本庄孝 夫(日本共産党 京都市山科区) 2003年12月4日

 

日本共産党の本庄孝夫です。私は、先に通告しています数点について、知事並びに関係理事者に質問をいたします。

 

子どもをめぐる社会の道義的危機克服へ、

管理主義あらため、子どもの意見表明、社会参加の重視を

 

【本庄】はじめに、子どもたちに最も深刻な形であらわれている、社会の道義的危機克服の問題です。重大で衝撃的な少年犯罪が相次ぎ、いじめ、児童虐待、少女買春などが起きていることに、多くの国民が不安を持ち、心を痛めています。

今日、あらためて、社会の道義的な危機を克服する課題、とりわけ、子どもたちに健全な社会を保障するために、国民的な対話と運動でともに解決方向を探求し、現状打開のための努力を強めることを訴えるものです。

そのために、政治や経済のゆがみをただし、民主的なルールある社会を実現することとあわせて、社会が独自に取り組むべき問題として、一つに、民主的社会の形成者にふさわしい市民道徳の規準を、国民的な討論と合意で確立していくこと、二つに、子どもの健全な成長を保障する社会の自己規律を確立すること、三つに、子どもの意見表明権や社会参加の権利を学校や地域社会の各分野で保障すること、四つに、家庭、地域、学校が共同して、子どもたちの成長を見守り、悩みにこたえ、支える、草の根からの運動をすすめることを呼びかけます。  

とりわけ、少年事件や少年問題の原因はさまざまですが、その背景の一つに、子どもの自分を大切な存在と思う、自己肯定感情が深く傷つけられているという問題があることは、多くの関係者・専門家が共通して指摘していることです。日本の青少年は国際的に見て、大変「自己肯定感情」が低く、例えば、財団法人・日本青少年研究所の「高校生の未来意識に関する調査」では、「私は他の人に劣らず価値のある人間である」の項目で、「よく当てはまる」「まあ当てはまる」の合計が、中国で964%、アメリカで893%に対して、日本が376%であり、「私には人並みの能力がある」の項目で、同様に中国が939%、アメリカが914%に対して、日本が580%と、日本の青年には大変否定的との調査があります。

子どもたちが、自らの存在を肯定的なものと、安心して受け止められるようにするためには、世界でも異常な競争主義の教育、管理主義の教育を一掃することが必要です。子どもが自由に意見を述べる権利を保障し、その意見を尊重し、子どもの社会参加を保障する取り組みが重要です。社会の一員として尊重されてこそ、自分を大切にし、他人を大切にし、社会のルールを尊重する主権者として成長することができるのではないでしょうか。

本府では、今から六年前に桂高校で、制服導入問題が起こりました。当時の知事や教育長は「学校長の裁量権」として、学校長の一方的なやり方を擁護しました。それに対して、生徒たちは、「校長先生の強硬な態度は、私達との信頼関係を壊すものとなってしまいました。民主主義を学ぶ場である学校で、民主主義をくつがえすようなことはしないで下さい」と問いかけ、「子どもの権利条約」が保障する意見表明権に従い、国連子どもの権利条約委員会に報告し、国内だけでなく国際的な問題となったことは記憶に新しいことです。

そこでお伺いします。子どもが自らの存在を肯定的なものと受け止めるための条件をつくるためには、旧態依然とした管理主義や子どもたちを抑え込むような学校運営を改めることが必要ではないでしょうか。

世界では、生徒が学校運営に参加するなど、子どもの社会参加が大きな流れになっています。学校や地域などの様々な場で、子どもの意見表明や参加を重視する積極的な流れを推進させるべきではありませんか。知事並びに教育委員長の御所見をお伺いします。

【府民労働部長】時代を担う子どもたちを健全に育成するためには、子ども自身が主体的に考え、自分の意見を自由に述べ、積極的に社会参加をすることが有意義であると考えている。同時に、意見表明や行動には、必ず責任と義務が伴うこともよく理解させることが家庭や学校、地域における大人の責任であると考えている。府としては、新京都府青少年プランにおいて、児童の権利に関する条約の理念を踏まえ、青少年が積極的に意見を表明する機会の拡大や青少年による社会参加の促進を主要な課題に位置付けており、従来からボーイスカウト、ガールスカウト等の支援活動や防火活動、青少年による社会貢献活動の支援の促進、青少年の主張大会の開催等をつうじ青少年の社会参加の促進とりくんでいる。今後とも家庭、学校、地域、青少年団体、NPO、関係機関との連携を深め、青少年の社会参加の促進を図る。

