2007年度 京都府予算に関する申し入れ

 

 小泉内閣がすすめた5年余に及ぶ「構造改革」は、府民の暮らしと京都経済に深刻な影響を与えました。「ワーキングプア」と呼ばれる不安定雇用の拡大、リストラと下請けいじめのもとで一部の大企業は「史上空前」のもうけをあげる一方、資本力や競争力の弱い中小零細企業が倒産・廃業に追い込まれ、また、正規雇用から非正規雇用への置き換え、雇用者所得の減少のもとで「格差の拡大」が社会問題となっています。とりわけ青年と中高年齢者の雇用不安は依然として深刻です。

また、定率減税廃止などあいつぐ庶民増税、介護保険制度の改悪、「応益負担」を導入した障害者自立支援法の実施等により、国民負担は急激に増大し、高齢者や障害者など社会的弱者が苦しみに喘いでいます。

 いま、府民の暮らしと京都経済が大変な状況にある時にこそ、地方自治体は住民の暮らしを守り、「住民の福祉の増進を図る」ことに全力を尽くすことが必要となっています。

ところが、この間、知事は「行財政改革指針(かいかくナビ)」「経営改革プラン」による「行財政体質の構造的改革が必要」として「経営の視点」「受益と負担」にもとづく施策の見直しを行ってきました。また、地方財政の切り捨てを目的にした市町村合併を押しつけ、地方振興局の統廃合、洛東病院の廃止、高校の統廃合などのリストラを強引に進め、「効率最優先」で、多くの府民と市町村にさらなる“痛み”を押しつける府政「改革」を進めてこられました。

 来年度の予算編成にあたっては、こうした姿勢をあらため、京都経済を立て直し、府民の暮らしと営業、雇用を守り、福祉の向上を図ることを第一とすること、そして地方財政削減を目的とした「三位一体改革」に反対し、地方自治を破壊する市町村合併押しつけをやめ、市町村がその本来の役割を発揮できるよう財政的にも全面的な支援を行うことが求められています。

 よって、京都府におかれては、次の事項に留意し、来年度予算を編成するよう求めるものです。

 

 @ 予算の編成にあたっては「経営の視点」「受益と負担」の考えをあらため、なによりも府民の暮らしを支える予算とすること。そのためにも、福祉や医療、教育などの充実、京都経済の立て直しのため中小零細企業・伝統地場産業への支援、農林漁業への所得・価格保証を中心とした対策など、「府民の暮らし応援」の予算とすること。

 

 A 「算定の簡素化」を口実に財政力の脆弱な自治体の交付税を削減する「新型地方交付税」の導入及び国の責任を放棄する国庫負担金の削減に反対し、地方交付税率の引き上げ、税財源移譲、国庫補助金の自主的運用の拡大など、地方財政確保を国に求めること。また、府として、過疎・中山間地域対策をはじめいっそうの市町村支援策を講じること。

 

 B 学研都市開発や和田ふ頭、畑川ダムなど不要不急の事業はいったん中止すること。あわせて、京都市内高速道路、関西空港2期工事の中止を求めるとともに、出資金の支出はただちに中止するなど、大規模開発、大型公共事業の徹底した見直しを行い、無駄をなくすこと。

 

 この基本にたって、次の「当面する緊急重要事項」の要望を十分参酌し、予算に反映されるよう申し入れます。

 

当面する緊急重要事項

 

1.府民だれもが、いつでも、どこでも安心して受けられる医療・介護・障害者福祉サービスの充実を

 

 改悪介護保険法の全面実施、自立支援法の本格実施、医療制度の改悪と各種税控除制度の改悪の影響による健康保険、介護保険の保険料の負担増により、サービス利用と医療の抑制がいっそう深刻となっています。施設や医療機関からの退所も相次ぎ、退院後、誰にも看取られずに死亡するという事例や、介護に行き詰まっての、心中や殺人事件などが京都府内でも相次いでいます。

また、府が国の医療費の抑制と一体になって押し進める自治体病院への合理化、民営化の押しつけにより、府北部を中心に医師の不足が深刻化し、地域医療を支えてきた医療機関の診療体制が維持できなくなり、地元でお産ができない、救急体制が維持できないなどの影響が出ています。

このような事態に対し、府民のいのちと暮らしを守る京都府として、社会保障予算の抜本的増額と国民のための制度改革を実施するよう国に要求するとともに、本府として、次の諸対策の実施を強く求めます。

 

@    介護保険制度の緊急な改善のため、高齢者の実状を軽視した機械的判定となっている要介護認定を改善すること。必要なサービスの利用を保証するため生活援助の長時間加算の復活など介護報酬を改善すること。要支援1・2の人の利用限度額を引き上げ、ケアプラン作成の介護報酬基準を改善すること。保険料の値上げをおさえるため、介護給付費に対する国庫負担割合を2分の1に引き上げるよう国に求めること。

A 介護施設利用時の給食費・居住費の負担軽減をただちに行うこと。介護保険利用者支援緊急対策事業を利用しやすいものに改善すること。介護用ベッド、電動車イスなどの介護用具が必要な高齢者に、従来通りの負担で貸与する府独自の制度を創設すること。在宅、施設両面での介護基盤整備に必要な予算を確保し、恒久的な低所得者に対する保険料・利用料の減免制度を設けること。

B 施設・在宅両面での介護の基盤整備を計画的にすすめ、特別養護老人ホーム等の入所待機者の解消をはかること。介護者激励金を復活すること。宅老所をはじめとした「地域密着・小規模多機能ホーム」等の拡充、地域ネットワークづくりなどをすすめること。また、成年後見制度による財産管理への助成、認知症の専門的治療・研究をすすめること。

C    障害者自立支援法により障害者のサービス利用に応益負担の仕組みが導入されたため、サービスや施設利用が抑制されている現状に鑑み、国に対し「応益負担」の撤回を求めること。府が実施する負担軽減制度について、給食費や居住費も対象に加えるなどいっそうの負担軽減をはかること。コミュニケーション支援や移動支援等の地域生活支援事業について、すべての市町村で無料化され、その他の事業でも低所得者への負担軽減がなされるよう、府としてガイドラインを示し、実施する市町村を支援する助成制度を創設すること。障害程度の区分認定にあたっては、知的障害者や精神障害者が低く認定される傾向にあることから、障害者の特性や実態にあった調査方法に改善すること。

