府議会12月定例会 一般質問

松尾 孝(日本共産党 京都市伏見区)             2006年12月7日

畑川ダム問題 過大な人口予測にもとづく建設計画は中止すべき

【松尾】日本共産党議員団の松尾です。通告に基づき知事並びに関係理事者に質問いたします。         

まず畑川ダム問題です。畑川ダム建設計画の目的は京丹波町の水道用水確保と高屋川の洪水被害対策ですが、水道事業計画には過大な人口予測と給水計画など大きな問題があります。また、治水上どうしても必要かという点も疑問であります。わが党議員団はこれらの問題点を繰り返し指摘し、見直し、中止を求めてまいりましたが納得のいく説明は得られていません。

第一に畑川ダムで5000トンの水道用水を確保する必要性についてでありますが、開発地域の人口増と企業の水需要増の二つが挙げられています。

まず開発地域の人口増であります。水道事業計画の基準年次は平成6年、当時の計画地域人口は15000人でしたが、現在、14000人、今後さらに減少して、計画達成年の平成30年には13000人になると予測されています。減少するのは既存集落の人口で、開発地域では逆に6000人増えるという計画です。その根拠は平成14年から15年にかけて行われたアンケート調査です。開発団地の宅造区画全体の7割強、5200区画を対象に調査を行い1866人から回答を得た結果、給水要望が90人、水道その他インフラ整備次第との回答が485人、計575人の「入居意思表示」があったと判定。そこで、アンケート回答数1866に対するこの割合、30.8%を「入居見込み率」として、これを調査対象外の区画や未回答の区画を含め、開発地域の未入居区画数全体に掛け、今後、2126世帯、約6000人が増えるとしているのです。

 知事も、7000もの造成宅地が水がないために放置されてきた、水があれば家が建ち地域が活性化するとおっしゃってきましたが、それほど単純な話ではありません。少子化の中で、日本社会が全体として人口減少に向かっているとき、京丹波町の開発地域だけで10年間に6000人もの人口増が起こりうるのか、全く考えられないことではないでしょうか。知事はどう思われるか、お答えいただきたい。

 もうひとつは業務・営業用水の問題です。

計画では、現在の業務・営業用水は約1750トンですが、既存の立地企業、事業所から2250トンの増量要望があり、平成30年には合わせて約4000トンが必要とされています。増量分2250トンのうち半分近い1000トンを下山の蕨にあります中央テクノパークが求めており、他の地域の13事業所からも1250トンの増量要望があるというのです。調べて見ますと中央テクノの1000トンというのは10年前、団地造成を行ったディベロッパーの藤田興業と旧丹波町が約束していた数字ですが、今この業者は倒産して存在しませんし、造成地は不動産業者、建設業者に移っています。この団地への企業立地について、町からの府に対し特段の支援要請もなく、いわば放置されている状況です。

また、この団地に7社が立地、操業していますが、工業用水を使わない企業で増量要望は出ていません。1000トンものテクノパークからの増量要望というのは、全く根拠がないわけです。

その他の企業、事業所が1250トンを要望しているとのことですが、これも実態と異なります。先日、議員団として14の主要企業、事業所を訪問し聞き取り行いましたが、はっきりと増量を要望されたのは1社だけ、将来必要になるかもしれないが2社、水量も500トンぐらいです。あとは、必要ないが3社、地下水利用が4社、工程で水を使わないが4社など11社からは増量要望はありませんでした。今後、経済情勢の推移によって当然変化はあるでしょうが、以上の通り2250トンの増量要望があるとの町の言い分にも根拠がありません。計画はやはり過大ではないかと考えます。どう判断されるかお答えいただきたい。

以上、水需要増の2つの根拠について問題点を指摘しました。過大な開発人口予測6000人分の計画給水量は1600トン、業務営業用水の増量分2250トン、計4000トンの増量が必要との根拠が崩れているのです。これを正せば、計画で必要とされている1日平均給水量10500トンは大幅に圧縮出来ます。また、既存水源の取水量は9100トンとされていますが、この間の取水実績はこれをはるかに上回り、11000トンから12000トンの能力があります。必要給水量は十分に確保できるのです。どうお考えか、ご答弁ください。

