2003.2.14   岩田隆夫議員 一般質問

 

危険な「プルサーマル」計画の凍結と「原発推進路線」の転換について

 

  日本共産党の岩田隆夫です。通告にもとづき、知事ならびに関係理事者に質問します。

  まず一点目は、先日、名古屋高等裁判所金沢支部の「もんじゅ」訴訟の控訴審判決で、設置許可無効の判決が出されたことに関連しておたずねします。

  報道により、すでにみなさんもご存知のとおり、「もんじゅ」訴訟の控訴審判決は、技術的に確立されていない高速増殖炉開発の無謀さを司法の立場から明らかにし、国の原子力行政の見直しを迫る画期的な内容です。これまで国は「核燃料サイクル」を作り上げるとして、その基本に高速増殖炉を位置づけさまざまな事故や使用済み核燃料の処理過程で重大な人身事故が発生しても、開発を強引に進めてきました。

  原発を稼動させると核燃料の中にきわめて強い放射能を持つプルトニウムや放射性ストロンチウムなどの「死の灰」ができます。このプルトニウムはウランに比べても格段に毒性が強く取り扱いが難しい物質で、核兵器の原料として使われるものでその製造と管理は国際的に困難な課題となっているものです。日本政府は、この核拡散防止条約の中心物質であるプルトニウムを燃料にする、新しい原子炉である、高速増殖炉「もんじゅ」の開発を進めたのですが、冷却材の金属ナトリウムもれ、という重大事故おこし、開発が中断状態にあります。そして、今回、高裁から「安全性が確保されない」として「設置許可無効」の判決を受けたものです。

  判決文は、旧ソ連でのチェルノブイリ原発事故を「人類の教訓」として引用し、原発事故でもっとも危険な炉心崩壊を「現実に起こりうる事故として安全評価しなければならない」と述べています。さらに続けて判決文は安全審査を担う原子力安全委員会の姿勢を「無責任でほとんど審査の放棄」  と強烈に批判したうえで「原子炉等規制法が期待する慎重な調査、審議を尽くしたと認めるには大きな疑問がある」と、安全審査の実態が原子炉災害防止の役割をはたしていないことを明確に指摘し、これまでの国の安全審査体制と審査内容がデタラメに近いものと断じているのです。

  翌日の京都新聞一面の解説記事はじめ、全国紙もすべて徹底的に安全性を求めるサイドに立ったもので、安全性を確保するために、国の原子力行政の全面転換を求めた画期的な判決と報じています。

  国のすすめる使用済み核燃料を再処理し、プルトニウムを燃料として再利用する核燃料サイクル路線は、完全に行き詰まっているのです。ところが、国はそれにまだしがみつき、現在、稼働中の軽水炉型原発で、問題のプルトニウムとウラニウムをミックスして、燃やそうという「プルサーマル」計画を、これまたゴリ押ししようとしているのです。

  ところが、当の発電事業者である東京電力が、昨年夏の一連の事故隠しが明るみに出る中で、秋に、この「プルサーマル」計画の凍結を発表しました。関西電力も凍結を決断する時です。そこで知事におたずねします。

  府民の安全に責任を持つ京都府知事として、関西電力に対して、高浜原発3号機で計画している「プルサーマル」計画をすみやかに凍結、中止するよう申し入れるべきであります。お答えください。

  また危険なプルトニウムを然料とする新型の高速増殖炉の開発は、空気や水と触れただけで激しく反応し爆発する金属ナトリウムを原子炉の冷却材として使いこなす技術が難しく手におえないものと判断し、ドイツ・フランス・アメリカなど欧米の先進国はこの開発からすでに撤退しているのです。国に対して、福井県で進めている危険な「もんじゅ」の開発を中止するよう強く意見すべきと考えますがいかがですか。東電の原発群をかかえる福島県知事も、「もんじゅ」や関西電力の原発群をかかえる福井県知事も国のプルトニウム再利用計画の見直しをもとめ、「今後、一切協力できない」と表明しています。

山田知事、あなたは国の立場に立たれるのか、それとも府民の安全を守る立場に立たれるのか、明確に表明されることを求めるものです。お答えください。

  昨年夏に、発覚した東京電力の長期にわたる事故かくしは、もっと深刻なものです。数多くの原発事故を隠す記録の改ざん、定期点検の時にこっそりと修理する“闇修理”などあってはならない国民ダマシと、危険なままで原発運転を続けていた実態が内部告発によって発覚し、明るみに出たものです。これらの「長期にわたる事故隠し」と、「危険なままでの運転継続」と「闇修理」は、福島第一、福島第二、柏崎刈羽のほとんどの炉におよぶなど、日本の原発史上、最悪の事態が判明し、立地関係自治体はじめ、広く国民の憤激を呼び起こしたのは当然のことです。

