島田けい子(日本共産党、京都市右京区) 2005年9月29日

本府の「がん対策」の抜本的な充実について

【島田】

日本共産党の島田けい子です。私は、先に通告しました数点について、知事ならびに関係理事者に質問します。

はじめに、がん対策についてです。2002年の一年間に、本府で、がんで亡くなられた方は6602人、40歳代、50歳代の死因の半分は「がん」であり、働き盛りの世代の重要な健康課題です。国においては、「第3次対がん10ヵ年総合戦略」が策定され、今年5月には「がん対策推進本部」も設置されました。本府も、「健康長寿日本一プラン」の重点施策に「がん対策の推進」を掲げました。そこで、数点うかがいます。

厚生労働省研究班がおこなった、全国がん・成人病センター協議会加盟病院を対象にした「主要ながんに関する5年生存率調査」の結果で、5年生存率が、地域、施設、診療科間で、大きな較差があることが発表されました。また、日経メデイカルと日経新聞社合同の全国調査でも、施設間で大変な格差があり、「平均的な水準の病院に行けないために多数の患者が犠牲になっている。行く病院、住む地域によって生命が左右されている」という衝撃的な結果を報じました。

質問の第一は、こうした問題を解決し、全国どこでもがんの標準的な専門医療を受けられるよう、医療技術等の格差是正を目指すための「地域がん診療拠点病院の整備」についてです。

この制度は、4年前、厚生労働省が決めた「地域がん診療拠点病院の整備に関する指針」にもとづき、各都道府県が、厚生労働省に対し、2次医療圏に1ヵ所の病院を推薦し指定するものです。この1月現在で、全国で40都道府県、135の拠点病院が指定をされています。ところが、京都府では、いまだ1施設も指定をされていません。原因はどこにあるのでしょうか。まずお聞かせ下さい。

「地域がん診療拠点病院」のあり方については、現在、国において見直し作業が進められており、近く、研修や情報発信機能、都道府県連絡協議会などの機能をもつ「都道府県がん診療拠点病院」の新たな整備方向が出されるとのことです。本府においては、府立医大附属病院の「地域がん診療拠点病院」指定に着手されていますが、これまでの検討状況と指定の目途をお聞かせ下さい。また、京都市立病院が「地域がん診療拠点病院」の指定を目指すという基本計画を発表しましたが、京都市との調整及び他の2次医療圏での指定について、検討状況をお聞かせください。

第二に、「院内がん登録」および「地域がん登録システム」の構築と府民への情報公開と提供の問題です。

「院内がん登録」は、各医療機関のがん医療の実態と水準を評価するために、診断・治療内容を登録し、予後調査を行い、生存率を計測するものです。これらを都道府県レベルでまとめるのが「地域がん登録」です。罹患率のデーターを集め、5年生存率と死亡率等をつきあわせることによりはじめて、都道府県単位でのがん医療水準やがん対策の評価、分析、今後の対策の立案が可能となります。「地域がん登録」は、現在、34道府県で実施され、本府では京都府医師会に委託をして実施していますが、医療機関の自主的な協力によっているため、登録漏れが多く、事業の精度向上をめざした取り組みが進められています。根本的には、国においての見直しと、改善のための予算の拡充が必要ですが、京都府としても見直し、改善が必要ではないでしょうか。また、府立医大附属病院での「院内がん登録」事業の確立が急がれます。検討状況と今後の見通しについてお聞かせ下さい。

第三に、がんの早期発見のためのがん検診の改善対策です。厚生労働省が発表した2003年度の全国のがん検診率によりますと、本府は大腸がん検診がワースト1位、胃がん検診でワースト2位、乳がん検診ではワースト3位、肺がん及び子宮がん検診もワースト4位という惨憺たる状況です。京都府内でも、市町村や地域格差が著しく、それが長期にわたって固定化・構造化しています。私は、地域まかせ、現場任せにしてきたことに要因があると考えますが、府内各地域の公衆衛生行政に最終的責任を持つべき本府としてのリーダーシップが厳しく問われます。現状をどのように認識されていますか。また、改善のための具体策をお聞かせ下さい。

さて、全国には、32都道府県に、がんや成人病のセンターがありますが、京都府にはありません。大阪府では、府立成人病センターを中心に、地域がん登録事業をはじめ、がん診療の向上、基礎、臨床、公衆衛生等の研究調査が積み重ねられています。ホームページを見るだけでも、本府とは雲泥の差を感じました。府立医大附属病院、京大病院という高度先進医療の拠点病院をはじめ、公的大規模病院などを中心に、がんばっておられる現場の医師や関係者の力を生かすために、これらの病院の連携とネットワークがどうしても必要です。また、京都府にも、がん・成人病センターが必要と考えます。これらの課題を検討するための「京都府がん対策推進本部」を設置してはいかがでしょうか。さらに、患者、府民参画による検討も必要です。これらの施策の推進にあたり、相当な財政支援が必要ですが、知事の見解とご決意を伺います。

