【西脇】日本共産党の西脇郁子です。議員団を代表して、先に通告している数点について、知事並びに関係理事者に質問します。

まず、子どもに関わる問題についてお聞きします。今、全国で、児童虐待やいじめによる自殺、さらには不登校、学校と子どもの荒れ、高校の未履修問題など子どもをめぐる深刻な事件や問題が相次いでいます。私も中学生と高校生の子どもの親の一人としましても胸が痛んでなりません。未来を担う子どもたちがどの子も大切にされ、一人一人の健やかな成長と発達を守るためにも今ほど政治の役割が大きく問われているときはありません。

児童相談所の体制強化について

【西脇】十月に長岡京市で起こった児童虐待死事件は、多くの府民に衝撃を与えました。わが党府会議員団はこのような事件は二度と繰り返してはならないとの思いで、これまで決算特別委員会などを通じて、今回の事件の徹底した検証を行うことと、ただちに児童相談所体制の強化や市町村住民とのネットワーク体制の充実強化を図ることなどを求めてきました。とりわけ、京都児童相談所の場合は、五名の虐待対応専門チームのなかの児童福祉司2名は、専任ではなく全ての児童虐待の初期対応と自分の地域担当を兼務していること、さらに平成17年度から実施された土日も含む午後1時30分から夜10時までの変則勤務にも配置され、面接や訪問日程が取りにくいばかりでなく、虐待対応専門チームのミーテイング回数が減り、ケースの共有ができにくくなっていたことは大きな問題だと指摘してきました。今回の補正予算で「児童虐待検証委員会の検証結果を待たずとも対応すべき当面の緊急対策を実施する」として児童虐待対応協力員の増員が予算化されていますが、あわせて児童福祉司の変則勤務体制の中止、京都・福知山児相の虐待対応チームの専任化も緊急の課題として実施すべきと考えますがいかがですか。

【知事】児童相談所の体制問題についてですが、今回の補正予算については、長岡京市におきます児童虐待死亡事件を大変重く受け止めまして、緊急対策として、児童相談所が抱えている全ての虐待相談案件について、直接確認等による総点検を実施しているところでありますが、この取り組みを、今後、組織的かつ、地域のネットワークも十分活用しながら、引き続き進めていくために、児童虐待対応協力員の配置について、今、補正予算でお願いをしたものであります。事件の背景や、原因を踏まえました総合的な対策については、外部委員による検証委員会で徹底した検証のもとに検討を進めて頂いているところですが、先に千歳議員にもお答えしたとおり、今回の事件につきましては、児童相談所の虐待情報に係る判断に問題があったのではないか、組織内で十分な情報共有や点検ができていないのではないか、組織地域のネットワーク機能でも連携が不十分ではないかといった問題点が指摘されているところです。引き続き、検証を進めて頂き、今月中に頂く予定の報告も踏まえまして、体制の問題も含めて必要な対応をしてまいりたい。

【西脇】児童相談所問題についてですが、これまで大変な思いをしながら虐待対応など、日々格闘しておられる現場の職員の生の声や実態を知事はご存じないからこそ私が先に指摘した現場の問題が出てきているのだと思います。ぜひとも知事として現場の生の声をしっかり聞いていただき実態に即した対応をしていただくようにを強く求めておきます。

教育基本法について

【西脇】次に、現在、子どもをめぐる問題で緊迫している教育基本法についてお聞きします。

教育基本法は、憲法に準ずる重みをもった法律であり、教育の根本法という子どもたちの未来に関わる重大な法律です。この教育基本法の改定について衆議院での審議を通じて、これまでの政府主催の「教育改革タウンミーティング」における「やらせ」問題が明らかになり、改定の根拠とされてきた「国民の声となっている」としてきたことが根底から崩れ、法案を提出する文科省の資格そのものが問われる事態となっています。また、先の東京地裁で東京都での「日の丸・君が代」の無法な強制が、憲法19条に保障された思想・良心・内心の自由と教育基本法10条に反するという判決がくだされ、改めて国家が「愛国心」を強制すること、国家が教育内容に無制限に介入することは二重の憲法違反であることが裏付けられました。この司法の判決を踏まえた議論を国会で尽くすべきですが、その審議も尽くされていません。にもかかわらず、自民、公明両党が衆議院本会議で審議を断ち切り、与党単独で採決を強行したことは議会制民主主義を踏みにじるもので絶対に許されません。そこで知事にお伺いします。

教育基本法の改訂をめぐって、「やらせ」を行なってきた文科省に法案提出の資格があるのでしょうか。また、司法の判決を踏まえた審議が行なわれていないことや、いじめ問題など、まだまだ審議をつくさなければならないことが多くあるにも関わらず、参議院でも採決が強行されようとしていることについて、知事ならびに教育長はどう考えておられるのかお聞かせ下さい。

【知事】教育基本法の問題ですが、現行法の制定から約60年が経過し、核家族化や少子化など、教育をとりまく、また子どもをとりまく環境が大きく変化するなか、いじめ問題など、子どもが被害者、また加害者になる事件が起きるなど、また片方では、子どもの生きる力や学ぶ意欲、そういったものが問題になるなど、いろいろな課題が出てきていると考えています。そうした中にありまして、正に、我が国の教育の在り方について、議論が交わされ、教育改革国民会議などを経て現在の議論に至っていると思っておりますけれども、この問題については、国民の代表であります国会議員の皆さんが、今、国会におきまして熱心な議論を行なわれているところでありますので、私も新しい時代の教育の理念について議論がつくされることを願っているところであります。

【教育長】教育基本法の改定について、先程、知事からあったように、法律が制定され既に半世紀以上が経過する中で、子どもたちを取り巻く社会環境も大きく変わり、様々な課題が生じてきています。こうしたことを踏まえて、将来を見据えた教育理念を明確に示し、新しい時代を切り開く教育を実現していくために、教育改革国民会議や中央教育審議会などの議論を経て、改定案が提案されたところであり、議員御指摘の点も含めて、様々な角度から国民の代表機関である国会の場において、熱心な議論が重ねられていると承知しています。

学力テストと学校選択制について

【西脇】政府の教育基本法改定案一七条二項にある「教育振興基本計画」のトップには「全国一斉学力テスト」が掲げられ、それとあわせて学校選択制の全国的展開が謳われています。

