光永 敦彦(日本共産党 左京区) 2005年2月22日

 

京都府の役割は、府民のくらし守ること

府民に「自立・自助」求める山田知事に迫る

 

定率減税の縮小・廃止、消費税の大増税について

 

【光永】日本共産党の光永敦彦です。党府会議員団を代表して、知事ならびに関係理事者に質問をいたします。

いま、暮らしと京都経済が本当に大変です。97年の9兆円もの国民負担増の強行をきっかけに、府内の消費支出は下がり続け、倒産も失業も高水準が続いています。建設業の倒産件数は昨年、過去最多、中でも個人事業者が5割を超え、小規模事業者を中心に厳しいことが浮きぼりになっています。また、府税収入も落ち込み京都府財政にも大きな影響を与えています。

その上「老いも若きも負担増」といわれる、所得税・住民税の定率減税の縮小・廃止など7兆円もの国民負担増に加え消費税の大増税を政府が計画していることは、まったく許されません。今回の定率減税廃止で、例えば京都市在住の子育て世代で年収500万円台の家族の場合、約8万円の実質増税に加え、納税額がふえるため保育料徴収基準が上がり年8万4000円増加、これだけで16万円以上の新たな負担となるのです。高齢者にとっても、住民税の非課税措置の廃止に連動し国保料や介護保険料などが大幅負担増になります。

これらは、府民の暮らしと不況に追い打ちをかけ、日本と京都経済の立て直しにとっても深刻な影響を与えることは極めて明らかです。しかも定率減税は縮小・廃止しながら、史上空前のもうけをあげている大企業への減税や高額所得者への減税はそのまま続けようとしています。こんな理不尽なやり方がどうして認められるでしょうか。

こうした時、知事の姿勢が二つの点で問われています。その一つは府民の声と願いを代表して、国にきっぱりとモノを言うこと、二つは府民の暮らしを守る防波堤として、その役割を発揮することです。知事は選挙公約で「国にきっぱりモノを言う」とのべられましたが、今こそ7兆円の国民負担増が間違っていると国に言うべきではありませんか。まずお答えください。

 しかもその先には、民主党までもが求める消費税の大増税計画です。低所得者ほどその負担が大きい消費税を基幹税にするような大増税計画は、府民の暮らしを破壊し、京都経済のかじ取りを根本的に誤るものです。消費税の増税に反対してこそ、府民と京都経済を守る道であると、お考えになりませんか。

 

【知事】的サービスの費用を賄う租税負担水準の議論は、公的サービスの水準のあり方と表裏一対で、租税負担の高さだけを議論するのは一方的。経済社会の構造変化をふまえ、持続可能な社会をつくるための国の行政水準全体にかかわる「受益と負担」の問題として議論すべき。

 

医療・社会保障の大改悪、介護保険の見直しについて

 

【光永】さらに医療・社会保障の大改悪が、より本格的にすべての分野で進められようとしています。

その一つが実施後5年目の見直し時期を迎える介護保険制度です。

「介護保険」改正法案が今国会に提出されました。そもそも、介護保険開始時には、「介護の社会化」と謳い、本府では介護保険受給者は3万3千人から7万人に膨れました。そこで、わずか5年で給付抑制と負担増に走るとは、理念もなにもあったものではありません。

要支援・要介護1の方のサービス利用を制限する「新予防給付」はその端的な例です。筋肉トレーニングや食事指導、歯科指導などを導入し、これまでの家事代行型の訪問介護等は原則おこなわないこととしています。私は訪問介護事業所や利用者の方から直接お話を伺いました。ある70歳代のご夫婦の場合、日常生活はペースメーカーをつけたご主人の世話を奥さんがされています。とはいえ奥さんも腰椎症と両膝変形症のため電動ベッドが必要で、掃除も困難なためヘルパーさんにお願いされています。お二人でがんばっておられる現在は要支援ですが、新予防給付でヘルパーさんやベッドが使えなくなると、掃除もできず腰椎症、膝の変形症が悪化する可能性が高くなることは目に見えています。政府は例外的に家事援助を認めましたが、あくまで限定的です。京都民医連の介護保険影響度調査によると、要支援・要介護1の方のうちヘルパーやデイサービスを受けられない場合、「生活に支障をきたす」と答えられた方が77.5%にものぼり、「生活は可能」と答えられたのはわずか10.6%となっています。保険外になればサービスを自費で払うことになりますが、「負担が上がれば利用ができない」と答えられたのはえ56.2%にもなっています。このように利用制限が生活と健康状態に直結するとは思われませんか。政府も実施時期の延期を検討するなど迷走に迷走を重ねるほどの新予防給付導入で、利用制限やサービスを打ち切るような事態を絶対にさけるべきですが、いかがですか。また、本府では現在、要支援・要介護1の認定者が約39700人おられます。市町村と協力し、軽度要介護認定者の実態を把握すべきですが、いかがですか。

新たな負担増もひどいものです。特別養護老人ホームなどの施設では「ホテルコスト」―居住費と食事の全額自己負担導入が今年の10月から先行実施されようとしています。特別養護老人ホーム入所者の場合、厚生労働省のモデルケースでは年間で40万円の負担増になります。知事は、これでも無理のない負担増とお考えですか、お答えください。

また、これまでホームヘルプサービスを利用されてきた低所得の方で介護保険実施時には3%負担であった方が1割負担へとなります。本府では、5921人の方がおられます。予算案ではこれがバッサリ切り捨てられていますが、継続するよう国に求めるとともに、独自施策で継続すべきですが、いかがですか。

さらに保険料についても、今後は20歳から徴収することが検討されます。民主党の案は、政府にそのことを強く求めるものですが、国民年金の支払猶予措置を申請している大学生から保険料を徴収することが果たして可能でしょうか。20歳から徴収することに対し国に反対の声をあげるべきです。いかがですか。

 

【知事】新予防給付の導入については、要支援・要介護の方々が心身の状況に応じて適切な介護を受けつつ、状態を改善するための取り組みの仕組みが必要だが、国会に提出されている法案では、新予防給付において、現行制度と同様のサービスメニューも用意されている。見直しの詳細は示されていないが、国に対して、新予防給付について、軽度者に必要なサービスを確保すること、特別養護老人ホーム等のホテルコストについて、経済的負担が過度とならないこと、経過措置として低所得者にかかるホームヘルプサービス利用者負担の軽減措置について充実を強く要請している。実態把握について、今後、示される新しいサービスの内容もふまえ、次期介護保険事業支援計画の策定事業の中で、必要なサービス量の把握を行う。保険料の徴収範囲は、長期にわたり持続的、安定的に運営する観点から、総合的な議論を行うべき。

 

国民健康保険について

 

