京都府議会12月定例会を終えて(談話)
2005年12月20日
日本共産党京都府会議員団
団長 松尾 孝
12月定例会は16日に閉会した。今議会には、04年度決算認定議案5件とともに、補正予算案や「地球温暖化防止条例案」など31件の議案が提案され、わが党議員団は04年度「一般会計及び特別会計」「水道事業会計」の認定と警察による個人情報収集、活用を全面的に容認する「個人情報保護条例一部改正案」に反対し、他の議案には賛成した。
この間、姉歯建築士による耐震強度偽装事件や加茂町・ゴルフ場におけるフェロシルト埋設事件、宇治での児童殺害事件など、府民の安全を脅かす事態が相次いで発生するもとで、わが党議員団は、現地調査や住民の意見聴取など現場の実態をもとに積極的な論戦をおこなった。
同時に、11月29日には府内各地から1000人をこえる府民が直接請願行動や府庁周辺デモをおこなうなど、「暮らし守れ」の運動が大きく広がるもとで、教育費の父母負担軽減や養護学校、学童保育問題、農業を守る問題など府民の多様な要求実現へ奮闘した。
1、小泉自公政権がすすめる、大企業の利潤追求を最優先にした、規制緩和、市場原理万能の新自由主義にもとづく経済政策が貧困と格差を拡大している。京都でも生活保護世帯が97年から1万世帯も増え3万2千世帯に、教育扶助・就学援助児童が5年間に1・5倍、7人に1人となっていることなど深刻な事態を招いていること、「民主府政の会」が実施したアンケートが3万通をこえ、「助けてください」など悲痛な府民の声が寄せられていることを紹介し、「こうした事態を招いている小泉構造改革をよしとするのか」とただしたが、知事は「民間活力を利用してわが国の活力を取り戻そうという流れに同感だ」と「弱肉強食」の社会づくりに賛成の立場を表明した。これは多くの府民の暮らしの痛みに心を寄せようとしない知事の姿勢を端的に示すものである。
また、介護保険改悪による負担増で介護が受けられなくなっている高齢者への減免制度について府として実施することを拒否、医療制度改悪にも「反対しても解決しない」、「給付と負担のバランスを考え、将来にわたって安定した制度を構築すべき」と負担増を当然視し、在宅酸素療法の中断で3人の患者が命を失っているにかかわらず府の助成制度の拡充を拒否し続けた。
子どもの医療費の助成拡充を求める請願が5000人をこえて提出されたが、与党会派がこれを不採択とするとともに、知事も「全国的にトップレベルの水準。評価をしてほしい」と「就学前まで無料に」との多くの願いを拒否した。
山田知事は「府民目線で」「人・間中心」と繰り返し発言しているが、これが「府民の目線」といかにかけはなれ、「国と官僚の目線」でしか見ていないことを端的に示すものである。
また、知事は11月28日「府民サービスを守るための経営改革プラン」として「給与費」と「公債費」プログラムを発表した。「給与費プログラム」では、今後5年間で8387人の職員中1500人の削減をおこなうとしている。職員の知恵と力を結集し、スリムで効率的な行政体制をつくることは当然である。しかし、山田知事がこの間すすめてきたのは、振興局や土木事務所、保健所等の統廃合や洛東病院の廃止による人員削減である。その結果、災害対応ができず、府民サービスが打ち切られるなど、住民に負担と犠牲を押し付けるものであった。わが党議員団は、自治体本来の役割である福祉や医療など住民サービスの切り捨てを許さないため引き続き奮闘するものである。
また、「公債費プログラム」で「府債発行残高を減少させる」としているが、府債の多くを占める和田埠頭や畑川ダム、丹後リゾート公園、木津川右岸運動公園建設や関空2期工事、京都市内高速道路への出資金をきっぱり中止することこそ求められる。こうした大型公共事業を継続しながら、実質投資額(公債費+普通建設費)を抑制しようとすれば、府民の生活に密着した公共事業が抑制されることとなる。
わが党議員団は、「府民の暮らし応援第一」とした行政体制の確立と税金の使い方となるよう全力をつくすものである。
