京都府議会12月定例会代表質問

原田 完 (日本共産党、京都市中京区)2005年12月6日

 

貧困と社会的格差を広げる小泉構造改革を良しとするのか

【原田】

日本共産党の原田完です。私は議員団を代表して、知事並び関係理事者に質問いたします。

今、小泉自公政権は、大企業の利潤追及を最優先し、規制緩和万能、市場原理主義、弱肉強食を進める経済路線のもとで、国民生活は、かつてなく厳しいものとなっています。特に雇用の破壊、リストラと新規採用の抑制は、青年や中高年齢者に大量の不安定雇用を生み出し、中小零細企業の大幅な倒産・廃業・経営難とあいまって、貧困と社会的格差の新たな広がりが重大な社会問題になっています。

とりわけ、低所得者層の増大が顕著に進んでいます。生活保護世帯は、全国で100万世帯をこえ、京都でも32246世帯へと、97年に比べ1万世帯も増え、1・4倍にもなっており、教育扶助、修学援助を受けている児童も7人に1人となり、5年間に1・5倍に急増しています。

また、貯蓄ゼロの世帯が、23・8%と増大しており、年金はわずか月数万円、貯蓄もないという高齢者が増えているのです。この上、高齢者に介護保険、医療保険改悪が押し付けられようとしています。

国際比較で見ても、平均的所得の半分以下の所得しかない世帯を示す貧困率は、OECD25カ国中、日本はワースト5位です。

こうしたもとで、民主府政の会が、全府民を対象に取り組んだ「府民アンケート」への回答が、11月末で3万通を越えました。私もアンケートの回答を見ましたが、府民の暮らしや営業が脅かされ、生活への不安があらゆる階層で増加していることを実感し、府政が果たすべき役割と期待の大きさを痛感しました。

アンケートに書かれた声をいくつか紹介しまと、下京区の40代の女性は、「京都府は、弱いものに手厳しいと思います。母子家庭で、養育費ももらえず、本当に貧困です。苦しい家庭にも、教育が受けられるように望みます。大学に行って学びたくても、進学できない。何のために勉強しているのと言う子供の失望。行かせてやれない親の悔しさ。福祉の充実をお願いしたい。」

山科区の60歳代の女性は、「年金生活なのに何でも上がり、下がるものは年金の額だけ、国保料の値上げは、病人は早く死ねと言わんばかり。」そして、「生活保護の夏・冬の見舞金なくし、老齢加算もやめ、その上介護保険のお金もあげられ、一日一日が不安で生きていられない。」等々、このような声が無数に届いているのです。

今の京都府政についての評価では、大いに満足は、わずか2%。ある程度満足と合わせて19%。これに対して、少し不満、大いに不満は、61%となっています。子育てや教育に対する評価も圧倒的多数が不満と答えており、府政に対する厳しい見方が如実に表れています。

こうした府民の声にしっかり応えることが、京都府政に求められています。

そこでお聞きします。知事は「小泉構造改革に同感」といわれていますが、こうした貧困と社会的格差を拡大する小泉改革が、推進されることを良しとされるのですか。お答え下さい。

【知事】

私は、小泉改革の中で、民間活力・地域活力を利用してわが国の活力を取り戻そうという流れについては、同感だといっている。京都の人の力、例えば伝統産業や中小企業など、京都の産業の担い手の人々、多くの大学や伝統・文化を担う人々、地域で環境を守り、豊かな自然の恵みをはぐくむ人たちなどが、持てる力を最大限に発揮すること、京都の民間活力を最大限に生かすことが、重要ということで述べた。原田議員は、国から地方へという流れ自身にも反対をされるのか。

【原田】

今、構造改革そのものが貧困を生み出している。京都経済の落ち込みなど、痛みを感じないのか。京都の知事として、貧困と格差の拡大、先ほど紹介したような府民の暮らしそのものをつくり出さない立場に立つことを求めておきます。

 

耐震強度偽装問題について

民間任せにせず、専門職を育て、府として見抜ける力を

【原田】

また、民間でできることは民間でと、規制緩和・市場原理万能路線のもとで起っている典型が、耐震構造偽装事件であります。姉歯建設設計事務所が関与した府内の物件2件について、府は、11月22日に「構造計算書の改ざんがなく、耐震性に問題がないことを確認した」と発表し、11月24日の建設常任委員会では、「現場検証を実施すべき」との我が党委員の指摘に対し、「確認検査は、非常に適正に実施されている」と結論付けたものです。しかし、府は12月2日「改ざんされていたことが判明した」と発表しました。

当初、建築確認申請書の書面を点検しただけで、構造計算の再検査・現場検証もせず、偽装を見抜けなかった府の責任がきびしく問われています。また、再発防止のため、どのような具体策を取るのかが重要です。兵庫県では、過去3年間の建築確認申請のうち、偽装で使われたプログラムを使用したすべての構造計算書について年内に再計算するとともに、新規の申請分についても再計算を義務づけるとしています。

府民の安全を守り、建築確認行政への信頼回復のため、事件の全容解明、本府の責任、再発防止への万全の対策について、知事の答弁を求めます。

【知事】

11月21日に千葉県から耐震強度偽装事件を起こした姉歯建築設計事務所が関与した物件の情報提供があり、府内では2物件が明らかとなり、国から示されたチェックリストにより、審査を実施したところ、問題がなかったのでこの旨を公表した。しかし、慎重を期し、私どもの建築確認では、従来から行うことができなかった大臣認定のプログラムについて、民間に委託をして再計算を実施した結果、構造計算書の改ざんが判明したために使用者の安全確保を図るため、ホテルの所有者に営業自粛を要請し、12月2日から事業を休止したところ。このケースは、建築確認の審査では、法律によって添付が義務づけられていないプログラムの部分が改ざんされたので、まさに建築確認の基本にかかわる重大な問題であり、そのために各都道府県でも相次いで同じような事例が、発生している。それだけに、建築確認だけでなく、発注、設計、施工、審査、検査、消費者保護等、すべての段階における抜本的な制度の見直しが必要である。国も現在このあり方について検討に着手する予定でありますが、それまでの間、国の責任とか、地方の責任と申すのではなくて、あくまで府民の視点からしっかりと安心・安全を守るために全力をつくすため、2件のホテルについては、耐震性能等の詳細な調査を行い、きちっとした安全対策を検討する。大臣認定のプログラムを利用した構造計算書の再検査も実施する。同時に確認検査機関に対する審査の徹底指導と立ち入り検査、設計業務にたずさわる建築事務所に対する法令遵守の徹底等も行う。その上で、現在すでに京都大学田中教授を委員長とする検討会を立ち上げており、ここで詳細な検討もしていただき、国に対してもしっかりと主張することはしていきたい。