【光永】第二に国民健康保険です。

あまりの保険料の高さに、昨年滞納が461万世帯へとふくれあがりました。加入している全世帯の18.9%にもなり、30万世帯が保険証をとりあげられ、一年前より6万5千世帯も急増しました。国保料が高くて払えず、保険証を取り上げられ、医療機関にかかれず、病気が悪化する、という悪循環がますますひどくなっています。京都市では国保料の値上げ方針が出され、低所得者層に8億円も保険料負担が襲いかかります。京都府では昨年、病院窓口でいったん全額を支払わなければならない資格証明書が4396世帯、短期証は24327世帯、国保滞納が82998世帯にまでふくれあがりました。これは高すぎる国保料の上に、京都府が2001年3月に資格証明書の発行を促す通達を市町村に出したことで、急速に膨れ上がったのです。この際、他府県でも例のないこの通達を撤回することを求めるものです。いかがですか。

こうした事態の根本原因である国による国庫負担の引き下げを見直し、計画的に元にもどすことこそ必要です。ところが、三位一体改革で来年度予算として都道府県が財政調整する国保調整交付金116億円について、れを厚生労働省は医療費が高い市町村に「交付金が欲しければ、医療費を使わせないように指導せよ」との使い方を求めています。都道府県財政調整交付金の市町村国保への活用に際しては、決して医療費抑制の手段として使うのでなく、国保財政支援の措置をとるべきです。いかがですか。

 

【知事】資格証明書は、特別な事情もないまま保険料を長期間滞納する被保険者に限り交付されるもの。平成12年4月に、交付が義務化されたことに伴い、制度の適正な運用について市町村に周知したもの。府としては、被保険者の個別事情をふまえ、適切な制度運営がなされるよう市町村に要請してきた。

都道府県財政調整交付金は、市町村国保財政の健全な運営を確保するために交付すべきもの。

 

「応益負担」を導入する障害者自立支援法案について

 

【光永】第三に、厚生労働省が発表した「今後の障害者保健福祉施策の方向―改革のグランドデザイン案」と「障害者自立支援法案」です。これには、障害種別を越えた法整備等の関係者のみなさんが求めてこられた内容を含んでいますが、最大の問題は、応益負担となる原則1割負担の導入と精神保健福祉法32条の「通院医療費公費負担制度」の見直しです。これまで福祉サービスを利用する障害者は、自己負担は所得に応じた負担でしたが、1割負担の導入によって、これまで費用負担のなかった95%の方にも新たに負担が生まれます。通所施設でも現行約1000円の負担から、1万9000円にも跳ね上がり、ある方は「障害基礎年金月額約6万6000円を唯一の生活費としている私のこれまでの生活が失われるかもしれない」と述べ、また、精神科デイケアに通う患者のお母さんは「長年毎日通院してよくなって来た。でもデイケア代、薬代とも倍になれば、回数を減らさざるをえません」など悲痛な声があがっています。5年前の社会福祉事業法改正の時、公的責任が後退してはならないと、所得に応じた「応能負担」で出発したものが、わずか5年で「応益負担」へと転換することになります。これでは、障害が重い人ほど必要となるサービスが増えるため、自己負担が重くなる仕組みではありませんか。1割負担への導入に反対すべきですが、いかがですか。そしてグランドデザイン案については、拙速な導入を撤回し、関係者と論議するよう国に提案すべきではありませんか。お答えください。

 

【知事】障害者自立支援法案は、障害者の生活を支える制度が安定的に運営でき、より公平で効率的な制度とすることを目的に提案されている。今後、施行に向けた準備にあたっては、障害当事者や事業実施主体である地方自治体の意見を十分に聞き、議論していくことが必要。府としても、低所得者やサービス利用量の多い重度障害者に配慮した適切な上限額の設定などにより、必要なサービスが利用できるよう、引き続き強く要請していきたい。

 

混合診療の導入について

 

【光永】第四に混合診療の導入の合意も重大です。

昨年12月15日、混合診療解禁問題について尾辻厚労相と村上規制改革相の間で「合意」が取り交わされました。そもそも、健康保険法の趣旨のとおり、最適最善を尽くして患者さんの命と健康をまもり、できるだけ早く回復してもらうことは医療人として当然で、それを国は医療保険で支える責務があるのです。ところが、混合診療となれば、お金のある者は保険診療と保険外診療で満足できる医療を選択できる一方、保険外診療の費用が払えない国民の健康はどうなっていくのでしょうか。まさに「医療は金次第」ではありませんか。しかも、保健医療機関の存立基盤をも崩しかねません。だからこそ、日本医師会をはじめ関係団体は600万もの署名を国会に提出し、衆参両院で全会一致決議があがったのです。知事は混合診療導入について反対の声をあげるべきですが、いかがですかお答えください。

結局、国が進めている「社会保障構造改革」とは、「負担増と給付切り捨て」―つまり低所得者も含めた国民に受益と負担を押し付け、負担できないものは制度から外されてもかまわないといわんばかりです。これは憲法25条の社会保障確立への国の義務を根本的にゆがめるものであるとは思われませんか。お答えください。

 

【知事】混合診療は、現行制度の枠組みの中で対応することとなったが、今後とも、すべての国民に必要な医療を確保する観点から、慎重に検討すべき。

 国民生活の根幹にかかわる社会保障制度を安定的なものにすることが求められている。国でも、都道府県や市町村の要請を十分考慮し、幅広い意見を聞きながら、国民合意のもと持続可能な制度への見直しを要請していく。

 

雇用・失業対策について

 

【光永】暮らしを支える雇用の問題も深刻で、どう取り組まれるのかについてお尋ねします。

第一に、雇用・失業問題の深刻さに対する知事の認識についてです。

本府の有効求人倍率は0.87倍(12月)と回復傾向にあるものの、若年者や中高年齢層の完全失業率は依然として高い水準にあります。2003年度、15〜24才の完全失業率は、全国平均 10.1%に対して本府は13.0%、再就職の環境が厳しい55〜64才では6.8%と前年度より高くなっています。また、高卒者の就職内定率は、80.2%にとどまっています。京都では、1991年から2001年の10年間に事業所が−13.4%、全国一の事業所減となっており、中小企業や伝統・地場産業の深刻な落ち込みが雇用・失業問題の背景にあることは明らかです。

しかも、最近の特徴として、派遣や請負、パート・アルバイトなどの不安定雇用が急増し、その一方で、常勤雇用が大幅に減少していることは重大です。「就業構造基本調査」によれば、2002年度、本府では、勤労者全体の24.8%、4人に1人がパート・アルバイト、その比率は全国最高で、女性では44.3%がパート・アルバイトです。また、府内の派遣労働者は2001年度29594人で、4年前の3倍近くに急増しています。

こうしたなか、実態として常勤雇用が増えないと、深刻な失業問題の解決につながりません。私は、昨年の決算特別委員会で、この点について理事者の見解を求めましたが、「雇用形態の多様化について、認識が必要ではないか」と答弁されました。中期ビジョンの中間案でも、「雇用の多様化‥‥に対応した労働環境の整備や就業支援」となっています。しかし、「多様化」とは、常勤雇用を減らし、パート・アルバイト・派遣に置き換えようとするものです。これでどうして安心して生活していけると言うのでしょうか。「臨時雇用でもよし」とせず、常勤雇用を増やすための努力を本格的に強めるべきではありませんか。知事の見解をお伺いします。また、地域最低賃金を引き上げるとともに、派遣労働者の権利を守るための法改正を国に求めるなど、労働者全体の暮らしと権利を守る取り組みを強化すべきですが、いかがですか。

