■光永 敦彦(日本共産党 京都市左京区)

 

長岡京市の児童虐待死事件 児童相談所の人員体制の強化を

 

光永】日本共産党の光永敦彦です。

まず、児童相談所について伺います。今回の児童虐待死事件は本当に残念で極めて遺憾です。こんな悲しい事件を二度と起こしてはなりません。これは、痛恨の思いをされている児童相談所の職員のみなさんを含め、誰しも共通だと思います。

また、全面的な検証が必要ですが、その際、大阪・岸和田市で発生した虐待事件に対する「緊急提言」の最後に「児童虐待対応の専門機関である児童相談所の職員を増員して、組織体制を強化することが最も重要であるという結論にいたった」と述べていることは重要と考えます。調べますと、京都の場合、虐待防止法が施行される前の平成11年は、三つの児童相談所合計で、虐待に関わる件数が90件でしたが、平成17年度には276件と3倍化しました。今年度すでに上半期だけで167件と激増しています。これら一つ一つに専門的な対応が求められています。その上、相談件数は昨年度3134件にも上ります。

ところが、京都児童相談所では今年三月末にベテランの児童福祉司を含む職員が退職されたあと、6月までの2か月間2名欠員のまま人員補充がなされませんでした。まず、その理由をご説明ください。

知事】府全体ではかなりの人員の見直しを行なっているが、児童相談所については、平成12年度の児童虐待防止法施行以来、児童相談所全体で47名を56名に9名増しており、うち児童福祉司については14名を23名に60%増という形で取り組んできた。今回、京都児童相談所では、本年3月末に相談担当職員2名と一般事務職員1名が退職した。これについては、とくに相談員の方は次期、早期にベテラン職員等を補充することとし、それまでの間1名の嘱託員を配置するとともに児童福祉司の資格をもつ所長がこの2か月の間、退職した相談判定課長の役割を実質的に担いながら、所内応援体制を組んで対応した。

光永】決算書面審査では、全府あげて、宇治児童相談所などを含めて支援体制を組んでやっているという話もあったが実際にはできていない。今の答弁も含めて職場からは人員の要望もあったはずだが人員補充されていない。しっかりした対応ができなかったことは課題だと思うし、何よりも現場の実情をしっかりつかんだ対応が必要なのにそれに応えられなかったことについては、今後しっかり調べてほしい。また、京都の場合は独自の問題も書面審査で浮き彫りになった。5名からなる虐待対応専門の未来っ子サポートチームを各児童相談所に作りましたが、京都児童相談所の場合、児童福祉司2名は、全体の新規虐待の初期対応と、自分の地域担当を兼務することになっています。

さらに平成17年度から実施した土日も含む午後130分〜夜10時までの変則勤務に、虐待対応チームの児童福祉司も含め配置されたため、来所面接や訪問日程がとりにくく、サポートチームのミーティング回数が減り、ケースの共有化ができにくくなっていたのではないでしょうか。

 そこで伺います。緊急に児童福祉司の交代勤務体制は止めるべきです。また、未来っこサポートチームは専任化すべきです。さらに今後、人員体制の強化こそ必要ですが、いかがですか。

知事】児童相談所の相談体制については、今、検証委員会でも検証している最中であり、確かに忙しい職場であるので、私どもも相談体制については逐次強化をはかってきたところ。そうした流れの中で、今後ともしっかりとした対応をしていきたいと考えている。

光永】大切なのは、現場の実情に見合った体制を配置すること。これは、まさに府の認識と対応が問われているわけで、今後ぜひ強化してほしい。また、先ほど述べた現在の体制の見直しを強く要望する。

また、この間、体制強化について、知事が繰り返し家庭総合支援センターを東山区に設置して強化をすると言い、マスコミ等で報道されている。しかし、私は、そもそも今でも口丹と乙訓地域を対象としている京都児童相談所が、機動性や利便性の観点から、上京区にあること自身が問題だと考えている。そのうえ、今後洛東病院跡地の東山区にもっていくことに道理はない。例えば乙訓の長岡京市議会では、児童福祉司は振興局に常駐して欲しいという要望も出されたように聞いているので、この点では必要な場所に設置することが府の基本方針であるべきだ。まず、洛東病院跡地への移転ありきの姿勢はやめるよう強く求める。

青年雇用問題 正規雇用拡大のため府内全事業所へ働きかけを

光永】次に青年の雇用について伺います。

今、貧困と格差が大きな問題となっています。その原因の一つに「ワーキングプア」に象徴される「雇用破壊」といわれる事態が進んでいます。しかも、偽装請負が大きな問題になり、国や自治体がこれらにどう対応するのかが問われています。

