予算特別委員会 知事総括質疑

 

松尾 孝  (日本共産党 伏見区) 2003年3月4日

深刻な受診抑制を招く医療費負担増、知事は凍結を要求しないのか

【松尾】 まず、医療費負担増の問題ですが、4月からの健保本人3割負担への引き上げが行われる。これに対し、いま全国で大変な反対の運動が高まっている。4師会、労働団体はじめ、凍結を求める世論、大変大きい状況だ。また、北海道をはじめ8道県議会、或いは町村議会などでも、凍結・延期を求める意見書が相次いでいる。本議会にも京都府医師会をはじめ多くの請願がだされ、代表質問でも、知事が国に凍結を強く求めるべきだとただしたが、まともに答えられませんでした。

改めて伺うが、「凍結はできない」というお考えなのか、はっきりお答え下さい。

【知事】わが国の国民皆保険制度は、国民のすべてが安心して医療を受けられる制度であることを基本にしており、少子高齢化が急激に進む中で、今後、この制度を国民全体でどう支えていくのかが大きな課題と考える。こうした状況の中で、府としても医療保険制度改革等により、財政負担の増加が見込まれる厳しい状況の中で、府民を守るためのセーフティネットを全力あげて構築するとともに、地方公共団体の立場から医療保険制度のあり方について、積極的な提案や要望を行ってきた。今後とも、府民生活や医療保険財政、地方財政に与える影響を十分に見極めた上で、制度改革を進めるよう国に対し提案したい。

 

【松尾】 私どもが反対し凍結を求める最大の理由は、これが実施されたら大変な受診抑制がおこるのではないかと。97年、1割から2割に引きあげられた時点でも、35万人が受診を中断し、280万人の受診抑制がおこったと政府の方から示されている。今回は、さらにひどいのではないかと私は申し上げたい。グラフを持ってきたが、これが前回の状況。国民所得が減っている中での9兆円の負担増だった。1世帯で2・4万円位の負担減だった。ところが今回は、もっと雇用が下がっている。そこへ庶民増税までふくめて11万円を超える新たな負担がこれから1〜2年の間に出てくるということで、もっとひどい状況。こういう状況の中で、大変な受診抑制がおこることは避けられない。結局、重症化をもたらすことになって、国民の健康を悪化させることは間違いない。例えば、現在3割の国保と比較すれば一目瞭然で、高額療養費の件数は、高齢者・退職者を除いても18%近い。現在2割の政管健保では3%強と、実に6倍近くの件数が発生している。とりもなおさず、重症化の証左なわけで、こういう状況がおこるのではないかと申し上げている。知事は、こういう認識はないのか。お答えいただきたい。

【知事】まさにそういう実情の中で、これから少子高齢化がすすんでいく。この時に、本当に国民のすべての方が安心して医療を受けられるような状況をどういう形でつくっていくのかということが一番大きな問題。この中で、地域医療の現場でセーフティネットをはりめぐらしている地方公共団体としての立場を明確に主張して、今後、国に対し、府民生活や医療保険財政、地方財政に与える影響を見極め、抜本的な改革を進めるよう提案していきたい。今後とも、府議会としての意見もいただいて、提案していきたい。

 

【松尾】 わが党の立場は、保険医療制度をどう守っていくかという問題はどうでもいいという立場とは、決して違います。一番の問題は、国が従来だしていた負担を減らしたことにあります。国保では、80年からの20年間に20%減っている。政管健保も92年、国庫負担16・4%を13%に引き下げた時、必要な場合には復元するとされていたのですが、それをやらない。健保本人負担の導入で、本則2割が決まったときの、国保を2割に下げて公平化するというのが政府の公約でしたが、それをやらない。

今、さしあたっての問題は、重症化を招いて医療費がかえってかさむことは間違いないわけですから、早く診断を受けて早く直して医療費全体を下げるということが大事だと申し上げているわけで、全体として、国の負担の問題、医療費を下げる問題、こういうことで制度がしっかり守れるようにすべきで、公明党は、「3割負担をやらなかったらつぶれてしまって10割負担になるぞ」と言われますが、国民を愚弄するのもはなはだしいと言わざるを得ません。そういう全体を見て、医療制度をどうするのかという議論が必要で、知事もよく考えて、さしあたっては凍結を求めていただきたい。強く要望しておきます。

