認定こども園条例修正案の趣旨説明

かみね 史朗(日本共産党 京都市右京区) 2006年12月15日

日本共産党の加味根史朗です。議員団を代表して、第3号議案京都府認定こども園の認定の基準に関する条例制定の件に対する修正案の趣旨説明をおこないます。

まず修正案を提出した理由であります。そもそも認定こども園は、平成18731日に規制改革・民間開放推進会議が提出した中間答申のなかで位置づけられているように、「保育施設サービスの拡充に向けた民間企業の参入促進」をはかるため、保育所の認可基準の見直しなど公的保育制度の規制緩和を図る一環で具体化されたものであります。本府が提案している認定こども園の認定の基準に関する条例案は、規制緩和をはかる国の基準にもとづくものであり、パブリックコメントでも保育の質が後退する旨の心配が多く出されているところであります。わが議員団提出の修正案は、条例案の問題点を改善し、保育の質を維持向上し、公的保育制度を堅持することを目的に提案したものであります。

次に、具体的に修正案の概要を委員会審議も踏まえてご説明いたします。まず、第1条、認定こども園の趣旨についてであります。健やかに子どもを育成していく視点として、「子どもの権利条約にもとづき児童の最善の利益を考慮し、すべての子どもの保育や教育、発達などの諸権利を乳幼児期の特徴をふまえて総合的に保障するものでなければならない」との規定を加えることとしています。

委員会審議で、与党会派のみなさんから、「児童の最善の利益の考慮については、法律や条例案のなかに趣旨として盛り込まれているので、あえて付け加える必要はない」との指摘がありました。しかし、規制緩和の名のもとに条例案は、職員配置基準や調理室などの施設基準を現行の保育所最低基準より切り下げる内容を含んでおり、その改善をはかるとともに、児童の最善の利益を保障する義務を第1条に明記することが必要であると考えます。

次に、認定こども園の職員配置基準についてであります。

1に、保育の質の維持向上を図るため、宮城県の条例案の例も参考にして、あいまいな「おおむね」の言葉を削除することとしています。第2に、職員配置基準は保育所の最低基準に準じることとし、子どもの年齢に応じて基準を定め、満3歳以上満4歳未満は「20人につき1人」満4歳以上は「30人につき1人」と改め、「35人につき1人」という基準は削ることとしています。第3に、満3歳以上の短時間利用児及び長時間利用児に共通の4時間程度の利用時間については、3歳の子ども又は4歳以上の子どもによってそれぞれ学級を編成し、1学級の子どもの数は、3歳の子どもの学級では20人以下、4歳以上の子どもの学級では30人以下を原則とするように改めることとしています。第4に、認定こども園が、施設が設置されている該当市町村の保育所より保育の質が後退しないようにするため、市町村が定める保育所の職員配置基準を下回らないことを義務付ける規定を新たに設けることとしています。

次に、施設の最低基準についてであります。

1に、保育所や幼稚園の施設の最低基準に準じた施設とするため、幼保連携型認定こども園又は幼稚園型認定こども園についても、その建物が同一の敷地内又は隣接する敷地内に設けることを義務付け、例外を認めないこととしています。第2に、子どもの保育と教育、食育にとって、保育室又は遊戯室、屋外遊技場及び調理室は必要不可欠であり、これらの施設の設置を義務付け、例外を認めません。屋外遊技場については、子どもが自分の力で移動し日常的に利用できることが必要であり、建物と同一の敷地内又は隣接する敷地内に設けることを義務付け、例外を認めないこととしています。

委員会審議で与党会派のみなさんから、「おおむねをとれば基準以上の職員を配置しなければならなくなる場合がある。そのときの財政的措置はどこに規定しているのか」「保育所と幼稚園の基準にしたがって運営することにしており、府民のニーズにこたえて新しいタイプの子どもの施設をつくるために、これ以上のことを盛り込む必要はない」などの指摘がありました。

しかし条例案では、短時間利用児と保育に欠ける子どもが共通して生活する4時間については、3歳以上の子どもは1学級35人に1人の職員配置でよいことになっています。これは、保育所の最低基準において3歳の子どもは20人に1人の職員、4歳以上は30人に1人の職員配置となっていることと比べますと、保育の質の大きな後退であります。また、調理室についても、保育所では設置が義務付けられていますが、条例案では義務付けられていません。屋外遊戯場についても、幼稚園では同一の敷地内又は隣接する敷地内を義務付けていますが、条例案では義務付けられていません。府民が求めているのは、質量ともに充実した保育、教育環境を整備することであり、こうしたねがいにこたえ、保育の質を維持向上させる所要の修正をおこなうこととしたものであります。

そもそも児童福祉法にもとづく児童福祉施設の最低基準については、次のような考え方が明記されています。第3条で都道府県知事は、地方社会福祉審議会の意見を聴き、児童福祉施設に対し、最低基準を超えて、その設備及び運営を向上させるように勧告することができる。第四条では、「児童福祉施設は、最低基準を超えて、常に、その設備及び運営を向上させなければならない。」と書かれています。修正案は、「おおむね」の言葉を削除し、最低基準以上の職員配置を期待しているものであります。また、そのために、第15条で、知事として認定子ども園に対して、支援できるように規定を加えたところであります。

