2005年9月定例会 代表質問

新井進(日本共産党、京都市北区)2005年9月27日

 

<総選挙結果について>

日本共産党の新井進です。私は議員団を代表して、先に通告しています数点について、知事ならびに関係理事者に質問いたします。

私は、今議会から試行的に実施されることとなった分割、分答方式で質問しますので、的確な答弁をお願いします。

まず、質問に入ります前に、先に行われました総選挙に関連して一言申し上げます。

今度の総選挙は、「小泉突風」が吹きすさぶ難しい条件のもとでのたたかいでしたが、日本共産党は、比例代表で得票を34万増やし、492万で、9議席を維持・確保することができました。ご支援をいただきました多くのみなさんに心からお礼申し上げます。

今日、自民、民主の「二大政党」が庶民増税でも、憲法改悪でも競いあうもとで、悪政にきっぱり対決し、国民の暮らしと憲法、平和を守る「たしかな野党」としての日本共産党前進の必要性を国民のみなさんに訴え、大きな共感とご支持を寄せていただくことができました。

今回、自民、公明が3分の2もの議席を得ましたが、これは小選挙区制の害悪を端的に示すものです。自民党は小選挙区で47・8%の得票で73%の議席を得ており、全国では3300万人の国民の投票が議席に結びつかないという結果となっているのです。これは庶民いじめの小泉構造改革や庶民増税、憲法改悪への国民の不安と怒りの声が切捨てられたもので、いま、多くの国民は、小泉内閣が暴走しないか不安の声をあげています。わが党は、今後とも、小泉内閣の暴走を許さず、国民のみなさんと力をあわせて、暮らしを守る要求の実現、平和の憲法を生かし、アジア諸国との平和と友好の関係を築くため全力でがんばる決意です。

 

<小泉構造改革について>

府民の立場から国にものを言うのは知事の責務

郵政民営化、応益負担導入の自立支援法、庶民増税に知事は反対を

 

そこで、まず最初に、国の政治にかかわる問題について、お伺いします。

一点目は郵政民営化についてです。

今回、小泉首相は「郵政民営化の賛否を問う」として選挙を行いましたが、与党の自民、公明は、比例選挙で51%、小選挙区では49%しか得ておらず、国民の賛否は相半ばし、世論調査でも、慎重な審議を求めています。ところが小泉内閣は、特別国会で郵政民営化を強行するとしています。7月に京都で行われた公聴会で、草木前副知事も「京都府の75%は過疎地。JAの合併などで唯一郵便局だけが地域の金融機関のところもある。民営化で不採算の局が撤退し、過疎地に悲惨な結果が予想される」と危惧の声をあげておられます。中山間地域などへの金融サービスを切捨てる郵政民営化に、知事として反対の立場を表明すべきではありませんか。いかがですか。

 二点目は、障害者自立支援法についてです。

先の国会で廃案となった「障害者自立支援法」もそのまま再提出されようとしています。この法案は、「応益負担」の導入で、障害が重い人ほど負担が重くなり、自立支援どころか、生きるためのサービスすら受けられない事態をつくりだすものです。この法案は、「持続可能な社会、制度をつくる」「受益と負担の見直し」としてすすめられる小泉構造改革が、社会保障制度の根本を覆し、弱者を切捨てるものであることを端的に示しています。知事も六月議会で「受益と負担」を言い、事実上「応益負担」を容認する答弁でしたが、「負担増によって、自立を阻むようなことがあっては施策の基本方向を誤ることになる。心配している」と述べられたのですから、「障害者の自立を阻む」本法案に反対の立場を明確にすべきではありませんか。

三点目は、庶民増税の問題です。

自民党は、政権公約で「サラリーマン増税を行うとの政府税調の考え方はとらない」といいながら、谷垣財務大臣は「かなり多くの国民の中に、どこかで増税も必要じゃないかという気持ちもあったと感じている」などと、増税も選挙で信任されたかのように言い、日本経団連もさっそく、大企業減税は継続と拡大を求めながら「2007年度をメドに消費税率を10%まで引き上げ、その後も段階的に引き上げていく必要がある」と提言するなど、庶民大増税が具体化されようとしています。

 この庶民大増税のメニューを示した政府税調の「論点整理」では、定率減税の廃止、給与所得控除の半減、配偶者控除や扶養者控除などの廃止で12兆円もの増税を計画していることです。消費税の10%への引き上げによる12兆円と合わせれば24兆円という空前の大増税計画です。二つには、税調の提案とおり実施すれば、年収が300万円の人は33・1倍もの増税に、年収2億円の人はわずか4%の増税と、低所得者ほど負担が重くなり、課税最低限も114万4000円と、生活保護基準の半分以下となり、「生計費非課税」原則を完全に崩壊させるものです。第三には、このように庶民への大増税計画のメニューを満載しておきながら、大企業や金持ちへの減税にはまったく手をつけていないことです。バブル期以上のもうけをあげている大企業の法人税は88年当時28兆円であったのが、今では16兆円へと減らされているのです。大もうけをしているこうした大企業の減税は継続し、庶民には大増税、こんなことは許されません。

 こうした庶民への大増税計画が強行されれば、府民の暮らしと京都経済が破壊されることは明らかです。「府民目線」を強調される知事として、こうした庶民大増税計画に反対し、むだづかいをやめ、大企業に応分の負担を求める。このことを政府に要求すべきではありませんか。いかがですか。お答えください。

 

【知事】 郵政民営化ですが、官から民への改革は、国から地方への改革と相まって、持続可能な安定した社会を維持する上で必要ではあると思いますが、郵政民営化につきましては、地方自治体の立場として、高齢化の進展や過疎地の実態に十分配慮すべきであるという立場であります。その上で京都府としては、府民生活に直接かかわる問題につきましては、地方でしっかりとセーフティーネットが張れるよう、国に対して今後一層、地方分権の推進を求めたい。

前国会で廃案になった、障害者自立支援法ですが、施行時期を平成184月1日に変更する修正を行い、本特別国会に再提出されると聞いている。障害者福祉はノーマライゼーションの理念の下、どんな障害のある人も、できる限り地域で普通の生活できるよう環境を整備することが、これからの障害者施策の基本であると思っている。

利用者負担など今後のサービスのあり方については、障害のある低所得者や重度障害者のみなさんにとって、負担増によって必要なサービスを受けることができない状況が起こり、自立した生活を阻むことがあってはならないと考えている。京都府としては、こういった立場から、真に障害者の自立支援がはかれるよう、従来から繰り返し提案要請を行って来ているところだが、この6月にも改めて国に要請を行って来た。こうした中で、前国会の審議において、衆議院における11項目の付帯決議や利用者負担にかかる低所得者に対する新たな配慮措置として、本人所得を基本とする負担上限額の設定、社会福祉法人減免等の考え方が示されているところであります。

今後とも、財源論に偏重することなく、的確なサービスが提供される仕組みとなることを基本に、障害者本人、ご家族、関係者の意見も聞きながら、今国会におきまして十分な審議が行われますよう、強く要請して参りたいと考えています。

