加味根史朗議員の総括質疑 (2003年11月18日)

青年の雇用実績すら把握しないのでは府の姿勢が問われる

【加味根】私は、青年の雇用の問題と介護保険の問題について質問します。

最初に、青年の雇用の問題です。完全失業者の半分が若者といわれ、大学を出ても半分の人しか就職できない。高校生は166%しか就職できません。就職ができても正社員になれない。フリーターは、全国で417万人という大変な規模になっています。青年にとって希望の持てない社会になっているといえるのではないでしょうか。

青年がフリーターや不安定な雇用に置かれることは、私は日本社会にとって3つの重大な問題を生むことになると思います。1つは、経済的な自立ができないため結婚ができず、少子化を拡大せざるをえない。2つには、熟練した技能やノウハウが継承されないため、企業の活力が損なわれ、日本経済の発展を阻害し、最近起こっているような重大な事故やトラブルの原因にもなっている。3つには、年金や健康保険料が払えない方々が増えて、社会保障の基盤を掘り崩すことになっている。したがって、青年の不安定雇用をただし、正社員としての雇用を拡大することは、日本社会の健全な発展にとって大変重要な課題だと思います。そのことは企業の社会的責任であり、責任を果たしてもらうようにすることは国の責任、そして、都道府県、地方自治体の責任でもあると考えます。

そこで、本府の青年雇用の対策について質問します。京都府は、「雇用創出・就業支援計画」をつくって4万1000人の新たな雇用・就業機会の創出をはかるとして取り組んでおられます。その結果、平成14年度には1万4186人の雇用実績が上がったと報告されているが、その中身は常用雇用が2307人しかなく、大変不十分です。しかも常用雇用の中には、パートやアルバイトも含まれますから、正社員としての雇用はかなり少ないのではないか。私がここで問題にしたいのは、書面審査で、その雇用実績の中で、青年がどれだけ雇用されたのか全くつかんでいないという答弁が行われたことです。これで青年の雇用対策がやられているといえるのか。知事にまず、この点についてお伺いします。

【知事】雇用創出就業支援計画というのは、本当に今の経済不況の中で、とにかく仕事をつくっていこうという緊急のためにやっている仕事であり、そういった面で、青年がどう、熟年がどうといった話ではない、基本的には。ただ、こうした中で、例えば緊急雇用創出の特別基金事業などはアンケートをとって調べてみると、大体全従業員の約2割1300人ぐらいが若者であると推定されている。私ども、こういった中で本当に青少年雇用対策は、幹事もご指摘の通り大変重要だと思っていますから、府庁内におけるワークシェアリングにつきましても今年は倍増させるなど、そして、若者の就業支援センターをつくっていく。どんどん今、若者のための施策をこれから講じていきたいと思っている。

 

【加味根】青年対策を始められているというのは評価できるが、14年度の就業対策、雇用創出の対策の中で実際に何人の青年の雇用が進んだのかつかんでいないというのは事実としてあるわけで、これでは青年対策がどこまで進んだのか分からないわけで、本当に真剣に青年対策に取組む姿勢があるのか疑われると思いますので、今後の雇用創出の対策の中で、青年の雇用の問題をしっかり重要な柱として位置付けて、青年の正社員としての雇用がどれだけ増えたのかしっかり追求して把握していくべきだと思いますが、どうか。

【知事】把握することは大事だが、それ以上に青年の雇用をつくっていく。そして、それにあっていく斡旋をしていく。こういう現実的な取り組みの中にそういった問題がついてくると思う。例えば、高齢者の問題、40代の問題についても一番生活がかかっていて厳しいのは40代、ここもおろそかにできない。高齢者も生きがいのためにこれから頑張ってもらわないといけない。これは全世代を通じて頑張っていかないとならない話ですから、それについて我々、就業支援計画をつくって一生懸命やっていく。そして、とりあえずは常用雇用にこれをもっていくにはどうしたらいいか。そして、若者就業支援センターをはじめ、いろんな施策を講じていき、しっかりした就業支援のための計画をつくり、また施策を講じていきたい。

5年間で9万人削減の一方、パート等は7万9千人の増

【加味根】今日は青年雇用の問題がテーマですので、もちろんすべての年齢階層で雇用を創出し支援していくことは当たり前のことですが、その青年の遅れの問題ではしっかり追求し把握するということは確認しておきたい。

そこで具体的問題に入りますが、フリーターになっているのは青年の責任ではないのですね。政府の調査結果でも、フリーターになっておられる方の7割が正社員としての希望をされて、就職の面接や受験を受けておられます。それができないというのが現実です。ですから、政府も「国民生活白書」でこう述べています。大企業ほど正社員の新規採用を抑え、パートや派遣社員に置き換えている事実を示して、「90年代以降の大幅なフリーターの増加は、企業側の要因が大きい」と初めて指摘したのです。それで私は、京都府ではどうなっているかを調べました。平成13年の京都府事業所・企業統計調査結果でみると、平成8年との比較で、全産業で正社員が9万人も減っている。一方で、パートやアルバイトなどのフリーターと呼ばれる不安定雇用が7万9千人も増えているという実態です。この事態を放置しておいて、青年の正社員としての雇用の拡大はできない。従って、知事として経済団体や京都の大企業に対して、正社員の削減を抑えて青年を正社員として積極的に雇用するように働きかけるべきだと考えますが、知事はどう考えますか。