すでに東京都では、一斉学力テストが学区制廃止・学校選択制とセットで実施され、学校間格差が拡大し大問題となっています。この問題が先日、NHKの番組でも取り上げられました。東京都の荒川区は学校ごとに学力テストの成績を公表し、四年連続でテストの結果がトップだった中学校には入学希望者が殺到し生徒が激増。一方、選択制導入後、生徒が激減し、廃校に追い込まれた小学校の状況が報道されていました。廃校になった小学校の地元では商店街や地域の行事などを通じての子どもや保護者とのつながりがなくなり、まさに文化や経済も含め「地域が沈んでいく」実態もリアルに映し出されていました。東京大学の佐藤学大学院教授は「競い合って高まるというより、人気校と不人気校にはっきり明暗が分かれ、いったん不人気校になれば、どんどん生徒が減っていく」「いじめや学級崩壊があるらしい等の噂がいったん広まると、現場の先生は努力していても全く機能しなくなる。学校現場が、生き残り競争に追い立てられ、学校が商品のように選ばれる。教育が、サービスになり、サービスの過剰合戦になる。それが本当の教育だろうか」と厳しく指摘されていました。

そこで知事ならびに教育長にお伺いします。このような一斉学力テストと学校選択制のもとで起こっている学校間の競争激化について、公教育の在り方として適切だとお考えですか。

京都でも、府教委・総合教育センターが実施する「学力診断テスト」で、最下位となった学校の校長が市教育委員会に呼び出され、始末書と改善策の提出が求められる事態も起こっています。この学校ではその後、模擬テストが頻繁におこなわれるようになり、理科や音楽などの授業時間を削ってまで過去の問題の練習が繰り返されるなど、すべての授業が学力診断テストの点数を上げることに収斂され、その結果「授業が計画通りにすすまない」という事態となっています。

そこでお伺いします。府教委が実施している学力診断テストによって、点数引き上げ競争が府内全域でエスカレートしている実態をご存知でしょうか。また、すべての授業がこのテストに収斂されていることを適切だとお考えですか。教育基本法が改悪され、「全国一斉学力テスト」の実施、その結果が公表されれば、子どもたちがいっそう激しい競争に巻き込まれ、過度のストレスにさらされることは必至です。府教委として「全国一斉学力テスト」への参加をやめるべきだと考えますがいかがですか。

【知事】公教育の在り方についてでありますが、そもそもの教育の過程につきましては、これは教育委員会が基本方針をもって対応するというのが、教育委員会制度の主旨です。今、教育再生会議で、教育委員会自身の在り方というか、不必要論が出ておりますけれども、そうした中で答えろと言った主旨なのか、その辺りは解らなかったのですが、教育委員会の今の制度を前提とすると、そういうことだと思っています。従いまして、学力テストや学校選択制度、府の学力診断テストにつきましても、一人一人の子どもたちの学力向上を目指し、府の教育委員会が責任をもって適切に対応されるのが、私は在り方だと考えています。

【教育長】東京都における学力テストや学校選択制度に関わることについて、各地域がそれぞれの実状に即して取組んでいるものであると考えるものであります。本府におきまして実施しております学力診断テストにつきましては、児童生徒一人ひとりの学力の状況を客観的に把握し、きめ細かな指導を行なうとともに、学力状況の分析結果を各学校の授業改善に活かすために実施しているものであり、御指摘のような競争をあおるというようなものではないと考えております。

 また、国が新たに実施する学力状況調査につきましては、昨日、山本議員にお答えしたとおり、国の調査を効果的に活用するとともに、府の診断テストの在り方を見直し、より幅広い学力実態の把握分析に努めてまいりたいと考えています。

【西脇】教育基本法の問題に関わってですが、知事も教育長も私の質問にまともに答えて頂けませんでした。「やらせ質問」はまさに教育をゆがめているのが教育行政であることがはっきりしたのではありませんか。地方公聴会でも「影響を受けるのは子どもたちであり、真剣で慎重であってほしい」などの声が相次いで出ていることをご存知ないのでしょうか。日経新聞の世論調査でも急ぐべきでないというのが圧倒的な国民世論です。また、全国一斉学力テストは、「より幅広い学力状況を把握するもの」と答弁されましたが、それなら、全国一斉に実施する必要はありません。学校間の比較をするためだからこそ、一斉にやろうとしているのです。これは、競争と選別の教育を恐ろしい勢いで加速させるものです。この学力テストと学校選択制が結びつけば、今、東京でおこっているように、子どもと学校を「勝ち組・負け組」に振り分けてしまうと考えます。それが教育として好ましいと思われますか。再度お答えください。

京都府の学力テストについても実態をご存じない無責任な答弁です。点数引き上げ競争となっている深刻な実態を即刻調査されるよう強く求めておきます。

【教育長】学力診断テストについては、先程も申し上げましたように、決して競争をあおるという目的で行なっているのではなく、指導方法の改善のためにあくまで行なっているものであります。義務教育の場は、特に地域との結びつきが重要でありますので、それぞれの地域の実情に応じた教育を進めていく事が大切であり、今後とも、しっかりと京都の実状に合った方法で進めてまいりたいと考えています。

【西脇】子どもたちを競争に追いたてないという担保は何もありません。改めて京都府は、全国一斉学力テストへの参加をやめることを強く求めておきます。教育の目的は一人一人の子どもたちの人格の完成を目指し、発達の可能性を最大限に伸ばすことにあります。教育と子どもをめぐるゆがみや問題の根源は、現行教育基本法にあるのではなく、教育基本法の民主的理念を踏みにじってきたことにあります。現在、教育基本法をめぐって、日本弁護士連合会、日本教育学会歴代四会長が教育基本法改悪案に反対を表明するなど、反対世論が広範にわき起こっています。

哲学者の梅原猛さんは、「私は骨の髄まで戦争が嫌いです。日本国憲法の外堀を埋め、あわよくば平和憲法の内堀を埋めて、日本を旧体制に戻そうとする意図を今の教育基本法改正に感じるから反対なのです」と意見表明されています。東大の基礎学力センターが七月に実施した、全国の公立小中学校の校長先生を対象とした調査に対して、教育基本法改定案に反対が66%を占めています。私ども日本共産党府会議員団は、こうした多くの府民のみなさんと力をあわせ、教育基本法改定案は廃案にするために全力挙げ奮闘することを決意表明します。

