まえくぼ 義由紀(日本共産党、宇治市・久御山町) 2005年7月1日

 

淀川水系のダム計画(丹生ダム・大戸川ダム・天ヶ瀬ダム開発)から撤退すべき

【前窪】 日本共産党の前窪義由紀です。通告している数点について知事並びに関係理事者に質問します。

まず、淀川水系のダム計画、府営水道についてです。

淀川水系のダム建設計画は、従来の「利水・治水中心」から「琵琶湖・淀川水系の環境重視」への転換が問われています。利水に関しては、過大な水需要予測と供給過剰の問題が明らかにされ、ダム計画からの撤退が相次いでいます。5ダム事業に参画していた8水道事業者のうち大阪府が丹生ダム、大戸川ダム、阪神水道企業団が丹生ダム、余野川ダム、奈良県が川上ダム、大阪府箕面市が余野川ダム、兵庫県西宮市が川上ダムと5事業者が撤退を検討し、本府が0.32トンの水利権の放棄を表明、残りの三重県が川上ダム、大津市が大戸川ダムにかかる水需要の見直しを検討しています。

本年1月、「事業中のダムについての意見書」を提出した淀川水系流域委員会は、「今後の人口減少予測などを考慮し、利水面からの新規ダム建設を行なわず、水系全体で安定した利水の枠組みを構築する必要がある」と指摘し、ダム事業を抜本的に見直すことを改めて提言しています。

さて、本府は、1985年の南部広域水道計画以後、4回の計画見直しを行なってきましたが、給水人口70万人、計画水量23万5000トンは変えず、それに合わせた人口予測、水需要予測を繰り返し、域内人口70万人に達する時期を遅らせてきただけでした。我が議員団は、当初から過大な水需要予測の見直しと、不要な施設拡張の中止を求め、特に2002年度以降は、暫定水利権を設定しているダムについて、水需要予測と現実との乖離を見直せば、水利権を放棄できると繰り返し提案してきました。

昨年10月、ようやく府は、第33回水道事業経営懇談会に、新たな「府営水道水需要予測」を報告しました。報告では、節水や人口の伸び悩みにより、府営水の最大給水量を2020年度で1日当たり20万4500トンと見込んでいたものを17万1800トンに、最大で3万2700トンの下方修正を行ない、その後も減少するとしています。

現在、府が持っている水利権は、毎秒2.06トンで、1日最大給水量は17万8000トンですから、今回の見直しにより、ダム建設による新たな水利権の確保の必要はなくなることになります。しかし、本府は、水源ダムの実力評価で「利水安全度」が76.4%に低下しているとして、水利権の放棄は、0.32トンだけにとどめました。

そこで質問ですが、淀川水系のダム計画に関して、水需要の減少により、大戸川については建設を中止、丹生ダムについては規模を縮小するとの国交省の方針が、昨日、本日の新聞報道で明らかとなりました。国の方針について、どのように受け止めているのか、まずお聞かせ下さい。

【知事】本日、近畿地方整備局から、「淀川水系5ダムについての方針」が発表されたが、その内容は、利水については、将来の負担を軽減する観点からの一部撤退を要望してきた府の考え方をおおむね配慮した形になっている。今後、近畿地方整備局は、今回の方針をふまえ、関係府県と具体的な事業の今後の進め方について、協議をしながら最終の決定とすることになる。

 

あいまいな「利水安全度」、過大な水需要計画を見直せ

【前窪】本府は、「水需要予測と供給の過剰」を認めながら、従来、水利権確保の根拠としてこなかった「利水安全度」を持ち出し、依然として過大な水利権が必要とし、あくまでダム建設への参画に固執しています。近畿地方整備局は、「利水安全度は参考に示しているが、それを使うかどうかは自治体の判断」と、私どもとの交渉で答えています。「利水安全度」76.4%を使う根拠を示していただきたい。お答え下さい。

