2003年2月14日 2月府会一般質問と答弁(大要) 太田かつすけ
日本共産党の太田かつすけです。私は、先に通告しています数点について、知事ならびに関係理事者に質問します。
過大な水需要による 従来のダム建設の立場を転換せよ
第一に現在の府営水道計画と水需要、水利権について伺います。
私はこの間、本府が水利権を設定している滋賀県の丹生ダムの水利権問題を中心にして、本会議、予算委員会で、過大な水需要予測を具体的に指摘し、丹生ダムの水利権を放棄することを要求してきました。
一昨年六月に、府営水道事業懇談会は「長期的展望に立った京都府営水道事業のあり方および水質問題への対応についての提言」、第五次提言をまとめ、知事に答申しました。
水道水が安全で、安定的に低廉で供給されることは、府民の願いであり、同時に、水需要の動向に正確に対応した施策の展開が求められています。しかし、第五次提言は、こうした府民の願いに応えたものになっておらず、私は、委員の一人として、多くの問題を抱えている点を指摘し、反対しました。
そこで、今日の新しい情勢の変化の中で、基本的な問題について、知事にうかがいます。
この間、ダム建設を前提とし、その水利権にあわせて水需要予測を行い、それに必要な施設整備をすすめるやり方が一貫して実施されてきました。わが議員団が、水需要予測や施設整備が過大であることを指摘し、見直しを要求してきたにもかかわらず、全く無視してきました。
ところが、「淀川水系流域委員会」が一月十七日に出した答申は、「今後原則としてダムを建設しない」「現在計画中のダムも見直す」とした内容でした。
これは、南丹ダムに象徴されるように、過大な水需要を見積ったムダなダム建設を抜本的に見直し、中止することを強く求めた内容です。この点で、従来の先にダム建設を前提にした古い誤った考えで、水需要予測をするのではなく、現状を正確に分析して、水需要予測をすすめる立場に転換すべきと考えます。知事の見解を伺います。
【知事】 府営水道の将来の水需要は、受水市町の総合計画や水道統計などの最新データーを基本に、社会経済状況やライフスタイルの変化などを加味して予測したものであり、これまで概ね5年間ごとに府営水道事業経営懇談会にはかり、見直しを行ってきており、ご指摘のようなダム建設を前提とした予測ではない。
無理な人口増予測 ライフスタイルの変化や節水意識を無視した予測
そこで、水需要計画について伺います。
水需要予測について、この間、再々過大な人口予測を批判してきました。八五年の南部広域水道計画以降、四回にわたる見直しが行われてきましたが、給水人口七〇万人は変わらず、時期の見直しをしてきただけです。
提言は、過去に例のない二十年間という長期の予測を行い、過去の失敗を全く反省せず、人口七〇万人の給水人口に固執しています。学研都市を含む木津浄水場系で、十年間で府営水の受水量が一六三%になるという大幅な需要増を予測した計画になっています。
平成十三年度から三十二年度までの二十年間で木津浄水場系で給水人口が5万4400人増の予測で、全体で6万2600人増の予測になっています。関西学研都市の開発を前提にして、人口予測をしています。
しかし、現在、職住近接の流れで、京都市中心部のマンション増と少子化で、学研都市の住宅のはりつきは、予定通りすすまないのは、すでに明らかです
提言の木津浄水系の人口計画をどのように考えていますか。
また、この間、水需要予測で、ライフスタイルの変化や節水意識の向上、省エネ機器の普及などによる需要の軽減もほとんど考慮されていません。計画では、乙訓二市一町の一日の一人あたりの給水量を六三一リットルにしていますが、平均で十三年度の試算では三六八リットルで大幅に水需要予測は少なくなります。
節水意識の向上の努力と、一日一人あたりの給水量の見通しをどのように考えていますか。
市町村の自己水を活用すれば施設拡張は不要
次に市町村の自己水の活用問題です。
提言は今後の需要増をすべて府営水道でまかなうことを前提にして計算しています。
NHK番組の報道により、全国で話題になった地下水「京都水盆」は、きわめて豊富なことが、この間証明されました。これは阪神大震災などで防災面からも証明された地下水活用の重要性からも、すべて府営水道に切り替える方向は誤りであり、豊かな地下水を活用すべきです。
2001年度の自己水の給水地域の府営水依存率は、47%であり第五次提言の人口増をそのまま認めたとしても、現在の自己水の比率で見れば、16万7千トンとなり、十分現行の施設と水利権で対応できます。
自己水の活用を積極的に進める方向へ見直すべきと考えます。見解を伺います。
提言は、木津浄水場系の水需要が増えることを前提に、乙訓浄水場の拡張を提言しています。
現在の府営水道施設の供給能力は、日量19万dで、一日平均供給水量は10万6千dで、最も多い月でも日量7万トンの余裕があります。