子どもの医療費助成制度について

【西脇】次に子育て支援にかかわってお聞きします。まず、子どもの医療費問題についてです。

本府が先日出された乳幼児医療助成制度等福祉医療制度のあり方の最終案報告には「乳幼児を健全育成していく上での医療の重要性を踏まえ、医療面から子育てにかかる経済的負担及び精神的負担感の軽減を図るため支援を充実していく必要がある」とされています。

この問題の課題の第一は、本府が、平成15年より拡充した助成制度が通院について子ども一人当たりについて、月8000円まで自己負担とし、超えた分については償還払いとしていることを改善することです。すでに京都市舞鶴市綾部市を除く多くの市町村で月8000円の枠を取り払っています。若いお父さん、お母さんにとって8000円といっても子どもが23人となれば大きな負担になるので取り払っているのです。本府としてただちに月8000円の自己負担をなくし、通院も無料にすべきと考えますがいかがですか。

第二に、対象年齢を引き上げることです。現在の府の制度に上乗せして、南丹市では高校卒業まで与謝野町・伊根町・京丹波町は中学校卒業前まで、京丹後市は小学校卒業まで入院も通院も無料となるなど独自の努力で子どもの医療費無料化の拡充を行っておられます。「同じ京都府内なのになぜこんなに格差があるの。」という思いはますます切実です。本府でも現在の助成制度の対象をただちに小学校卒業まで広げるべきと考えますがいかがですか。

第三に、現行制度では月8000円を超える自己負担分の助成について、一旦、窓口で全額支払う償還払い制度となっていることも問題です。まず一旦は全額払わなければならない負担の大きさや、平日に毎月市役所に行き、医療費の払い戻しの申請手続きを行わなければならないのは大変です。なかには仕事を休んでまで払い戻し手続に行けないとあきらめてしまう方も多いとお聞きしています。京都府内全体で17年度に償還払いを受けている実績は、17,899件ですが、京都府内でも子どもたちの割合が多い京都市では3132件、175%の助成実績しかありません。多くの人が、償還払いを受けていないことが推測されます。ただちに償還払い制度から受領委任払いに転換すべきですがいかがですか。

【知事】乳幼児医療助成制度についてですが、子育ての経済的負担を軽減し、安心して医療を受けて頂けるよう、市町村と検討の場を設ける中で制度の改善を図ってまいりました。本制度は、京都府と市町村が連携協力して実施している制度でありますので、今回の制度改善にあたりましては、まず実施の任にあたり、また負担を分担しております市町村にお話をし、その中でまた幅広いご意見も聞きながら現在、福祉医療検討会を設置して検討を重ねてきたところです。実施にあたりましては、本制度を共同で実施している京都市を始めとする市町村も、負担の問題がありますので、今後、検討会のご意見を踏まえて、市町村とも十分連携を図りながら、予算議論を通じて検討を深めてまいりたいと考えています。なお、受領委任払いの導入につきましては、現行の方式では、複数の医療機関に受診された場合に合算する必要があることから、技術的には非常に難しい問題であると考えています。

【西脇】子どもの医療費問題について、今、多くのお母さん方にとって使いづらい月8000円の枠を除くこと、償還払いを改善すること、無料化の対象年齢を小学校卒業前までに引き上げることもぜひとも盛り込んでいただくことを強く要望いたします。

青年雇用問題 違法の一掃と正規雇用の拡大を

知事「正規雇用の促進について、新しい条例改正にもりこむ」

【西脇】次に、少子化対策の上でも、大きな社会問題となっている青年雇用について伺います。

昨年に続き、1119日に円山音楽堂で「青年一揆」が開かれました。雨にもかかわらず683人の青年が京都府内各地から集まり「使い捨てにしないで」「正社員になりたい」と声をあげました。

先日、国会では安倍首相もわが党市田書記局長の追及に、「ワーキングプアを前提にした働かせ方は大きな問題だ」と答弁しました。この問題では、今年8月、トヨタ系の光洋シーリングテクノが請負労働者を直接雇用することを表明した後、10月には大阪労働局が、京都に本社があるクリスタルグループのコラボレートに対し、偽装請負で業務停止を命令。さらに松下電器のプラズマ工場にも偽装請負で是正指導が入り、11月には青色ダイオードの日亜化学工業が、請負労働者1600人を対象に直接雇用に踏み出すことを発表しました。

 このように、いま日本では、正社員を非正規社員に置き換えて企業が儲ける、儲けるためなら違法、無法も許されるという企業のあり方が厳しく問われております。この問題を解決することが大きな流れになっています。地域の経済と京都の未来を考えるなら、京都府として、権限の有無に関わらず、その解決に正面から取組むことが求められています。 

さて、わが党議員団が、日本民主青年同盟とともに取り組んできたアンケート「青年雇用大調査」には、すでに850通を超える返信があり、その多くに働く青年の深刻な実態が書き込まれていました。

アンケートの特徴の第一は、「残業代が支払われない」32%、「タイムカードがない」49%など、回答した青年の70%が、違法、無法な労働条件のもとで働いているということです。この違法、無法な状態を一掃し、企業に対し、人間らしい働き方のルールを守らせることが必要です。

青年労働者にとっては、違法状態にあっても、それが違法とわからないことも多く、また違法と知っても告発することが難しいのが現実です。それだけに行政の取り組みが大変重要です。そこで、本府として労働者相談窓口の設置、青年労働者むけの啓発パンフの発行をはじめ、京都労働局や市町村と連携し、違法一掃の取り組みを進めることが必要と考えますが、いかがですか。

とりわけ、増え続ける派遣業者と派遣先企業に対して、京都労働局と連携し、青年の使い捨てを許さないという立場から、一定期間以上継続して働く派遣労働者の直接雇用を申し入れる義務を企業に果たさせるよう特別の体制をとって指導すべきと考えますが、いかがですか。