 私は、これまで繰り返し、深刻となる青年の雇用実態を本府としてしっかりとつかむこと、また誘致する企業には正社員雇用枠を設けるべきということを求めてきました。ここにきて、ようやく派遣労働を含む雇用実態調査がはじまり、正社員枠についても検討されるという表明があったことは一歩前進です。そこでさらなる本格的な取り組みの強化が必要です。

 そこで、パネルでお示しします。この間、私どもが青年のみなさんと一緒に取り組んだ青年雇用アンケート「青年雇用大調査」は、現在まで京都府内各地から700人を超える方から返事が寄せられて、それを集計しました。見ていただくとわかるとおり、働く青年のうち、年収200万円以下の割合を出してみると、契約社員の方のうち54%が年収200万円以下、派遣社員では68%、約7割、パート・アルバイトでは年収200万円以下の方が93%もおられる。これは大変深刻な事態、まさにワーキングプアという事態です。「人間を便利扱いするな!と言いたい」という切実な声も紹介しています。まさに青年の叫びがつづられています。

 そこで伺います。京都では法人税収が回復基調にあるなど、大手企業は業績が回復しているのに、他方、青年の雇用実態はここに述べたように大変深刻になっています。その理由について知事はどう認識されていますか。

知事】最近の府内の雇用情勢は、今年度第2四半期の完全失業率が4.5%、今年9月の有効求人倍率が1.01倍になっている。私が知事に就任した平成14年の完全失業率が6.3%、有効求人倍率にいたっては0.51倍だったので、それからすると非常に大きく改善された。とくに正規社員の有効求人倍率が0.6なので0.51を上回っていることはいえると思う。しかし、一方でご指摘のように非正規雇用の増大というものが青年の雇用に大きな影を落としており、私どももその改善を大きな課題においている。その中で、法人税収の回復基調が見られるので景気の回復に伴い、新規学卒者の就職内定率は101日現在比較で、平成14年に比べ10ポイント以上大きく改善している。ただこれまでの就職氷河期に正規雇用されなかった若者を中心に、パート・アルバイトなどの臨時雇用や年長フリーターなどの増加の傾向にあり、加えて若年者の失業率も他に比べて高い状況。こうした雇用環境の原因については、一つには企業の採用形態のあり方がある。また、正規雇用で勤めても「七・五・三」ということが言われているように若年者の就業意識の変化もある。そして労働者をとりまく労働法制の問題、こうしたものがからみ合って今の状態があると考えている。

光永】知事もお答えのとおり、採用のあり方、働く現場のあり方がまさに破壊しているという事態だと思うが、ただ答弁の中で就業意識の変化のことをいわれたが、しかし、私どもの先ほどのアンケートではほとんどの人が正社員になりたいと答えているわけです。もう一点驚いたのは、正社員の方が、職場でどんどんリストラされていき仕事が大変だから、自分は正社員だけれどもだからこそ正社員を増やしてほしい、という願いも大変強くアンケートに出されていたこと。それほど正社員の方も、パート、アルバイト、派遣の方も正社員を求めているというのが実態だ。調べると、京都では派遣会社が平成14年は180事業所だったのが、今年10月現在では683へと急増している。まさに正規社員が非正規に置き換えられている現実がある。

そこであらためて具体的にお聞きしますが、京都府が雇用のため10億円を補助する予定のジャトコ八木工場が竣工しましたが、そのすぐ近くの亀岡のサーミット工業という人材派遣会社には「急募、自動車部品の組み立て、加工100名大募集!」「今月入社の方、5万円支給」などと書かれており、勤務地をみると八木と明確に述べられていました。ジャトコの八木工場で、大量の派遣労働者が使われるようなことがないか、チェックすべきだと考えますが、いかがですか。

知事】どういった形でチェックをしなければならないのかという問題があると思う。法令に触れるような問題があるとか、そのなかでということであればチェックになると思うが、ちょっと今のはよくわかりません。

光永】わからないのが問題です。京都府は雇用のために補助金10億円出すと言っているのですよ。ところが、多数が派遣労働、それが増えるような雇用条件になっていれば、これは何のために京都府は補助金を出すのですか。派遣労働者を増やすために補助金を出すということになるのではないですか。だからチェックをちゃんとすべきだと言っている。そのことを求めているわけで、もう一度答えてください。

知事】補助金との関係については、当然補助金の支給条件にあっているかどうかチェックする、それは当たり前です。

光永】補助金の範囲内だけということではなくて、全体が正規雇用を増やしていこうという大きな課題なのであり、しかし一方現実にはこれだけ派遣の雇用が増える恐れがあるということが現に示されているのですから、これはしっかり全体調査をするというのが京都府の役割だということを指摘しておきたい。安倍首相でも「ワーキングプア前提の生産は大問題」と述べられたわけですから、京都府の補助金が不安定雇用の拡大に使われることのないように求めておきたい。