第二に、京都府雇用創出・就業支援計画「中間見直し」についてです。

この「中間見直し」では、「計画期限の2005年度より1年早く、雇用創出目標の4万3千人を上回ることが確実になった」として、雇用創出目標を5万7千人に引き上げています。

しかし、雇用実績のうち、1年以上の常用雇用者は約5千人で、とくに、「雇用の受け皿づくり」では目標1万5千人に対して、進捗は大変低い状況にあります。その一方、当初目標1万5千人の「緊急雇用対策」は、今年度末までに2万8千人と見込まれていますが、すべて「つなぎ雇用」です。しかも16年度予算で24億8600万円あった「緊急雇用創出特別基金事業」が3月末で廃止され、府として継続が求められるにもかかわらず40の事業はほとんどが廃止され、労働費全体では34.5%が減っています。知事は「雇用創出目標の4万3千人を上回ることが確実」といわれますが、その実態は大半が短期の臨時雇用であり、1年以上の常用雇用でも、その殆どがパート・派遣などの不安定雇用です。これでは、深刻な雇用・失業問題の解決にならないことは明らかです。

雇用・失業問題をここまで深刻にさせてきた最大の原因は、「雇用のミスマッチ」などにあるのではなく、大企業によるリストラ・解雇の横行、新卒者の採用抑制と派遣・パートなど非正規雇用への置き換えにあります。厚生労働省のサービス残業をなくす「通達」によって、府内でも13年以降に支払われたサービス残業代が約11億円にもなりましたが、リストラ・解雇についても規制するために、知事として大企業に対し「整理解雇四要件」を厳守するよう徹底をはかるとともに、新卒者の採用を抑制せず、非正規雇用への置き換えをやめて正規・常用雇用を増やすよう強く働きかけるべきだと考えますが、いかがですか。

また、府としての雇用創出をはかる取り組みの強化も必要です。

学校現場で大幅に増えている常勤講師を少なくとも正教員として採用するだけでも、新たに千数百人の雇用が拡大できます。しかもそのことが、少人数学級実現への土台となるのです。福祉・教育など府民生活に必要な分野で仕事を増やし、青年の常勤雇用を拡大することが必要ですが、いかがですか。

昨年はプロ野球選手会のストライキが大きな話題となり、闘うことに大きな共感が寄せられましたが、青年労働者の中では「有給休暇や割り増し賃金があることなど基本的な権利を学んだことがない」との声が少なくありません。北部に設置されるセンターも含め若年者就業支援センターで労働者の基本的な権利について学べる講座などを設けるべきですが、いかがですか。

 

【知事】雇用創出・就業支援計画に基づき全力をあげて取り組んだ結果、17年度中に当初目標の41000人を大きく上回る57000人の雇用を確保することとなった。失業率や有効求人倍率も順調に回復し、府内の雇用環境は改善傾向にある。今後、臨時雇用から常用雇用等、安定雇用への転換が大きな課題。計画に基づき、産業振興や福祉・医療、環境教育など成長が見込まれる分野で常用雇用等、本格的な雇用の拡大をはかっており、過去1年間で雇用が増えた企業数が全国1位となるとともに、若年者就業支援センターで1000人をこえる常勤の就職内定者を出すなど、雇用ミスマッチの解消に取り組んできた。

地域別最賃については、法に基づき、京都労働局で審議会答申を得て決定している。派遣労働者の権利保護について、京都労働局と連携し、安心して働ける労働環境整備に努めている。その内容や整理解雇四要件について、管理監督者セミナーや京都労働ニュースにより周知に努め、中小企業労働相談所の相談を通じ、きめ細かく対応している。また、企業に対し、新卒者等の求人拡大を京都労働局や教育委員会とともに要請しており、今春高卒予定者の就職内定状況の大幅な改善につながった。

若年者の就労について、ニーズの高い福祉・医療施設等の整備を促進するとともに、就職就業支援センターに福祉・医療コーナーを設置するなど、支援に努めている。京都勤労者学園の講座などを通じ、青年勤労者にも学習の場を提供している。若年者就業支援センターにおいて、労働関係法令等に対する相談に応じている。今後とも、雇用の拡大をはかる中で、常用雇用等、安定的な雇用の確保に一層努めていきたい。

 

市町村合併の押し付けをやめよ

 

【光永】このように、増税路線と医療・社会保障の大改悪、さらにリストラ合理化など、耐え切れない痛みが襲っているもとで、府民の暮らしを守る地方自治体としての役割発揮こそ、今、求められています。

ところが、知事は、その役割発揮どころか、京都府でも市町村にも、その役割放棄を求めようとしています。

その一つとしての「トップダウンによる押し付け」は「市町村合併」をめぐる府の動きに現れています。

この間、国は地方に「市町村合併しかない」と強引に押し付けてきました。しかし、地方自治体の将来のあり方を決めるのはそこに住み暮らす住民で、それを無視して上から強引にすすめる合併はまさに自治破壊そのものです。地方自治を守る立場に立つなら、きっぱりやめるべきにもかかわらず知事は、国・総務省と一体となって、おしつけ合併を率先して進めてきました。

例えば1月5日に「京都府のよびかけ」により総務部長や地方課出席のもと、山城地域の7町村長会議が開かれました。報道では、「京都府が調整のため開いた会議」となっています。これは昨年12月に宮津与謝1市4町あてに京都府地方課が連絡文書を出した合併調整のための会議に次ぐものです。私は昨年12月議会の最終本会議議案討論で、「合併を強引にすすめるようなやり方をやめるべき」と厳しく指摘しました。これまで総務部長は「あくまでオブザーバー」と言われてきました。ところが今回の7町村長会議は、まさに「合併新法にもとづく調整」そのものではありませんか。

山城町広報によると、京都府のコメントとして和束、笠置、南山城の「東部3町村の行政サービスについては、木津、加茂、山城の合併と並走して考える」と述べています。これは、住民と議会の意思でいったん解散した相楽郡任意合併協議会を府が調整し、何がなんでも合併するよう仕向けるものです。しかも知事は昨日の答弁で市町村合併について「協議する場を京都府が設定する」と述べられましたが、これこそまさに介入ではありませんか。

知事はマスコミのアンケートに答えて、新合併特例法にもとづく知事による市町村への合併の勧告権について「使う場合もありうる」と答えられた数少ない一人です。まさに今進めていることは、住民、市町村、議会の尊重どころか、地方自治をふみにじる国の合併おしつけのお先棒かつぎそのものではありませんか。