第二に治水問題です。先日発表されました「由良川上流圏域河川整備計画」でも黒瀬地区の治水対策として高屋川、畑川の掘削、築堤による河道拡幅と合わせ畑川ダム建設が提案されています。確かに23号台風では黒瀬地区で床上1戸、床下8戸の被害が出ました。しかし、この地域は決して浸水被害の常襲地域ではありません。過去の記録として明治34年、昭和20年、28年、58年、平成7年と5回の記録がありますが、浸水被害はあの28災と今回の台風23号だけです。治水計画としてこのダムが本当に必要かどうかも疑問です。他に方法があるのではないかと思います。また、このダムが住民の皆さんから出された要望でないことも明らかです。「すぐ上にダムが出来て、もしものことがあったらどうなるのか、その方が心配」との声さえ聞かれたほどです。ダム促進協議会をつくる、一定の指導があったようですが、地元は反対でまとまらず、対策協議会ということになっています。

治水対策というのも結局、水道用水確保を大義名分にダム建設を優先する方針の中で、いわば、そのお添えものになっているのではないかとの感をぬぐえません。

以上、畑川ダムは水道用水確保の点でも、治水対策の点でも不要であると考えざるを得ません。あためて中止を強く求めますが、知事はどうお考えか、お答えください。

【保健福祉部長】京丹波町では、幾度となく断水が発生するなど、安定した水道用水の確保は地元の悲願であり、京丹波町からの強い要望を受け、取り組みを進めている。水需要については、人口については旧丹波町、および旧瑞穂町の将来のまちづくり計画に沿って、すでに見直しも行なわれる中で、中長期的に予測されたもので、同町で開発団地がある中で水が確保されることにより、未入居者の意向調査もふまえ、総合的に判断し、将来の人口予測がされたもの。一方、事業所の要望については、各事業所において事業活動の継続発展に必要な水需要を真剣に検討され、町に要望書が提出されたもので、食品製造業、病院や社会福祉施設など、地元に密着した企業、事業所を中心に要望が出されたもの。このようななかで現在利用している既存水源の多くは、昨年の6月の渇水期には、水の確保が困難になる時期もあるなど脆弱で不安定な水源である。一方、本年5月からは緑ヶ丘団地、今後は下山グリーンハイツなど未給水開発団地に給水される予定であり、さらに事業所に対しても一部給水を開始していますが、増量の要望もあることから、現在の給水能力からみても余裕がなくなってきており、将来にわたり、安定的な水源の確保が必要であると考えている。

【土木建築部長】治水対策については、畑川ダム下流の高屋川では、昭和28年の台風13号をはじめとして度々洪水被害にみまわれており、一昨年の台風23号でも沿線の黒瀬地区、藤ヶ瀬地区で床上浸水5棟、床下浸水8棟のほか、田畑の浸水被害が発生した。また、近年これまでに経験したことのないような猛烈な雨が全国各地で頻発しており、台風23号のような洪水に対処するためにも、畑川ダムの建設と高屋川の河川改修を併用した効率的、かつ効果的な治水対策を着実に進めていく必要がある。公共事業については、徹底した見直しを行い、すでに南丹ダム、福田川ダムについて中止したが、畑川ダムについては平成15年の公共事業再評価審査委員会でも事業継続が妥当であると判断されている。畑川ダムについては、ダムによる安定した水資源の確保と治水対策の推進について、地元から切実な要望がなされており、地域の着実、健全な発展と安心・安全の確保について総合的な視点から取り組むこととし、引き続き早期完成にむけ全力をあげて取り組む。

