子どもたちが犠牲となる痛ましい事件をくりかえさせないために
日本共産党京都府会議員団の緊急提言
2005年12月26日
日本共産党京都府会議員団団長 松尾 孝
広島、栃木で下校途中の女児が相次いで殺害され、12月10日には宇治市の塾で小学6年の女児が塾講師によって殺害されるという痛ましい事件が連続して発生しました。いま多くの府民は、「子どもたちをどう守ればいいのか」などかつてない不安にかられるとともに、真剣に立ち向かおうとしています。
こうしたもとで日本共産党府会議員団は、子どもの安全を守るため、地域ぐるみの自発的な活動を呼びかけるとともに、京都府の責任で講じるべき安全対策の基本を提言するものです。
子どもたちの安全を守る地域ぐるみのとりくみを
子どもたちの登下校や日常生活のなかでの安心安全をどうはかるのかが、切実に問われています。府内各地で子どもを守るための自発的な地域ぐるみの活動が広がっています。多くの地域では、登下校時間にあわせて、交通量の多い交差点や人通りの少ない場所に立ち、子どもの安全を確認したり、玄関の掃除や水やりなどの協力をして見守っています。
多くの学校が、通学路の安全の再点検や巡回をおこない、安全教育や防犯ブザーの配布をおこなっています。このように地域ぐるみで子どもを見守る人の輪を大きく広げていく必要があります。
子どもがいない世帯が全体の約半数を占める時代です。子どもの安全確保のために、保護者など学校関係者だけの対応ではなく、高齢者の方々の協力もえて地域ぐるみのとりくみにしていくことが求められます。もちろん、地域での活動参加は、住民のみなさんの自発性、自主性に依拠したものでなければなりません。割り当てや強制になっては、活動の効果も連帯感の広がりも生まれませんし、長続きもしません。
多くの勤労者は、長時間過密労働のもとで帰宅が大変遅く、子どもの顔を見ることすらできないことも少なくありません。勤労者が、子育てにかかわり、通学路の巡回など地域活動に参加できるようにするためには、大企業が子育て支援を社会的責任として実行するとともに、国がそのことを法律で定め、欧米並みに労働時間を短縮することが必要です。わが党議員団は、以上の立場で子どもを守る地域ぐるみの活動の発展のために大いに力を尽くす決意です。
子どもたちを守るために全力をつくすことが京都府や行政の責任
問題は、京都府をはじめとする行政が緊急にどういう責任を果たすのかということです。新潟県加茂市では、通学路の危険箇所を住民とともに検討し、スクールバスを増車してすべての子どもを送る事業を始めています。京都府内でも、宇治市が2年前の宇治小学校での児童傷害事件を契機にすべての小学校に学校運営支援員を設置し、地域住民とも協力しながら、子どもたちの安全を守る独自のとりくみをすすめています。長岡京市でも、小中学校への巡視員を配置し、安全を守るとりくみをおこなっています。木津町では、校門にガードマンを配置しています。京都府犯罪のない安心・安全なまちづくり条例にもとづくアクションプランに対しては、府民から地域ぐるみの子どもを守る活動に財政的な支援をもとめる声が多数寄せられています。
子どもたちや府民の命を守るのは、本来、国や自治体の最も基本的な役割であり、学校の安全を守る責任は行政にあります。子どもたちの通学路などの安全を確保することも、自治体の義務です。子どもが安全に教育を受ける権利には、安心して通学する権利が含まれると考えるべきです。
ところが京都府は、関係者に通知や文書を出すだけで、市町村が子どもを守るためにとりくんでいる事業にいっさい財政支援をおこなわず、一緒に必要なことはやっていくという積極的姿勢がありません。これでは無責任な「マニュアル主義」と批判されても仕方ありません。子どもたちを守るために、京都府が全力でとりくむのは当然のことではないでしょうか。わが党議員団は、この立場から、京都府が緊急にとりくむべき対策を次のように提案するものです。
