要は増加することから、平成13年から17年までの看護職員需給見通しを立て看護師確保対策を展開している。府北部には、5校の看護学校があり、地元出身者の約7割が地元医療機関に就職するなど一定の成果をあげているところではあるが、今後とも医療機関の説明会を各学校において開催するなどの取組みを強め、一人でも多くの卒業生が北部へ定着する対策をいっそう推進したい。

 なお、府立看護学校については、学年定員40名であるが、設置基準で認められる最大の入学定員としている。

 また、北部地域への再就業を促すため、京都府看護協会と連携し14年度は巡回相談会を5回にわたって取り組んだところであるが、地域での取組みに加えインターネットによる求人情報の提供、看護の日の会場での相談など、創意工夫を凝らした取組みも展開する中で強化をはかりたい。

 OT・PTの育成確保は、府ではこれまでから就学資金貸与事業により府内定着を図ってきたが、各地域において必要な人材が実際に確保できる条件づくりが重要であるので、平成15年2月から、まず中丹地域において支援病院を定め、医療・保健・福祉分野の関係機関が連携し、リハビリ従事者の質向上に向けた研修実施の取組みを進めるなど、リハビリテーション推進体制の確立の努めているところなので、今後、丹後地域などにもこうした取組みをさらに拡大し、OT・PT確保の条件づくりをさらに強めていきたい。

【光永・再質問】医師派遣が途切れたら、地域の医療圏に重大な影響を与えるわけです。ですから、これは努力しているんだという水準にとどまってはいけないんですね。だから、やはり医師派遣の後退はさせないんだということを言えるのかどうか、そういう立場でやるのかどうか、改めてお答えください。

【保健福祉部長】丹後地域の医師確保については、丹後地域の住民の方の健康と命を守るべき医師の確保ですので、先ほど申し上げたように、医科大学と十分に連携して医師派遣に最善を尽くしたい。

 

府立大学の法人化

「独法化」「効率優先」ありきでなく、大学の自治の尊重を

 

【光永】次に地方独立行政法人について伺います。

この四月から地方独立行政法人法が施行されます。この法律は、国会で自民・公明ら与党が、わずかの審議時間で採決したもので、その内容は地方自治にとって重大な問題をはらんでいます。それは、総務省が「行革・アウトソーシングのツールのひとつで、公的分野の受け皿、実施部門のうち、事務・事業の垂直的減量を推進する」とのべているとおり、対象とする事務事業は、本来公的責任で確実に実施されることが必要な事業であるにもかかわらず、行政サービスの低下、縮小・廃止を目的にしているもので、その結果、住民の負担の増大につながるものです。また、毎年度の事業計画は設置団体長にとどけて公表するだけとなるなど、地方議会が関与できず、住民のチェック機能が奪われるおそれがあります。また、公立大学の法人化は学問の自由の基盤を侵し高等研究機関としての発展に障害をもたらし、学校教育法に定められた自主性・自立性が侵害されるおそれもあります。さらには、自治体労働者の身分や労働条件の変更も一方的におこなえるなどの重大な問題をはらんだものです。

とりわけ、公立大学の動きは重大です。全国的には、東京都立4大学が学内での議論をないがしろにしたまま廃止し、新大学の設立の動きが強まっていること、広島県立女子大学が廃止を決めたことなど、大学の自治をないがしろにし、学問の自由の基盤をほり崩すような事態が起こっています。

 本府では、府立大学のあり方懇話会の提言をうけて、昨年七月に「21世紀の府立の大学検討会議」が設置され、論議がつみかさねられてきています。府立両大学とも100年以上の歴史をもち、府立大学は小規模ながら、教員と学生のつながりが大切にされる教育研究体制があり、しかも、地域社会の産業や住民の生活、福祉、文化の発展に貢献する高等教育研究機関として大きな役割があります。また府立医大は、医大卒業生の約5〜6割、おおよそ3600名が府内で医療に従事されているなど、とりわけ本府の地域医療に、大きな役割を担っておられます。

 そこで伺います。他府県と同じ徹をあゆまないためにも、大学の自治を尊重し、採算のみに着目した「まず、効率化ありき」「独立法人化ありき」という立場をとるべきでないと考えますが、いかがですか。