農協・JAの店舗がこの10年で半数以下へと削減されるなど、山間部や周辺部がさびれる中、強引なおしつけ合併は、こうした事態に追い打ちをかけることになることは明らかです。それでも知事は、この間のおしつけ合併が自主的だといわれるのですか。お答えください。

 

【知事】1月5日に相楽郡の7町村長が出席した合併問題協議会は、町村長間で様々な意見が出されたことから、町村長が自由に意見交換し、将来のあり方について建設的議論ができる場を提供するために設定したもの。木津町、加茂町、山城町の3町で合併協議を早期に開始したい旨や相楽全体として地域課題の解決に力を合わせることなどが話し合われた。あくまで、町村の主導的な動きを府が支援するもの。合併の議論には、行財政基盤の強化や専門性の向上が期待できるとする意見や広域化することによりきめ細かな行政が後退するとの懸念の意見などがあるが、合併のメリット、デメリットをふまえ、各地域の将来について真摯に議論することにたいし、府が支援することは、府民福祉の向上を考える広域的団体として当たり前のことだ。

 

府立洛東病院の廃止と経営効率最優先の府政運営について

 

【光永】二つ目に、京都府が経営体として経営効率最優先へと転換することが、府民に何をもたらすのかが、来年度予算に現れています。

今議会の議案提案理由の説明で、知事は「事業のいっそうの集中と選択を行うことにより、総額250億円に上る経営改革を断行」したと述べられました。しかし、本来メスを入れるべき京都市内高速道路や関西国際空港二期工事出資金、丹後リゾート公園整備などは、そのままに、まず生活保護世帯等への夏季・年末見舞金2億6千万円の廃止、子育て支援策や高齢者対策など本来維持すべき福祉予算を軒並み減額しています。

また、和装伝統産業振興関連予算が緊急雇用基金事業を含めれば半額以下になり、しかも、これまで京都の中小企業を育ててきた京都府中小企業総合センターを統合し、経営指導を民間に委ね、予算全体も削減するなど、中小企業・伝統地場産業支援が求められている時に、背を向けました。このように、最も支援が必要な弱い立場の府民に、「自立と自助」を求めるものになっています。

 そして病院事業会計への一般会計からの補助金が4億円も削減されています。これは、12月議会で提案された京都府立洛東病院の廃止と、さらに府立与謝の海病院、府立洛南病院のリストラおしつけを見込んだものです。

病院廃止で現場ではどういった事態が起こっているでしょうか。

 府立洛東病院のある患者さんから手紙が届きました。紹介しますと「昨年12月22日に病院長より通知をうけました。あまりに急な出来事です。私は脳梗塞で右手足が不自由で、生涯治療を受けなければなりません。発病後、知人から『洛東病院はリハビリ専門で有名だから』と勧められ通院を始めました。あれから五年になります。リハビリを受けて初めて一味違うと実感しました。洛東病院は府の誇りであると私は思います。本当は何が廃止の理由なのですか?。一番困るのは患者ですから決断される前に何故患者の意向を聞かれなかったのでしょうか。担当医や職員の方々も困っておられるのではと推察します。しかも、病院を替わればまた検査などでその費用もかかります。『閉鎖するから勝手にどこかの病院を探して行ってくれ』としか思えません」との内容で、知事宛に書かれたものです。伺いますと、府立医大付属病院にもいかれましたが、「リハビリはできない」といわれ、結局別病院をさがすことになられたようです。福祉や医療を「経営効率」「採算性」だけではかった結果、患者さんにこうした影響を与えていることを、知事はどう受け止められますか。洛東病院の患者さんは府立医大付属病院で回復期リハビリも含め対応できるようにすべきではありませんか。お答えください。

 また京都府内では、国保大江病院や精華町国保病院を廃止や民間移譲するなどの動きがでています。町内唯一の公的病院の精華町国保病院は「2年以内に廃止」と報告がされました。しかし「地域医療の守り手」としてのこれまでの取り組みに、「精華町病院問題を考える会」の住民アンケートでは、「住民の命を守るためにはある程度の赤字はやむを得ない」が72.9%、「存続し、その施設・機能を拡充する」が55.4%と圧倒的に存続を求めるものでした。病院の廃止は、安心してすみ続けられる地域づくりの願いを奪うことになるのではないでしょうか。

さらに知事は、「経営改革プラン素案」にあるとおり経営効率最優先の考えを府政全体に本格的に広げようとされています。「プラン素案」では民間企業との共同や役割分担を述べ、そのツールとして導入するPFIによって、府営住宅の建設は、これまで地元中小企業にほぼ100%発注してきたものが大手企業に移るなど崩れてしまいます。また、府民福祉の増進のための公の施設に民間企業が参入できる指定管理者制度の導入も今後個別条例として提案されていきます。さらに、大学法人化の検討など、経営効率最優先で、次々とアウトソーシングが計画されています。

結局、知事の「府庁組織に経営感覚を浸透させる」とは、まさに国と同じ「自治体構造改革」「官から民へ」の名目で自治体の公的役割を投げ捨てることではないでしょうか。

 

【知事】患者の医療保障を第一に考え、主治医が今後の医療ケアについて十分説明し、適切な医療機関の紹介を基本に対応してきた。1月31日には、すべての入院患者が転・退院を完了した。外来患者に対しても、希望に応じて他病院・診療所を紹介することをお知らせしており、昨年10月以降、約1100人の病状などに応じ、府立医大病院も含め、他院の紹介を行ってきた。さらに、患者の相談に応じる窓口を設けるなど、患者の声に親身に対応する相談体制を整えており、今後とも、しつかりと対応していきたい。

 医療分野では、公的病院と民間病院の役割分担を見直ししながら、ともに相まって、府民の健康・安心を支える事が必要。公的病院は政策医療を担うことが大きな意義だが、洛東病院について、回復期リハビリ実施病院の増加など、医療環境の変化により政策医療性がほぼ無くなっているとの包括外部監査等の指摘を受けた。

 

「三位一体改革」について

 

【光永】こうした背景には、「三位一体改革」があります。しかし、これまで知事は「三位一体改革」は地方の自由度を拡大するものと述べてこられました。一方、知事は「税源が十分に移譲されない中、私たちは零細補助金にすがりつき、交付税の配分におびえる−これで地方分権の確立が可能なのか」と新聞で自問されておられます。もともと「三位一体改革」は、地方財政削減のためと骨太方針で示されたものです。それでもまだ「三位一体改革」に幻想をおもちになるつもりですか。地方財政と自治体を切り捨てるやりかたにきっぱり反対すべきではありませんか。お答えください。

 

