梅木紀秀議員 代表質問                 2006年7月5日   

 

 

梅木日本共産党の梅木紀秀です。日本共産党府会議員団を代表して、知事ならびに関係理事者に質問します。質問に先立ち、議長のお許しを得て、一言申し上げます。

本日、北朝鮮がミサイル数発を発射し、日本から数百キロ離れた日本海に落下したとされています。

これは、ただいま決議されたとおり、「日朝平壌宣言」や六ヵ国協議の共同コミュニケに反し、北東アジアの安全を脅かすものであります。外交交渉に、武力による威嚇を持ち込むことは許されるものではありません。わが党議員団としても、厳重に抗議するものであります。

知事選挙についても、一言申し上げます。

 知事選挙前に、民主府政の会が行ったアンケートには、府内各地から3万1千通もの回答が寄せられました。書き込み欄に、切実な要求や将来への不安、現在の政治への怒りがぎっしりと書き込まれていました。今回の知事選挙は、こういった府民の切実な願いに府政がどう答えるのか、地方自治体の役割が問われた選挙でした。

私たちは多くの府民、団体のみなさんとともに、この願いに答えるために、衣笠洋子さんを先頭に、子どもの医療費の小学校入学までの無料化、30人学級の実現、国保料・介護保険料の軽減、住宅改修助成制度の創設など、緊急政策をかかげ、27万人の府民の支持をいただきました。ご支援いただきましたみなさんに、心からお礼申し上げます。同時に、日本共産党府会議員団は、府民のみなさんと力を合わせて、切実な願い実現のためいっそう奮闘する決意を表明し、質問に入ります。

 

知事がマニフェストで公約した子どもの医療費拡充と耐震改修助成をただちに実施せよ

 

梅木まず、知事のマニフェストに関わって2点うかがいます。子どもの医療費拡充は、多くの府民の強い願いであり、知事も1月の記者会見で、「補正予算で」と述べ、マニフェストでも公約されたにもかかわらず、今議会の補正予算では、検討費だけの計上です。直ちに実施すべきです。また、耐震改修助成についても、拒否し続けてきましたが、マニフェストで公約されたのですから、これについても直ちに実施すべきです。実施時期はいつか、明確に、お答えください。

 

【知事】乳幼児医療制度だが、私は一期目のスタートにあたり、子育ての経済的負担を軽減し、安心して医療を受けて頂けるよう市町村との検討の場を設け制度の改善を図ってきた。この制度は、京都府と市町村が連携協力して実施している制度であり、今回の制度か改善にあたりましては、まず共同関係にある市町村を始め、幅広く意見をお聞きすべきであり、その検討を行なうためこの議会に予算案を提案した所である。

耐震改修予算だが、今後十年間の取り組みの基本方針である耐震改修促進計画を今年度のできるだけ早い時期に策定する予定になっているので、この計画を策定する中で、耐震改修助成制度も含めて国の支援制度と連携した効果的な耐震改修促進施策を図って参りたいと考えている。

 

【梅木再質問】子どもの医療費について、1月5日の知事の記者会見で、今年度の子育て支援について当初予算の説明をした後、知事はさらに「当初予算でなく、今後補正予算で検討するものといたしまして、乳幼児医療助成制度の見直しを行っていきたい」と。市町村と相談するということだが、府が引っ張り、府が先に実施することはできるのであり、これは知事が1月に言ったことだから、ただちに実施するべき。知事の再答弁を求める。

 

【知事】乳幼児医療助成だが、私は二月府議会におきまして、多賀先生の質問に対し、この制度については、実施主体である市町村との協議が必要であるので、市町村からのご要望をいただき、また、京都市からあり方について協議をしたいとのお話もあるので、国における医療制度改革もふまえ、市町村と協議をする中で検討を深め協議してまいりたいとはっきりと答えている。それから、15日の記者会見においても、「さらに当初予算でなく、今後補正予算等で検討するものとして、乳幼児医療費助成制度の見直しを市町村と連携のもとに行なっていきたい。これについては、今後京都市をはじめ市町村のみなさんと協議をしながら具体的なあり方について策定していきたい」とこたえており、この部分を飛ばして勝手に解釈しているからで、2月府議会の全体をみたら、今回の予算が手順を踏んだものであることがわかる。これは勝手に京都府だけでいけるような制度ではないことをご理解いただきたい。

 

高齢者への大増税に怒りの渦 増税をただちに中止し、凍結するよう国に求めよ  

 

梅木次に、高齢者への増税、負担増についてです。

6月18日の朝日新聞投書欄は、高齢者の「増税への怒り」を特集しました。紹介します。「6月は嫌な月です。年金、介護保険、市・府民税の通知がありました。昨年所得税が5倍に、今年は市・府民税が4倍に。低所得者をどこまでいじめたら気が済むのでしょうか。政治のあり方に激しい怒りを感じます」。別の方は「空前の利益を上げている大企業や銀行を優遇しながら、年金生活者に大増税の自民党政府に、心の底から怒りを覚える」。また「政治家に天罰、一揆待つ思い」という投書もありました。全国、どこの市役所でも窓口に市民が殺到しています。

このパネルをご覧ください。私どもに手紙をいただいた京都市内の70歳のご夫婦の例です。年金は夫283万円、妻52万円で、所得税、住民税が2年前、ゼロだったものが、昨年、今年と増え、3万7千円と4万7千円に、介護保険料、国保料も上がって、2年間に2.4倍にもなっています。住民税の非課税限度額廃止、老年者控除の廃止と公的年金控除の縮小、定率減税の半減の結果です。さらに、来年度は、激変緩和措置の終了と定率減税の廃止などで負担が増え、医療大改悪による負担増もかぶさってきます。

昨年の予算委員会の知事総括で、私は、雪だるま式に増える高齢者の負担増について、知事に質問しましたが、知事は「受益と負担の問題」「持続可能な制度確立のため」と負担増を容認する冷たい答弁でした。知事は、この高齢者の痛み、悲鳴をどう受け止めていますか。いま実施されている高齢者への大増税は直ちに中止し、今後実施予定の増税については、凍結するよう国に求めるべきです。お答えください。

今議会に提案されている「府税条例の改定案」では、個人府民税の定率減税は廃止する一方で、法人事業税の軽減は恒久化されます。国税でも個人の定率減税が廃止され、大変な負担増になっているのに、法人税の減税は恒久化されました。法人税の収入は、大企業が史上空前の利益を上げているのに、10年前に比べて10兆円も少なくなっています。減税のせいですが、これを恒久化するのです。大企業や大銀行に、応分の負担を求めるならば、高齢者や障害者への負担増は必要ありません。「大企業栄えて、民滅ぶ」これをこそ改めるべきではありませんか。知事の見解をお聞かせください。

