府議会6月定例会を終えて(談話)
2005年7月13日
日本共産党京都府会議員団
団長 松尾 孝
6月23日から開かれていた6月定例会は、7月8日閉会した。今議会にはJR西日本の事故を受けて、KTR安全対策のための補正予算などが提案されるとともに、「指定管理者制度」導入のための各施設設置条例改正やPFI導入による府営住宅整備の契約案件の提案、府立高校つぶしの「再編案」の報告など、「経営改革プラン」にもとづく、山田知事の「自治体の役割放棄」がいっそう明確になった議会であった。
わが党議員団は、論戦と審議を通じ、「山田府政が府民に何をもたらすか」を明らかにするとともに、自治体の本来の役割をとりもどし、府民の願いを実現するために奮闘した。
1、4月25日発生したJR尼崎脱線事故をめぐって、わが党議員団は、JR西日本が「安全を最優先に」としながらも、5000人の人員削減計画をすすめようとしていること、国土交通省が「安全対策も民間まかせ」としていることを厳しく批判するとともに、わが党議員団の調査にもとづくJR各路線の危険箇所を具体的に示し、京都府としても府内のJR、私鉄路線の調査を行い、抜本的な安全対策を求めることを要求した。知事は、「公共交通の安全対策は事業者と国土交通省の責任と権限」としながらも、JR西日本の「府内における実施計画について内容を点検し、府民の安心・安全を確保する立場から、必要なことは求めていく」と答弁した。今後、京都府として、JR西日本に対して、必要な箇所へのATSや脱線防止ガードの設置、ホームの防護柵や転落感知マットの設置、ホームへの安全要員の配置など、具体的な安全対策を講じるよう、申し入れることが求められている。
また、わが党議員団は事故後ただちにKTR幹部と懇談を行い、安全対策の強化を求めた。今回、KTRへのATSや脱線防止ガードの設置など予算措置が講じられたが、国が財政基盤の弱い第3セクターなどへ財政支援を拡充するよう求めるものである。
2、わが党議員団は代表質問で「経営改革プラン」をはじめとした山田知事の府政運営の基本姿勢について、第一に、府を「経営体」としてとらえ「経営の視点」や「受益と負担」を強調することは、「採算の合わない事業はやらない」「負担できない府民はサービスをがまんせよ」ということであることを指摘し、これは「住民の福祉の増進を図ること」を目的とする「自治体の役割と相容れない」ことを厳しく批判した。第二に、「民間企業との協働」は、財界が求める公的分野の市場開放要求にこたえようとするもので、「公の施設」への京都府の責任放棄であることを指摘。第三に、「集中と選択」も、「経営改革プラン」に「税源涵養のため将来性のある中小企業の育成支援」をかかげ、「将来性のない中小企業」は切り捨てるものと厳しく批判し、「税源涵養」というなら伝統地場産業、中小零細企業の経営を立て直してこそ府財政を安定させ、雇用も守ることができると指摘した。
こうした批判に対し知事は「『経営』の意義は府民目線に立って、限られた資源を最大限に活かし、府民に最大限のサービスを還元しようとするもの」「採算性は言っていない」と必死の弁解をしたが、すでに「経営の観点」から洛東病院を廃止し、高校つぶしを進めていることの「どこに府民目線があるのか」、「PFI導入によって中小企業の仕事が奪われているではないか」との再質問にまともに答えることができなかった。
また、府立高校の再編について「『採算性』という言葉は府立学校の再編で使ったことはない」と居直ったが、1月30日の京都新聞紙上で自らが「経営の観点で高校再編を」と発言していることをごまかそうとするものである。
知事のこうした基本姿勢は、「小泉改革に同感」(1/30京都新聞)とのべているように、小泉「構造改革」と同様に「もうけ第一の競争社会」「ルールなき弱肉強食の社会」をつくろうとするもので、府民の願いと自治体の役割に背を向けるものであることがますます明らかとなった。
自民党も代表質問で「経営改革プラン」でいう「集中と選択」について「『集中』から取り残される事業や『選択』から除外される事業がでる。その分、府民サービスが低下する」と発言しており、山田知事の「集中と選択」が府民との矛盾を深めることを危惧せざるを得なくなっている。
3、今議会に、府立の30施設を民間企業に運営と管理を任せることのできる「指定管理者制度導入」の関係条例改正が提案された。