ずさんな計画変更を認可した知事の責任は重大だ 建設計画の中止を

【松尾】知事が答弁されるのが当然だと思うが、保健福祉部長、土木建築部長の答弁で大変残念です。答弁いただいたが、開発人口が6000人増えるということが、アンケート調査結果でいろいろと推計されているけれども、そんなことが本当にありうるのか。みなさん、どう思われますか。京丹波町の既存農業集落では減る、平成30年には13000人まで減るといわれているが、ところが開発団地だけで6000人増えるということがありうるのか。この人口増予測にもとづいてつくられている計画だから大変だと、知事もそのように言ってきたのだから、知事の答弁を求めている。こんな計画はおかしい。水需要がかなり膨らんできても、既存水源で十分確保できるという取水実績の数字もあげているので、やはりこれは間違いだと言わざるをえない。治水対策上も、このようなケースでダムを作ることが他に事例があるのか、治水問題に限って土木部長に伺いたい。また、これはダムが先行している事実が明らかで、ダムの水門調査、地質地形調査などが始まったのが平成4年、水道事業計画を府が認可したのが平成6年と、2年遅れである。この点についてはどう考えるか。

【土木建築部長】さきほど述べたとおり、総合的な判断のもと、地元の切実な要望を伺いながら進めている。畑川ダムの位置についても、地元の取り組みのなかで具体的に明らかになってきたものである。

【松尾】答弁いただいたが、このダムが治水上必要だとはさらさら理解できない。なお、現行の計画は平成16年10月に変更された。知事が認可された。そのおもな事項で、人口22500人の計画から19000人に落としている。ところが計画水量が減っていないどころか、増えている。3500人人口が減って、どうして必要な水が増えるのか。やはり畑川ダムから5000トンの水をとるということに支障のない変更内容になっている。そのため一人当たりの平均水量もずいぶん増えている。このようなずさんな計画を知事が認可されたわけで、責任は重大だと思う。だから、知事に答弁を求めた。必要性がないということは明らかで、これからなお50億円も投入しようというのだから、これは中止すべきだ。知事に答弁を求める。

【保健福祉部長】16年の変更認可については、国の基準にもとづき厳格に審査を行なった。

農業問題 価格保障を基本にすえた本当に役立つ経営安定対策を国に求めよ

【松尾】とても納得できる答弁ではないが、時間がないので、次に農業問題について伺います。

11月30日に麦の品目横断的経営安定対策の加入申請が締め切られた。結果は予想通り大変参加者が少なく、昨年の作付け面積の比較で七割強しか加入申請の面積がない。麦を作っている農家は熱心な、地域でも大変大きな役割を果たしている農家、組織です。そのようなところでこのような結果。来年4月1日から6月30日まで、本体の申請が始まる。

やっぱり品目横断的経営安定対策が京都の実情に合わないばかりか、大多数の農家にとっては殆ど役に立たないことは繰り返し指摘して参りました。いま必要なことは、規模の大小を問わず、意欲のある全ての農家を対象に、価格保障を基本にすえた本当に役立つ経営安定対策を講じることです。このことをあらためて強く国に求めるべきであります。また、本府としても府農政の基本にしっかりと据えるべきと考えます。お答えください。

 並行して行われる農地・水・環境保全対策についてですが、市町村負担があるため、市町村がとりくまない、あまりすすめないという状況もある。市町村にたいし必要な財政支援も行ない、積極的に取り組む必要があるが、どうか。また、米価がどんどん下がる、これ以上下がったら大変という状況があるが、府として不足払い制度を国に強く要求していくことが必要です。合わせてお答えください。              