政府税制調査会の個人所得課税に対する論点整理についてですが、まさにその名の通り、税制調査会の論点を整理するもので、政府として方向性を出したものではないと言明されておられます。

これまでから、何度もお答えしたとおり、公的サービスの費用をまかなう租税の負担水準の議論は、公的サービスの水準のあり方と表裏一体の関係にありまして、負担の高さだけを議論することは、一面的であると思います。従いまして、少子高齢化の進展、事業活動や個々の人のライフスタイルの多様化と言った、経済社会の構造変化を踏まえ、持続可能な社会をつくるための国の行政水準全体にかかわる受益と負担の問題として総合的に議論すべきものだと考えております。

 

【新井】

郵政民営化について、過疎地への配慮がされた形が必要とおっしゃった。しかし、先の国会の討論なかで、首相自身が、いわゆる「経営判断」だと、このように言っています。しかも、郵政民営化推進の4区の自民党候補は「八木町の3つの郵便局は1つで良い」と言っておられますように、これでも「過疎地域の郵便局が維持できる」と考えておられるのか。再度答弁をお願いします。

もう一点は、障害者自立支援法の問題です。今、「自立した生活を阻む事があってはならない」とおっしゃったが、今回の自立支援法は、それを阻む「応益負担」を導入しているのです。「応益負担」については、知事の考えはどうなのか、再度お聞かせ下さい。

もう一点は、政府税調の論点整理というお話だったが、しかし、これは、政府与党の税調の意向に沿って税調がまとめられたわけで、今の政府与党の見解であることは間違いありません。そういう意味では、今回の事態は、まさにこれから進められようとしている大増税そのものです。今、負担の高さだけで論議するのはいかがなものかとの発言があったが、持続可能な社会をつくると言って、受益と負担の問題として議論をする上で、国民の暮らしや京都経済が持続不可能になると言う大増税が出てくるという事態が今あるわけです。しかも、慎重な議論が必要と言うなら、ムダな大型事業など借金をどんどん増やして、そして更には、大企業には減税を続けるという、こう言うやり方にものを言うべきではないかと考えます。この点について知事の見解をお聞かせ下さい。

【知事】 私は国会議員ではないので、あくまで、地方の立場、知事の立場としてしっかり言うべき事は、国に対して言っておくという形で答弁しましたのでご理解願います。

【新井】

答弁しなかったが、私は、知事の答弁に沿って再質問したのですから、答弁願います。

【知事】 郵政民営化については、国会において高齢化の進展や過疎地の実態に十分配慮するべきだと考えている。

障害者の支援法についても、利用者負担など今後のサービスのあり方について財源論に偏重することなく、的確なサービスが提供される仕組みとする事を基本に、障害者本人、家族、関係者の意見を聞きながら、今国会において十分審議が行われるよう強く要請して参りたい。

税の問題は、まさに表裏一体の問題です。受益と負担の両方を総合的に議論すべき問題であると考えております。

【新井】

知事は選挙の時に、「国にはっきりものを言う」ということおっしゃった。今日も言われたが、知事の見識として府民の立場から、国政の問題についてものを言うことは、知事としての当然の責務なんです。そのことについてものが言えないと言うことでは、本当に府民の期待に応えることはできないと言うことを指摘しておく。

 

 

<中小企業振興>

企業誘致やベンチャー偏重改め、中小企業・地場産業の振興をはかってこそ、活性化と雇用の安定が実現する

 第二の質問は、京都経済、中小企業振興についてです。

 小泉構造改革による規制緩和や不良債権処理で、京都経済は大打撃を受けました。事業所統計を見ると2001年から2004年の3年間で2万3千近い事業所が倒産・廃業に追い込まれ、うち個人事業所がその6割を占めるなど、資本力、競争力が弱い企業が倒産、廃業に追い込まれています。この廃業事業所で働く就業者は13万3千人にものぼっており、これらの人々が職をなくしたことになります。

また、こうしたもとで事業不振や借金などによる自殺者が、京都でも97年以前には50人未満で推移してきたのが、ここ数年は2倍の100人を超える事態になり、しかも40代、50代の働き盛りの自殺者が増えるという痛ましい事態です。まさに弱者切捨てがやられてきたのが、小泉改革です。

知事は、小泉改革でこうした事態を招いていることについて、どう考えておられるのか。お聞かせください。

そして、京都経済がこうした事態にあるとき、重要なことは、中小零細企業が「元気が出るよう」「やる気が出せるよう」支援することです。

ところが、本府の商工予算の推移を見ますと、IT関連やベンチャー企業支援、企業誘致に重点が置かれ、京都経済と雇用を支える地場産業振興予算は大幅に減少しています。

 本年度の和装伝統産業予算は01年にくらべ67.3%の2億円余へ、北部の機械金属や織物振興をはかる北部基幹産業基盤強化支援事業費も01年6600万円が2800万円、42%へ大幅に減少しています。他方、ベンチャー関連予算はこの間に2.4倍、企業誘致関連予算は14倍の31億円へと急増しています。ここに本府の商工行政がどこに力を入れているか明らかです。

こうした企業誘致やベンチャー企業に頼るやり方を転換し、地域に根ざした地場産業の振興を図るべきではありませんか。いかがですか。

また、99年に改定された中小企業基本法は、「地方公共団体の区域の自然的経済的社会的諸条件に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有する」としているのです。本府の企業誘致、ベンチャー企業偏重の商工行政の転換を図るためにも、本府として中小企業の振興、地場産業の振興を図るための「中小企業振興基本条例」を制定することを求めるものです。

府県段階で最初に条例を制定した埼玉県では、その条例前文で「中小企業が本県経済の基盤をなしている。中小企業の振興は、単に中小企業だけでなく、経済、産業と県民生活全体にかかわる課題である」として位置づけ基本条例を制定し、中小零細業者を大きく励ましています。

本府の場合、地域ごとに自然的、経済的、社会的条件が大きくことなることから、条例の中に、地域ごとに経済関係者や事業者、研究者などが参加した「地域経済振興協議会」を設置し、地域のもつ資源を生かし、製造業だけでなく農林漁業や観光、福祉などと結んだネットワークの構築で、地域経済全体を活性化させる地域経済振興計画の確立をもりこみ、地域経済の活性化を図る対策の強化が必要です。

こうした方向への転換こそ、京都の中小零細企業を励まし、地域経済の活性化と雇用の安定、創出が図れるのです。いかがですか。お答えください。

次に、中小企業支援で緊急を要する重油価格の高騰について、質問します。重油価格高騰の影響は直接重油やガソリンを使う業種から加工製品を使う業種まで広範囲に及んでいます。

先の六月議会で同僚議員から、京友禅の蒸し加工業者が大打撃を受けている実態を紹介し、実態調査と支援策を求めましたが、理事者から「現在、京都産業全体への影響や今後の対応について調査を行っているところ」と答弁がありましたが、調査結果とその対応策についていかがされたのかお伺いいたします。