 

金融機関に地域経済への責任をはたさせる条例を制定すべき

【松尾】 次に、地域金融問題だが、本府は今日まで金融政策の柱に融資枠1000億円を据えてきたが、実行額は約3分の1、金額で300億〜400億、200億台の時もある。なぜ、こういう状況になっているのか。必要としないのか、そうではない。申し込んでも銀行が中々うんと言わないとか、保証協会の保証を要求されるが、それも受けられないという状況がある。いわゆる貸し渋り、保証渋りについて、府がよく実態をつかみ、早急に改善をはかる必要がある。このことを強く求めておきたい。

こういう状況をなくするため、わが党は今国会に「地域金融活性化法案」を提出しています。その中身は、金融機関が地域経済に貢献することをはっきりうたう、同時に、都道府県に第三者機関を設けて必要な調査を行い、苦情処理その他、金融機関にいろいろ改善・協力を求めていく。こういう視点から、地方においても条例化をすすめようと提起し、本会議でもお伺いしたが、知事の見解を改めて伺います。

【知事】京都府では、これまでから指導監督権限を有する国に対し、金融機関をまず十分指導するよう要請してきた。国においては昨年10月、貸し渋り・貸しはがしホットラインを設置し、寄せられた情報を参考にして、先頃、金融機関から聞き取り調査を実施し、重大な違反があった場合には銀行法に基づく報告を求め、必要があれば、貸し渋りに重点をしぼった検査を実施するなど対応する旨、言明されている。京都府としても、中小企業総合センターや、織物機械金属振興センター、各地方振興局に中小企業の経営緊急相談窓口を設けて、年間約1万件の相談を受ける中で、府内中小企業者の実態をふまえ、例えば金融機関に対し、資金供給が円滑に確保されるよう要請するなど的確に対応してきた。さらに、全国に先駆けて、府市協調で中小企業のあんしん借換融資制度を創設するために、金融機関の協力も得て、その中で、厳しい経営環境におかれている府内中小業者の資金繰りの改善や、金融の円滑化確保に取組んできた。今後とも、金融機関との連携も深めながら取組んでいきたい。

 

【松尾】 国の方は「不良債権処理」一辺倒で、大変な「検査マニュアル」を地方銀行や信用金庫などに押しつけて、京都でも、二信金破綻を経験した大変な事態だった。こういうことにならないように、自治体として地域の信用に責任をもつことは、地方分権の精神からいっても当然のことで、国会の法制局の見解も聞いているが、地域金融問題は条例になじむのではないかという判断を聞いている。是非、条例実現にむけて検討していただきたいと思うが、お答えいただきたい。

【知事】不良債権の問題だが、国に対し、まさに、不良債権処理の中で、中小企業が非常に多いという京都府の特性もふまえながら、中小企業に対する影響を最小限になるよう、今まで提案してきた。同時に、地域として何が出来るかという中で、まず、府市協調のもとで、全国に先駆けてあんしん借換融資制度を設けるなど懸命の努力をしている。その中で、金融機関にも協力いただきながら、金融円滑化の確保に全力をあげたい。

 

【松尾】 いろいろと答弁がありましたが、今の貸し渋り・貸しはがしをなくしていくためには、一定のルールが必要ではないか。埼玉県では、指定金融機関が変わるということで、県議会で「埼玉りそな」を呼んで、「どういう姿勢で県下の中小企業に対処してくれますか」と県議会で聞いています。「埼玉りそな」が、「県内で預かったお金は、県内の中小企業に回すようにします」と強調されています。こういうことをルール化し、行政が責任をもってやっていくということになれば、随分ちがうということを申し上げている訳です。ぜひとも、こういう方向で検討をお願いしたい。

 

 

