かみね史朗議員 一般質問 2006年7月7日
障害者自立支援法 応益負担による負担増と影響を実態調査し、
政府に応益負担の撤回を求めよ
【加味根】日本共産党の加味根史朗です。通告しています事項について知事並びに関係理事者に質問いたします。
まず障害者自立支援法の施行に伴う問題です。
法律が施行されて3ヶ月経過しましたが、予想された通り深刻な問題が噴出しています。
第一に、応益負担の導入によって施設からの退所やサービス利用の断念が少なからず発生しています。
きょうされん(旧称:共同作業所全国連絡会)がまとめた資料によりますと、すでに3月31日現在で、京都府内30カ所の施設、在籍者数798人の中で、退所の意志を示した人、すでに退所した人は12人、退所を検討している人は18人、あわせて30人、3.75%の人々が退所せざるをえなくなっています。
府北部のある社会福祉法人は、4人の方が通所施設の利用継続を断念されています。両親亡き後、障害のある姉妹お2人は、長年にわたり通所施設を利用されてきましたが、軽減制度を利用しても、年金だけの収入の中で、施設の利用と両立することができず、4月以降の利用を断念されました。相談に当たられた施設職員の方も、非情な現実に涙されたそうです。この姉妹は、現在週2回、弁当持参でボランティアとして施設にくることしかできなくなっています。
精神障害者の通所授産施設はさらに深刻で、精神障害者の場合、無年金者が多いため、月7500円の負担でも重く、296人の利用者のなかで、なんと26%、77人もの方が利用を断念する意思を示しているという調査結果が出ています。
こうした施設の退所やサービス利用の断念といった状況は、今後ますます広がる危険性があります。例えば、府北部の通所施設では、これまで大半の障害者が無料で施設を利用し、給食も公費で提供されていました。それが、給食費をいれて、多い方で月額2万6千円、平均で1万1千円負担しなければならなくなりました。工賃収入の倍の利用料金を払うことは、働く意欲にも影響します。4月から契約をしたものの、利用を手控え、通所しない人も出てきています。そして家族の多くから、「こんな多額の請求が続くなら、通所断念も考えざるを得ない」との声が出され、深刻に悩んでおられるそうです。
このように障害者自立支援法は、応益負担の導入によって、障害者の自立や人間らしい生活に大きな障害をもたらしていることが、実際の姿として明らかになっているのであります。
そこで質問いたしますが、本府は、応益負担による負担増と影響について、ただちに実態調査を行い、応益負担の撤回を政府に要望すべきであります。知事は、梅木議員の応益負担撤回を求める質問に対して、まともに答えられませんでしたが、どう考えておられるのか府民の前に明らかにする責任があります。答弁を求めます。
同時に、京都府の負担軽減制度によってもなお、施設利用の断念や退所が発生し、今後さらに広がりをみせようとしております。本府の負担軽減制度では、不十分といわざるを得ません。給食費や施設の居住費の負担などについても、府の制度の対象として、さらに負担を軽減していくべきだと思いますが、いかがですか。
施設の経営も深刻 日割り計算方式を見直し、緊急に国に改善策を求めよ
第二に、障害者自立支援法は、施設経営にも深刻な影響を与えています。施設サービスや居宅事業、グループホームに対する支援費単価が今年度から1.3%引き下げられ、支払い方式が月額制から日額制に変更されたために、各施設・事業所とも前年度と比べ大幅に収入が減少しています。例えば、先ほど紹介した府北部の社会福祉法人は、5施設運営していますが、対前年同月比で最高129万円、減額率は17.4%、年間で1554万円、5施設全体で年間5千万円もの減収になります。施設の修繕対策等で蓄えてきたわずかの積立金や繰越金すら取り崩さなければならず、施設や事業が継続できないほどの深刻な事態です。
そこでおたずねしますが、施設経営の深刻な事態に対して、日割り計算方式の見直しを含めて、国に対して改善策を緊急に求めるべきではありませんか。そして本府としても、施設運営を安定化させるために、独自の財政援助策を検討すべきではありませんか。お答えください。
子どもの療育費 負担増とならぬよう市町村へ財政支援をおこなえ
第三に、障害者自立支援法が、障害をもつ子どもの療育にも、否定的な影響をもたらすということです。通所の療育施設は、障害の早期発見と早期療育をすすめる場として大きな役割を果たしており、