【教育委員長】子どもの学校運営等への意見表明や参加のあり方についてだが、学校は成長過程にある児童・生徒に対し、その発育段階に応じた知識の教授と人格の形成をはかる場であることは言を待たないところ。そこにはおのずから、教え育てるものと学ぶ主体者である児童・生徒との関係が規律正しく保たれていることが必要であり、学校運営は当然そのことを念頭において進められるべきである。そうした基本理念を踏まえ、従来から、各学校においては、発達段階に即して児童・生徒の意見や思いを平素から様々な形で把握し、学校運営に生かしている。府教委としては、今後とも、規律ある学校運営を推進することにより、児童・生徒の健やかな成長と規範意識をもった人格の育成を図りたい。

 

少人数学級実現の機は熟している

府内すべての学校での実現へ、知事が決断を

 

【本庄】次に、30人学級など少人数学級の早期実現で、すべての子どもたちが「学校大好き!」といえる状況をつくる問題です。少人数学級の実現は、子どもの学ぶ権利保障の中心的課題であることは、いまや時代の流れ、国民的常識です。

ところが、昨日のわが党・梅木議員の代表質問に対して、教育長は、「小学校中学年以上においては、少人数授業に加え、少人数学級も選択して実施」と答弁されました。これは、文部科学省の方針を受けての一歩前進ではありますが、全国の実態や父母の願いにまともに応えるものではありません。

 一つには、少人数学級を実施する自治体は全都道府県の64%となり、各自治体も住民の要求を受け止め、それを実現する努力が続けられているにもかかわらず、本府はそれに背を向けていることです。文部科学省もこの全国の流れを無視できず、学級編成基準の弾力化・自治体裁量化を推進しました。さらに来年度から、「少人数学級」を国庫負担でできるよう、加配の特例措置の条件を緩和しました。そして、少人数学級編成も適用対象とする方針を明らかにし、早速、各都道府県に対して、「少人数学級を実施する計画に係る資料」の提出を求めています。加えて、お隣りの大阪府でも、府内の全公立小学校の12年生の学級編成を35人に見直す方向で検討していると報道されているではありませんか。

二つには、習熟度別の少人数授業についての弊害が明らかになっているにもかかわらず、改めようとしないことです。本府での、「まなび教育推進プラン」における習熟度別「少人数授業」については、「子どもたちに、学習のクラスを選ばせるといっても、子どもは自分はできないことをよく知っていて、ひどく傷ついている」、「低学年で『もうええねん、どうせ俺はあかんねん』と投げやりになっている」などの保護者の声が寄せられています。また、学校現場からも、「子どもの差別・選別、不当な劣等感・優越感の助長などを危惧する」と指摘されているではありませんか。

三つには、京都市や府内の旧同和校の一部では、少人数学級が実施されている問題です。昨年度から、加配教員の統廃合によって、それまでの「へき地学校等暫定加配」「教育困難校加配」「同和加配」などが、一括して「学校特色加配」となりました。本年度、京都府には1,276人が加配されています。そのうち、「通級指導」や「へき地学校」・「不登校支援」などを除き、小・中学校に対して、「指導方法工夫改善」として748人が各学校に加配されています。それを使って、京都市だけでなく、たとえば、八幡市でも、一部の旧同和校では学級編成が緩和され、30人学級が実現している学年もあります。しかも、年度末には、学校長から八幡市の教育長宛に「学級編成についてのお願い」として、「きめ細かに指導を実施し、生徒達に少しでも落ち着いた学習環境を保障するには適正規模のクラス編成が必要」との要望書が出され、教育委員会もこれを認め、学級編成を緩和しているではありませんか。

少人数学級が実現すれば、すべての教科、すべての学年において、少人数の授業が保障されることとなります。子どもの人格形成には、すべての教科の学力の全面的な発達が必要であり、それは、習熟度別「少人数授業」のような「基本教科」に限られるものではありません。少人数学級は、全教科を同じ教室・集団で学ぶことができ、落ち着いた教育環境のもとで、子どもも担任も授業に専念し、学習の効果もそれだけ高くなることは、全国の貴重な経験が示しています。

