議案についての討論
島田敬子(日本共産党 右京区) 2005年12月16日
日本共産党の島田敬子です。私は、日本共産党府会議員団を代表し、ただいま議案となっています議案36件について、9月定例会提出の決算認定議案であります第23号議案、第25号議案、12月定例会提出の第8号議案「京都府個人情報保護条例一部改正の件」に反対し、他の33件に賛成の立場で討論を行います。
まず、今定例会提出議案についてです。
第1号議案平成17年度一般会計補正予算についてですが、子ども発達支援センターの待機者解消のために、外来診療体制の拡充をされたことは評価します。私も長らく要望してきましたので大きな喜びです。この施設に指定管理者制度が導入される予定ですが、本来、子どもたちの発達支援のために本府が全面的に責任を持つべきものです。更なる機能強化のために必要な財政の確保を強く要望するものです。
次に、第5号議案、京都府地球温暖化対策条例制定の件です。
ポスト京都議定書について国際的な議論が始まり、より本格的な温室効果ガスの削減にむけ、人類の英知を結集した取り組みが求められていることは言うまでもありません。本条例の成立はまさに温暖化対策の第一歩であり、条例がかかげた2010年までに温室効果ガスの90年比10%削減目標を達成するため、本府が今後いっそう実効ある措置をとることが求められています。
条例には、企業の社会的責任を果たさせる立場から我が党もこれまで求めてきた事業者の取り組みや自動車・運輸部門対策、自然エネルギーの普及等が一定盛り込まれました。今後は、温暖化対策推進計画に、部門別の施策積み上げ方式による実効ある削減計画をもつこと、産業部門や自動車総量規制など運輸部門の取り組みの促進など、本府が大いに役割を発揮して取り組みをすすめることが必要です。
さらに、府域全体で実効ある取り組みを進めるため、地球温暖化防止活動推進センターの役割が重要であり、振興局ごとの分室設置や市町村支援など、その体制強化を求めるものです。
また、知事が「ダブルスタンダードにならないように」と述べてこられた関係からも、京都市との協議を継続的に行い、整合性ある施策展開と府民への理解を促進するよう求めるものです。
なお、温室効果ガスの削減の目標達成に逆行する関西電力舞鶴石炭火力発電所二号機の建設について、我が党が中止を求めたことに対し、知事は背を向けられましたが、京都議定書発効の地の知事の姿勢として重大であると指摘しておきます。
次に、第6号議案「食の安心・安全条例制定の件」について、賛成するものですが、この条例が「安全で安心できる食料を」と願う多くの府民の期待に応えるものとするためには、本府の体制の強化が求められます。これまでの「プロジェクトチーム」と言う臨時的対応でなく、担当部署を設置し、専任の食品安全監視員配置など体制の抜本的強化を求めるものです。あわせて食品安全衛生法にもとづく業務は、京都市内は政令市である京都市が行っていることから京都市との協力体制がかかせません。この体制づくりもあわせて求めておきます。
次に、第8号議案、個人情報保護条例の一部改正の件についてです。
改正案は京都府個人情報保護条例の実施機関に公安委員会と警察本部長を加え、個人情報の取扱いについて適正な保護義務を課することを目的とするものですが、実際にはそうなっておりません。
審議の中で明らかにしたとおり、実施機関が収集する情報については第4条3項で「思想、信条及び信教に関する個人情報、個人の特質を規定する身体に関する個人情報並びに社会的差別の原因となる恐れのある個人情報を収集してはならない」と厳しく制限されています。ところが、警察が、「犯罪の予防、鎮圧及び捜査、被疑者の逮捕、交通の取り締そのた公共の安全と秩序の維持」、すなわち警察法第2条1項に定める警察活動全般にわたる活動のためには「その限りでない」との例外規定によって収集が可能とされ、さらに、目的外利用、オンラインの結合まで可能とされているのであります。これは思想信条の自由、信仰の自由などの基本的人権を侵害する憲法違反の恐れの強いものであり、到底認められるものではありません。