【原田】

再発防止に全力をあげるのは当然のことです。一度、安全宣言を出したことで、府民に不審が広がっているわけですから、真摯に受け止め、民間任せにせず、専門職を育て、見抜ける力を府としてもつける。そして、その対応策を具体的にすべきです。加茂町のフェロシルト問題でも、業者の言い分を鵜呑みにして安全と言い続けてきたが、基準値の36倍の六価クロムが検出されました。根源は同じです。府民の信頼を根底からつき崩すもので、府政の体質が問われる問題です。厳しく指摘しておきます。

 

介護・医療問題について

介護保険の利用料減免制度の創設を

【原田】

次に介護・医療問題についてお聞きします。

まず、10月から実施されている介護保険法改悪の影響と対策について伺います。

介護保険法の改悪にともない、10月から介護施設の居住費と食費が保険の対象から外れ、原則として利用者の全額自己負担となりました。

わが党議員団は、その影響をつかむため、10月末に懇談会を開催し、また、施設を訪問して、現場の実態をお聞きしてきました。

11月に入って、新たに負担増となる10月分の請求書が出されましたが、これまでから指摘してきたとおり、特別養護老人ホームでも老人保健施設でも、月数万円の負担増となっている人が少なくなく、すでに施設から退所したり、施設入所をあきらめる人も出ています。

また、在宅サービスに欠かせないショートステイの滞在費と食費、デイサービスの食費も保険から外れました。その結果、ある女性の方は、ショートステイとデイサービスでなんとか生活してこられましたが、これまでの月45000円が、10月から66000円となり、実に月21000円、年間26六万円の負担増となっています。

 知事も決算特別員会で、負担増によって、必要な介護を受けられないようなことがあってはならないと答えられましたが、そのための利用料減免制度が、どうしても必要です。ただちに、制度をつくるべきと考えますが、いかがですか。

また、「市町村や施設と協力して実態調査を行う」との答弁でしたが、いつ調査されるのですか。お答えください。

【知事】

介護を社会全体で支えるという制度の趣旨をふまえつつ、利用者本位の安定した制度とすることが必要なため、府として低所得者対策の充実など、くり返し国に要請してきた。この結果、今回の見直しで低所得者についての居住費・食費の一定額を給付する補足給付の創設、社会福祉法人軽減制度の拡充など、新たな対策が講じられた。反対、反対といっても何にもならない。こういうところをきちっとやっていくというふうにして、改善を求めていくということが責任をもつもののある立場ではないか。今回の制度改正により、十分な支援が受けられない人があってはならないと考えており、こうした立場から、しっかりと高齢者の負担が過度とならないように求めていきたい。

 利用料の減免制度については、介護を社会全体で支える趣旨から、国地方公共団体はもとより、高齢者の方も含めて負担がある。府としても、制度発足時の平成12年度では、約107億円の負担であったものが、今年度は、このおよそ1.5倍となる167億円で、これを全力あげて負担していることをご理解いただきたい。現段階では、制度の見直しは、10月1日に行われたばかりなので、まず状況を把握することが、必要であるということで、現在調査を始めていて、調査票の回収をしつつあるところ。今後、速やかに取りまとめを行い、その結果もふまえて必要な対応を求めていきたい。

【原田】

介護保険についてですが、いまの知事の答弁は、10月からの大幅な負担増に苦しんでいる府民の実態を知らない、大変冷たい答弁です。荒川区では、デイサービスと適所リハビリの食費について、世帯全員が区民税非課税の方を対象に、各施設が定める食費自己負担額の25%を補助しています。

こうした経験にも学んで、府として、独自の負担軽減措置を検討すべきではありませんか。再度、お答えください。

【知事】

まさに、10月1日から実施されているわけで、それをもとに、市町村が実施しているもので、私どもは、市町村と連携し、調査票を出して、今、回収を始めている。正確な資料と正確な情報に基づいて、適切な行動をしていかなければならない。

医療制度の改悪について

【原田】

介護保険の改悪に続いて、来年度から医療制度が改悪されようとしています。

12月1日、政府・与党が、決定した、医療制度「改革」大綱は、現在、扶養家族で保険料負担をしていない高齢者からも保険料をとりたて、しかも「年金天引き方式」で、すべての高齢者から医療保険料を徴収することや、窓口負担の引きあげ、療養病床に入院している高齢者の食事代や居住費の全額を自己負担化、高額療養費の負担限度額の引き上げなどが盛り込まれ、高齢者を狙い撃ちにし、重病患者に追い討ちをかけ、まさに、「いのちの沙汰も金次第」という状況を拡大するもので、断じて許されません。知事は、このような小泉内閣が進める医療構造改革に、「持続可能な制度」にするためだと今でも賛成されるのですか。お答え下さい。

【知事】

医療制度改革については、急速な高齢化等による医療費の増大により、医療保険財政が大変厳しい状況にある中で、年金生活者等への低所得者への配慮を十分に行うことを前提に、給付と負担とのバランスを考え、将来にわたり安定した制度を構築すべきである。府としては、府民の立場に立ち、府民が安心して医療を受けることができるよう、各種のセーフティネットをはり、構築している。地域や府民の実情をふまえ、どのように府民の健康を守るかという観点から、医療制度のあり方について、国に対しても提案を行ってきた。こうした立場で引き続き市町村と連携して、積極的に提案していきたい。

【原田】

医療制度の改革については、国に要望するというだけで、改悪にきっぱり反対するとの態度の表明はされませんでした。

すでに、窓口負担増によって、在宅酸素療法を中止した結果3人の患者さんが死亡したことが、京都府保険医協会の会員調査でも明らかになっています。府民のいのちを守るために、直ちに「重度心身障害健康管理事業」の対象を3級まで拡大すべきです。すでに、全国の20都県で実施されています。いつまでも「国へ要望する」にとどめず、決断すべきです。いかがですか、お答えください。

【知事】

重度心身障害老人健康管理事業については、国の年金制度と同様、とくに必要とされる身障者手帳1級・2級等の重度の障害がある方を対象としているもの。在宅酸素療法受けておられる呼吸器障害者の方については、身体障害者の手帳の等級の改善が必要であり、積極的に行動していきたい。