【企業局長】府営水道の水源の確保と「利水安全度」の関係は、水需要予測でのピーク時に必要とされる一日最大給水量に見合う水源に加え、近年の少雨傾向の中で、ダムなどの貯水量が減少しても、なお安定的に必要水量を確保できるよう国から示された「利水安全度」を考慮した安全分を見込む必要がある。

【前窪・再質問私どもは今まで、従来のダム建設、それから本府の水需要計画は、過大なものだと指摘してきました。今回、国土交通省において、一定の見直しをされたというのは、私どもの指摘が正しかったと考えていますし、本府の考え方は、この国土交通省の見解を受けてのものです。私はさらに、水需要予測を見直していけば、水利権の放棄を行うことは出来るということを質問で述べました。その際に使ったのが「利水安全度」であります。この利水安全度というのは妥当なものか。淀川水系流域委員会の見解書には、「利水安全度はあいまいな要素が多い。即ち、少雨化傾向等により、現状の利水安全度は高くないとしているが、降雨量の経年変化を判断するにはさらに慎重な検討が必要である。また、近年の利水安全度評価の算出基準が明らかにされていないので、説得力に欠ける」と、述べられています。私だけがいっているのではありません。本府は、「利水安全度」については、国土交通省の言い分を丸呑みしたものでありまして、とうてい私は理解できない。本府として自主的な判断をして、そして過剰な水需要予測をさらに見直していく姿勢が必要だと思いますが、再答弁を求めます。 

【企業局長】「利水安全度」は、水需要予測で必要とされる水を、渇水時、もしくは少雨傾向の中で、ダム等の水が減少しても、それを余裕分として、いかに確保するかという概念でありますので、水需要予測が過大であるかないかということとは、直接関係ない。「利水安全度」は、国の指標を元に、先ほどの答弁の考え方で、見込んでいるもの。

【前窪】今回の必要水利権2.64トンは、渇水時でも節水せずに、水をふんだんに使える最大量を想定しているものです。本府の給水実績は、2003年度で、1日平均給水量は10万8000トン、最大給水量は14万4000トンで3万6000トンもの差があります。府民は365日最大水量を使っているわけでは決してありません。大阪府でも水需要見直しの委員を務められた、本府の水道事業経営懇談会の副座長山田淳立命館大教授は、先日の水道懇で「大阪府では水源確保の予測に、最大ではなく平均給水量を使っている」と意見を述べられました。本府の最大給水量を使った予測を、平均給水量に置き換えれば、必要水利権はさらに減少します。再検討すべきと考えますが。いかがですか。

【企業局長】水利権の算出は、年間の平均給水量ではなく、夏場の水需要のピーク時であっても府民に安定して給水できるよう、最大の給水量をベースに算定している。

【前窪・再質問本府の示している1日最大給水量というのは、ある1日、宇治・木津・乙訓のすべての浄水場で最高使ったというのではないのです。それぞれの浄水場で使った最高の水量を合わせたものが1日最大水量となっているわけですから、1日最大水量という取り方にも、過大な要素が含まれているのであります。 京都府だけに対して、私どもはいっているわけではないのです。お隣の大阪府では、1日平均水量を使っているということが、大阪府の水需要予測結果報告書に書かれているのです。これを、なぜ参考にしないのか。知事は、経営とか効率とかいうわけですから、公営企業こそ、このことが求められているのではありませんか。再検討してください。

【企業局長】1日最大水量は、可能性として、そのような最大水量の需要が起こるという場合であっても、それを供給できるものとして、これを算定のべ一スにしている。

 

乙訓の「給水協定」を見直し、責任水量制の押付けをやめるべき

【前窪】さらに、乙訓浄水場系の問題です。府と2市1町の「協定」による責任水量制で、毎年度給水量を増やし、2010年度には4万6000トン給水することになっています。2003年度の1日最大給水量は2万4500トンですから、豊富な地下水を放棄して、無理やり府営水に転換することを前提にしているものです。「協定」を見直し、供給水量を適切なものにすれば、4万6000トンを見込んで策定した今回の水需要予測を、さらに減少させることが出来ると考えます。同時に、受水2市1町の際限のない水道料金の値上げを抑えることが出来ます。「給水協定」を見直し、責任水量制の押し付けをやめるべきと考えますが、いかがですか。お答え下さい。