D    障害者自立支援法の完全実施により施設の報酬が大幅に減収となっている施設や事業所が安定的に事業を運営できるよう、報酬の日割り方式導入による減収を補填する運営費助成を創設すること。地域活動支援センター事業については、現行の補助金の水準を維持できるように補助額を設定し、府独自の助成制度を創設すること。小規模作業所が新事業体系に移行するまでは、現行の府独自補助制度の水準を維持すること。日払い方式や利用者負担の導入は行わないこと。

E 所得制限の強化や高齢者、母子家庭、障害者の福祉医療制度を後退させる見直しはやめること。高齢者、母子家庭、障害者等を救済するため、独自の福祉医療制度を検討、創設すること。また、「高額医療費の償還払い」の手続の簡素化と窓口負担の軽減、重度心身障害老人健康管理事業の3級への拡大を行うこと。

F 今回の医療制度「改革」により、療養病床の約6割を廃止する方針が決定されるとともに、7月からの診療報酬の改定により療養病床入院中の医療区分1に該当する患者の診療報酬が大幅に引き下げられたため、該当病院、有床診療所から多くの患者が退院を余儀なくされ、「医療難民」「介護難民」を生み出している。国に対し、療養病床の廃止方針の撤回と治療を維持できる診療報酬の見直しを求めること。

また、老人保健法における基本健康診査の廃止に伴い、努力義務とされる75歳以上の後期高齢者に対する健診・保健指導を従来どおり実施されるよう、京都府として必要な財政措置を行なうこと。

後期高齢者医療保険の広域連合の設置にあたっては、府民の請願権、リコール権、直接請求権を保障すること。また、設置される広域連合議会の傍聴の制度化、議会議事録の公開等住民参加の保障について、京都府広域連合設立許可に際し、府として指導・助言すること。

G 「地域医療計画」については、がん対策、脳卒中対策、急性心筋梗塞対策、糖尿病対策、小児救急を含む小児医療対策、周産期医療対策、救急医療対策、災害医療対策、へき地医療対策などについて、具体的な数値目標をあげ、住民への医療情報を十分に提供した上で、地域で整備すべき医療機関と連携のあり方等について、住民参加で計画を充実させること。

H 医師の不足、偏在による地域の医療体制崩壊の危機を打開するため、先般「医師確保と地域医療を守る日本共産党の医師確保5つの提言」(別紙)を申し入れたが、この内容や関係者の声も踏まえ、抜本的な対策を講じること。また、看護師確保対策として、府立看護学校の養成定数の拡大と北部分校の設置、就労支援策を充実させること。准看護師移行教育のための「二年課程通信制」の早期開設を行うこと。OT、PTの養成確保と地域偏在解消のため、診療報酬の改善を国に求めること。

I 府北部の救急医療情報システムの充実、三次救急医療機関の整備を図ること。府立与謝の海病院に、救命救急センター、精神科病床、心臓血管外科の整備及び亜急性期病床、がん診療等の機能拡充を図り、また、リハビリテーション機能を確立すること。がん対策の総合的推進、C型肝炎対策、高次脳機能障害への対策など、新たな医療課題に対する体制の整備・拡充を図ること。精神科救急医療体制の整備を引き続き進めること。

J 舞鶴医療センターの医師確保と周産期医療体制の充実、NICU、PICUの整備、小児救急体制の整備を進めること。

K 府の総合的なリハビリテーション提供体制を早急に確立すること。回復期、維持期、職場復帰などの一貫したリハビリテーション体制を構築し、民間が受け入れることが困難な脊椎損傷や高次脳機能障害など重度障害者のリハビリ医療確保のために、府が責任を果たすこと。

L 国民健康保険への国庫負担を45%に戻すよう国に求め、高すぎる保険料の引き下げを実現し、保険料を払えない状況をなくすこと。また、保険証の取り上げ、資格証明書・短期証の発行を市町村におしつけないこと。医療費一部負担金の減免制度、法定減免や申請減免制度について、市町村に働きかけ、制度が実際に活用されるよう指導すること。

M 生活保護費の国庫負担金を堅持し、老齢加算や母子加算等を元に戻すよう国に強く求めること。生活保護の申請を窓口で拒否するやり方を改め、生活保護を受ける権利を保障すること。生活保護の申請用紙を関係機関の窓口に設置すること、医療券方式を医療証方式にきりかえるなど、抜本的な改善を行うこと。生活保護世帯への見舞金を復活させること。

 

2.ゆきとどいた子育て環境の整備で、安心して子育てができる京都に。児童虐待死事件の原因を明らかにし、児童虐待から子どもを守る体制の強化を

 

 深刻化する少子化の克服のためには、人間らしい生活を取りもどす、「ルールある経済社会」への転換と子育て対策予算の抜本的な拡充を国に求めるとともに、府が市町村とも協力して、子育て支援対策を強化するよう求めます。長岡京市での児童虐待死事件の原因を究明し、児童相談所機能と体制の強化により再発を防止すること。市町村、関係機関と協力し、児童虐待そのものの根絶のために全力をあげること。そのために次の諸対策の実施を強く求めます。

 

@ 乳幼児医療費助成制度を、通院、入院ともに、義務教育終了まで、少なくとも小学校卒業まで無料化すること。通院についての月8000円までの自己負担及び償還払い制度は撤廃すること。小児救急体制など、小児医療の体制の整備をはかること。府立医科大学附属病院の建て替え整備による「小児医療センター」は、小児医療の総合的拠点にふさわしい内容となるよう整備・拡充すること。患者家族宿泊施設のいっそうの整備・拡充を行うこと。

A 「認定こども園」の基準を定める条例制定にあたっては、こどもに最善の利益を保障することを理念として明記するとともに、保育所と幼稚園の施設設置基準を厳守し、保育の質が守られるようすること。保育料は、市町村の保育料にあわせるとともに、保育に欠ける子の入所について市町村が責任を持つよう定めること。