 さて、正規社員をどう増やすのかということも課題です。

そこで、来年度検討されている正規雇用を促進するための企業立地・育成条例の見直しの検討状況はいかがですか。また、本府が企業に対し正規雇用を増やすよう働きかけを行ったと聞いているが、その具体策はいかがですか。

知事】すでに議会に示しているように、戦略的な企業誘致を促進するためのアクションプランの中間案において企業立地・育成条例の延長、改定にともない、よりいっそう安定した雇用の創出の確保策について検討し、今パブリックコメントを行なっているところ。この結果をふまえ、最終的な案も見ながら判断していきたい。正規雇用等の創出、確保の働きかけについては、これまでから京都府としても各企業に対して、京都労働局や教育委員会とともに新規学卒者等の求人の確保を要請してきた。また、企業誘致にあたっては、雇用の場の確保を図ることが重要と考え、立地企業に対しても強く要請している。それと、結果をチェックし、いちいち検査するというのは違うと申し上げた。さらに先般開催した労働者団体、経営者団体との三者トップ会談においてもその課題について議題としてとりあげ、この会議の合意をふまえ、各事業主、団体に対して正規雇用と安定的な就労機会の創出確保、ならびに多様な働き方の導入等について、三者連名により幅広く要請を行なった。さらに経営者協会も積極的に加盟企業と連携してもらい、京都ジョブパークを支援していくこととしているので、今後とも公私一体となって幅広い府民の皆様の就労を支援する京都ジョブパークの構想の推進にあたっていきたい。

光永】ジョブパークは充実していただきたいし、アクションプランも実効あるものにしていただきたいが、企業に正社員を採用する点で、「要請」という言葉が続いたが、要請だけでは本格的に進まないと思う。たとえば、企業立地の補助金を出す企業や工業団地などに立地する企業に対して、雇用計画書の提出ぐらいは求めていいのではないかと思いますがいかがですか。

また、先日、徳島県が立会人として、日亜化学の請負労働者1600人を対象に、今後、直接雇用さらに正社員化をしていく方向について確認されたと報道がありました。法律では、派遣労働者の受け入れ期間が一年を超えた場合、受け入れ先の企業に直接雇用の申し入れ義務を課しています。ところが、私どもが委託して調査した結果では、義務を積極的に履行している京都の企業のなかでは、一般派遣で30%、特定派遣でわずか25%にすぎないとなっている。緊急に本府として、直接雇用の申し入れ義務を果たしていない企業があるかどうか調べ、直接雇用や正社員化を、労働局や経営者協会とも協力して、府全事業所に働きかけるべきではありませんか。お答え下さい。

知事】企業誘致の件については、まさに今アクションプランの中で検討しているところであり、その中で雇用の創出・確保を図るための策を検討しているので、そうした補助金がしっかりと運用されて、正規雇用がはかれるようしっかりとしたものをつくっていきたい。それから、この問題についてはまず、指導監督権限と調査権限をもつ労働局が一生懸命動いているところなので、私どもは労働局としっかりと連携を強化して、そのなかで要請行動をしていく。

光永】もちろん労働局、国が先頭に立ってやるのは当然だと思う。ただ私は先ほど徳島県の日亜化学の例をあげました。徳島県に直接お聞きしますと、徳島県が日亜化学と労働者の間に入って今後、正規雇用していくという方向を確認したけれども、「なぜ県が間に入ったのですか」とお聞きすると、「企業の健全経営と正規雇用拡大のために、権限はないけれど、立ち会った」と述べられました。ですから、府として今後、直接雇用を増やしていくという立場に立つならば、こういう積極的な取り組み、踏み込んだ取り組みも必要だと思うので、こういう努力を強くお願いしたいと思います。

また、これらを進めるためには、より立ち入った実態の把握が必要です。しかし、先の府民労働部の書面審査で、私が立ち入った調査を求めたにもかかわらず、府民労働部から「手間やお金がかかるのでできない」といわれました。しかし青年の雇用実態をつかむことは、本格的な対策を行う大前提です。

手間やお金をかけてでも、調査すべきだと強く求めます。

そもそも、雇用破壊といわれる事態が青年のところで続くことは、持続可能な社会となりえません。それだけに、人間らしい働き方のルールを守らせるとともに青年の正規雇用を増やすため、本府が全力をあげるよう求めて質問を終わります。