この点から考えて、乙訓浄水場の拡張は新たに府民に負担を押し付けるもので、拡張は必要ないと考えますが、どのように考えていますか、見解を伺います。
【企業局長】 府営水道経営懇談会第5次提言の木津浄水場系の人口予測については、平成12年の国勢調査の結果をふまえ、特に関西文化学術研究都市域の人口については、市町の計画人口や近年の宅地開発の動向等を加味し、十分すり合わせを行ったもの。一人当たりの給水量については、
各市町ごとに生活用水、業務用水、工場用水それぞれについて積算されているもの。特に生活用水については、過去5年間の実績値をもとに水洗化率やライフスタイルの動向など、社会経済動向が考慮されており、この点についても知事が答えた通り、水道懇において概ね5年ごとに見直しがされている。
受水市町における自己水の活用は、府営水道の施設は自己水と府営水の効率的な活用を基本とした受水市町の安定供給計画にもとづく要望を受けて整備してきた。自己水は十分活用されていると考えている。
第5次提言に示された府営水道の施設拡張計画については、将来の水需要の増加に対応する基本的な考え方であり、今後の動向を見て判断していきたい。
ダム建設がすすめられれば府民の水道料金の負担は大幅に
次は水利権の問題です
提言は、予定されている新たなダム建設の費用を水道料金に55年にわたって負担することが提案されています。
予定通りもしダム建設がすすめられれば、水道料金として、どれだけ高く府民にかかるかわかりません。
現在の府の水利権は、日吉ダム、天ヶ瀬ダム、比奈知ダムで、日量17万7984トンで一日最大給水量から見て約6万トンの余裕があり、自己水の活用も考えれば、十分現在の水利権で府営水道に供給可能です。
現在計画中のダムの天ヶ瀬再開発、丹生ダム、大戸川ダムの水利権を放棄する方向で、国に申し入れすべきと考えますが、見解を伺います。
【知事】 水利権については、代表質問でも再三お答えしたように、宇治浄水場の水利使用の許可が暫定的な状況の中で、今後、宇治市をはじめとする三市一町に安定的な給水をいかに確保するかが第一であり、供給体制をにらみながら琵琶湖淀川水系については、ご指摘提言を受けて出される近畿地方整備局の案に対し、まず意見を述べていくべきと考えている。
都市農業の持つ役割は大きい
次に、都市農業について伺います。
都市農業は、宅地化が進み、自然が大幅に減少している中で、農業のもつ役割は大きくなっています。新鮮な農作物供給を始め、環境の保全、環境や防災の面での貢献、生活への潤いの場等多くの役割を持っています。
先日、府乙訓農業改良普及センターで、都市農業の現状について伺いました。センターの管轄地域は京都市、向日市、長岡京市、大山崎町であり、総耕地面積は3,717ヘクタール、うち市街化区域内農地は1308ヘクタールで、うち生産緑地が71%となっています。農業粗生産額は約154億円で府全体の18%を占め、特に、野菜の粗生産額は、府の42%を占めています。
専業農家は近くに大消費地がある利点を生かし、将来、努力次第で一層収益を上げ、安定した農業経営が可能です。専業農家は、先端技術の導入による京野菜と新たなブランド品育成など新しい農業技術、また、病虫害対策や栽培技法の高度化など必要な対策を求めています。今後、専業農家の要求に応えるため、各農業研究所、農業改良普及センターの役割はますます重要となっています。そのための連携、体制の強化・研究の方向について、どのように考えているか、お聞かせください。
市街化区域内の農業振興 支援助成の検討を
次に、市街化区域内の農地について、農業振興の対象にした助成制度を実施する問題です。
現在、大阪府では、「都市緑農区制度」ということで、農道、水路、ハウス施設など、農業生産基盤整備事業として実施されています。都市化の中で生産環境が悪化し、農業基盤整備が放置されています。市街化区域内の基盤整備の助成制度を検討すべきと考えますが、どのような見解ですか。
次に、市民農園、体験農園、朝市、直売所など、都市住民と結んでの取り組みへの支援策の充実・強化が必要です。私の住んでいる大原野地域で、かぐやひめ市(朝市)が女性を中心に行われ好評です。農家と地域住民との交流も進み、生産への意欲も生まれ、このような朝市、直売所を広げていく必要があります。場所の提供、女性農業者への支援など、いっそうの努力が必要と考えるか、お聞かせください。
また、区画貸しの農園の場合、税制上の問題で、実際上、なかなか困難な状態が生まれ、結局、農地が放置された状態になっています。
この点、東京都練馬区で体験型市民農園が行なわれています。この農園は、農家が開設し、耕作の主導権をもって経営管理している農園です。借地型の貸し農園ではないので、相続発生の際、相続税猶予措置の適用を受けることができます。体験的農園を広げていく上で、検討していく必要があると考えますか、お聞かせください。