先に述べてきたように、過大な水需要計画をさらに精査し、阪神大震災などで防災面からも証明された自己水・地下水活用の効果も生かせば、丹生ダム、大戸川ダム、天ヶ瀬ダム再開発計画の、新たな水利権をすべて放棄しても、安定的に府営水を供給することが出来ると考えますが。改めて、見解を伺うものです。

【企業局長】給水協定の見直しについては、基本水量はすでに投資した施設整備に要した経費の分担金に相当するもので、関係市長の申し出に従った水量により、負担をお願いしているものであり、現状では、見直すことは困難である。

また、先般の水需要予測では、市町の自己水、これは大部分が地下水ですが、これを含めた必要水量を算出しているところであり、その上で暫定水利権毎秒0.9立方メートルのうち0.3立方メートルの放棄が可能と判断した。

 

治水対策は脆弱な堤防の補強など河川整備こそ急務

【前窪】次に、治水、景観・環境の面からのダム建設の是非についてです。昨年の集中豪雨・台風では、近畿でも由良川や円山川での堤防決壊などが甚大な被害をもたらしました。これらの洪水被害の教訓でも、ダムに頼った治水でなく、脆弱な堤防の補強など河川の整備こそ急がれていることがはっきりしました。国土交通省が、昨年9月に実施した全国の堤防等の緊急点検でも、975に及ぶ問題箇所が発見されるなど、河川改修・整備の遅れが問題となっています。

淀川水系流域委員会の意見書では、「自然環境の保全・回復という観点からダム建設は基本的に避けること」、「治水は、ダム以外の方法により、河道整備や堤防補強などの河川対応、土地利用規制や避難対策など流域対応の併用を基本とすべき」と提言しています。

琵琶湖周辺は、琵琶湖総合開発事業の完了により着実に浸水対策が進み、近年大きな被害が出ていません。丹生ダム、大戸川ダム、天ヶ瀬ダム再開発は、治水面からも役割は薄れ、景観・環境破壊につながるものです。ダム建設中心を改め、河川改修・堤防補強などに、整備の重点を移すべきと考えますが、いかがですか。

【知事】治水対策については、昨年の台風23号では、大野ダムで、容量を最大限に活用し、ピーク時に流入量の42%をカットして貯留することにより、下流の綾部地点で約60cmの水位を低減した。バスの水没事故でも水位の上昇を抑える機能を発揮した。また、日吉ダムでは、流入量の約80%をカットし、貯留することにより、下流の亀岡地点で約90センチの水位を低減するなど、ダムの効果により、とくに亀岡は90センチ上回っていたから、本当に大きな被害を受けたのではないか。洪水被害の軽減に寄与したことは、まぎれもない事実ではないか。こうしたことをふまえ、固定的にものを考えるのではなく、その地域、例えば、川の長さや勾配などを考慮し、一番合った治水対策を府民の合意の基に考えていく姿勢が必要である。そのような柔軟な考えに立ち、初めて府民の安全は守られる。淀川水系についても、同様にどうすれば一番住民に安全か、多角的な角度から検討して、総合的な治水対策が講じられるよう、今後とも国や他府県とも協議してきたい。

【前窪・再質問治水対策は具体的に、各ダムについて検討する必要がありますが、今度、大戸川ダムが治水面でも中止されるということは、私は非常に重要だと思っています。ですから、これら(丹生ダム、天ヶ瀬ダム再開発)の治水問題についても、国土交通省丸飲みではなく、本府としても、しっかりした判断をするために再検討すべきだということを指摘していますので、再答弁を求めたいと思います。

【再答弁なし】

【前窪】近畿地方整備局は、丹生ダム、大戸川ダム、天ヶ瀬ダム再開発について、調査・検討を行ない、この間は、地元の地域生活に必要な道路や、防災上必要な工事以外は着手しないとしています。附帯工事を原則として凍結するのは当然です。