 次に、保育に欠ける子どもの入所についてであります。幼稚園型、地方裁量型の認定こども園については、市町村が保育に欠ける子どもの認定をおこなわないため、保育に欠ける子どもの利用が排除される恐れがあります。このため、「保育に欠ける子どもの入所が排除されることのないよう、市町村との連携をはからなければならない。」との規定を新たに設けることといたしました。

次に、保育料についてであります。認定こども園を利用する保育に欠ける子どもの保育料が、認定こども園が所在する市町村の保育所の保育料と異なることは不適切であり、「認定こども園を利用する保育に欠ける子どもの保育料は、市町村の保育料に準じて定めなければならない。」の規定を新たに設けこととしています。

そのほかに、認定こども園の健全な運営と発展に資するため、認定こども園の利用料の設定その他運営に関する事項について、法律で規定された報告の徴収にとどめず、当該施設の設置者に対して、知事が指導、助言又は勧告その他必要な支援をおこなうことができる旨の規定を加え、また、知事は、施設の安心・安全の確保及び運営に関する事項について、当該施設の所在する市町村の長その他の関係機関に対して、技術的な助言又は勧告をおこなうとともに必要な情報提供に努めなければならないとの規定を加え、補則として、「この条例の施行に関して必要な事項は、規則で定める。」の規定を加えることとしています。

以上で修正案の趣旨説明を終わります。ご清聴ありがどうございました。

 

 

認定こども園条例修正案討論

みつなが敦彦(日本共産党 京都市左京区) 2006年12月15日

日本共産党の光永敦彦です。私は議員団を代表いたしまして、ただいま議題となっております第三号議案に対する我が会派提案の修正案に賛成する立場で討論します。

そもそも認定こども園は、「骨太方針2003」に、2006年度までに設置することが急遽盛り込まれたように、「まずこども園ありき」で進められてきました。

そのねらいは明白です。ちょうど同じ2003年に、日本経済団体連合会は「保育サービス提供者の間の競争を阻害している要因を除去し、競争メカニズムを機能させることが不可欠」であるとして、「現在の認可保育所制度をゼロベースで見直し」「利用者が保育施設を自由に選択し契約を結ぶことのできる『直接契約方式』を導入すべきである」とのべました。また、「規制改革・民間開放推進会議」は、現行の保育制度について、「特定の『保育に欠ける子』を対象として政府から与えられる『福祉』であり、・・・保育サービスが提供される市場とはほど遠い」と、「保育に欠ける子」への「福祉」から、「ニーズに応じて自由に選択できる環境」作りへの転換こそ必要とのべています。

その上、幼稚園と保育園を「総合施設」として一体化する際の施設設置基準について、「現行の幼稚園と保育所に関する規制にとらわれることなく、どちらか緩い方の水準以下とすることを原則とする」と述べたように、保育園や幼稚園の基準そのものの切り下げまで露骨に求めています。まさに、大幅な規制緩和や市場原理主義を特徴とする新自由主義にもとづき、社会福祉としての公的保育の分野に、企業の参入ができる制度として変質させ、保育に欠ける子に対する保育を、儲けの対象にし、長年、関係者や保護者の努力で築いてきた保育制度の根幹をゆがめるものではないでしょうか。

その上、本年3月に閣議決定された「規制改革・民間開放推進三カ年計画(再改訂)」で、「認定こども園の実施状況を見ながら」認可保育所への直接契約制や保育料の自由設定を導入するとしています。これは、「多様なニーズにこたえる」ことを口実に、「認定こども園」を足がかりにして、財界の要求にこたえる仕組みを、一気につくりあげようとしているものです。

すでに規制緩和により、2000年度より、民間企業等にも認可保育所の設置が認められ、実施されていますが、私が九月議会の本会議質問でも示したとおり、各地で保育の質の低下や、ひどい場合は撤退などの事態が起こっているのです。また、圧倒的に企業か非営利法人が運営しているアメリカでは、最低基準は州ごと、入所は保育所と保護者との直接契約、保育料はサービスに応じた自由設定となっており、その結果、高い保育料を払えば質の高い保育、保育料が低ければ質の低い保育しか受けられない状況になるなど、子どもたちが受ける保育の質が保護者の収入によって違ってくる格差がうまれているのです。

我が会派が常任委員会に提出した修正案を審議した際、民主党委員から「利用者によって選別をされていく中で、悪質なものは排除されていく、いいものはしっかりのこっていく」との発言がありましたが、これは、福祉に競争を持ち込み、格差を生み出すことを当然とする、まさに新自由主義そのものの論理であるといわざるをえません。

こうしたことから、本府が条例をつくる限りは、少なくとも、児童福祉法第二条「国及び地方公共団体は、児童の保護者とともに、児童を心身ともに健やかに育成する責任を負う。」の立場にたち、これまで、現場の努力で作り上げてきた現行の保育園や幼稚園水準を下回らないとともに、同第24条「保育における公的責任」に立脚した基準や仕組みこそ必要です。

ところが、第三号議案では、一部を除いて、そのほとんどが、国の指針をそのまま適用し、基準の引き下げ、直接入所方式、保育料の自由設定方式、公的責任の後退などに道を開くもので、一方、我が党の修正案は、提案理由の説明で加味根議員がのべたとおり、この中心問題を抜本的に改善する提案となっています。

よって第三号議案には反対し、第三号議案に対する修正案に賛成するものです。

以上で討論を終わります。ご静聴ありがとうございました。