週3回午前中に児童デイサービスに通っているA君の場合、現在は月3600円の負担にとどまっていますが、10月から1割負担になると、10788円と3倍に負担がはね上がります。お母さんは、「負担が大きくなったら、通えなくなります」と話しておられます。通所の療育施設を利用している家庭のほとんどは課税世帯ですが、お母さんが母子通園で働けないため、非課税ぎりぎりの低所得世帯がほとんどです。
保護者や関係者のみなさんは、子どもたちの療育が安心して続けられるよう、これまで通りの負担になるよう切に願っています。本府として、この願いがかなえられるよう市町村への積極的な財政支援を行うべきであります。いかがですか、お答えください。
ガイドヘルパー市町村の地域生活支援事業へ財政支援をおこなえ
第四に、市町村がおこなう10月からの地域生活支援事業についてです。目の不自由な方のガイドヘルパーの事業は、4月までは応能負担で運営されてきましたが、4月から障害者自立支援法が適用され、10月までの経過措置として1割の応益負担が導入されました。10月からは、負担のあり方を市町村の裁量で決めることが出来るため、応益負担とするか4月までの応能負担にするか判断することになります。
そこで、視覚障害者団体の役員の方に話をうかがいました。3月までは応能負担のためほとんどの方が無料でガイドヘルパーを利用できました。しかし、4月から応益負担となったため、大半の方が月32時間以上利用しているので、5300円以上の負担となりました。週三回人工透析をしている人は、64時間ぐらい利用するので、1万円をこえます。負担が大幅に増えたため、社交ダンスなど17もある多彩なクラブ活動に来られない方が増えたそうです。役員の方は、応益負担の導入は視覚障害者の移動の自由を奪い、人生の楽しみを取り上げるものだと憤慨されています。そして、団体として今すべての市町村にこれまで通り応能負担でガイドヘルパーを利用できるよう要請していると話しておられます。
そこで質問しますが、府内の市町村どこに住んでいても、ガイドヘルパーの利用は応能負担とし、移動の自由を守り、社会参加を保障すべきであり、市町村が応能負担でこの事業が行えるよう、本府として財政支援をおこなうべきであります。知事の積極的な答弁を求めます。
【知事】障害者自立支援について、障害のある方々にとって、必要なサービスを受けることができない状況が生じ、自立した生活を阻むことがあってはならないと考えている。障害者自立支援法施行に際して、利用者負担の在り方や事業者の経営安定化のための報酬水準の確保については、制度設定に権限と責任を有する国に対し、従来から繰り返し要請を行なってきた。こうした中、国においては、施設サービスの給食費、居住費等の利用者負担については、低所得層の方に対して、給食費を原材料のみとし、また、高熱水費については減額するなど様々な軽減措置が講じられている。私どもはさらに、平成19年度の予算要望においても、地方の実状を十分にふまえて対策を講じるよう改善を求め上程したところだ。京都府としては、自立にむけた取り組みをきめ細かく支援し、支えていくことが、地方公共団体としての役割と考え、本年4月から、全国に先駆けて府内の全市町村と協調しながら全国でもトップ水準のセーフティネットを講じているころです。サービス利用や施設経営の状況については、この4月に法が施行されたばかりであり、現在まだ事業者に対する影響は明確でない状況であるが、私どもは、19年度の予算要望でも、サービス提供事業者の経営安定化や報酬の適正な水準について要請をするとともに、現在関係団体と密接に連携しながら実態の把握を行なっているところであります。今後、これらの結果をふまえ、真に障害者の自立支援が図られるよう取り組んでいく。
【保健福祉部長】障害児のサービスの利用者負担について、国制度の負担上限額を引き下げるなど、府内全市町村と協調して、全国トップレベルの水準のセーフティネットを講じることとしている。また、市町村地域生活支援事業については、地域の特性や利用者の状況に応じて、市町村が創意工夫し本年10月から実施されるものだが、市町村に対して、これまでの事業実施の経過をふまえ、障害のある方々が必要なサービスを安心して利用して頂けるよう取り組みをお願いしてきている。今後とも、市町村と協力して利用者や家族など関係者の声をお伺いしながら、現場の実態を把握し、障害のある方々それぞれのニーズや実状に即した自立支援を進めていく。