B 「きょうと未来っ子いきいき推進計画」の具体化にあたっては、子育て家庭の経済的負担の軽減をはじめ、住民・関係者の要求・意見を積極的に反映させること。また、企業の行動計画づくりと有給休暇や労働時間短縮など労働条件の改善に向けて、国と協力しながら指導・援助を強めること。養護学校児童生徒をはじめ、障害児をふくむ学童保育体制の抜本的整備、保育料の軽減、一人親家庭への支援の強化などにつとめること。中高生を対象にした障害児放課後サポート事業の拡充を図ること。

C 策定された「京都府DV基本計画」にもとづき、婦人相談員の増員など婦人相談所、配偶者暴力相談支援センターの体制を強化すること。また、京都市内と府北部、南部に配偶者暴力相談支援センターを設置すること。吉田母子寮、綾部若草寮の整備と機能拡充、児童養護施設の増設などを行い、緊急一時保護施設、母子生活支援の拡充を行うこと。公営住宅母子優先入居枠の拡大、民間シェルターへの財政支援など、被害家庭への総合的支援体制を確立すること。洛東病院跡地への施設の移転、集約化計画は、一つ一つの施設の機能が最大限に発揮できるよう、同地への移転の見直しも含め再検討すること。

D 児童相談所について、24時間の相談体制を確立し、専従の児童虐待対策チームを設けること。児童相談所に「子ども家庭相談センター(仮称)」を設置するなど、被虐待児童と家族への総合的支援が可能となるよう機能を拡充すること。これらの実施のため、児童相談所の機能と体制を抜本的に拡充・強化すること。府民、市町村、関係機関と協力し、児童虐待の早期発見、保護、児童虐待そのものの根絶のための施策展開をはかるネットワークを構築すること。

E 「子ども発達支援センター」は、ADHD・LD・高機能自閉症などの障害児もふくむ障害児の早期発見・早期療育体制を確立するため、医師や専門スタッフの増員を行って診療・療育・相談体制のいっそうの拡充・強化を行うこと。新センターへの交通手段の改善と保育室の設置を行うこと。同センターの地域療育部門の拡充を図り、北部にも地域療育センターを整備すること。

F アレルギー性疾患対策についての府としての総合的な方針を確立すること。アトピー、シックハウス症、ぜんそくなどアレルギー性疾患について実態調査を行うこと。アレルギー性疾患に対する専門知識をもった保健師や栄養士などの積極的な人材の育成、研修などの系統的で計画的な支援と「アトピー110番」など気軽に相談できる窓口の設置を行うこと。

 

3.雇用の確保と安定をはかり、府民の暮らしを守る施策を

 

 一部大企業が空前の利益をあげている一方、雇用・失業問題は引き続き深刻で、とくに、青年の就職難や不安定雇用の増大と偽装請負などの違法行為の横行など、一刻も放置できない事態が続いています。派遣労働者や契約社員の増加、パート、アルバイトの増加などに見られる雇用の流動化を、「働き方を選べる社会」として促進する本府の姿勢を改め、国に対し、リストラ支援や労働法制改悪による不安定雇用の拡大と偽装請負の合法化をやめるよう求めるべきです。また、青年に仕事を保障し、安定した雇用を増やすため、大企業に社会的責任をはたすよう強く働きかけるとともに、中高年齢者、女性、障害者の就業支援など、自治体としての雇用促進対策を抜本的に強化することが必要です。

 

@ 深刻な就職難にある高校生・大学生やフリーター、ニートとなっている青年など、未来をになう青年に仕事を保障するため、大企業にたいし、新規採用抑制を中止し、青年を正社員として採用するよう、知事を先頭にして強く働きかけること。高卒の新規就職者を受け入れる中小企業にたいして、補助制度をつくること。

  実施を表明した派遣労働の調査は、労働条件、権利保障などの実態を詳細につかむものとし、その結果をもとに、労働環境の改善・整備を進めること。

A 国のジョブカフェ事業終了後設置されるジョブパークは、若年者就業支援センター、北部センターの機能を維持するとともに中・高齢者、女性、障害者の就労支援とあわせいっそうの強化をはるとともに、職業訓練や就職説明会などの拡充をはかること。新規未就職者やフリーター、ニートの職業訓練、生活保障や雇用保険適用が受けられるよう雇用保険法の改善を国に求めること。法定雇用率を下回っている障害者の自立・就業支援対策の充実をはかること。

B 介護基盤整備の促進など福祉施設の充実、30人学級の実施、必要な消防職員の配置など、地元での雇用の場の拡大をすすめること。生活関連、福祉型公共事業を中心とした地元雇用対策をいっそう拡充すること。

C 失業や経営破たんで暮らしが成り立たなくなっている府民を救済する臨時の公的就労制度をつくること。「暮らしの資金」の大幅な増額・通年化を実施すること。離職者支援資金の貸し付け要件を緩和し、誰でも使えるよう、府独自の対策を講じること。

E 雇用拡大のためにも、国に対し、大企業のリストラを規制する法制化、違法なサービス残業、偽装請負の根絶、正社員化の促進など、労働条件の抜本改善の諸施策を講じるよう求めること。また、本府として労働相談窓口を設置し、京都労働局とともに、サービス残業、偽装請負などを放置する企業名の公表など、実効ある措置を講じること。派遣、契約、パートなどで働く労働者への差別・格差をなくし、「均等待遇」のルールを確立するよう、国に強く働きかけること。

F 企業がすすめる解雇、人員削減、工場閉鎖などのリストラ計画の事前届出、地域経済と雇用への影響調査、地元市町村や商工会議所(会)など関係機関との協議を求める「リストラ対策条例」を制定するなど、雇用確保に最大限の努力を行うこと。

G 企業誘致に当たっては、「雇用計画書」の提出を求め、正規社員の新規雇用拡大に結びつくよう補助金対象の雇用要件を引き上げること。また、企業の撤退については「事前協議」を求め、身勝手な撤退やリストラを行う場合は補助金の返戻を求めること。

H 団塊世代の定年時期を迎える中、企業に対し定年の延長、希望する労働者への再就職の斡旋を求めるとともに、府としての相談窓口の設置、行政による公的就労の場を創出するなど、本格的対策を講じること。

 

4.和装・伝統産業支援、京都経済の立て直しを 

 

