保険料の値上げをストップし、介護保険制度の抜本的改善を

「介護保険事業支援計画・高齢者保健福祉計画の改定案」にたいする緊急提言

 

                                                   二〇〇三日  日本共産党京都府会議員団

 

京都府は、一月二十八日、介護保険事業支援計画の改定案を発表しました。この計画は、二〇〇〇年四月からスタートした介護保険制度について、高齢者保健福祉計画と一体的に実施され、五年を期間として三年毎に見直すことになっているもので、六十五歳以上(第一号被保険者)の今後三年間の保険料を決めるとともに、介護報酬の改定にもとづき、それを盛り込んだ計画にするものです。

わが党議員団は、介護保険制度実施直後の二〇〇〇年五月に、「第二次京都府高齢者保健福祉計画に対する見解」を明らかにし、その後も府議会で繰り返し、介護保険制度の抜本的な改善と緊急の措置を求め続けてきました。そうした中で、利用実態調査や特別養護老人ホームの待機者調査を実施させるとともに、府内市町村では、介護保険料で九市十町、利用料で三市七町が減免もしくは軽減制度を設けるなど、不十分ながらも、府民の世論と運動におされる形で一定の改善が取り組まれてきました。

しかし、実施後三年近くが経過したもとで、「介護の社会化」などとうたわれた当初の目標と今おこっている現場の実態との乖離が明らかとなり、様々な制度的矛盾と限界に利用者も自治体も直面しています。

それだけに、昨年末にわが党議員団が市町村議員団と協力して実施した全自治体の介護保険実態調査をふまえ、今回の改定案にたいし、緊急に改善すべきことを提言するとともに、介護保険制度の抜本的改善にむけた府民的大運動をよびかけるものです。

 

一、実施三年で、何が明らかとなったのか

(一)高すぎる利用料・保険料で、必要なサービスが受けられない事態に

 本来、本人や家族が介護を必要とするすべての人がサービスを受けられるのが当然であるにもかかわらず、要介護認定でサービス限度額が決定され、さらに一律一割の利用料がかかることから、結果として、必要な人が必要なサービスを受けられない事態を生んでいることが明らかになりました。 

介護保険実施後、要介護認定をうけた人数は、二〇〇二年度で、当初計画の五五三九八人にたいし六九五六七人と急増しており、二〇〇七年度には十万人を突破すると予想されています。しかし、その一方で、要介護認定を受けている人のうち、サービスを利用している人は八〇%〜八三%で、約一三〇〇〇人が、要介護認定をうけているにもかかわらず、サービスを利用していません。さらに、利用している人でも、支給限度額に対する利用割合は三八・九%(二〇〇一年度)と、サービスの利用が大きく抑えられています。

また、高すぎる介護保険料の負担も深刻となっています。すでに、二〇〇一年度末で保険料の滞納者が一二九〇六人にもなっており、長引く不況、医療改悪をはじめとした国民への負担増おしつけとあいまって、保険料が大きな負担となっています。

こうした事態にもかかわらず、保険料や利用料の減免制度実施の願いに背をむけ、市町村が独自に行う低所得者対策についても、「あくまでも制度の枠内で」と国いいなりの姿勢をとり続けてきた府の責任は重大です。

 

(二)介護サービスの基盤整備がすすまず、地域的な格差が明らかに

 介護サービスの提供のための基盤整備については、制度実施前から特別養護老人ホームの待機者の解消が強くもとめられており、府は一昨年十二月段階でようやく府内の待機者数を約三千六百人と把握しましたが、それに見合う整備状況には、とうてい追いついていません。本来、次期の計画に目標を反映させるなら、待機者の詳細な実態把握が必要ですが、それすら行わず、「全国一の水準で施設整備をはかっている」との答弁を繰り返すばかりです。その結果、改定案では、多くの待機者がいるにもかかわらず、中部圏域では二〇〇五年まで、南山城圏域では二〇〇四年まで、新たな施設整備を行わないという計画となっています。

 また、在宅では、基盤整備の遅れと地域的な格差がいっそう大きくなっています。訪問介護は、京都市域以外では、低く見積もった当初計画すら軒並み下回っており、訪問看護、訪問リハビリ、通所介護も、軒並み当初目標を下回っています。山間地が多い町村部ではとくに深刻で、府内十七町村で訪問介護事業所が一ヵ所しかなく、うち十二町村が社会福祉協議会もしくは町の直営となるなど、採算が見込める地域には事業者がサービスを提供するが、そうでない山間部などでは、基盤整備が進まないどころか、撤退する事態すら生まれています。このように、介護サービスの基盤整備について「民間まかせ」の態度をとり続けてきた結果、計画や目標に対して責任をもった整備計画となっていないことも明らかとなりました。