第二の特徴は、ワーキングプア、働く貧困層といわれる非正規労働者の置かれている状態が本当に深刻であることです。決算委員会総括質疑で光永議員が知事にも示したとおり、年収200万円以下の青年労働者が派遣では69%近く、パート・アルバイトでは93%を占め、しかもいつ使い捨てにされるか解らない不安定雇用におかれています。この問題を解決するために、正社員採用を増やし雇用の安定を図ることこそが大きな課題となっています。青年たちの多くは、望んで不安定雇用を選んでいるわけではなく、本府が設置した若年者就業支援センターの取りまとめでも、全体の76%、男性の9割が「正社員になりたい」と答えています。

それだけに、本府が企業立地の補助金を出す企業や工業団地などに立地する企業に対して、雇用補助金の対象者だけでなく、その工場で働く労働者の雇用安定のため、「雇用計画書」の提出と正規雇用の拡大を求めるべきですが、いかがですか。

【知事】非正規雇用の比率が高いことや、長時間労働など労働条件の課題があると考えている。こうした状況をふまえ、府はこれまでから青年労働者をとりまく雇用環境の改善に向け、中小企業労働相談所を設置し、幅広く労働相談に対応してきた。また、青年等が労働関係法を正しく理解できるよう冊子を作成し、ホームページや府民だよりを活用するとともに、ジョブカフェなどに配布するなど積極的な府民計画を実施してきた。さらに府が支援する京都勤労者学園でも労働関係法等の講座を開講している。また、昨今社会問題化している派遣労働については、指導監督の任にあたっている京都労働局に対し、事業主への監督指導強化を要請するとともに、府独自の調査も実施している。また、先般実施した労働団体、経営者団体との三者トップ会談をふまえ、事業主等に対し、正規雇用等安定的な就業機会の創出、確保ならびに多様な働き方の導入等、三者連名による要請を行なった。私たちは、ジョブカフェを通じて、若年者就業支援については全国トップレベルの成果を上げてきたが、これからもそれらの取り組みを通じ、しっかりと労働関係法令の適切な運用を各業者、団体に対して働きかけるとともに、もしも法令に違反する行為があれば、指導監督の任にある京都労働局において厳格に対応されるよう要請していきたい。

 次に、企業誘致をともなう雇用確保について、これまでから雇用の場の確保を目的に企業誘致を行なった。従来から5年間の雇用計画を提出いただいている。また、正規雇用の促進については、新しい条例改正に盛り込んでいきたいと考えている。

【西脇】青年雇用問題についてですが、この問題について「府に権限がない」といっている場合ではないと思います。正社員でも、非正規でも、違法状態にメスを入れるために、府も全力をあげるべきです。同時に正社員を拡大する問題では、すでに徳島県で、権限がないもとでも県が積極的に動き、日亜化学が請負労働者を直接雇用するのに大きな役割を果たしました。

 改めて、本府が、安定的な直接雇用、正規雇用の拡大のために、積極的な役割を果たすよう強く、強く要望し、次の質問に移ります。

医療制度や介護保険制度の改悪、障害者自立支援法について

【西脇】次に医療制度や介護保険制度の改悪等で厳しい事態が広がっている問題についてお聞きします。

リハビリ医療の制限問題について

【西脇】まず、リハビリ医療の制限問題です。

今年の四月から、厚生労働省は、保険がきくリハビリ日数を決め、上限日数を超えるとリハビリができなくなりました。全国保険医団体連合会が調査し、発表された脳血管疾患患者のリハビリの打ち切り数は、全国で17,000人。京都でも420人が打ち切られています。これは、脳血管疾患だけの数字です。全てのリハビリ患者で言えば、20万人を越えるのではないかと予測されています。

「リハビリによって症状が改善する、やらなければ悪化するという人から、どうしてリハビリを取り上げる必要があるのか」「介護保険のリハビリがあると言うが、そもそも介護保険の対象外の人はどうする。」「医療スタッフの配置が少ないリハビリは危険」と患者さんや、医療関係者から、批判の声が上がるのは当然です。リハビリテーションの打ち切りの撤回については、京都をはじめ、全国の関係者から厚労省に48万もの署名が届けられています。府として、国に対してリハビリ日数制限の撤回を強く求めるべきと考えますがいかがですか。

また、先の決算特別委員会で知事は、影響調査は国がすることと、府としての実態調査の実施を拒まれました。しかし、知事はこれまで医療制度改悪によって弱者にしわ寄せがこないようにと言われてきたのですから、京都府としてリハビリ打ち切りの影響を調査し、府として必要な救済策を講じることは当然のことと考えますがいかがですか。

【知事】医療制度改革について、リハビリテーション日数の制限については、回復の可能性がより高いとされる発病直後に集中的で手厚いリハビリテーションができるように制度を改善する一方で、算定日数の上限設定が行なわれたところでありますが、医療リハビリテーションを継続することにより状態の改善が期待できると医学的に判断される場合はその摘要除外とされているところです。

 診療報酬等の在り方については、従来から国に対して、私どもは必要な対応を要請してきましたが、近く国において今回の制度改善の影響等について実態調査が開始されるというふうに聞いています。こうした中で京都府としては、今後とも住民に近い地方公共団体として関係団体等の意見を聞き、制度設計及び財源措置の任にあたっております国に対して、リハビリ医療に係る必要な意見を申し述べていきたいと考えています。

【西脇】リハビリの問題ですが、全国の関係者から厚労省に48万もの署名が、リハビリ打ち切り撤回ということで届けられています。

国に対し、日数制限の撤廃を直ちに行なうように知事として求めて頂くと共に、府として、深刻な実態を詳細に調査して頂きたいと思います。必要な方がリハビリを継続することができる支援を検討すべきであると指摘しておきます。

療養型病床削減問題について

【西脇】あわせて療養型病床削減問題についてお聞きします。

今年四月からの診療報酬の改悪で、府内の療養型病床はすでに大幅に減少、医療と看護が必要な患者が病院から退院をせざるを得ない状況に追い込まれています。調査によると、現在入院中の患者の9割は、退院後自宅での介護は困難とされており、現に退院後の急死や介護心中等、不幸な事例も相次いでいます。

当然、病院の経営も深刻な事態になっています。京都市内のある病院の医師は、患者一人あたりの収入が大幅に減り、療養病棟だけで1か月300万円の減収だとも言っておられます。そのうえに厚生労働省は介護療養型医療施設を2011年度末で廃止する方針です。

