前窪義由紀(日本共産党、宇治市・久御山町)2005年11月15日

 

介護保険改定 府の保険料・利用料の軽減制度をつくり

利用者、事業者の負担を軽減すべき

【前窪】

介護保険の改悪で10月1日から、施設の入居者や利用者が居住費・食費を全額自己負担することになり、現場でどのような事態が起こっているのか、私ども議員団は、緊急の懇談会を行うなど、利用者や事業者から実情をお聞きしました。

利用者、家族からは、毎月の負担が3万円近く増える。ユニット個室では、月6万円の住居費に。100人定員の特別養護老人ホームでは、年間の利用者負担が1人平均で34万円も増え、施設収入は1千300万円以上の減収。ユニットケア個室40床を整備した新型の特別養護老人ホームでは、4千万円の減収に。利用者負担増による利用抑制、施設の収入減による運営の危機に対し、府としても何とか支援してほしいと深刻な発言が相次ぎました。

府として保険料・利用料の軽減制度をつくり、努力している市町村を支援し、利用者、事業者の負担を軽減すべきと考えるがどうか。

【知事】 介護保険制度は、介護を社会全体で支えるという制度の趣旨を踏まえつつ高齢者の経済的負担が過度とならないように配慮するなど、利用者本位の安定した制度とすることが必要と考えている。そのため、低所得者対策の充実など、くり返し国に提案要請した結果、今回の見直しにおいても低所得者について居住費・食費の一定額を給付する補足給付の創設、社会福祉法人軽減制度の拡充など新たな対策が講じられた。私どもも市町村や事業者への説明会、府民への普及啓発を通じて制度の周知や補足給付の対象者の把握、指導助言に努めてきた。市町村の独自減免措置への助成については、今回の見直しにともない府内において新たに減免措置の創設は行われていないが、私どもはこれからも国に対しては、しっかりとした低所得者対策が講じられるようにしたいと思っている。府としても制度へ発足時の平成12年度では約107億円の負担であったのが、今年度はおよそ1.5倍となる162億円も負担して全力をあげて制度を支えている。

 

府の役割は府民の暮らしをしっかり支えていくということ

【前窪】

すでに経済的理由で退所者も出ています。他県では自殺された方もいます。あってはならないことです。国に制度改善を求めることは当然だが、9月議会で、保健福祉部長は「低所得者であるがゆえに必要なサービスが受けられない事態となってならない」と答えられました。

知事もこうした考えに立つなら、今度の制度移行でまだ市町村で新しい措置はやられていないわけですから、実態をよく把握して利用者や事業者の切実な訴えにこたえる支援策を打ち出すべきと考えますがいかがでしょうか。

【知事】 私もこの制度の改正によって、充分な支援が受けられない人がでてくるということがあってはならないと考えている。しかし、この制度の見直しは10月1日からなので、まずしっかりとした実施状況を把握する必要があると考えている。市町村や関係施設の協力を得て、現在調査をするための準備を進めている。その上で国、地方、業者、皆さんがしっかりと連携できるような体制が講じられるよう努力していきたい。

【前窪】

 いまの知事の答弁で、これから実態把握に努めるということだが、府の役割というのは市町村と協力してそこに住む住民、つまり府民の暮らしをしっかり支えていくということにあると思う。ですから、今こそ憲法25条に基づき、「住民福祉の向上」へ、自治体本来の役割を果たしていくように強く求めておきます。
 

民間施設への各種補助金は「ひもつき補助金」か

【前窪】

次に、民間社会福祉施設の運営について伺います。府内には、特別養護老人ホーム、保育園など社会福祉施設が約1000個所もあり、その約7割が民間施設だといわれています。福祉職場は特にマンパワーが肝心でして、福祉サービスの向上、安心してサービスを提供するためには、直接の担い手、働く人たちの労働環境が良くなければ安定したサービスの提供が出来ないと思います。そのために公的な支援が必要で、そういう立場から本府もいろいろと支援をしてきました。しかし、16年度に、職員健康検診助成、職員研修対策費補助、職員共済会事業費補助を廃止・削減しました。

私は決算書面審査で、保健福祉部長に質問しましたが、「ひも付き補助金は、少なくしていく方向」と答弁されました。民間施設が頼りにしている各種の補助金などを「ひも付き」だという立場で減らしていくというのはとんでもない発言だと思います。福祉事業の多くを民間にゆだねているのですから、今こそ支援がいっそう求められているのです。充実どころか支援を切り捨てることはあってはならないと思います。冷や水を浴びせるようなことを何故されるのか、お聞きしたいと思います。