同時に、今日の異常な重油値上げに対応して、ひとつは、石油元売り会社は、これまで多くの利益を上げているのですから、その利益をユーザー・消費者に還元するよう指導し、便乗値上げがないように調査・監視することを国に求めるべきと考えます。さらに、政府・民間が保有する半年分の石油備蓄を、価格高騰を抑えるために機動的に放出し、安定的な供給実施のための方針を確立するよう政府に求めるべきですが、いかがですか。

 

【知事】 小泉内閣の構造改革でありますが、景気は様々な要因が重なって成り立つもので、私は改革については、地方は地方の立場から、従来から国に対し、地域経済や雇用を支えている地元中小企業の厳しい実態を踏まえた対策等を京都府として強く要望してきました。その上で、私自身は、知事就任以来、雇用対策の推進と地域経済の活性化に全力で取り組むと共に、セーフティーネットの確保に努めてきました。

「雇用創出就業支援計画」の推進等により雇用創出を進めると共に、フリーター等の若年対策を積極的に実施し、「就業支援計画」では、今年度末で6万2千人を見込むまでになりました。また、厳しい中小零細企業を支えるために、全国で初めて「あんしん借換融資」や「小規模企業おうえん融資」等、積極的な金融対策を実施し、その額や件数は過去最高となっております。また、和装伝統産業の職人さんの仕事作りのための「匠の公共事業」「緑の公共事業」、中小企業の発注が多くを占める「臨時生活関連施設整備事業」の推進等、きめ細かく対応してきたところでありまして、単なる予算のタテ割りだけで議論はしていただきたくないと思います。そうした全体を総合的に見て頂ければ、私の意図はわかって頂けるのではないかと思います。

こうした施策や、景気回復が進む中、平成16年の完全失業率や有効求人倍率が大幅に改善されたことはご存知の通りでありまして、企業倒産件数についても減少しています。更に、私どもはこうした中、中小企業向けの施策と雇用をはじめ、地元企業への波及効果が大きい企業誘致などの施策が相まって地域の活性化が推進され、京都経済全体の発展につながるものでありして、このような観点からいたしますと、府の商工予算はある面から申しますと、すべて中小企業をはじめとする京都府経済の活性化の予算ではないかと思います。

なお、中小企業の振興のための条例につきましては、歴史と伝統の積み重ねを有します京都の特性を生かした産業振興をはかるため、京都市とも連携しまして、全国にも例のない「伝統と文化のものづくり産業振興条例」を本議会に提案をさせて頂いたところであります。また、昨年四つの振興局単位に地域振興計画を策定しまして、それぞれの地域におきましても、地域の実情に応じた経済活性策を進めているところであります。今後とも、府民や関係業者のみなさまの意見を十分お聞きしながら、中小企業対策など商工施策の推進に努めて参りたい。

次に、重油高騰対策です。重油は経済の基礎エネルギーのひとつであります。6月以降、財団法人京都産業21等においてエネルギー依存度の高い繊維加工業や機械金属業等、幅広い中小企業分野で影響状況を調査して参りました。調査結果によると、運輸業やクリーニング業などに加えまして、繊維関連業の内、重油を大量に使用する精錬や蒸し、水洗業において採算面等に影響が見られる他、機械金属関係では銑鉄鋳物やプラスチック製品加工業において先行き懸念の強い状況になっています。

各業界では、省エネ対策の拡充をはかるとともに、加工価格の適正化に向け努力し続けているものの、業種によっては対応がなかなか難しいものもあり、京都府産業支援センターが、商工会・商工会議所とも連携をはかり、経営相談の強化に努めてきています。京都府といたしましても、今後の動向を適格に把握し、必要に応じまして国のセーフティネットの保証の拡大も求めつつ、政府系資金の活用や、制度資金の適格な運用により中小企業のニーズに応えていきたい。

この問題については、本日、小泉首相から対策の検討が指示されまして、官房長官も財政措置が必要かどうかも含めすぐに協議に入ると言明されているところであり、府といたしましてもこうした実態把握を含めまして、地域産業や府民生活に対し支障が生じないよう的確な対応を求めていきたいと思います。

【新井】

小泉改革の下で京都の府民の暮らしや経営が大変になっていることについて、知事は極めてあっさりと答えられましたけれども、あの不良債権処理で、京都の業者がどれだけ倒産に追い込まれたのか、そして、自らの命を絶たなければならなかったのか。こうした事態を招いている事自体について、本来知事は心を寄せるべきだと言うことを申し上げておきたい。

商工予算について色々いわれたが、予算の立て方が、その行政の姿勢を現している訳で、そういった意味で、先ほど申したような経過をたどっていると言うことは明らかですから、その点は指摘しておきたい。

もう一点は、伝統産業の振興の条例が今回制定をされると言うことですが、この条例そのものについて言えば、98年の1月の段階で我党議員団が提案した、その内容が7年間を経ってようやく実現すると言う状況です。私どもは、伝統地場産業を振興させると同時に京都の中小企業全体を振興させる、そのための基本条例の制定がいよいよ必要となってきていると言うことを提案致しましたので、この点はぜひご検討頂きたいと思います。

企業誘致の問題ですが、誘致企業と地場産業の経済波及効果の違いをよく見てほしいと思う。これは、岐阜県の美濃加茂市の調査結果ですが、誘致した電機工場の出荷額が500億円、地場の陶磁器産業の出荷額が500億円と同じです。ところが、就業者数は、電機工場は605人、産地6151人。これは、産地の場合、地域内分業で関連事業所がたくさんある。こういう状況で地域の経済として集積されて来ている。ここを元気にさせる事の方が、より地域経済への波及効果、また、雇用の拡大にも結びついてくる。このことを申し上げておきたい。

京都の場合、これまで京都に活力をということで、学研開発やリゾート開発でやってきました。しかし、これが破綻して行き詰まっていることは明らかです。こうした下で、また今度は企業誘致ということですが、京都のものづくりをどう支えるか、地場産業をどう活性化させるかが今必要だと言うことを指摘しておきたいと思います。

今も触れられました、雇用との関わりで次の質問に移ります。

 

 

<雇用対策>

全国一高いパート・アルバイトの比率 高い青年失業率

国に労働法制の改悪と大企業のリストラの中止を求めよ

第三に、雇用対策について伺います。

改善したとはいえ、府内の失業率は高水準で推移しており、依然深刻です。しかも「改善した」内容は、非正規雇用労働者への置き換えが急速に進んだということです。就業構造調査によれば1997年から2002年の間に正規の社員は83000人減少し、反対にパート・アルバイト、派遣が91700人も増大しています。その結果、京都のパート、アルバイトの比率は24.8%で全国一高い状況です。

30歳未満の青年は、失業率が高い上に、働いている青年でもパート、アルバイト、派遣社員、契約社員で38%占めており、しかもその年収は150万円未満が約8割にものぼっているのです。

これでは改善したとはとてもいえないどころか、より深刻な問題を生み出しているといわなければなりません。このことについて知事はどう考えておられるのか、お聞かせください。

こうした状況は、京都の将来にとっても重大問題で、17年版「国民生活白書」でも、青年の所得が低いことが、晩婚化や少子化の要因となっていることを指摘しています。こうした青年の雇用実態に踏み込んだ支援策が少子化対策の上でも重要となっています。

