高橋 進 (日本共産党・京都市山科区) 2003年
2月17日
アスベストの全面使用禁止を
現存する構築物の解体や除去、改修の徹底を図り、特別の検診態勢をつくり、検診補助制度と発病予防の体制を確立せよ
【高橋】最初に、いまやガン死亡の大きな原因と言われている、発癌性物質「アスベスト」について伺います。
アスベスト(石綿)の粉塵は、吸い込んで20年から40年の潜伏期間を経て「胸膜中皮腫」いわゆる「肺ガン」を発祥し、特に幼児期、成長期に吸い込んだ人が働き盛りの40代以降に多く発病する危険物質とされ、世界各地で使用の禁止措置が取られて来ています。
「アスベスト被害、激増か」 40年までに10万人死亡予測。これは、昨年4月2日付け朝日新聞でありますが、早稲田大学理工学部グループによる疫学的統計手法で分析した結果の記事ですが、神戸市で開かれた「日本産業衛生学会」にも報告され、ようやく厚生労働省も昨年来、石綿の全面禁止の方向で省庁間協議を始めたことが報じられて来ました。
厚生労働省の平成10年度発表、人口動態調査報告書の中の「悪性新生物(つまりガンの)主な部位別に見た性別・年齢別統計」その中の気管・気管支及び肺の悪性新生物(つまり呼吸器系)の肺ガンなどの死因の統計が出ていますが、これを見ると、40才から5才単位で死亡者が倍加して行き、男性は最高85才台で10万人のうち660人、女性で90才以上の209人がいわゆる肺ガンなどで亡くなっているというものです。
もう一つの資料、「日本の中皮腫(いわゆる肺ガン)による死者数のグラフでも、やはり40才代から急激に死亡者数が増加することを示しています。
この資料からも、一刻も早く、使用の全面禁止に踏み切ることと合わせ、これまで大量に使われ、建物などに残っているアスベストを除去することが必要です。既にヨーロッパ諸国では、早くから全面禁止措置にふみきり、特に欧州連合(EU)では30ケ国以上が全面禁止としています。ところが今回、厚労省にたずねてみると、全面禁止から大幅後退し、「代替え品がなく、特定の商品に限っては、引き続き使用を認める方向で検討中」と言うのです。70年代世界の石綿総生産量60万トンのうち最高74年には、日本が35万2千トン輸入し、世界最大の消費国として使いまくり、一昨年でも生産量約30万トンのうち7万9千トンを輸入し、製品化しています。
わたしは、昭和60年2月議会の一般質問でこの問題を取り上げ、質問しました。当時、アスベストの危険性については、一部の学者を除き社会的には、危険性どころか、むしろ断熱効果や他の薬品から影響を受けない優秀な物質として、薬品や化粧品、家庭用品にまで幅広く活用されておりました。
特に建設資材としては、プレハブ建ての屋根のスレートから断熱材、天井材、壁、床、塗装まで、自動車のブレーキシュウ、各種電気製品の絶縁体、ヘヤードライヤー、魚焼き器の網、子供用ベビーパウダーの増量剤にまで、およそ生活のすべての場所に活用されていた訳です。
私は、これに「発癌性があって危険だ」と聞いて、その危険性を訴え続けておられた熊本大学の先生に手紙で資料と他の研究者を紹介していただいて、8大学の先生にお願いし、富山医科歯科大学北川教授からは、肺の病でなくなった1000体の検体から肺にアスベストが多数突き刺さった人の職業と生活実態を調査した結果の資料をいただき、コメントを寄せていただきました。
その結果は、既にアメリカでは、アスベストの使用を70年台に禁止し、小学校などはすべて建て替えるなどの措置が取られ、ヨーロッパでは、各国使用禁止であること、日本では、毎年、20万トンから30万トンが輸入され、何の規制もないまま、子供達を含め、毎日アスベストの粉塵を被曝し続けていること、吸い込んで以降、およそ20年から40年の潜伏期間で中皮腫、肺ガンが発病する危険があることが分かったのです。そして環境庁は、すでに全国700カ所で空気調査を行っており、すべての場所で検出されていたのに「日本には、じゃもん岩などが各地にあり、自然界には広く存在する」などとして何の対策も、使用上の注意を喚起することもしていませんでした。
国に対して、使用の禁止を求めること、府としても、最も危険度の高い建築労働者などの検診を実施することを求めましたが、当時の衛生部長は「環境庁の報告書は一般の人々へのリスクは少ない」とした点だけを強調するに過ぎませんでした。
このときのわたしの質問がきっかけで、京建労が学者を招いてアスベスト製品の切断実験を行うことになり、NHKがこれを取材し、放送しました。直後から、問い合わせが殺到したために、何度か再放映されたなかで、ようやく国は、小中学校を始め、幼稚園、保育所などの改修とアスベスト15%含んでいるとされるフューム管、水道管の取り替えを市町村に通知することになったものです。