【知事】 保健福祉部長が申したのは、何か行政が福祉施設について、「これをやるんだったらお金をあげるよ的な施策を講じることはいったいどうなんだろう」ということを多分申し上げたんだろうと思っている。全体として、今まで民間社会福祉施設については、非常に全国的に見てもしっかりとした処遇向上をはかるための独自の施策をきめ細かく実施してきたと思う。ただ近年、大きく制度が変わってきた。そしてその中で、介護保険や支援費制度が導入していく中で都道府県の負担のあり方も変わってきた。例えば健診費などについては、基本的に支援費や措置費に含まれる形になった。ですから、これをやればという形でなく、福祉サービスが利用による行政による措置から利用者として契約に移行する中で、平成16年度に府民の施設との契約に移行する中、利用者サービスの向上をはかるために、福祉施設が自主的積極的に取り組む先駆的な事業を支援する安心安全レベルアップ事業を実施したところである。これは施設の環境改善や経営改善などの取り組みを総合的に支援するものであり、こういった民間社会福祉施設に対する職員処遇を含む負担費の支援総額全体で見ると、平成15年度決算が24億円に対し、平成16年度決算は約26億円と、ご指摘とは逆に増加しているのが現状だ。さらに介護保険、支援費、措置費など福祉施設等業者のために平成16年度は府費208億円を充てているということを充分にご理解いただきたい。

 

厳しい福祉現場 実態をしっかり把握せよ

【前窪】

現状はどうかというと、民間福祉職場で働く人たちの労働条件は非常に厳しい。平均勤続年数が3年程度、あるいは20年勤続で月給20万円に達しない、あるいは非正規職員が半数以上も占めている。夜勤も正規職員ではなく非正規職員だけの対応がやむなく行われるなどが起こっています。私は、現実を良く見るべきだと思います。今回の措置で、私の地元の保育園がどういう状態になっているのかお聞きしました。120人定数のところですが、職員健康検診助成の廃止で、17年度より健診を廃止した。職員研修対策費補助は、1人当たり42,800円あったが、13,333円になった。宿泊研修等への職員派遣ができなくなってきたことなどがおこっています。レベルアップ事業に替えたといわれるが、実際はレベルダウンになっている。これが現場の声です。職員共済会補助金も毎年掛け金・負担金引き上げに加え、府補助金の見直しが大きく影響し、平成11年ぐらいから施設側の負担は2倍にもなっているなど実際の話をお聞かせいただきました。やっぱり府の補助金カットなどで大変大きな影響が出ています。数字上の問題でなく現場がどうなっているか、私はよく見てほしいと思います。知事として現場をよく把握していただいて、来年度にむけて制度を充実にむけ、あるいは復活にむけて対処すべきだと思います。いかがですか。

【知事】 現状をとらえてしっかりとやっていくというのはそのとおりだが、そのためには福祉施設の努力することも必要だと思っている。実際がんばっているところもかなり多くあると思う。そういった成果が出ているのは、例えば研修ひとつをとっても実は平成15年より平成16年のほうが府の福祉人材研修センターで受講されている方が多い。ですから、先ほど言ったように単費の額も増加しているし、研修を受けられている方も増加しているのが実は現状だということも数字的には出ている。そういうなかで、よりきめ細かく社会福祉施設の実情をお聞きしながらしっかりとした対策を講じていくことが必要だと考えている。

 

【前窪】

いま知事がいみじくも言われたが、「数字的には」と前提がついている。実態としてどうなっているかということを見てほしいと思います。知事はかねがね「経営の視点」ということで、あらゆるところにそういう観点を持ち込んでいるが、こうしたことは、結局、第一線で苦労しておられる民間の社会福祉施設の運営をも厳しい状況に追い込んでいる。私はこういった点を見直すべきと強く指摘しておきます。

 

乙訓2市1町の水道問題での要望について

【前窪】

次に、府営水道の問題について伺います。今年の8月22日、向日、長岡京両市長、大山崎町長から知事宛に、「京都府営水道の供給料金等に関する要望書」が出されました。要望事項の1番目に「府営水道の受水費用が乙訓2市1町の水道事業経営を大きく圧迫していることから、受水水量等の弾力化について、特段のご配慮をいただきたい」と要望されています。乙訓2市1町の要望に知事はどうこたえるのか。まずお聞きします。