福祉医療助成制度の拡充を

【原田】

これまで公費負担医療となっていた精神通院、更正医療、育成医療を「自立支援医療」として統合し、患者の自己負担を1割に引き上げることが決まりましたが、これらの負担増で、心臓病の子どもたちや重度障害者の医療中断が起こらないよう、本府の福祉医療助成制度を拡充し、対応すべきです。いかがですか、お答えください。

【知事】

 自立支援医療については、低所得者等に配慮した負担上限度額が設けられ、これらの方のうち重度の障害のある方や、心臓病の乳幼児については、府の福祉医療制度を適用する。

子どもの医療費無料化の充実・拡大を

【原田】

先に紹介した「府民アンケート」では、子育て対策のトップとして、「子どもの医療費無料化の充実・拡大」があげられています。府内36自治体中、28自治体が、府の制度に上乗せしていますが、それ以外の京都市をはじめとする八市では、府と同じ制度にとどまっており、その結果、京都府の約4分の3を占める子どもたちが、3歳以上は8000円の負担をしなければならないのです。府内のすべての子どもに責任を持つのが、知事の責任ではありませんか。先日の京都市議会で、京都市は、この改善について、「府と協議する」と答弁しています。京都の子どもたちすべてを、通院についても小学校入学前まで無料とすべきです。知事の決断を求めますが、いかがですか。

【知事】

 私どもは何かまるで、弱い方に何もしていないようなことをいわれたが、私は、乳幼児医療制度について、すぐに拡充してきた。これは、荒巻府政のときにできたもので、的確な評価をしていただきたい。的確な評価の上に、平成15年の9月に制度を拡充し、現在でも全国的にトップレベルの水準になっている。この助成件数についても、制度拡充前の約1.3倍になり、通院の拡充分についても約1.4倍の現状。このような成果を十分にふまえ、その上で検討を深めていきたい。

【原田】

子どもの医療費助成をはじめとする制度の拡充についても、これまでと同様の冷たい答弁を繰り返されました。ここには、「小泉構造改革」に同調される知事の姿勢が端的に示されていることを厳しく指摘しておきます。

【知事】

 医療制度改革についても、単に反対しても、何の問題も解決してこないのではないか。しっかりと状況ふまえながら、地方として提案できることを提案していくという態度をとらない限り、ものごとは前に進まない。反対だけが実績では、やはりおかしい。

【原田】

府民の生活実態から、府として独自の軽減措置を再度強く要望して、次の質問にうつります。

 

地域経済の問題について

大増税計画・消費税大増税に明確に反対を

【原田】

地域経済の問題ですが、さる11月22日、京都府中小企業団体中央会と京都府知事との懇談会が開かれ、各事業分野の課題、府への多面的な要望が出されました。この懇談会には、私も参加し各業界のおかれた現状の深刻さに改めて心を痛めましたが、関連して数点質問いたします。

はじめは、小泉内閣による庶民大増税計画についてです。

九月議会に提出された、大増税計画の中止を求める府民の請願に対し、自民、民主、公明、新政会の知事与党は、「大増税計画など存在しない」と、これを不採択としました。しかし、存在しないどころか、政府税調は、定率減税の全面廃止を答申し、自民・公明の与党の税調も廃止を盛り込む予定です。京都出身の谷垣財務相も、定率減税は、廃止を言明しています。更に、2007年度には消費税率の大幅な引き上げ等、大増税の日程が次々と打ち出されています。

消費税ですが、生活費非課税、累進制、総合課税という税の原則に反し、大金持ちには負担が軽く、庶民には大きな負担となる不公平税制の典型です。企業経営に関して言えば、大企業は消費税分の価格への上乗せを行うことが比較的安易にできるが、中小企業は下請けになればなるほどコスト削減要求で、の価格への転嫁は一層困難になり、中小企業の経営への打撃は計り知れないものとなります。

知事はこれまで、消費税増税への姿勢を問われると、「受益と負担の関係がある」、「国において検討される問題」などと、事実上容認し、責任逃れの姿勢を取ってこられました。京都は、中小企業が京都経済を支えています。知事は、この中小企業を存亡の危機におとしいれる消費税率引き上げに対して、国に対し明確に反対の姿勢を示すべきです。いかがですか。

【知事】

公的サービスをどうするかという問題を抜きにして、消費税だけあげるなという議論というのは、幼稚な議論だ。やはり、きちっとサービスとそれに対する租税の負担の水準について、こういう見解であるのだとおっしゃって、初めて、その中で消費税は上げなくても良いと言うならわかりますが、ただ、消費税を上げることは反対だという話しは、私は一面的すぎる。

従って、少子高齢化の進展、企業活動や個々の人のライフスタイルの多様化といった経済社会の行動変動を踏まえ、持続可能な社会を作るために国の行政水準全体に関わる受益と負担の問題をしっかりと議論してやっていくものだと、私たちは以前から申し上げている。

 

大型小売店の出店問題と商店街・個人商店の振興対策について

無秩序な大型店出店の規制を可能とする条例制定を

【原田】

次に、大型小売店の出店問題と、商店街・個人商店の振興対策についてです。

中小商店・商店街の果たす役割は、単に日常生活の必需品を消費者に供給するだけでなく、地域の雇用の場、高齢者世帯への給食配達やデイサービス機能、さらに、町内会役員など、地域の暮らし、地域まちづくりと密接に関わった重要な役割を果たしています。このような中小商店、商店街が存亡の危機に直面しています。

京都府内の大型店ショッピングセンター、ホームセンター等の出店攻勢は、まさに異常な状態です。大店立地法となって以降、京都商店連盟に加盟する商店街は、104から95へと9商店街も脱退・解散されてしまいました。1999年と2004年の5年間で、商店数は、33088軒から28920軒へと4168軒 12・6%の減少です。一方、百貨店、総合スーパー、専門スーパーは、売り場面積が、96万4千uから116万2千uへ19・3%の増となっています。

このような状況の中で、京都府南部地域では、八幡市のホームセンタームサシが3万u、精華町のユニーが4万8千u、木津町のダイヤモンドシティが4万3千uなど、計画中のものを含めると、総売り場面積で14万uへと、南部地域の既存売場面積の50%が、一気に増加する事態です。

また、京都市内の特徴的なものでは、近鉄百貨店の跡に、ヨドバシカメラが買収しての出店。またすぐ近くの伊勢丹横の西隣に、ビックカメラの出店計画、これは、京都のカメラ業界、家電販売業者の売り場面積に匹敵するような、超大型店の出店が計画されています。