直ちに、施設退所の実態を調査し、応益負担制度を廃止するよう国に求めよ
【加味根】知事の答弁で、法律が施行した後の影響が明確になっていないというお話しがあったが、現に3月31日現在でも、4月以降の利用を断念する、施設から退所する、こういうことが現に起こっている。その実態を未だに十分把握していないというのは、率直に言って怠慢ではないか。施設からの退所が現に起こっている深刻な実態、直ちに調査をすべきですが、いかがか。
障害者の方が安心して施設を利用できるようにするためには、応益負担の制度そのものをなくす以外に打開する道はないと思うが、知事は、そういう認識は持っていないのか。お聞きしたい。また、現に施設利用の断念、退所が起こっているのだから、独自の軽減制度についてもさらに充実をしなければならないと思うが、その必要性は今の時点で考えていないのか改めてお聞きする。
さらに障害のある子どもたちの療育を保障するために、全国では、これまでと同様の負担なるような軽減制度をつくっている自治体がたくさんあります。地域生活支援事業については、
【知事】きちっとした実態把握をしていかなければならない、しかし、その前に影響があるということは、当然想定しているので、平成19年度の当初予算要望でも国に対して要請を行なっている。そのなかでこれからも、関係者のみなさんと実態把握に努めていきたいとおもっている。私どもの、今回の障害者自立支援法のセーフティネットについては、みなさんご存知のとおり、兵庫でも大阪でも共産党の議員さんが「京都の方はやっているのに」という話しを繰り返しているのに、ある面では象徴になっているところだ。その中で、私はよくわからないのは、例えば、私どもは総合上限制度をとっている。つまり、いくつかの制度が重なった場合には、いくら使っても上限は決まっている。これを、加味根議員は応益だと思われているのか、応能だと思われているのか、その辺りについて、質問の主旨がわからない。あれだけ総合上限制度をとって、もうこれ以上は全て、いくら使っても上限で切っている。そういう関係については、ちょっと、ご質問の主旨が分からなかったので、またお聞かせ頂ければお答えする。
【保健福祉部長】市町村地域生活支援事業について、各市町村において、これまでの事業実施の経過をふまえて、安心して利用して頂けるよう取り組みをお願いしているところです。また、療育事業についても、京都府は全国トップ水準のセーフティネットを構築したが、今後とも市町村と協力して、障害のある方のニーズに即した自立支援をすすめていく。
【加味根】4月以降の事態は障害者のみなさんにとっては、非常に深刻な事態で、サービスを受けるたびに1割負担という障害者自立支援法が、障害者の自立にとって、生活にとって、決定的に大きな障害になる、逆行となるものだということは、はっきりしている。その中で、本府がとった軽減制度は積極的な意義を持っていると、私たちは考えている。それでも尚かつ、施設退所、利用断念がおこっている限りは、しっかりそれに対応するということが必要ですし、応益負担の決定的な問題点については、国に対してしっかり意見を言うべきだと申し上げておきたい。
阪急西院駅のバリアフリー化 交通事業者への強力な行政指導を
【加味根】次に、地元、
まず、阪急西院駅のバリアフリー化についてです。駅舎のバリアフリー化は、身体の不自由な人や高齢者の移動の自由を守り、安全快適に公共交通機関を利用するために欠かせないものであります。
阪急西院駅は、1日の乗降客が39791人で、
そこで私は、この間、総務委員会、決算・予算委員会、総合交通対策特別委員会などにおいて、「引き続き改善方策を検討すべき地区」がすべて検討を進められるよう府としても、交通事業者に働きかけるよう求め、本府としても、働きかける旨の答弁をいただいてきました。
しかし先日、
地下駅をつくったのは阪急電鉄ですから、たとえ多額のお金がかかろうとも、法律で義務づけられたバリアフリー化をすすめるのは、交通事業者の責任であります。その責任を全うさせるのは、
そこでお聞きしますが、「引き続き改善方策を検討すべき地区」のすべてで着実に検討が進むよう交通事業者への強力な行政指導が必要だと思います。西院駅については、バリアフリー化と避難路の設置にむけて、どのように指導するお考えですか。決意も含め、御所見をお伺いいたします。