【知事】府立両大学の改革についてだが、両大学は長い歴史の中でこれまでに4万人をこえる卒業生を輩出し、京都の各界に多数の人材を供給するなど、京都府にとって大きな貢献を果たしてきた。一方、近年、情報化や国際化、さらには社会の変化に対応し大学教育に求められるニーズも多様化・複雑化するとともに、若年人口の大幅な減少等により、各大学は生き残りをかけて競い合う時代に入っている。この場合、特に大学としての経営目標やそれを達成するための効率的運営が重視されており、国立大学の独立法人化をはじめ各大学は必死にそのあり方について検討を重ねている。

 京都の両府立大学もこの例外ではなく、また特に両大学の運営は約120億円という、府民の皆様からお預かりする税金によって支えられる大学であるので、その中で経営目標を明確にし、その運営を効率化してできる限り税金を有効に使うことを考えるのは、私はこれは当然のことではないかと考えている。

 昨年3月には、「府立の大学あり方懇話会」からも、大学としての自主性の確保とともに運営の効率性や情報公開等による透明度確保などを果たしながら、豊かな人間性を備えた人材育成、府民生活の向上や地域産業の発展への貢献、京都の大学としての個性や魅力などをいかに充実させるかの観点から大学改革をすすめることが必要との提言をいただいた。現在、この提言を受け、両大学と府で構成する「21世紀の府立大学検討会議」において、大学改革の方向について総合的に検討しており、今後この議論を踏まえ府民や府議会の意見を聞きながら、府民の税金で運営される大学として、京都府の大学ならではの特色、また府内の他大学との連携、学部などの組織運営を含めて大学改革の基本となる計画策定に向け、両大学と力を合わせていきたいと考えている。

 

府大の学費値上げの凍結、学生の生活実態調査を

実態に応じた柔軟な授業料減免の適用を

 

【光永】関連して、府立大学の学費について伺います。

 わが党議員団は、昨年9月定例会の最終本会議で、学費値上げの条例案について「経済的理由により教育を受ける権利が脅かされているとき、今回の値上げは文字どおり追い打ちをかけるものです。国が2年置きに値上げをするのを受けて、機械的に1年おくれで値上げするという国追随のやり方は、地方分権・地方自治の姿からはほど遠いもので、こうしたやり方を改め、もっと自主的立場から再検討すべきである」ことを指摘し反対をいたしましたが、わが党以外のすべての議員の賛成で値上げが決定されました。

こうした中、2月18日、京都府立大学学生自治会が、知事あてに要望書を提出されました。この要望書に添付されているのは、学生自身が集められたアンケートです。私はそのアンケートすべてに目を通しましたが、その中には「アルバイト代、奨学金を生活費、下宿代にあてているので、学費は親に頼っています。これ以上親の負担を増やしたくありません。学費を払う本人である学生の現況を把握した上で学費値上げされたのですか?財政上の都合のみで決まったことなら納得できません」、また、「私は今年度の授業料は免除していただいておりますが、もし免除していただけなかった場合は、現在の家計状況では到底支払いができませんので、退学とならざるを得ない状況におかれていました。今年度貸与していただいた奨学金を切り詰めて貯金をし、もし来年度から授業料免除が不可となりましても何とか自分で支払いをと思っておりましたのに一ヶ月の奨学金の半額以上ともなる学費値上げを今回始めて知り、暗澹とした思いです」など、長引く不況の中で、府立大学に学ぶ学生たちの学費値上げに対する深刻な叫びが述べられています。

まず、設置者である知事に、こうした学生たちの声をどのように受け止められているか、お答えください。

いま、府立大学学生自治会が知事に提出した要望書の主旨を実現するためにも、学費の値上げをいったん凍結し、学生の生活実態の調査をすべきです。お答えください。

さらに、「学費免除を受けている学生なので、この値上げによってその枠も縮小されるのではないかと不安です」との意見も出されています。授業料減免の状況は今年度で大学64名、大学院28名の計92名です。親のリストラや失業など、年度途中で生活が激変した学生に対する迅速かつ柔軟な対応が必要です。授業料減免制度の周知徹底、必要な学生が必要に応じて減免を受けられるよう求めるとともに、年度途中においても申請者すべてが実態に応じて減免が認められるよう対応されることを求めるものですが、いかがですか。