【知事】三位一体改革」がめざしたのは、住民生活に密着した地方に財源を移譲し、国・地方を通じた行政の簡素化をはかるとともに、国が画一的にサービスのあり方を規定するのでなく、地域の実情をふまえた効果的なサービスができるようにするもの。私が問題にしているのは、「三位一体改革」の趣旨ではなく、実際の解決がその趣旨どおり行われているのかということ。その事を考えずに、単純に賛否を論じるのは飛躍した議論ではないか。なすべきことは、趣旨にそった解決を国に強く主張していくこと。三位一体改革」を隠れ蓑にしようが、しまいが、国の財政的事情から、地方に対し削減圧力を強めてくることは間違いない。地方分権の本旨に立ち返り、住民サービスの維持・向上をしっかり受けとめ、広く国民の理解のもとに議論しなければ、国民不在の議論の中で、地方行政が切り捨てられることを恐れており、そうした事態とならないよう、全力をつくしたい。

 

教育問題について

 

【光永】こうした府政運営は、教育にも現れています。

 その第一は府立高校の再編についてです。

 「府立高校改革推進計画」では、「府立高校の適正化・適正配置」として、「1学年8学級」が望ましいとしました。亀岡以北の北部地域においても「適正規模についての考え方を基本としつつ」「特色ある高校に転換したり、広域的な生徒募集をはかるなどの改善を検討」すると述べています。

しかし、府内の学校では、2004年度版の「公立学校基本数調査」によると、亀岡以北の17校のうち15校が、京都市内で18校中10校が8クラス以下となります。1学年8学級という適正規模にすれば、いったいいくら学校を減らすことになるのでしょうか。しかも、昨日の答弁で「広域的な生徒募集をはかる」と言われましたが、通学圏を広げることになると、通学距離がのび、時間的にも経済的にもさらに生徒や保護者に負担を強いることになります。これでは、1学年8学級の根拠の一つとしてあげられている「クラブ活動の充実」さえ保障できないではありませんか。この点どう説明されますか。

全国で適正規模を1学年8クラスとしているのは、京都、大阪、奈良のわずか3府県で、ほとんどの都道府県では4クラスから8クラスなど弾力的な基準が設けられています。私は1学年8クラスを基準とする大阪府に伺いお話を聞きましたが、定時制高校は半減、20校を超える府立高校を廃止し、その跡地は売却する計画でした。奈良県でも「県立高校再編年次計画」で43校のうち11校の廃止を決定しています。結局、府教育委員会も、経営効率の観点で、多くの府立高校の廃止を目的に、適正規模を8クラスとしているのではありませんか。8クラスであることの客観的な根拠が示せますか、お答えください。

また、すでに2校廃止する計画が発表された山城地域では、通学圏の統合、普通科の単独選抜化、特色選抜の実施など、猫の目のように制度が変えられ、その度に子どもと保護者は振り回されてきました。先月には「府民説明会」が開催されましたが、そこではPTA会長の方が、「毎年かわる複雑な制度で負担感が増している」とのべられたとおり、生徒や保護者がまた振り回されるのです。しかも、どこの学校が対象か分からないという進め方も問題です。住民、父母、教職員から様々な不安や意見が出されるなど、合意がない中、少なくとも廃止についていったん白紙撤回すべきではありませんか。お答えください。

第二に「学力診断テスト」についてです。

昨年12月にOECD・経済協力開発機構とIEA・国際教育到達度評価学会の学力調査の結果が公表され、日本の小・中学生の学力低下が指摘されています。その特徴は学校間格差の広がりと低学力層の増加です。学校現場では基礎的な科目に必要な授業時間が保障されないまま、国連子どもの権利委員会から指摘されたように「過度に競争的」な教育制度がおしつけられてきました。しかし、本来学習によって新しい事柄がわかることは、子どもにとって大きな喜びです。それだけに、すべての子どもたちの基礎学力充実とそのための30人学級の実現など条件整備こそ求められています。

ところが本府では、「教育の充実」として、「学力診断テスト」を小学校、中学校まで広げてきました。現場では、少ない授業時間の中でも、先生が個々の子どもの到達に応じた指導に努力されている時に、「できる学校」「できない学校」とのレッテルをはり、目先の点数をどう挙げるかに追われてしまいます。これで、すべての子どもたちにとって豊かな学びと学力の向上につながるとお考えですか。

第三に、新年度に予定される「教科指導力充実事業」についてです。これは「授業の達人を養成」するとして、府立高校教諭が大手受験予備校から受験指導ノウハウを学ぶもので、「府立高校の予備校化」と識者から批判されています。また府教育委員会は「府立も安閑としていたら、統廃合につながり、生き残れない」と述べられたように、高校教育を子どもの人格の完成をめざす総合的な人間として教育する視点ではなく、まさに受験偏重の大学名や合格数で学校間競争をあおることになるのではありませんか。これでは「授業の達人」ではなく、「高校の予備校化」そのものではありませんか。お答えください。

教育問題の最後に一言申し上げます。先日寝屋川で起こった事件について、犠牲となられた先生に心からのご冥福とお見舞いを申し上げます。私も保護者の一人として大変衝撃をうけています。子どもを守る事は学校のみならず社会全体の責任であり、私たちにもそのことが突きつけられています。わが党議員団は子どもの安全と発達をささえる草の根の取り組みを広げるとともに、そのために行政も万全の対策をとるよう強く求めるものです。

 

【教育長】府立学校あり方懇話会の意見もふまえ、@生徒の多様な進路希望に対応できる講座設定や教育課程の編成が柔軟に行える、A部活動や学校行事などにおける活力ある教育活動の展開が行える、B生徒どうしの相互啓発を通じた人間形成がははかれる、などの視点から、学年制の全日制高校については1学年8学級程度を標準的な規模とした。専門学科単独高校については、産業・社会の動向や志願者の状況などをふまえ、北部地域では、生徒の通学条件や地域の状況などを勘案し、総合的に検討していきたい。

 山城地域における高校の再編整備は、学校規模の適正化と特色ある学校配置を行い、一人ひとりの個性・能力を最大限に伸ばす教育を展開しようとするもの。保護者へのリーフ配布、懇談会・説明会の開催などを通して、広く府民の理解を求めながら進めてきている。同地域における選抜制度の改善は、中学生が行きたい高校を選択できる範囲を広げたことにより、学校の活性化がはかられており、魅力ある高校づくりを推進していく。

 学力診断テストの目的は、@児童・生徒一人ひとりの学力の状況を客観的に把握し、きめ細かな指導を行う、A学力の状況を分析し、各学校の授業改善をはかる、ことにある。このテストにより、児童・生徒の基礎学力の定着や授業改善に着実な成果が上がっている。今後、さらに、この趣旨を徹底していきたい。

 教科指導力充実事業は、高い教科指導力を持つ教員の育成を狙いとするもので、公立高校の使命は、幅広い進路希望を持つ生徒を受け入れ、その中で、一人ひとりの個性・能力を最大限に伸ばし、生徒の希望する進路の実現をはかることにある。教員の教科指導力を高め、大学進学をめざす生徒に対する指導を充実することも重要。

 

危機管理について

 

