2005年2月定例会 最終本会議での「議案に対する討論」 2005.3.25
日本共産党の前窪義由紀です。私は議員団を代表して、ただいま議題となっている議案47件のうち第1号議案、第10号議案、第11号議案、第14号議案、第17号議案、第18号議案及び第27号議案の7件に反対の立場で討論を行ないます。
3月20日、突然襲ってきた福岡県西方沖地震で、玄界島などが甚大な被害を受けました。この地震により被災された皆さんに、心からお悔やみとお見舞いを申し上げます。一日も早い暮らしの復興へ、わが党も全力を挙げて取り組む決意を表明するものです。
さて、小泉構造改革は、府民の暮らしと京都経済に深刻な打撃を与えています。「三位一体改革」は、不十分な税源移譲と引き替えの国庫補助負担金や地方交付税の大幅削減によって、地方自治体に大きな困難を押し付けています。
これまで知事は、「三位一体改革」は「地方の自由度を拡大し、地方分権を進めるもの」としていましたが、わが党が指摘してきたとおり、この「三位一体改革」が進めば進むほど、地方の自由度を奪い、地方自治体の運営を困難にすることがはっきりしてきました。ところが、知事のやっていることは、「地方財政はますます厳しくなる。自立のために市町村合併を」と合併を強引に押し付け、市町村自治に異常な介入をはかっています。
また、知事は、「行財政改革指針」に続き「経営改革プラン」(案)を策定し、職員のリストラや住民サービス切捨てなどの「削減型改革」は限界として、府政の構造改革を進めています。その具体的な表れが、「住民の福祉の増進を図る」地方自治体の役割を放棄する洛東病院の廃止であり、公務を民間企業に「市場開放」し、大企業の儲けの対象とするPFI手法による府営住宅建設などであります。さらに今後、経営効率や採算性を基準に、府立高校つぶしや大学教育に独立採算制を押し付ける独立行政法人化など、構造改革の名で自治体の本来の役割を、投げ捨てようとするものです。
このように、今の府政は、「国いいなり」どころではなく、総務省の調査でも全国的に例がない知事、副知事、総務部長、地方課長と総務省出身者で占められ、総務省が進める地方自治破壊の「京都出張所」となっているのです。
わが党議員団は、来年度予算編成に当たって、こうした姿勢を根本から改め、本府が本来の自治体にふさわしい役割を発揮するよう求めてきましたが、以下、本会議、予算委員会を通じて明らかになった、議案の問題点について具体的に指摘します。
まず、第1号議案一般会計予算案及び予算関連の第10号議案、第11号議案、第14号議案についてです。数点につき反対理由を述べます。
第一は、「三位一体改革」で、府の財政が一層厳しくなるもと、知事は「集中と選択による施策の見直し」で250億円の経営改革を断行したと自慢していますが、その中身は、福祉、医療、教育などを切り捨て、府民に犠牲を押し付けているものとなっています。
洛東病院廃止に伴う病院事業会計への補助金は、前年比4億円の削減、府立医大付属病院会計への繰出し金は、前年比3億円の減額、生活保護世帯等への夏季、年末見舞金は、「生活保護費は、すでに年金額を超えている」として廃止、障害者自立支援法案で応益負担が導入されることについて当然とするなど、多岐にわたっています。これら医療・福祉予算の大幅削減は、小泉内閣の国民への痛み押し付けと相まって市町村、住民に大きな負担を強いるものですが、知事は、「持続可能な制度のため」と、府民の暮らしの大変さに心を寄せようとしない官僚的答弁を繰り返しました。
府民の強い願いである乳幼児医療費助成制度は、府内39自治対中31自治体が府の制度に上乗せして拡充しているのに、来年度も改善を拒否し、特別養護老人ホームの入所待機者数は、近畿圏のほとんどの県が、毎年調査を実施しているのに、本府は毎年の調査を拒否し施設整備を遅らせています。私学助成について、国庫補助金が前年同額であるにもかかわらず、私学助成全体で3億4千4百万円も減額しています。全国で45道府県に広がっている「30人などの少人数学級」の実施についても、「できる子」、「できない子」に分ける「少人数授業」に固執し、本格的実施に背を向けています。