【総務部長】府立大学では、大学の運営費の約4分の3を府民一般の負担にお願いしていることを考慮すれば、学生の皆様方にも適切な受益者負担としての授業料を求めることは当然のことと考える。その金額については、全国の公立大学との均衡も考慮し、国立大学と同一の額となっている。しかも、その改定については、他の大半の公立大学のように国立大学と同じ年度から実施するのでなく1年遅れで実施しており、今回の改定についても従来と同様に去る9月議会において議決をいただいたもの。また、授業料の納付についても、負担の軽減を図るため学期ごとの分割納付としており、また、納付が困難な学生については所得に応じて全額免除、半額免除の措置を講じている。

 さらに、年度途中の学生の経済状況に激変等が生じた場合にも対応できるよう、学期ごとに減免の申請を受け付けている。こうした制度の周知については、大学案内および学生便覧に概要を掲載するとともに、新入生オリエンテーションや学内掲示によりその周知徹底に努めている。

したがって、今回の授業料改定、授業料減免制度の運用については、よろしくご理解いただきたい。

【光永・再質問地方独立行政法人については、引き続き予算委員会などにおいてやりますが、まず、学生の実情が一体どうなっているのかということついて、しっかりと把握すべきだということを聞いているわけです。いま、実際の給与受け取り額はどんどん減っているもとで、学費だけは上がっていくのはこれは逆転しているわけですから、実情をよくつかんで対応すべきだと。だから実情をつかむことぐらいやったらどうだと提案しているわけで、これについてお答えください。

【総務部長】学生の実態調査については、改めていま全数調査をやるというのではないが、授業料減免の件数なども増えているので、そういうところも含め学生の窓口を通じ色々お話を聞くような形にしてゆきたい。

 

北白川・半鐘山の乱開発問題

知事は歴史的景観、里山保護への責任をどう考えるか

 

【光永】次に、京都の景観をどう守り引き継いでいくのか、について伺います。

 私の地元、左京区の北白川に半鐘山があります。世界遺産条約に指定された銀閣寺の緩衝地帯・バッファゾーンを構成し、東山36峰のひとつといわれるこの山の乱開発について、私は貴重な緑の里山を保全し、地域の景観を守る立場から京都府の姿勢について厳しく指摘するとともに、同じような事態を繰り返さないために一昨年12月の代表質問で不法投棄防止条例、水を守る条例に続き、景観保全の条例を制定すべきことをはじめ、議会で提案を繰り返し行ってきました。

北白川・半鐘山の乱開発問題が起こってから6年近くの歳月が流れましたが、昨年、この問題で大きな転機が訪れたのです。それは、昨年12月18日に、京都地方裁判所において、宅地開発による土地の形質変更と樹木伐採の工事の工事続行禁止の仮処分を決定されたことです。

 京都府が同意し京都市が開発許可をおろした今回の乱開発について、裁判所が「工事の続行を禁止し、木を一本たりとも切ってはいけない」と述べたことに、大変大きな意味があるのではないでしょうか。まず、知事には、この決定の重みを受け止めていただきたいと思います。

現在、地元のみなさんは、この決定にもとづき、工事再開の差し止めを求める訴えを起こされていますが、こうした画期的な判断を京都地裁が下すにいたった背景には、6年にもわたる長い住民の団結した闘いがあったことはまちがいがありません。あらためて住民のみなさんに敬意を表するものです。

その中でも、昨年一年間はまさに激動といわれる経過をたどりました。

昨年8月20日から、業者が半鐘山の工事再開を通告したために、地元住民は8月18日、急きょ、工事差し止めの仮処分申請を京都地方裁判所に提出されました。また、地元での住民の抗議行動の中、施工業者が「現場に来て見てこれほど反対の声が多いとは思わなかった」として、工事から撤退することになりましたが、昨年12月9日には、住民に知らせることなく工事が再開されることになりました。そして12月18日、先にのべたとおり、京都地裁で画期的な工事中止の決定が下されたのです。

 現在、半鐘山は木が伐採され、たいへん無残な様相となっていますが、私は「山は削れば再生できないかもしれないが、樹木は再生できる」「二度とこうした事態を繰り返してはならない」という強い思いに駆られています。

 そこで、伺います。

 地元住民は、6年にわたり京都市長に対し再三「現場を見に来てほしい」と要望されましたが、市長は一度も現場に足をはこばれませんでした。知事は半鐘山にいかれたことがありますか。そして、もし山を見られたことがあるのなら、どういったご所見をおもちですか。お答えください。