【知事】 府立医大附属病院におけるがん対策については、府民の健康を守るためには徹底した予防対策とともに、死亡の上位を占める三大疾病対策が重要。「健康長寿日本一アクションプラン」では、その具体化のために循環器、脳血管系疾患対策の推進とともに、がん対策の推進を掲げ、府立医大附属病院においてもがん診療拠点病院の指定を進めるなど急性期医療の高度化の検討を行っているところ。府立医大附属病院は、がん医療については基礎医学部門や臨床医学部門の多くの診療科にわたり総合的な取組みを行っており、全国的にトップクラスの治療実績と症例数を誇り、また、わが国のがんの診断、治療・研究をリードするなど、「継続的で全人的な質の高い医療を提供する」とした、まさに紛れもない地域がん診療の拠点病院である。

今後は、こうした全国に誇る府立医大附属病院のがん医療にかかる知的財産を、よりいっそう地域医療に活かすために外来診療棟の整備を含め、さらなる強化をはかるとともに、従来の制度ではこうした医科大学の病院が「拠点病院」として指定されていないという制度上の問題が、国において見直しが予定されるととともに、制度メリットについていても明確化が図られるということなので、すでに専門的立場から検討を進めているところ。

 また、「院内がん登録」についても、医療従事者の負担増となる課題等もあるので、現在設計作業中の電子カルテシステムとの連携をはかり、事務の効率化を促進することにより、「院内がん登録」がいっそう進むよう検討しているところ。

【保健福祉部長】 「地域がん診療拠点病院制度」については、知事が答弁したとおり、京都府では、全国トップクラスの医療を提供している府立医大附属病院が存在するにもかかわらず、この制度では、地域の診療、教育、研修、研究の中核となっている大学病院などの特定機能病院については、診療拠点病院の指定から除外されていたところで、加えて各地の指定病院の水準に大変なバラツキがあり、当初の目的が十分に達成されていない状況にある。制度上、府立医大附属病院が指定されない中で、病院の指定について大変苦慮していたところだが、国において、特定機能病院を新たに指定の対象に含めることや、現在の指定病院を見直すことなど指定要件の見直しが進められ、近く考え方が示されることとなっており、これを踏まえて検討してまいりたい。

 京都市立病院については、平成22年度末の完成をめざしての構想と聞いており、今後、他の医療圏での病院指定のあり方も含め、医療審議会等の意見も聞く中で検討したい。

 「地域がん登録事業」については、学識経験者等の意見も聞く中で、情報収集・分析を行い、関係医療機関における診療の質の向上をはかってきたところ。今後、この事業の成果も生かし、府立医大附属病院等と連携し、検討をさらに加えていきたい。

 がん検診の受診率については、一般的に医療機関が普及している都市部では医療機関の受診機会も多いことから、検診受診率が低くなる一方、他の地域では高い傾向にある。今後、京都市など市町村と連携し、啓発や個別の受診勧奨などいっそうの受診率の向上をはかってまいりたい。

 がん診療体制については、府では、府立医大附属病院に外来化学療法部を設置しているほか、生活習慣病を含めた高度先進医療供給体制の整備を検討することとしている。また、がん対策推進組織については、今後、がん診療拠点病院によるネットワークなどを構築する中で、がん対策の推進を総合的に図ってまいりたい。

 

府立医大附属病院の機能強化いうなら、第3次削減計画は見直せ

 

【島田】

府立医大附属病院の拠点病院の指定については、「検討する」ということでしたので、がんばっていただきたい。

指定要件をクリアするためには、専門職員の増員や施設整備の拡充など、大変な財政が必要です。「財政健全化」で、この7年間に20億円の一般会計繰入金の削減をされましたが、洛東病院を廃止するかわりにリハビリテーション支援センターを作ったり、SARSや予防医学センターも作る。たくさんの機能を受け持たせておいて、人は減らせ、財政は減らせでは、現場はパンク寸前ではないかと心配します。

第三次の削減計画を見直し、必要な財政支援を行って必ず実現させていただきたい。知事の決意を再度うかがいます。

 地域がん登録事業について、精度向上のために、人的・財政的支援が必要です。現在、医師会の委託料は500万円で、人件費も出せません。他府県の多くは、行政が主体で事業を実施されています。この際、予算の増額あるいは京都府の主体的事業として責任をもつ体制を構築すべきです。いかがですか。

