05年度予算特別委員会 知事総括質疑 2005年3月18日
梅木 紀秀(日本共産党 京都市左京区)
「府民の安心・安全」を守るため、米艦船の入港拒否を
【梅木】日本共産党の梅木紀秀です。まず、府民の安心・安全の問題に関わって質問します。
アメリカのミサイル防衛構想で、昨年10月からアメリカ軍は日本海にイージス艦を常駐配備させています。2月10日から14日に、舞鶴港にイージス艦が入港しました。そのさなか、2月13日の夜、西舞鶴で、帰宅途中の女子中学生が米兵らしき外国人数名のグループにとり囲まれるという事件がありました。この少女は大変驚いて逃げたということですが、心に深い傷を負ったということです。この事件を知事はご存知ですか。どう対処されましたか。お聞かせください。
【知事】米艦船「フィッツジラルド」が入港中に、舞鶴市内では地元警察署でパトロールの強化等が行われたが、2月13日午後10時半ごろ、JR西舞鶴駅で、米兵によるものかどうかは断定できないが,女子中学生に対する外国人による声かけ事案があった。この事案については、被害届も提出されておらず、正式な事件とはなっていないが、府民の安心・安全を脅かす事案が生じないよう、今後とも関係機関と連携し対応していきたい。
【梅木】舞鶴市議会でも取り上げられ、「米兵と特定できない」と市長が答えています。たしかに特定はできないが、その少女に立証しなさいということになってはダメで、立証できなければ泣き寝入りということにはなりません。
げんに、イージス艦が入港しており、市民の目から見ても、数名のグループが歩いていたら米兵だろうと思われる状況にあります。今後、イージス艦が何回も舞鶴港に入港するといわれています。「府民の安心・安全」を守るという立場から、米軍に対して言うべきことは言うべきです。沖縄の米軍基地などでも、いろんな事件が頻発しています。簡単に米艦船の入港は認めないで、拒否すべきです。
今日3月18日は、30年前、神戸港が非核「神戸方式」をとった日でもあります。地方自治体がきっちりとした態度をとることができるということを申し述べておきたい。
府民の保険料や税等の負担増について、知事はどう考えるのか
【梅木】次に、府民の暮らしに関わって、大変な事態となっています。
ここにパネルを用意しました。京都市の場合ですが、年金収入317万円の方の場合、公的年金控除後の所得が163万円のご夫婦の場合、これまで住民税・所得税が非課税だったものが、来年度から課税されることになり、新たに20280円の所得税と住民税がかかります。ここに、京都市の国保料改悪が提案されていることとの関係
で、昨年度は国保料と介護保険料の合計19万9382万円の負担だったものが、改悪後は35万8742円になります。これは、配偶者特別控除がなくなるということで、京都市が国保料を値上げしようとしている影響について、京都市の職員につくっていただいた資料です。
こういう例が、老齢者控除の廃止、公的年金控除をやめるという国の改悪、国保料の改悪、こういうものが府民の暮らしを直撃しています。知事は、いままでの私どもの質問、「国に対してキッパリものを言うべきではないか」「府民の暮らしを守るべきではないか」という質問に対して、いつも「租税負担の高さだけを議論するのは一方的。受益と負担の問題として議論すべき」と答弁してきました。改めて、こういう実態が明らかになっている中で、これから、消費税の増税、介護保険料の値上げ、ホテルコストの導入なども言われています。こういう府民の目から見ると、大変なことになっているのに、まだ、そのように言われるのか。お答えください。
【知事】少子高齢化の本格的な時代を迎え、どうやってこの社会を継続的に維持していくかということを、国会でも熱心に論議されている。私どもはつねに地方団体の立場から、弱い人たちの立場、セーフティーネットをしっかり張っていただきたいとお願いし、地域におけるセーフティーネットとして、京都府も全力をあげて取り組んでいくといつも申し上げている。