京都府北部地域でも、野田川町にケーズデンキが出店し、さらにプラント4が、1万3千uで出店を計画しています。近隣の加悦町にある国と京都府も支援してきた共同店舗の「ウイル」は、福祉施設の併設など、地域貢献しながら商業施設としてがんばっています。現在でも、スーパー等の出店攻勢のもとで、厳しい経営環境にある上に、更なる出店計画です。まさに、大型店のやりたい放題です。

大型スーパー等の出店にかかわる大店立地法にもとづく、届け出の受理と審査・出店指導は、京都府の責任で行われるものです。国の指針の見直しで、京都府として独自に、駐車台数を北部で強化していることは認識していますが、府民の暮らし・まちづくりと経済を守る上からも、京都府の姿勢と行政責任が問われます。

知事は、大型店の異常かつ無秩序な出店攻勢について、どのような認識をお持ちか、お聞かせください。

私はこれまで、議会で繰り返し、小売商業調整戸区別措置法を活用して、大型店の出店について積極的な調整を行うよう求めてきました。しかし京都府は、西新道錦会商店街によるマツモト出店に関しての申請や、宇治市の小倉商店街がコーナンと平和堂の出店等に対する申請の相談に際して、中小企業の実態に即した誠実な対応を行おうとしませんでした。

分野法の精神で、商業分野の大企業者と中小企業者の紛争を調整する商調法が、現に法律として存在しているにもかかわらず、こうした京都府の姿勢は許されません。即刻、改めるよう要望しておきます。

もう一つが、京都府独自の対策です。大店立地法は、13条で需給調整を排除しています。しかし、今、その見直しが大きな流れとなっており、兵庫県や福島県などでは、独自の条例等をつくり、大店立地法の不十分点を少しでも補おうとしています。過日の中央会との懇談会で、知事は、独自の指針作りの懇談会設置を表明されておられましたが、府として、大型店スーパー等の大型施設の出店について、広域調整をはかり、無秩序な出店の規制を可能とする条例を制定すべきではありませんか。行政の責任で、行政の持ち得る権限を生かし、出店調整を積極的に行うべきです。知事のご決意をお聞きします。

【知事】

大型店の出店問題は、車社会の進展や、消費者のライフスタイルの変化などを背景に、大型店側の積極的な出店が続いているが、こうした出店が、地域におけるまちづくりと無関係に行われてきているため、これまで、地域の住民のより所として、コミュニティの形成に大きな役割を果たしてきた中心市街地の商店街に、大きな影響を与えている。

府としても、こうした地域の安心安全な生活確保ができるコミュニティを復活し、地域力を回復するためにも、計画的なまちづくりを進めることが大変重要だと考えている。

ご存知の通り、現行の大店立地法については、都道府県が広域的に立地調整機能を行うことを、わざわざ法律に明記して、条令でもダメだと禁止しているのが実状である。

しかしながら、ようやく、国は、まちづくり三法を見直し広域調整や郊外立地の抑制をより柔軟に行えるような方向での検討が、今なされている。それを受け、都道府県も、これまで以上に大型店の立地調整について、なんとかまちづくりとの調和をはかっていきたいという展開がなされてきた。

私も同じ意見であり、今指摘のあった、近々発足する懇話会で、中心市街地の賑わいづくりや大型店の立地調整など、商業立地のあり方について、府の基本的な方向、法律の中でどこまで我々はできるのだろうか、どういう形で地域の中心商店がコミュニティの中心として維持できるのだろうかということを検討して頂き、それを踏まえて対応をしていく。

 

後継者育成・重油高騰対策など伝統産業支える施策強化で

伝統と文化のものづくり産業振興条例に命を吹き込め

【原田】

伝統産業や繊維産業も非常に厳しい状況が続いています。私の地元、中京区は、京友禅の町として栄えてきましたが、今、板場友禅の産地、壬生地域を歩いても、友禅工場や友禅板の干しは、ほとんど見ることができません。

型友禅の生産高は昭和46年の1100万反が最高でしたが、現在は、37万反とその1割を大きき割る落ち込みです。手描き友禅も同様です。30歳代以下の若手職人はほとんどおらず、後継者育成ができていません。西陣の総出荷額も最高時の18・5%。清水焼、京扇子や京仏壇など他の伝統工芸も同様です。京都の和装・伝統産業の集積産地が大変な状況にあります。

9月議会で、関係者のみなさんが長年求めてきた「京都の伝統と文化のものづくり産業振興条例」が制定されましたが、この条例制定を機会に、具体的な支援策の抜本的強化を図ることが求められています。

先日開かれ、府も主催した「京の名工展」の会場でも、「私が死んだら、後継者がいないから、この材料は棺桶に一緒に持って入るしかない」等の声が聞かれました。名工の方々でもこのような状況なのですから、対応策が急がれます。

では、何をすべきか。私どもは、今から7年前に、独自に伝産条例大綱案提案しておりますが、その中で提案した取り組みが今も有効です。

例えば、後継者対策ですが、この対策は待ったなしの課題です。金沢市では、金沢職人大学校や卯辰山工芸工房などの伝統産業従事者の養成機関を設ける一方、金沢の技と芸の人づくり奨励金として、稀少伝統産業後継者や工芸工房の技術研修者に対し、3年間にわたり月に12万円を支給する、伝統産業技術研修者に対しては、月額5万円を3年間支給する等、奨学金的な奨励金を支給し後継者の育成に大きな役割を果たしています。京都府でも、後継者育成を業界まかせにせず、条例に命を吹き込むため、具体的な対策を実施すべきです。いかがですか。知事の決意をお聞きします。

関連して、当面の緊急課題として、原油価格の高騰に関連し、お聞きします。

原油高騰で、下請け企業は値上がり分を加工賃に反映させたくても、元請などの圧力で十分に転嫁することができず、大変厳しい状況に置かれています。すでに知事に、下請け業界団体からの要請があると思いますが、京都府として中小企業下請け振興法に基づき、親企業の業界団体に対し指導を強化すべきではありませんか。いかがですか。

友禅関連を中心に伝統産業分野でも大きな影響があります。友禅の工程に欠かせない蒸し水洗の業種がありますが、ある蒸し工場では燃料費が月に200万円ほどだったのが、今や倍増しています。利益が完全に食われ、まさに悲鳴を上げています。他にも黒染めの工場など、燃料消費の多い業種では廃業の検討を行っている所があると聞いています。