また、私は、この地域を歴史的風土特別保存地区、及び緑地保全地区の指定権限等を有している京都市との協議を再三求めてきました。知事は「京都市の動向を注視する」との言葉を繰り返されてきましたが、工事の差し止め決定が下ったもとで、当然京都市との検討がされたと考えますが、いかがですか。

全国的にはこの間、環境や景観に着目した条例づくりが都道府県にも拡大してきています。すでに、千葉県では、昨年5月に「里山保全条例」が制定され、4ヵ所で保全活用協定が結ばれ、今年度内に10ヵ所が認定されると聞いています。また長野県では「マスターアーキテクト制度」を条例化する動きも出されています。これは、ヨーロッパなどで見られる制度で、長野県の場合、町並みとかけ離れた概観、自然環境を損なう工法や開発に対し、知事に対し意見を述べることができる専門家を配置するものです。

現在、本府には世界遺産条例に基づき17件が世界文化遺産として登録されています。保護の基準は遺産そのものの保護だけでなく、周囲にその利用を制限する緩衝地帯・バッファゾーンも必要とされています。本府の世界遺産を後世に引き継いでいくために、世界遺産のバッファゾーンの歴史的景観や里山保護のための自治体の責任・役割について知事はどう考えておられますか。特別の力をいま発揮すべきではないでしょうか、お答えください。

また、現在ようやく検討がはじまった「京都の豊かの緑を守る条例」について、半鐘山のような事態を二度と生まないよう、一定の規制や業者による住民無視の開発が強行されない仕組みをつくることが必要です。そのためにまず、地元住民との懇談会をもつことを提案しますが、いかがですか。

6年にわたる地元住民のみなさんの半鐘山を守る活動へのエネルギーを本来は世界遺産のバッファゾーンを守る力として生かせば、どれだけすばらしい地域づくりができたかを考えたとき、本府の迅速な対応が求められることを強く指摘して私の質問を終わります。

【土木建築部長】京都市における古都保存法に基づく歴史的風土特別保全地区や都市緑地保全法に基づく緑地保全地区の規制権限、さらには都市計画法における開発許可権限は、政令指定都市である京都市にゆだねれらており、知事は現地も承知しているが、本件については地域づくりに責任と権限をもつ京都市の意向を尊重すべきであると考えている。地方分権の中で、より住民に近い市町村の意向をしっかりと尊重していくことが、現地・現場主義による行政と理解している。

 世界遺産周辺地域の歴史的景観や良好な自然環境を保全するとともに、歴史や文化、風土に育まれた魅力あるまちづくりを進めていくためには、古都保存法や都市緑地保全法、風致地区条例等、各種関係法令を総合的に活用し、地域の住民の方々とともに市町村と連携しながら取り組むことが基本と考えている。本府においても、このような趣旨から、京都府風致地区条例の一部改正を本議会で提案しており、これは宇治平等院周辺の風致のいっそうの保全にも必要と考えている。今後とも市町村が地域の特性を生かした景観形成がはかられるよう支援・協力してまいりたい。

 「京都の豊かな緑を守る条例」、これはまだ仮称だが、この条例については放置森林の解消、森林法に違反する行為の未然防止など森林における適正な土地利用を確保するため創設することとしており、今後、広く府民の意見を聞きながら検討していきたい。

【光永・再質問】もともと一昨年の代表質問で、私は京都市と協調してしっかりと保全策を講じるべきだと強調しました。しかし、その後事態が変わったことは先ほどの質問で述べたとおりですから、こういう事態のもとで、政令市に指定権限があるというのは重々わかった上で、しかしバッファゾーンに位置するわけですから、これは京都府としてしっかり協調してやるべきだと、私は述べたわけです。府市協調と言いながら、結局、歴史地区風土特別保存地区等のバッファゾーンの保全については市だと言って、積極的なことを講じないというのは問題があると指摘しておきたいと思います。

また、「知事は承知している」と言われましたが、「現地に行かれたことがあるのか」と聞いているのだから、行ったことがあるのか、また、現地に行って懇談すべきではないかということについて、お答えください。

【土木建築部長】先ほどもお答えしたし、ご質問者からも指摘があったように、都市計画法および古都保存法に関する権限は京都市おかれておるところです。したがって、市の意向を尊重すべきだというふうに認識している。また、知事が現地に行ったかということだが、知事は現地を承知しておるということです。