また、第2章第1節から5章にわたって、個人情報の取扱い、事務の登録、開示請求権、訂正請求権、利用停止請求権などの保護規定が盛り込まれていますが、これらについても、警察活動に支障があると判断すれば、同じ例外規定によって「その限りでない」とされ、保護請求は拒否されてしまうのであります。理事者から「今後の運用の中で検討」とか、或いは「慎重な解釈運用」などの答弁がありましたが、例外規定の適用は全て警察の判断です。保護規定が遵守される保障は全くありません。これではいったい何のための改正かといわざるを得ません。改正案は撤回しやり直すべきであり、反対です。
次に、今定例会追加提出議案の第31号議案、京都府知事、副知事及び出納長の給与及び旅費に関する条例等一部改正の件についてですが、現在の府民の暮らしの実態や職員給与の削減という事態からみても、知事給与、退職金の引き下げは当然であり、賛成です。とりわけ、知事の退職金については、4年間勤めて5337万円という全国最高水準であることをみても当然です。ただ、改定後も4300万円を超えるものとなっており、更なる引き下げの検討を求めておきます。
次に、9月定例会提出議案についてです。
まず、23号議案、平成16年度一般会計および、特別会計歳入歳出決算認定に付する件について、反対です。
代表質問でわが党の原田議員が指摘したとおり、小泉「構造改革」により、雇用破壊と不安定雇用労働者の拡大、中小零細企業の倒産・廃業、低所得者層の増大等、府民の暮らしや営業は脅かされ、あらゆる階層で不安が増大しています。こうしたときだからこそ、京都府政が府民の暮らしの痛みに心を寄せ、いのちと暮らしをまもるためにあらゆる手立てをとって府民を応援することが求められました。
反対の第一の理由は、府民の切実な声に応えず、弱者に非常に冷たい姿勢を取り続けられていることです。
乳幼児医療費助成制度をせめて小学校に上がるまで無料にという声は子育て世代の強い願いです。今議会にも、5000名をこえる署名が寄せられましたが、これに背を向け続けています。2年前に助成対象は拡大したものの、国の医療制度改定で、決算では制度改善にくらべて京都府の歳出は4億円も減少しているのになんらの見直しも行っていません。
お年よりからは「年金は下がる一方なのに、国保料や医療費の値上げ、介護保険の負担増で、年よりは死ねと言うことか」と悲痛な声があがっています。私は、医療費の値上げで治療中断をした在宅酸素療法の患者が3人もなくなられた事実をあげ、緊急な対策を求めましたが、府民のいのちが奪われている事態にあっても拒否をする態度は、府民の痛みがわかっていないと言わざるをえません。介護保険料利用料の軽減対策も求められました。いずれも、国へ要望するにとどまり、府独自の対策を拒否したことは重大です。また、年度途中で、市町村にも相談なく、安心子育てテレフォン事業や低所得者への就職助成金を突然廃止し、福祉労働者の特殊健康診断補助金を廃止、研修事業等を縮減しましたが、これも、現在の子育て環境や福祉労働者の労働条件等の悪化など、現場の実態などおかまいなく、財政論を優先した結果に他なりません。厳しく指摘しておきます。
なお、書面審査で、理事者は「福祉医療制度の見直しは必要。検討していくべきだと考える」と答弁されました。知事が、「弱者の視点」「人間中心」を言われるなら、早急な対応を要望します。
反対の第二の理由は、「民間で出来ることは民間で」「経営効率」最優先で、地方自治体の役割を切り捨てていることです。
2004年9月10日、定例記者会見の場で「洛東病院を廃止する」との突然の発表後、3万人にのぼる廃止反対の府民の声を無視して、年度末に病院廃止を強行されました。わずか半年のできごとでした。トップダウンのやり方は前代未聞で、あまりにも異常なやりかたでした。1300人もの通院患者や府内各地域から病院を頼りに入院されていた方々は府内外の病院へ転院を余儀なくされ、必要なリハビリが中断したかたもあります。いまも、不安な毎日を送っていらっしゃる患者さんがあります。やりかたも内容も「弱者切捨て極わまれり」と言わなければなりません。
また、同年5月には、保健所、土木事務所、振興局等の地方機関の再編、統合が行われましたが、台風23号災害での対応の遅れを招くとともに、保健所の統廃合により難病患者や障害者へのサービスが大きく後退させられました。
反対の第三の理由は、このように、府民には「受益と負担」「経営の視点」と、福祉や暮らしをささえる予算を削減する一方で、無駄な事業や、急ぐことのない事業をすすめていることです。舞鶴和田埠頭、畑川ダム、丹後リゾート公園、木津川右岸運動公園、市内高速道路、関空2期工事などを継続した結果、「借金を抑制する」どころか実質負債発行額はこの5年間に100億円も増加しました。