京都府として、このような国の療養型病床の削減計画の撤回と患者追い出しの診療報酬の改定を国に求めることが必要ではありませんか。また、国の計画通りに進めば京都では、単純計算でも介護型の療養病床の4050床全て、医療型療養病床も1400床減らされ、約2100床と激減することになりますが、このような計画がすすめられても医療難民を出さないという保証はあるのでしょうか。知事のお考えをお聞きします。

【知事】療養病床について、制度の見直しに伴い、必要なサービスが受けられない方が生じる事があってはならないと考えています。このため、現に入院している患者や家族等の不安をまねくことのないように、国に要請いたしますとともに、関係団体のご協力を頂き、地域ケアの在り方検討会議をもうけ、療養病床の見直し再編に向けて、その受け皿を含めた将来的な介護医療サービス等を地域ケアの確保を図るための具体的な方策を検討しているところです。一方、国においては、この7月から診療報酬の改定や介護老人保健施設等への移行にむけて支援措置を設けるなど、既に展開にむけての具体策を示してきておりますが、療養病床再編に係る今後の道筋が必ずしも明確にされていないこと等から府内の医療機関は慎重な対応をしているところであります。現在、療養病床の実態把握を行なっているところですが、その調査結果を踏まえて府内の医療機関や関係団体等との連携をするなか引き続き国に対して、地域の実態に基づく必要な要請を行なってまいりたいと考えています。

【西脇】療養病床の問題についてですが、療養型病床削減計画を撤回させ、一刻も早く診療報酬を改善させなければ府内の病院の経営難に拍車がかかることは目に見えています。病院の廃止や療養型病床が国のもくろみを上回る規模で廃止されることが危惧されます。必要な医療が受けられない高齢者を一人も出さないよう、国への強い働きかけを改めて求めておきます。

介護保険 車いす、介護用ベッドの取り上げ問題について

【西脇】次に介護保険についてお聞きします。

改悪された介護保険制度では、新しく導入された要支援の区分や介護度1と認定された高齢者から、車いすや介護用ベッドが取り上げられています。そのなかで、夜トイレに立つことができなくなり、おしめをせざるを得なくなった、寝たきりの生活に戻ってしまったなど、深刻な事態が進んでいます。

京都府として国に対し、車いすや介護ベッドの利用制限を撤廃するよう働きかけるべきではありませんか。また、市町村と協力し府として従来通りに借りることができる制度をつくるべきではありませんか。お答え下さい。

【知事】介護保険制度についてですが、軽度者への福祉用具貸与については、例えば、特殊寝台がなければ起きあがりや寝返りができないなど、福祉用具がなければ日常生活に支障をきたす方について引き続き利用できる仕組みとなっております。こうした仕組みが適切に運用されるよう市町村や事業者等を通じて周知を図るとともに、この仕組みには該当しないけれども特殊寝台等の福祉用具の利用が必要な方があるかどうかにつきまして、市町村を通じて実態調査をしてきました。その結果、日々の状態に変化の有る方や、身体を動かすと負担の大きい方など、国の仕組みには該当しないものの、福祉用具の利用による改善効果等があると考える事例があることから、先般、京都府が近畿府県に呼びかけまして、これらの方も対象とするよう、緊急要望を行ない、制度改定を強く提示をしたところであります。国におきましても、こうした動きを受け、都道府県を通じて実態の把握を始めたところであり、引き続き制度改定に向けて働きかけますとともに、国の改定の動向をみて対応してまいりたいと考えています。

【西脇】車椅子や介護用ベッドの取り上げ問題ですが、現にベッドを取り上げられた女性の方は、これまでのベッドがないと夜中にトイレに1人で行くことができないということなのです。夫も高齢で足が悪く、そのたびに手伝ってもらうこともできません。こんな府民の苦しみに手を差し伸べて頂くのが京都府や市町村の役割であることは、当然、言うまでもありません。改めて、国に対して、車椅子や身近な介護用ベッドの取り上げ中止を国に求めるべきではないかと思います。

市町村と協力し、これまでのように介護ベッドなどを借りられる制度を改めて創設すべきではないかと考えます。知事、このことについては改めてお答え頂きたいと思います。

【知事】先程申しましたように、京都府としては、福祉用具のこの問題につきまして、近畿府県に呼びかけまして、これらの方を対象とするよう緊急要望を行ない、制度改定を強く要望したところであります。国におきましてもこうした動きを受け、都道府県を通じて実態の把握を始めたところでありまして、引き続き制度の改定にむけて働きかけるとともに、国の改定の動向をみて対応をしてまいりたいと考えています。

【西脇】なお、介護ベッドなどの機器の貸し出しの府独自の制度についても強く求めておきます。

障害者自立支援法について

【西脇】次に障害者自立支援法についてお聞きします。

10月31日、障害者自立支援法の改善を求める「出直してよ!障害者自立支援法10・3、大フォーラム」が東京日比谷公会堂で開催され15,000人もの方が参加され、「3年後の見直しまで到底待つことはできない」と障害者自立支援法の原則1割の応益負担を中止すること等を決議されました。このような粘り強い全国の障害者の皆さんの運動におされ、国は軽減措置などを実施しつつありますが、法施行後1年も待たずに、改善措置を取らねばならないということは、この法の欠陥を明確に示しているのではないでしょうか。

私ども日本共産党は、知事に対し、障害者自立支援法の応益負担の仕組みについて、サービスを必要に応じて利用でき、能力に応じて支払うという障害者福祉の大原則を破壊したものであり、国にこの応益負担制度の撤回を要求するよう繰り返し求めてきました。ところが、知事はそのたびに、府の軽減措置があるから応益負担ではないと的はずれの答弁でごまかし、障害者自立支援法の応益負担制度の撤廃は求められませんでした。改めて知事にお聞きします。障害者自立支援法の応益負担のシステムの撤回を国に求めるおつもりはありませんか。明確にお答え下さい。

関連してお答え下さい。これまで無料で提供されていた視覚障害者の移動支援や、聴覚障害者の手話通訳などの支援が、自立支援法により市町村の地域生活支援事業とされ、多くの自治体で有料とされました。障害者のみなさんが生きるために必要なこれらの支援を、負担を考えずに利用できるよう、市町村と協力して府独自の支援制度を作る必要があると思いますがいかがですか。