【知事】「国民生活白書」の中で、フリーターの増加の要因というのは3つあげている。新卒就職環境の悪化、就職する側である若年の意識や能力の問題、雇用する側である企業の雇用戦略の変化。最後に、求人と求職のミスマッチの問題をあげている。確かに企業の方が大きいという先程の指摘が書いてあるが、これも正確にいうとフリーターの増加要因としては「どちらかといえば」企業側の要因が大きいということであり、「どちらか」をとばされるとあれだと思うが、そういった中で今出てきている。私ども「要請」というお話でしたが、だいたい要請だけでは足りない。まず経営者側と労働者側、そして我々公、行労使といっているが、これが一体となって就職に取組まなければならない。私はそういう認識。だから、去年のこの就職の雇用の計画についてそういった行労使が一体となって委員も入り、アクションプランをつくり、就職支援計画となって今ある。そういった基本的なところから一緒にやっていかなければいけないと思う。その上で、新規学卒者の確保と就職促進について、本年4月に教育委員会とともに公立および私立高等学校生徒への求人拡大を経済団体に要請したところであり、9月には京都労働局とも連携し、高等学校生徒をはじめとする若年者の求人確保の要請も行ったところだ。

 

【加味根】知事、「概要」ではなくて「本文」を読んでいただかないと分からないのですよ。「国民生活白書」は、この「正社員になりたかったにもかかわらずフリーターになった人が7割を超える現実をふまえると、経済の低迷による労働需要の減少や企業の採用行動の変化によるところが大きいと考えられる」と。ここが「まとめ」なのです。第5部のまとめ。これが結論なのです。ただし、こう結論づけておきながら、国の対策は、企業の側の要因を取り除くための経済団体などへの働きかけがないという点が大きな問題でして、これを国に改善を求めつつも、京都府として企業への働きかけを進めていく必要がある。そこで、具体的に来年の京都の大企業を中心とした新採の計画についてどのようにつかんでおられますか。

【知事】来春の大学卒業予定者の府内主要企業の採用計画については、だいたい今、業績が好調になってきているところは電気などだが、そのあたりでは3割にあたる企業が採用を増やす回答をしている。それ以外のものについては、前年並かそれ以下にとどまる企業も同程度あり、新卒者の雇用をとりまく環境は依然として厳しい。こうした背景には、長引く景気の低迷に加え、企業が即戦力である既卒者、リストラにあってその中で失業されている方も多いが、そういったところに求めていく傾向が強まっているし、採用形態も多様化してきていることも影響していると考える。先ほど申したように、雇用創出就業支援計画の策定のときから、京都経営者協会や京都商工会議所の代表の方々に参画をいただき、中小企業の経営者の方々もふくめて若年者の雇用の確保は本当に地域のこれからの経済のあり方にとって大変重要であるという認識のもとに、頑張っていただいている。

 

【加味根】京都新聞の今年429日の報道によりますと、京都の2004年春の新卒採用計画を報道している。これを見てびっくりしたのは、ほとんどの企業が高校卒業生を採用する計画を持っていないということです。京都・滋賀の主要110社の来春の採用計画が詳しく載っていますが、私がびっくりしましたのは、高卒者の採用計画を持っているのはたった16社だけです。有名な大企業である任天堂、京セラ、ローム、オムロン、ワコールなどは高卒の新採がゼロです。計画が。これではどうかと、私は率直に思いました。

全体ではどうなっているかと思って調べましたら、京都労働局の調査では、高卒者の就職者数が、京都の大企業全体で平成11年には1116人あったのですが、今年は584人に半減しています。不況の影響はありますが、大企業を中心にした企業の責任、雇用責任が十分果たされていないのではないかと感じました。もう一つは、大卒者などの採用計画自身がない。採用計画の規模が小さいという風に感じました。今年630日現在で、まだ就職できていない高卒者は372人もおられるわけで、これまでも校長先生のOBの方など努力されているのですが、知事が、高卒者の就職、そして大卒者の新規採用の拡大、特に正社員としての雇用の拡大を京都の大企業や京都の経済界に強く働きかける。こういう知事としてのイニシアチブ、行動力の発揮がいま求められていると思います。知事、決意の程をお聞かせください。

【知事】高卒者の採用が減少しているのは事実だと思う。ただし、求職者自体も35%ぐらい減っているのも事実。ですからそれだけをもってということではないが、やはり厳しい状況があるのは事実ですから、私は、もう去年から先頭に立ってやっておりますので、その点については十分にやっている。これからもやっていくつもりだ。