 

【知事】高齢者の負担増だが、急速にすすむ少子高齢化の中で、この社会を将来にわたりどう安定的に持続させていくかが極めて重要な国家的な課題になっている。そのためには、受益と負担のあり方も含めて、国会において総合的に議論され、現在国において税制や社会保障全般にわたり大きな改革が進められている。地方自治体としては、こうした大きな制度変革の中で地域の特性を踏まえ、府民の視点にたち、必要な人がサービスを受けられ、日々安心して暮らせるよう、しっかりしたセーフティネットを構築していくことが、安心安全の京都づくりの基本と考えている。

京都府ではこれまでから、市町村とも連携し、現場の実状を把握し、国へ制度改善等を要請してきた。サービス受益者の声も聞きながら高齢者にかかる福祉医療制度など府独自のセーフティネットの措置も講じてきたところである。引き続き、府民の安心安全の確保第一に常に現場の声を聞きながら対応していきたい。

 

梅木高齢者や障害者の負担増について紹介したが、「6月は嫌な月」「一揆を待つ思い」という投書を紹介したが、これらの怒りが、東大阪市長選挙や滋賀県知事選挙の結果にあらわれている。小泉構造改革で貧困と格差が拡大し、増税と負担増が押し付けられる。これに対する庶民の怒りが湧き起こり、6月は「質的に転化した月」だと思う。いっそうこれは強くなるのだから、知事はしっかり府民の痛みをふまえていただきたい。

 

療養病床の大幅削減など医療法大改悪は許されない 医療難民をださないよう緊急措置を

 

梅木次に、医療法の大改悪についてです。高齢者や重症患者への負担増のおしつけ、療養病床の大幅削減、後期高齢者医療制度や、混合診療の本格的導入など、日本の医療制度の根幹を揺るがす大改悪です。国会には2000万人を超える反対署名が寄せられましたが、自民党と公明党が強行成立させました。わが党は、この大改悪を実施させないために、全力をあげるものです。

この医療法の改悪で、今年10月から、高齢者の窓口負担が増えます。さらに2年後にスタートする後期高齢者医療制度では、75歳以上のお年寄り全員から平均で年7万円を超える保険料を徴収することになります。国民年金の平均受給額は50数万円、満額でも年80万円です。これで、やっていけるでしょうか。滞納者からは保険証を取り上げることまで、もり込まれているのです。生存権に関わる大改悪です。知事は、国に実施しないよう求めるべきです。また本府は、障害者自立支援法の実施に際して、低所得者に激変緩和措置を行いましたが、同様に、府の緊急措置として、低所得の高齢者には1割負担を維持すべきです。いかがですか、お答えください。

10月から療養病床の食費・居住費が自己負担になります。すでに、介護施設では昨年10月から実施されていますが、国保中央会の資料では、この影響で、昨年度介護保険の施設サービス給付費が10月以降マイナスに転じています。食費・居住費の負担増からサービスの手控えが起こっていることのあらわれです。昨年、導入1ヶ月で27人の介護施設からの退所者があったことが報告されましたが、その後、京都府として、退所者やサービスの手控えなどの実態をつかんでおられますか。また、国の制度に上乗せして高齢者夫婦世帯への「緊急支援」を行っていますが、負担軽減のために、介護施設、医療施設とも助成措置の充実が必要だと考えますが、いかがですか。

次に、療養病床の大幅削減についてです。今年1月、下京区で、介護していた91歳の父親を59歳の息子さんが殺害するという事件がおきました。介護施設に申し込んだが入所できず、介護に疲れた末の事件です。2月には伏見区で、その2週間後には東山区で同様の事件が起こっています。今でも、介護施設に入所を申し込んでも入れない、病院から退院を迫られている、自宅で介護せざるを得ないという状態なのに、療養病床を38万床から15万床に、23万床も減らせば、悲惨な事態がさらにひろがるではありませんか。すでに7月からの診療報酬の改定で、療養病床の入院患者の点数が大幅に引き下げられたことから、療養病床の削減が始まっていますが、23万床もの大幅な削減で、京都の場合はどうなるのか、その影響についてどう見ておられますか。また、医療難民、介護難民を生み出さないために、どう対処されるつもりか、お答えください。

 

【知事】医療制度改革だが、医療保険制度は、社会全体で支えるという制度の主旨から、国地方公共団体はもとより保険料や患者負担についても高齢者の方も含めて負担をして頂くことになっている。京都府としても約400億円を負担して全力をあげて、これらの制度を支えているところである。また、住民に近い地方公共団体として、セーフティネットを構築するとともに、市町村や関係団体と連携し、国に対し提案要望を行なってきた。その結果、低所得者への十分な配慮を行なうこと等が法案の付帯決議において盛り込まれたところであり、さらに、私どもは平成19年度政府予算要望においても、低所得者への配慮をはじめとして、引き続き提案要望をしたところである。

介護保険施設の居住費、食費の自己負担の見直しにつきましては、昨年の10月、そしてこの4月にも入所者の状況をしたところ、低所得者層、市町村民税の非課税の部分については、国の軽減施策の効果により影響があまり見られなかったが、利用者負担のもう一段階上の課税世帯、特に比較的所得の少ない境界層の方々で負担を感じてらっしゃる方々が見受けられた所である。そのため、比較的所得の少ない高齢者夫婦世帯などを対象に、激変緩和措置を講じており、引き続き制度の周知や利用促進を図って参りたい。

療養病床については、老人保健施設や有料老人ホーム等への転換を促進する中で再編を図ることとされているが、国から具体的な転換方法などの詳細が示されていないため、多くの医療機関では今後の方向性を模索されている段階である。京都府としては、利用者負担や、療養病床のあり方等、今後詳細な内容が、今後付帯決議を踏まえた省令等により明らかになる予定であるので、高齢者が負担増により必要な医療が受けられないような事態が生じないよう、引き続き国に対し強く要請して参りたい。

 

梅木療養病床の削減については、大変な問題になるのでしっかりと見ていただきたい。

 

自立破壊の障害者自立支援法の撤回を 早急な実態調査と緊急支援策の実施を求める

 

梅木次に、障害者自立支援法の問題です。障害の重い人ほど負担が重くなる原則1割の応益負担が押し付けられて、3ヶ月がたちました。社会福祉法人減免や府独自の負担軽減策を利用しても、なお施設からの退所やサービス利用の断念が少なからず発生しています。

