京都府議会2005年6月定例会 一般質問

かみね史朗(日本共産党、京都市右京区)2005年6月30日

「僕たちを殺さないで!」・・・高まる「障害者自立支援法案」反対の声

「応益負担」導入で、障害者と家族の負担は限界超える

日本共産党のかみね史朗です。私は、通告しています諸点について知事ならびに関係理事者に質問いたします。

まず、障害者自立支援法案についてです。わが議員団の山内議員が昨日質問いたしましたが、さらに立ち入ってお聞きしたいと思います。

 5月22日に障害の種別をこえた750人もの人々が参加された「障害者自立支援法に異議あり!『応益負担』に反対する大集会」が開催されました。私も参加させていただきましたが、ここに参加された160人もの方が、それぞれの思いを込めて厚生労働大臣、国会議員宛の短いメッセージを書かれました。私、すべてのメッセージに目を通させていただきましたが、胸に迫る訴えばかりであります。2つだけ紹介させていただきたいと思います。

 ひとつは、重度障害者通所介護施設に通う障害のある方です。「自立って何ですか?親に世話をかけて回りに世話をかけて、自分が生きていくことがみんなに申し訳なくて、何度死のうと思ったか知れません。その中で辛抱強く僕を励ましてくれた家族や友達に感謝です。そして、感謝できるようになった今、その人たちの応援を受け、これから自分が障害者であっても、がんばって生きていこうと思う僕です。その中で、応益負担は僕に死ねといっているのと同じです。どうか僕たちを殺さないでください。障害者がありのまま生きていこうと思う気持ちをどうかわかってください。」

次の方は、聴覚障害のある男性です。「グループホームを利用して、昼は授産施設を利用して、一か月1万円ちょっとの収益しかなりません。水光熱費や食費、ホテルコストなどを取られると、1万円を稼ぐために、お金を払って働くことになり、障害者年金6万円〜8万円をこえてしまう。これに聴覚障害のため、病院へ行けば手話通訳が必要である。これにも応益ということで利用料を強いられれば、どうなるのでしょう。私たち聴覚障害者は生きていく資格はないということでしょうか。手話通訳は障害者だけに益があるわけではない。そのことを今一度考えてください」。

知事、160人の方々の思いは、2人のご意見と共通しています。これら障害のある方々の叫びをどのようにお聞きになられましたか。率直にお答えください。

障害者自立支援法案について、障害のある人々、家族、支援者のみなさんが一番問題にされているのが、応益負担を導入することです。法案では、低所得者のための上限設定などの配慮や激変緩和措置がとられるとしていますが、多くの支援を必要とする障害のある人ほど、大幅な自己負担増を強いられることに変わりがありません。実際の負担は、グループホームを利用し作業所に通う人では、利用料以外の実費負担が多いため、月8万円以上、入所施設利用者では9万円にもなる実態が、厚生労働省の試算でも明らかにされています。

例えば、私の友人で知的障害とてんかん発作、身体障害のある女性は、月曜から木曜までグループホームで生活し、作業所に通っています。常に身体介護と移動介護が必要です。彼女の現在の負担は、グループホームの家賃37000円をはじめ食費、水光熱費、日用品費、で一月65000円。グループホームの利用料やホームヘルパーの費用は今の制度のもとではかかりません。ところが、今回の法案が通ると、グループホーム利用料21500円、身体介護のヘルパー代52600円、これ以外に移動介護のヘルパー代がいくらかかるかまだわかりませんので、少なくとも一月13万9100円以上かかり、今より74100円以上大幅に負担が増えることになります。この金額は、障害基礎年金の月82758円をはるかに超える額で、障害のある人の人権や生活をじゅうりんするまったく理不尽なものであります。しかも、障害のある人の収入認定が同一生計世帯収入を基準にするとしており、家族が障害のある人の介護や生活を支えざるを得ない実態を固定化し、実質的には扶養義務者の負担を強要し、障害のある人々の自立を根底から阻害することになるのであります。

知事は、受益と負担ということを府政運営の基本的な考え方にしていますが、今回の障害者自立支援法案で導入される応益負担について、同じ考え方に立たれるのか、明確にお答えください。

 

暮らしの維持、社会参加のためのサービス利用は「私益」か?