いま、府内では390の派遣事業所があり、派遣労働者数も3万人を超えています。青年の雇用状況の改善をはかるため、派遣労働者および青年労働者の雇用と労働条件の実態調査を府として実施することを求めますがいかがですか。

 中高年の雇用問題も深刻です。高齢者事業団が今年五月実施したハローワーク前アンケート調査を見ると、会社都合で退職させられた人が40歳、50歳代で約半数を占め、60歳を超えると8割を占めています。しかも求職では、約5割が年齢制限で排除されています。これらの人たちの仕事確保をするうえで緊急雇用創出事業が一定の効果を挙げていたのですがこれが打ち切られました。引き続き「つなぎ的」な公的就労の場を確保することが必要です。緊急雇用創出事業の再開を国に求めるとともに、本府としても縮小したこの事業の拡充を図るべきです。いかがですか。

また、公共事業を発注する場合、林業関係であれば森林組合に発注し、林業労働者の仕事確保に資する、河川の清掃や草刈などは、失業者の仕事確保に取り組んでいる高齢者事業団などNPO法人に仕事を回すなど努力されてきましたが、これらが来年度から競争入札方式に変えられるとされています。公的事業の場合、雇用と結びつけた政策目的を明確にした契約方式を維持し、拡大すべきと考えますがいかがですか。

知事はこれまで企業誘致により雇用の場を確保するとし、企業誘致のための特別対策補助金は、制度実施以来4年間で11億5千万円、本年度は本議会に提案された補正を含めると14億8千万円にもなります。これらによってあらたな雇用はどれだけ確保できたのか、お聞かせください。

 今日、こうした非正規労働者や不安定雇用労働者が増大する最大の要因は、製造業まで派遣事業を認めるなど労働法制の相次ぐ改悪と大企業の徹底したリストラにあります。さらに、自民、公明、民主が賛成して制定・継続された「産業再生支援法」で、首切りを行えば一人100万円の減税をするというリストラ支援を行ってきたからです。政府と大企業のこうしたやりかたを正してこそ、労働者の雇用の安定を図ることができます。国に対し、リストラ支援や労働法制改悪による不安定雇用の拡大策をやめるよう求めるべきです。いかがですか。

 

【知事】 中小企業の雇用対策については、私は全力を挙げてきたと言うことを、きちっと例をお示している訳ですから、それでも数字でしかわからないというのは、私は問題だと思う。

基礎体力も大切ですから、私は企業誘致に取り組んでいますが、じゃあ、新井議員は綾部の京セラは来なくても良いと言われるのかと言うこと。そこをハッキリせずに、企業誘致、企業誘致と質問されるのは、ちょっと分からない。私は、両方の施策が相まって、それによって京都の経済が活性化していくという施策を目指して行きたいと思っております。

雇用対策だが、先ほど申しました様に、厳しい雇用情勢に対応し、私は4年間に約62千人の雇用創出を「雇用創出就業支援計画」で行ってきました。こうした取り組みや、景気の回復もありまして、平成16年度の府内の完全失業率は、全国一位の改善幅を記録しましてし、24歳未満の失業率も前年の13.0%から7.5%へ大きく改善しております。

しかしながら、フリーター等不安定な就労状態にある若者や、進学も就職もしないニートという新たな課題も生じておりますので、全国に先駆けまして、若年者就業支援センターを設置し、ここで2年間で正規雇用を中心に、約2300人という全国トップクラスの実績を上げたところであります。さらに、現在検討中の新たな雇用プランの中でも、フリーターの常用雇用化の支援策を柱としまして、若年者就業支援対策の総合的な推進について検討を進めておりまして、本人はもちろん、行政や産業、教育の各界が総ぐるみで、若者のための新たな雇用システム作りに積極的に取り組んで参りたいと思っております。

雇用と労働条件の調査につきましては、従来から京都府としても重要なテーマとして、調査は毎年実施しておりますが、厚労省においては、16年度に派遣労働者の実態調査を行われまして、若年者の実態調査も来月実施されると聞いておりますので、その状況も踏まえながら対策の充実を図って参りたいと思います。

次に、中高年者の緊急雇用対策でありますが、パートやアルバイトは悪いと良いながら、つなぎをやってくれと言う一貫しない質問の様ですけれど、4〜50台の雇用確保がきつい課題となっておりますので、このため我々は中高年齢層の雇用割合の高い「緑の公共事業」や「匠の公共事業」、さらには、「臨時生活関連施設整備事業」といった経営環境の厳しい林業や和装伝統産業、中小建設業に配慮しながら、地域ニーズや雇用創出効果の高い事業の拡大推進に取り組むことになっておりまして、大変厳しい財政状況の中で53億円出させて頂いております。新しい計画にも、こういった団塊の世代の大量退職が迫っていますので、それに対する対策を進めて参りまして、関係団体みんなが力を合わせて積極的に対応していきたい。

森林整備事業の発注方式については、より透明性、公平性を高める観点から、そのあり方について学識経験者等による委員会を設置して、ただ今検討しているところであります。また、河川清掃業務等の高齢者事業団への委託についても、高齢者の就業確保をはかりつつ、段階的に公募型等の入札方式への転換を検討しております。

「21立地補助金」を活用した企業誘致による雇用の関係だが、16年末までの20社の立地企業で現在までの誘致による雇用創出効果を推計しますと、1254名の直接新規雇用を含めまして、さらに、下請けや物流業を合わせますと4700名の雇用が見込まれている。しかし、この補助金は、引きとめ策としても効果があるということでやっておりますから、そういった府内の企業で2000名を越える既存のものがあるので、それを入れれば計6700名の雇用確保と言えると思います。

今後誘致した企業が本格的な操業を迎える中、さらに大きな雇用効果が生まれると期待しておりまして、引き続き、雇用創出効果の高い企業の誘致に全力をあげて取り組んで参りたいと思います。

京都府としましては、府内の労働者のみなさまが、安心、安全に働ける労働条件を守るために、京都労働局に対し、機会あるごとに要請を行っておりますし、労働者保護の観点から関係法令の周知・啓発に努めているところであります。

【新井】

質問と違う答弁があった。中小企業の問題について知事は、両方の施策が相まってやっているのだとおっしゃったが、それならば、和装伝統産業振興予算が今年度2億円になっていますが、いわゆる誘致企業一社に最大20億円を補助されておられるのですから、せめてそれ並みの予算にされてはいかがですか。もう一度お答え下さい。

もう一点は、青年の雇用の実態調査ですが、東京都は既に派遣労働の実態調査をやっています。そういった意味では、京都府としてもやるべきではないかと申し上げた訳で、新たな検討をぜひお願いしておきたいと思います。

緊急雇用事業ですが、今、失業した人が長期化している訳です。その時のつなぎ的、公的な就労が必要だという意味で質問した訳で、そのことについてどうされるかと言う点では、知事は今、公共事業の方で答えられましてけれど、「緊急雇用創出事業」というのは、直接に臨時雇いも含めた対策として予算が組まれたわけですから、すこし趣旨が違うすり替えの答弁だと思いますので、その点は指摘しておきたい。