亀岡の障害者作業所では、「今まで、毎月5千円の給料をもらっていたが、給食費とあわせて月1万3千円を払わなければならなくなった。お金を払って働くより、家にいたほうが安くつく」と退所を検討する方が出ています。かつて、家に閉じこもっていた障害者が、作業所ができて、仲間と働くことで、命を輝かせてきた障害者の人権保障の歴史を、自立支援の名で否定するものです。これでは、自立支援どころか、自立破壊です。応益負担そのものが間違っています。直ちに撤回するよう国に求めるべきです。また、府として、早急に実態調査を行うとともに、国に対して、月額負担上限額の大幅引き下げ、減免制度の所得要件の緩和、食費軽減措置の拡充・恒久化など負担軽減策を求めるべきです。いかがですか。

施設の経営も大変になっています。報酬単価が引き下げられ、支払いも月割りから日割り計算になったため、通所できず休んだ人の分は施設の減収になります。施設の減収は大方の施設で2割前後になっていますが、10月から新事業体制になれば、さらに大幅な減収で、「このままでは施設閉鎖が出てくる」という深刻な事態です。とりわけグループホームは深刻です。報酬単価の引き上げ、日額支払い方式を見直すよう国に要求するとともに、府として緊急支援策をこうじるよう求めます。いかがですか。府としてこのような実態をどう把握しておられるか、あわせておうかがいします。

 

【知事】障害者自立支援について、障害のある方々にとって、必要なサービスを受けることができない状況が生じ、自立した生活を阻むことがあってはならないと考え、京都府においては、この4月、障害者自立支援法施行に際して、全国に先駆けて府内の全市町村と協調しながら全国でもトップ水準のセーフティネットを講じたところ。一方で、利用者負担の在り方や事業者の経営安定化のための報酬水準の確保については、制度設定に権限と責任を有する国に対し、従来から繰り返し要請を行なってきた。サービス利用や施設経営の実態把握については、法施行後間もないことであり、現時点においては事業者においても新制度の影響は明確でない。今後、関係団体とも密接に連携しながら実態把握を行なっているところであり、これをふまえ、真に障害者の自立支援が図られるよう取り組んでいく。

 

梅木障害者自立支援法については法施行後間もないというが、実際には10月度の事業本格実施前に施設が大変になると言う声が出てきているのだから、ただちに実態を調査するべきだ。私たちは議員団として実態調査をしてきたのだから、ぜひとも府として急いでやっていただきたい。

 

府民の負担はすでに限界 知事はこれ以上の社会保障費削減と消費税増税に反対すべき

地方交付税の総額抑制を許さず、「地方固有の財源」を守る知事の決意を問う

 

梅木次に、「歳出・歳入の一体改革」に関わって質問します。政府は、プライマリーバランスの黒字化を名目に、生活保護基準の引き下げ、保険免責制度の導入や介護保険利用料を2割にするなど社会保障をさらに切り捨てる一方で、消費税の増税を国民に押し付けようとしています。小泉首相は、「歳出削減の徹底によって、増税の方がよいという議論が出てくる」とまで発言しています。そもそも、財政危機の原因は、借金を積み増して、大企業や大銀行を支援したことにあります。にもかかわらず、大もうけしている大企業や大銀行には負担を求めない、ここに国民の怒りが集中しているのです。府民の負担増は限界です。これ以上の社会保障費の削減や消費税の増税には反対すべきです。いかがですか、お答えください。

地方交付税の削減についてもうかがいます。今年度末の府の借金見込み残高は、1兆3586億円です。大変な額です。しかしバブル崩壊時、91年度末の借金残高は3686億円でした。バブル崩壊後、税収は落ち込んでいるのに、借金に借金を重ねて、ムダな大型公共事業をすすめてきた結果、15年間に1兆円も増やしたのです。知事は「府債の半分、7千億円は国が返してくれる」と説明してきましたが、私たちが批判してきたとおり、国の約束は反故にされようとしています。「三位一体の改革」で、地方交付税は5兆1千億円も削減され、今度は「歳出・歳入の一体改革」で、さらに削減されようとしています。

そもそも、地方交付税は、「地方固有の財源」であり、財源保障と財源調整の機能で、地方の自治を財政面から保障するものです。にもかかわらず、国が、地方に借金をさせてその返済を地方交付税で面倒をみるやり方は、これに反すると、わが党は批判してきました。「合併特例債」や「三位一体の改革」も地方財政をより困難にするものと批判してきました。今回、全国知事会は、地方交付税が「地方固有の財源」であることを明確にするためにと、「地方共有税」の提案をしていますが、当然です。市町村にとっても大切な問題です。地方交付税の総額抑制を許さず、「地方固有の財源」を守る知事の決意をお聞かせください。

 

知事法人への課税強化や消費税の問題について、これまでも何度も答えているが、公的サービスの費用をまかなう租税と負担水準の議論は、公的サービス水準のあり方と表裏一体の関係であり、負担の高さだけを議論することは一面的である。これは北欧等の諸国でもそういう議論になっている。したがって少子高齢化の進展、個々人のライフスタイルの多様化といった経済社会の構造変化をふまえ、持続可能な社会をつくるための国の行政水準全体に関わる受益と負担の問題としてその両方を総合的に議論すべきものだと考える。

 地方交付税について、本来地方交付税は地方固有の財源であり、府民サービスに直結するものだけに国の財政再建の観点から一方的に削減することがあってはならない。地方交付税については、税源の偏在による財源調整とナショナルミニマムなど国が定めた水準を維持するための財源保障機能をしっかり認識して、地方公共団体の基本的な住民サービスの提供に支障がないようにすべきである。これまでから、地方交付税改革に対する地方の意見を示すため、知事会等を通じ、懸命の活動を続けるとともに、先日私や府議会議長をはじめ、府内の市町村長、市町村議会議長すべての連名で緊急アピールを行った。  

こうしたなか先日政府与党が合意した歳入歳出一体改革案の地方交付税の取り扱いについては、実質的な削減の表現が撤回されるなど、地方の主張が一定理解された。しかし、決着はこれからであり、地方は今後もみずから厳しい改革を進める一方で、真の地方分権の実現に向けた地方行財政の確立をめざし、地域の住民に責任をもって行政サービスが提供できるよう国に対して働きかけていきたい。

 

梅木知事はいつも「負担だけを問題とするのは一面的だ」「租税負担の全体を議論するべきだ」というが、だからこそ全体で議論するならば、大企業や大銀行に応分の負担を求めるべきだということをなぜ言わないのか。「国会で議論をされること」だから自分は何も言わない、府はセーフティーネットだけだというのではダメだと思う。府民は、増税や負担増に怒りの声を上げているのだから、府民の代表として知事がしっかり言ってもらわなければならない。アメリカ軍の思いやり予算には毎年2700億円、米軍基地の再編のために3兆円ポンと出す。こんなやり方は批判すべきだと私は言っている。私たちは増税をもとに戻せ、医療の大改悪は実施するな、消費税増税反対だ、この声を大きくするために府民のみなさんと力をあわせ奮闘する決意を表明する。