本府の今年度予算には、附帯工事に伴う負担金や滋賀県が行なうダム周辺整備事業への負担金は、これまで通り計上されています。これらの予算の執行についても、中止・凍結すべきでありませんか。お答え下さい。

【企画環境部長】ダム事業への負担金については、丹生ダム、大戸川ダム及び天ケ瀬ダム再開発事業で、実施されている地元の地域生活に必要な道路や、防災上必要な工事などとともに、ダム建設に伴う水源地域住民の生活の安定に必要な事業は行われており、応分の負担をしているところであります。

 

JR西日本は人員削減でなく、安全部門の人員増を

【前窪】次に、JR福知山線脱線事故、府内路線の安全対策について質問します。

6月19日、JR福知山線の運転が再開されました。JR西日本垣内社長は「安全を最優先する企業風土の構築」を約束しましたが、この約束が本当に実行されるかどうかが厳しく問われています。

この事故を契機に、速度超過を防ぐことが出来る新型の自動列車停止装置ATS−P設置などハード面での安全対策は、ある程度改善されることになりました。しかし、「稼ぐ」を第一にしてきた会社が、「安全最優先」に本当に転換するためには、経営姿勢についての根本的な反省と全般的な見直しが必要です。そのポイントの一つが人員の問題です。

JR西日本の発足時には、5万1530人いた社員が、2004年には3万2850人まで減りました。その減り方は、他のJRをはるかに上回っています。安全確保には設備面だけでなく、運転から車両整備まで必要な人員配置が確保されているのか問題です。その人員についてJR西日本は、04年度から09年度まで5000人の削減を「効率化計画」として実行しています。

私は6月15日、わが党国会議員団とともに、国土交通省近畿運輸局、JR西日本本社に安全対策について申し入れ、交渉を行なってきました。事故後、ATSの設置、管理には電気部門の大幅な増員が必要で、出向した社員を呼び戻しているにもかかわらず、550人も削減する「効率化計画」について、再検討を求めましたが、「効率化計画」は進めると改めて表明しました。JR西日本が、国に提出した「安全性向上計画」の実行の裏付けとなる人員を大幅に減らすのでは、その約束が本物か問われるものであります。

交渉では、安全の規制緩和を進め、対策を事業者任せにしてきた国の責任も指摘し、鉄道の安全確保に関する法令、省令等の明確化、鉄道監査の専門官を増やすなど、抜本的な体制の強化など求めてきました。

そこで質問します。JR西日本の安全性を無視した「効率化計画」による人員削減を見直し、安全部門の人員増をはかること、安全に関する法令、省令の明確化などを、JR西日本及び国に厳しく求めるべきだと考えますが、いかがですか。お答え下さい。

【企画環境部長】本来、公共交通の安全確保に万全を期すべきは、交通事業者の第一の責務であり、交通事業者を直接指導する立場にある国の指導の下で、適切な対策が講じられるべきものだが、府民の安全を守る立場から、事故後直ちにJR西日本及び国に対し、事故原因の早期徹底究明、あらゆる角度から至急点検した上での鉄道輸送の安全確保、安全設備の強化及び効果的な社員教育の充実等安全対策の徹底等について、強く申し入れや要望をしてきた。

 

JR府内路線の実態を調査し、緊急に危険な箇所の安全対策の実施を

【前窪】次に、代表質問でも指摘した安全対策の強化についてです。私も現場を調査し直ちに対策が必要と感じましたが、ATS―Pの設置計画は、奈良線では、2008年度末となっています。山陰線、学研都市線等含めて確実に前倒しで実施すること。また、奈良線城陽―長池間のR250の危険なカーブに脱線防止ガードの設置を急ぐことなど、府として具体的な箇所も示し改善を求めるべきです。現状認識と対応について伺います。