国の制度として、ボイラー燃料の重油から天然ガスへの切り替えに対し、3分の1の補助をする制度がありますが、国はさらに11月14日、中小企業CO2認証補助事業で省エネ設備導入補助金の実施を発表するなど、新たな展開を考えています。大きな自己負担で、転換が困難な企業への支援がもとめられていますが、私どもの「府として支援を」との要望に対し、京都府はこれまで、融資と産業21への相談窓口の設置でこと足りるとの姿勢に固執してきました。転換にかかる費用は、1社あたり数百万円から千数百万円ですから、仮に他の補助金と同様に府市強調で府の負担を6分の1としても、一社あたり数十万円から数百万円規模です。

友禅や西陣の分野における雇用の維持・確保のために、この程度の補助は実施すべきではありませんか。

【知事】

伝統産業の将来を支える人材の育成につきましては、技術の教育を充実するとともに、若い人材が業界で存分に活躍できるよう「人づくり」「仕事づくり」を同時に進める事が必要である。

私は意外だったが、原田議員は良くご存知のように、京都府では全国で唯一の学校形式の後継者育成機関である京都伝統工芸専門学校の設立や、府立陶工高等技術専門校の設置運営を行っているところであり、金沢の例を引かれなくても、我々ちゃんとやっている。よくご存知だと思う。

その上で私どもは、匠の公共事業という形で、職人さんの仕事作り、さらには色々な形での交流作り、新しいライフスタイルの事業など伝統産業の補助に一生懸命取り組んでいる。さらにそれを充実させるために、9月議会におきまして共産党も賛成頂いた「京都府伝統と文化のものづくり産業振興条例」を制定したわけで、業界まかせという指摘は、全くの的はずれであると指摘させて頂きたい。今後とも、私どもしっかりと伝統産業の振興に取り組んでいきたい。

次に原油高騰については、友禅と和装伝統産業では、特に影響が大きいので、私自身が国に対し緊急要望を行い、厳しい実状を訴えた結果、原油の高騰により利益が減少している中小企業も、セーフティネットの保証の対象となった。これにより、私どものあんしん借換融資のような制度融資、これも適用となる。

また、受注取引きの関係については、和装染色業界では受発注者が共に中小零細業者なので、原油高騰のコストアップを商品価格に転嫁することがなかなか難しい現状であり、それだけに、業界と私どもが連携を深めて、しっかりと理解の中で強化をはかっていくことが必要である。

重油からガスへのエネルギー転換については、設備工事に対す補助制度について、国に要望をしているが、その中で私どもは、融資制度が非常に大きな役割を果たすのではないかとの観点から、現在その活用と周知に努めている。

全体として、匠の公共事業により、仕事おこしを通じて業界の発展、更には需要拡大、新商品開発の取り組みの支援も補助でやっているが、こういう全体を通じて、伝統産業の振興に努めて参りたいと思います。

【原田】

答弁をいただいたが、知事の答弁の方が的はずれではないか。今、中小企業の所で、若手後継者の育成を本当に業界でできるのか、そのことが問われている時、とてもじゃないが、今、若手を雇えないというのが実態で、この時こそ、行政がどう支援をするのか、このことを求めているのであります。

また、今、伝統産業の振興問題で、府は匠の公共事業と言われたが、予算は4億から2億2千万円に減ったではないですか。国の予算が減ったとしても本当にその事が必要であれば、もっと強化すべき問題であると思います。

原油価格高騰の関係で、下請企業振興法の積極的な活用は、これは、個人企業であろうと、それは関係なく、その法律の範囲に入っている、これは法に示されていることであり、法の通り厳格に執行し、ただ、同じ中小企業同士の中での調整ということでは、行政がその中でどう指示、支援を行っていくのかが問われている問題であり、当初から「行わない」ではなく、その事をしっかりと据えながら京都府としての行政指導をお願いしたい。

更に、エネルギーの問題でも京都の伝統産業に対し、これも冷たい答弁でした。

本当に今、商売を続けるかどうか、融資を受けても返すメドがあるのか、先ほどの友禅の実態の数字等も含めその事が明らかになっているにもかかわらず、結果としては京都府の施策を融資のみに逃れようとしている。これは、国でもこのような新しい施策を緊急に提起している中で、京都府としてのあり方が問われているのであります。その点含め、今、私たちの暮らしとの関わりで、京都府がどの様な支援をするが問われています。

例えば、1社に対し数十万円から数百万円の補助金となりますが、京都府内の雇用確保の観点から言えば、企業誘致1社に最高20億円の補助を出す。読売で1億5千万円の補助を出したが、雇用は11人、村田製作所では約1億円で雇用はゼロです。企業の府域からの流出を防ぐためという理由までつけておられるのですから、例えば、先に紹介した蒸し水洗業者は、50人以上の従業員を雇っています。この雇用を守る上でも、企業誘致補助金と比較しても、支援は当然のものではありませんか。再度ご答弁を願います。

【知事】

伝統産業の中小企業については、私ども精一杯の努力をしてやっている。例えば、共産党はこの前までは、国からの補助金は、商工の補助でないと主張しておきながら、私どもが、一生懸命それがなくなったときに、それを補うために精一杯やったときには、国からの補助金があったではないかとおっしゃる。私は、もう少し一貫した主張をされたらよいと思う。それぞれのことに、そういうものを言っているのは、私はおかしいと思っておりまして、全体として私どもが厳しい財政状況の中で中小企業に対し、精一杯力を尽くしている。

あんしん借換融資につきましても、融資とはいうけれど、私どもは信用保証の関係でしっかりと債務を請け負っている訳だ。その中で、何億円もの融資の債務補償についてもお金を出している訳であり、一つひとつの事をしっかりととらえて発言を頂きたいし、私はそういう中でこれからも伝統産業を営んでおられる中小企業に対しては、精一杯の支援を府としても行っていきたい。

なお、下請中小企業振興については、その任にある国に対し、適切な取り組みを求めており、業界自身が零細だから私も懇談会を催してしっかりとその中で調整がはかられるよう努力している。

【原田】

知事の答弁は、まさに私たちの質問に的はずれな話しだ。私は、国の補助金はあったといことは言っているけれども、府がその事をさらにがんばってほしいということを言ったのに、国のことをこういう形ですり替えるのは大きな問題だ。