がん検診については、職域を含めてさらなる向上が必要です。市町村の問題ですが、がん検診の補助金が一般財源化され、総額で減らされ、市町村の大きな負担になっています。必要な財源を、国へ要求し、本府の予算も拡充すべきではありませんか。

【知事】 私は金を惜しむために様々な計画を行っているわけではない。一番効果的なことはやる。そのためにはどうすれば一番いいかを考えて、今の医療体制のあり方を含め医科大学の外来診療棟の整備構想を打ち出している。しっかりやるべきことはやっていくという私の方針をご理解いただきたい。

【保健福祉部長】 地域がん登録事業の医師会への委託料については、受託先である医師会の側からは、増額の要望は、現在、聞いていないが、今後、地域がん診療拠点病院の指定のネットワークをはかる中で、地域がん登録事業についても再検討したい。

 市町村へのがん検診の補助金は、ご紹介の通り、一般財源化されたところで、府としては、前立腺がんなどに対する独自の補助金も維持・継続するとともに、今年はマンモグラフィーの乳ガン検診の機器整備にも助成するなど、精一杯の支援をしている。

 

【島田】

知事の決意をいただいた。財政優先でなく、府民の命第一に役割を果たせるよう、強く求めておく。

 

介護保険法改悪にともなう緊急課題について

 

【島田】

次に、介護保険制度について、法改定の実施に伴う緊急課題について、うかがいます。

10月1日から、改定介護保険法の一部前倒しが実施されます。国会審議でさまざまな矛盾が明らかにされ、なんと24項目もの付帯決議がつきました。大幅な利用者負担増のために、施設入所者への負担軽減として、84%に「補足的給付」をおこなわなければならないなど、普遍性も道理もない内容で、およそ法律の体をなしていません。重要な事項が政省令にゆだねられ、国民は白紙委任状を取られた格好です。このように改定の内容は重大な問題を含むものです。いくつかの社会福祉法人管理者からお話を聞きました。「国のやり方、厚生労働省のやり方は本当にひどい。政省令も定まっていないうちに、改定の一部を、半年も前倒しするとはどういうことか、施設の事態も調べず、問答無用で現場に押し付ける。府や市の説明も、一方通行で、意見があれば、直接、厚生労働省に上げてくれということだった。中身についても、本当に弱い立場の者をきり捨てるものです」と、怒り心頭の声でした。

今度の改定の最大問題は、ホテルコストの導入です。ある法人の試算によると、特別養護老人ホームの大部屋入所者の場合、月に3万3790円、1年間に40万円以上の負担増になります。最近整備されたユニット個室では、お部屋代だけで月に6万円、年間72万円の負担増。ショートステイでも食事代、お部屋代の負担です。デイサービス、デイケアでは、調理費用まで利用者の負担になり、料金が倍増するところもあります。低所得者対策として、所得に応じた負担限度額が定められましたが、それを活用しても、利用者負担第3段階、市民税非課税世帯でも、施設入所で月額1万4000円、ショートステイで日2000円の負担増になるのです。現在利用者への説明がはじまっていますが、施設入所の待機者が予約を取り消したり、ショートステイなどの利用を控える深刻な事態が出始めています。また、社会福祉法人の利用者負担軽減については、貯金通帳のコピーまで提出をさせられ、350万円もあれば対象になりません。葬式代にと大事にもっておられるお年よりには軽減措置がないというひどい仕打ちです。本府が実施した利用者アンケートで、現在でも、「利用者負担が大きい」という方は3割をこえ、「7万円前後の年金ではとても老人ホームに入れません」「通所デイサービスをうけていますが、週2回がやっとで、年金暮らしはわびしいです」「年金はあがらないのに、保険料や利用料が上がるのは困る」などの声が出されています。このような方にさらに追い討ちをければ、利用を控える方が増えることは明らかです。知事はどのようにお考えですか。これが適正な負担といえますか。そもそも、福祉施設をホテルと同じに扱い、宿泊コストを取るなどいう発想そのものが、およそ社会福祉の理念とかけ離れています。介護施設で導入したあとは、ホテルコストを病院でも徴収する計画がすすんでいます。こんな間違った「改革」にきっぱりと反対すべきです。知事、いかがですか。明確にお答えください。