次に、有機農業について伺います。
最近の消費者は、とくに「安全」志向が強く、また、「有機農業」をめざす農家も生まれてきています。政府は二年前に日本農林規格法の有機農産物の検査・認定制度をスタートさせました。現在、府下で三八の認定農家です。この制度は、「三年以上、農薬・化学肥料などの化学物質を一切使用しない農地で栽培した農産物に限る」としています。この基準を府は、少し緩和し九二人を認定農家としています。従来の農法から有機農業に転換する際の技術習得への援助や転換期間中の減収に対する所得補償、病害虫に強い種苗の開発、土壌を維持培養するための良質な有機肥料の供給など、具体的な支援が必要と考えますが、有機農業への支援をどのように考えているのか、お聞かせください。
【農林水産部長】 これまでから、それぞれの時代に応じた研究普及体制の整備を進めながら、土壌微生物の活用した病気の予防など新しい技術の開発を進め、その成果を農業普及センターを通じて積極的に普及するなど、研究と普及を重視し農業振興を進めてきた。今後の方向は、病気に強い品種の育成や栽培技術の開発、京都固有の新品種の育成等をしていく。有機農業など環境に優しい農業の育成は、農業と畜産の連携による土作りや天敵活用技術等とあわせ黄色蛍光灯による害虫防除技術等の普及指導を通じて農家の取り組みを支援していく。
市民農園は、憩いの場を提供し農地保全につながることから、これまで、遊休農地等を活用しながら手軽に府民が利用でき、相続税の納税猶予が適用される体験型農園を中心に整備をはかってきた。女性農業者等が行う朝市等については、都市農村交流施設とあわせた直売所の整備や組織作りを支援するとともに、JAなどの協力も得て実施場所の確保に努めてきた。朝市マップの作成などのPR活動も積極的におこない、今後とも支援していく事としている。
市街化区域は都市計画法ですでに市街化を形成している区域及び概ね10年以内に優先的かつ計画的に市街化をはかるべき区域と指定されており、原則として農業振興のための助成は行わないことになっているが、当面の営農継続を目的とした簡易な施設整備等への支援は行っている。
絶滅の恐れある野生生物、里山の保全対策を
次に京都府内の絶滅の恐れのある野生生物や、里山の保護と保全対策について伺います。
本府は昨年6月に四年間にわたる調査の集大成として「京都府レッドデータブック」を発刊しました。野生生物では、1596種を独自の選定基準を用いて絶滅種、絶滅寸前種、絶滅危惧種など5つに分類されています。今回の調査選定、評価委員会の会長をされた、千地万造京都橘女子大学元学長は「京都府レッドデータブックの成果を京都の自然への警鐘ととらえ、今後、京都の自然を守っていくことが最も重要なことです。そして府民のみなさんと行政と研究者がそれぞれ手を取りながらいかにして京都のすばらしい自然を次代へと引き継いでいくのか、これからの本当の意味で自然保護対策を具体化する重要な時期ではないかと思います。一度失った自然は二度と取り戻すことができません」と述べられています。
そこで伺いますがこのレッドデータブックの成果に立って、どのように希少種の保護対策をすすめようと考えていますか。
希少種を絶滅寸前にしている原因を取り除く対策が必要です。
里山、河川、田畑など生態系を保全してきた環境をどう守るのか、外来種の規制をどのように進めるのか総合的な対策が必要です。また府民的な担当課を明確にする必要があります。見解を伺います。
年内に希少種の保護対策を考える検討委員会を設置すると聞いていますが、どのような内容と規模で設置するのか
現在希少種の保護・保全を行っているのは、民間の小さなボランティア団体が大半といっても過言ではありません。
自然保護団体「乙訓の自然を守る会」は、レッドデータブックで植物の絶滅危惧種に指定されているアゼオトギリの保護移植作業を行ってきました。府内で唯一確認されている京都市西京区大原野の自生地で市の道路建設計画が予定されているため、会員宅で種子から育て、同じ小畑川水系で自生地に近い長岡京市の休耕田を借り、移植されました。
また桂川の湿地帯に自生する府のリストでは絶滅寸前種となって「ミズアオイ」を国土交通省の河川改修で荒らされるのを未然に防ぎ、完成まで仮移植するとともに自生に近い長岡京市調子のサントリー京都工場と大阪府島本町の山崎蒸留所に保全協力を依頼し、社員が管理にあたり、昨年9月中旬に開花が見られるなど育成は順調にすすんでいます。