企業誘致で数字を今たくさんあげられた。数字はあとで頂きたいが、今までの理事者から出されている資料で言いますと、115千万円の助成で、市町村からもお金がつぎ込まれていますが、その実績は昨年度末で609人という数字です。たとえば、読売新聞の印刷工場が建設されましたけれど、新規の雇用は11人です。直接電話で問い合わせもしましたけれどそれが実態です。さらに、村田製作所が本社工場を建てましたが、これに京都府は9500万円の助成をしています。しかし、新規の雇用は、まだありません。雇用の創出と銘打ってこの事業をやっているのですから、雇用人数の上でも、雇用期間の上でも更に拡大する方向で改善すべきではないか。知事は2千人とか3千人かと言われましたけれども、実績としては理事者の報告にはなっていないのですから、それを証明するだけのものを日常的に明らかにすべきだし、「要件」もそういう「要件」を定めるべきだと思いますので、この点については改めて答弁願います。

【知事】 伝統産業については、今振興条例を我々取り組もうとしていますし、「匠の公共事業」も「緊急雇用創出事業」が国庫事業でやったものを我々引き継いでやっております。さらにご存知のように「あんしん借換融資」や「小規模企業おうえん融資」、私はこれは、債務保証も含めまして大変大きな公費をつぎ込んでいると思っておりまして、こういう数字を全体として見て頂きたいと申しておりまして、これは、賢明な新井議員としては良くお分かりだと思います。

「21立地補助金」ですが、609名というのは、補助対象になった新規雇用でして、1254名というのは、補助対象にならないものも含まれたものでして、これは、心が広いか狭いかという問題だけの問題だと思います。全体として4700名の雇用が見込まれ、既存企業でも2000名の雇用が確保され、あわせて6700名という答弁をさせて頂いた。

【新井】

雇用問題、中小企業の関係については、引き続き委員会等でやりたいと思いますが、あまり都合の良い数字だけ、都合良く並べないでほしいと思います。

 

 

<子育て支援>

子育ての経済的負担を軽減する制度の充実が必要

子どもの医療費助成度、高校の通学費補助の改善を

次に、子育て支援について質問します。

日本の人口が来年から減少傾向に入り、少子化対策は待ったなしの課題となり、今年の国民生活白書も「子育て世代の意識と生活」としています。この白書では、晩婚化が少子化の理由として挙げられ、独身男性の場合「経済力がない」ことが結婚の大きな障害となっていることが指摘されています。これは先に紹介した青年労働者の不安定雇用の拡大が大きな要因です。また、理想の子どもを持とうとしない理由の第一も「子育てや教育にお金がかかりすぎる」が、63%を占め、35歳未満の場合は8割近くなっています。

こうしたことからみても、少子化対策の重要な課題のひとつは、青年の雇用と収入の安定を図ることであり、いまの青年労働者を使い捨てするような雇用形態を改め、大企業にその社会的責任を果たさせることが少子化対策からも求められています。

同時に、子育ての経済的負担を軽減することも大きな課題です。そのひとつが子供の医療費助成です。多くの父母や関係者の願いはせめて就学前までは医療費の心配をせずに子育てができるようにということです。本府の乳幼児医療助成制度も、通院についても8000円の負担をなくすことが強く求められています。

知事は、制度の拡充を求めるわが党議員団の再三の質問にたいし、「全国的にも高い水準になるよう精一杯の支援をしている」「当面は、制度の定着に努めたい」などと答弁されてきましたが、すでに、現行の制度がスタートして2年が経過しています。府内でも30市町村が上乗せ措置をし、昨年一年間で八道県が対象年齢の拡大しています。早急に制度の拡充をはかるべきではありませんか。

 また、現制度が通年実施された16年度決算を見ると、事業費は9億1700万円余で、国の制度改善があったことから14年度より約2億円、予算から3億円も減少しているのです。知事は「精一杯の支援をしている」といわれますが、財政措置は減らしているのです。企業誘致では1企業に最高20億円まで助成しようというのですから、京都の未来を担う世代を育てるためにも決断されてはいかがですか。

 子育て支援の2つ目は、教育費負担の軽減です。今議会に府立大学授業料等の値上げが提案されていますが、大学の授業料も、高校の授業料も自民党府政になって以後、値上げが繰り返されてきました。蜷川府政時代20年間、高校授業料を据え置いてきたこととは大違いです。教育費軽減は教育の機会均等を保証する上でも、教育費負担の重さが少子化の原因ともなっているもとで、こうした相次ぐ値上げは、少子化対策にも逆行するものとして反対です。いま、求められているのは、教育費の父母負担をいかに軽減するかです。

そこで通学費補助について伺います。府教委がすすめる高校再編により通学圏が広域化され、とくに専門学科の生徒は広範囲から通学する状況が広がっています。こうしたもとで通学費補助の拡充は強い要求になっていますが、府教委は拒否し続けています。

本府の制度では1ヶ月22100円を超える場合に、超えた額の半額を補助するというものですが、右京区から須知高校に通う生徒の場合、1ヶ月29540円、助成を受けて25820円の負担です。年間夏休み1か月を除いたとしても28万4000円を超えるのです。伏見区向島から通っている生徒は助成を受けても年間39万円を超えるのです。いま高校授業料は全日制で年間11万5200円ですから、その2倍、3倍の通学費の負担となっているのです。これを改善する必要を感じておられないのですか。いかがですか。

 

【知事】 蜷川府政時代になかった乳幼児医療助成制度ですが、平成15年9月に制度を拡充いたしまして、助成の対象を小学校就学前に引き上げるなど、今も全国的に見てトップレベルの数字になっております。その結果、助成件数が入院については制度拡充前の約1.3倍となり、また、通院につきましても約1.4倍になるとともに一人あたり助成額も最高で5万円近くなるなど、着実な成果を上げてきているところであります。

私は、子育て支援のためにも経済的支援が大切であると言うことから、就任して真っ先に安心して医療を受けて頂くことが重要であるということが必要と考え乳幼児医療給付の充実を図ったところであります。2年が経過したこの段階では、制度の定着と更なる利用促進に努めてまいります。

けれども、乳幼児医療費の額をおっしゃったが、ひとつだけ答えておきますが、改善とおっしゃりましたが、国の医療の改革について共産党は改善という立場に立たれたわけですが、国の医療改革により、老人保険医療費をはじめとする医療費にかかる都道府県の負担は、国の医療保険制度の改正等により平成16年度決算では15年度に比べ17億円の増になっている。ですから、良いとこ取りの話しをするのではなくて、制度全体について詳しいことをご存知なのですから、福祉医療制度全体のことを言わなければ、私はフェアじゃないと思います。

【教育長】 高等学校の通学費補助ですが、この制度は過疎地域などに居住する生徒の就学を保障する観点から通学に要する経費の保護者負担の軽減をはかるために実施しているもので、全国的に見ても京都を含め6府県が実施しているところであります。財政状況が厳しい中ではありますが、府教育委員会としましては、この制度の維持・確保に努めて参りたいと思います。