【知事】障害者自立支援法についてですが、昨日、山本議員に答弁しましたとおり、法施行前から利用者の急激な負担増が強いられ、自立を妨げることはないかと言った点を懸念してまいりました。このため、私自身も何度も国に赴きまして障害者やサービス事業者が安心できるよう、低所得者の実態を十分に勘案し、利用者負担を見直すなどの制度改善を強く要請してまいりました。一方、障害者の生活に現に支障が出ることがあってはならないとの観点から、緊急対策として市町村と協調し、全国に先駆けまして利用負担軽減措置を講じ、加えて10月からは障害者施設の利用についても、従前とどの程度まで負担を引き下げる等の、あの、ここは明確に申しておきますが、所得の低い方に対する応能負担措置を講じた訳です。この点については正に、私はそれを、国に対して同様措置を講じるよう要請している訳ですから、正に的はずれなのは、私は西脇議員の方だと思います。京都府の全国に先駆けた単独支援策により、同様の支援の動きが全国に広がっています。こうした動きもあり、国におきましては、利用者負担の在り方の見直しを既に表明をしております。

 コミュニケーション支援や移動支援に係る京都府地域生活支援条例につきましては、府としてそれまでの経緯をふまえ障害のある方々がサービスを安心して利用できる取り組みを市町村にお願いしています。その結果、現在、府内全ての市町村において、聴覚障害者に対する手話通訳等のコミュニケーション支援については無料化が図られますとともに、視覚障害者等に対する移動支援について無料化または負担軽減措置が講じられるなど尽力を頂いています。国におきましても、視覚障害者に対する活動、移動支援を充実するなど、緊急的な措置についての動きが出てきているところです。今後とも、国において制度改善が確実に行なわれますよう求めていくとともに、こうした課題に積極的に取り組み、障害者の方々が安心してノーマライゼーションの実現が出来るよう環境整備に全力をあげて支援してまいりたいと考えています。

【西脇】障害者自立支援法ですが、結局、知事は「応益負担撤回」ということでは明確に言われておりません。おっしゃったということであれば、応益負担撤回、これは国に対しても言って頂けるということなのでしょうか。これは知事も、福祉分野の応益負担をこれまで当然と考えておられたからこそ、これまではっきりとおっしゃってられなかったのかなと思うのです。障害者を痛めつける一方、驚くことに3兆円もの利益を上げている6大銀行グループの法人税負担はゼロなのです。この銀行が8800億円の税金を払えば 障害者の支援費・医療の自己負担分700億円の10倍以上の財源になるのです。

障害者への受益者負担を言う前に、ぼろ儲けをしている大企業にこそ応分の負担を求めることこそ圧倒的な府民の声ではないでしょうか。このことを強く指摘しておきます。

京都駅周辺の大型店の出店問題について

【西脇】次に、改定された「まちづくり三法」の問題点と大型店の出店問題についてです。

政府は「まちづくり三法」を改定し、一部はすでに施行されています。しかし、これは大型店の郊外立地を規制するものの、商業地域、近隣商業地域、準工業地域での出店は野放しにし、さらに中心市街地や「開発整備促進区」では民間主導の再開発に道を開く重大なものです。「郊外型」から、「中心市街地」へ、政府の大型店出店の促進策が変化する中、今、とくに問題となっているのが、京都駅周辺の大規模開発と大型店出店計画です。

現在、JR京都駅周辺部では、大規模店の出店計画が相次いでいます。2008年には旧松下興産が売り場面積45,000uという、右京区にあるダイヤモンドシティ・ハナの2倍を超える府内最大規模の商業施設を完成させる予定です。説明会の場では、その施設の影響力が、京都のみならず、奈良や大阪まで想定されていることが報告されています。

また、東京に本社をもつビックカメラやヨドバシカメラなどが出店を予定しており、業界では「関東の家電量販店大手は、これまで大型店がなかった京都駅前をシェア拡大の切り札と位置づけている」と言われています。マスコミも地域の電気小売店への「打撃は避けられない」と大きく報道しており、地域の電気小売店や商店街は大変心配しています。京都府として、電気小売店への影響をどのように把握していますか。もし把握されていなければ、至急調査すべきと考えますが、いかがですか。お答え下さい。

街の顔である中心市街地ににぎわいを取り戻すこと自体は大切なことです。しかし、改正された中心市街地活性化法は、名称からも目的からも「商業の活性化」を取り除き、これまでの商店街の努力に背を向けています。支援の方向は、「都市機能の集約」をめざす都市再生型の開発促進への転換であって、商店街の活性化とは無縁のものです。また、生活環境の保持のために住民や自治体が意見表明・勧告する仕組みさえもなくしています。

こうした大型店誘致による活性化策は、結局、大手資本と東京資本の「一人勝ち」状態をつくるだけのものであり、地域と商店街には何ら恩恵はありません。これは、すでに京都が苦い経験をしてきたことでもあります。97年に伊勢丹を含むJR京都駅ビルが、京都府も出資して開業した当時、周辺地域や商店街への「開業効果」「波及効果」が大宣伝されましたが、現実には「地域破れて巨大店あり」「周辺への経済効果“空振り”」「潤うのは駅ビルばかり」とマスコミがこぞって書き立てる惨憺(さんたん)たるものとなりました。こうした事態を再び繰り返してはなりません。

ところが現在、京都府が策定予定の地域商業ガイドラインは、郊外型は抑制しても中心市街地には大型店を誘導する政府の政策の枠内のものです。そこで伺います。

京都駅周辺の大型店出店・開発に関して、京都市の商業集積ガイドラインは「広域型商業集積ゾーン」と位置づけ何らの規制もかけていません。府域全体に大きな影響を与えるものであり、交通問題も懸念されます。京都府として、早急に影響調査を行ない、京都市とも協力して必要な対策をとるべきだと思いますが、いかがですか。知事のご所見を伺います。

【知事】大型店の出店問題についてですが、京都市内の大型店の出店やそれに伴う交通問題については、大店立地法、市のまちづくり条例や商業集積ガイドプランにより、その任にあたっております京都市において判断をされているところです。この件につきまして、京都市長が市議会におきまして、周辺環境との調和や良好な都市環境が確保されるよう事業者に対して厳しく指導していくと答弁されております。府としては、商店街や小売商業の振興については、これまでから、京都市及び周辺市町村ともしっかり連携を図りながら取組んでいるところであり、これからも努力をしてまいりたいと考えています。