 

京丹後、舞鶴など医師不足は深刻 府が実態調査を行い、医師確保対策の抜本的強化を

 

梅木次に、医師確保の問題についてうかがいます。

全国的に、地域と診療科による医師の偏在が問題になっています。京都でも、今年はじめ、京丹後市の弥栄病院が3月いっぱいで産婦人科の医師がいなくなるため、分娩の受け入れを休止し、大問題になりました。今回の補正予算で医師が派遣されることになりましたが、すでに、2003年6月には舞鶴市民病院が、今年2月には舞鶴医療センターが産婦人科を休止するなど、産婦人科医の不足が相次いで発生していたのです。ところが、京都府は2004年に「北部医療協議会」を設置したものの、今年3月まで会合も開かず、これといった対策を打ってきませんでした。ようやく今年度の予算で、医師バンクの設置などを行いましたが、予算審議の中で、知事は「設置者に第一義的な責任がある」「府は府立医大に年間78億円も出している」「医師が確保できなければなんのための府立医大か」と府の責任を、すべて府立医大になすりつける答弁でした。

医師不足は産婦人科だけはありません。舞鶴市民病院は閉鎖の危機に瀕していますし、福知山では、脳外科医の不足で救急医療体制が危機的状況です。南丹市美山町の宮島診療所は医師の確保ができず5月から休診中です。どこでも医師不足は深刻です。府が中心になって、医師確保対策を抜本的に強化することが求められています。

2004度からの研修医制度の変更で、大学病院で研修する医師が減り、地方に派遣するどころか、大学に医師が引き上げられています。医師派遣を大学病院まかせにしてきた体制の転換が求められているのです。青森県や岩手県では、県が大学病院と連携して、積極的に研修医を募集する体制を組み、研修医が増加しています。また北海道では一昨年「道医療対策協議会」を設置し、医師不足地域に医師を派遣するシステムをつくっています。同様に、全国ほとんどの県で「地域医療対策協議会」を設置し、県が中心になって、医師確保対策を検討しています。

昨日、知事は、府立医大、京大、医師会等をメンバーとする委員会を設置すると答弁されましたが、遅きに失した観がありますが、前進です。直ちに府内の医師の配置状況について実態調査を行い、この委員会で中長期的な検討を行うこと、さらに、今ある府立医大の医療センターを拡充し、医師不足地域への緊急支援を行うべきです。

また、医師が偏在する原因には、医師の過酷な労働条件があります。産婦人科はじめ、医師不足のところでは「日勤の後、当直に入り、翌日そのまま日勤」など過労死の判断基準となる週73時間の勤務時間を大幅に超える長時間労働を余儀なくされています。医療事故の危険性も増えますし、医師自身の健康破壊がすすんでいます。これらの勤務条件が、診療科の偏在、勤務医から開業医へと医師の偏在につながるといわれています。

また、新たに医師になる3人に1人は女性ですが、女性医師の子育て環境など労働条件の改善も急務です。さらに、学会への参加や研修機会の確保なども影響していると指摘されています。京都府として、医師の労働実態の調査や意識調査なども実施し、条件整備をはかることが必要です。

さらに、京都府は「市町村経営改革支援シート」で自治体病院については、「民営化を検討しているか」「業務の外部委託は検討しているか」など経営面からの点検を行なっていますが、自治体病院は、地域住民にとっては「命の綱」なのです。「医師の確保は設置者の責任」と突き放し、府の指導は「経営改革」では、府民の期待にこたえられません。以上、医師確保対策について、提案しましたが、知事の答弁をお願いします。

 

【知事】医師確保対策だが、京都府においては、全国に8か所しかない公立医科大学の中でも最も古い歴史をもつ府立医科大を設置し、18年度当初予算で78億円もの投資を行なわせていただき、積極的に医師の養成の確保に努めて参りました。一方で、医師の偏在による府北部地域の医師不足に対応するため、当初予算で創設した医師バンク制度を活用し府立医大の他、第一日赤、第二日赤の協力を得まして、京丹後市立弥栄病院に産婦人科医師を派遣すると共に、前府立医科大学学長を特別参与に迎え、体系的に医師確保対策を推進、医師バンク制度のより一層の拡充を図ることとしています。

また、医師の実態については、昨日もこたえたとおり、この状況というのは、決して京都府がそこにある制度を作ったからと言ってそこに医師が集まり派遣できると言うものではありません。それは、医師バンク制度で今回市立弥栄病院に派遣するときも、本当に関係者の方々の並々ならぬご尽力とご協力があって始めてできるものでありまして、私どもは、引き続きまして府立医科大学や京都大学、医師会等医療関係機関をメンバーとする新たな委員会を設置しまして、中長期的な観点から地域医療をになうしっかりとした医師確保のための仕組み作り、制度作り、合わせまして、医者養成制度のあり方、そういったものも含めて養成する中で対策を講じていきたいと考えております。

 

【梅木再質問】 知事は、医師の確保について府として努力してきたと言われましたが、実は平成163月31日に、厚労省の方から地域における医療対策協議会を設置し医師確保に努力しなさいとの通知が来ている。それを受けて「北部医療策協議会」が京都府でもできたが実際には何もしてこなかったんですね。しかし、一方でこの医療対策協議会を北海道では作って、札幌市にたくさんいるお医者さんを地域に移すということで、その道の医療対策協議会が機能を果たしている訳です。これを京都府はやらずに医科大学まかせにして、78億円出しているんだ、設置者の責任だから市町村は努力してほしいと、こういう態度を取ってきたからこのように遅れてこのような事態になっている。本来京都府は医師が豊富にいるんだというなら、府北部地域を中心にしてしっかりと府がコーディネートする必要があると私は言っているのです。府が今何をしなければならないかと言うことをしっかりと考えていただきたいと思います。

そこで再質問ですが、弥栄病院の医師確保はできましたが、舞鶴市民病院をはじめ医師不足は深刻なんです。南丹市長は、宮島診療所の医師確保について府に支援を求めていると6月の市議会で答弁しています。これが知事の所に届いているかどうかお聞きします。これらの地域、緊急に医師確保をしなければならない地域に、知事、京都府がどう取り組んで支援していくのかお聞かせ下さい。

 