【加味根】十分にやってこういう結果では、府民は納得できませんので、いっそうの努力をぜひ求めておきたい。

介護保険 待機者数にみあう特養ホームの建設計画を

【加味根】次に、介護保険の問題だが、本府の利用者アンケートで、介護保険料の「負担が重い」と感じている人は、52・9%にのぼるんですね。年金の平均が月5万円、当然の声なんですね。この調査を行った今年3月以降に全府でもいっせいに保険料値上げが行われまして、平均で25・1%、平均月に3562円になっている。実際に10月の年金給付の通知がきたときに、「こんなに年金が減っているのか」と改めてびっくりしたというお年寄が急増しました。本当にお年寄が安心して暮らせる社会にしていくためには、介護保険料の負担軽減がさしせまって重要な課題になっていると痛感します。そこで、市町村として独自に努力をされている市町村が広がってきています。例えば木津町では、老齢年金受給者で世帯が非課税の場合、介護保険料を収めてから、後で保険料相当分を償還払いして実質免除をする。美山町では、第2段階の人の保険料の4分の1を助成金として支給している。加悦町では、災害や長期入院、失業、干ばつなどによって収入が減収した場合、最高全額の減免が行なわれている。国の負担を増やすよう求めつつも、市町村のこういう努力、お年寄が安心して暮らせる介護保険制度にしていくために努力されている市町村を支援する必要があると思うが、いかがか。

【知事】介護保険については社会全体で支えあうもので、高齢者の方々の保険料等が上がっているということは、まさに、京都府の負担もそれに応じて上がっているということで、本年度については前年度より20億円増えている。その中で、私どもも必死になって給与カット等を行いながら、財源の捻出に努力している。そういう基本的な中で、これはもともと国の制度の中でも負担の問題はあったから、なんとしても特に調整交付金の問題について、もう少しこれを全体の枠の別枠にしてくれないかと要望しており、これと同じように減免措置についても、例えば社会福祉法人による利用減免措置については精力的に府が負担するなど、できる限り利用者の方々が安心して受けるような形をとっていきたい。また、市町村が市町村の判断でやられているわけですから、これについてコメントする立場にないが、都道府県というのは別に市町村の援助団体ではない。どういう形で役割分担をしていき、その中でいかなる負担と自立の関係をつくりあげていくかということであり、上から国、都道府県、市町村的な流れの中でものをいわれるのは違うなという感じがしている。

 

【加味根】介護保険料の高さに憤まんやる方なしということで、不服審査の訴えまで広がっている程だ。そういう中で市町村がこういうお年寄の訴えに応えて、本当に血の通った、痛みを本当に感じながら対策を打ってきているわけで、こういう対策に真剣に応えるのが京都府の役割だと思いますので、ぜひ検討していただくよう要望しておきたい。

最後に、特別養護老人ホームの入所の問題だが、待機者が3640人ということで、介護保険料を払っても入所を希望しても入所できない。これは介護保険制度の根幹を揺るがすような事態になっています。私はいろんな相談を受けてまいりましたが、ぜひとも早期に特別養護老人ホームに入れるようにしてほしい、こういう声があるわけで、この点、平成14年度に京都府や京都市が特別養護老人ホームを建設しているが、増えた定員は260人にすぎないんですね。このテンポでいったら待機者の解消は14年もかかるわけですよ。これでは家族の必死の思いが本当に生かされないので、私はすべての待機者がすみやかに入所ができるようなそういう受け皿としての特別養護老人ホームを建設するよう求めたいが、ご答弁いただきたい。

【知事】平成13年12月期現在の調査で、3640人という数字が出たと伺っている。これは京都市内分を除くと1570人になっている。これを入所必要性の高い方という形で実態調査をしていくと、4割程度の630人分ぐらいが特別養護老人ホームの待機者として、今手当をしていかなければならないことが特に必要だという形になっていると承知している。

これに対して、調査日以降、本年度まで特別養護老人ホームで728人分を整備しており、加えてグループホームについても276人分確保しており、数字的には必要な方については措置がされていると思うが、それでもいろいろと今ご指摘のような問題点が出るというのは、本当に必要性の高い方との間が入所基準の問題も私はあるのではないかと思っている。この点についても、本府がこれから策定した入所指針に基づいて各施設において入所基準を策定し、家族等の状況も勘案し、入所の必要性の高い方から優先的に入所できるような体制に取組むとともに、さらに我々が16年度から19年度までの間についても特別養護老人ホーム等の確保に全力をつくしてまいりたい。

【加味根】今の答弁では必要な方に限るような姿勢だが、これでは、やはりお年寄や家族の方々は納得されませんので、すべての特別養護老人ホームへの入所を希望される方々への施設の建設に全力で取組まれるように強く要望して質問を終わります。