不要不急の公共事業を見直し、暮らし・福祉・雇用重点に転換を

 

【松尾】 知事は昨年12月議会でのわが党の質問にたいし、「福祉、医療、教育、環境など今後成長が期待できる分野において雇用の拡大をはかることが重要」と答えられました。これは、わが党が強く主張してきたところであり、この際、不要不急の公共事業を抜本的に見直し、生活、福祉などを重点に全面的に転換をはかる、そして、雇用の拡大をはかるよう強く求める。

そこで、当面もっとも効果的な対策として、住宅改修助成について伺います。実施例では予算の20倍ぐらいの改修事業が生じているわけで、仕事がない建築業者には大変喜ばれています。仮に府が1億、市町村が1億もって、この事業をおこしていくとなれば、40億の仕事が生み出される。経済効果は非常に大きいと思う。ぜひ実施していただきたいと思うが、お答えいただきたい。

それから、雇用・失業問題を考える上で、新たな失業を生まないリストラ対策が非常に大事だ。そのためには、不良債権処理の加速など国の政策をやめさせることが根本だが、府として、暮らしを守るため可能な努力を行うことは当然です。私どもは、リストラアセス条例を提案しているが、決して難しい問題ではない。事前に報告を求めて協議する。これは、企業の社会的責任からしても当然のことだと思うが、いかがか。お答えください。

【知事】住宅改修制度だが、各市町村において、それぞれの地域づくりの中で、経済事情や財政状況をふまえ、様々な雇用・不況対策に懸命に取組んでおり、京都府としても、全力をつくし雇用・不況対策を講じる中で、例えば府営住宅ストツク総合活用事業等に鋭意取組んでいる。こうした色々の施策があいまって、府内中小企業の仕事確保につながるよう努めてまいりたい。1億、1億で40億といいますが、結局、普通でいくと、補助の場合はどれだけ増えたかというところに経済効果があるので、委員ご指摘の点については、実際の実績等も勘案すると、経済効果としては過大ではないか。

  リストラ規制についてだが、雇用対策法では、企業が30人以上の解雇を行う場合には、事前に労働組合等の意見を聴取した上、再就職援助計画を職業安定所長に提出し、その認定を受けなければならないこととされ、法的には、一方的な解雇の抑制措置が一定講じられている。京都府としても、その上で、企業の解雇やリストラに対し、例えば日産車体の京都工場の大幅な縮小に際し、地元自治体、経済団体、さらに当事者の日産車体も加え、対策会議を即座に立上げ、下請企業対策などをあわせて、従業員の雇用確保対策をしっかりと申し入れ、最大限の努力をし、雇用確保に努めてきた。今後も、雇用が守られるよう企業や関係団体と協議し、最大限努力したい。

 

【松尾】リストラ問題だが、先程日産の例をひかれて、いろいろ言われたが、あるいはまた、労基局に届け出という話も言われたが、届け出を受けた国が何かするかといえば、そんな事例は一つも無い。京都の場合でも、日産は事後の対策だ。そうならないようにしようではないかと申し上げている。ぜひ、これは、実現にむけて検討を求めておきたい。

【知事】リストラ規制の条例については、企業立地の促進の面もあり、はたしてその効果を十分に見極めた上でやっていかなければならない。日産車体についても、いろいろ協議のテーブルについていただき、申入れをしてきた経緯があるので、企業とも、これからもこうした連携関係をふくめ、地域の雇用を守れるように努力したい。

 

舞鶴の高潮対策、丹波町の水不足対策について

【松尾】舞鶴の高潮対策だが、伊佐津川などの河口周辺で慢性化している。国も府も市も「打つ手なし」の状態で、事実上放置されている。市の問題では済まされない。国にも働きかけて、早急に対策を講じていただきたい。

もう一つは、丹波町の未給水地域の問題だが、みのりが丘団地その他の開発業者が作った水道が管理不能に陥り、生活用水が十分確保できないという状況が長年にわたって続いている。無秩序な乱開発がもたらした結果ではあるが、何百人もの命の水の問題であり、早急な解決が必要で、ぜひ、町とも協議して府として積極的に努力していただきたい。