 

(三)「民間まかせ」の運営のもとで、大きな社会問題も

 在宅基盤整備などへの民間事業者の参入がすすめられ、府もそれにまかせてきた上に、今後は、施設介護にも営利企業の参入が検討されています。その中で、参入をできるだけ緩やかにして、問題のある事業所やサービスは競争の中で淘汰していくことを基本にすえたため、本府が指定した事業者の中から、すでに十以上の事業所が不正請求などによって指定を取り消され、逮捕者まで生まれており、命と健康、生活に直接影響を及ぼすサービス提供などに事後のチェックで対応し、あとは自己責任で処理させるという「民間まかせ」の運営では、国民の利益が守れないことも明らかとなりました。

このなかで、ホームヘルパー養成講座の受講者六二五人がヘルパー資格を取得できなくなり、大きな社会問題となっていますが、三つの事業者を指定した本府としての被害者にたいする救済策はきわめて不十分です。

 

二、介護保険料の値上げストップ、抜本的改善にむけた府民的大運動を

 このように介護保険制度の矛盾と限界が浮きぼりになっているもとで、その改善は急務となっています。とりわけ、介護保険料の値上げ問題は、今おこっている深刻な事態にさらに拍車をかけることは必至です。本府の場合、現行の平均月額二八四八円が、今の見込みで三六三六円に値上げられようとしており、京都市が千円近くの値上げで三九三一円となるなど、府内市町村で軒並み三〇〇〇円を超える保険料になってしまいます。

こうした事態が生まれている根本的な原因は、介護保険制度実施以前の措置制度では、国庫負担が五〇%を占めていたものを、制度実施と同時に、国庫負担の割合を半分の二五%とし、総額二五〇〇億円を削減したことにあります。介護費用の二分の一を保険料でまかなうという仕組みとなったために、サービス利用者が増えれば増えるほど保険料が高くなり、今後も、際限ない値上げが繰り返されます。

高すぎる保険料の値上げをストップするためにも、また、十分なサービス提供を保障するためにも、さらには、自治体の介護保険財政をこれ以上悪化させないためにも、「国庫負担の割合を元に戻し、引きあげる」ことを要求して、立場の違いを超えた大きな府民的運動にしていくことがどうしても必要です。

 

三、当面の改善にむけての提案

(一)保険料の値上げストップ、保険料・利用料の実効ある軽減措置の実施を

 保険料・利用料の軽減措置は「制度の枠内で」との立場を転換し、実効ある軽減措置をとることが急務です。

  市町村の保険料値上げを抑えるため、府として、一般財源を投入してでも、市町村にたいする財政的支援を行うことが必要です。また、市町村が実施している保険料・利用料の減免制度をいっそう拡充するためにも、府独自の保険料・利用料の減免制度を実施することが必要です。

 介護保険導入時の「特別対策」として取り組まれてきた低所得者の訪問介護利用料を三%に軽減する措置は、来年度から六%、二年後には十%に引き上げる計画となっていますが、今までどおりの負担軽減を行うことは、「施設から在宅へ」という流れからみても必要な措置です。国にその継続を強く求めるとともに、本府としても、この措置が継続できるよう、市町村にたいする財政的な支援を行うべきです。

 

(二)特別養護老人ホーム建設をはじめとした基盤整備の促進を

 もともと、介護保険事業支援計画では、介護保険施設の基盤整備目標は、厚生労働省の参酌標準にもとづく範囲のものとなってきました。今回の改定にあたっては、今後、後期高齢者の増加も予想される中で、実態にもとづく施設整備をすすめ、とりわけ、特別養護老人ホームの建設は、待機者の解消をはかるための目標とそれにふさわしい整備をすすめることが必要です。また、在宅基盤整備への支援を強めることも重要です。

 

(三)介護保険と結んだ高齢者福祉施策の充実を

介護保険制度は、あくまで高齢者福祉の一部であり、地域で高齢者の生活全体を支えるためには、高齢者が地域で安心して生活していける日常の生活支援体制や介護予防事業などを実現、充実していくことが必要です。また、介護保険制度実施を口実にして本府が廃止した「介護者激励金」は、在宅介護でがんばっている介護者を激励するためにも復活させることが必要です。このように、今回の改定にあたっては、介護保険でカバーできない部分についての具体化を、地域の実態にもとづいて行うことが重要です。

 

 以上、「介護保険事業支援計画・高齢者保健福祉計画の改定案」にたいし、緊急に改善すべき点について提言し、広範な府民のみなさんと手を携えて、その実現のために力をつくすものです。