  これまでの調査で判明した虚偽記載による事故かくしは二十九軒にものぼり、改ざんはすべて東電の指示によるもので、中には「プルサーマル」計画予定の新しい炉である福島第一原発3号機、柏崎刈羽3号機での炉材料での亀裂が多数見つかったものまで含まれているというヒドイものです。しかもこの間、政府と電力会社は、この事故かくしを知っていながら、国民には繰り返し、「安全だ」と宣言して「プルサーマル」の導入をすすめてきたのですから国民に対する重大な背信行為です。

  このようにもともと技術的に未確立で危険な原発であることを知りながら政府と電力会社が一体となって虚構の「安全神話」をつくり、運転しているところに誤りと重大事故発生の根元があります。「原発は危なくない、重大な事故は起こらない」というまちがった「安全神話」から脱却し国際原子力機関(IAEA)の勧告にもとづき、安全確保のための国と電力会社・メーカーから独立した原子力規制機関を確立することなしに運転を続けることは許されません。わが国の原子力政策が、世界の流れに逆行し、安全性をないがしろにしている危険なものであることが、次々と露呈しているのですから原発推進路線を見直す機会にすべきと考えます。世界的に見れば、アメリカはスリーマイル島原発事故以来、原発の新増設は中止、ドイツは脱原発を国のエネルギー政策に据え、新規建設計画はなく、古くなった原発から順次廃止しています。スエーデンでは、すべての原発とともにCO2を大量に排出する火力発電も廃止するエネルギー転換事業に着手し、風力発電や太陽光発電に切り替えを進めています。このように環境先進国では、省エネと自然エネルギーへの転換を国の基本政策とする考え方が主流となってきているのです。

  京都府を環境先進県にといわれるのなら、京都府は「原発ノー」の立場を明確にしてこそ、京都の名が光るというものです。知事の意思表明を期待します。お答えください。

 

地球温暖化対策の促進と省エネの推進について

 

次に、「地球温暖化対策の促進と省エネの推進」についてお尋ねします。

  十年前の一九九二年、地球温暖化防止が人類にとってさしせまった共通の課題として取り上げられ、各国が一致して採択したのが「気候変動枠組条約」です。その五年後の一九九七年に京都で開かれたCOP3では、地球温暖化の原因物質CO2の削減の目標数値を決め、この京都の名を冠して「京都議定書」と名づけて締結され、その後、各国で批准が進みました。日本も遅れて、昨年ようやく批准しましたが、いまだこの議定書の発効には至っていません。

  最大のCO2排出国であるアメリカは、この議定書に賛成しておきながら、この枠組条約から離脱してしまいました。アメリカなど大国の妨害とも言える横暴な態度は世界の非難の的となっています。

アメリカや日本がCO2削減に消極的なのは、“当面の利益を追い求めるためには地球の将来は意に介さない”と言う資本主義の利潤第一主義の立場を取る大企業の意向によるものです。しかし、人類の生存環境を破壊してしまっては、大企業の存在もありえない事は自明の理です。そこでおたずねします。

  先頃発表されたアクションプランの一つ「温暖化対策プラン」を見ますと、うたっている理念に比べ、実際の取り組みが、スローガン的と言いますか、「府民まかせ」で、指導性を発揮すべき府自身の義務や具体的な事業支援の内容が抽象的なこと、大量にCO2を排出する事業所や企業に対する削減義務、取り組みの計画が見えて来ないのです。

 そこで具体的にいくつか指摘したいと思います。

このプランでは二〇一〇年までに、一九九〇年比でCO2一二%削減、その他の温室効果ガス八%削減と数値目標を掲げています。この目標を達成するための各種事業を展開するため、現在のCO2排出量など実態調査を行うこととしていますが、NPOまかせになっています。企業や産業界が、自ら排出量を把握し削減計画とその実行プログラムを持つことが必要なのではありませんか。またそのために、府が技術面も含めた支援体制を組まねば出来ないと思います。この点に関してどう考えておられるのか、先ずおたずねします。

  省エネを促進するのには、二十一世紀の科学技術を結集し、実用性と経済性を備えたソフト、ハードのシステム導入が欠かせません。しかしそれらの導入にはその経済性や技術のカベを乗り越えるため、国や府など行政が先見性を持って指導性を発揮することが求められます。そして何より予算を伴った支援策を阻むことなしには進みません。そこで、まず、府の施設への先行導入が求められます。府立病院、府立医大病院をはじめ、総合見本市会館など、光熱水費が支出で大きなウェイトをしめている施設について、計画的に熱効率の高い熱電供給システム・コージュネを導入し、省エネを着実に進めるべきだと考えます。プランにも示されている「屋上緑化」や透水性舗装に順次切り替え、地表温度を下げ、ヒートアイランド現象を抑えること、雨水や中水道の普及と活用を進めることなどを計画的に事業化すべきであります。