【光永】次に危機管理について伺います。

今年は阪神淡路大震災から10年です。また、昨年の新潟県中越地震やスマトラ沖地震など大規模災害が相次ぐ中、災害に対する不安と関心は高まっています。その時、府民が求める危機管理とは、SARSや鳥インフルエンザ、台風被害のような自然災害などにたいする防災と救助に行政として最善を尽くすことです。また災害に強い地域づくりに全力をあげることも当然です。先の台風被害では、さまざまな検証すべき問題が浮き彫りになりましたが、中でも、自然災害の場合は初動の現場での機動的な対応、マンパワーが一番大切ですが、地方機関の再編によって、中丹および丹後管内では20人前後も土木事務所関係職員の人数が減っているのです。危機管理というのなら、まずこうした体制を見直すべきではありませんか。

一方、自然災害などと武力攻撃とは全く違うにもかかわらず、知事は、危機管理の名のもと、昨年5月1日の組織改編と人事異動に際し、知事直轄の「危機管理監」を新設し、「危機管理担当」として防衛計画立案や実戦部隊指揮の経験がある自衛官一等陸佐を採用されました。また京都市との防災協定に「武力攻撃時災害」を盛り込み、危機管理マニュアルの策定など、まさに「危機管理」の名による動きがあわただしくすすめられています。さらに、今議会には、特定公共施設利用法と国民保護法にもとづく条例が提案されています。これらは政府が「武力攻撃予測事態」と判断すれば、自衛隊を戦闘地域に派兵し米軍を支援し、医療機関・放送施設や府民はその戦争に協力を余儀なくされてしまうのです。しかも、罰則までつけて国民に強制力をもって、平時から戦争に備えさせる体制づくりをすすめるものです。

 しかも、今議会に提案されている「災害派遣手当てに関する条例一部改正案」は「戦争手当て」とも言うべきもので、軍事的対応に自治体が手当てを出すことは認められません。府民の願いである武力攻撃などの事態が起こらないように最善の努力をすることが知事の役割ではありませんか。どう考えられますか、お答えください。

また、2月10日からアメリカ第七艦隊所属のイージス艦「フィッツジェラルド」が舞鶴港に入港する際、港湾管理者の知事は、府民、舞鶴市民の安全をまもる立場から抗議の声をあげるべきでした。なぜ、その声を上げなかったのですか。お答えください。

 

【知事】台風23号に対し、広域振興局では災害対策シフトをすみやかに設置し、関係機関の連携のもと初動体制を確保し、災害対応に全力をあげた。昨年5月の地方機関再編に際し、土木事務所については12から7への中規模再編に留め、集中的に対応できるメリットも生かし、中丹土木事務所では70人の職員を集中的に動員し、初動体制の確保をはかるとともに、本庁や南部地域からの応援を得るなどの体制をとった。今回の災害は、今までの経験をこえる大規模なものであり、多くの課題があった。学識経験者や国・関係市町等との防災関係機関による台風災害にかかる対応委員会の中間報告でも、初動体制の確保および災害対策本部体制の強化について指摘を受けている。今後、災害時における人員体制の確立や配置、訓練の実施などの検討を行い、運用面での強化に努め、災害対応に万全を期していきたい。

 国民保護について、いかなる事態でも、府民の生命・身体・財産を守る事がなによりも重要な責務。武力攻撃事態において、府民の安心・安全の確保に万全を期すため、全力をつくしたい。世界の恒久平和を強く念願しており、政府への要望において、国がその責任において国際平和を誠実に希求するよう強く求めている。

 米艦船の舞鶴入港については、日米地位協定上、通告により入港できるが、今回の入港は、港湾管理者の使用許可を要しない自衛隊岸壁を使用したものであり、港湾管理上の問題は特に生じていない。

 

府警本部の捜査報償費等疑惑について

 

【光永】次に知事の姿勢が問われる問題として京都府警察本部の捜査報償費と旅費についての監査結果について質問します。

京都府監査委員は1月14日、「警察本部の捜査報償費及び旅費に係る監査結果」を知事に提出しました。そこでは捜査報償費のうち捜査協力者への現金謝礼について、監査対象となった刑事部三課だけでも領収書がない支出が1999年度で993万円・81%、2000年度は847万円・73%にものぼっていることが明らかにされました。こうした領収書のない支出が本来許されるでしょうか。北海道の監査委員は、領収書のないもの、また支出の事実が確認できないものについて、道警察本部に捜査協力者の証言等の確認方法について検討を求めました。その結果、道警察本部の説明責任が果たせなかったものは「支出の確認ができないものは返還すべき」として返還を求めています。領収書のない支出は、まさに「不適正な支出」であり、返還を求めるのは当然ではないでしょうか。お答えください。

また、監査報告は、捜査報償費の現金謝礼について、99年に比べて2001年は約6割の減少、2003年は約8割もの減少となっていることについて、「なぜ2001年度を境に急激に変化したのか」「さらに解明の必要がある」と指摘しています。その理由について、京都府警本部長に説明を求めます。

監査委員は「何度も警察に要請したが警察から捜査協力者への接触を制限され、監査に限界があった」と述べています。まさに監査委員として府民の税金が適正に執行されたのか監査できなかったと述べているのです。知事として警察に全面協力を求めるべきですが、知事はどう対応されますか。お答えください。

 

【知事】昨年、監査委員に監査の実施を要請し、特別な監査が実施された。1月にまとめられた監査結果報告では、捜査旅費については、領収書のない問題は生じていない。捜査報償費では、領収書添付のないものがあり、現金を受けとった情報提供者への危害が及ぶ恐れがあるなどの理由により、当該情報提供者への聞き取り調査について、警察の協力が得られず、執行の事実を明確に確認できなかった。そのため、監査委員において、捜査報償費について改めて警察本部による点検と説明を要請した。警察本部が、府民の信頼を回復するため、本部長に対し、監査意見に従い、徹底した内部調査による点検を進め、府民に対する説明責任を果たすよう強く要請した。

 

【警察本部長】捜査費は、監査結果では、不正・不適正な事実は認められなかったものの、さらなる内部調査等を要請されており、知事からも強い要請を受けており、現在、個別の執行について、詳細に調査中。

捜査費減少の理由については一概には言えないが、近年、犯罪の発生件数が急激に増加し、捜査員が初動捜査等に手をとられたり、府民から寄せられる相談事案が大幅に増加し、その処理に多くの負担が伴うなど、腰をすえた情報の内偵捜査等に手が回らないこと、都市化・核家族化・価値観の多様化等により、国民の警察に対する協力意識が希薄化し、情報収集活動が困難化していること、科学捜査の進展により、従来のような協力者による捜査が低調になっていることなどから警察活動をめぐる情勢が変化していること、さらに、小額の謝礼等については、捜査雑費制度の導入が捜査費の執行に影響を与えたのではと考えている。

 

地球温暖化防止対策について

 

【光永】次に、地球温暖化防止対策について、お伺いします。

2月16日に「京都議定書」が発効し「温室効果ガス排出量を2010年までに6%削減」という政府の目標は国際的義務を伴う法的拘束力をもつものとなりました。京都は議定書採択の地として、このとりくみの先頭に立つことが期待されています。