ホーム、踏切などの安全対策については、同志社大学からも要望が出ている学研都市線同志社前駅の狭くて短いホームを拡幅、延長する。東海道線長岡京駅の新快速が通過するホーム側の転落防止柵を完全に設置する。奈良線六地蔵駅の4輌分程度の転落感知マットをホーム全体に設置し、列車信号と連動させる。警報装置、遮断機のない踏切の安全対策の実施など、JRまかせにせず早期実施を働きかけるべきと考えます。府として実態を把握されていますか、それぞれの箇所への対応についてお答え下さい。

【企画環境部長】JR西日本は、改めて施設実態を点検し、安全性向上計画や緊急整備計画に基づき、安全部門の機能強化やATS−Pの整備等、安全対策に取り組むとしているが、府としては、府域における実施計画の内容を点検し、府民の安心・安全を確保する立場から、交通事業者に対し、国土交通省等々と十分連携を深め、必要なことは、改めて求めていく。

【前窪・再質問私は具体的に箇所を指摘して質問しているのに、答弁がなかった。つまり、実態調査をしていないのだと思うのです。府内各路線の実態調査は、決定的に重要です。

例えば、JR奈良線では、正規のJR職員をおいているのは、宇治駅と六地蔵駅だけです。他では、駅員をおいているところでも、時給740円の委託職員をわずか1人しかおいていない駅が多いのです。それで、「車イスで来た方をどうするのだ」ときくと、「宇治駅から職員を呼びます」ということで、転落したときに、橋上駅では分からないという現状です。私は、こういう現状をつぶさに調査をして、JRに厳しく求めるべきだと指摘をしているのです。実態調査をされますか、再答弁を求めます。

【企画環境部長】JRの実態については、第一義的に安全に責任をもつJR西日本自身が、実態を調査・点検した上で、実施計画を提出される。それを府が府民の安心、安全を守る立場からしっかり点検していきたい。

 

鋼鉄製橋梁工事の談合問題

警察まかせでなく府独自に徹底的調査を

【前窪】次に、「鋼鉄製橋梁工事の談合事件」について質問します。

三菱重工、石川島播磨重工、横河ブリッジなど日本を代表する鉄鋼・橋梁メーカーがかかわった長期に亘る談合事件が、国土交通省の発注工事に止まらず、日本道路公団など全国的に広がりを見せています。「談合していた橋梁メーカー49社が、西日本でも組織を作り、地方自治体でも受注調整をしていた」との新聞報道などがあるだけに、本府としても、看過できない問題だと考えます。

ここ5年間の鋼鉄製の橋梁工事について、本府関係の発注状況は、府発注工事で17件、契約金額60億円、うち1件を除き16件、59億円を談合組織とされる「K会」、「A会」の構成会社が受注し、これらの工事の落札率は92.82%〜98.37%で平均95.39%、最高は、綾部市石原橋の工事を受注した酒井鉄工所の98.37%となっています。

また、府の道路公社では、2件21億円、平均落札率96%、最高は宮津市の松原橋を受注した日立造船の97.48%です。阪神道路公団の京都高速道路工事では、入札で25件、平均落札率95.3%、最高は竹田第4工区を受注した三菱・川重建設の99.79%です。このように、本府関係の工事でも「K会」、「A会」の構成会社が、ほぼ独占して受注し、金額も異常な高止まりです。

公正取引委員会によると、発覚している入札談合事件の不当利得の平均値が、契約額の18.6%ですから、仮に本府の発注工事で談合が行われ、高値で落札していたとするなら11億円にも上る税金がムダ使いされたことになります。その分、府民が損害を受けたことになるわけで、当然返還を求めるべきものです。

そこでお聞きします。本府発注の鋼鉄製橋梁工事等で談合があったのか、なかったのか。公正取引委員会や警察任せではなく、本府として、調査委員会を立ち上げるなど特別の体制を確立して、徹底的な調査を行い府民に明らかにすべきです。また、府道路公社・京都高速道路の発注工事についても対象とし、調査を求めるべきと考えますが、いかがですか。あわせてお答えください。