 今年春の「愛染蔵」8月末の「たけうち」の連続した大型倒産で、和装・伝統産業は非常に厳しい情況におかれています。すでに西陣や丹後では、先行き不安などで在庫調整、生産調整が行われ、仕事がストップしているところや、「週に3日しか仕事がない」などの事業所が生まれています。京友禅も同様で、あらゆる和装関連事業所が危機に直面しています。

政府は、いざなぎ景気以上の景気回復と言っていますが、それは一部大企業だけで、京都の府民と中小零細企業、商工業者、勤労者の実感からは程遠いものです。府民の暮らしを守るためにも、経営困難に直面している中小企業・伝統地場産業を支援し、京都経済の立て直しをはかることは、引き続き、府政の重要課題となっており、次の諸対策を強く求めます。

 

@ 「伝統と文化のものづくり振興条例」を活用し、たけうちの倒産に関連して、西陣、丹後、京友禅の振興をはかるため、事業所調査など早急な実態調査を行い、庁内横断的な総合的対策を行う対策本部を設置すること。

A 事業者の生産意欲、消費者の消費意欲を高める取り組みを強化し、特に年末の資金需要期に向けて、すでに制度融資を活用している事業者でも、融資が受けられる「つなぎ緊急融資」の創設をはじめ、金融施策の抜本的充実をはかること。

B 連鎖倒産や企業再構築で大量の離職者の発生が予想される事態のもと、雇用対策事業の充実を行い、事業相談、生活応援の相談窓口を、商工部、府民労働部など関連部署の連携のもと設置すること。

C 和装振興を推進する立場から、企業のコンプライアンス(法の遵守)、公平公正で秩序ある体制の再構築に向けて、行政としてのイニシアチブを発揮し、業界団体や販売グループの支援・育成をはかること。

D 消費税の大増税計画をやめるよう、国に強く要求すること。

E ベンチャー企業育成や企業誘致偏重の施策を改め、「中小企業振興基本条例」(仮称)を制定し、府内経済と雇用を支える中小企業への振興対策を抜本的に強化すること。また、「伝統と文化のものづくり条例」が真に実効あるものとなるよう伝統産業の実態調査、後継者育成制度の確立等に取組むこと。また、関係者の英知を結集して、京都経済の立て直しのため、真に実効ある振興策の確立をはかること。

F 府の行う公共事業は、単独事業のこれ以上の削減をおこなわず、生活密着型への転換、分離・分割発注をさらにすすめ、地元中小建設業者や官公需適格組合の仕事確保をはかること。また、バリアフリー化、耐震性の強化など、中小建設業者の仕事を確保する「住宅改修助成制度」を創設し、すでに実施している府内自治体に対し、支援を行うこと。小規模事業者登録制度を創設すること。

G 地域経済と商店(街)、生活環境に大きな影響を及ぼす大型店の相次ぐ出店を規制するため、小売商業調整特別措置法を活用し、自治体の独自規制を強化できるよう支援すること。また、国に対し大店立地法の需給調整排除の条項を削除するよう求め、京都市と協力して中心市街地への大型店の出店攻勢に歯止めをかけること。商店街と地域住民が協力して安心して暮らせる「まちづくり条例」を制定し、市町村と協力して大型店の無秩序な出店にたいする強力な指導を行うこと。商店街振興のための支援を抜本的に強めること。

H 新規開業や新事業への転換、新製品の開発に取り組む中小企業・業者に対し、無担保・無保証人、低利で返済猶予期間の長い融資制度の創設、信用保証協会の保証枠の拡大など、融資制度の改善・充実をはかること。

I 中小企業金融の実態を調査し、「業績回復までの返済猶予」など、積極的な融資対策を講じること。中小企業あんしん借換融資について、国民金融公庫など政府系金融機関分にも対象を拡大し、延長・継続すること。

J 本府は、長年にわたり経営・金融・技術指導を一体とした中小企業支援体制をとってきたが、これが「解体」され、経営指導は「京都産業21」へ、金融相談は民間銀行へ任せる体制となった。こうした体制を改め、中小企業への総合的な支援体制を維持するため、府としての経営診断員の配置、金融相談窓口の創設など改善を行うこと。また、「小規模企業おうえん融資」等の中小企業支援融資については、事業者が身近に相談できる「団体窓口受付」の復活、商工会などへの経営診断の委託を再度実施し、中小企業振興をはかること。

 

5.農林漁業への支援・振興策を抜本的に強め、農林漁業と農山村を守る

 

いま、日本の食料・農業は、農産物輸入の増大と政府の価格保障政策の放棄で、米価の暴落など、農家の経営が深刻化し、後継者難にいっそうの拍車をかけ、中山間地での農村の「崩壊」さえ危惧されています。さらに、BSE問題や遺伝子組み換え食品など「食の安全」への不安も広がっており、こうしたもとで、国内農業の発展、自給率の引き上げと安全な食料の供給は重大な課題となっています。

 ところが政府は、食料・農業・農村基本法にもとづく「基本計画」の見直しでは、食糧自給率引き上げ目標を先送りし、「経営所得安定対策」を導入して農業施策の対象を認定農家などに限定し、日本農業を支える多くの家族経営農家を切り捨てようとしています。これは小規模、家族経営中心の京都に大打撃を与えるもので、農業をいっそう衰退させるものです。

 こうした「基本計画」に反対し、京都の農林漁業を支援・振興し、ふるさと農山村を守るため、次の諸対策の実施を強く求めます。

 

@ 京都の農業の実情に合わない「品目横断新経営安定対策」に反対するとともに、「続けたい人」「やりたい人」すべてを担い手とした支援等を推進すること。集落・地域での取組みに対し、府独自の対策を講じ積極的に支援すること。とくに、小豆・黒大豆・伝統京野菜など、地域農業を支える特産振興に積極的支援を行うこと。

A 「米政策大綱」に反対し、家族経営を守る立場を堅持すること。そのためにも、政府に対し、不足払い制度の導入など米価下落対策をただちに講じるとともに、不要な米輸入の削減、備蓄制度の見直しを求めること。

  WTO交渉にあたっては、米を自由化の対象から外すよう要求すること。また、MA米は対外援助に回すよう政府に求めること。

 B 野菜の価格・所得保障制度を拡充し、すべての産地・農家が加入できるよう支援策を拡充すること。「こだわり農法」実施農家に対する所得保障制度を実施すること。

 C 畜産振興のため、飼料の自給化、家畜診療体制の強化、酪農ヘルパー制度の拡充など、経営安定対策を強化すること。

   安全性の確保が保障されていない米国産牛肉について、国内と同様の安全性対策を求めるよう国に要求すること。BSE発生の原因究明とその早期解決を図る対策の強化を国に求めること。