【知事】 受水量の弾力化について確かに要望をいただいている。私はいままでの経過を振り返りますと、まさにある面では受水量の弾力化の連続であったのではないかと思っている。平成10年には、乙訓の浄水場の整備にあたり、段階的整備の要望を受けて、基本水量を当初の申し込みの三分の二の規模に縮小している。そして12年の開業にあたっては、一般会計からの支援をおこない、暫定基本料金を適用した。基本料金を引き下げました。平成15年11月に水道事業懇談会からの水源費の負担料金の変更、コスト削減による料金の値下げ、工夫をして、ここでもまた料金の引き下げを行った。さらに平成16年度4月に、今度は一般会計からの貸付金の償還猶予により、基本料金を引き下げた料金改定を行う、ということであり、市町村とも充分に連携を保ちながら、われわれのできる範囲でがんばってきているというのが状況である。ただ、この基本水量というのは、既に投資した施設整備に対する経費の分担金という性格を持っているので、市町の水道経営の健全化のためには、受益と負担という観点も、見逃してはならない観点だと思っている。市町においても利用拡大や水道事業の広域化などによる経費節減の方策が必要だと思っている。これは水道懇で指摘されていることでもある。こういった努力についてもお願いしていきたい。今後とも需要拡大方策や広域化等、市町と協議しながら水道経営の健全化のために取り組んでいきたいと考えている。

 

条例にもとづく基本水量の見直しを直ちに

【前窪】ではなぜ、2市1町の首長からこのような要望書が出るのかということなんです。この問題でも、知事はあれこれの経過を述べられました。その点は一つの努力としてわれわれも承知している。しかし、現実はどうなっているのか直視していただきたいと思います。長岡京市や向日市は、毎年数千万円の赤字を出して、累積欠損金は長岡京は1億円を超えました。向日市は7億円を越えて増え続けています。大山崎町はどうか、6千万円ほどの赤字を出して、累積欠損金は約5億7千万円、ここの水道会計は、6億円程度ですから、これは何とかしないと破綻してしまいます。

こういう状況のもと、水はどれだけ使われているのかといいますと、府営水の2市1町への給水実績は、46,000トンの基本水量に対し、24,000トンですよ。52,4%しか使われていない。これをさらに100%使え使えとなっていけば、この水道会計どうなるんだということです。そういうことを理解すれば、基本水量を直ちに見直す作業に入るべきだと思います。

府営水道に関する条例を見ますと、第2条で府から2市1町に給水する水量を決めるには、毎年、市町から申し込みをして、協議をして、知事が決定する。こうなっているんです。この条例に従えば、基本水量の見直しというのは毎年行われなければならないし、できることだと思うのですが、いかがですか。

【知事】 いま、これを運営しているのは企業局なんですね。なぜ企業局かというと、受益と負担との関係を明確にしてしっかりとやっていかなければならない。つまり一般的な府民全体に還元する、そういう性格のものではないというなかで行っているわけです。ですから乙訓2市1町、府が何とかしよう、これは府民に転嫁する話になってくる。ですから、府民の十分な理解を得られるような内容のものでなければ、これはまた府民からそしりを受けるものだと思っている。それだけに実はもともとの府営水道の供給というのは、2市1町と協定を結びまして、そのなかで行ってきたものでありまして、それを踏まえているからこそ、実は毎年の協議の中でも、そういった事情をお互いに考えながら、どうすれば水道経営の健全化になるかということを踏まえて検討して、今のようになっているわけです。これからも私どもは、水道経営の健全化という観点からしっかりとした協議を続けて、2市1町とも連携しながらがんばってまいりたいと思っている。

【前窪】

私は条例が的確に運用されていると思えません。なぜかと言うと、毎年協議しながら何故2市1町からの要望が切実な形で出てくるのか。ここを見てほしいと思うんです。2市1町では、これまでも豊富な地下水をだんだん減らしながら基本水量をとるための努力はしてきた。しかし、もうこれ以上やれば財政が持たない。そういう状況に来ているんです。この協定というのは、府と2市1町それぞれが協議をして決めてきたわけですから、言われたまま府が認めたわけではないんでしょう。府もいろいろ意見を言い協議しながら決めてきた。府の責任もある。そういう意味で、私は水道料金の際限ない値上げに追い込むような今のやり方を改めて、府として一般会計からの繰り出しも含めて、市町の要望にこたえるべきだと考えますが、いかがですか。

【知事】 実は毎年のように要望が出ている。私どもはそれに対して、毎年のように一生懸命工夫して応えてきた歴史を申し上げた。平成10年、12年、15年、16年ですから、こういって面から言うと特にこれからは経営健全化に対して、水道懇でも指摘のあったわけですから、そういった点も十分協議して、お互いにできる範囲で努力をしていくということが必要だと思っている。

【前窪】

最後に申し上げておきたい。私は先ほど府の責任もあるという指摘もさせていただいた。今までの赤字を、これから出る赤字をすべて2市1町の住民に押し付ける、これでは、それぞれの会計がもたないし、地域の住民が了解しないと思います。一般会計からの繰り出しを含めて、協議をするということですから、府としての協議の材料を持って臨んでいただきたい。このことを強く求めて私の質問を終わります。