【知事】南丹市自身は府の方に来ていない。

私どもとしては、府立医大を中心にしっかりした医師の派遣制度を作っていましたが、これが、新しい研修制度の導入により大きく制度が変わっていく、そして、産婦人科、小児科の医師について最近の状勢の中で大変負担感が増えている中で医師不足が叫ばれてきたという事情を踏まえて、私ども一つ一つ今手を打っている所でありますので、これからもそういう状況を踏まえましてしっかりした医師制度の確保のためにがんばりたいと思っている。

 

【梅木】宮島診療所の話が知事の所に届いていないと言うとだが、振興局に留まっているのか、議会で答弁しているのですから市長は府の方に言っているわけです。そこの所は大変な事態なのですから、知事の所に届いていないと言うことならば大問題だと思います。府の責任でしっかりと医師確保対策を強めていくことを改めてお願いしておきたいと思います。

それと、子どもの医療費無料制度ですが、これは当初予算でなく補正でやると言ったら、これは、来年度の当初予算までのびるとは考えられない。実際の話、知事選挙の前にそういうようになっているのですから、市町村としっかり協議をするというなら協議をし、ダメだというなら京都府独自にやるという、それを求める市町村もあるのですからやって頂きたいと言っておく。

 

小規模農家切り捨ての「経営安定対策」で現場は混乱 「対策」の中止を国に求めよ

 

梅木次に、農業問題について伺います。来年度から、新たな経営安定対策が実施されます。昨年12月議会で、わが党の松尾議員が質問し、知事も「必ずしも京都の農業振興にはつながらない」と述べているところですが、この対策は、日本の農政を、一部の大規模経営だけを対象にし、圧倒的多数の農家を国の政策から排除しようとするもので、小規模農家を中心とした京都の実態に全く合いません。

現場では、いろいろと混乱が起こっています。5月29日に行われた近畿農政局と農業団体との交渉の席では、南丹市美山町の農家から、「担い手の所得目標は400万円、水田面積は32ha必要ということだが、美山町の実態に合わない。対策にのれない地域や農家はどうしたらいいのか教えてほしい」という切実な声も出されています。

しかも、新しい対策は、制度が複雑で助成金の水準なども多くが未定であり、市町村の担当者も疑問に答えられない事態も起こっています。このような中で、制度への登録を急がせるのには無理があります。農家の納得を得られておらず、混乱をもたらしている現状をふまえて、対策を中止するか、少なくとも実施を延期するよう強く政府に求めるべきだと考えますが、いかがですか。

2005年の農業センサスによると、京都では1990年からの15年間に、販売農家の数がすでに約3割、11000軒も減少しています。耕作放棄地は、毎年増加して、すでに2614ha、山城地域、木津川両岸の農地に匹敵する面積に達しています。この対策で、さらに、耕作放棄に拍車がかけられ、高齢化している多くの集落では、集落の維持さえ困難になります。経営規模の大小で農家を区別するのでなく、続けたい人、やりたい人を大事にして、今ある農家経営の多くをできるだけ維持するよう府としての施策を拡充すべきだと思いますが、いかがですか。

関連して、農地・水・環境保全活動に対する新しい支援制度についてうかがいます。現在8月までに申請手続きをするよう指導されているようですが、国の制度の要綱ができるのは来年1月ということで、支援を受けられる要件もまだ固まっていないのに、まったく無理な話です。実情にあった対処を求めますが、いかがですか。また、中山間地域も対象とするように国に求めるべきです。さらに京都府として、農地を維持し環境を保全するためにも、集落営農の取り組みを支援して、今回、集落営農施設の大型農機具購入への助成措置が予算化されましたが、更新についても助成を行うようすべきです。お答えください。

また、生産者米価の下落に歯止めをかけるべき政府が、超古米を投げ売りするなど、米価下落の原因をつくり、米が中心の大規模経営農家ほど苦しんでいます。農政の基本として、すべての生産者を対象にした価格保障・所得補償政策を行うべきです。あらためて、コメの生産者価格を保障するため、政府の100%拠出による不足払い制度の創設を求めるべきです。知事の答弁を求めます。

アメリカ産牛肉の輸入再開についてですが、6月21日、日米両政府間で、日本側が35箇所の処理施設を事前に現地調査した上で、7月下旬にも輸入再開することが合意されました。月齢確認や危険部位の除去防止にとってまったく実効性ある対策とはいえず、再発防止の保証のないものです。小泉首相は、国民の安全よりもアメリカの要求を優先し、訪米の手土産にしましたが、到底認められません。直ちに、政府に撤回するよう求めるべきです。いかがですか。              

 

知事品目横断的経営安定対策については、国は交付単価など制度の詳細を8月中にも決定することとしているが、京都府はこれまでから国に対して、農作業受託組織も幅広く対象とすること、野菜や黒大豆、小豆についても対象品目とし、規模要件を緩和すること、農作業受託組織の経営規模拡大や販売力強化など幅広い支援策を講じることなどを要望している。6月27日にも私自身が農林水産省に行き、局長に中山間地域が7割を占め、農家の経営規模が零細で、集落規模も小さいという京都府農業の現状を具体的に示し、これらの実態に即した対策となるよう強く要請してきた。局長もできる限り柔軟な対応をこれから考えていくということを答弁した。

しかし、今回の品目横断的経営安定対策では、これからも府内の多くの農家が対象から外れることも想定されるので、府ではこれまでから農家の経営を守るためにブランド京野菜や宇治茶などの京都の特性を生かした生産振興にとりくんできており、さらに本年度から黒大豆、小豆の生産拡大や、安心安全な京都米づくりのとりくみを促進するため、新たな技術等にたいするソフト、ハード両面にわたる補助制度をもうけるなど、きめこまかな支援を行っている。こうしたとりくみに加え、農作業受託組織への米や麦などの生産の集約化をはかり、自主的に国の支援措置を受けられる農家を増やすことも大切と考えており、新たに農地の集積を進めようとする農作業の受託組織を対象に、機械の導入が必要な組織に対しては更新も含めて補助またはリース制度が利用できるようにするとともに、その他の組織についても規模拡大の面積に応じた助成金を交付する、府独自の支援措置を講じることとし必要な予算を本議会でお願いしている。

 農地や農業用水などの地域ぐるみで守る共同活動を支援するための農地・水・環境保全向上対策については、現在国において平成19年度からの実施に向け、現時点での市町村の実施見込みをとりまとめているところであり、申請手続きは要綱制定後の来年度となる見込みである。この対策は、高齢化の著しい農村集落の地域コミュニティーづくりにも有効と考えており、今年度モデル事業にとりくむ8地区について広域振興局を中心に関係機関と連携して支援している。あわせて市町村に対し、この制度の積極的な活用を働きかけるとともに、国に対してはより実効性ある制度となるよう環境保全を重視した加算措置などを要望している。なお、制度の対象には、中山間地域も含まれるとされている。