【梅木】暮らしの実態から見て、府民の目線からどういう行政をしていくのかが一番大事なこと。公的年金控除がなくなり、老齢者控除がなくなると、これからの改悪でこの額だけではすみません。私の計算では、この例の場合、53万円の負担になります。公的年金控除が140万円から120万円に下がると、国保料の所得割が8%あるいは7%という自治体がありますが、それだけで国保料だけで1万5000円、6000円の値上げとなります。負担が大変弱い立場の人のところに回ってきます。この事をしっかり認識していただきたい。
知事は、「受益と負担の問題」とおっしゃられるので、負担の問題について伺います。このパネルをご覧ください。財務省の資料です。
97年と2003年の比較ですが、資本金10億円以上の大企業の経常利益は6兆円増えています。役員報酬・配当も2兆円増えています。その一方で、従業員の給与は4.5兆円減っています。
こういう状況になっている時に、政府がやろうとしているのは、定率減税の廃止です。大企業に対する法人税率は30%に引き下げられたままです。高額所得者の最高税率も99年に一緒に下げましたが、所得税率37%です。儲かっているところはそのままにして、定率減税を下げる。負担がどこにいくのかということです。とるべきところが違うのではないか。どう思われますか。
【知事】一面的なことを言われては困る。定率減税のあり方と全体の租税負担のあり方について議論せずに、その部分だけとりあげるのは一面的だ。全体の負担の問題をしっかり議論し、持続安定可能な社会をつくっていくことが、私どもに課せられた大きな役割である。その中で、都道府県はしっかりとセーフティーネットを張らなければならない立場にある。
【梅木】知事は、三位一体改革では、「国に言うべきことは言う」と財政の面から言われますが、府民の暮らしの面からは言わない。これから、「負担と受益」のことということで、消費税の増税などが議論されていきます。府民のみなさんの声をしっかりと国に届けるという仕事も、ぜひ、やっていただきたいと思います。
利益を上げているところに負担を求めるべきです。史上空前の儲けをあげている日産の取締役7人の役員報酬は、一人平均2億3500万円、16億円です。大変な高額の収入です。この人たちへの最高税率を下げることで、減税は一人年間3000万円平均です。大変な額です。こういうところの減税はそのままにして、お年寄りに税金をかけていく、負担を重くしていく。こういうやり方は、改めるべきではありませんか。もう一度、知事に考えていただきたいと思います。
府が支援すべきは、中小企業、伝統・地場産業
【梅木】次に、誰が利益を受けるのか、受益の問題について質問します。2月28日、日産の子会社「ジャトコ」は八木工場の増設計画を公表しました。知事は今議会に、企業誘致の補助金を「5億円から最大20億円に拡大」し、「既存企業の増設も対象にする」と提案していますが、史上空前の儲けをあげている日産、その子会社のジャトコのための拡大です。新たな工場を建設できるということは「儲けている」「体力もある」ということです。体力のある企業に、なぜ補助金を上乗せするのですか。いま日本全国で札束による企業誘致競争が広がっています。なぜ、体力のある企業を支援するのか。知事の考えをお聞かせください。
【知事】ジャトコが新しく増設した方が京都にとって良いのか悪いのか、その点を言わずに、部分だけを言うのは、偏った議論ではないか。ジャトコが来た方が良いのか悪いのか、その上にたって梅木議員がどう判断されるのかが非常に重要。共産党も、企業誘致の条例については、全会派一致で「大いに良いことだ」と決めたこと。その後、補助金のレベル・水準をみて見ると、正直言って20億円でも低い位。十分に経済効果を見なければならないし、府民の負担も考える必要がある中で、均衡をとった形で今回やっていることをご理解いただきたい。