雇用確保は、大企業のみだけでなく、伝統産業関連も雇用の大きな受け手であり、位置づけ、認識を改めて、新たな施策を強く要望し、次の質問に移る。

 

教育問題について

「府立高校改革計画」の全面的な見直しを

【原田】

府立高校の改革についてですが、この八月末に、来年度の公立高校の募集要項が発表されました。その特徴と影響は、一つには、募集定員で中学卒業予定者減少数135人を上回る145人を削減するもので、公立高校に入れない生徒を大量に生み出す不安が広がっていること、二つには、学科の編成で4校に計5学級の理数系専門学科を設置し、府内全域から志願者を集める難関校づくりによる優秀な生徒の争奪競争に拍車をかけること、三つには、山城通学圏で導入された普通科の「特色選抜」を、新たに口丹・中丹・丹後通学圏にも導入し、この三つの通学圏であれば、どこでも出願可能とする選抜制度が、広大な通学範囲を生み出すことになることなどです。

 私の地元の中京区では、今春の受験に失敗し定時制に通学している子がいます。この家庭は母子家庭で、私学との併願は最初からあきらめていました。府立高校の改革によって、中学校卒業段階で挫折を味わい、高校生活を送らざるを得ない子どもたちが増えているのではないでしょうか。

 今春の京都市通学圏四つの一般受験者数合計は5869人、不合格者数は474人で、受験者数の約8%です。ところが、京都市北区、上京区、中京区、右京区を範囲とする北通学圏の不合格者数は、受験者比率で13%を超え、京都市通学圏全体の半数を超える243人、51.3%にものぼっています。

そこでお伺いします。なぜ、北通学圏だけに大量の不合格者が出るのですか。京都府・市教育委員会は「高校改革」競争をする前に、卒業予定者減少分を上回る募集定員削減という公立高校の募集要項を見直し、全日制普通科の定員を増やすべきではないのですか、お答えください。

さて、北通学圏には8つの高校があり、その中には、嵯峨野「京都こすもす」、堀川「探求学科群」、西京「エンタープライジング」など、鳴り物入りで募集している「新しいタイプの専門学科」、事実上の「受験専門学科」を擁する高校が集中しています。これらの学科は府内全域から志願でき、その結果、全校生徒の内、嵯峨野高校で75.0%、堀川高校で61.8%、西京高校で80.2%が北通学圏外の生徒で占められています。しかも、これらの「専門学科」には、教職員の加配、施設・設備面の拡充など、他の高校にはない特別の措置がとられています。このように、府教育委員会がトップダウンですすめる新たな「高校改革」は、多様なニーズを口実にした「特色づくり」と「受験専門学科」で、学校の序列化と受験競争の低年齢化を招き、子どもたちの中にも「勝ち組」「負け組」をつくりだすものでしかありません。

そこでお伺いします。子どもたちの中にいっそうの競争を持ち込む「通学圏の拡大」や「入試制度の多様化」を府内全域に広げることはやめるべきです。今、求められているのは、希望する子どもたちに豊かな高校教育を保障することです。山田知事の「経営の視点」にもとづく、城南高校と南八幡高校をつぶす統廃合計画を直ちに止め、地域の子どもたちが通う普通科こそ拡充させ、安心して地元の高校で学べるようにするべきです。また、30人学級実現など教育の条件の整備に力を尽くし、すべての子どもたちの教育環境の向上をはかるべきです。そのためにも、「府立高校改革計画」の全面的な見直しを行なうべきだと考えますがいかがですか、お答えください。

【教育長】

公立高校の募集定員については、中学校卒業定数の動向や志望状況等をふまえ、公立と私立との強調により、進学率の維持向上を目指す観点から策定している。中学校卒業予定者に対する募集定員の比率については年々高めてきているところであり、京都市北通学圏の全日制普通化についても、近年、大幅な改善をはかってきた。全日制普通化の不合格者数は、その年の志願者数や生徒の志望動向等により変動するが、平成17年度の京都市域全体の不合格者数は、前年と比べ4割の減少で、北通学圏でも大きく減少している。

府立高校の改革についてですが、府立高校改革推進計画では、社会の急激な変化や生徒の個性化多様化に対応し、生徒一人ひとりの能力や個性を最大限伸ばすための教育環境を整えるため策定したもの。そのため、それぞれの府立高校では、創意工夫を生かした特色ある教育活動を展開しているところであり、府立高校全体として、多様性のある豊かな高校教育を準備するとともに、生徒が希望する学校学科を広く選択するようにするもの。

山城地域における高校の再編整備についても、公立中学定数が、ピーク時に比べ約半数に減少する中、生徒が学習活動や文化スポーツ活動に、それぞれの適正を十分発揮できるよう、再変更でのより質の高い教育条件の整備に向け、現在、取り組みを進めており、引き続き、府立高校改革推進計画を着実に実施していきたい。

【原田】

教育長の答弁は、1類普通化の定数は北通学圏だけが、特別ではないとの答弁だったが、現実に北通学圏の公立高校受験生だけが、高い比率で不合格者を出しています。近年、比率もずっと高い状態にある。このことは事実であり、先ほど紹介した子は中学校の同級生と顔を合わせるのがつらいとはなれたところの定時制高校に通っています。高校に入りたいと思っている15歳の子どもに、このような挫折感を味わわせることが教育なのか。今の府教委の教育改革は、国連でも指摘をされた子どもたちを過度な競争へ、いっそう追いつめるものです。選択の自由を言いながら、子どもたちをふるいにかけ、どの子も等しく教育を受ける教育環境を破壊していくものであり、ひとつの通学圏だけで不合格者の半数を出すような事態をなくすためにも、高校の募集定員の見直しを早急に行うことを強く求めておきます。

【知事】

知事の経営の視点からの高校再編といういい方をされたが、私は、経営改革プランから高校再編は除いている。高校再編については、一番良い高校をつくってもらいたいと、議会の場で答えている。批判は結構だが、うそを言うのは、やめていただきたい。

 

【原田】

知事は、何を思ったのか、私の質問していることと違うことまでお答えいただいた。知事がそれだけ必死になるというのは、たぶん痛いところを突かれたのか。また、そういう点で、私をうそつきよばわりされるような覚えがありませんので、その点は指摘しておきたい。1月の記者会見の内容を、私は把握して、そのような発言をさせていただいた。