2、規制緩和・市場原理万能路線のもとで発生したのが、耐震強度偽装事件である。京都でも2つのホテル建設に姉歯建築設計事務所が関与していることが明らかとなったが、府は11月22日「再点検したところ、構造計算書の改ざんはなく、耐震性に問題ないことを確認した」と発表、24日に開かれた建設常任委員会でもわが党議員の「現場調査を含め、検証すべきだ」との要求に「その必要はない。安全」としていたのである。ところが12月2日「再調査結果について」では「2物件とも改ざんを確認した」とし、ホテルの営業を自粛させ、現場調査を実施せざるを得なくなった。
また、加茂町・ゴルフ場における石原産業のフェロシルト埋設事件でも、6月に三重県などで環境基準を超える発がん性物質六価クロムが検出されているにかかわらず、府は加茂町・ゴルフ場は「6月に石原産業が調査した土壌からは基準値以上の六価クロムは検出されていない。安全」と発表。しかし、10月に事業者が「六価クロムが含まれているおそれがある」と発表したことを受けて、11月下旬に府が土壌調査をおこなったところ基準値の36倍の六価クロムが検出された。このときにも「覆土されており、水質検査は問題なし」と発表。わが党議員団は、現場調査をもとに、ゴルフ場のコース外は覆土されておらず、赤茶けた水が流れ出していることを本会議質問で追及したところ、「フェロシルトが露出しているところがある」と周辺土壌や水質の再調査を行わざるを得なくなった。しかも、さきの石原産業による土壌調査結果はデーターの改ざん・虚偽であったことが明らかとなった。
地元・加茂町助役は「『危険がある』と地元が声をあげれば、業者報告を鵜呑みにせず、府が直接調査に乗り出す必要があるのではないか」と厳しい批判の声をあげたが当然である。
この二つの事件は、山田知事が「安心・安全」「現地・現場主義」をいくら口にしても、その実態がかけ離れており、府民の「安心・安全」がないがしろにされていることを示している。しかも、フェロシルトについては「上場企業だったため信用していた」と住民の安全を守るべき京都府が、企業の立場にたった対応しかしていないことを示すものである。 マスコミも「『見抜けませんでした』ではすまないのだ。府民の安心、安全を脅かす危機を見通せず、見抜けず、見逃したでは、なんの行政といえようか」(京都12/16)と厳しい批判の声をあげている。
こうした「安全対策」のお粗末さは、子どもたちの「安全」にも及んでいる。調査の結果、府立高校でアスベスト浮遊率が通常の0・2〜0・6/ℓに比べ、9・6/ℓ、7・6/ℓと高い数値が示されたり、建材の含有率が高い建物があることなど明らかになったが、府教委は、ほとんどの学校で「使用禁止措置」をとっていない。すでに、城陽の小学校では含有率1%で、府立看護学校では浮遊率2/ℓ以下でも「子どもの安全第一」の立場から「使用禁止措置」をとっていることから見れば、府教委の対応はきわめて無責任といわなければならない。
「曝露のおそれ」が確認された施設はもちろん、アスベストの使用が確認され、浮遊率が通常に比べ多い施設については早急な対策が求められる。また、これまでに被曝した可能性のある教職員や児童に対する健康診断をただちに実施すべきである。未来を担う生徒の学ぶ学校において、その安全のため万全を尽くすことは当然であり、わが党議員団は、引き続き奮闘するものである。
3、また、広島、栃木に続き宇治で発生した小学6年の女児殺害事件は、府民に大きな衝撃を与えた。わが党議員団は、子どもたちへのケアの重視と安全確保のため万全をつくすことを求めた。
わが党議員団は、子どもたちが犠牲になる痛ましい事件を繰り返さないため、@いま地域ではじまっている高齢者も参加した「見まわり隊」など、地域ぐるみの活動を発展させ、A国・自治体が、この地域ぐるみの運動を支援し、通学路や公園の安全確保、学校や学童保育などの教職員の増員、「安全担当職員」の配置など子どもの安全を第一とした施策に取り組むこと、Bそして、子どもや高齢者など弱い立場の人たちを攻撃するような社会の病理現象を克服し、子どもたちの健やかな成長を保障する社会をつくるための国民的対話と運動を広げるため全力をつくすものである。
4、04年度決算は山田府政が「経営戦略」「経営の視点」で、福祉や医療、教育は切り捨てながら、ムダな公共事業は継続する府政であることを示すものであった。