これは、「経費削減」を目的に、公的責任を放棄して民間企業に自治体関係市場を開放しようとするものである。しかし、この間のわが党議員団の議会での論戦や「公的責任を守れ」「事業団職員の雇用の確保を」などの関係職場や府民の運動で、知事も「府として公的責務を十分果たす視点から、福祉関係施設など入所者の立場にたった安定したきめ細かな運営が必要な施設と、建物の管理業務が中心となる施設では、指定に当たって考慮すべき事項はおのずと違ってくる。今後施設の特性も踏まえ、公募により広く募集するのが適当か、現行の管理運営団体が引き続き管理運営に当たるのが良いか検討していく」「プロパー職員の雇用処遇については、法的な問題も含め十分な配慮が必要で、検討を重ねている」と答弁せざるをえなくなった。
この答弁からすれば、本来なら一つ一つの施設の特性に応じ「直営に戻すこと」も含めた検討や選定基準を示し、管理者を「公募・非公募」どちらで行うのかなどを議会に明らかにし、一体で審議を求めるべきである。ところが知事は「民間企業の参入も可能」とする条例改正だけを提案したもので、わが党議員団はこうしたやり方を批判し、本議案に反対した。
また、PFIによる府営住宅常団地の建替えの契約案件について、「大手企業が受注し、中小企業の仕事が奪われたではないか」と質したのに対し、知事は「地元の中小企業にぜひとも発注していただきたいとお願いしているところ」と述べたが、これはせいぜい3次、4次下請けに「地元中小企業に発注をお願いする」としたもので、これまでの分割発注による中小企業の仕事確保の努力とはほど遠いものである。
4、府教委が5月24日に一方的に発表した、道理のない「城南高校と西宇治高校、南八幡高校と八幡高校の統廃合、城南、南八幡高校跡地に養護学校建設計画(案)」は、生徒、教職員、保護者、卒業生など関係者に大きな衝撃を与え、怒りと不安が広がっている。
しかも、府教委のこれまでの「高校再編とリンクさせない」との説明をくつがえし、高校再編とリンクさせたため、養護学校建設が今後7〜8年先送りとなるだけでなく、求められていた城陽市に建設しないため、宇治の養護学校は200人近い超マンモス校となり、桃山学園の生徒は八幡に通学を強いられるなど大きな矛盾を生むものとなっている。
わが党議員団は、この統廃合計画案について、関係者に事前にはなんら説明もなく府民不在、議会軽視であることを厳しく批判したが、知事は府教委に「府民によくお知らせし、理解を求めながらすすめてほしいと言っている」と答弁した。しかし、それならば「統廃合実施」を前提に、すでにスタートしている八幡高校と南八幡高校の再編準備委員会はただちに中止すべきであり、関係者の理解を得るため府教委として説明会を開催し、出される意見に誠実に答えることを表明すべきである。
府教委は今後、山城地域だけでなく、京都市内や北部地域でも高校統廃合を進めようとしている。「特色ある学校づくり」「生徒や父母のニーズに応えた学校」を口実に、地域の学校がなくなるとともに、普通科が減らされ、生徒間競争をいっそう激しくさせようとするものである。
さらに今議会に、園部高校に付属中学校を併設し、「中高一貫校」とする条例案と整備のための予算案が提案されたが、すでに2年目を迎えた洛北高校付属中学校が受験競争の低年齢化を引き起こしており、これを拡大するものである。
また、文科省の調査結果でも習熟度別の少人数授業より少人数学級の方が、教育効果が高いことが明らかとなり、文科省も「少人数学級編成」の方向で検討を始めていることを示し、少人数学級実現を求めたのに対し、教育長は「さまざまな意見がある」と、「習熟度別授業」などの「京都方式」に固執する態度をとった。
府教委がすすめるこうした「競争」教育の拡大は、「極度に競争的な教育制度によるストレスのため、子どもが発達のゆがみにさらされている」と国連子ども権利委員会からも厳しく指摘されていることに背を向けるものである。
わが党議員団は、子どもの健やかな成長を願うすべての府民とともに、「経営の観点」での高校つぶしを許さず、少人数学級の実現をはじめ、生徒児童の安全対策など教育条件の整備めざして引き続き奮闘するものである。