【知事】国においては、構造改革を加速する品目横断的経営安定対策を柱とし、米の生産調整方式を大幅に変更する米政策改革推進対策、そして農地・水・環境保全向上対策の三つの対策を平成19年度から実施することになっている。しかし、これらの対策は、中山間地域を中心に小規模で零細な農家が多く、担い手の高齢化が進んでいる京都府農業の実態を考えれば、必ずしも振興につながらない恐れがあると考える。とくに品目横断的経営安定対策については、全国一律の基準の施策でなく、地域の実態をふまえ、多様な担い手を基本とした取り組みがより重要であると考えており、私自身も農林水産省の担当局長に対し、農作業受託組織を対象とすること、野菜や黒大豆、小豆などの品目にまで対象を拡大することを強く要望してきた。さらに府独自の対策として、より多くの農家が制度の対象となるよう、本年度から京の稲作担い手緊急支援事業を創設し、農作業受託組織の規模拡大と経営強化に向けた支援を強化してきた。今後とも京都府の実態をふまえ、多様な担い手が連携した地域農業の仕組みづくりと、ブランド京野菜をはじめとしたお茶や花、黒大豆などの生産振興を一体的にすすめ、農業農村の維持発展をすすめたい。農地・水・環境保全向上対策については、農水省もこちらは京都府の実態にあっているのではないかといっていたが、地域ぐるみで農地や農業用水路の保全活動をふくめ、地域コミュニティーづくりや農村環境の保全、向上を目的とする施策です。現在、制度の周知をはかるため、京都市、市町村、関係農業団体で構成する京都府農地・水・環境保全向上対策協議会において、すべての市町村や団体等を対象とした説明会やシンポジウムを開催している。交付金の対象となる具体的な活動内容や、交付金単価については農業・農村の実態をふまえ、市町村の意向を尊重しながら、協議会の中で協議していきたい。地方財政状況が厳しい中で、府や市町村の負担分についても、国による十分な財政的裏付けが不可欠であり、国に対して強く要望している。 

【農林水産部長】米の生産調整については、40%近い転作が実施される中で、安定した水田農業を実現するには、京都米のいっそうの品質向上や確実かつ有利な販売とあわせて、所得形成につながる特産物の育成を一体的に進めていくことが何よりも重要。このため、安心・安全でおいしい京都米づくりを推進するとともに、大消費地を抱える京都の立地条件を最大限活かし、生産者、生産者団体や流通業界と一体となって、企業の食堂や量販店など新たな販路開拓を進めている。一方、特産物の育成については、府独自の中山間地域等特産物育成事業や国の交付金を活用して、京野菜や小豆、黒大豆など、京都ならではの産地づくりをすすめており、省力機械化栽培による小豆の集団的な生産なども広がっている。国に対しては、再生産できる米価水準を確保するため、米価下落に歯止めがかかる実効性ある仕組みづくりをすすめるよう、引き続き要望している。                                  

【松尾】品目横断的経営安定対策について、京都にそぐわない、農家の役に立たないと知事もお認めになっている。国に基本的な枠組みの改善を求めるとおっしゃっているのだから、やはりこれは中止を求めると、思い切って打ち出していただきたい。また、米価については、不足払い制度を国に求める。これはWTOも認め、アメリカでもやられていることで、全く当たり前の対策。ぜひ求めていただきたい。

伏見港一帯の冠水問題 京都市と協議して対策を講じよ

【松尾】最後に伏見港、一帯の冠水問題についてお尋ねいたします。

 宇治川の水位が12メートル50センチになると堰が完全に閉まり内水が湛水します。遊歩道などで植樹その他に大変な被害が発生しています。この改善には、当面、京都市が管理するポンプ排水以外にないのかと思いますが、このパワーをアップして、ぜひ被害が起こらないようにしていただきたい。かつては、冠水して当たり前という地域でしたが、十石舟の運行もあり、様相は一変している。伏見の新しい観光スポットにもなっているので、せっかく植えたアジサイが枯れてしまうようなことがないように、ぜひ京都市ともよく協議し対策を講じていただきたいと思います。お答えください。

【土木建築部長】伏見港公園の遊歩道の冠水については、豪雨の際に冠水することは地形上やむをえないと考えている。今後とも、人家への浸水を防止するため、国および京都市と連携しながら適切な管理に努めていきたい。

【松尾】浸水はやむを得ないという答弁でしたが、ポンプのパワーアップをすれば宇治川の水位以下に内水面を保つことが十分可能だというのが京都市河川課の見解であり、ぜひ協議し、実現してほしい。