このとき国は、特に発癌性の強いとされた青石綿と茶石綿は輸入・使用も禁止、白石綿は比較的に影響が少ない、として、使用を認め、製品中5%以上含むものに「a」マークをつけ、注意を促すという措置を取りました。 ところが95年、阪神大震災が起こり、倒壊したビルや家屋の解体作業で通常の数十倍ものアスベストの粉塵が飛散した事から、規制を5%から1%以上と引き下げて、表示義務を強化しました。しかし、それ以外はどの製品に含まれているかは、かえって分からないという不十分な対応に止まって来たのです。
本府では、昭和62年(87年)太田議員の質問で庁内の「アスベスト問題連絡会」がつくられ、対応されて来ましたが、平成八年以降、会議も開かないままだそうです。
連絡会結成以降の取り組み状況について伺います。
ここに、 肺ガンで倒れ、昨年4月に亡くなられた電力会社の下請け作業員の、奥さんの手記があります。医師の診察でアスベストに犯されたものとの診断書をそえて労災申請したが、却下され、異議申請や陳情を繰り返し、石綿対策全国連絡会の援助で死の直前にやっと認定をみとめられたという、まさに壮絶な戦いの記録です。厚生労働省の資料でも、平成12年度までで、死亡した710人のうち労災認定されたのは、わずかに34人だけです。京都においても認定件数が2件あるときいているが、就労状況や発症の状況等、認可に至るまでの手続きなど複雑であったり、元受などへの気兼ねから申請に至らず死亡する例があることが指摘されています。
そこで伺いますが、府としても府内の学校・保育所、公共施設でアスベスト除去はすべて終わっているのかどうか。もう一つは、市町村の水道、簡易水道ふくめヒューム管は残っていないか、おこたえいただきたい。
そのうえで、@国に対してアスベストの全面使用禁止を求めること。A現存する構築物の解体や除去、改修の徹底を図ること。B既に吸い込んで潜伏状態の人々が多数いる訳ですから、特別の検診態勢をつくることや職業柄、危険度の高い人々への検診補助制度と発病予防の体制を確立する事が必要と考えますが、お答えください。
【中村企画環境部長】京都府では、昭和62年にアスベスト問題府庁内連絡会を設置して、関係部局が連携を取りながら対応策を進め、アスベストの使用が判明した府の施設をはじめ、学校や保健所等で対策が必要なものは、すべてアスベストの除去や封じ込めが行われた。特に有害なアスベストについては、国においてすでに製造使用禁止の措置がとられ、その他のアスベストについても、国民の安全や社会経済にとって石綿製品の使用がやむを得ないものを除き、原則として使用禁止をする方向で検討されている。建物の解体等による飛散防止については、大気汚染防止法の改正などにより、建築物の所有者において講じるべき作業方法が定められ、これらの対策もあって、京都府内の環境中のアスベスト濃度は、世界保健機構の基準に比べても、大幅に低い水準となっている。
簡易水道に敷設されている石綿管については、計画的に更新が行われるよう国庫補助制度にくわえ、府独自に補助制度を設けて、水道事業者である市町村を支援してきた結果、平成13年3月末時点では、簡易水道総延長の9割を超える部分は、石綿セメント管以外で配管されている。今後とも、更新事業が円滑に進められるよう市町村を支援していく。
アスベストに関わる業務に従事する労働者の健康被害の防止については、労働安全衛生法に基づき、事業者に対し粉塵の飛散を防止する措置や健康診断の実施が義務づけられており、また、製造業者等に対し、石綿含有製品の表示が義務づけられている。府として、労働基準局と連携し、労働衛生週間における取り組み等を通じて、使用者に対して、これらの措置の周知、啓発を図っている。
巨大スーパー「みった」に、府として撤回を迫れ
【高橋】次に、福知山市の東部長田地区、多保市に建設が予定され、商工会議所など商店街も上げて反対の声が上がっている、巨大スーパー「みった」の進出問題についておたずねします。
福知山市商工会議所など13団体と農協からも市に対して進出反対の要望が上げられていますが、その中で、既存の商店などは、売上が20%から30%も影響を受け、国道9号線は現在よりも平日で約7千5百台、休日では1万5千台もの自動車が殺到し、現在、市が取り組んでいる駅連続立体交差事業や、駅周辺整備事業及び中心市街地活性化の取り組みが、根底から覆される事態となり、市の「町づくり」全体への影響は計り知れない、として、今月6日、1100人の参加で反対決起集会を開催され、市長も反対の立場で参加されています。12月福知山市議会でも市長は、これらの影響に加え、出店となれば、国道9号の拡幅が必要となり、その際、拡幅するにも六人部中学校、コミニティーセンターがあり、反対側にはトオノイケという大池や消防署があり、消防車の出入りにも障害の出ることを指摘して、大多数の市民の立場から反対の態度を明らかにしています。そのうえにこの用地は、国道9号と近畿道の間で、数メートルの高さがあり、約50万立法メートルもの土砂を大型ダンプ8万3千台で除去しなければならず、その捨て場も新たな問題となることが指摘をされています。