5、小泉首相の靖国参拝問題は、日本とアジア、世界の戦後政治の出発点をゆがめるものとして、アジア各国はもちろん世界から厳しい批判をあび、「首相の靖国参拝は中止を」の声が大きく広がっている。わが党議員団は、知事としても「中止を求めるべき」と求めたところ、山田知事は「小泉首相が私人として参拝されている以上、首相ご自身の総合的な判断をして行動されるべきと考える」と事実上小泉首相の態度を容認する態度を表明した。これは、知事がいくら「中国、韓国をはじめアジア各国との良好な関係を保つことは非常に重要、アジア各国との友好交流に貢献する」と語っても、それとまったく相容れない事態となっている「首相の靖国参拝」に何も語れないのでは、本当のアジア諸国との友好関係を築くことはできない。
また憲法について、知事は全国知事会の憲法問題特別委員会で「地方から憲法についてものがいえるよう本質的議論を」「自治の章に限定すると幅の狭い議論になる」と発言しておきながら、「9条2項についてはどう考えるのか」と質すと、「各国の人々が国境を越えて協調し、人類の共存と未来を守ろうとする精神、こういうものを踏まえて議論すべきである」と答えたが、この答弁は、自民党や民主党の憲法改悪派の論旨と深く重なり合うものである。
自民党新憲法起草委員会が7日に発表した「改憲要綱案」でも、前文で「国際協調を旨とし、積極的に世界の平和と諸国民の幸福に貢献する。地球上いずこにおいても圧制や人権侵害を排除するため不断の努力を怠らない」とし、9条1項では「積極的に国際社会の平和に向けて努力する」ことを明記し、9条2項では「自衛軍の保持」「自衛軍は、国際の平和と安定に寄与することができる」と海外派兵を可能としようとするものである。
民主党・鳩山元代表の「憲法改正試案」でも「国際協調の再定義」がいわれ、「自衛軍を保持し」、国際協調のため「国連による国際警察軍的な活動への参加は容認する」としている。
山田知事が憲法9条2項を守ることについては、なにも言わずに、「各国の人々が国境を越えて協調し、人類の共存と未来を守ろうとする精神」を「踏まえて議論すべき」と答えたことは、こうした自民党や民主党の改憲派と同じ考え方にたつことを表明したものである。
こうした山田知事の改憲派としての態度は、憲法を守り、平和な日本と世界をと願う多くの府民に背を向けるものである。
6、2月議会への「京丹波町」の「配置分合」につづき、今議会には、3件の「市町の廃置分合」が提案された。園部町・八木町・日吉町・美山町を合併し「南丹市」とすること、及び大江町・夜久野町・三和町を福知山市に編入合併する二つの「配置分合」については、住民投票を求める町民の大きな声があるにかかわらず、これを拒否して強引に進めた合併であることから反対した。野田川町・岩滝町・加悦町を合併して、「与謝野町」とすることについては、府が押し付けた1市4町の枠組みに住民が反対し、一部に不十分さはあるものの、全体として住民の意見をいかす形ですすめられたものであり、賛成の態度をとった。
この間、「京丹後市」から始まった、総務省とその出先機関化のような京都府による強引な合併押し付けのもとで、多くの住民が「町の将来は住民が決める」と住民投票を求める直接請求や議会の解散請求、町長選挙など「住民自治」を求めるかってない取り組みが行われた。これは府民の住民自治の底力を示す重要なものである。同時に、合併後の京丹後市の深刻な財政状況や住民負担の増大、台風23号災害対応の遅れなどは、「合併」が住民の暮らしを守る自治体の役割を後退させるものであることもすでに明らかとなっている。わが党議員団は、合併を余儀なくされた市町でも、住民の福祉の向上をはかる自治体本来の役割を発揮するため、引き続き奮闘するものである。
7、今議会開会中に政府税制調査会が発表した、定率減税の廃止、給与所得控除や扶養者
控除などサラリーマンへの大増税計画の「論点整理」は、サラリーマンはもちろん多くの国民に大きな衝撃を与え、怒りと不安が広がっている。
わが党議員団は、府民の暮らしと京都経済に大打撃を与えるものとして「大増税を実施しないよう求める意見書案」を提案したが、自民・公明・民主・新政会の与党会派は、これに反対し否決した。これは政府与党の自民、公明だけでなく、民主党も増税派であり、地方政治でも、国政でもオール与党で悪政をすすめようとする勢力であることを示したものである。