「障害者基本法」や国連の「障害者の権利宣言」の精神に反する「応益負担」

次に、障害のある人が日々の暮らしを維持し、社会参加するために利用しているサービスが「私の利益=私益」といえるのかという問題です。

 そもそも国連総会で採択された「障害者の権利宣言」は、「障害者は障害の原因、特質及び程度にかかわらず、同年齢の市民と同等の基本的権利を有する。このことは、なによりもまず、可能な限り通常のかつ満たされた、相当の生活を享受する権利を意味する」と述べられています。

この考え方は、日本の障害者基本法にも生かされています。第3条は、すべて障害者は、個人の尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい処遇を保障される権利を有するものとする。第2項で、すべて障害者は、社会を構成する一員として社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に参加する機会を与えられるものとする。そして、第4条で、国及び地方公共団体は、障害者の福祉を増進し、及び障害を予防する責務を有すると明記されています。

 つまり、障害のある人が、日々の暮らしを維持し、社会参加するために利用しているサービスは、個人の尊厳にふさわしい処遇を保障されるためのものであり、同年齢の市民と同等の生活を営むことができる権利を保障するためのものであって、「私の利益=私益」のためではありません。

したがって、障害のある人へのサービスを「私益」とみなして、お金がなければサービスを受けられない制度に変えようというのは、「障害者の権利宣言」や障害者基本法に違反し、障害のある人の権利そのものを否定しようとするものであります。知事は、障害のある人へのサービスを「私益」とみなす今回の応益負担の導入が、障害のある人の権利を保障していくことと両立するとお考えでしょうか。お答えください。

 

「応益負担」は、府の「自立支援計画」の達成にも大きな障害

ところで本府は、平成16年12月に障害者自立支援計画を策定されました。その計画の趣旨として、このように述べられています「障害の有無にかかわらず、府民だれもが相互に人格と個性を尊重し、パートナーとして支えあう共生社会の実現を目指す『ノーマライゼーション』を基本理念として、」「障害のある人の自立、自分の意思で生活ができることと、障害の程度にかかわらず、障害のある人自身の希望により地域社会の中で当たり前の生活ができることを目指す」と明記されています。

応益負担の導入は、ノーマライゼーションの基本理念を否定し、本府が目指す障害のある人の自立や当たり前の生活を実現することに大きな障害をもたらすものではないでしょうか。知事は、どのようにお考えか伺いたいと思います。

 

共同作業所への補助増額、医療費助成の拡大など、

住居・働く場の確保、医療へ、府の支援強化を

次に、本府の障害者自立支援計画の策定にあたって、パブリックコメントで147人の方々から出された要望の中から、いくつかについて質問いたします。第一は、働く場の確保についてです。一番要望の多かったのは、授産施設と共同作業所で格差が生じないよう、共同作業所への補助増額をしてほしいということです。これに対し本府は、「施策の推進に努めたい」という回答にとどめていますが、もっと積極的な対応が求められると思いますが、いかがでしょうか。また「障害者が就労するに当たって、コミュニケーションは大きな課題である。複数の障害者が働く場には、障害者をサポートできる支援人材が必要」という要望については、「総合性」と「専門性」を持った相談支援体制の整備と、一人ひとりの相談に対し、有機的に補完し合える相談支援ネットワークの整備を推進していく」と回答していますが、具体的にどのように整備を進めるのか明らかにしてください。

次に、住まいの場の確保についてです。最も要望が多かったのは、グループホームの設置促進とそのために、運営費のみでなく、土地の取得、改修、建築、備品等への補助をという要望です。補助制度の拡充については、「今後の参考にしたい」とそっけない回答ですが、これについても積極的に対応すべきと思いますが、いかがでしょうか。

生活支援では、障害のあるすべての人に対し、医療費の助成制度を求める声が多く寄せられました。現在の1、2級の重度の方だけではなく、少なくとも市町村で広く実施されている3級の方まで速やかに拡大すべきであります。本府は「施策の推進に努めたい」と一般的な回答にとどまっていますが、知事の積極的な答弁を求めるものであります。

 

【知事】 障害者の自立支援についてでありますが、障害のある人も無い人も人格と個性をお互いに尊重してみんなで支えあいながら生活できるノーマライゼーションの社会を実現するためには、施設を出て地域で生活できるような制度や支援が必要であると考えている。