D 外材の輸入規制、緊急を要する除・間伐へのいっそうの支援対策、造林経費控除を経費全額に引き上げることなどを国に求めること。

   国産材の利用促進のため、公共事業や学校など公営施設での府内産材の優先使用、間伐材の利用など、需要拡大のための積極策を講じること。「京の木の家づくり支援事業」の交付金については、使用量基準だけでなく、北山丸太などに実状に応じた基準を設けること。間伐材や木くずの燃料化、バイオマス発電の推進など新たな事業の促進をはかること。

E 漁港整備の促進、育てる漁業、資源管理型漁業、沿岸漁業のいっそうの振興をはかること。水産加工、商品開発、流通への支援、加工施設整備への支援の強化をはかること。

F エチゼンクラゲ(大型クラゲ)による被害実態調査を早急に進めるとともに、漁業が継続できるよう被害補償及び緊急融資等、必要な対策を講ずること。また、連続的発生のメカニズムなど生態調査の強化を国に働きかけるとともに、漁網の改良や導入への助成など、対策を強化すること。

G 「食の安全」を確保するため、食品衛生監視員の増員・専任化をはかり、保健環境研究所、保健所、消費生活科学センターなどの体制強化と検査機器の充実をはかること。

H 「地産地消」の促進をはかるため、米飯給食だけでなく、学校給食や府立の福祉施設・病院等で地元産食材の活用をはかること。ニシノカオリの作付けを奨励し、学校給食パンに府内産小麦・国内産小麦を使用すること。

I 「農業農村振興条例」を制定し、農家の組織化・共同化の取り組みに対する助成、後継者・担い手育成対策の強化、農業機械更新への助成など、総合的な農業振興対策を講じること。中山間地直接支払い制度の拡充、改善を政府に要求し、その積極的活用をはかること。集落の取り組みに対する支援を抜本的に強めること。

J 有害鳥獣対策予算を大幅に増額し、適切な駆除、効果的な防除対策を実施すること。国に対し、有害鳥獣対策への助成制度と被害補償制度の確立を求めること。

 K この間の府内の「農協合併」は、農家組合員や職員の声も無視して強引に推進され、そのうえ「経営一辺倒」で支所の廃止や営農部門の切り捨てなどがすすめられてきた。また、労働組合への不当な攻撃と権利侵害が行われてきた。これらは農家の営農を守る農家自身の組織としての農協本来の役割を投げ捨てるものである。農協が民主的な運営に立ち返り、農協本来の役割をとりもどすよう、府として指導を強化すること。また、これ以上の京都の農協合併は行わないよう指導すること。

 

6.大規模開発・公共事業の抜本見直しで、不要不急の事業を中止し、公共事業は災害対策・生活基盤整備に切りかえを

 

 大規模開発・大型公共事業は、単に規模を縮小するだけでなく、中止を含めて思い切った見直しを行い、府民の命と財産を守るため、地震・風水害など防災対策を最優先とするとともに、公共事業を生活密着型の基盤整備に切りかえるため、次の諸対策を実施するよう強く求めます。

 

@ 災害に強い郷土づくりのため、遅れている河川改修、土石流発生危険箇所や地滑り危険箇所、堤防危険箇所、急傾斜地、老朽ため池、浸水常習地域等の改修を急ぎ、災害防止対策を抜本的に強化すること。さらに、恒常的な住宅再建支援制度を国に要求すること。また、舞鶴市の高潮による浸水被害への抜本的対策を講じること。

A 由良川・大手川の災害対策特別緊急事業については、住民の要求を再度よくききとり、改修を急ぐこと。

B 活断層調査の結果をふまえ、東南海・南海地震の「防災対策推進地域」の山城地域の追加指定を国に要望するなど、大規模地震対策を強化すること。学校、公共施設の耐震診断、補強工事を急ぐこと。木造住宅の耐震診断制度を無料化し、耐震住宅改修への助成制度を創設すること。

C 和田ふ頭の建設は中止すること。学研都市開発計画は、木津東・木津北地区の中止など全面的な見直しをすすめ、自然が生かされたまちづくりへと転換すること。畑川ダム建設は、過大な水需要予測、水質問題等を再検討し、ただちに中止すること。

D 丹生ダム・大戸川ダム計画は、利水面からだけでなく、治水についても見直し、完全に撤退すること。天ヶ瀬ダム再開発計画は、府として、過大な水需要計画を改め、水利権を放棄するとともに、宇治川の景観・環境破壊を進めることから中止を求めること。

  府営水道について、住民の負担軽減措置を行うこと。乙訓浄水場系の運営は、責任水量制を見直し、2市1町との「給水に関する協定」を見直すこと。

E 京都市内高速道路は市内の交通渋滞と環境破壊をいっそうすすめるものであり、建設の中止を求めること。本府は、阪神道路株式会社から撤退すること。第2名神高速道路(大津〜城陽間、城陽〜八幡間)の建設をやめるよう国に求めること。高速道路とそのアクセス道路建設優先の道路政策を改め、府民の生活と地域経済に結びついた生活関連道路の建設・整備優先に切りかえること。

とくに、国道27号、163号、307号等の歩行者安全対策を緊急に行うこと。

F 公共事業の発注にあたっては、「公共工事入札・契約適正化促進法」にもとづき、入札及び契約の透明性を確保し、談合など不正行為の排除や元請・下請の契約関係の適正化につとめること。地元企業・中小企業の育成に配慮した、ランク別などの条件付一般競争入札を基本とすること。公共工事に従事する労働者の適正な賃金や労働条件を確保するため、実態調査と「公契約条例」の制定を行うこと。

G 府営住宅をストック活用だけでなく、府民の住宅要求に応え、計画的に建設すること。公営住宅法の改悪に反対し、入居収入基準の引き下げ等による入居者の追い出し、家賃値上げをやめること。府営住宅の建設から管理運営までを大手企業の営利に委ねるPFI手法の導入はやめること。既存住宅へのエレベーターの設置などのバリアフリー化、水洗化、設備の近代化が実施されていない住宅の整備を急ぐこと。エレベーターの電気代及び耐用年数がすぎた長期入居者の部屋の畳・ふすま等の取替えは、府の費用負担とすること。