希少種の保護対策を、早急に進める上で、このような民間のボランティア団体と協力し、学校、個人、企業が積極的に参加できるネットワーク作りを、ただちにすすめていく必要があると考えますが、ご見解を伺います。またボランティア団体に対して、ロープ、道具など貸与するなど具体的な援助も必要と考えます。また植物園など、府の関係機関内の希少種保護の対策はほとんどありません。積極的な対策を進めていく必要があると考えますがいかがですか。
【企画環境部長】 昨年取りまとめた京都府レッドデーターブックは、府や市町村をはじめとした様々な活動主体が連携して希少種保護に大きな役割を果たすと考えている。現在専門家やNPOなど14名の検討委員会を設置し、保全方策、啓発など総合的な保護対策を検討している。外来種の問題も検討している。生息環境自体が守られる事が大切であり、公共事業の実施や環境アセスメントなど関係部局が自然環境に配慮した取り組みを進めている。従来から、緑と文化の基金を活用し、民間の優れた保全活動に支援してきた。今後とも効果的な保全活動を進めていく。
西山、乙訓地域 歴史的自然環境保全地区の指定を
次に西山、乙訓地域の自然を守る問題について伺います。
この地域は、 西山の山地、丘陵地、平野部・桂川の河川敷という地形の変化があり、また一部に石灰岩地帯があります。変化のある地形が芦生の原生林より多い1200程度の植物が育んでいます。植物が豊かであれば、それを食べる昆虫が多く、また鳥や哺乳種も多いということになります。それだけ豊かな自然が残っている地域です。
しかし、70年代から人口が急増し、宅地開発が急速にすすみ、平野部の田畑がつぶされ、丘陵地や山麓の竹林、雑木林、ため池がつぶされるにしたがって、自然が失われてきました。また三川合流地点をまたいで西山の山すそを通り、小泉川沿いに、京滋バイパスと国道九号結ぶ第二外環状道路計画が予定されるなど、一層自然破壊がすすんでいます。
このような状況を見過ごすわけにはいかないということで、西山、乙訓の自然を守るために多くのボランティア組織が発足して、自主的に自然保護の活動をされています。
この中の一つである「乙訓の自然を守る会」は、91年に植物研究者を交えたチームを組み、京都大学理工学部など研究機関の協力で、乙訓エリアの独自調査を始め、8年がかりで絶滅危惧種20種を含め1206種をまとめ、「京都西山の植物目録」を発表されました。西山・乙訓地域を知る初の基礎資料で、今回の府のレッドデータブックの作成にも反映されています。
西山の自然保護をすすめるボランティア団体が集まり「西山自然保護ネットワーク」がつくられ、春植物の踏みつけ防止パトロールを4年前から開始されたり、里山を守るために森林ボランティアなどが取り組まれています。
この地域にはカタクリ群落や府の天然記念物の「ギフチョウ」も棲息しています。
この地域の貴重な自然と希少種を保全、保護し、ボランティアの活動を援助する点から、歴史的自然環境保全地域」等に指定し、積極的に対策をすすめていくべきと考えますがご見解を伺います。
【企画環境部長】 乙訓西山地区では、小塩山の金蔵寺周辺の社寺林を指定している。歴史的遺産と一体となって形成された自然環境を保全するための制度であり、今後もこのような観点から運用していく。その他の地域指定も趣旨に応じて地域の状況を点検し、指定していく。
里山を守るためにも竹材活用の研究を
また、この地域の里山は、ほとんど民有地であり、放置されたままで、活用の展望もなく、安易に業者に売却し、産業廃棄物の不法投棄の場所にされる例も生まれています。
里山を地主から借り受け、ボランティア団体などに整備を委託する方法も含め保全対策をすすめる必要があると考えますが、いかがですか。昨年の補正予算で、里山を守るために、竹林の伐採の補助制度が発足しました。地主が三分の一の負担になっているため、地主がその必要性を認識しなければ進まない事業です。里山を府民の共通の財産として、地主の承諾があれば、府・関係市町村の負担で、ボランティア団体と協力してすすめることができるよう改善する必要があると考えます。いかがですか。また、伐採した竹の活用についても、これまで竹炭製造や竹炭を利用した住宅資材などの取り組みがされています。最近、鹿児島県は竹パルプの実用化をすすめています。コストも安く、大量に使用できる研究を本府としても、関係研究機関と協力してすすめる必要があると考えますが、いかがですか。
【農林水産部長】 共育の森づくり事業や放置竹林拡大防止事業などによって、これまでから竹林を含む里山保全の取り組みを促進してきた。15年度からは緑の公共事業の一環として、地球温暖化重視の観点も重視して、企業やボランティアが行う森林整備にも支援していく。竹の活用については、炭窯の設置などに助成しており、府内での竹炭の生産量は5年前の20倍、年間40トンになっている。いっそうの需要拡大として、土壌改良剤として利用できる高機能な活性炭の開発に、林業試験場、農業総合研究所等が連携し、国の委託事業の導入に向けて取り組んでいる。