障害者自立支援法におきましては、今国会において審議されているところであり、制度全体の細部は明らかになっておりませんが、応益負担につきましては、関係団体等から心配の声が数多く寄せられているところであります。私は、応益負担につきましては、低所得者や重度障害者のみなさんにとって、負担増によって必要なサービスを受けることができない状況が生じ、本人のせっかくの自立を阻むようなことがあっては、施策の基本的方向を逆に誤ることになるのではないかと心配しております。そのため、京都府として従来から国に対し、財源論に偏重することなく適切な低所得者対策等を講じるよう、あらゆる機会をとらえて提言・要請を行ってきたところであり、障害のある方々をはじめ、その後家族、関係者等の意見を聞きながら十分な審議を行うよう強く要請してまいりました。

私は、受益と負担の関係につきましては、その関係を明らかにする中で、府民の皆様に説明し施策の選択を透明化すべきという考えでありまして、個別の事項につきまして何でもバランスをとるというような乱暴な話しを基本方針としてはおりません。京都府といたしましては、中期ビジョンで示している通り、特に社会的に弱い立場にある人々に対し、多様なセーフティーネットを構築しながら、京都の人々の力を生かせる、人間中心の京都府づくりを進めることが基本であります。障害者施策につきましても、この考えのもとに、障害者自立支援計画に基づき、働く場の確保、住まいの場の確保、地域生活の場の確保など具体的な施策を積極的に進めているところであり、今後とも障害のある方が、地域でできるかぎり普通の生活が送れますよう、障害者福祉の推進に努めて参りたいと考えております。

【保健福祉部長】 障害者自立支援計画、アクションについてでありますが、まず、共同作業所への助成につきましては、住み慣れた地域で仲間と集い働くことができる施設として大変重要なものであり、全国でもトップ水準の補助を実施しているところであり、また、国制度である小規模通所授産施設についても独自に上積み措置をしているところであります。障害者の相談支援体制につきましては、市町村生活支援センターなどを身体、知的、精神の身体障害種別にかかわらず、幅広い内容について相談できる身近な総合相談窓口として充実したところであります。さらに、6つの障害保健福祉圏域に総合相談支援センターを設置し、専門相談機関及び関係施設等のネットワーク化を図るなど相談体制の構築を図ったところであります。

また、地域生活への移行へ向けて大変重要な役割を果たしているグループホームについては、今年度から開設に係る設備整備や建物修繕に対する補助制度を創設したところであります。

重度心身障害者医療助成制度につきましては、心身に障害のある方の内、特に支援が必要とされる重度の障害がある方の健康維持と福祉の向上を目的として実施しているところであり、引き続きそのように実施して参りたいと考えております。

 

再質問

「サービスは私益か」の問いに答えていない

「人・間中心」というなら、障害者の声に応え支援強化を

【かみね】

知事から障害者支援法案についての答弁をいただきましたが、私が質問の中で、障害のある方々へのサービスについて個人的な利益と見なす制度の導入を認めて良いのかという問題を提起したのですが、これについては考え方を示されませんでしたので、これについてどう考えておられるのか、制度のそもそもの在り方についての知事の考え方をお聞かせいただきたい。

本府の障害者自立支援計画ですけれども、パブリックコメントで出された府独自の制度化が必要な部分については積極的にやろうという姿勢がどうも見られませんでした。共同作業所への補助も全国最高水準と言うけれども、実際に、パブリックコメントで補助増額の要望が出ている訳ですして、それに答えない姿勢は本当に残念です。

重度の障害を持っている方々への助成制度もそのままだと言うことだが、わたしの知る限り3級以上に医療費の助成を広げて欲しいという願いは20年以上もの長年の願いであります。こういう積年の願いに答えようとしない、放置することは許されないとことと私は思います。

京都府内では、3級以上に拡大している自治体は28もありますし、全国では、平成14年の資料ですが、20県あるわけでありまして、本府の取り組みは、こういう府内、全国の取り組みと比べても立ち後れている。こういう自覚が無いと言うことは、非常に大きな問題だと言わざるを得ません。府独自の対策を支援計画の中で思い切ってやると言うこと、特に障害を持っている方の医療費の助成制度については、せめて3級まで拡大すべきと思います。この点改めて知事のお考えを聞きます。

知事は「人・間中心」と言うことを言われます。「人・間中心」というなら、せめて全国でやっていることぐらいはやるべきでないか。それすらやろうとしないような府政は、弱い立場の方々に冷たい府政といわれても仕方がない。人間中心というスローガンは撤回すべきだと言えるぐらいの大問題だと言うことを申し上げて質問を終わります。

 

