松尾孝議員の知事総括質疑(2003年11月18日)

 

畑川ダム計画は直ちに中止を

建設費が一挙に倍の77億円に、過大な需要予測も根拠なし

 

【松尾】日本共産党の松尾孝です。府民の暮らしが大変な中で本府としても精一杯、どう暮らしを応援するか、がんばっていただかなきゃならないのですが、府の財政が大変な中で、私は公共事業の見直しは避けられない大変重要な課題だと思っておりまして、その点で二つ伺いたいと思っております。

畑川ダムの問題ですが、書面審査の中で計画変更案が明らかになりました。ダムサイトに断層が発見されたということですが、この計画変更に従って、先ほどの答弁では工事費が約倍になるんですね。従来40億円と言っていたわけですから。

この中で、断層にともなうダムの移設、計画変更でどのくらい増えるのかを、まずお聞きします。それから、工事用道路、JR線路の補強でそれぞれどれだけかかるか教えて下さい。

【知事】私は、ダム自身について、公共事業の見直しについては必要だと思っており、知事就任後すぐに公共事業の見直しに全面的に着手しまして、ダム事業については南丹ダムの中止を決めたところですし、リゾート公園と言われていたもの、または、木津川右岸運動公園につきましても、できる限り府民のために、がんばれるようにしていきたいということで、見直しを行ってきたところであります。

ただ、畑川ダムについては、地域の要望を踏まえて現在取り組んでいるが、詳しい内訳については土木部長より答えさせる。

【土木部長】事業費の増嵩の件だが、40億円と言う指摘は、平成8年にダム事業が通常ダムとして新規採択された時に限られた情報の中で試算したものであり、その後、調査・設計等が進みまして、現在、用地も確定し、また、再評価委員会を直前に控えていると言うことで、今回改めて全面的に精査したもの。

内訳だが、増嵩の要因だが、委員指摘の小規模断層を避けるための諸設計のやり直しが11億円程度。JRだが、平成9年に大きな事故があり、その後JRと長い間協議をすすめてきて、大きな、きちんとした対策をしなくちゃいかんということで、一定の増嵩となっています。

更には、曝気(ばっき)装置などの水質保全、更には、町道、林道のつけかえと言うことで、今回改めて精査をして77億円ということになった。

 

 

【松尾】ダムの計画変更にともなって、11億円ほど増える、地元負担がどれほどになるかわからないが、ざっと計算すると、住民一人当たり、1万数千円ほど増えることになり、負担増をもたらすことになる。

知事は今までダムの必要性について、いくつかあげておられるが、両町にまたがって7000区画に近い宅地があり、水が無いためにそこに家が建たない。何としても畑川ダムを造って水を作らなければならないと言うことを一番強調されてこられたのですね。

瑞穂、丹波両町が地権者に対してアンケート調査を12月から3月にかけて4ヶ月かけてやられて、地権者区画数は7500あるのですが、2000程度しか返ってこないという実態です。

そういう中で、95軒が移り住みたい、500軒ほどが水があれば、道路事情などをみて考えてみようかという人がいるのですね。84人は、これはもう始末しますと言う。1240件はもう水は要りませんという状況なのですね。つまり600人ぐらいが、状況に応じてというのも含めて、給水希望をもっている、それ以上のところはないのですね。

こう言う状況のなかで、7000区画の宅地があるのだから、水があれば家が建つという知事の言い分、最大の根拠は崩れるということなのです。どうお考えですか。

【知事】この地域はもともと水がなくて困っている地域なのですよ。その上に企業の立地もできない、更には分譲した土地が売れても人が来ない。だからこそ、瑞穂、丹波は、大変、何とかして水を確保のために府議会に来られているのですね。

これから割り当てが増える分についても、それを承知の上でこの前も、とにかく増えてもいいから作ってくださいと両町が来られているのも事実なのですよ。

そういう中で今のお話しですが、もともと7000トンあまりの要望がある。しかも、未給水区域が2200人いらっしゃり、更に既存の企業についても、アンケートを全てとられたようだが、4725トンの要望があり、その上で600世帯1500人の居住の意向がある。こういったものを積み重ねた時に、こういったものが必要であるというのが、今の現状だと思います。

水の問題について、私はギリギリに確保すればよいというものではないと思うのですね。琵琶湖疎水が今の京都市民の95%を潤しているということは、百年の大計だからできたわけです。こういった市民の将来を見通してしっかりとした水を確保する。京都の場合、水の豊かなところが多いですから、なかなか水の苦労がわからないんですが、私も何度も丹波、瑞穂に行った。委員も今年の予算委員会総括の中で、この地域は水がないことを指摘されましたが、こういった中での、本当に悲願でありまして、私どもは、こういった住民の声はしっかり聞いていかなければならないという思いはあります。

 

【松尾】知事が繰り返し繰り返し慢性的な渇水に悩まされている、水は地域の悲願だという住民の気持ちはわかるんですよ。しかしね、ご承知だと思いますが、二つの新規水源が開発されて、3600トン、日量、確保されているのですね。3600トンというのは、現地の水の使用から言うと7〜8千人分にあたります。こういう開発がされている。