【土木建築部長】府としては、5月23日の公正取引委員会の刑事告発時に、直ちに対象業者を指名停止し、6月1日の京都府入札監視委員会で、府における過去5年間の鋼鉄製橋梁の発注状況や入札結果を報告するなど、速やかに対応している。また、公正取引委員会からの要請に応じ、府での過去5年間の入札・契約状況等の詳細な資料を公正取引委員会に提出した。現段階では、検察や公正取引委員会が、国土交通省や日本道路公団発注の工事について捜査を進めている状況で、その結果を踏まえて適切に対応を図る。

府では、平成15年7月に談合防止対策を強化し、入札時に全参加者から提出された工事費内訳書の点検、第2には談合が確定した場合における、契約解除予約条項及び損害賠償請求条項の設定、第3には談合に対する指名停止措置の強化など、様々な取組みを行ってきた。今後は、国土交通省が設置した「入札談合再発防止対策検討委員会」の検討状況も踏まえ、引き続き、道路公社も含め、談合防止のための対策強化に取り組む。

なお、阪神高速道路公団でも、必要な取組みがなされると考える。

 

学校の安全確保に人員配置の制度をつくり、国へ予算措置を求めよ

【前窪】最後に、学校の安全対策について質問します。

今年2月、寝屋川市立中央小学校で、17才の少年により3人の教職員が殺傷された事件から4ヶ月、2003年12月、宇治小学校で、1年生の男子2人が侵入者によって切られ、負傷した事件から1年半が経過しました。最も安全であるべき学校で繰り返されるこのような事件は、子供たちの心に、はかり知れない傷を与えています。

宇治小学校や寝屋川中央小学校の事件は、各学校で「危機管理マニュアル」を作成するなど、安全対策に取り組んできた中で起こった事件でもあり、本府においても、改めて学校の安全対策の総点検、安全対策の再検討が求められました。

予想も出来ない事件から、子どもや教職員をどう守るのか。事件の未然防止へ有効な手だては直ちに講じなければなりません。モニターやインターホンがあっても見る人がおらず、役に立たないというのが学校の実態です。設備はあくまでも補助的なもので、人がいてこそ生かされるものです。ところが現実はどうでしょうか。教員は超過密労働でゆとりがなくなる一方、全国的に学校用務員等の職員は削減され、1985年から半減し、3000人程度となっています。

学校の安全のための人員配置は決定的に重要です。現に、213校ある国立の付属幼・小・中学校等では、全て警備の要員が配置されています。一方、公立学校での配置は、4万3388校・園のうち、わずか2146校・園で4.9%程度に過ぎません。

府内では、3市2町で有償の人的配置が行われ、宇治市では、幼稚園、小・中学校全校に、安全支援員を配置し、登校から下校時までの8時間、校門等の安全対応、モニターの確認などを行なっています。

府教委は国の委託を受けて、今議会に、登下校時などに小学生らを見守る学校安全ボランティア養成の補正予算を提案しています。私は、ボランテイアの善意に頼るだけでは不十分と考えます。府として、安全のための人的配置の制度をつくり、市町村を積極的に支援すること。同時に、国に対してその予算措置を求めるべきと考えます。いかがですか。お答え下さい。

【教育長】学校安全のための人的配置は、不審者による学校侵入を防ぐ上では有効な手段の一つだが、先に奈良県で発生した下校途中での事件の例にもあるように、子どもたちを凶悪な犯罪から守るためには、学校の警備だけでなく、通学路や遊び場など、日常生活の場所での安全確保が必要であり、学校と保護者、地域社会が一体となって、犯罪を生み出さない土壌づくりに取り組むことが、極めて重要である。府教育委員会では、PTAなど関係団体とともに、地域ぐるみで子どもたちを守る体制づくりを行ってきた。今議会でも、地域の学校安全ボランティアの要請や、学校と地域社会全体のネットワークづくりを通して、学校安全体制の整備を支援するための予算を提案している。また、国に対しては、府や市町村が実施する家庭や地域社会と連携した学校安全対策への支援の充実について、すでに要望している。今後とも市町村教育委員会と連携を図りながら、地域ぐるみの学校安全体制づくりが府内全域に推進されるよう、努めていきたい。