04年度には1300人の患者を切り捨てる洛東病院の廃止を強行、さらには安心子育てテレホン事業の中止、低所得者への就職助成金の廃止、福祉労働者の健康診断補助金や研修事業の廃止、縮小などおこなった。
また、多くの府民や自治体関係者の「保健所、土木事務所は残してほしい」との声を無視して強行した振興局等の廃止統合は、台風23号被害での対応の遅れを招き、障害者や難病患者への直接サービスが大きく後退させられた。
このように府民の願いには背を向けながら、不要不急のムダな大型公共事業は継続し、「実質府債を抑制する」との方針にかかわらず、5年間で100億円も発行額を増やしている。
舞鶴和田埠頭は、舞鶴港の貨物取扱量が05年度に1940万トンになると想定して500億円かけて建設しているが、04年度の実績は835万トンと半分にも満たない状況にある。ところが知事は「和田埠頭ができていることが前提の計画。鶏か卵かの問題」とまったく無責任な答弁をおこなった。しかし、理事者も「港湾計画の見直しをおこなう」と答弁せざるを得なかった。また、畑川ダム建設でも、人口が2万2千人となると予測して建設を進めているが、現在人口は1万4千人余と計画時より人口が減少し、今後も減少することが予測されている。こうした事態に背を向け建設を強行しようというのである。
また、府営水道事業も乙訓浄水場が過大な水需要予測により建設され、高い水道料金となり、乙訓2市1町の水道事業は相次ぐ水道料金の値上げにかかわらず、莫大な赤字となっている。こうしたことから関係市町長からも使わない水まで買い取らされる仕組みの見直しを求めて「受水水量等の弾力化について特段の配慮を」と要望が出されている。ところが、知事は「基本水量の見直しを」との要求に背を向け続けている。
5、今議会に公安委員会と警察本部長をも対象とするための「個人情報保護条例一部改正案」が提案された。ところが、条例案は「個人情報保護」どころか「警察活動保護」条例となっており、憲法違反の疑いのあるものである。
その内容は、「思想信条などの個人情報や社会的差別の原因となる恐れのある個人情報を収集してはならない」としながら、警察活動については「その限りでない」としている。これでは警察が府民の思想や信条、信教を調査し、それをオンラインで全国の警察につなぎ、目的外使用してもこれは認められることとなる。また、自分の情報の開示を求め、誤りの訂正を求めるなどの「自己情報コントロール権」も認められず、警察はそうした情報が存在するかどうかも答えなくても良いとされているのである。しかも「個人情報保護審議会」も提言の中で「できる限り限定的に明確にすべき」としているにかかわらず、なんら限定されていないのである。理事者は「憲法違反に当たらない」「個人情報保護条例の目的は果たしている」と述べるだけで、なんら具体的な「保護措置」はふれられず、すべては警察任せとなっていることが浮き彫りになった。
こうした条例改正に、自由法曹団や国民救援会、自治体要求連絡会などからも、撤回を求める意見が強く出され、宣伝などとりくまれたが、今後この条例にもとづく警察の無法な個人情報の収集などを許さないため、引き続き奮闘するものである。
6、今議会には、子ども発達支援センターの待機期間の改善をはかるため、医師・看護士・言語聴覚士を増員する予算が計上された。これは人員不足のため「1年も待たされる」事態が生じていた問題の解決を関係者やわが党議員団が繰り返し求めてきたものである。
また、「地球温暖化防止条例」と「食の安心・安全条例」の制定が提案された。これらは「地球温暖化防止」や「食の安全」を求めての幅広い府民の運動が実ったものである。
わが党議員団は、条例の制定に賛成するとともに、「地球温暖化防止条例」については、地球温暖化防止活動推進センターの分室を振興局に設置することや京都市と「ダブルスタンダード」となっている問題の解決、いっそうの市町村支援を求めた。同時に、温暖化防止に逆行する舞鶴火電2号炉の建設を容認する知事の姿勢を厳しく批判した。
「食の安心・安全条例」についても、担当部署の設置、専任の食品衛生監視員配置など体制の抜本的強化を求めた。
漁業に大きな被害を与えている大型クラゲ対策についても、現地調査をもとに、発生メカニズムの解明、迅速な情報の提供、損害補償や改良漁網導入への助成制度の実現を決算委員会、12月議会で繰り返し求めた。その結果、府は改良漁網導入への助成を「府単独でもおこなう」と表明した。