わが党議員団は、人類の未来にもかかわる緊急の課題として、地球温暖化防止の取り組みを重視してきましたが、温室効果ガスの削減が期待できる具体的措置を盛り込んだ実効ある地球温暖化防止条例をつくりあげる立場から、いくつかの提案を行い、知事の見解をお伺いします。

昨年12月にブエノスアイレスで開催された気候変動枠組み条約第10回締約国会議・COP10では、EUなどの諸国が温室効果ガスを30%から最大50%削減が必要と表明されました。議定書発効の地・京都の知事としてヨーロッパ諸国が訴えたような本格的な削減にむけた認識と決意はいかがですか。また、抜本的な削減をすすめるため、本府の90年比での温室効果ガスの現在の削減到達状況を把握されていますか。お答えください。

 さて、一足先に京都市で昨年11月に「地球温暖化対策条例」が成立しましたが、当初、条例大綱案にはなかった「10%削減」の目標が市民団体などの強い要請と運動により、条例に明記されました。本府の条例についても、地球温暖化防止に向けて府のはたすべき役割を明確にするとともに、少なくとも「京とアースの共生計画」の目標にある「8%」以上の削減目標を条例で明確にすること、事業者からの削減計画等の提出義務付けや自然エネルギーの利用促進など、目標達成のための実効ある具体的な措置を盛り込むことが必要です。そして、府政のあらゆる分野に「環境」の視点をつらぬき、2010年までの削減目標達成に向けて、全庁的に推進する体制をつくりあげることが重要だと考えますが、いかがですか。

 また、条例案策定の段階から府民参加・協働をつらぬき、専門化や府民・関係者の英知を集めることが大切です。各種の政策提言や「京都省エネラベル」の発案などに積極的役割を果たしてこられた市民団体のみなさんは、よりよい府条例をつくりあげるための府民的な論議の場の保障を強く願っておられます。こうした声を生かすべきですが、いかがですか。

また、「地球温暖化対策プラン」の府民への普及・啓発を抜本的に強めるとともに、「プラン」にもとづく個別施策の着実な推進をはかり、府民的な取り組みを広げていく必要があります。また、温暖化対策推進法で地方自治体に策定が義務付けられた「実行計画」の策定は、京都では10自治体(26%)と全国平均以下と大変遅れています。市町村に対する人的支援や財政面での援助も含め、府としての取り組みの強化が求められているのではないでしょうか。その点で本府が設置した「地球温暖化防止活動推進センター」は、現在3人の常勤職員の方が日夜がんばっておられますが、体制のいっそうの強化が必要で、府北部センターについても、府として検討すべきと考えますが、いかがですか。

あわせて、地球温暖化防止条例をつくるなら、その目的・理念に反する施策は見直すべきです。年間880万トンものCO2を排出する舞鶴石炭火力発電所や自動車交通量を増やす京都市内高速道路の建設などは、地球温暖化防止に逆行するものではありませんか。お答えください。

 

【知事】従来から、環境を府政の重要な柱と位置付け、全庁をあげて取り組んできた。地域からの取り組みをさらに積極的に進める必要があり、その一環として条例を制定することとした。条例の内容については、環境審議会に諮問するとともに、様々な形で府民や事業者の意見を伺い、具体的な内容を詰めていくが、分かりやすい目標や手法を盛り込み、府民・事業者の意識を高めて、行動を促進するものにしていきたい。90年度比の温室効果ガスの排出状況については、「京都府環境白書」の記載のとおり、簡易推計によると二酸化炭素は減少傾向を示しているが、府域におけるより正確な排出量について、条例の検討とあわせ、把握することとしている。

「地球温暖化対策プラン」について、昨年12月に見直しを行ったが、今後、条例の検討とあわせ、改正プランにもとづき、施策の推進に取り組んでいく。地球温暖化防止センターは、様々な団体や地球温暖化防止活動推進員の活動支援、ウッドマイレージCO2の認証を行うなど活発な活動を行っている。今後、センターに対する支援を強め、活動基盤の強化をはかるとともに、推進員の増員や様々な地域団体との連携強化により、センターの活動を府域全体に広げていきたい。

地球温暖化対策を実効あるものにするためには、生活や産業を支える基盤施設の整備との両立をはかる中で持続可能な社会の構築という観点で推進することが必要。

 

景観法の活用について

 

【光永】環境問題に関連して、景観法にもとづく本府の取り組みについて、伺います。

私は、これまで地元北白川の半鐘山の乱開発をやめさせる取り組みを住民のみなさんと8年ごしで取り組んできました。こうした各地の草の根の取り組みに押され、昨年の国会でようやく景観に着目した景観法が成立し、構造物の最低限の安全性さえ確保されていれば、全国どこでも同じような建物を建てることのできた従来の開発にたいし、高さ制限やデザインの規制が可能となるなど、一定の歯止めがかけられるようになりました。これは、日本の都市計画にとって積極的な意味をもつものです。本府としても、景観法を積極的に活用して、世界遺産にも登録された貴重な景観などを保全すべきではありませんか。今回、都道府県・市町村で景観計画を策定することが義務づけられ、計画の策定にあたっては、その区域の自然的社会的諸条件に応じた施策を策定し、実施する責務を有するとされていますが、府内自治体での景観計画の策定状況や景観重要建造物の指定のメドはどうなっていますか。政令都市、中核都市以外の市町村は、都道府県と協議して、計画についてどちらが対応するのか決めることになっていますが、その協議の状況はどうなっていますか。お答えください。

 

【知事】昨年12月に法律が施行され、法の活用に向けて、市町村説明会やNPO団体等の意向調査を実施してきた。よりよい景観の形成について、まちづくりとの関係をふまえることが必要で、市町村の主体性を重視することが重要。いくつかの市町村で、景観計画作成の主体で景観行政団体への意向を示しており、宇治市と協議中。できるだけ多くの市町村が、景観計画作成に取り組むよう、支援していくとともに、広域視点からの景観計画についても検討していきたい。

 

日本国憲法と平和について

 

【光永】最後に日本国憲法と平和について伺います。

イラクでは、米国が「有志連合」とよんだ戦争連合が崩壊をはじめ、軍隊を派兵した37の国の中でも18カ国で撤退あるいは撤退表明がされ、派兵継続に固執している国は19カ国と、もはや世界のごく一握りとなっています。ところが日本政府は、アメリカの要請に積極的にこたえ、憲法および世界とアジアの平和の流れに真っ向から逆らう道を歩み続けています。また、アメリカの『ミサイル防衛』戦略の一翼を日本が担う「ミサイル防衛」システムのため、弾道ミサイルの「飛来するおそれ」がある場合の迎撃や、「緊急の場合」に首相の命令がなくても迎撃を可能にする自衛隊法の改悪の動きも重大です。

3月20日にイラク戦争開始から2年が経過します。イラク問題の解決を図るためには、国連中心の枠組みに移すことこそ必要です。私は、隊員がすでに向かった福知山駐屯地に申し入れを行いました。知事として日本政府にイラクから自衛隊を撤退させるよう求めるべきです。