全国各地で郊外での大型店の出店が、市などの街づくり計画を台なしにするような事態を引き起こしていることから、一定の規制措置が必要とされていますが、福知山市では、ジャスコ進出で照明済みの商店街つぶしから、府として守るべき課題は重大であると考えます。
そこでうかがいますが、「みった」からの開発申請や事前協議の状況はどうなっているのか。指摘されている課題についてどう考えるのか、また、府として、「みった」に撤回を迫るべきだと考えますが、どう対処されますか、お伺いします。おこたえください。
【商工部長】現在、取水対策について相談を受けているところだが、開発行為の事前協議の願いや許可申請は提出されていない。出店に伴う交通問題については、大規模小売店舗 立地法の趣旨に照らし重要な課題でもあり、周辺地域の生活環境保持のため、地元住民の方々や福知山市の意見を十分尊重して、適正に対応していきたい。大型店の出店問題については、大店立地法の下において、あくまで地域の発展を図るという立場に立って、地元市町村の意見を十分尊重しながら、町内に設置したまちづくり推進連絡協議会において、関係部局の連携を図るとともに、有識者で構成された大規模小売店舗立地審議会の意見をふまえ、公正かつ適切な対応に努める。
府の合併押し付けをやめよ
【高橋】次に、福知山市を中心に進められている市町村合併問題でおたずねします。
福知山市では、平成13年10月、「広報ふくちやま」で合併問題を特集し、「福知山市にとっての、合併のメリットとデメリット」を明らかにし、メリットとして、●広域的な観点に立ったまちづくり、●特色を生かしたまちづくり、●地域のイメージアップを揚げ、デメリットとして、●きめ細かなサービスの提供が困難だ、●地域の特色の希薄化が生まれる、●旧市町間の格差是正に伴う行財政の負担を揚げ、福祉など地域間の均衡を図るためには、一定水準への格差是正施策が必要となり、行財政の負担が生じる事を指摘しています。
12月議会の質問で、市が出した財政シミュレーション「合併しない場合のシミュレーション」で平成20年には7億5千万円の赤字が出る、とされているが、「現在40億もの財政調整基金をもっていてなぜ赤字になるのか。」と聞かれて、理事者は府の試算方法でやるとそうなる、実際にはそうはならないと、考えていることを明らかにしています。そして、わざわざ「合併をした場合、中長期的には財政危機を回避できる見通し」などと書いています。「赤字にはならない」と考えている市当局が「合併すれば財政危機が回避できる」などという文書を市民に流すこと自身問題ですが、府の試算方法でやるとこうなる、と言うのは、結局、何が何でも合併を押し付けて来た京都府の姿勢をあからさまにしているではありませんか。
一方、三町の間では、町当局が行った「合併以外にない」という一方的な説明に、疑問や怒りの声がひろがり、加えて、「福知山市への吸収合併は認められない」「合併するなら対等合併以外にない」など説明すればするほど矛盾を広げています。法定協議会に向けて、メンバーの定数を巡って、福知山市側の「吸収合併推進メンバー」を多数にして提案し、町側からの反発で一定の是正はしたものの、なお府の代表を入れ、採決すれば「吸収合併派が多数」の協議会にしようとしていることに、反発がいっそう強まっているのです。
大江町議会は、「町の説明だけで結論は出せない」と議員が手分けして全戸にアンケートを配布し、いま回収と町民の意見の集約が進められています。また、三和町でも、議会の責任で毎晩2カ所づつの説明会が行われており、1市3町の合併問題も、議会や住民を主体とした新しい展開を見せて来ているのです。
京都府の幹部ですら「福祉などやっぱり町の方が進んでおり、これを人口の多い福知山市民にも同様にすれば膨大な財源が必要で不可能」と本音を語っておられました。合併強行の結果は、福祉施策を始め、賢明に住民の要求にこたえ、きめ細やかに進めて来たサービスが合併の押し付けで奪い取られ、ますます周辺の住民は見捨てられることは火を見るより、明らかです。前窪議員への答弁では、こうした現地での実態や、府民の声に正面からこたえておりません。合併しないことも選択肢の一つ。それぞれの古里の将来は、住民自身で決める。何が何でも合併以外に道がないかのような、府の合併押し付けは、きっぱりと行わないことを明言すべきです。はっきりとおこたえください。