 コメの所得保障については、産地間競争の激化や価格の下落傾向が強まる中、京都米を確実かつ有利に販売していくことは重要であるので、大消費地をかかえる京都の立地条件を最大限に活かし、生産者団体や流通業界と一体となって学校給食や福祉施設での利用拡大に加え、企業食堂や量販店等への販路開拓をすすめてきた。こうしたとりくみで京都米に対する流通業界や消費者の関心が高まりつつあり、取扱店も拡大してきている。今後いっそう安心安全でおいしい京都米づくりを進めるとともに、地産地消を重視した多様な販路拡大に努めたい。なお、国に対しては、米価の下落に歯止めがかかる実効性ある仕組みづくりとあわせ、米価の下支え機能をもった価格変動対策を講じるよう強く要望している。

 BSE問題については、京都府ではこれまでから平成16年9月の府議会定例会での「BSE対策に関する意見書」をふまえ、米国産牛肉の輸入については特定危険部位の除去など、わが国と同一基準による安全措置が確立されるまで再開しないことなどを国に対し強く要請してきており、今後とも国民の安心安全の確保を最優先に考え対応するよう引き続き要請していきたい。

 

梅木知事の答弁のなかで農業・水・環境保全活動について現場で説明されている中身と違う答弁があったように思う。これについては実際に現場の方で農家のみなさんに説明しているのが充分に伝わっているのかどうかとあらためて感じた。引き続き委員会で取り上げていきたい。農業、中小企業問題、しっかりと京都府の産業を支えるということでご支援いただきたい。

 

中小企業振興条例 府の責任として「すべての」中小企業を対象とした振興を行え

 

梅木次に、中小企業の振興についてです。知事は、二期目の政策の重点目標の一つとして、「がんばる中小企業応援条例」の制定を掲げましたが、京都経済と雇用を支える中小企業支援のための基本条例をつくることは当然であります。わが党は、96年6月議会の代表質問で、「中小企業振興条例をつくり、総合的計画的な中小企業支援のための振興策をつくるべき」と求めて以来、基本条例の制定を提案してきたところです。

今回、条例制定の方向を示されたことは、府内の中小業者からすれば、本当に「ようやく」の思いでありますが、条例をつくる以上は、中小企業基本法が「基本理念」や「地方公共団体の責務」で定めているとおり、すべての中小企業を対象にした振興を行い、府が責任をはたすことが重要です。ところが、知事のマニフェストでは、「先進的な取組を進める中小企業に対し」「税や補助金で支援する」と書いてあります。これでは、せっかく条例をつくっても、ハイテクやベンチャーなど「先進的な」産業のごく一部の企業のみを対象にしているのではないかという疑念がおこります。

大企業は空前の利益をあげていますが、京都の地域経済を支える中小企業にとっては、「景気回復とはどこの話か」という状況です。京都の今年1月から4月までの倒産件数190件は、昨年同時期の1.6倍で、73件も増えています。伝統産業、例えば西陣織の今年1月から4月の総出荷額は、2年前の同時期より20億円も減っているのです。こうしたもとでがんばっている中小企業をはじめ、京都の地域経済を支える「すべての」中小企業を対象に振興策を講じるべきです。また、中小企業関係者の意見や要望をしっかり反映させることが必要だと考えますが、知事のご所見をお聞かせください。

 

知事京都産業の大きな部分を占める中小企業の活性化は、京都産業の発展に欠かせないことから、中小企業の経営の安定とともに成長の促進がきわめて重要である。このためあんしん借換融資などきめこまかな制度融資や、匠の公共事業、商店街の活性化等とともにあらたな京都ブランド産業の育成、創造的な事業活動を行う中小企業の成長支援など、全国でも非常に高い水準の施策を推進してきた。がんばる中小企業を応援する条例については、これらの実績をふまえ、中小企業に対し施策をより効果的かつ総合的にすすめるために制定するものであり、関係者の意見をききながら制定の内容について進めていきたい。

 

日本海精錬問題 脱硫装置設置を強く指導し、鉛汚染除去の計画を明らかにせよ

 

梅木次に舞鶴市の引揚記念館周辺の大気汚染と鉛の土壌汚染の問題について質問します。

 昨年6月に、環境基準をはるかに超える二酸化硫黄による大気汚染が、長期間放置されてきたことが明らかになり、わが党議員団は本会議、委員会で改善を求めてきました。知事総括でも取り上げましたがその後の経過を踏まえ、質問します。

まず、大気汚染についてです。問題発覚後、昨年7月から、引揚記念館周辺の二酸化硫黄濃度の継続的な観測がされているはずですが、観測結果が公表されていません。環境基準以下になっているのですか。お答えください。

 脱硫装置の設置が急がれますが、発生源である日本海精錬は、当初は昨年10月に設置すると約束し、その後、今年初夏に、さらに今年10月にとズルズル延期しているというではありませんか。どう指導されてきたのですか。一刻も早い設置を強く指導するとともに、設置されるまでは操業停止などの緊急の措置をとるべきです。いかがですか。

次に鉛汚染の問題です。今年3月の知事総括質疑で、鉛による土壌汚染の調査結果の公表が遅すぎるのではないかと指摘し、住民の健康に関わることでもあり、直ちに公表するよう求めましたが、議会審議を避けるように、公表されたのは2月議会の閉会日でした。

結果は、日本海精錬を中心とした概ね2km圏内25地点のうち19地点で、鉛の土壌溶出量が環境基準値を超え、最大値は28倍でした。工場周辺の魚介類からも鉛の高い蓄積が検出されるなど、汚染地域の広さや濃度の高さは極めて深刻なものです。また、基準を超えた地点には、公園、病院敷地も含まれており、その影響が心配されています。その後、専門家会議を設置し、検討がすすめられているようですが、土壌の入れ替えなど汚染除去対策は緊急課題です。計画を明らかにしてください。

次に汚染発生抑止の観点からお聞きします。

今回の汚染の中心地にある日本海精錬は、GSユアサバッテリーを中心に、廃バッテリーから鉛を精錬しています。自動車用廃バッテリーは、特に厳密な扱いが求められる「特別管理産業廃棄物」である硫酸や危険な鉛を大量に含んでいます。バッテリー業界では、平成6年から廃バッテリーを無料で回収する「下取り回収システム」を運用し、原則的に産業廃棄物として扱い、運搬や処理については産廃処理の免許を持った業者が当たっています。全国的にはこのような扱いがあたりまえです。ところが、日本海精錬は廃バッテリーを「有価物」として購入し、鉛を精錬しているという理由から、産業廃棄物の処理や運搬の免許を持たないまま、処理を行なっています。府としてどのように指導していますか。実質的に危険な産廃を扱う日本海精錬に対して、産業廃棄物の扱い業者と同等の厳密な指導を行うべきだと考えますが、いかがですか。お答えください。