【梅木】私は、企業誘致に反対している訳ではありません。京都府が一番支援すべきところはどこなのかということです。450人の雇用のためにということを否定するものではありませんが、たとえば、伝統・地場産業は京都で3万人以上が働いていますが、ここに対する補助金、和装・伝統産業への予算は2億2000万円です。減額されています。雇用の関係では、緊急雇用創出事業の予算もバッサリ削られています。京都の経済を建て直し、雇用を守るために、府が支援すべきは、京都の地に根づいた中小企業、伝統・地場産業です。このことを指摘して、次の質問に移ります。
税金のムダ遣いをやめて、府民の暮らしを守る役割をはたせ
【梅木】次に、財政運営について質問します。
来年度予算案で、知事は「250億円の経費を縮減。経営改革を断行した」と自慢していますが、やっていることは、洛東病院の廃止、府立医大や府立病院への補助金の削減(7億円)、生活保護見舞金の切り捨て(2億6000万円)、私学助成の削減(3億3000万円)など、暮らしの予算を削ることではありませんか。その一方で、若いお母さん方、お父さん方から要望の強い子どもの医療費の助成拡大は「お金がない」とそのままにする。耐震補強工事への補助も急ぐべきですが、こういう府民の願いには背を向けています。「250億円、経営改革をした」と言われますが、ムダを削るべきところはあります。そこで、お聞きします。
まず、同和奨学金の償還対策事業についてです。この事業は、高校・大学の同和奨学金の返済を府が肩代わりする事業です。奨学金の額は、一人平均、高校で103万円、大学で370万円です。貸与残高は現在68億円で、その返還に来年度も3億4900万円の予算が組まれており、今後20年近くも続きます。医学部を卒業したお医者さん、夫婦とも公務員という場合も、すべて京都府が肩代わりするとなっています。京都市の住民訴訟の結果、2月に判決が出ましたが、「全員一律に肩代わりして払うのは問題」という判断を下しています。この事業こそ、ただちに廃止すべきですが、いかがですか。
【知事】いろんな削減がすべてマイナスと言われるが、その反面、例えば低所得者対策でも、母子家庭対策で、学校の軽減補助でも、匠の公共事業でも、みんな上げている。削ったところだけ言って、充実したところを言わないのは、本当に一面的である。バランスのとれた形で言っていただきたい。
同和奨学金の償還対策資金事業は、同和問題の解決の上できわめて重要な課題であった教育の機会均等を実現するために、昭和36年、蜷川府政の時代に、府独自に創設された返還を必要としない給付制の高校奨学金制度が、そもそもの始まり。その後、追随した国が、奨学金を給付制から貸与制に変えた。その時に、これを活用しながら償還対策資金ということで、従来の給付制度が果たしてきた効果を守るという形で、この制度ができたもの。その結果、府内同和地区の高校進学率が大幅に改善されたという実績がある。同和対策の特別措置法が終了した平成13年末をもって新規の貸付をやめた。問題なのは、現在あるのは、同和事業の整理費として、過去の貸付分について所要の予算を講じている。仮に、この予算を計上しなければ、過去において、「返還を要しない」ということを前提にこの制度を活用してこられた方々に返還を求めることになるので、思わぬ不利益を生じさせることになり、行政との信頼関係が全く根底から覆される事態になり、難しい問題がある。
【梅木】「削減したところばかり言う」と言われますが、新聞を見ましても、こういうことをやりました、こういうことをやりましたと、匠の公共事業とかが出てきます。昨年も同じでした。そういう意味で、知事がいろいろな宣伝をされている中で、我々が一緒になって宣伝しても仕方がありません。ここが削られているということを言うのは当然ではありませんか。私学助成が削られていると言います。知事は、そのことを言われたら困るかもしれないが、しっかりと受け止めていただきたい。
同和奨学金の償還対策事業ですが、歴史的な経過はある、進学率を上げるなどの効果はあるかも知れませんが、この奨学金で入学された方は、医者になっても、すべて府が返還する。こんな制度は、もうやめるべきです。全国的にはとっくに廃止されています。いま、税金の使い方が大きな問題となっている時に、いまだに、医者であろうが、夫婦公務員であろうが、同和対策としてやられてきた奨学金をすべて府が肩代わりをするということは、やめるべきです。収入がない人には、生活保護基準の1.5倍以上の場合は国が免除しています。そこのところを十分、ふまえていただきたい。