【新井】

着実な成果を上げていると言われたが、現実には何が起こっているかはご存知でないのではないか。例えば、16年度の実績を見ると、全体の中で相当な割合を占めるはずの京都市がわずか3039件、17.8%の実績になっている。なぜこの様な数字になっているのか、なぜそういうことになるのか、知事はどのように考えておられるのかお聞かせ下さい。

通学費の助成だが、学校5日制になってから回数券を利用する生徒が増えているのですが、現行制度では回数券では限度額を超えていても助成の対象にしないと言うことがやられているのです。せめてそれぐらいは改善を求めておきたいと思います。一点だけお答え下さい。

【知事】 1年が経過したこの段階では、私は、制度の定着とPRにつとめ、利用の促進を努めたいと思います。

【新井】

知事に中身を一度精査してほしいのですが、16年度の実績を見て頂いたらわかりますが、市町村が小学校の就学前まで助成しているところは、8千円を超える部分の活用も高くなっている。ところが、京都市のように、いわゆる京都府の制度のままのところは、8千円を超える分の活用が少なくなっている。なぜかと言いますと、現実には8千円を超えると、給付を受けるための手続きも含め、面倒で大変だと言うことになっている。ところが、制度をやっている市町村では、市町村がその手続きをやっていると言うことになっている。ですから、本来ならこの制度で恩恵を受けることができる人たちでも受けられないと言うことが起こっているのです。そういう点では、この内容の改善について求めておきたいと思います。

同時に、相変わらずこれらの問題についての改善の方向を示されませんでしたが、知事は、6月議会で経営改革プランというのは、府民目線に立った、税金の有効活用を目指しているのだと言われましたが、実態は多くの府民の願いには背を向け、一方では急ぐ必要はないのではないかと府民が声を上げている、畑川ダムや和田ふ頭建設や丹後リゾート公園等には数十億円もの税金を投入する。このどこが府民目線なのかということが、今私どもが指摘している内容なのですから、良く検討して頂きたい。

 

<農林業>

野菜・米の価格・所得補償制度の拡充

農山村を活性化させる、自主的な取り組みに支援強化を

 次に地域経済の活性化にとって重要な農林業について伺います。京都府内の中山間地域では荒廃地が増加傾向にあるなど、地域の活力が低下してきています。その最大の要因は、農林業では生活できないことから、後継者が減少し、地域を維持する力が大幅に後退していることにあります。

 いま農業と農村の担い手をどう支援し、確保するか、このことが問われています。ところが政府は「基本計画」で大多数の家族経営、小規模農家を施策の対象から全面的に排除する方向へとすすめようとしています。知事も、「多様な担い手を考えないと京都の農業も林業も持たない」と述べられていますが、そういわれるなら、多様な担い手をしっかりと支える施策を展開することが必要です。

その第一は、価格、所得保障の拡充です。米価は下がり続けており、今年もコシヒカリ1等の仮払いで30キロ6500円、補填金を含めて7000円です。農水省の調査でも16年産米の生産費が60キロ19162円ですから、補填金を含めても60キロ当たり5000円から不足をすることになります。規模の大きい農家ほど打撃は大きくなります。

 農業の中心はやはり稲作ですから、米価を補償することが農業生産を持続させる最大の保障です。そのためにも、米価下落の要因となっている不用な米の輸入を大幅に削減するとともに、政府の100%拠出による不足払い制度を創設して、生産者価格を保障する仕組みづくりを行うべきです。国にこのことを求められてはいかがですか。

 また、京野菜など野菜の生産を奨励していますが、今年はみずな価格が大幅な下落をしました。出荷費用を考えると最低80円が必要なところ、安値が続き、8月までの平均で60円程度という状況です。野菜の生産には価格の暴落が常につきまといますが、そのときにせめて生産費を償うだけの価格保障、所得保障がなければ生産を継続できません。本府の場合、独自の野菜経営安定対策事業を実施していますが、この加入状況は、みずなで28産地あるのに9産地、紫ずきんで22産地中5産地などと極めて限られています。さまざまな要因があると考えられますが、少なくとも府が奨励しているブランド京野菜については、農家負担の軽減措置などをおこない、すべての産地が加入できるようにすべきではありませんか。

 いま、国の農業予算の中での価格・所得保障費の割合は、日本では3割弱ですが、イギリス、ドイツ、フランスなどでは6〜7割を占め、農業予算の主役が価格・所得保障となっているのです。これによって自給率の向上がはかられているのです。わが国でも3兆円を超える農林水産予算の半分を占める公共事業費や無数の公益法人への補助金、委託金を見直すなど無駄を省き農業予算を改革すれば1兆円程度の価格・所得保障予算は十分確保できます。政府に対し、こうした方向への改革こそ求めるべきではありませんか。いかがですか。

第二に、地域の農地を保全し、農山村の活性化と住民の暮らしを維持していくうえで、地域の自主的で継続的なとりくみが必要です。そのひとつが営農集団、営農組合で、個々の農家の後継者が極めて不足しているもとで、農地の保全と生産を維持し、農村のコミュニティを維持する上でも大きな役割を果たしています。

 しかし、この営農集団もいま困難に直面しています。ひとつは担い手農家が農地の受託により規模拡大したところでは、米価の下落により採算が取れない、とりわけ中山間地では、本府が実施していた「規模拡大支援事業」を中止したことにより、受託農地の返還がすすみ、農地が荒廃するところが生まれています。この制度を再発足すべきです。

 また、ある峰山の営農組合の収支状況を見ると農業機械や設備の更新が大きな負担となっており、コンバインなどの農業機械購入借入金の返済と更新のための積立金が4分の1以上を占め、赤字を余儀なくされています。ところが本府の場合、この機械更新にはなんら助成措置がありません。近畿農政局の調査でもなくなった営農組合の大きな理由に「機械更新ができないため」があげられているのです。こうした営農組合を維持するためにも、機械更新にも助成措置をすべきではありませんか。

もうひとつは、本府の農業総合研究所の研究報告でもいわれている、地域の農家が出資して設立され、地域住民主導による農村の維持活性化を目的とした集落型農業法人です。

農協合併により支所が廃止され、農村住民の暮らしの基盤を守るため設立されたものがありますが、農産物加工や日用品販売、地域特産を活用した飲食提供、さらに農地管理もおこなっているところもあります。今後こうした地域の自主的な取り組みを支援していくことは、農村の活性化にとって重要な課題となってきています。

さきの研究報告でも、これらは「住民総力を挙げたとりくみであり、いわば低迷する地域のよりどころであり、最後の砦のような取り組みである。この事業が失敗し、法人経営が行き詰るようなことになれば、本当に地域は崩壊することも予測される」としています。本府として、こうした中山間地域の集落を維持し、活性化させるためのとりくみへの総合的な支援策を検討すべきと考えます。