 

知事舞鶴引揚記念館周辺の環境問題について、舞鶴市とともに特別対策チームを設置し、環境工学や公衆衛生学など7人の専門家で構成する環境問題専門家会議の意見を聞きながら、汚染防止対策や汚染土壌の除去、食の安心安全確保、健康被害の防止などの対策を総合的に進めている。引揚記念館周辺の大気汚染状況は、昨年7月から二酸化硫黄濃度の連続測定を実施しており、その後結果を昨年12月にプレス発表した後、5月までの状況をふくめ、6月27日の専門家会議で報告、公表した。その内容は、大気汚染防止法に規定する排出基準については、舞鶴市に適用される規制基準値11.5に対して0.1から2.5で、法律上操業停止等の緊急措置を求められない状態だ。しかし、環境基本法に規定する望ましい水準としての環境基準については、昨年7月の測定開始以降、基準を超える時間帯が平均して1割程度みられる。府としては事業者に対し、行政指導により抜本的な脱硫対策を強力に指導してきており、昨年10月に煙突出口における二酸化硫黄を6割程度カットできる簡易脱硫装置を設置させたうえ、本年10月には9割以上カット可能な脱硫装置を設置させることとした。今後とも大気汚染防止法の排出基準をクリアすることはもちろんのこと、環境基本法の望ましい水準としての環境基準についても達成に向けて監視や指導等に全力をつくしていきたい。

 鉛汚染の土壌対策については専門家会議の判断ではただちに健康への影響はないとされたが、住民の安心を早急に確保する見地から、通学路など府民の利用頻度の高い箇所のうち、比較的濃度の高い部分から汚染土壌の除去作業を来月早々にも着手し、引揚記念館周辺エリア全体のとりくみ方策としては、専門家会議の検討をふまえ、今秋には策定したい。

 自動車用バッテリーについては、日本海精錬では、リサイクルの原料として鉛部品を購入し、再生鉛を製品として販売しているので、産業廃棄物処理業者には該当しないものの、再生鉛を製造するプロセスについては産廃処理業者と同様に大気汚染防止法等の規制対象になっているので、府ではこれまで産廃処理業者に対するもの以上の厳しい姿勢でのぞんできた。今後とも厳正な指導を行いたい。

 

梅木日本海精錬の問題では、引揚記念館の職員が9年間も訴え続けてきたにも関わらず、長期間放置されてきたということで、府の責任が大変問題になってきた。簡易の脱硫装置を付けたとか、私たちが説明をきいても操業を抑えてきたというが、今報告があったように1割は環境基準を超えているという実態にある。6月の初めに私自身も聞いたところ、数値は報道されていなかった。12月の報告以後、627日になって専門家会議で報告している。住民は心配しているのだから、しっかりと公表することが必要であると強調したい。

 鉛の処理を行う精錬工場は、全国に20社ほどある。岐阜県のある工場では、環境ISOをとり、住民に情報を公開し、住民としっかりと信頼関係を結ぶことによって鉛の精錬等を行っている。千葉県のある精錬所も環境ISOをとってリサイクル活動を行っている。

 こういうことを考えると日本海精錬が行っているバッテリーのリサイクル事業は、大変重要なこと。それだけにその事業を行うにあたり、鉛や二酸化硫黄の公害をださないためにしっかりと京都府が指導し、企業の社会的責任をはたさせることが求められている。簡易脱硫装置だけでなく、本格的な脱硫装置をつけるといいながら、10月からどんどんずれてきている。この問題については、操業停止を含めてしっかりと指導するべきであり、脱硫装置設置がさらに来年にと延びることがないようにあらためて強く指導をお願いしたい。

 

教育基本法を生かした教育こそ必要  知事は「愛国心」をABC評価できると考えるか

 

梅木最後に、教育基本法の改定についてうかがいます。政府は先の国会に、教育基本法の改定法案を提出し、一気に成立させようとしました。教育基本法は、憲法に準ずる重みを持った法律ですが、法案審議を通じて、教育基本法をなぜ改定する必要があるのか、政府はまったく説明できませんでした。一部に、いじめ、学力低下、少年犯罪の増加等があたかも、教育基本法のせいであるかのような発言がありますが、まったく逆です。教育基本法の理念を生かした教育こそ必要なのです。

「学力世界一」といわれるフィンランドでは、教育の目的は「人格の完成」にあるという日本の教育基本法の理念が参考にされ、教育改革がすすめられました。学力別の学級編成は、20年前に廃止され、他人と比較するためのテストはありません。子どもたちは競争するのではなく、教え合う仲間なのです。日本では、テストが競争の道具となり、こどもたちは「過度の競争教育」の中で、苦しめられています。

またフィンランドでは、1992年に教科書検定が廃止され、教育の内容は、学校と教師にまかされており、教育条件の整備が行政の仕事です。義務教育では20人程度の少人数学級が標準で、教育費は大学まで無償です。「教育の自由」「教育の機会均等」という日本の教育基本法の理念が実行されています。知事と教育長にうかがいます。どの世論調査でも、国民の7割が教育基本法を変える必要はないと答えています。教育基本法を変えるのではなく、教育基本法の理念を生かした教育こそ求められていると考えるのですが、いかがですか。少なくとも、慎重な審議が必要だと思いますが、見解をお聞かせください。

 政府の改定案の内容に関わって、2点質問します。まず、内心の自由に関わる問題です。政府の改定案は、新たに第2条をつくり、そこに「国を愛する態度」など20におよぶ「徳目」を「教育の目標」として列挙し、その達成を国民全体に義務付けています。「徳目」には、当然のものもありますが、法律に書き込み、達成を義務付けることは、特定の価値観を強制することになり、思想・良心・内心の自由を侵害するものです。国会でも「国を愛する心情」を「A」「B」「C」の3段階で評価する通知表について、小泉首相は「評価するのは難しい」「こういう項目を持たなくていい」と答え、小坂文部科学大臣も「評価すべきではない」と答えました。わが党は、諸国民友好の精神にたった愛国心を培うことは重要だと考えています。しかし、愛国心は、法律によって強制したり、義務付けるべきものではありません。知事、教育長にうかがいます。「愛国心」を「A」「B」「C」で評価することが可能だと考えられますか。また、法律によって義務づけ、強制することについてどうお考えになりますか、お答えください。