そして、教育にも「経営の視点」を持ち込み、1学年8学級が「適正規模」だとして、全国的には「4〜8学級」とされている中で、突出した基準で「府立高校つぶし」を進め、山城通学圏の12校のうち、宇治市と八幡市で2校を廃止すると明らかにし、京都市内、府北部でも進めると答えました。これは府内全域で高校つぶしを行うもので容認できません。全国的にも異常な「8学級基準」を見直して、地域に根ざした高校教育を進めること、統廃合とリンクせず、宇治、城陽、八幡に養護学校の設置を早期に具体化することを強く求めておきます。
第二は、知事は、「4万人雇用の目標を突破」などを売り物にしていますが、実際にやっていることは、大企業には土もちで、中小企業、伝統・地場産業の対策はないがしろにしています。
本府は、「計画より1年早く目標を突破」として、雇用創出目標を57000人に引き上げました。しかし、そのほとんどが臨時雇用で常用雇用は5000人程度、それもパート・派遣など不安定雇用です。常勤者雇用が増えないと、深刻な失業問題の解決にならないにもかかわらず、雇用対策予算が大幅に減額され、労働費全体では34,5%減となり、国が臨時雇用創出基金事業を今年度限りで廃止したことを受けて、ほとんどの事業を終了させています。緊急雇用対策は不十分とはいえ、失業者とりわけ中高年失業者のつなぎ雇用的な役割を果たしてきましたが、雇用状況がなお厳しいもとで廃止は許されません。
また、不況にあえぐ伝統地場産業・中小企業とそこに働く労働者の雇用を守るためにも一層の支援の強化が求められている時に、関連予算が2億2千万円と大幅に減らされています。こうしたやり方は、京都の持つ高いものづくりの技術や資源を衰退させるものです。
企業の立地補助金は適用対象を広げて、金額も5億円から20億円に引き上げています。その適用企業第1号は、史上空前の利益を上げている日産の子会社ジャトコです。知事は「日産が帰ってきてくれた」と歓迎の発言をされていますが、宇治の日産車体の身勝手な撤退で2500人以上の雇用がなくなり、下請企業が倒産に追いやられた事実を忘れたのでしょうか。工場撤退時には跡地売却などに便宜を与え、新規の工場増設に多額の補助金を出す、まさに大企業には至れり尽くせりであります。府が支援すべきは、京都の地に根付いた中小企業、伝統・地場産業ではありませんか。このことを厳しく指摘しておきます。
大型店の出店攻勢は、地域経済を担い住民の生活を支えてきた中小小売業者や地元商店街にとっては死活問題です。ところが知事は、商店街や小売商店を大型店から守る上で役立つ「商調法」を使おうとせず責任を放棄しています。
また、舞鶴府営常団地の建て替え事業に、設計、建設、維持管理、運営までを一括発注するPFI方式を導入しました。PFIは、公共事業を民間事業者に丸ごとゆだねることから、大手企業しか受注できないのが実態で、これまで府営住宅の建設を担ってきた地元業者の発注を大幅に減らしてしまうものです。
第三は、「財政が厳しい」として、府民に犠牲を押し付けながら、不要不急の事業を相変わらず継続しています。
行き詰まりが明らかな学研都市建設、環境破壊と車を呼び込む京都市内高速道路、過大な需要を見込んだ関西空港2期工事、不要不急の和田埠頭建設、破綻した丹後リゾート公園整備、河川改修で解決すべき呑流計画、過大な水需要予測に基づく畑川ダム建設など、借金を積み増ししてムダと不急の大型公共事業を推進しています。
今回、大戸川ダムの利水負担金を計上しませんでしたが、これは、わが党議員団がたびたび指摘してきた、過大な水需要予測の見直しをもっと早く行なっていれば、これまでの負担金はいらなかったものです。まだ継続されているダム周辺整備事業、ダム建設の治水負担金の支出についても、この際、中止するよう求めるものです。
さらに、水道懇での水需要予測の見直しに伴い、丹生ダム、天ヶ瀬ダム再開発の水利権を放棄すること、乙訓の府営水道は、過大な水需用予測に基づき、高い水道料金を押し付けるものであり、責任水量制を抜本的に見直すよう指摘しておきます。
同和奨学金の償還対策事業については、貸与残高68億円をおよそ20年にわたり府民の税金で償還していくもので、これ以上継続することは許されません。京都市の住民訴訟の判決では「全員一律に肩代わりして払うのは問題」との判断が下されています。全国的にもすでに廃止され、法的根拠もなくなったこの事業は直ちに中止すべきです。
また、「未来づくり交付金」の中から、井手町の58世帯を対象にする1億6千万円の同和浴場の改築に8千万円、各地で同和関連の水洗化事業に多額の補助金が支出されようとしています。同和事業が終結している中での事実上の継続は、差別の温存につながるもので直ちに止めるべきです。しかし、知事は、是正するどころか、部落解放同盟役員らと井手町の共同浴場とその建て直し予定地を視察し、激励し決意まで述べて、予算化にお墨付きを与えています。