H マンション管理適正化法の趣旨にのっとり、府として早急に実態調査を行い、耐震強度にかかる相談も含め専門家によるマンション無料相談窓口の拡充をはかるとともに、管理組合の育成・援助、大規模修理に対する融資の拡充など、府独自の対策を行うこと。

I 「都市再生緊急整備地域」の指定など、民間企業主導の乱開発をすすめる施策に反対し、住み続けられるまちづくりに努めること。キリンビール跡地の開発については、キリンビールに計画の再検討を求めること。

J 駅舎のバリアフリー化について、一日の乗降客5000人以上の駅舎だけでなく、それ以下の駅舎についても市町村と協力し、計画的促進を図ること。

K 世界歴史遺産、伝統的建造物、重要文化財などの周辺にバッファゾーンを指定し、景観保全をはかること。景観法の積極的活用をはかり、マンション建設等に高さ・意匠規制を強化すること。すべての市町村が、景観法の指定団体となるよう予算措置等も検討し、市町村に働きかけること。

 

7.「環境京都」にふさわしい環境行政の確立を

 

 いま京都府では、「京都府地球温暖化対策条例」を制定し、地球温暖化防止対策に取り組んでいるところですが、COP3の開催地・京都でこそ、その実行に京都府と事業者が責任を持ち、目標達成にむけた実効ある取組みを促進する必要があります。また、環境汚染を規制し、生態系を守るための環境行政を強化することが求められます。環境破壊につながる大型公共事業はいったん凍結し、見直しのための住民参加と情報公開、代替案の検討が必要です。よって、次の諸施策の実施を求めます。

 

@ 「京都府地球温暖化対策条例」で掲げる温室効果ガスの削減目標(2010年までに1990年比で温室効果ガスの総排出量を10%削減する)を達成するため、排出量の大半をしめる産業、運輸部門の対策を抜本的に強化すること。

 また、都市再開発や地域の各種開発プロジェクト等による浪費と環境破壊をなくし、エネルギーの効率的利用、再生可能エネルギーの開発・利用を促進するなど、資源エネルギーの浪費構造をあらため低エネルギー社会に転換するようつとめること。風力・太陽光発電など環境に配慮した自然エネルギーの普及・活用・開発に本格的に取り組み、電力会社に対し、安定した価格での買い取りを義務付けるよう国に求めること。

A 府域での温室効果ガスの削減に逆行する年間880万トンものCO2を排出する舞鶴石炭火力発電所の操業を中止し、2号機建設は行わないよう関西電力に社会的責任を果たさせること。また、京都市内に大量の自動車を呼び込み、環境を悪化させる京都市内高速道路の建設はただちに中止を求めること。都市の環境を保全・回復し、河川敷の緑化や屋上、壁面緑化の推進などを含めて市街地の緑化などの対策を強化し、ヒートアイランド化を防止すること。

B 産業廃棄物の不法投棄を根絶させるために、府が策定した「産業廃棄物規制条例」にもとづいて、徹底した立ち入り検査の実施、不法投棄のルートと関与者の解明、違反者はもちろん排出者の責任による撤去を実施させ、行政による代執行も含めた実効ある措置をとること。

  加茂町のフェロシルト問題や舞鶴の鉛汚染、城陽の山砂利採取跡地の産廃搬入問題など、府としての対応の不十分さを教訓とし、住民の相談や通報を受けての迅速・丁寧な対応、関与者への的確・厳正な対応を行うこと。また、汚染物質・土壌の運搬や防除等については、周辺住民の安全・安心を第一に、万全の対策を講じること。

C ごみの発生を設計・生産段階から削減する拡大生産者責任を明確にしていない家電リサイクル法、容器包装リサイクル法、建設リサイクル法などの改正を国に強く求めるとともに、府としても、市町村に対する積極的な指導援助を行うこと。

D 府の「ゴミ処理広域化計画」を見直し、市町村に強制しないこと。ゴミの発生抑制と減量化のための施策を促進すること。また、RDFの製造・貯蔵を含む廃棄物処理場について、安全基準が策定されないもとでの設置については認めないこと。

E アスベスト(石綿)による健康被害から労働者を保護する措置を定めた「石綿安全条約」(石綿の使用における安全に関する条約)の日本での発効を受け、石綿の製造・使用の全面禁止、建築物の解体・石綿除去作業のさいの安全対策の抜本的強化を国に求めること。また、アスベスト新法については、労災適用外となる被害者への補償内容を労災と同等以上とすること、検診等でアスベストが原因と思われる疾病の所見が認められる全ての人に継続的に無料で検診や健康管理を保障すること、アスベスト原因が疑われる所見や症状にある人は、職歴・居住歴などから被曝の可能性が認められる場合も被害者認定ができるようにすることなど、国に改善を求めること。アスベスト飛散防止措置を行うための中小零細企業及びマンションの撤去・改修工事等に対し、無利子・無担保・無保証で融資する制度を、国と協議して創設すること。

F ダイオキシン対策を引き続き強化すること。調査・監視体制の強化とともに、発生源対策を抜本的に強化すること。国と事業者の責任で、ダイオキシンの発生を未然に防止するよう求め、府は、事業者が製造の段階から塩化ビニールなど、ダイオキシンの発生の原因となる物質の生産を大幅に減らし、使用後は回収して再利用を図るよう指導を強めること。また、府として、府保健環境研究所にダイオキシン検査体制を整備するなど、体制の強化をはかること。

G 多発している工場跡の土壌汚染にたいし、土壌汚染対策法も活用して、実効的な対策を講じること。また、有害化学物質による環境汚染を防止するため、PRTR法(特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律)にもとづいて、有害化学物質の調査・研究など対策の抜本強化をはかること。とくに、ディーゼル車の排ガス規制の強化など二酸化窒素や浮遊粒子状物質削減対策、有害大気汚染物質(ベンゼン、トリクロロエチレン、ジクロロメタンなど)の環境保全目標の達成、内分泌撹乱物質(環境ホルモン)への本格的な対策、シックハウス問題への抜本対策等を講じること。