【知事】

私は、別にむきになっていっているのではなくて、議会できちんと質問されて、経営の視点ではないと申し上げてきているのに、記者会見が議会の発言より重要視されるというのは、議員としてはいかがなものか。私は、経営改革プランからも、しっかりと高校再編を除き、わざわざ経営の視点ではなく、高校の再編にあたっては、一番良い教育を行うよう申し上げておく。

 

給与プログラム問題について

【原田】

次に、先日知事が「府民サービスを守るための経営改革プラン」として発表された「給与費」と「公債費プログラム」についてお伺いします。

いま、小泉内閣は盛んに「小さな政府」をいい、高級官僚の退職金二重取りなどを利用して、福祉分野などで住民のために必死になって働いている公務員をバッシングし、国家公務員の大幅な削減計画をたてるとともに、地方自治体に対しても、総務省が作成した「新行革指針」に基づいて地方公務員の削減計画をもつことや、指定管理者制度や独立法人化など、アウトソーシングによる大幅な人員削減を求めています。しかし、日本の公務員の数は、人口1000人あたりでは35人ですが、フランスは約3倍の96人、アメリカは80人、イギリスは73人と2倍以上です。このうえ、さらに国だけでなく地方自治体に対し、大幅な人員削減を求めるというのは、地方財政削減を推し進めるため、自治体の本来の業務や住民サービスすら切り捨てさせようとするものです。

すでに山田知事も、この総務省の方針に従って、「経営改革プラン」を作成、さらに今回具体化のためのプログラムを発表されたものです。

まず、「給与費プログラム」について伺います。このプログラムでは、来年度から5年間で1500人の職員を削減するとしていますが、先に「削減目標ありき」で、直接の住民サービスを切り捨てることになってはなりません。職員配置はあくまでも、住民の要求と自治体の本来の役割にもとづき、関係住民の意見や要望、職員の意見をもとに、すすめるべきものです。今回のプログラムが「府民サービスを守るため」とされているのですから、住民サービスに結びつく職員の削減は行わないことを求めるものですが、いかがですか。

また、財政問題、経営の視点で、府立大学や府立医大、病院などの独立法人化をすすめるべきではありません。あくまでも、ひとつひとつの施設の設置目的と公的役割のあり方にもとづいて検討すべきものです。こうした立場を堅持されることを求めますがいかがですか。

次に、職員の給与についてです。今回「全国初の人件費総額キャップ制度を導入」とされていますが、これには重大な問題があります。

本来、職員の給与は、職員が安心して職務に専念できるようその生活を保障するものでなければなりません。そしてその決定については、府人事委員会の勧告にもとづいて、労使交渉を行い、議会に諮って決めることとなっています。ところがこの総額キャップ方式でいけば、人事委員会勧告が設定を上回る勧告をした場合、知事は「勧告に従わない」か、それともいっそうの人員削減で対応するということになります。また、災害等で予測を超えて超勤が増えた場合、超勤手当てを払わないか、この総額キャップははずすのかという問題が生じます。

また、今日の公務員給与の相次ぐ引き下げは、民間労働者と公務員労働者を対立させ、日本の労働者全体の賃金を更に引き下げようとするものです。こうしたやり方は、国民の暮らしを一層深刻にし、日本経済をもダメにするものであることを、厳しく指摘しておきます。

職員の賃金や労働条件は、職員団体との間で十分な協議を行い、職員が安心して府民のために働くことができるよう労働条件を確保されるよう強く求めておきます。

【知事】

給与費プログラムについては、府民からお預した税金を最大限有効に活用し、真に必要な府民サービスに役立つようにという視点から策定したもの。すなわち、福祉や介護、医療等、今後、増加が見込まれる財政事情に対する財源を、できるかぎり安定的に確保することにより、府民サービスを守り、その向上をはかるため、事務的経費としての公債費や人件費の総額を、できるだけ計画的にコントロールしていこうとするもの。こちらは、共産社会のように計画経済を考えていないので、これは、そのときの時代に応じて、しっかりとPDCAサイクルということをいっている。

職員定数の削減については、プログラムに示している通り、府民サービスが効果的に行えるような視点からの事務のあり方の検討や、人員配置が必要だが、実際には、総務事務の集中処理や電子府庁の推進等、内部管理部門を中心に考えている。

府立の両大学の法人化については、基本的に府民の税金によって、運用されている大学である以上、府民や時代の要請をふまえた教育研究の展開、今後、成果の地域還元が必要であり、それについてもできる限りの透明性の確保と、説明責任が果たせる体制の構築をめざすべきであるという観点から、検討を進めているものである。

公債費プログラムについて

【原田】

次に、「公債費プログラム」について伺います。

この「プログラム」では、府債残高を平成25年度、いまから8年後に「減少に転じさせるよう発行をコントロールする」こと、「公債費と普通建設事業費の実質投資的経費を今年度ベースに抑制する」としています。

しかし知事は、これまでも「実質府債の発行を抑制する」といいながら、5年間で100億円も増やしています。いま、府債残高を本当に減少に転じさせるためには、不要・不急の公共事業をきっぱり中止することです。ところが知事は先の決算特別委員会での和田埠頭建設や畑川ダム建設について「必要だ」と、継続を表明されましたが、改めてお伺いします。

舞鶴港の港湾計画について、バブル経済のもと、右肩上がりの経済予測で、「これから大物流時代が来る」と過大な取扱貨物量を前提に、計画を作ったことは明らかではないですか。畑川ダムについても、人口は増えるもの、企業もどんどんと進出してくると計画されたものではありませんか。知事は、こうした右肩上がりの経済予測のもとで作った計画が、いまも正しいとされているのですか。見直しの必要性をいっさい認められないのですか。お伺いします。

【知事】

(府債について)先ほど増えているといわれたが、災害の起債や臨時対策債の問題もありますから、そこらへんをしっかりと分析した上で、質問いただきたい。公債費プログラムは、新規の府債発行額を計画的にコントロールするために、投資的経費の全体についてコントロールすることにより、安定的な公共投資の確保をはかろうというもの。そうした全体像を確立するためにも、公共事業については、すでに私は、全面的な見直しを行ってきた。これからも積極的な見直しは行うつもりだ。これまでに南丹ダム等の中止、丹後エコパークの大幅な見直し等行ってきた。例えば、畑川ダムのように、水というのは府民の命にかかわるもの。地元が必死になって命の水をくださいということをいっているときに、どうして原田議員は、責任をもって水が必要ないといえるのか。この声をどう反映されるのか、疑問に思う。地元の意見をしっかりふまえながら、府政を進めていくことが、現地現場主義である。今後よりいっそう、整備箇所の重点化を徹底するとともに、施工マネジメント実施等により効果的な整備の推進をはかっていきたい。