洛東病院の廃止では、知事との面談を切望する患者さんに合おうともせず、部落解放同盟を特別扱いすることは、到底府民の理解を得られません。
第四は、知事は、議会答弁などでは「合併は市町村が考えること」と再三述べていますが、実際には押し付け路線を強め、露骨な市町村への介入を行なっています。
府の強い指導の下でも伊根町で、府内はじめての合併の是非を問う住民投票が実施され、性急な合併の強行に反対の審判が下されました。この間の経過は、住民の意思を直接問うことの重要性を改めて示しました。
今、国・総務省主導で、小規模自治体を切り捨てる「平成の大合併」を推進していますが、合併の勧告権の行使について、全国の知事の6割が消極的な態度を表明し、住民の意向重視の姿勢を示しているのに、知事は、勧告権を「場合によっては行使する」と表明し、総務部長が直接乗り込み「合併協議の会議を招集し、府が調整に乗り出す」など、市町村自治・住民自治を踏みにじる様々な介入を行なっています。知事は、「現地・現場主義」「府民発・府民参画・府民共同」を口にしていますが、やっていることはまったくその反対、府民不在の府政だと言わなければなりません。合併ありきの姿勢を改め、小さくても自立をめざす自治体の支援もふくめ、徹底して住民自治の立場に立つことを強く求めるものです。
以上、提案されている予算関連議案は、知事の公約の仕上げとしての予算案でありますが、小泉政治と同様に、府民に新たな痛みを押し付け、「構造改革」と称して自治体の役割を投げ捨てようとするもので、反対です。
次に、第17号議案、18号議案及び27号議案、についてです。
これらの条例案は、「武力攻撃事態」等に対応したマニュアルつくりや態勢確立のため、そして「戦争協力手当」とも言うべき「武力攻撃事態」の際、国と他の自治体等から出動する職員への手当を支給するためのものです。
もともと知事は、中央官僚時代から有事法制体制つくりに深く関与し、全国知事会でも危機管理研究会のメンバーとして、府民をアメリカの戦争に協力させる「国民保護計画づくり」を推進してきました。知事は、イラクへの自衛隊派兵を「人道支援のため」と擁護しています。また、小泉内閣がミサイル防衛システムへの参画を表明しているもとで、ミサイル駆逐艦の舞鶴入港を容認しました。憲法9条擁護を求めたわが党議員の質問にも「広範な議論が展開されるべきで、まず賛否先にありきではない」と答弁をし、9条改悪反対の立場に立たないことを明らかにしました。
地震や台風などは止めることはできませんが、「武力攻撃事態」、「戦争」は、人間が行なうものであり、あらゆる手段を講じて避けなければなりません。そのことの努力こそ国のみならず自治体関係者に求められているのです。
今、やるべきは「安心・安全」「危機管理」を口実にした「武力攻撃事態」に備える体制づくりではなく、活断層調査や耐震住宅改修助成制度の実施など地震対策の強化、台風23号で露呈した土木事務所の体制の見直し、児童・生徒を守るため人的配置など学校の安全対策の抜本的強化など、現実の「危機」に対して万全の対処こそ求められているのです。
提案されている条例案は、いずれも「武力攻撃事態」等を前提に、戦争準備の態勢づくりを進めるもので、反対です。
次に、第41号議案についてです。
この議案に賛成するものですが、第三者による包括外部監査制度は、外部の監査人が、独立した視点から自治体の行財政の適法性、有効性などを点検し、行政執行の透明性を図ることから導入されたものです。外部監査人は、広く府民の声に耳を傾け、行政と独立性・緊張関係を保つことが求められています。
今回の包括外部監査報告では「京都府行政の遂行にあったては、経営の効率性や採算性のみが判断基準でないことはいうまでもない。行政においては、経営効率は悪いが、住民福祉の立場から実施することが必要な施策もある。しかし、この包括外部監査においては、そうした視点からのアプローチを行うことは考えていない。」とわざわざ述べています。
知事は、洛東病院廃止に見られるように、府民の願いを踏みにじるテコとして、この制度を利用することは慎むべきだと、厳しく指摘しておきます。
以上で討論を終わります。ご清聴ありがとうございました。