また、今回の改訂は、施設にも大きな打撃を与えます。50床定員の施設で年間1000万円以上の減収となり、国の誘導で作られたユニット型個室の新型特養では、5400万円の減収になるとのことです。その結果は何をもたらすでしょうか。現在でも、施設の正規職員でも賃金水準は年収300万円台が圧倒的です。しかも、その正規職員を減らし、非常勤化が進んでいます。半数が非常勤・パートというところもあります。時給相場は800円から900円。こうした事態に拍車がかかり、ひいては介護サービスの質の低下をもたらすことになりませんか。影響をどのように把握されていますか。この際、市町村及び社会福祉法人の低所得者対策の実態をつかみ、利用者の声、職員や施設への影響などの緊急調査を行うべきです。また、負担増によって、必要な介護が受けられない人を作らないために、社会福祉法人軽減制度を拡充し、老人保健施設や療養型病床にも広げるべきです。また、「補足給付」について、対象者すべてが、実際に給付が受けられるよう、行政の責任で把握管理をすること。申請手続きの簡素化とともに、すべての対象者が施行日から「補足給付」をうけられるよう万全を期すこと。生活保護受給者の「個室の利用は認めない」という措置はやめるべきと考えますが、いかがですか。お答え下さい。

【保健福祉部長】 介護保険制度改革については、介護を社会全体で支えるという制度の趣旨を踏まえつつ、高齢者の負担が過度のものにならないよう配慮するなど、利用者本位の制度とすることが必要と考えている。このため、低所得者対策の充実や必要な財源措置などを繰り返し国に要請・提案してきた。この結果、今回の見直しでは、低所得者について、居住費・食費の一定額を給付する「補足給付」の創設、社会福祉法人軽減制度の拡充など、低所得者が必要なサービスが受けられるよう、従前よりも低所得者に配慮された新たな対策が講じられた。今後の実施状況や、これを踏まえた市町村などの意見も聞く中で、改善が必要な場合には国に強く提言・要請を行う。

 施設収入については、基本的に介護報酬に含まれていた居住費・食費相当額が利用者負担とされたことにとどまっており、また、施設職員の配置基準等の変更もない。

 低所得者対策の実態については、介護保険事業者の説明会等の場を通じ、それを正確に全面的に把握するとともに、社会福祉法人軽減制度についても積極的に取組むように要請しているところ。

社会福祉法人軽減制度の拡充については、特別養護老人ホームが、在宅復帰や重度の療養を目的とする介護老人保健施設や介護療養型医療施設とは異なり、生活の場であるため、入居期間が大変長く、低所得者の割合も多いという状況から、事業者負担を軽減する必要性が高い施設であることなどから、特別養護老人ホームに限定されているところと理解している。なお今後、改正制度施行後の実施状況やそれを踏まえた市町村等の現場の意見も聞く中で、低所得者対策のいっそうの充実、適正な介護報酬体系の確立などについて、引き続き提案・要請を行っていく。

「補足給付」の住民対応については、市町村に制度の周知、必要書類の簡素化など、申請負担軽減のための指導・助言をしてきた結果、対象者の把握、申請の勧奨等はすべての市町村で行われたところ。生活保護受給者の個室利用については、介護保険施設の約9割が多床室で、現状では、個室の利用が一般的でないことから、当面の措置として認められない。府としては、今後、施設の整備状況や個室の利用状況を踏まえ、生活保護についても国に必要な改善を求めてまいりたい。

 

知事は「必要な介護が受けられない事態」をどう考えるのか

 

【島田】

利用者負担の問題ですが、政府の軽減対策と法人の軽減を使っても、年金を上回る利用料負担になる人があるんです。26日に、わが党国会議員団が尾辻厚生労働大臣に申し入れしました。大臣は、「必要な介護を受けられないということがあってはならない」(と答えられました)。お金がないために、必要な介護が受けられないという事態を、知事はどうお考えか、あらためて、知事の見解をうかがいたい。

実態調査について、「市町村から聞きをする」「現場の声を聞く」とおっしゃったが、これも尾辻大臣が「実態の調査はただちにやらせていただく」という答弁でしたので、これは当然、調査をされるのですね。お答えください。

【保健福祉部長】 低所得者対策については、低所得であるが故に必要な介護サービスが受けられないという事態になってはならないという考え方は、私どもも一緒。

 実態調査は、制度のモデルとしては所得階層によって負担がかえって減る階層、増える階層がある。制度のモデルとしては、低所得者対策も一定、制度的にはできていると思っているが、10月1日の改正後の制度の実施状況を施設現場や市町村から伺う中で、点検してまいりたい。

 

【島田】

実態調査は、重ねて、くれぐれも行っていただくよう要望する。知事は答弁に立たれませんでしたが、非常に残念です。実態調査をした上で、例えば、東京の荒川区や千代田区では、通所系サービスの食事補助を実施するとのことで、本府でも、市町村と協力して検討すべきと考える。これは要望しておく。