高知県では、「過疎地域自立促進方針」を制定し、中山間地域でのこうした取り組みを支援するため「元気応援団」として県の職員60人を市町村に派遣、積極的な財政支援も行っています。島根県でも「中山間地域活性化条例」を制定し、活性化計画を策定して取り組んでいます。

 本府としても、中山間地域での住民の自主的なとりくみを支援し、元気づけるための総合的な支援体制を検討すべきではありませんか。

 第三に、農業農村を守る上で、農協の果たす役割も欠かすことはできません。しかし、いまの京都における農協の実態は、大型合併の中もとで支所、支店の廃止など、相次ぐリストラで農家の営農や暮らしを守る役割を放棄する方向に進んでいます。さらにいま府内全農協をひとつにすることが強引にすすめられようとしていますが、これが、この方向にいっそう拍車をかけることは明らかです。繰り返し求めてきたところですが、農協がこうした経営主義一辺倒で、本来の役割を投げ捨てることのないよう府としての指導の強化を求めるものですがいかがですか。

【知事】 京都府では農家所得の向上を図るため、収益性高いブランド京野菜等の園芸産地の育成に努めると共に、米につきましても、産地間競争の激化や価格の下落傾向が強まる中で、消費県であり、大消費地を抱える京都の立地条件を生かし、確実かつ有利に販売していく事が重要であると考えており、環境に優しく味にこだわった京都米づくりを推進し、生産者と消費者の交流や関係団体と連携した京料理店等への販売の促進、さらには、産直や朝市販売等の販路開拓に努めております。また、京都府農業の実態を踏まえ、担い手の収入補填対策の対象に受託組織を含めると共に、財源確保を国に要望しているところであります。

府独自の「野菜等経営安定対策事業」につきましては、他品目少量生産を行う産地実態に即し、産地規模等について加入要件を低く設定、また、生産者負担額も、府、市町村、JA等が一体となり支援し軽減をはかっています。

また、価格下落だけでなく、収量の減少も補償対象としておりまして、昨年の台風被災時には多くの農家に補償金が支払われたところであります。

尚、ブランド京野菜につきましては、価格が安定して推移してきたことや、面積規模が零細な産地も多いことから、制度への未加入も見受けられますため、引き続き本制度の趣旨をPRするとともに、関係機関と連携した産地拡大につとめ、加入促進をはかってまいりたいと考えている。

農林水産予算につきましては、担い手育成、生産振興、安心安全で環境保全に貢献できるよう、潤いのある府民生活の実現のための「ほ場整備」や「集落排水」、「治山事業」等の公共事業につきまして必要な財源確保を国に要望しているところであります。

農村の活性化だが、「中山間地域規模拡大支援事業」につきましては、国に対しましてその制度化を強く働きかけまして、「中山間地域直接支払制度」としまして地方が財源を半分負担する中で、集落全体で農地を保全活用する制度が創設されました。この制度の対象農地の81%で活用に取り組まれた結果、新たな受託組織の設立や景観形成作物の作付けや市民農園の開設など地域の創意工夫を生かした取り組みが生まれており、今後とも市町村と連携し本制度の効果的な活用に努めるなど、農地の維持に努めて参りたいと思います。

農業機械の導入につきましては、地域農業の経営革新に必要な場合に、従来から、補助事業により積極的に支援しており、更新については、低利な融資制度に加え、中山間地では、直接支払い制度の交付金を活用する方途なども活用できるところであります。

集落型農業法人につきましては、今年度から「農業農村活性化経営体づくり事業」により、地域で芽生えた農作業受託組織等の集落型農業法人化への取り組みを進めると共に、各法人の抱える販売力や商品開発力などの課題に対し、経営アドバイザーの派遣や、加工施設などの導入助成、更には、京都ふるさとセンターのホームページを活用した商品PR等を積極的に支援をしています。

私どもは、今、アクションプラン「農のあるライフスタイル実現プロジェクト」に取り組んでおりまして、こうした取り組みとあわせまして、中山間地域の総合的な振興に取り組んで参りたいと考えております。

農協についてですが、農協は、農業者の共同組織の発達を促進することにより、農業生産力の増進及び農業者の経済的社会的地位の向上を目的としてものであり、京都府といたしましても、農協の自主性を重視しながら、農協法に基づく検査などを通じて健全な運営を確保するよう指導を行って参ります。

府内単一農協への取り組みについては、民間の事業体でありますJAの中で、構想策定に向けた協議が進められているところでありまして、こうした、合併など経営基盤強化の具体的方法におきましては、各農協において意志決定をされるものであります。

京都府といたしましては、今後とも農協が法律の目的に沿って運営されるよう、営農保障体制をはじめ、経営、財務、業務等について必要な指導を行って参りたいと考えております。

【新井】

再質問は行いませんが、農業農村が深刻な事態にあることは明らかです。そういった意味で、いくつか提案しました点については、今後真剣な検討をぜひ求めておきたいと思います。

 

<憲法・国民保護計画>

なぜ、知事は、憲法九条の改悪に反対の姿勢を取らないのか

憲法9条にもとづく平和の外交の努力を国に求めよ

 次に、憲法問題と「京都府国民保護計画」について伺います。

多くの国民が小泉内閣の暴走に不安を感じているひとつが憲法改悪の問題です。自民党は11月の立党50年の党大会で新憲法草案を発表するとし、民主党の新しい代表が、憲法九条をかえ、「軍隊を持つ」、集団的自衛権に基づき「アメリカを助けることもある」と語ったことは、国民に大きな不安と危惧を与えています。また、国会に憲法問題特別委員会が設置され、改憲策動が加速されようとしています。しかし、国民は今回の選挙で改憲まで信任を与えたものではなく、憲法改悪へと暴走することは許されません。世論調査をみても憲法9条は守るべきというのが国民多数の声です。いま憲法改定を求めているのは、日本国民ではなく、アメリカのアーミテージ元国務副長官が「憲法9条は日米同盟の邪魔者」とあけすけに語っているように、自衛隊がイラクに派兵されても憲法9条があるため、米軍と共同して武力行使ができない、「この邪魔者をなくせ」というのがアメリカの要求であり、これに応えようというのが、自民党、民主党などの改憲勢力です。

これまで知事は、繰り返しての質問に対し「憲法9条を守る」とは一度も言われず、6月議会では「各国の人々が国境を越えて協調し、人類の共存と未来を守ろうとする精神をふまえて議論されるべき」と答弁されました。これは、いま憲法9条を変えようとする勢力が「国際平和に貢献するため、国際協調のため」といっていることと同じではありませんか。お答えください。

また、「国民保護計画素案」では、冒頭に「平和を維持するため、国による国際協調のもとでの外交努力の継続が何よりも重要である」と書かれています。しかし、いまの日本の外交は、平和を維持するための努力どころか、日本をアメリカの戦争に巻き込むものです。アメリカいいなりでインド洋やイラクに武装した自衛隊を派遣する、そして沖縄を中心にした米軍基地からアフガンやイラクへ米軍が出撃し、多くの市民の命を奪う、さらに自衛隊の日米共同演習を日常化するなど、日米軍事同盟によってアメリカの戦争へ日本が巻き込まれる道をすすんでいるのではありませんか。「平和を維持するための努力が何よりも重要」というのなら、「憲法9条にもとづく平和の外交努力が必要」と国に求めるべきではありませんか。いかがですか。