7、今議会に、知事等の給与と退職金の引き下げの提案がされた。わが党議員団は、府民の暮らしが深刻な事態にあるもとで、「引き下げは当然である」として賛成した。とりわけ知事の退職金は、これまで全国最高額であり、引き下げ後も4年間で4341万円(10%カットの場合3907万円)と高額で、いっそうの引き下げが求められていると指摘した。
8、今議会には、「乳幼児医療費助成の拡充を求める請願」や11万5000人をこえて「障害のある子どもたちの放課後対策や子育て支援の拡充」、30人以下学級実現など「すべての子どもにゆきとどいた教育」「養護学校の早期建設など」を求める請願、府学生自治会連合から「学生の雇用政策」や「私学助成の抜本的増額」を求める請願など、12件の切実な願いが提出された。ところが与党会派は、「子どもの病気は親が責任を持つもの」(新政会)、「養護学校の寄宿舎は地域と切り離すことになる」(民主党)など、府民の願いに誠実に対処しない態度でこれらの請願をことごとく不採択とした。
わが党議員団は府民の切実な願いに応え「定率減税廃止に反対する意見書」「イラクからの自衛隊の即時撤退を求める意見書」や「乳幼児医療費助成制度の拡充を求める決議」など8意見書・決議案を提案したが、与党会派の反対で否決された。
与党会派は「第二名神高速道路の整備促進に関する意見書」を提出したが、わが党議員団は、政府も「京滋バイパスの完成で代替機能はある。第三の高速道路は必要ない」としており、しかも大津・高槻間だけで1兆2千億円も莫大な工事費がかかるものであることなどを明らかにして反対した。ここには与党会派が、財政難を口実に、住民の切実な願いには背を向けながら大手ゼネコン奉仕のムダづかいは継続しようとしており、民主党もまったく同じであることを示している。
9、12月定例会の閉会本会議の開会が大幅に遅れた。それは山田知事が、本会議場で「再出馬表明を行いたい」と議長に申し入れ、与党会派がこれを礼賛する討論をおこなって、府議会を山田知事の「出陣式」のようにしようとしたためである。
知事の再出馬表明は、あくまでも「一身上の問題」である。だからこそ、林田・荒巻知事も議案提案の際や質問に答えて「再出馬」の表明をおこなってきたし、山田知事もこの12月議会の中でいくらでも機会があった。ところが山田知事は、府議会の場を利用し、自分の再出馬を「演出」するため、わざわざ議長に「発言の許し」を求めたものである。
しかも、議会運営委員会や理事会でなんら議論がされていない段階で、マスコミがこれを報道するという異常な事態もうまれた。
わが党議員団は、こうした「知事の議会私物化は認められない」として、麻生副知事や与党会派に繰り返し、その撤回を求めた。こうした結果、知事の再出馬表明は強行されたが、各会派の特別の討論はやめさせた。道理も、前例もなく、しかも議会の運営に混乱をもたらすことを承知の上でこれを強行した山田知事には知事の資格はない。
知事は「出馬表明」の際、「府民の代表であり、府政運営にあたって両輪であります府議会の議員のみなさんにまずお伝えすべきと思い」と弁明したが、これはまったく身勝手な理屈でしかない。「府政運営の両輪」というなら「議会の私物化」をすべきでなく、ましてや全会派一致の議会運営の原則を踏みにじってまでやるべきでないことは明白である。
山田知事は、本会議の答弁でも1月30日京都新聞紙上で「学校も経営の観点で再編を」と発言しておきながら、これを指摘されると「うそを言わないでほしい」と自らの発言にも責任を負わない態度をとった。ここでも知事の資格が問われている。
山田知事が、こうした道理のない態度をごり押しするのは、わが党議員団の代表質問で明らかにしたとおり、「民主府政の会」のアンケートに3万人を超える府民が回答をよせ、その6割以上の人たちが「いまの府政に不満」と答えていることへの焦りを示すものである。
いよいよ、知事選まであと4ヶ月足らずとなった。わが党議員団は、民主主義のルールも踏みにじり、府民の声に耳を貸さない府政を転換し、「府民が主人公」の「憲法を暮らしに生かす」新しい府政実現へ、広範な府民のみなさんとともに全力をあげるものである。