今年は戦後60年です。アジアの17の国と地域が加入している「東南アジア友好協力条約」の基本原則には「意見の相違または紛争の平和的手段による解決」「武力による威嚇または武力の行使の放棄」の原則を謳っています。これは日本国憲法第9条の精神そのものです。まさに9条は新しい時代の国際関係を律する原則として、世界とアジアの共有の財産となっているのです。知事は、昨年9月定例会でわが党本庄議員の質問に答え、「自由かっ達な議論が行なわれるべきもの」と述べられましたが、知事は議論をすれば憲法9条を変えてもよいと考えるのか、それとも憲法9条を守るべきとされるのか、はっきりとお答え下さい。

わが党議員団は憲法9条をないがしろにする企てと対決し、アジアと世界の平和の流れをいっそう進める立場から、大きな世論と運動を広げるとともに、自治体の本来のあり方を取り戻すことを決意して質問を終わります。ご清聴、ありがとうございました。

 

【知事】イラクでは、国民議会選挙が実施され、新しい国家建設が進められており、自衛隊の活動は、世界の平和と安定を目的に人道支援として行われている。一日も早い治安の早期確立と政治プロセスの確保など、国際的な協力・協調のもとに、平和で一日も早く安心した暮らしが送れるよう願う。自衛隊の活動については、隊員の安全な任務遂行がなにより重要で、国はイラクの状態について説明責任をはたし、安全確保策を徹底すべき。

 国会の衆・参両院において全会派で構成する憲法調査会が設置され、様々な調査が行われている。多くの国民が憲法を身近なものとして関心を持ち、平和を基本理念とした広範な議論が展開されるべきで、「まず最初に賛否ありき」というものではない。

 

光永議員の再質問と答弁

 

1)大増税、国民負担増について

 

【光永】知事は「受益と負担」をくり返し言われたが、先ほど、私は、受益は減っているのに負担は増えていることを述べた。これでは、制度が守られても国民・府民の暮らしが守られないことになるのではないか。消費税について「増税に反対」と言われなかったが、1月5日の新聞で知事は財政運営にかかわって「消費税のような偏りの少ない税目の移譲が最善」と述べられた。結局、「消費税は必要」と考えているから、増税に「反対」といえないのではないか。お答えください。

 

【知事】少子高齢化の進展や企業活動、個人のライフスタイルの変化という社会環境の変化の中で、どうしたら持続・安定可能な制度をつくるかという問題で、「消費税が上がったらいい」という議論をしたことはない。

 

2)洛東病院廃止について

 

【光永】「他の病院に紹介している」「府立医大に紹介した」と答弁されたが、昨日も患者さんから電話があったが「ないか。府立医大に電話すると、府立医大では対応できないと言われた。どうしたらよいのか」との不安と怒りの声だった。経営効率のみでトップダウンで決めて、その結果、困っているのは患者さんと職員のみなさんである。このことを理解していないのではないか。質問で紹介した手紙は、知事宛に出されたもので、すべての会派のみなさんにも送られたと聞いているが、知事は手紙を読んだのか。改めて、患者の声を直接聞くべきだ。先日の保険医協会の代議員会で了承された運動方針では、専門的立場から洛東病院廃止の凍結を求めている。いくつかの検討課題を上げているが、そうした検討が出来ていると考えているのか。出来ていないのなら、廃止を凍結すべきだと考えるが、お答えください。

 

【知事】包括外部監査やあり方検討委員会から「政策医療性がほぼなくなった」との指摘を受け、全体の環境の中で、地域のリハビリテーションの支援も行いながら、廃止を決めたもの。手紙は読んだが、さらに、患者の不安に応える窓口をしっかりと設け、親身に対応していきたい。

 

3)市町村合併について

 

【光永】「合併は市町村が決めて府が支援する」と言われるが、2月20日に木津・加茂両町で開かれた「住民が主役の合併論議を!」とする集会では、「合併論議は狐と狸の化かしあい。泥舟には乗りたくない」との意見、「判断材料が少ない」との意見も多数出された。また、京都府の市町村行政改革支援委員会委員が講演の中で、「合併をかかげる国の総務省、財務省も、実際合併すればどうなるのかは分かっていない」と述べられている。一方、本日の新聞報道では、相楽の7町村長会議に出た総務部長が「円滑に進行するよう支援する」と述べたと伝えられている。合併以外の選択肢は考えていないのか。答弁をお願いする。

 

【知事】合併するかどうかは、市町村が考えること。知事が「合併するか、しないか」を選択する訳ではない。

 

4)地球温暖化防止対策について

 

【光永】知事の答弁のとおり、90年比の排出状況は簡易推計であり、本格的な調査は1995年、今から10年前だ。新たな条例を作るというのなら、しっかりとした現状把握が必要で、遅れていることを認識しているか。また、現状把握に全力をあげるべきだが、その決意をお聞かせください。

 

【知事】状況把握については、条例の検討とあわせて、きちんとした調査をしていきたい。

 

5)警察の報償費について

 

【光永】領収書がない支出については、知事は返還を求めるべき。「全面的な協力を求めたい」との趣旨の発言をされたが、領収書のないものについて、どうするのか。ここを明らかにし、明らかにならないのなら、知事として返還を求めるべきだと思うがどうか。

 2001年から急激に報償費が減少した理由について答弁があったが、昨年3月30日の参議院内閣委員会で吉村警察庁長官官房長が答弁された議事録では、「刑法犯の認知件数が急激に増加している」「国民のみなさんの警察に対する協力意識の変化もある」「警察に寄せられる相談業務が増えている」「総じて、渉外活動のウエイトが低くなっている」。だから、「捜査費の執行額が減ってきているのではないか」と答弁されている。本部長の答弁と吉村警察庁長官官房長の答弁は、全く似ている。全国どこでも、この時期から減って、全国どこでも同じ答弁となっている。実際には、2001年から情報公開法が施行され、これまで領収書なしで通用してきたものが通用しなくなるからではないのかと考える。その頃、米田本部長は警察庁の会計課長であったから、そうした論議がされていたことは、よくご存じのはずだ。捜査報償費急減の理由について、情報公開法との関係があるのか、ないのか。お答えください。

 

【知事】監査意見に従い、内部調査による点検をすすめ、府民への説明責任をはたすよう強く本部長に要請した。

 

【府警本部長警察庁官房長の答弁については、定かでない。京都における犯罪の急激な増加、相談件数の急激な増加は、おそらく全国と同じような傾向にあり、推定するところ、そういう理由があるのではないか。情報公開法の影響については、定かでない。小耳にはさんだ話だが、「情報公開制度のもとであると、自分の名前がどこかに出るかも知れない。だから協力はできない。お金は欲しくない」という者が現れてきたという話は聞いたことがある。捜査費は、個別の犯罪捜査ごとに大変、状況が異なる。それぞれの個別の執行について、適正さをチェックしていきたい。