京都府議会9月定例会を終えて(談話)

           2005年10月11日

                日本共産党京都府会議員団

                    団長 松尾  孝

 

9月定例会は10月7日閉会した。今議会は、総選挙で自民・公明の与党が3分の2の議席を得たもとで、多くの国民が「小泉内閣が暴走しないか」との不安を感じている中で開かれた。

 わが党議員団は、知事が府民の暮らしと京都経済、憲法と平和を守る立場から郵政民営化、障害者自立支援法など「小泉構造改革」と庶民大増税、憲法改悪に反対するよう求めるとともに、中小企業や雇用、農林業振興対策、アスベスト対策やガン対策、介護保険のホテルコスト負担問題、青少年のひきこもり問題など、切実な府民要求をかかげて奮闘した。

 今議会から本会議質問においても、府民にわかりやすい、かみ合った質疑となるよう「分割・分答方式」が導入され、わが党議員団は積極的にこれを活用して論戦を行った。

 

1、わが党議員団は、小泉内閣が多数与党を背景に、郵政民営化や障害者自立支援法案の強行、公約破りの庶民大増税と憲法改悪への道をすすもうとしているもとで、これらに対し、知事が府民の代表としてきっぱり反対の立場を表明することを求めた。

 しかし、知事は「郵政民営化は、『官から民へ』『国から地方へ』の改革と相まって、持続可能な社会を維持する上で必要である」と表明し、庶民増税でも「負担の高さだけを議論することは、一面的である。持続可能な社会をつくるため、受益と負担の問題として総合的に議論すべきもの」と賛成の立場を表明した。また、障害者自立支援法案についても、「財源論に偏重することなく、的確なサービスが提供される仕組みとなることを基本に、十分な審議を」としながら、「障害者の自立を阻む応益負担の導入についてどう思うのか」との問いには答弁を避ける態度をとった。

 これらは知事が、庶民大増税で府民の暮らしも、京都経済も大変な状況になることが明らかであるのに、府民の立場から政府に「ものがいえない」だけでなく、「小泉構造改革」推進の立場にたっていることを表明したものである。

 また、憲法問題でも「憲法9条を守る」とは表明せず、「どういう9条を守るのかはっきりさせなければならない」と答えたが、これは真に「9条を守る」立場ではなく、自民・民主などの改憲勢力と同じ立場にたっていることを表明したものである。

 知事は6月議会でも「国際協調の精神をふまえて議論されるべき」と答えているように、改憲勢力が「国際平和に貢献するため、国際協調のため」として、憲法を改悪し、海外で戦争する国づくりをすすめているのと全く同じ立場であり、住民の安全・平和を守る立場と相容れないものである。

わが党議員団は、小泉内閣がすすめる構造改革と庶民増税、憲法改悪に正面から対決して奮闘するものである。

 

2、いま“痛み押し付け”の小泉構造改革がすすめられるもとで、府民の暮らしと京都経済を守るために府政がどうあるべきかが問われている。

代表質問では、京都経済は長引く不況の上に、不良債権処理や規制緩和の小泉改革で、01年から04年の間に2万3千近い企業が倒産・廃業、事業不振や借金苦による自殺者も大幅に増えていること、さらに雇用でも倒産・廃業で13万3千人が職を失い、正規社員が83000人減少し、不安定雇用は91700人も増大するなど、より深刻になっていることを明らかにした。一方、こうしたもとで、府の和装伝統産業予算は、01年比67.3%の2億円余、北部基幹産業基盤強化支援事業費も42%へと大幅に減らし、ベンチャー企業関連予算は2.4倍、企業誘致関連は14倍に増やすなど、ベンチャーと企業誘致に偏重していることを厳しく批判、府の商工行政を京都経済と雇用を支える伝統地場産業や中小零細企業重視に改めること、そのためにも「中小企業振興基本条例」を制定することを求めた。

ところが知事は「雇用は大幅に改善された」、企業倒産件数も「減少している」、「予算の縦割りだけで議論はしていただきたくない」と答弁するなど、倒産や廃業に追い込まれ、自ら命を絶つ経営者がいることに心を寄せない態度に終始した。

 府が「雇用創出と地域活性化のため」としておこなった企業誘致補助は、4年間で11億5千万円にのぼっているが、補助対象となった雇用拡大は608人、補助対象外を含めても1254人である。ところが知事は、制度を利用して移転した府内企業の既存雇用者数2000人と産業連関表をもとにした下請けや物流の雇用人数の推計4700人をあわせて「6700人の雇用を確保した」と裏づけのない数字で、大きく見せる答弁を行った。しかし、「村田製作所本社新築移転に府が9500万円補助(長岡京市も5000万円)して、新規雇用の増はまだなし」、「読売新聞印刷工場は八幡市と併せて2億5千万円の助成をして11人の雇用拡大」などを指摘されると、数え方が「心が広いか狭いかという問題だけ」などとまともに答弁ができなかった。 