また、住民などの自主的判断で「合併しない」自治体に対しては、どう支援されようとしていますか。合わせてお答えください。
【知事】市町村の要請に応じて出来るかぎり的確な情報や見通しを示して、地域の議論が十分に、また深く行われるよう支援していく。大切なことは、的確な情報のもとにこれからの地域のあり方に真剣な議論がなされること。市町村が議論のための材料として、財政試算を作成されるような場合には、市町村からの要請を受けて必要な情報提供や助言を行ってきた。それをもとに、分科会や協議会が自ら、市町村ごとの比較などが出来るような、共通の前提条件を設定して試算を行っているもの。その際、各市町村の地域計画など、個別事業を斟酌することは、公平性の観点からも難しい場合が多く、現状制度や過去の歳入、歳出の実績を前提にした、各市町村同一基準で推計が行われており、このため個々の団体で作成している将来財政の見通しとは多少開きが生じる場合もある。市町村に対する支援については今後とも、市町村の規模にかかわらず、地域の真剣な議論を踏まえ、自主的な地域づくりの取り組みに対し積極的に支援をしていく。
里山の自然を取り戻し、丹波マツタケ振興に力を
【高橋】次に、マツタケ振興について質問します。生産量がかつて1200トンを越え、いま数トンにまで落ち込んでいる京都の特産″丹波マツタケ振興策″についてうかがいます。
わたしは5期20年府会議員としてこの問題を取り上げ、質問をして来ましたが、今春退任するに当たって、落ち込みが激しい農産村の、回復の切り札の一つとしても、ぜひ府政の重点課題として、位置づけ取り組んでいただきたいと切望して申し上げたいと考えます。
近年「里山の自然を取り戻せ」という声が高まって来ていますが、里山の自然とは、古来、人のなりわいとしてカマドの薪とり、炭焼き、堆肥作りのための芝草刈りなど人と山とのかかわりの中で松の木は、大切な建築材料としても、マツタケ山としても大切にされて来たからこそ、至る所マツタケが発生し、丹波の霧とともに「丹波マツタケ」の逸品が生産されて来たものです。
マツクイムシによる大量の松枯れ、建設外材の輸入、農村部含めてのプロパンガスの普及、化学肥料優先の農業など山と松、人との関係が激変する中で放置されて来たのが里山であり、マツタケ生産の落ち込みの主要な原因です。しかし、いま、1キログラムあたり13万円もする丹波マツタケは「これ以上衰退させないという決意」で、いま、改めて事業として取り戻していただきたい、切なる願いをもって知事に質問します。
京都には、実現の可能性は十分にあります。
まず、まつたけ再生の技術は、京都府林業試験場で確立された環境整備で既に立証済みです。マツクイムシ対策でも、既に、国の林業試験場と京都府とも連携して20数年かけた選定でマツクイムシに犯されない「抵抗性マツ」も種子生産の段階にまで来ています。放置されている里山を雇用対策としても位置づけて整備し、新生の松林を再生すれば、15年から20年でマツタケは発生すると言われていますから、せめて丹波地域を中心としつつ、条件を調査のうえ、整備すべきではありませんか。今後の京都の特用林産物の主力として大いに展望をもつことができると考えますが、知事のお考えを示してください。いかがですか。お答えください。
【農林水産部長】これまでから、松茸菌の定着環境を整備するために、雑木の切りすかしと落ち葉のかきとりを行う京都方式の発生環境整備や、ビニールシートで土壌を保温し、菌糸の成長と発生を促進する技術の普及を進めてきたところであり、近年では、発生初期のマツタケをおが粉で保湿し、マツタケの大型化をはかる実証事業にも取り組んでいる。マツクイムシ抵抗性マツは、京都府では林業試験場夜久野分場において、苗木の育成供給態勢を整えたところであり、平成14年度は、森林組合等を通じて1200本を配布している。今後とも、現地の要望も伺いながら、緑の公共事業による里山整備の取り組みなどを通じて、松林の再生にも努める。
【高橋】さて、私にとってこれが最後のこの議場からの質問になりましたが、多くの府民のみなさんをはじめ、議員諸兄はもちろん、理事者の皆さんにもこの20年、大変お世話になりました。ここに、改めて厚く御礼を申し上げる次第です。ありがとうございました。野党としてではありましたが、世界の京都、日本文化の象徴としての京都を愛するがゆえに多くの提案や議論にも参加し、私にとっても悔いなく、誇りある20年を過ごさせていただいたと心から感謝をしています。
先の荒巻知事は、我が党の質問に「燕雀いずくんぞ、鴻鵠の志を知らんや」ということわざをひいて追求をそらそうとしました。
山田知事は、ぜひともしっかりと府民の声に耳を傾けていただきたいと願うものです。そこで「河海は細流を択ばず」この言葉を送り、わたしの質問を終わらせていただきます。
ご清聴ありがとうございました。