【知事】 負担についてですが、最初に申し上げましたように、私は、みんなで支え合いながら、生活できるノーマライゼーションの社会を実現すべきと申し上げたところです。そして、その中で、低所得者や重度障害者のみなさまにとっても必要なサービスを受けることができるようにすべきですから、財源論に偏重することなく、適切な低所得者対策等を国に求めてきたわけです。

【保健福祉部長】 障害者の単独施策ですが、先ほどお答えしたとおり、作業所につきましては全国トップレベルですし、国制度の小規模通所授産施設につきましても独自に府の上積措置を行っているところであります。相談制度体制につきましても京都府の独自施策として実施しているところ。グループホームについても、単費で今年度新たに、設備や建物修理への補助制度を創設したところであります。障害者の医療については、特に支援が必要とされる重度の障害者がある方々への対策として実施しているところでありま

 

伝統産業振興条例 日本共産党府議団の「条例案」大綱の提案から7年

業界・従事者、府民の声を生かした 実効ある条例づくりを

次に、「伝統産業振興条例」についてお聞きします。本府は、「伝統と文化のものづくり産業振興条例」の骨子をこの議会で説明し、9月議会に提案するとしています。伝統産業の振興を目的とした条例の制定は、私ども日本共産党府会議員団が、従来からその必要性を訴え、1998年には、条例大綱を示し府に対しその実現求めてきたものであり、遅きに失したとはいえ、歓迎するものであります。

京都の伝統産業は、厳しい経営環境のもとであえいでいます。西陣織、清水焼などの国指定の伝統工芸品では、この10年の間で、事業所数、従事者数、生産額ともほぼ50%に減少してしまいました。丹後ちりめんの生産量も40%まで減少しています。

技術の継承が困難な状況も一層深刻です。海外への生産体制のシフトにより、西陣織「呂つづれ」や「紹巴(しょうは)」「ビロード」などの技法を受け継ぐ職人さんが極端に少なくなりました。この5月には、京都に残る2人の和竿師の1人が高齢のためお亡くなりになりました。長引く不況と無秩序な海外生産・逆輸入、規制緩和の影響等により、深刻な経営危機と、従事者数の大幅な減少を招き、産地の崩壊、伝統ある技術の継承すら危惧される事態となっています。その再生は、京都経済を立て直す上でも、緊急の課題であり、本府が市町村と協力し振興と再生のための施策を強力に展開すべきであります。

具体的には、系統的な実態調査の実施と業種・産業別の振興指針の策定。後継者育成対策、経営指導体制の強化。伝統地場産業が息づくまちづくり、税負担の軽減、不公正な下請け取り引き改善、海外生産・逆輸入など振興の阻害要因の是正などが求められます。財政的には、国に中小企業対策予算の大幅な増額を求めると共に、本府の予算編成を、地域経済の立て直し、地場産業の振興に重点を移していく必要があると考えます。

これまでに公表されている本府の「条例策定委員会」の審議の中でも、「伝統産業に関する税の軽減措置」や「産地の存在が地域の風景や特性を形成」している等、私どもの提案と同じ視点での発言が多くみられます。6月1日に本府が、同委員会に提示した、「『伝統産業の振興に関する条例』の基本的な考え方について」では、その「基本理念」に、「伝統的な技術を継承し、伝統的なものづくり産業の次代を担う人材を育てる」と明記し、府の責務として「必要な施策の総合的かつ計画的な推進」とした上で、「必要な財政上の措置を講ずる」としています。これらは、私どもの提案も反映されたものであり、実際に条例案に盛り込んでいかなければなりません。

 

伝統産業育成に逆行する府の中小企業対策

地域経済支える伝統・地場産業を支える「条例」に

しかし、無秩序な規制緩和など伝統・地場産業振興の阻害要因の是正について、「基本的な考え方」では触れていません。また、条例の策定の方向を打ち出しながら、経営指導体制の強化の願いに反し府の中小企業総合センター機能が後退し、ジャトコの誘致に見られるように、大企業の誘致に対しては補助金を5億円から20億円に大盤振る舞いする一方、伝統産業振興予算は4億円から2億円あまりに半減させるなど、伝統産業の振興に逆行する姿があります。