わが党議員団は「雇用創出のための企業立地補助金」が雇用創出に十分な効果をあげていないことを批判し、補助要綱の雇用要件拡大を求めた。

 地域経済の活性化にとって重要な農業と農村を守るため、生産費を償う米価の下支え制度や野菜の価格安定対策事業の拡充、所得・価格保証を主役にした農林予算への転換、営農集団の農業機械更新への助成、中山間地振興への助成の拡大、「経営一辺倒」で本来の役割を放棄している農協への指導強化など、真剣な検討を求めた。しかし、知事の答弁は「ほ場整備や集落排水、治山事業等の公共事業に必要な財源確保を国に要望している」と、公共事業予算を主役とする姿勢を表明し、農業機械の更新助成も「低利な融資制度の活用」など、従来の制度に固執する態度を表明した。しかし、所得・価格保証制度の充実に背を向けた態度では、農業と農村を守ることはできない。わが党議員団は、農業と農村を守るため、引き続き所得・価格保証対策の充実、中山間地支援の充実などを求めて奮闘する。

 

3、アスベスト問題は多くの国民に大きな不安を与えており、その対策は緊急の課題となっている。わが党は70年代から国会で「使用禁止」と健康対策などを要求するとともに、府議会でも85年2月議会で「使用禁止」と建設労働者の検診の実施を求めたのをはじめ、一貫して追及してきた。今日、アスベスト問題が長期化、深刻化してきた責任は、利益優先のため製造と利用をすすめてきた企業と、危険性が明確になっても使用や輸入を放置してきた国にあることは明白であり、京都府が「一般の人々へのリスクは少ない」としてまともな対策をとらなかった責任も重大である。

 今議会には、「建築物解体等に伴う石綿の飛散防止に関する緊急措置条例」や、建設労働者をはじめ関連労働者、住民の健診を行う予算などが提案された。しかし、条例の内容は、国が来年「大気汚染防止法」を改定するのを見越してのもので、罰則規定や解体にあたっての濃度調査、住民への周知の義務付けもないものである。わが党議員団は、健診については、すべての関係者を対象とし、CTスキャンなどの精密健診も助成対象とすること、国がアスベスト使用企業名を公表し、関係者、周辺住民の健康診断を行うこと、解体に当たっては敷地境界での濃度測定や住民への情報提供の義務づけを行うこと、また、アスベスト対策を実施する中小零細企業に対して無利子・無担保・無保証のアスベスト対策融資制度をつくることなど、より本格的な対策の充実・強化を求めた。

 今後とも、関係団体や住民とともに、国と企業の責任を明確にした対策の強化を求めて奮闘するものである。

 

4、今議会には、アスベスト対策条例のほか、新しく4つの条例が提案された。

一つは「伝統と文化のものづくり産業振興条例」である。これは京都の伝統産業の振興と活性化を求める関係者の長年にわたる運動と、わが党議員団が97年12月に発表した「伝統地場産業振興条例案大綱」などを受けて制定されたものである。当時の荒巻前知事は「条例がなくても伝統産業対策はやっている」と拒否したが、これを乗り越えて実現したものである。本条例には「必要な財政措置を行う」ことも明記されており、わが党議員団は、この条例制定を機に、伝統産業振興予算の大幅な増額、後継者育成のための制度など、伝統産業振興対策の抜本的強化をめざし奮闘するものである。

二つには、「豊かな緑を守る条例」である。これは多くの公益的機能を有する森林が、外材の無秩序な輸入や価格低迷、後継者不足などで林業経営が成り立たず、放置される状況が増えるもとで、放置林を「府民ぐるみ」で守ること、森林法が規制する1ヘクタール未満の不適正な開発を規制するための条例である。1ヘクタール未満の不適正な開発規制については、長年にわたり関係者をはじめ、党議員団が条例もしくは要綱を制定するよう求めてきた中で、この実現を見たものである。わが党議員団は、「豊かな緑を守る」ため、何よりも林業経営が成り立つようにするための林業振興の充実が必要であること、また、不正な開発を規制する上で、「災害発生のおそれがある場合」だけとされている、土砂搬入などの規制を「水源の汚染」や「環境破壊」にも運用を拡大するよう求めて賛成した。

三つには「文化力による京都活性化推進条例」である。この条例は本来、府民の文化芸術活動を振興させるものとして制定されたものである。ところが条例の目的が「文化力による京都活性化推進を図る」とされているため、「京都活性化」に直接役立つものだけが振興の対象とされるなどということのないよう、関係者から懸念が表明されていることから、運用にあたっては、すべての府民の文化芸術活動の振興を支援することを求めて賛成した。