【西脇】大型店の出店問題ですが、私の地元の下京区でも3つ同時に2年後に開店したら痛いどういう事になるのかということで、大変心配、危惧をされているところです。この問題、大至急、影響調査を京都府の責任として行うということ、これは要望させて頂きます。

マンション支援策について

【西脇】次に、分譲及び賃貸マンションなど中高層集合住宅問題についてです。

先日京滋マンション管理対策協議会へ伺ってお話を伺いました。マンションの管理運営のために大変なご苦労をされています。そこで、お話を踏まえ、いくつか伺います。

全国のマンションの総戸数は485万戸で国民の10人に1人が暮らす場となっていますが、4年後には築20年以上の総戸数は151万戸から216万戸に急増するといわれています。

なかでも分譲マンションについて、区分所有での管理の難しさに加え、築年数の経過による建物の老朽化や居住者の高齢化に伴い、適切な維持管理が困難になっているマンションの問題が、日本経済新聞が実施した全国の築20年以上のマンション管理組合を対象とした調査結果にも浮き彫りになっています。その調査結果によりますと、世帯主の年齢構成では60歳以上が376%、1人暮らしの高齢者世帯が住人の10%以上を占めるマンションが全体の437%、築30年以上では1人暮らしの高齢者が554%にも達していることも明らかとなりました。あわせて、バリアーフリー化の問題、修繕積立金不足の問題、積立金の値上げを計画しても住人の合意が得られず修繕が滞っている問題など、マンション住民の高齢化からくる経済力の低下とマンションそのものの老朽化という「二つの老い」から生じる問題が明らかになっています。

そこでまず、集合住宅の共用部分のバリアーフリー化についておききします。

マンションの場合、共用廊下や玄関などは所有者全員の共有物であるということで、改修費用も居住者負担となっています。各戸のバリアーフリー化は、介護保険でも対応できますが、共用部分は入居者全体の合意が必要であり、なかなか取り組みが進んでいません。本府として京都府住宅資金融資制度を拡充し、集合住宅にも適用できるようにするなど、分譲マンションの共用部分のバリアーフリー化を支援する制度を検討すべきと考えますがいかがですか。

京都市では分譲マンションについて、居住者自らの適切なマンションの維持管理の促進に資することを目的に、居住者の構成、管理組合の活動状況、管理費・修繕積立金の徴収、知識の取得方法などマンション管理実態調査を実施されており、行政としての分譲マンションの現状に即した取り組むべき課題が明らかになっています。

これまで本府は、「京都市を除くと分譲マンション戸数はわずか」としてきましたが、府内でもその戸数は、平成15年度は5年前と比べ舞鶴地域で約3倍以上、城陽地域で25倍以上、亀岡地域で約2倍と大幅に増加しています。

本府としてまず、京都府内の分譲マンションの管理実態調査を市町村とも連携して実施すべきと考えますがいかがですか。

最後に、現在、分譲マンションの維持管理や大規模修繕、建て替え等については法律や技術的な専門知識が必要であるにもかかわらずそれらはまだまだ普及していません。

東京都では、公平・中立的な立場でのこれらの普及啓発は必要だと位置づけ、分譲マンションに関わる区や市町村からの相談内容等も反映された「分譲マンション維持管理ガイドブック」と「分譲マンション長期修繕計画・計画修繕ガイドブック」が発行されています。京都市でも、平成15年よりマンション管理を学ぶ人のための導入書として、都市計画局より「新任役員のためのマンション管理入門手引き」が発行されています。

本府として管理組合等がこれらの基礎知識を習得できるように普及啓発のためのガイドブックを作成し、管理組合等への普及啓発に努め、管理組合の自主的な活動をより積極的に支援する必要性があると考えますがいかがですか。

【知事】分譲マンション問題でありますが、共有部分のバリアフリー化工事に対しては、住宅金融公庫による専用の無担保融資制度がありまして、幅広く活用できるところです。分譲マンションの管理実態については、本年9月に管理組合に対するアンケートを行なうなど実態の把握につとめているところです。なお、相当数のマンションが立地します宇治市八幡市におきましては地域における課題と捉えて、詳細な実態調査を実施されており、それらの取り組みとも連携してまいりたいと考えています。分譲マンション管理組合の管理能力の向上につきましては、所有者自らの主体的な取り組みが必要でありまして、市町村の他、マンション管理士などの専門家や管理組合団体が様々な立場から啓発や研修に取組まれておりまして、府としても、こうした取り組みに対し後援を行なうなど引き続き支援をしてまいりたいと考えています。

憲法問題について

【西脇】次に、憲法問題に関わって伺います。

日本国憲法は、先月113日で公布60年を迎えました。私たちは、その記念すべき節目を、憲法改正を公約に掲げる安倍内閣のもとで迎えることになりました。「改憲」をその内閣の公約に掲げたのは、安倍首相の祖父である岸信介氏以来のことです。

 安倍首相は、これまで「現憲法の前文は何度読んでも、敗戦国としての連合国に対する詫び証文でしかない」と言ってきました。そして、総裁選挙では、「アメリカとの軍事同盟は『血の同盟』です。

しかし今の憲法解釈もとでは、日本の自衛隊は、少なくともアメリカが攻撃されたときに血を流すことはない」と不満を述べて、集団的自衛権の行使の可能性について「研究・検討」する決意を明言しました。また、この動きと競い合うようにして、民主党も来年の参院選挙への「政権政策」として、集団的自衛権の行使を容認する方針を盛り込んだと報じられています。

 こうして安倍首相と民主党が集団的自衛権の行使を競い合う背景には、アメリカの強い圧力、そしてまた、憲法の制約のもとで、イラク戦争などで自衛隊が公然と戦争参加できないことへの強いいらだちがあります。事実、アーミテージ前国務副長官は、日本に対し要求した「ほとんどが実現した」「残された課題は集団的自衛権の行使だけだ」と迫っています。また、ケリー在日米海軍司令官は、「集団的自衛権が行使できるよう憲法改正の議論を深めてほしい」とあけすけに語りました。こうした中で、政府は、米軍の艦船と自衛隊が連れ立っているときに米艦がおそわれた場合、自衛隊が反撃できないことは問題だとして、海外派兵活動を自衛隊の「本来任務」と位置づける自衛隊法の「改正」及び防衛庁の省への昇格を今国会で強行しようとしています。