中止すべきは、これだけではありません。来年度予算で「未来づくり交付金」の中から、同和浴場の改築、58世帯のために1億6000万円の計画で、8000万円の府の補助が使われます。また、各地で同和関連の水洗化事業に補助金が支出されているではありませんか。ただちにやめるべきです。指摘しておく。
畑川ダムも、福田川と同様に見直すべき
【梅木】次に、畑川ダムについて伺います。
2月に京丹後市の福田川ダムの中止が決まりました。網野町の水需要予測が過大であったこと、合併で京丹後市として水を調整することができるということですが、府がその気になれば、合併しなくても調整できたのです。げんに、3月2日の公共事業評価審査委員会で、福田川ダムの中止が決定されましたが、委員から、「京丹後市ができたから水融通ができたというのは安易である」「府が事前に調整すべきだったのではないか」「このような問題が他の事業でもあるのではないか」と指摘されています。畑川ダムの場合、建設費は77億円、地元住民の負担は14億2000万円です。同じように見直すべきですが、いかがですか。
【知事】私どもも、宣伝は片面だけやっているのでなく、事務事業評価の中で府民に示してやっている。そのあたりを、一面だけ施策の推進をしている訳ではない。
福田川ダムについては、共産党も地元網野町で推進の決議をされてきたもの。私どもは、しっかりとその必要性を検証し、再評価をかけて「中止」ということにした。非常に客観的な中で、本当に府民の需要を考えて、再評価の中で問題を解決している。
畑川ダムについては、平成15年11月に、公共事業再評価審査委員会において、その水需要予測について審議していただき、「畑川ダムの事業計画が妥当である」という結論を得て、やっているもの。最近では、下流の黒部地区でも民家浸水の被害をうけており、改めて、畑川ダム早期完成の要望が地元から出されている。これからは、財政事情の観点からコスト縮減は必要だが、事業を進めていきたい。
【梅木】乳幼児医療の補助を増やすなど府民の要望はたくさんあります。知事は「250億円の削減」、経営改革を府民のためだと言い続けてきましたが、どこが府民のためなのか。もっともっと、削らずに援助すべきところ、暮らしが大変なので新たに援助すべきところがあるのではないかと申し上げています。
畑川ダムの問題ですが、水害対策というのはあります。以前に、ここで知事にお尋ねしました。河川課に聞きますと、水害対策というのは利水に付随するものです。ダムを作らないということになれば、災害対策は、もっと安い経費でできます。ダムをつくるということになれば、これに金を合わせましょうということになってきます。先日も本会議答弁で「水害対策もある」と言われましたが、利水のために必要なのかどうかをしっかり検討する必要があるということで、水需要予測の問題も指摘してきました。以前に、再評価委員会で検討された資料が出されていましたが、他の町から水を引くことは無理だ。和知ダムから取るのは無理だという説明のままに、再評価委員会の結論が出されたものでした。
福田川ダムについても、平成10年の再評価委員会の時に「継続」となり、今回は3月2日に「中止」となりましたが、カッコがつかないから、先ほどのような意見も出されてくるということを指摘しておきたい。
この他にも、京都市内高速道路が阪神道路公団が民営化されることにより、京都市や府の負担、出資金が増えることになっていますが、中止すべきです。また、鳥取・豊岡・宮津道路も、野田川以北は当面凍結し、要望の強い国道312号線の五箇谷バイパスや、丹後半島一周道路の整備を急ぐべきです。丹後リゾート公園、和田ふ頭など不要不急の事業を削って、府民の暮らしの予算こそ充実させるべきです。このことを指摘して、質問を終わります。