本条例案に対し公明党から、「文化芸術の振興」を条例の表題に付け加えるなど修正案がだされたが、基本理念の趣旨が変わってくるにもかかわらず、不十分な修正案であり「賛成できない」とした。

四つには、今年度から都道府県が交付することになった「国民健康保険調整交付金の交付に関する条例」が提案されたが、国が交付金の交付にあたっては、滞納者への資格証明書の発行などの要件を示しており、わが党議員団はこの交付金を滞納者の保険証取り上げに結びつけないよう求めた。

 

5、府立両大学の授業料、聴講料の値上げ提案は1年遅れとはいえ、国の方針に追随するもので、家計を圧迫し、教育費軽減を求める少子化対策にも逆行するものとして、反対した。

また、「丹後リゾート公園」を「海と星の見える丘公園」として供用開始するための条例改正が提案されたが、リゾート開発が破綻した段階で中止すべきものであり、税金のむだづかいは明白であり反対した。丹後地域の振興というのなら、丹後半島全域が自然環境の学習の場であり、観光と結びつけた地域振興をはかるための伊根バイパスや蒲入バイパス、五箇バイパスなどを急ぐことを求めた。

さらに、過大な貨物取扱量を見込んだ和田埠頭建設に関わる橋梁建設工事請負契約案件が提案されたが、1期工事の1バース建設だけでも500億円もかけており、まさにムダな大型公共事業であり反対した。

山田知事は「府民目線にたった税金の有効活用」と言いながら、こうしたムダな大型開発事業に税金を投入し、少子化対策として求められている子どもの医療費助成の拡充や高校生の通学費助成など府民の切実な願いは冷たく拒否する態度に終始した。

しかし、子どもの医療費助成の16年度実績でも、制度「改善」以前より府の財政措置は減らされていること、制度拡充を図っている市町村では府の助成措置の手続きが不要なことから受益者が多く、京都市内など府制度のままでは、受益者は極端に少なく制度の恩恵すら受けられていないなどの問題が明らかとなっている。

 また、通学費助成も府教委の制度改編により通学圏が拡大し、通学費負担が授業料の2〜3倍にもなる生徒がうまれているにもかかわらず、府教委は、限度額の引き下げを拒否し回数券使用は認めないなど、改善に背を向けている。

 わが党議員団は、ムダな大型公共事業などをやめ、住民の暮らし、福祉、教育優先へ税金の使い方を改めるよう奮闘するものである。

 

6、今議会には「消費税大増税計画の中止を求める請願」が、聴覚障害者協会や青果仲買共同組合など325団体から提出された。これは小泉内閣が「増税も信任を受けた」として消費税の二ケタ増税、定率減税廃止への動きを強めるもとで広範な中小企業団体や市民団体から暮らしと営業を守るため提出されたものである。ところが自民党や公明、民主は「大増税計画などはない」と事実をかくす一方、「税体系全体の中で議論するもの」と消費税増税を容認する立場から、請願を不採択とした。さらに公明は「この請願は(共産党が)府民を装っているだけ」と、府民の願いを反共の立場から葬り去ろうとする態度をとった。

 わが党議員団は、府民の切実な願いにこたえ「消費税大増税を行わないことを求める意見書案」「サラリーマン増税など大増税の中止を求める意見書案」を提出し、府議会が府民の願いに応えるべきであることを強く求めた。

 また、今国会で強行されようとしている「障害者自立支援法案の撤回を求める意見書案」を提案したが、自民、民主など与党会派は、「応益負担導入」を前提に「慎重審議を求める」意見書案を提案した。これは障害者など関係者が強く反対している「応益負担」の導入に手を貸すものであり、反対した。

自民党など与党会派から「道路特定財源」を維持、確保するための意見書案が提案されたが、わが党議員団は、道路特定財源は、5兆8千億円にも膨れ上がり、不要不急、ムダな高速道路建設などすすめてきたもの。これを廃止、一般財源化し、高速道路優先の道路行政をあらためることを求める対案を出してたたかった。

 このほか関係団体からの要望を受けて「私学教育の振興に関する意見書」、視覚障害者の働く権利と働く場の確保を求める「あんまマッサージ指圧師・はり師・きゅう師等に関する意見書」が提案され、全会一致で採択された。

 

 いよいよ知事選挙まであと半年と迫った。今議会では自民、民主など与党会派が山田知事の実績を持ち上げ、事実上の「支持」表明をおこなった。しかし、山田知事は小泉構造改革に「同感」として総務省いいなりの「地方構造改革」をすすめ、憲法改悪の危険な道をすすむ府政と府民との矛盾はますます大きくなっている。

 わが党議員団は、広範な府民とともに、憲法を守り、京都経済の再生と府民の暮らし守る府政を実現するために全力をあげて奮闘するものである。