H 作年度から徴収が開始された産業廃棄物税が、産業廃棄物の減量化・リサイクル技術の研究開発支援などをはじめ、産業廃棄物の発生抑制、再使用、再生利用の促進に生かされるよう取組みを検討、開始すること。中小企業の公害防止対策や公害対策の研究・開発について、助成制度及び税制上の優遇措置の拡充をはかること。

I 重大事故が相次ぐ原発の総点検、老朽原発の段階的廃止を国と関西電力に要求すること。原発防災計画は府内全域を対象としたものに改めること。高浜原発3・4号炉のプルサーマル計画の中止を求めること。

J 府内で808種が絶滅の危機に瀕していることから、これら絶滅危惧種の保全対策を進めるための保護条例を創設し、絶滅が危惧される野生生物を地域ぐるみで保全するため、府民啓発や無秩序な開発規制に取組むこと。

 

8.教育基本法と「子どもの権利条約」を生かした「教育改革」と学校づくり、文化・芸術・スポーツの振興を

 

 教育行政の第一の責務は教育条件の整備であり、「30人学級」の早期実現や私学助成の拡充など、府民の切実な願いに応えることです。政府と自民党・公明党の与党が、教育の荒廃の原因を教育基本法に求め、その改悪をねらう策動には根拠も道理もありません。国の教育介入と不当な支配をやめさせ、父母、子ども、教職員、住民が主人公の真の「教育改革」にきりかえるため、次の諸施策の実施を求めます。

 

@ 教育基本法の改悪にきっぱり反対し、教育の自由と自主性を保障すること。また、「内心の自由」を侵害し、教育への「不当な支配」となる「日の丸」「君が代」の強制と、「心のノート」の押し付けを止め、侵略戦争を美化する教科書を採択しないこと。さらに、義務教育費国庫負担制度を堅持して、教育の機会均等、教育水準の確保と無償制の原則という国の責務を果たすよう、国に求めること。

A 府民の貴重な財産である府立の両大学の「法人化」は、教育・研究・医療などのサービスの低下、学費値上げや教職員削減など「経営の視点」にもとづく経営効率最優先、行政のスリム化を目的とする道理のないものであり、突然発表された「2大学1法人化」方針は撤回すること。

B 子どもたちの安全を守ることは自治体の基本的役割であり、学校の安全を守る責任は行政にあるとの立場から、子どもたちの登下校や日常生活の安全対策を支える予算措置、指導に携わる教職員及び学童保育所など児童福祉施設の職員の増員に積極的に取り組むこと。

C 学級再編基準を改善し、全ての小・中学校で少人数学級を早期に実現するとともに、いじめや不登校・学級崩壊などの教育困難に対して支援体制を強化すること。また、子どもたちを競争に追い立て、「できる子」「できない子」に分ける習熟度別授業の画一的押しつけをやめ、学校現場での少人数学級の「選択実施」を保障すること。さらに、競争の教育に拍車をかける「学力診断テスト」や「業者テスト」の実態を調査し是正するとともに、結果を公表し、全国の学校に点数で序列をつける「全国一斉学力テスト」への参加を取りやめること。そして、学校と教職員を、いっそう激しい管理と競争に追い立てる「学校評価制度」や「教職員評価制度」を見直すこと。

D 「府立高校改革推進計画」にもとづく高校統廃合計画を撤回するとともに、希望するすべての生徒に行き届いた高校教育の機会を保障し、地域の高校を守り発展させること。また、「特色ある学校づくり」の名による高校の序列化や高校間格差と競争の激化、地元の高校に入りにくくなる制度改編をやめること。さらに、通信制・定時制の廃止・縮小計画を見直し、南部地域に新設すること。

E 過密度を増す南山城養護学校や向日が丘養護学校の医療的ケアを要する子どもたちの長距離・長時間通学で、今後5年間も解消されない府南部養護学校再編計画を見直し、宇治市、八幡市、城陽市に一刻も早く養護学校を新設すること。また、老朽校舎の抜本的改修や寄宿舎の充実など、子どもの発達・成長を保障する計画を策定すること。さらに、特別支援教育の実施に際しては、障害児学級の存続と発展、通級指導教室の拡充・整備など、障害児教育条件の拡充を行うこと。LD、ADHDなど新たな障害児教育の対象となる子どもたちや学校への支援体制を充実させ、必要な教職員の増員をはかること。

F 教職員定数の2割を占める定数内・外の臨時教員の配置を抜本的に改め、正規職員の採用を促進すること。また、養護教員、事務職員の複数配置をはじめ、食教育の充実に欠かせない栄養教諭・職員の全校配置、専任の図書館司書の全校配置など、教職員定数・配置の抜本改善をはかること。

G アスベスト対策、耐震補強工事や普通教室の冷房化、バリアフリー化の促進などをすすめること。そのために、国に対し国庫補助制度の拡充を求め、市町村への支援を行うこと。

H 義務教育費無償の原則に基づき、教育費の保護者負担の軽減を図るとともに、就・修学援助制度の拡充、高等学校等の授業料負担の軽減や通学費補助の拡充、各種奨学金制度の充実を図ること。また、私学助成を大幅に引き上げるとともに、直接助成の単価改定、授業料減免制度の拡充を行うこと。

I 旧同和地区の学力状況調査と部落解放同盟への資料提供を行わないこと。

J 「文化力による京都活性化推進条例」の運用にあたっては、これが真に府内の文化・芸術の振興に資するよう財政措置も含め府の責任を果たすこと。公的スポーツ施設の増設、整備の拡充、利用料金の引き下げなど、府民のスポーツ活動の振興をはかること。

 

9.地方交付税削減など国の地方財政切り捨てに反対し、住民自治の確立、「府民が主人公」の府政運営を

 

 政府は、この間、強引な市町村合併を地方に強要する一方、地方交付税や国庫補助負担金の大幅削減など地方財政の切り捨てを進めています。こうした地方財政切り捨てに反対する広範な自治体関係者などのたたかいをいっそう発展させるとともに、真に市町村自治の確立をはかるため、いっそうの情報公開と府民参加を広げ、「府民が主人公」の府政運営をはかるため、次の諸施策を行うよう求めます。