山形県では、今年度で5年生まで30人学級を実施し、来年度にはすべての学年での実施となります。子どもたちへのアンケートによると、「学習が楽しくなった」75%、「話がよく聞けるようになった」71%、「先生が丁寧に指導してくれるようになった」67%と報告されています。教育次長は、マスコミの取材に、「学力が向上する以前の問題として、子どもたちが、心弾ませて学校に行くようになったということが、非常に大きい」と報告し、県教委の調査でも、不登校児童や欠席数が減少していることが明らかにされています。

 京都では、京都市を除いた本年度の小学校一年生で試算しても、府内で35人学級を実現するのに41学級を増やすだけです。30人学級は、91学級を増やすことで実現できます。

そこで、知事、並びに教育長にお伺いします。国の加配教員の特例措置の条件緩和も活用して、府内すべての学校での少人数学級編成を決断すべきです。まさに、少人数学級実現の機は熟しています。京都でも来年度から実施するよう、知事並びに教育長の決断を求めますがいかがですか。なお昨日、教育長は、「選択的導入」といわれましたが、学校現場と市町村教委の意向を、当然尊重されるのですね、いかがですか。また、「小学校中学年以上」の限定は取り除くことを強く求めますが、いかがですか。お答えください。

【知事】昨日梅木議員にもお答えしたとおり、私は、教育というのはわが国の存立基盤、京都の存立基盤にかかわるという観点から、府政の最も重要な課題として位置付けてきた。そして、そのために就任にあたりすぐに、学校教育の内容、とくに少人数教育のあり方について教育委員会を中心に専門的分野の方に検討いただき、アクションプランとしてまとめていただいた。その上で今回、小学校の低学年のティーム・ティーチング(T・T)導入について78千万円もの府費を思い切って投入したところ。こういった原則については、私は、まさに専門家である教育委員会でしっかり議論を重ねていただき、その基本的考え方を確立していただく、その上で、学校という現地・現場の状況に即した運営にあたっては柔軟な少人数教育がおこなわれるべきではないかと考えている。今回、小学校1年についてT・Tを全面的に導入したのは、私自身、教育委員会からプランも聞き、その他の専門家から聞くと、「最近いわゆるADHDのお子さんが増えており、そういったお子さんについては、一方では普通の教室で勉強させることがその子どもの発達にとって大変重要である。しかしながら、そういうお子さんが一人混じると、実は他の子どもたちも引きずられてしまって、その学級自体がなかなかまとまらない状況がある」ということを聞いた。そういう中で、特に小学校低学年については、そういう「引きずられる状況」が強いということだったので、T・Tのようにしっかりと支える少人数教育の必要性について、私自身も納得して今回ふみきった。

 これからも、私自身教育委員会に十分に話を聞きながらも、その中で知事としてやらなければならないことは信念を持ってやっていく。これは別に文科省がこういう風にやったからということではなくて、T・Tを今年文科省に導入しろと言われたのではなくて、まさに京都はこれから京都ならではの教育として、しっかりと私は教育委員会には信念を持って取り組んでいただきたいと思っているし、そういった教育委員会の信念を受けてわれわれも十分にそれを知事部局としてサポートしていく。

 これからも、教育委員会の検討内容を大切にしながら、学校という現地・現場の状況に即した少人数教育を支援することにより、時代を担うたくましい人づくりに積極的に取り組んでまいりたい。

【教育長】少人数学級については、基本的な考え方については代表質問で答えたとおりだが、小学校12年生での2人の先生の指導については、保護者や担任の先生、また市町村教育委員会からも大きな効果があるということを多数いただいている。こうした保護者や学校現場、市町村教育委員会からの意見も踏まえ、来年度も継続していきたい。

また、少人数学級については、画一的に導入するのではなく、小学校中学年以上において少人数授業に加え、学校や児童生徒に実態に応じたいっそう効果的な教育をおこなうため、少人数学級も選択して実施できるよう検討しているところで、今後市町村教育委員会と協議してゆきたい。

 

学校5日制実施で、家庭の負担は深刻

障害児学童保育の受け入れ整備はじめ、支援強化を

 

【本庄】次に、障害がある子どもたちの放課後・休日の深刻な実態とその改善について質問いたします。学校5日制が完全実施され2年目を迎え、障害がある子どもたちにとって、社会的な基盤が整えられないままの実施で、家庭への負担がどのようになっているのか、今後、どのような制度や手立てが必要なのか、子どもたちの成長と発達にとっての課題を明らかにすることが求められています。