2点目の問題です。現行教育基本法の第10条には「教育は不当な支配に服することなく、国民全体に対し直接に責任を負って行なわれるべきものである」と明記しています。これは、国家権力が教育を統制し、国民を戦争に駆り立てた戦前の教育の反省の上にできた、教育基本法の重要な理念です。

ところが、政府案では「国民全体に対し責任を負って」を削除し、「この法律及び他の法律の定めるところにより行われる」に置き換え、小坂文科大臣は、政府案について「法律に定めるところにより行なわれるのであるから、不当な支配ではない」と説明しました。要するに、法律さえ決めれば国が無制限に教育に介入できるというもので、今日の教育を戦前に引き戻す極めて危険な内容です。1976年の最高裁大法廷の「学力テスト判決」は「教育内容にたいする国家的介入についてはできるだけ抑制的であることが要請される」とのべていますが、政府案はこれにも反するものです。教育長はどうお考えか、お聞かせください。

 

【知事】教育基本法の改正について、現行法の制定から約60年が経過し、都市化や少子高齢化など、少子化をとりまく環境も大きく変化する中で、子どものモラルや学ぶ意欲の低下、家庭や地域の教育力の低下といった新たな課題が深刻化している。こうした今日的な課題に対応するために、中央教育審議会等での議論を経て、先の通常国会に改正案が提案されたものと考えている。法律改正の具体的な内容については、国会において、まず国民的な議論が展開されることが必要であり、新しい時代の教育の基本理念について、活発な議論が幅広く展開されることを期待している。フィンランドは大学まで無料だとおっしゃったが、梅木議員もご存知のように、あそこの消費税は何パーセントでしょうか。一般サービスが22%、食品が17%であり、このあたりも受益と負担の問題なのかという感じがする。私は、家庭を愛し、地域を愛し、国を愛し、世界の人々を愛するというのは、一連のことと思っている。内心の自由も当然尊重しながら、教育委員会において、子どもの発達という見地からしっかりした教育活動が行なわれるべきものと考えており、それまで評価みたいな、具体的な現場での活動に対して、知事がこの場でしっかりものを言えというご質問というふうに、私は思わないのでこういう答弁をさせて頂く。

 

【教育長】教育基本法の改正について、先程、知事からも答弁があったように、制定から半世紀以上が経ち、教育を取り巻く環境が大きく変化し、子どもたちを巡る様々な課題が生じてきている。この様な中で、将来に向かって新しい時代の教育理念を明確に示し、我が国の未来を切り開く教育を実現していくために、教育基本法改正案が提案されたところであり、今後とも幅広く議論されるべきであると考えている。

 次に、政府改正案の第2条教育の目標については、基本的に、現行法や学習指導要領などですでに規定されていることを整理されたものと受け止めている。また、その中で、「我が国と郷土を愛する態度」についても、すでに現行の学習指導要領において、例えば小学校6学年の目標の一つとして、「我が国の歴史や伝統を大切に国を愛する心情を育てるようにする」と定められており、その評価にあたっては、我が国の歴史や、その中での先人の業績といった、具体的な学習内容について進んで調べるなど、学習内容に対する児童生徒の感心・意欲・態度を総合的に評価しているところだ。従って、子どもの内心に立ち入って国を愛する心情を持っているかどうかを直接的に評価するものではないと考えている。

 次に政府案の第16条教育行政について、現行法と同様に「教育は不当な支配に服することなく」と明記され、教育の中立性や不変・不当性が求められている。その上で、教育行政は、公正かつ適正に行なわれなければならないと規定されているところだ。いずれにしても、こうした点も含め、今後、国において国民的な共通理解を図りながら引き続き議論されるものと考えている。

 

【梅木再質問】知事は消費税のことまで持ち出されたが、大学の教育費が無償になる、そのために消費税が17%か22%、本当にそういうふうになるなら、これはそういうふうに考える人だっていると思う。実際にはそうならずに、自民党・公明党は、消費税を上げたら大学まで無償にするのか、しないじゃないか。そのことなんです。所得税だって負担になる。それこそ租税と負担の問題、バランスと言うなら全体のバランスを考えるべきだと私は言っている。新しい時代の要請と答えられたが、今度の改定案は何をやろうと言っているのか、一つは、愛国心を強制するんです。それから、学力テストを全国一律でやって生徒を選別し、競争させるんです。これが時代の要請か。教育行政が自由に教育に介入することができるようにする、口出しをできるようにする、これが時代の要請か、それが問われている。一般的に時代の要請と言いながら、実際にやることがこの中味だ。今言った点について、時代の要請の中味、もう一度、愛国心とか、学力テストとか、これが時代の要請かどうか、お答え下さい。

それから、学習指導要領を今度教育基本法の中に入れて、愛国心を強制するということが問題なのです、教育長。愛国心、学習指導要領は強制力がないといってきた。今度は教育基本法の中で強制するんです。このことが問題なのです。教育長についても、実際に、高知県の議会では、知事や教育長もしっかりと今の教育理念を活かすと言っているんです。もう一度お答え下さい。

 

【知事】消費税が目的税的に使われるんだったら、ひきあげもという話をされたのには私も驚きましたが、今日的な問題は、いろいろな面で、例えば人の命を簡単に殺してしまったり、尊重できないような、または、子どもたち自信がお互いにやっていく、そういう人を愛する、地域を愛する、家庭を愛し、国を愛し、世界の人々を愛していく、そういうような人々を愛で包んでいくような、私は信頼と絆といっているが、そのあたりが問題ではないか。それを私ははっきりと時代の要請だと思っている。その中で、愛国心だけを一つのものとして取上げてみようというのではなく、私は、一つ一つの小さなことから幅広いものへと、だんだん、人間は抽象的な断面を持ってきているわけだから、そういう発達の段階に応じた愛情の大切さを教えていく教育こそ、今の要請に私は合っていると考えている。

 

【教育長】いわゆる、愛国心があるかないかということを、単純に直接的に内心の評価をすべきでないという、国会でやりとりがされたということを私どもは承知している。それから、国会質疑において、これらの教育目標を法律で規定することによって、その目標を、人の内心にまで立ち入って強制しようとするものではないと、そういう説明がされたものと承知している。いずれにしても、先程答弁したとおり、それから国会でさらに広く議論がされるところと承知している。

 

【梅木】教育基本法の改定は、憲法9条を変えるという動きとあいまって、日本を戦争する国にする、そのための人づくりをするんだというところに問題がある。それから、格差社会の中で、痛めつけられても自己責任というふうに我慢し続ける従順な人間をつくる、こういうところにある。こういうことをしっかりとみて、日本共産党は教育基本法の改悪に断固反対することを表明して私の質問を終わる。