第一に、宇治市の事件で心に深い傷を負った子どもたちへの心のケアを重視することです。府教育委員会は、スクールカウンセラーを宇治市教育委員会に派遣して塾の子どもたちの心のケアに当たっていますが、子どもたちの状況を常に把握し、健康管理にていねいに対応するとともに、保護者との緊密な連携のもとに、子どもたちの傷が完全に癒えるまで継続して配置しなければなりません。京都府は、宇治児童相談所に電話相談窓口を設置しましたが、府民の問い合わせや意見、要望に親切ていねいに対応し、適切機敏に対応できるよう体制を確立しなければなりません。
第二に、子どもたちの登下校や日常生活の安全対策をただちに講じることです。学校関係者や保護者、住民のみなさんと協力し、通学路や公園、遊び場などの総点検をおこない、見通しの悪い場所など危険な箇所については緊急に改善する必要があります。小学校の登下校だけでなく、児童館・学童保育所、障害児の通園施設などの行き帰りの安全をはかるために、保護者や住民のみなさんが自発的におこなう「見守り隊」などの活動に対して、財政支援も必要です。市町村が、登下校の安全のため付き添い要員を雇用したり、スクールバスを増車する際には、積極的に財政支援をおこなうことです。子どもたちが放課後に多く学ぶすべての塾等の経営者に対して、子どもの安全対策と職員への指導の徹底を要請するとりくみも急いですすめる必要があります。
第三に、子どもたちの安全と教育、指導に日常的にたずさわる教職員、学童保育所など児童福祉施設の職員の増員に真剣にとりくむことです。すでに2年前の宇治小学校で発生した侵入者による児童傷害事件では、学校内の不測の事態に対応できる人的配置がきわめて不十分であることが明らかになっています。京都市は、学童保育所からの子どもたちの帰宅に際して、職員が付き添うことを決定しました。しかし、現員の職員体制でおこなうため、すべての子どもたちの帰宅に付き添うことはできません。
こうした状況を改善し、子どもたちの登下校や児童施設の行き帰りの安全をはかるために、教職員や児童施設職員を増員するとともに、専門的な研修を積んだ「安全担当職員」を配置することが求められます。「安全担当職員」は、学校内や児童福祉施設内の安全だけでなく、地域住民のみなさんと連携する中心で活動していく必要があります。京都府は、必要な財源措置を国に強く要請するとともに、府独自に職員配置をおこなう財源措置をおこなうべきです。
わが党議員団は、以上のように住民のみなさんとともに子どもたちをまもるために、京都府や行政が積極的な対策を実施するよう強く求めるものです。
社会の病理現象を克服し、未来をになう子どもたちに健やかな成長を保障する社会を
さて、なぜこのような子どもを狙った恐ろしい事件が相次ぐのか、その背景について広く議論をおこない、問題の根本的な解決方向を探求することが求められています。
「構造改革」の名による財界・大企業の利益至上主義の政治は、国民が現在と将来に希望のもてない閉塞感をひろげ、日本社会のゆがみの進行、荒廃と衰退への傾向をつくりだしています。「勝ち組・負け組」を当然視し、社会的弱者に対する攻撃に痛みを感じない風潮が生まれています。そうしたもとで、高齢者や子どもの虐待、凶悪犯罪の増加、メディアやゲーム映像などでの暴力や性のむき出しの表現など、社会の病理現象も深刻になっています。その一方で、濡れ手で粟の錬金術をもてはやす現象がひろがっています。「構造改革」が、人間がともに支えあう社会のありようを否定し、弱肉強食の寒々とした社会をつくりだし、日本社会の将来に向けての持続的発展を不可能にするところまで、深い矛盾を蓄積しています。
わが党は、これまでも、人間をおとしめ、粗末にする風潮とたたかい、健全な市民道徳を形成するための対話と運動をすすめとともに、財界・大企業の利益至上主義の政治を批判し、労働条件の改善など人間らしい社会をめざすたたかいの先頭にたって努力してきました。
この問題は、国民の自発的な力に依拠してこそ解決の道が開かれます。社会のゆがみと病理現象を克服し、未来をになう子どもたちに健やかな成長を保障する社会をつくるため、国民的な対話と運動を呼びかけるものです。
以上