「新府総」では、「介護が必要になっても安心」「サービスを充実する」とうたい、「中期ビジョン」では、「弱者の視点にたつ」と言葉で何度繰り返しても、具体的な中身では、府民の切実な願いを指摘をしても答えない。これでは「絵に描いた餅」ではないでしょうか。

知事に、改めて、国民の生存権保障と国の責務を定めた「憲法25条」、住民福祉の向上を掲げた「地方自治法」をよく勉強していただき、この法令を遵守してがんばっていただきたい。

 

医療関連死と監察医制度について

【島田】

次に、医療関連死と監察医制度について、伺います。

最近、私のもとに、ひとつの相談が寄せられました。「近くの院所で、インフルエンザの治療を受けた息子が3時間後急死をした。死因は何か今でも腑に落ちない」との母親の相談です。「息子の死因と薬との因果関係をはっきりさせたい、二度と同じようなことが繰り返されないことを願う」「医師がおこなった治療や薬との因果関係を調べるために、東京や大阪では、監察医による行政解剖の制度があると聞いた。京都にもつくって欲しい」と言う内容でした。一連の経過には解明すべき問題があり、今日は詳細は避けますが、監察医制度などに絞って伺います。

この方の事例のように「不詳の死」という場合、東京23区内では、死体解剖保存法第8条に基づく監察医制度によって、行政解剖が実施されています。東京監察医務院の報告では、年間取り扱い件数は1万件をこえ、その3分の2は「病死」とのことです。それらのほとんどが、いわゆる突然死の範疇に入るものとのことです。現在、京都府にはこの制度がありません。京都府警の調べによると、本府における昨年の死体取り扱い数は2666件、そのうち、承諾解剖は20件に過ぎないとのことです。医療関連死などの統計数字はありませんので分かりませんが、東京都の例を見ると、不問にされた案件が多くあったのではないかと推測できます。

東京都監察医務院の福永院長は、「医療関連死の受け入れ窓口が監察医であり、中立の立場で検案、解剖に当たり、発生する諸問題の解決に貢献している。なくなった人の人権を守るために、そして一人ひとりの死を万人の生につなげるために監察医制度を全国的規模で充実して欲しい」と発言されています。このような中で、都道府県独自に行政解剖に順ずる制度をとっている府県が増加し、承諾解剖費用負担や、筑波メデイカルセンター内に剖検センターを設置した茨城県などの例もあります。

また、この4年あまり、医療関連死について検討を重ねてきた、内科学会、外科学会、法医学会、病理学会は、この4月に、「医療関連死については一律の警察の届け出ではなく、当面、事件性がないと考えられる医療関連死症例に対しては、第三者機関を設置して死因の究明に当たり、それらの内容を医療の向上に反映させるべき」とする「4学会理事長声明」を発表しました。厚生労働省も、今年度より、「診療行為に関連した死亡の調査モデル事業」をはじめました。医療の安全問題では、京都府医師会などでも積極的なとりくみがはじまったとお聞きします。

本府としても、関係者と協議をし、監察医制度を含む、第三者機関の設置について、検討していただきたいと考えます。本府としての問題認識、今後の検討課題についてお聞かせください。

【保健福祉部長】 監察医制度については、伝染病予防など公衆衛生の向上・発展を図るために昭和24年に法定された制度。今日では、公衆衛生水準が高まったために、医学の進歩もあって病死などほとんどの場合において、地域の医療機関で死因が判明しており、監察医を設置する必要はないと考えている。

 ちなみに、監察医制度と直接関係するものではないが、遺族が死因の究明を望まれる場合、府立医大などにおいて病理解剖が行われているところ。

一方、医療関連死の死因究明については、昨年9月に日本医学界からの中立的専門機関の創設に関する共同声明を受け、今年度から国において、医療の質と安全を高めていくため、監察医制度とは全く異なる観点から、医療関連死の調査分析モデル事業に取組んでいる。その内容は、診療行為中の予期しない死亡や診療行為の合併症等について、臨床医、法医学者、病理学者などによる解剖を実施し、因果関係の究明を含めて安全確保や再発防止対策を総合的に検討しようとするもので、今後、これらの動向も踏まえ対応したい。

【島田】

私もこの問題は初めて勉強したが、監察医制度はやらないということだったが、これは新しい研究課題、今日的検討課題なので、引き続き私も勉強するが、ぜひ京都府としても府民の安全・安心、命を守る立場から検討いただきたい。