【企画環境部長】阪急西院駅のバリアフリー化について、すでに階段昇降機が設置されており、現時点では、交通バリアフリー法に基づく基準は満たされているが、さらに、府としては、
天神川の瀬枯れ 解消に向け、調査と対策を講じよ
【加味根】次に、天神川の瀬枯れ対策について質問いたします。
8年程前から天神川七条付近から下流部で、水が一切流れない瀬枯れ現象が1年を通じて多く観察されるようになっています。地元の住民のみなさんからは、「魚の死骸などもあって悪臭がする」とか「かつては大きな魚が泳ぎまわり、潤いと憩いの場所になっていたのに、どうしてこんなことになるのか」、「なんとか以前のように水をたたえる美しい川に戻してほしい」と瀬枯れの解消を期待する声が高まっています。
そこで私は、管理を担当する京都土木事務所を訪ね、瀬枯れの原因と対策をどのように考えているのかお聞きいたしました。土木事務所では、地元住民からも要望が出ているので、2005年度に地下水の調査をおこない原因の究明に当たっているとのことでした。調査結果は、大変興味深いものです。
明らかになったことは第一に、2005年6月30日の瀬枯れ現象は、天神川八条のボーリング地点で地下水位が海抜17.4m以下になった時に発生していること。この17.4mという高さは、天神川の川床の高さと同じです。つまり地下水位が川床より下がったときに瀬枯れが発生するということです。第二に、地下水の変動量には不自然な変動が見られる。特に重要な点は、盆や正月、日曜・祭日には地下水位の回復がみられるということです。例えば、2004年12月25日に地下水位が17.39mだったものが、12月29日から急速に回復し、1月5日には15p地下水位が上っています。2005年の8月7日には17.28mだったものが急速に回復し、8月15日には42センチ水位が上っています。つまり、休みになると地下水が回復するわけですから、下流域の工場等での地下水の大量くみ上げが大きくかかわっているということであります。地下水くみ上げの影響は、この天神川周辺のような砂礫層の地層では水平距離で500mから1500mに及ぶといわれています。
そこで質問いたしますが、本府は、京の川づくり事業をすすめておられるわけで、天神川についても瀬枯れ現象を解消し、水をたたえ、住民が憩える水辺環境を整備することが必要であると考えます。天神川の瀬枯れが地下水の大量くみ上げによるものであることが明らかになってきたもとで、下流部での地下水のくみ上げの実態を詳細に調査し、河川管理と水辺環境の保全という観点から、地下水のくみ上げ規制を
【土木建築部長】天神川の瀬枯れ、いわゆる水枯れ問題について、八条通り付近より下流部で発生しているため、平成10年度と17年度に周辺の土質状況や地下水の調査を行なった。その結果、地下水については、盆・正月の時期や日曜・祝日に回復するといった傾向が見られたが、調査した範囲では、水枯れとの因果関係までは解明できておらず、また、地下水以外にも、水が浸透しやすい川底や降雨状況といった事前要因も複雑に関係しており、未だ原因の特定には至っていない。水枯れ問題は、天神川本来の河川流量の問題や、近接する桂川の影響、市街化にともなう雨水の浸透量減少による地下水位の低下など、様々な要因があり、流域圏を視野にいれた水の循環という観点からも検討していく必要があると考えている。今後、
【加味根】西院駅のバリアフリー化については、困難な条件があるだけに、交通事業者任せでは、なかなか進まないことがはっきりしてきました。どう打開するか、やはり行政の積極的なイニシアティブが必要です。西院駅を含め、「引き続き改善方策を検討すべき地区」については
天神川の瀬枯れ解消についてですが、その原因の大きなものが地下水のくみ上げによるであると、だんだんはっきりしてきたわけですから、地下水のくみ上げの状況を詳細に調査すること、その調査結果に基づいて、それが原因であれば、くみ上げ規制が必要だと思います。そういう取り組みをされるのかどうか、改めて聞いておきたい。
【企画環境部長】西院駅のバリアフリー等については、
【土木建築部長】天神川の水枯れについて、この原因については、複雑な要因がからまっていると考えている。
【加味根】西院駅のバリアフリー化、それから今後検討すべき地区ですね、この検討が進むように京都府、