  さらに、自然エネルギーの利用拡大を大きな流れにするための国や府県の財政支援が先進国に比べて遅れています。自治体や民間の風力発電事業や太陽光発電導入への支援の助成予算枠が削られてしまいましたが時代の流れに逆行するものです。拡充するよう国に求めるべきです。併せて長野県はじめ他の先進県がいち早く導入している自治体や民間団体などの太陽光発電施設の導入や、風力発電施設建設への支援策や、助成制度の確立、充実が、緊急の課題となっています。考えをお聞かせください。

  また田畑の灌漑用水路などを利用する小規模水力発電や、バイオマス発電、小規模波力発電も実用化と導入が自治体や民間団体などでも進んでおり、こうした自然エネルギーの利用が、府下の自治体や事業所で進むよう技術支援や助成制度の検討に着手すべきと考えます。どう考えておられますか。

  さらに、全国各地に広がっています「市民共同発電所」や民間の「省エネ住宅」や「ソーラーハウス」の普及のための経験交流やシンポジウム、支援体制の確立も必要です。あわせてお答えください。

  つぎにCO2削減で大きなウェイトを占める車社会の問題です。移動の中心に公共交通、それも国が鉄道への助成をしっかり据えているヨーロッパの先進国に学ぶことがたいへん重要になっています。マイカーや輸送から鉄道や船による輸送中心に転換が進められることが欠かせませんが、国の交通政策に沿うところが大きいので知事には次の点にしぼっておたずねします。車社会・自動車優先の交通政策、自動車中心の道路行政を改め、歩行者、自転車優先への転換、交通弱者であるお年寄りや子どもを中心においた町づくり政策に転換しなければなりません。郊外から町へ過疎の中山間地の移動を保障する小型の巡回バス、コミュニティバスへの国の助成制度確立と府の支援体制を確立することを、福祉やまちづくり、そしてCO2削減の面から21世紀の自治体の重要施策に位置づけることです。知事の考えをお聞かせください。

  この問題の最後に、府下の事業所で最大のCO2排出源となる舞鶴石炭火電の問題についておたずねします。

知事も知っておられる通り、景気の低迷が長期にわたって続いていることもあいまって、大手企業を中心に省エネが進行し、日本全体の電力需要の伸びが止まり、さらに、右肩下がりの状況が始まりました。関西空港が、施設の電力需要を建設前から予測シュミレーションし、それに見合ったコージェネ型の小規模火力発電施設でまかなっているように、分散型コージェネ発電が、病院やホテル、コンビニまで広がり、エネルギーも多様化して導入されてきています。

関西電力の、75万kWの宮津エネ研もこの二〇年間、ほとんど使われず、すでに一号機は運転休止で、稼動しているのは二号機だけで、それも年間の稼働率は一〇%そこそこです。そして関西電力は、需要予測をマイナスに下方修正しました。昨年暮には、岐阜県と滋賀県にまたがって建設を進めていた大規模な228万kWの金居原揚水発電所の建設中止を発表しました。今年に入っても、左京区のすぐ隣、安曇川上流域の針畑川の二六〇〇kWの小型水力発電所の建設中止を地元に通告したばかりです。

ですから、年間四四〇万トンもの莫大な量のCO2を排出する舞鶴石炭火電の二号機の建設は中止し、一号機についても運転の凍結、中止を関西電力に申し入れるように求めます。いかがですか。知事の考えをお聞かせください。

以上で、私の質問を終わります。

 

さて、私は、今期限りで引退しますので、今日の質問がこの本会議場での最後の質問となりました。二十四年前の初当選した議会での初質問のテーマの一つが原子力発電所の事故についてでした、ピリオドの質問がくしくも原発問題になったのもわたしの執念かもしれません。この二十四年の間に私が指摘しつづけた原発の危険性は、炉心事故を始め、核燃料を安全に扱うことは人類にとって技術的に未成熟なものであることが世界で・・・日本中で余すところなく証明され、そして今日では安全と環境から、脱原発、脱化石燃料が世界の主流となりました。

  遅々として進まないこと、変わらないことを十年一日の如しといいますがこの原発の危険性についての知事の答弁は二十年一日の如しで、「国が判断すること」「国が・・・国が・・・」というばかりでした。もっともこれは原発問題に限らず、都合の悪いことは「国の権限」と逃げ、府民に痛みを押しつけることなどは平気で国の方針の先取りや押し付けをやっているのですから無責任な御都合主義だとおもいます。

この間私は、中京区のみなさんに六度選んでいただいて二十四年、府民の代弁者として、府民の声を府政に届け、府民の目線で行政を批判する努力を続けてまいりました。

  良識ある府民のみなさんの世論と運動に励まされてなんとか府会議員としての勤めをはたすことができたことを感謝しています。本当にありがとうございました。またこの間  多くの先輩、同僚議員のみなさん、多くの理事者、府職員の皆さんには大変お世話になりました。感謝の気持ちと数々の思い出で一杯です。また、歴代の事務局長さんをはじめ、議会事務局のみなさんには一方ならぬお世話になりました。厚く、お礼申し上げます。みなさん本当にありがとうございました。