【原田】

今回のプログラムによる職員の削減は「府民サービスに直接結びつかない部門を中心におこなう」としていますが、この2年間の380人の職員削減は、府民の命と健康を守る洛東病院の廃止や振興局等の統廃合によるもので、土木事務所の再編が昨年の台風被害対策での初動体制の遅れや保健所が遠くなり、住民にとって不便が生じているように、住民の福祉の増進や地域を守る自治体本来の役割を放棄し、住民サービスを低下させるものとなっています。府民サービス低下の削減は許されないことを指摘しておきます。

また、舞鶴港・和田ふ頭建設についても、畑川ダム建設についても、知事はいま「必要」だと、理由がわからないといわれました。しかし、和田ふ頭は、5万トン級のコンテナ船がコンテナをいっぱい積んだ場合を想定した計画で、水深14メートルものバースを作るものです。

そのもとになる舞鶴港の港湾計画は、今年度の貨物量を1940万トンと見込んでいますが、昨年度の貨物量は外国貿易で221万トン、国内貿易で613万トン、合計834万トンで、計画貨物量の半分以下です。しかも、その内容は、昨年から稼働した舞鶴石炭火電の石炭160万トンが伸びたというものです。

また、畑川ダムについても、建設の根拠となっている人口予測は22,500人。これに対し、現在の人口は14,400人。将来の人口予測は、国立社会保障・人口問題研究所によると、2015年で旧丹波町、旧瑞穂町をあわせても合計12,200名です。知事は、いつまでバブル時代に立てた過大な事業計画に固執して、税金のムダづかいを続けるのですか。実情に応じた見直しをされるのは当然ではないですか。こうしたことさえできないのでは、府民は納得できません。そのことを強く指摘しておきたい。

【知事】

私は、福田川ダムについて共産党も賛成されてやられたものについては、廃止をしているわけです。常に地元としっかり話し合い、直すものは直してきている。今の主張は、あてはまらない。なによりも、今まで水に悩み、水がないために本当に苦しんできた丹波峠の皆さんにとって、この悲願というものについて私は、よく地元とも話し合って判断したことをお伝えしたい。

 

憲法問題について

知事は、憲法九条を守る明確な立場に立つべき

【原田】

最後に憲法問題についてお伺いします。

この間、自民党と民主党が相次いで改憲の「草案」や「提言」を発表しました。どちらの党も、憲法の持つ平和原則を公然と投げ捨てる重大なものであり、自衛隊が海外で武力行使できるようにしようとするものです。自民党の新憲法草案は、憲法前文から「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起ることのないようにする」という言葉を、また、9条2項を完全に削除し、代わって「自衛軍を保持する」と明記しています。民主党の前原新代表も、記者会見で、「憲法改正は必要だ。その中には9条も含まれている。私の従来の意見は、9条第2項を削除して自衛権を明記するものだ」と述べています。

9条2項を変えて、自衛隊を軍隊と明記することは、これまで自衛隊が戦力ではないためできなかった海外での武力行使や、集団自衛権の発動、武力を伴う国連軍への参加を可能にするためです。先日、陸上自衛隊の部隊が、米陸軍第一軍団の基地で市街戦訓練を行った生々しい様子が民放テレビで報道されました。共同訓練を行ったこのアメリカの部隊は、イラクで罪のない民間人を多数殺害している殴り込み部隊であり、この姿が改憲の行き着く先を示しています。

しかし、こうした動きは、世界の大きな流れから見ると、まったく異常なものです。いま世界では、憲法九条が「戦争のない平和な国際秩序」を作っていく上での指針となっており、とりわけ東アジアでの平和と安定の秩序を作る上で大きな評価を与えられています。

 今年七月、世界118か国のNGO諸団体が参加した国際会議の「世界行動宣言」は、「日本国憲法第九条は、…アジア・太平洋地域全体の集団的安全保障の土台となってきた」と高く評価し、これに先立って採択された「東北アジア地域行動宣言」では「九条の原則は、普遍的価値を有するものと認知されるべきであって、東北アジアの平和の基盤として活用されるべき」とうたっています。

アメリカでも、9条の世界的な意義を評価する動きがすすんでいます。帰還兵四千名が参加する「平和のための退役軍人会」が、昨年大会を開き、「日本の憲法九条が危機にひんしている」ことを心配して、特別決議を採択しました。この決議には、憲法九条にたいし、これはいまの世界で、「戦争のルール」を「法のルール」におきかえる「地球上での生きた模範」であるとの高い評価を行っています。

 憲法九条はまさに「戦争のない世界」への先駆けとなろうとしているのです。知事は、こうした憲法九条を守るという立場になぜ立たれないのですか。明確にお答え下さい。

【知事】

これまでどおり、私は、憲法9条に示されている戦争放棄の理念を堅持し、平和主義を今後も維持する基本的な考えには、変わりない。ただ、原田議員は自衛権自身については、どういう意見をおもちなのか全く述べられないが、私は、自衛権については、今の政府解釈と基本的には同じ考えだ。その意味で、これからまさに各国の人々が国境を越えて協調し、世界平和と人類の共存、未来を守ろうとする憲法精神をふまえて、この問題を議論していただくことが大切であると申し上げている。

【原田】

知事は、私の質問にまともに答えられていない。非常に残念ですが、しかし、今、憲法の問題、とくにこの二項を守るべき、この流れが非常に大切であり、先ほども紹介した憲法九条を「戦争のない世界」への先駆け、規範にしようというアジア・世界の大きな流れと、これに逆行する流れがある。知事はいったいどの立場に立たれるのか。自民党や民主党など、憲法9条2項の改憲を公然とのべる歴史の逆流が生まれている中で、知事はどういう立場なのかということが問われているのです。平和を守るため、9条の道しかない。このことをしっかりと指摘しておきたい。

 最後に、私の質問に知事は、府民への冷たい答弁に終始しておられます。府民のくらしや中小企業、商店街など、京都の経済の厳しい実態を指摘してきましたが、知事は実態から目をそらし、府民のくらしに心を寄せない府政運営が明らかになりました。私は、府民のくらしに冷たい府政でなく、京都府民のくらしを守り、京都経済を発展させる民主府政の実現をめざして、奮闘することを表明して質問を終わります。ご清聴ありがとうございました。