【知事】舞鶴港における浸水問題だが、港湾に近接した市街地において、通常は排水溝を通じて流出している排水や海水が、潮位が上がることによって家屋の床下や道路に逆流しているため、これまで舞鶴市では、個別住宅の嵩上げが進むよう府の融資制度に上乗せする配慮とともに、道路の嵩上げ等により対応してきた。どのような方針で内水対策を行うのが適当であるのかについては、主体となる舞鶴市をはじめとする関係機関から、今後とも話を伺ってまいりたい。

  丹波町の水道問題だが、丹波・瑞穂両町では、過去に何度も断水が発生する一方、新しい住宅地として分譲がなされ、人が居住しているものの、上水道が供給されていない地域や、水が無いことが大きな要因で、分譲されているのに住宅が建設されない宅地が存在するなど、深刻な水不足の状況におかれている。また、既存の立地企業からも現在、新たな給水を求める要望があるが、既存水源の中には、小規模で不安定な水源も多く、昨年も他水源からの水の融通を余儀なくされる事態が生じるなど、水道用水の確保は両町にとって非常に差し迫った願いとなっている。このような両町の切実な願いを受け、将来の安定した水資源を確保し、地域の健全な水事業の発展をはかっていくことが重要であり、畑川ダム事業の適切な推進に努めるとともに、全国でも高位の予算を確保しているふるさと水源確保対策事業によって、未給水地域の解消に向けて引き続き積極的に支援したい。

 

【松尾】舞鶴の問題だが、平成10年以降は特にひどい。100件を超えている。年平均で20件を超える。しかも、これは雨季、台風シーズンに集中するもので、地域にとっては本当に大変な問題だと思う。まったく「打つ手なし」ではどうしようもない。ぜひ、市と協議して対策を進めていただきたい。

  丹波町の問題だが、畑川ダムもいわれたが、実は、これは関係ない。現在、組合が開発した下山・水原両水源あわせて9000トン位の給水能力が、つなげばある。ところが、未給水地域に全部入れても、6000トン位ですむ訳で、計算上は、3分の1はまだ余裕がある。そういう状況なので、畑川ダムを待つまでもなく、町が地域と協議し、地元とよく相談してやろうとなれば、ふみ出せる問題で、現に25mの管をつないでいる地域もある。施設が老朽化し、漏水が激しいなどで、問題が多すぎて大変だという状況で、府が乗り出して解決をはかるべきだと申し上げている訳で、お答えいただきたい。

【知事】舞鶴の高潮被害対策について、どんな方針で内水対策をするのが適当なのか、主体となる舞鶴市をはじめとする関係機関から、今後とも話を伺いたい。

  丹波町の水道問題だが、水の問題は地域全体の問題として捉えなければならない。宅地開発が進んでいても、水がないために、それがはりつかない。企業から一生懸命要望しているといった問題全体を通じて、水のあり方というものを考えていかなければならないので、畑川ダムの必要性というのは、水源の状況から見ても必要で、そういう全体としての水対策を、丹波町とも相談しながら水道の確保について努めていきたい。

 

【松尾】畑川ダムの問題は見解がちがうが、畑川ダムを待たなくても、今どうするのかが問題で、10年も20年も待てないのです。

 

医療事故・事件を政争の具とする態度は、国民の願いに反するもの

【松尾】 先ほど明田委員、小巻委員が民医連中央病院問題にふれられた。この問題は現在、京都府・市が推薦した5人の専門家による原因究明委員会で慎重に検討が進められており、その結果を待って関係機関が適切な措置を講ずべき問題である。書面審査の中でも、委員会の作業に疑義をはさむかのような発言があった。また、病院ぐるみの組織的犯行であったかのごとき予断を持って、真摯に対策に取り組んでいる病院を犯罪者あつかいする発言もあった。これは、医療事故・事件の根絶を求める府民の願いにも反するものであり、改めるべきであり、この点を厳しく指摘しておく。