知事はまた、小さな簡易水道水源があっちこっちにあって、ちょっとした渇水でも水が枯れるんだと言うこともおっしゃり、私もよく状況は知っている。

しかし、今度、水道事業計画の中でこれが全部つながり、連結されて、センターの浄水場から全部つながり、そこに新規の開発水源も全部入るわけで、知事のおっしゃっていた、ちょっとした渇水で簡易水道の水源が枯れてしまうという状況は基本的に解決されます。

それと企業ですね。知事もおっしゃっていたように、私も現地で調べましたが、大量の水を使う企業があります。数社です。その中で1社だけ日量500トンの水が欲しいというところがあることはあります。それ以外に新規の水の要求はないのですね。こういう状況ですから、知事がおっしゃるように、今ここで作ってですね、日量5000トンの水を畑川ダムで取らないと何が起こるかわからないという状況ではありません。これはハッキリ申し上げておきます。

それでですね、この月末に公共事業再評価委員会が開かれ、この件が出されるということが決算委員会書面審査でだされました。このダムの問題、水問題というのは、一般的に費用対効果では図れないという面があり、少々高いけれども、どうしても、ここにダムが必要で、その水を確保しなければならない場合には、やらなければならない。

しかし、他に新規の井戸、つまり、伏流水などで確保できる見通しがあるとか、水質問題があるとか、他の条件もあるわけだし、なによりも、必要性の問題も、今、基本的に解決の方向が見えている。ダムなしでいけるんじゃないかということを、私ども、この間一貫して申し上げているわけで、そういう状況の中で、再評価委員会では、必要性がしっかり検討されるような運営、やり方が絶対に必要であると考えますが、その点お答えいただきたい。

【知事】新たに開発された2つの水源を加えましても、9100トンですから、町の希望を積み上げてしまうと15000トンぐらいになってしまうわけですね。我々は、それほどまではいらないだろうと大幅に値切って、さっき言ったような600世帯をカウントしても、やっぱり1万2〜3千トンというものが必要だということを言っている訳です。

そういった中で、今、小規模な水源を全部つなげれば絶対大丈夫だという言い方を、私は行政を担って、府民の安心、安全をしっかり担当していかなければならないものとしては取りたくないという態度であります。

再評価委員会につきましてはご指摘のとおり、厳しく評価してもらわなければいけないと思っており、そのために時間をかけてきちんとした資料を作らせました。そういう中で、私ども再評価委員会におきまして、本当に納得いただくまで議論したいと私は思っておりますし、担当部局にも申しているところであります。

そういった中での再評価委員会の結論を踏まえまして、議会にも報告をさせていただきたいと思っております。

 

【松尾】9100トンではとても足りない、積み上げれば15000トンにもなるというお話し。9100トンというのは民生用、各世帯が使う水だけでいえば8000人から2万人近い人口をまかなえる量です。工業用水を含めましても15000トンはいらないのではありませんか。

ですから、よく検討して、本当に必要かどうかを再評価委員会でしっかりやってもらいたいということを強く指摘しておきたい。

水の関係で最後に申しておきたいのは、未給水地の解消、ダムはいらんと言って何を言うかとおっしゃるかもしれないが、今ある、確保されている水でも、下山グリーンハイツ、みのりが丘の二団地の未給水地に給水できる、可能です。ですから、ダム待ちにならず、文字通り、安全が確保された水を、安全、安心に給水が受けられる、こう言う保障をすることが必要であるわけで、水道事業は町の事業だというようなことでなくて、府がイニシアを発揮して、こう言う地域をなくすことを積極的にやってもらいたい。これも指摘をし、強く求めておきます。

 

「丹後海と星の見える丘公園」の凍結・中止を

丹後の自然生かした観光振興、伊根バイパス二期工事の早期完成を

 

【松尾】時間がありませんので、丹後大規模公園、詳しくは述べられませんので、結論的に言って、凍結、中止すべきです。自然環境学習型の公園にするんだと担当部は書面審査の中でおっしゃっていたが、このようなことを言うならば、丹後そのものがそういう学習の場でないかと言うことを申し上げたい。

天橋立、宮津湾にはじまり、伊根の舟屋や丹後半島全体の海岸線などは、まさに丹後ならではの自然ですし、最近は太鼓山の風力発電もできたわけです。あるいは、伊根の千枚田や袖志の棚田、これは国の指定する棚田百選が丹後半島には二つもあるのですから、こういうものを生かして観光振興、地域振興をはかることが丹後に対する基本でないか。

道路についても、伊根バイパス二期工事の開通をはかるべきだと思うのです。この際お答えいただきたい。

【知事】松尾議員は中北部に対して厳しい、冷たいという気がしてならないのですが、まさに丹後エコパークにつきましても、これを厳しく事業を見直しまして、今おっしゃいましたように、私、丹後には豊かな自然があるのです。これをうまく結びつけて、ルート化していく中で、子どもたちが回りながら、遊べる拠点を作っていって、その中心として丹後海と星の見える丘公園を整備してはどうかと考えておりまして、伊根バイパス整備についても、こういう拠点を結ぶ中で、本当にこれは、地元の方だけでなくて、まさに府民、関西全体に影響を及ぼすものになるのではないかと思っております。

 

【松尾】知事は、「福祉が第一」とおっしゃっているのですから、来年の予算編成にあたっては、しっかり見直してですね、おっしゃるようにやってもらいたいと最後に要望して終わります。