私の手もとに、立命館大学産業社会学部の津止研究室と京都障害児放課後ネットワークが共同して取り組まれた、「京都の障害児、放課後・休日実態調査」の中間報告があります。

これは、京都府内の小学校・中学校・高校の障害がある子どもの養育者を対象に、「子どもの放課後や休日の様子」、「子どもに関する悩みや要望」について、昨年の12月から今年の3月に調査されたものです。

中間報告では、一つには、子どもたちは、放課後や休日に何らかのサービスを利用しているが、学童保育など一貫した公的制度が充足していないために、いくつものサービスや個人的にボランティアを頼むなど、生活が細切れになっていること、二つには、様々な制度やサービスが用意されていても、障害の特性や年齢制限の問題で利用が限定され、その分家族の負担が大きくなっていること、三つには、障害がある子どもを養育していくうえでの特有の困難性の存在、特に周囲の理解が乏しく、母親のみに負担がかかっていること、四つには、今後、制度やサービスを検討するうえで、「子どもが安心して過ごせる場・人」が必須条件であることなどが指摘されています。特に、医療的ケアが必要な子どもの保障がほとんどないこと、また、自閉症については、常に目が離せず、緊張感を強いられる家庭への援助が急がれていることなどが強調されています。

そこでお伺いします。まず、公的制度としての障害児学童保育の問題ですが、現在、府内で受け入れ実施しているのは、17の市と町に過ぎず、希望しても学童を利用できないのが実態です。すべての市町村での実施、充実に向け、責任の所在を明らかにし、市町村との協議・支援を強めることが求められますがいかがですか。また、保護者などが自主的に開設している障害児学童保育に対し、施設や運営資金など親身な支援が必要です。開設以来、まったく増額されておらず、他府県での行政援助と比べて、大きく立ち遅れているのが現状です。お答えください。次に、「地域ふれあい交流事業」です。市町村へ委託されていますが、障害児が参加しにくいとの意見が出されています。制度・サービスへの利用負担料金が重くのしかかるなかで、大切な事業として拡充されることが必要と思いますがいかがですか。さらに、放課後や休日の保障について、部分的なサービスが断片的に提供されるのではなく、生活全体を包括する支援策が充足されるべきだと考えますが、どのように検討されているのかお伺いします。また、自閉症についての制度・サービスなどの障害種別のサービスについて、どのように検討され実施されているのかお伺いします。

【保健福祉部長】障害児の放課後児童クラブについて、府では子育て支援計画後期実施計画に基づき放課後児童クラブの設置を促進しており、年々実施クラブ数も増加しており、現在30市町村185クラブで実施されている。また、今年度から障害児を受け入れるクラブに対する補助要件が4人から2人に緩和された中、実施主体である市町村に対し、障害のある児童を受け入れるよう要請してきており、現在、約4割のクラブにおいて養護学校の児童を含む障害のある児童の受け入れが実施されている。なお、自主的に開設している放課後児童クラブへの支援は、実施主体である市町村が事業を適切・運営できると判断した場合は、地域のニーズを考慮し、委託により実施することが可能であり、今年度11か所に委託され、このうち4か所で障害児を受け入れている。

 障害児の放課後・休日の生活支援については、先ほど斎藤議員の質問に答えたとおり、府としては必要な福祉基盤の整備のみならず、サービス利用の第一歩となる相談・支援体制の充実など総合的な支援策の確立が必要であると考えており、人材の養成、資質向上や専門相談機関および関係機関等のネットワーク化を進めるなど、障害児のトータルな生活支援等について相談に応じる体制整備等に努めている。

また、府独自に実施している心身障害者介護モデル事業やショート−ステイ、デイサービスに府独自の加算措置を講じることなどにより自閉症など障害の種別に対応したきめ細かな療育に努めている。なお、本年10月に地域療育支援の拠点として府子ども発達支援センターを開設し、医師、OT、PT等の専門職員を配置した。今後、市町村等の要望に応じ、自閉症等はじめ障害種別に対応した療育支援をおこなう。