 そこで伺います。今回の「改正」は、憲法の制約のもとで「日本防衛」を任務としてきた自衛隊法の仕組みを根底からくつがえし、海外派兵を自衛隊の「本来任務」とするものです。アメリカが海外で行う戦争に参加するための、こうした法改正には強く反対すべきです、いかがですか。また、この動きと軌を一つにした集団的自衛権の行使については、あの山崎拓・自民党安全保障部会長でさえ、「解釈の変更、拡大で集団的自衛権を認めることはできない」「(それは)過去の自民党政権の基本的考え方を否定するもの」と批判しています。知事は、集団的自衛権の行使を可能とする解釈改憲についてどのようにお考えですか。お答えください。

関連して、周辺事態法の「改正」問題について伺います。政府は今年五月、日本周辺で武力紛争などの「周辺事態」が発生した際、空港や港湾の提供など国への協力を地方自治体に義務付ける周辺事態法改正の検討に入ったとされます。ここで検討される中心問題は、これまで自治体への「協力要請」だったものを「責務」に格上げし、地方自治体を米軍支援に動員しようとするものです。政府は、これまで広島、山口県など基地を抱える十四の都道県でつくる「渉外知事会」などの強い抵抗の中で、法第九条第一項の「協力要請」については、「正当な理由があれば断ることができる」「強制するものではない」としてきました。しかし、今回の法「改正」が行われれば、要請は義務となってしまいます。

そこで伺います。こうした「改正」について、地方自治の立場からみて、知事はどうお考えですか。

また、舞鶴港の使用手続についてです。現在、周辺事態法に基づく米軍の港湾使用については「港湾管理者の許可を得る必要がある」とされています。しかし、これまでも米軍は、京都府の入港届出の要請を無視して駆逐艦「クッシング」などを舞鶴港に入港させてきました。こんな横暴勝手は許されません。米軍艦船についても、港湾法や府条例の厳守を強く求めるべきです。知事のご所見はいかがですか。

最後に、来年は憲法施行60年です。無法なイラク戦争の失敗でアメリカの覇権主義は孤立し、いまや問題を戦争でなく国連を中心に平和的・外交的に解決する方向に世界の大勢があります。府として、ポケット版「憲法手帳」を発行し、憲法九条の持つ先駆的で平和的な内容を広く府民に普及し、憲法を暮らしにいかすよう努力すべきではありませんか。このことが、憲法99条で知事に求められていることではないでしょうか。いかがですか、明快にお答えください。

【知事】平和問題についてでありますが、自衛隊法の「改正」につきましては、これまで自衛隊の付随的な任務とされていた国際平和協力活動等を本来の任務とすることを主な内容としているものであります。集団的自衛権につきましては、国会において安倍首相が、政府としてはこれまでの憲法解釈や国会における議論の積み重ねを十分尊重しつつ、よく研究していくという答弁をしています。そして、いずれにしましても、やはり、日本の場合は自衛権、そしてその自衛権について発動の3原則をしっかり守ってきたという歴史を踏まえて、国民の疑念を生じないようにしっかり議論して頂きたいというふうに思っております。

 次に、周辺事態安全確保法の改正問題については、参議院の外交防衛委員会で防衛庁長官が、今の時点で改正する考えはないと明言をされているところであります。

また、米鑑船の問題ですが、これは日米地位協定上の規程になっておりまして、地方自治の立場からしますと、これは、いかなる地方自治を言う人も、外交と安全保障の基本的な方針は、これは国の方にゆだねるということだというふうに私は思っております。

憲法99条からは、ちょっとそこまでの解釈はなかなか出てこないのではないかなと思います。

【西脇】憲法問題についてですが、知事の答弁は結局、集団的自衛権の行使のための検討をよしとする安倍首相の立場と同じだと、私は思わざるをえません。府民のみなさんもそう思っておられるのではないかと思います。現在の「政府見解」は、「憲法上、集団的自衛権は行使できない」「憲法上行使できない以上、集団的自衛権は保有していないといっても結論的には同じである」「これを変更するのは困難だ」というものです。ところが、これを変更するということはアメリカの戦争に日本も参加しようとするということではないかと思います。多くの府民のみなさんは、いよいよ今、きな臭くなってきたと心配している中で、知事が、今の憲法9条の下で世界の平和の流れにしっかりと貢献する立場に立たれること、明確に立たれるということを何よりも望んでおられるのではないかと思います。にも関わらず、知事はこのことを理解されていないのではないかということを厳しく指摘したいと思います。

9月議会で京丹後市選挙区定数が削減された定数是正問題について

【西脇】最後に、定数是正問題について、ひとこと申し上げます。九月議会で自民党案に、一部民主党議員が賛成し可決した定数是正に対して、1023日、京丹後市議会は、「なぜ京丹後市選挙区のみが一減なのか」と京都府議会に説明と再考を求める決議を上げられました。ところが、京都府議会議長は、京丹後市議会の疑問に答えられないばかりか、2度にわたって決議文の受け取りさえ拒否し、門前払いにされました。これは、対等平等の議会間の信義に反する行為としか言いようがありません。

わが党は、九月議会において、憲法の要請する一票の平等性と、公職選挙法に定める原則に基づいて、最大格差が175で、すべての選挙区で格差が2倍以下となる「22減」案を提案し、可決された自民党案が、1議員あたりの人口がもっとも少ない南丹市・船井郡と、2番目に少ない舞鶴市を飛びこして、3番目の京丹後市を削減するという、きわめて党略的で、道理がなく、府民に説明がつかない案であることを指摘し、反対したところであります。こんな暴挙が許されるなら、何らの合理的根拠もない定数是正が今後も繰り返される恐れがあり看過することはできません。本議会として、道理ある京丹後市会の決議を真摯に受け止め、定数是正は白紙に戻すべきです。その上で、憲法の要請と地方自治法、公職選挙法の原則に基づいて、再度、道理ある定数是正を行うことこそ府民の信頼を回復し、議会の権威を高める道であることを、議員諸氏に訴えまして、私の質問を終わります。ご清聴ありがとうございました。