自民党など与党会派は、「第二名神高速道路の整備促進を求める意見書」を提案したが、すでに政府自身が名神高速と京滋バイパスがあるうえに「三重ルート」となる第二名神の必要性はないとしており、しかも大津・高槻間で1兆2200億円、1キロ当たり300億円以上もの巨額の投資が必要であり、国、地方の財政状況から見ても実施すべきでないことは明白である。
こうしたムダな大型公共事業を相変わらずすすめようとする態度は、まったく無責任な態度であるとともに、とりわけ民主党は、国会の場では「必要ない」としながら、地方では「推進」を求めるという国民を欺く、その場しのぎの態度をとった。
8、今議会でも、議会での日本共産党の論戦と府民の運動が、府政を動かす力であることを示した。
@「伝統と文化のものづくり産業振興条例」(仮称)案の骨子が報告され、府民の意見募集が始まった。これは、98年12月にわが党議員団が「和装、伝統産業振興条例大綱」を発表するなど、西陣をはじめ伝統産業の振興をもとめる多くの関係者の運動が実ったものである。
条例案骨子では「人づくり、ものづくり、環境づくり」の基本理念を明らかにするとともに、「必要な財政措置を講じます」とするなど積極的内容もあるが、「伝統的なものづくり産業の振興」に果たす「府の役割」は、「連携し、支援する」にとどまっている。また、必要な伝統産業の実態調査や振興計画づくりへの「府の役割」が明記されていないことや伝統産業の「応援団」的な「府民会議(仮称)の設置」は言われているが、振興を図るための産・学・公の連携した「振興協議会」などの組織づくりはふれていない。今後、こうした問題点への意見とともに、「基本的な施策」は「幅広いご意見を伺いながら検討」としており、関係者の積極的な意見を提出することが求められている。
わが党議員団は、引き続き、実効ある条例となるよう全力を尽くすものである。
A過大な水需要予測をもとにすすめられてきた府営水道の水利権の確保について、わが党議員団は丹生ダム、大戸川ダム、天ヶ瀬ダム再開発からの撤退を求めてきたが、今議会開会中に、近畿地方整備局が、大戸川ダムの中止、丹生ダムの縮小見直しを発表した。知事は「府の考えをおおむね配慮した形」と表明したが、京都府が長年にわたって過大な水需要予測をもとに「水利権確保のためダムは必要」としてきた態度が破綻したものである。
しかし、京都府は依然として、渇水時でも府民が最大に水を使うことを前提にした「最大給水量」をもとに水需要予測をたて、天ヶ瀬ダム再開発事業は必要との態度をとっている。水道懇の副座長も「大阪府では平均給水量を使って予測している」としており、まったく道理のないものである。これを是正するなら水利権をさらに減少させ、府民の水道料の負担も軽減される。わが党議員団は引き続き見直しを求めて奮闘するものである。
9、今議会で常任・特別委員会委員と正副委員長の改選が行われた。わが党議員団は、10年来続いてきた、委員会運営の役職からわが党議員を排除し、与党会派でポスト配分を行うやり方について、議長と各会派に対し「議会運営は議会を構成するすべての会派に対し、公正公平に行うこと。そのためにも正副委員長からわが党議員団を排除することを改めること」を申し入れ、その改善のために奮闘した。しかし、与党会派はこれを拒否し、またもやわが党議員団を排除する暴挙を行った。こうしたやり方は、議会の機能を強化するための改革の取り組みにも逆行するものであり、与党会派の道理のなさを示すもので、厳しく糾弾するものである。
また、議会運営の活性化に向けて、2月議会からインターネットでのライブ中継が実施されるなど改善が図られてきたが、9月議会から、本会議質問について「一括質問、一括答弁」の現在のやり方を改善し、「分割・分答も可とする」ことが確認され、実施されることとなった。これによって、再質問が1回とされていた制限がなくなり、理事者の不誠実な答弁を糾すなど、より議会論戦を活発化させることができ、府民にとってもわかりやすい議会へと前進させることができることとなった。
わが党議員団は、議員の「費用弁償」について、その見直しを各会派に提案し、「今後、検討をすすめるための全会派による研究会をたちあげる」ことが合意された。わが党議員団は、「費用弁償」はあくまでも「必要な経費の実費」であり、早急に改善するよう求め奮闘するものである。