【教育長】地域ふれあい交流事業については、障害のある子どもたちも地域での様々な活動に参加する機会を充実するために実施している。実施にあたっては、養護学校と連携を図るとともに、ボランティアの協力も得て障害のある子どもたちが参加しやすい体制を整備し、スポーツ活動をはじめ様々な体験活動がおこなわれている。また、学び教育推進プランを踏まえ、今年度から新たに障害のある子どもたちが主体的に参加できる京のわくわく体験推進事業も実施するなど、活動の場の拡充を図っているが、今後とも障害のある子どもたちの参加が進むよう努めたい。

 

視覚重複障害者の実態を把握し、

府として更生療護施設の整備、家族への支援策の充実を

 

【本庄】最後に、視覚重複障害者の更生療護施設について質問いたします。

私の地元・山科区に、視覚重複障害者の21歳の青年がおられます。視覚障害ならびに知的障害ともに重度の重複障害です。養護学校高等部を卒業され、現在、大阪市鶴見区にある、重度身体障害者更生施設の日本ライトハウス・ジョイフルセンターに入所されています。自営業を営むお父さんが、月曜日の朝に自家用車で、山科の自宅から鶴見区のセンターまで送り、金曜日の夕方には迎えに行き、週末は家で過ごしています。お母さんにお聞きしますと、全盲で、ものが言えない、書けない、排尿・排便も伝えることができないなど、身辺整理にも課題を持っておられるそうです。最大の悩みは、還暦を迎えたお父さんがいつまで送迎ができるのか、親が亡くなった後にどうなるのかということです。福井県の入所施設である「光道園」に申し込んでいるが、「4人待ち」ということで、何年経ったら入所できるのか、悩みと不安で一杯だという、まさに切羽詰った状態のお話でした。

先日、京都市の福祉事務所のケースワーカーがジョイフルセンターを訪問したところ、会話にはならないが、途切れがちに「だれ」と声をかけてくれた、ボールペンの芯を入れる作業をしていたが、仲間の中で楽しそうだったと、施設での様子もお伺いしました。

どんなに障害があっても、懸命に学び、生きようとする障害者の人権を守り、人間としての発達を援助する、まさに社会と政治の責任が求められています。

調べてみますと、視覚第11級、重度の障害者は、山科区だけでも130人おられます。京都市では1,931人、京都府内全体では3,332人になります。ところが、本府には視覚重複障害者の入所施設がありません。全国的にも、大阪のジョイフルセンターや福井県の光道園を含めて、19都道府県に27施設しかありません。複数の施設があるのは、北海道・千葉・東京・福井・広島の5都道県に過ぎません。

そこで、お伺いします。本府として、視覚重複障害者など、重度重複の障害者の実態をどのように掌握されているのでしょうか。そして、施設への入所を希望されている障害者は、どれぐらいおられるのか、実態調査すべきだと思いますが、いかがですか。先の例からもニーズがあることは明らかです。また、今年度から支援費制度となるなかで、施設が選べるといわれてきましたが、京都では選ぶことができない実態です。困っている家族が他県に頼らなくても、実際に救済されるよう、家族への情報提供、府内での施設整備、重複障害者を受け入れた施設への補助の拡充など、積極的な支援策を検討すべきだと思いますが、いかがですか。見解をお示しください。

【保健福祉部長】重度重複障害者の実態については、京都市を除く各市町村把握の状況では、例えば視覚重複障害者については、在宅サービス利用者が約20名となっており、また施設には弱視の方も含め60名近くの方が入所されている。こうした視覚と知的に重複障害のある方については、日常生活に適応できるよう小さいころから療育訓練をおこなっていただくことが大切なことから、就学前の児童を対象に視力障害児療育訓練事業を実施するなどの対応をおこなっている。施設入所希望者数については、支援費制度が始まったことにより、従来の行政による措置制度のときのように制度上詳細に掌握できないが、入所相談等があった場合にはその方の障害の状況に最も適応した施設を利用できるようにするなど、必要な支援をきめ細かくおこなっている。

 障害者の福祉施設にかかる整備に関しては、府独自の上積み補助をおこなう中でその促進を図っているところで、情報提供についても指定事業者について逐次関係機関へ速やかに提供するとともに、インターネットによる提供もおこなっている。

 なお、重複障害者に対する加算額の引き上げなど支援費の基準額の改善については、昨年来、国に強く働きかけた結果、一定の措置は講じられたものの、なお不十分な面もあることから、引き続き改善に向け国に強く要請している。