また、先ほど紹介した「条例策定委員会」でも、「理念を謳うだけの条例でも十分に意味はある」「活性化には業界を引っ張るチャンピオン企業が生まれることが必要」などの意見も垣間見られ、財政措置のない理念だけの条例、地域経済に一定の役割を果たしている地場産業とそれに従事する中小零細企業、事業者、従事者を支えることよりも、一部の先進企業や新しい取り組みのみに重点を置いた条例になるのではないかと心配します。

このようなことにならないよう、私どもの提案の観点も含め、広く府民の声を聞き、条例案に反映させることが必要であります。

そこで知事にお聞きします。本府は、7月のパブリックコメント、8月に公聴会を実施するとしていますが、それにとどまらず、幅広い事業者・従事者、任意団体を含む業界・中小企業団体、府民からの直接の意見聴取、府内各地での公聴会の開催など、意見を汲み尽くす努力をするべきではありませんか。お答えください。

 

影響大きい重油価格高騰の影響 府として補助など支援を

関連してお聞きします。重油の高騰が伝統産業にも影響を与えています。先日、私どもは友禅の蒸しの業者からお話をお聞きしました。この業者は、「これまで一月200万円程度の燃料代が、現在は、月300万円と5割も上がり、利益をまるまる持っていかれてしまう。数をこなして何とかしているが、小規模な事業所は大変だ」、「以前より単価は上がるが、価格の安定しているガスへの転換も検討しないといけないが、転換費用が大きい。府の補助があれば助かる。」と語っておられました。

重油の高騰が伝統産業の重要な工程である蒸しの業界の存続そのものに影響を与えかねない事態となっています。蒸しの業界が立ちゆかなくなったら、友禅業界そのものに大きな影響を与えます。

重油高騰の影響は、伝統産業だけでなく、多くの業界に影響を与えています。至急その状況を調査し、経営を支援する補助制度の実施や価格の安定のための手だてを府として講ずるべきではありませんか。また、ガスへの転換を希望する事業者を支援するための、府独自の補助制度を実施することが必要ではありませんか。お答えください。

伝統産業の後継者対策も重要です。技術の継承は、専門学校を出たからできるとか、文書と映像を残しておけば、後でなんとかなるものではありません。人から人への時間をかけた育成が必要となります。ところが、「後継者育成と言っても、とても食べていけるまで面倒を見る余裕は無い」「専門校を卒業したが、就職するところがない」という声が関係者から聞かれます。

 

後継者育成のため、雇用を支える支援制度で応援を

先ほどご紹介した蒸しの業者さんは、京都に数人しか残っていない「しごき染め」の技術を伝承するため、社内で独自に若手社員への教育をしておられました。これらの取り組みに対する支援を府として実施すべきです。農業や林業では、不十分ながら就業への支援事業が行なわれています。本府としても、伝統産業分野で、3年〜5年程度、後継者の確保と雇用を支える支援制度を実施し、伝統技能を継承するためにがんばる事業者と従事者を応援すべきではありませんか。合わせてお答え下さい。

以上で私の質問を終わります。ご清聴ありがとうございました。

【商工部長】 伝統産業の振興に関する条例についてでありますが、昨年12月に学識経験者や伝統産業の職人さん、業界関係者等幅広い方々にご参加頂き、条例策定委員会を設置し、公開で開催すると共に、委員と関係業界や伝統産業に携わる若手のみなさんとの直接の意見交換会等を開催し、実情に則した様々な意見をお聞きしてきました。委員会の審議経過については、ホームページで公開しており、さらに今回、府内外から幅広く意見を募ると共に、公開シンポジウムなども開催したいと考えているところであります。

原油価格の高騰についてでありますが、現在財団法人京都産業21において、京都産業全体を対象に影響の状況や今後の対応について調査を行っているところであります。ご指摘の染色業界におきましては、業界団体がコスト高に対応して、加工賃の引き上げ等の協議もされていると伺っています。

ガス機器への転換につきましては、設備更新に係る中小企業融資制度について周知してまいりたいと考えております。

伝統産業の後継者育成についてでありますが、平成7年京都府が出資助成を行い、全国初の後継者育成のための学校である京都伝統工芸専門学校を設立すると共に、若手後継者のイタリアとの交流など積極的な支援を行ってきているところであります。京都伝統工芸専門学校では、当初43人の入学生で開校されたものが、現在では200名を大きく超える人材が全国から集まるなど、後継者についての近年の状況は大きく変化しているところであり、今後とも業界との連携による就業支援や匠の公共事業をはじめとする様々な施策を積極的に推進して行きたいと考えております。