【知事】 共産党も含む与野党の国会議員で構成されます衆参両院の憲法調査会が、本年4月に報告書をとりまとめ、その中では、戦争の放棄の理念を堅持し、平和主義を今後も維持すべきであるといった内容とするものでありまして、私はこれに全く同感であります。

今般、新たに衆議院に憲法調査特別委員会が設置されまして、憲法改正の手続き等、今後憲法の条文改正について議論が行われるとされています。いずれにしましても、私としましては、今後議論をされるにあたっては、世界平和を何よりも望む観点から意見を述べさせて頂きたいと考えております。

府の国民保護計画につきましては、こうした思いから、世界の恒久平和の実現や国による国際協調のため外交努力の継続が何よりも重要であるという私の基本的な考え方を伝えさせて頂きました。政府要望におきましても、この事を強く求めておりますが、この計画は閣議決定されるものでありますので、この趣旨は十分に伝わると思っております。

【新井】

憲法調査会の報告に同感だと言われましたが、それでは、憲法九条を守ることについて知事は、賛成なのですか、反対なのですか。どちらか明確にお答え頂きたいと思います。

もう一点は、8月1日に自民党の新憲法第一次案が発表されましたが、既に知事もご存知だと思いますが、憲法九条の戦争放棄が削除され、自衛軍を保持する事、そしてこの自衛軍は、国際社会の平和及び安全の確保のために国際的に協調して行われる活動もできるとしています。この自民党の改定案についてはどのようにお考えなのか、お答え下さい。

【知事】 まず、憲法九条を守ると言った場合、私はやはり、新井議員はワンフレーズ・ポリティックスのように憲法九条を守ると言っておられますが、まずどういう憲法九条を守るのか、まず政府の見解である自衛権の解釈についてどういう立場を取るのかをおっしゃって頂きたいと思います。そうすることによって、どういう憲法九条を守るのかについての私の答弁が変わって来ると思いますので、その点は明確にして頂きたいと思います。

自民党の案につきましては、今後、この議論の中で私も十分に考えて行きたいと思います。

【新井】

憲法九条の問題につきまして、知事は自分の言葉でお答えになる事を避けられました。これは、ある意味でいえば、知事自身が憲法九条、この間何回も質問しておりますが、お答えになっていませんが、まさに、そういう点では、先ほど紹介しました、自民党の憲法草案にありますように、国際的に協調して行われる活動、いわゆる集団自衛権について認められるべきだという見解を持っておられるからだと思いますが、この点については我々と見解が違うと言うことを申し上げておきたいと思います。

 

<最後に>

「小泉改革に同感」は、自治体の役割投げ捨てると同じ

共産党府議団 府政本来の役割発揮へ向け全力あげる

最後に、一言申し上げておきます。知事は、新聞紙上で「小泉改革に同感だ」といわれていますが、今日私が取り上げた問題は、小泉改革によって、これまでの自民党政治以上に、京都の経済も、雇用も、社会保障も、府民の暮らしが、根底から覆されようとしていること。さらには農山村、中山間地域が切り捨てられようとしていることを具体的に指摘しました。本来自治体は、こうした暮らし破壊や地方の切り捨てに対し、その防波堤の役割を果たすべきです。それをせずに、「弱者切り捨て」「勝ち組」「負け組」をつくる競争社会をつくる小泉改革と同じ方向をすすもうとされることは、自治体の役割を投げ捨て、多くの府民の願いに背を向けるものであることを、指摘しておきます。

 そしてこうした新自由主義にもとづく小泉改革は、すでに諸外国では破綻が明らかとなり、時代遅れになっているのです。構造改革の優等生といわれたニュージランドでも、見直しがすすめられ、ドイツの選挙でもこれをすすめてきた二大政党が敗北をする事態です。

 京都大学の落合恵美子教授も京都新聞紙上で、「世界的に見れば、新自由主義の波はもはや過去のものだ。「勝ち組」と「負け組」に二分される社会を目の当たりにして、これではいけないと反省の時期を迎えている。」と述べられ、学習到達度が世界一になり、経済も好調と言われ、世界が注目しているフィンランドでは、「落ちこぼれをつくらない教育、格差の小さい所得構造など、競争より平等、つまり皆が参加して活躍できることを最優先して社会づくりをすすめてきたことが、一人一人の能力を最大限に発揮される条件になっている」といわれています。

 私ども議員団は、痛み押しつけの小泉改革に反対し、府政が自治体本来の役割を発揮するよう全力をあげることを表明して私の質問を終わります。ありがとうございました。

 

【知事】 こうした公式の議会の場で、集団的自衛権の様に、私が全く言っていないことに対して決めつけると言うのは、私は、それは少々問題ではないか、たちの悪い質問だと思います。それともう一点、小泉内閣について教条主義的な事を言われましたが、私は、国の基本がある、それと同時に地方の立場がある。地方というのは、色々な基本の中で現状にあわせてセーフティーネットを張り、京都府民をしっかりと支えていくと、そういう立場でものを申していると言うことをつけ加えさせて頂きます。

【新井】

今のお話で、集団自衛権を決めつけるのはけしからんとおっしゃいましたけれど、それなら、知事は集団自衛権を否定されるのかどうかをお答え下さい。

そして、地方が当然住民のセーフティーネット、住民の暮らしを守るのだとおっしゃいましたが、しかし、現実に進んでいる事態は、住民の願いに答える子どもの医療費の無料制度であるとか、高校の通学費助成であるとか、機械の助成であるとか、こうしたことについては、一切答えられなかったではありませんか。だから指摘をしているのです。そのことを申しておきます。

【知事】 集団的自衛権の問題については、その中身自身に大きな解釈の別れがあります。私はそこを確定しなければ集団的自衛権について、直ちにその賛否を言うことはできないという立場であります。

それから、子育て支援対策については、乳幼児医療対策、まっさきに、私、就任して最初にやっているんです。雇用創出対策についても一生懸命やっているんです。中小企業支援対策も一生懸命やっていると申し上げているんだけれども、(そのことについて触れないで)答弁(質問)は、やってないとばかり言う、これ、やってないというなら、やっていないと言ってくださいよ。そう言わずに、決めつけた答弁をされるのは、私はフェアではないと思います。

【新井】

集団自衛権の問題では、知事は、集団自衛権の中身を確定しなければならないと申されましたけれど、現実の先ほど紹介した、自民党の案にしても、民主党の前原新代表が言われている内容にしても、集団自衛権にもとづくアメリカとの共同なり、国連軍に基づく武力行使がありだという話しが、今既に現実の問題になっている訳ですから、そのことを前提にして議論していることは当然のことです。

最後に申しますが、具体的な事を指摘したときには、それはやれないと答えておいて、そして、その問題を指摘すると今度はこれだけやっているんだと答える。全然つじつまの合わない答弁だと思います。終わります。

 

( )内は、発行者補足