いっぽう、今定例会には、28000人を超える請願署名が寄せられた南部への養護学校の早期建設については、重度の障害児童生徒が長時間のバス通学や過密状態におかれている事態の改善はまったなしなのに、高校の統廃合とリンクさせて5年も6年も先送りにしています。障害のある子どもたちの安全・安心の教育環境の整備を怠っている事は重大であり、厳しく指摘しておきます。
次に、25号議案、京都府水道事業会計決算を認定に付する件について、反対です。府営水道問題で、乙訓2市1町から、受水水量等の弾力化を求める要望が知事に出されています。知事は、「受益と負担の観点で市町の経費節減の努力も必要」と答弁されましたが、現在、2市1町の受水量に対する給水実績は52.4パーセントです。住民は、使ってもいない水の料金を負担させられ、連続的値上げがおしつけられています。過大な水需要予測にもとづく施設の建設と責任水量制の押し付けが住民負担を大きくしています。「いのちの水」です。赤字をすべて、市町村、府民におしつけるのでなく、一般会計からの繰り出しをふくめ検討するよう強く求めます。
この際、府政運営について、一言申し上げます。
姉歯元建築士による耐震構造偽装事件で、京都北部の二つのホテルで耐震強度偽装が明らかになりました。11月22日には「再点検した、構造計算書の改ざんはなく、耐震性に問題がないことを確認」と発表し、委員会審議では、わが党議員が「現場調査等をやるべきだ」と求めたのに対しても「必要ありません」と言いのけました。ところが、12月2日には、「改ざんがあった。耐震基準を満たしていない恐れ」と一転させました。
また、加茂町ゴルフ場へのフェロシルト埋設事件では、岐阜・三重両県ですでに「土壌調査した結果、六価クロムが含まれている」との結果が出ていたのにもかかわらず、本府は「業者が調査したところ、含まれていない。安全だ」と業者の検査結果を鵜呑みにして、独自調査を半年近くも行わないまま、安全宣言。ところがこれも、12月2日には、「基準の36倍の六価クロムが検出された」と発表しました。これには、加茂町助役も「府が偽装を当初見抜けなかった点について『危険がある』と地元から声があがれば、検査機能を持つ都道府県は業者報告を鵜呑みにせず、直接調査に乗り出す必要があるのではないか」と厳しく指摘されています。今後、事件の全容解明とフェロシルトの早期完全撤去、周辺環境の安全確保のために全力をあげることを強く求めるものです。
これらの問題は、知事のいう「安全・安心」が府民の目線からいかにかけ離れたものであるか、また「現地・現場主義」がいかに空虚かを如実に示しており、住民の安全を守るべき京都府の姿勢が根本から問われる問題であります。
本日の京都新聞の凡語欄で「府民の安全、安心を脅かす危機を見通せず、見抜けず、見逃したのでは、何の行政と言えようか」とのきびしい批判の声がだされていますが、こうした指摘を真摯に受け止め、抜本的な反省と改善を強く求めるものです。
最後に、本日の本会議を利用した山田知事の事実上の再出馬表明は、まったく道理がなく、議会を私物化するもので許すわけにはいきません。知事が「府政運営の基本姿勢について発言したい」というなら、本議会の冒頭の議案提案説明の際にも、各議員への答弁の際にも、その機会は十分ありました。それをせず、本日の閉会本会議で行わなければならない理由は全くありません。これまでの林田知事や荒巻知事のときにも前例のないことです。
また、知事からこうした申し出が行われていることを知ったわが党議員団が麻生副知事に対し、前例もなく、議会運営上道理もないことからこうした申し出は行わないよう申し入れたに関わらず、これを強行したものです。
しかもこうした知事の道理のない要求に対し、わが党が繰り返し指摘し、反対したに関わらず、数の多数をたのんでこれを強行し、それを認めた与党会派ならびに議長の議会運営は、府議会史上に極めて大きな汚点を残すもので、厳しく抗議するものです。 こうした不正常な運営を議会に求めた山田知事は、知事としての資格に欠けるといわざるをえません。このことを強く指摘しておきます。日本共産党は、多くの府民の皆さんと力をあわせ、府民が主人公、府民の暮らしを守る府政の実現へ、全力をあげる決意を述べ、討論を終わります。