 

@ 「新型交付税」導入による地方交付税の削減など地方財政の切り捨てでなく、地方交付税制度の維持・拡充、義務教育費や生活保護費などナショナルミニマムを保証するための国庫負担金を堅持するよう強く国に求めること。

A 府として、市町村合併の押し付けや介入はいっさいやめ、市町村の将来はあくまで住民自身の自主的判断で決められるよう、徹底した情報の公開と住民投票など住民の意思を尊重すること。また、すでに合併した市町では、周辺部の衰退など深刻な事態が生まれており、いっそうの市町村支援策を講じること。

B 「自立」をめざしてがんばる規模の小さい市町村や住民の地域づくりを支援するため、財政的支援及び専門職等の人的支援を強化するとともに、地域おこし事業への支援の拡充、市町村振興資金の低利への借り換えなどを強化すること。

C 市町村と連携し、過疎地域をふくめ通院・通学などの「生活の足」の確保、地域住民の「交通権」を保障するための財政的支援の拡充を国に求めるとともに、府としての財政面もふくめた支援強化をはかること。コミュニティバス路線の確保など、生活関連交通機関の整備・充実をはかること。

D 男女平等のいっそうの促進を図るため、策定された「男女共同参画条例」の運用にあたっては、憲法及び女子差別撤廃条約の男女平等の理念の徹底、母性保護、事業主・企業主責任、行政機関から独立した苦情処理・救済機関の設置等、その実効性が担保される措置を検討・具体化すること。

E 政策方針決定過程への女性の参画の促進、各種審議会への女性委員の登用をすすめ、委員の人選にあたっては、公募を含め公正・公平を期すこと。

F 地方労働委員会の労働者委員の任命にあたっては、「連合」独占をやめ、労働組合の構成比率を反映したものにすること。各種委員会、審議会については、すべての委員会及び審議会等について、傍聴の実現、関係資料の公表、府民の意見表明を完全に実施すること。あわせて、委員の公募を進め、いっそうの府民参加を図ること。

G パブリックコメント制度は、形式的にせず、必要な情報の公開、出された意見の尊重、施策への反映など、改善をはかること。また、府民からの発議も対象とし、施策に反映させること。

H 知る権利の保障、原則公開の精神にのっとって、非開示条項の適用範囲を限定し、意思形成過程の情報であっても公開するなど、府情報公開条例の運用を抜本的に改善すること。公安委員会・警察本部の情報公開は、警察当局による恣意的な判断が優先されないようにすること。府からの出資、出えん、補助金の交付を受けている法人等には情報公開を義務化すること。

I 個人情報の保護がされず、「国民総背番号制」に道を開く住基ネットを中止するよう国に求めること。また、「防犯カメラの設置及び利用に関する条例」(仮称)ないし要綱を制定し、住民のプライバシー侵害を排除する厳格な規定を定めること。

J 保健所や土木事務所の現場対応能力の強化など、府民の安心・安全、利便性の向上を第一においた広域振興局体制の抜本的見直しを行い、組織のあり方を実情に即したものへ改めること。

 

10.アジア近隣諸国との平和友好の関係を築き、憲法を暮らしに生かす平和な京都を

 

北朝鮮政府が核実験を実施したことにたいし、世界各国が相次いで強い抗議を表明しています。北朝鮮政府は、核兵器とその開発計画を放棄し、即時・無条件で六ヵ国協議に復帰すべきであり、国際社会はこの事態に際して一致協力して対応し、問題の平和的・外交的解決に臨むべきです。一方、日本政府内では、周辺事態法を発動し、自衛隊の船舶検査、米軍への兵たん支援を行うべきとの動きが強まっています。しかし、国連安保理決議一七一八は、各国に対して「外交努力を強め、緊張を激化させる可能性があるいかなる行動も慎」むよう求め、あくまで平和的・外交的な解決を要請しています。日本政府としても、この国連安保理決議に沿った非軍事的措置に徹し、外交努力を尽くすべきです。

 また、政府はこれまで、PKO(国連平和維持活動)やテロ特措法に基づくインド洋派兵、イラク特措法に基づくイラク派兵と次々に海外派兵を拡大してきました。これは、米軍がアジア太平洋地域で軍事介入した際に、自衛隊が軍事支援を行うもので、周辺事態法もこれを担保することを本質としています。

現在、政府は自衛隊法等を改悪し、これまで拡大を続けてきた海外派兵を自衛隊の「本来任務」に位置付けるとともに、防衛庁を「防衛省」に昇格させる危険な道を進もうとしています。

「日本を海外で戦争をする国」にしようという流れをたち切り、施行60年をむかえる日本国憲法を守り、平和な京都を築くため、次の諸施策を行うよう求めます。

 

@ 北朝鮮政府の核兵器とその開発計画の放棄、即時・無条件での六ヵ国協議への復帰を迫るため、国に対し、問題の平和的・外交的解決にむけた非軍事的努力を進めるよう求めること。

A 施行60年をむかえるにあたり、憲法手帳(ポケット版)を発行し、憲法を府民の暮らしのすみずみに生かし、守るとりくみを支えること。

B アメリカの行う戦争への参戦と海外派兵を自衛隊の「本来任務」に位置付け、防衛庁を「防衛省」に昇格させる自衛隊法等の改悪に反対すること。憲法9条の改悪を許さず、憲法を暮らしに生かす府政をすすめること。改憲のための「国民投票法」制定を行わないよう国に求めること。

C 国民の基本的人権、報道の自由及び医療機関や自治体労働者のなどの権利を侵害し、国民を罰則つきで戦争に強制動員する武力攻撃事態法などの「有事法制」及び国民保護法の廃止を国に強く求めること。

D 619もの犯罪を「共謀」段階で取り締まり、会話や自白が証拠となるため室内盗聴など違法捜査の拡大やいっそうの自白強要に結びつく、「共謀罪」新設法案を制定しないよう国に求めること。

E 周辺住民に不安を与える自衛隊の空砲演習や市街地訓練、さらに府民を巻き込むヘリコプターや艦船への試乗、学校等での現職自衛官の講演については、その中止を求めること。長池演習場の実弾訓練の鉛汚染について、府の責任で土壌や水質の調査を行い、自衛隊に改善を求めること。