梅木 紀秀 (日本共産党 京都市左京区) 2003年12月3日

 

財界主導の保守「二大政党」体制を許さず、くらしと平和を守れ

 

【梅木】日本共産党の梅木紀秀です。日本共産党府会議員団を代表して、知事ならびに関係理事者に質問します。

まず、先の総選挙について、一言申し上げます。わが党をご支持、ご支援いただきましたみなさんに心からお礼を申し上げます。

今回の総選挙の大きな特徴は、財界主導、マスコミを挙げて「政権選択選挙」、すなわち「自民党の政権か、民主党の政権か」という意図的な二者択一の世論誘導がおこなわれたことであります。総選挙直前の民主党と自由党との合併劇の裏には、日本にアメリカ式の保守「2大政党制」を導入するという財界のシナリオがあったことを、関係者自身が明らかにしています。財界の思いのままになる2つの政党の間で政権のキャッチボールをおこなう、このシナリオのもとで、消費税の増税、憲法改定という大問題で、民主党が自民党と同じ流れに合流しました。

日本経団連の奥田会長は、11月3日に開かれた日米財界人会議で、「政治献金をテコに、財界が日本の改革を取り仕切るつもりだ」と述べています。総選挙を前に、民主党は日本経団連に政治献金の配分を要求し、マニフェストに消費税増税と憲法改定を書き込みました。比例代表の80議席削減、将来は小選挙区制だけで、と民意を切り捨てる保守「2大政党制」への道を主張するにいたりました。まさに、民主党が自民党と競い合って財界に擦り寄る、国民にとっては許せない事態になっています。

日本共産党は、財界主導でつくりだされたこの急激な変化の意味を明らかにするとともに、自立した平和外交と、社会保障を予算の主役にする「日本改革の提案」を訴えましたが、短い期間とマスコミの世論誘導の嵐の中で、有権者に伝えきるにはいたらず、残念ながら議席を後退させました。

しかし、わが党のこの訴えは、今後の政治の動向の中で、大きな力を発揮することを確信するものであります。選挙後、「2大政党というが中身はひとつではないか」「護憲の受け皿がなくていいのか」など、選挙制度の在り方にも関わって日本の将来を危惧する声が広がっています。

日本共産党は、財界の意のままに増税と改憲の道をすすむ保守「2大政党」体制を許さず、これに対抗する革新・民主の勢力の結集をはかるために奮闘します。自民・公明の悪政ときっぱりと立ち向かい、イラク派兵と消費税の増税を許さず、国民の暮らしと平和を守るために、奮闘する決意を表明し、質問に移ります。

 

イラク派兵は、ただちに中止せよ

 

まず、自衛隊のイラク派兵についてうかがいます。イラクで日本人外交官2人が殺害されるという痛ましい事件が発生しました。犠牲となられたお二人に深く哀悼の意を表するとともに、ご家族、関係者に対し、心からお悔やみを申し上げます。

いかなる勢力によるものであれ、このような蛮行は許されません。今回の事件は、「戦闘地域には自衛隊を送らない」というイラク特措法の前提条件が崩れていることを改めて示すものです。にもかかわらず、自衛隊派兵を強行しようとする政府の姿勢は、イラク特措法にも違反するものであり、許されるものではありません。イラク派兵を直ちに中止するとともに、イラク特措法は廃止すべきであります。

そもそも、イラク攻撃の理由となった大量破壊兵器は発見されず、アメリカの占領支配の正当性は全く根拠を失っています。不法な武力攻撃、不法なアメリカのイラク占領支配こそ、事態混乱の原因であります。アメリカ主導の占領支配から国連中心の復興支援に枠組みを変えることが第一の解決の道です。ブッシュ大統領が「断固テロとたたかう」と言えば言うほど、テロと混乱は拡大する結果になっています。

11月13日の朝日新聞に、札幌市の23歳の女性の投書が掲載されました。「私の恋人は自衛隊員です」「部隊で(イラク行き)の意思確認の面接があり、彼は『8割方行くことになる』そうです」「毎日が不安でたまりません」「小泉首相の無責任な発言に腹が立ちます。大切な人が戦地に行くのです。命を落とすかもしれないのです。たとえ彼が行かなくても、代わりに誰かが行き、私と同じ思いをする人がいるのです」「イラク派遣、本気でやめて下さい」と、切々と訴えています。

舞鶴をはじめ府内でも、自衛隊員やその家族が不安な気持ちで毎日を過ごしておられます。京都府民の家族や親戚、縁者が、イラクに派遣され、命を奪われる、また命を奪う、憲法を踏みにじって、こんなことが許されていいでしょうか。アメリカの不法な占領に手を貸すならば、日本へのテロ活動に口実を与えることにもなります。

9月議会で知事は、「イラク特措法では、危険な地域には行かないことになっている」と答弁されましたが、イラクに安全な地域はありません。自衛隊のイラク派兵を中止するよう、知事が発言すべき時です。いかがですか、お答えください。

【知事】先日、わが国の外交官がイラクにおいて襲撃を受け、凶弾に倒れるという事件が発生いたしました。高い志を持ってイラクの人道復興支援のために奔走してこられた奥参事官、井ノ上書記官に対し、深い敬意と哀悼の意を表し、また、ご遺族に心からお悔やみを申し上げるところであります。

イラクの人々の生活安定と自主的国家の復興に向け、わが国も支援活動をおこなう国際社会の一員として貢献することは、イラクの体験を通じ、わが国を含む国際社会の平和と安定につながるものであり、必要なものであるということは間違いありません。

この復興支援職員や、自衛隊のイラク派遣などにつきましては、イラク復興支援特別措置法第2条で、現に戦闘行為が行われておらず、かつ、そこで実施される活動が行われる期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる地域において実施するもの、また、同法第9条で、職員や部隊の安全確保に配慮しなければならないと明記されているところであります。私は、今回の事件により、今、日本中が大きな悲しみとジレンマに陥っているのではないかと考えております。それは、復興支援に携わる人たちの安全確保は、何にもまして法の趣旨をふまえれば、できる限り確保すべきであり、危険は最小限に抑えるべく努力すべきものであります。しかし、その一方でイラクでは国連職員が襲われる、赤十字が襲われる、そして外交官が襲われる、まさにいかなる場合にあっても、あってはならない暴挙であり、テロであります。これによって、こうした方々の人道に基づく行為が止まる、となれば、これは、まさにテロ活動の有効性を是認することになります。私は、こうしたジレンマの中にあって出来ることは、できる限り客観的な状況判断を積み重ね、冷静に対処していくべきだと考えております。残念ながら、私はイラクの実情を十分に知りえる立場にはございませんので、ここで結論じみたことは申しませんが、政府はイラクの実情を十分にふまえて、安全性についての検討を公開し、その上で、法の趣旨にそって、できるかぎりイラクに対する復興支援を人道的見地からおこなうべきであると考えます。

 

消費税の大増税計画にはキッパリ反対を

 

【梅木】次に消費税の増税について質問します。9月議会で知事は、「小泉首相は、『消費税を引き上げない』と明言されている。」と答弁されましたが、選挙中に小泉首相は「将来社会保障の財源として消費税の増税の必要は認識している」と明言し、民主党も「社会保障の財源として、消費税の増税を」と言い始めました。選挙後早速、財界は、年金制度をめぐって、企業の保険料負担を軽くすること、法人税は減税して、消費税は将来18%にと、主張しはじめています。社会保障の財源として消費税の増税を、といいますが、消費税が導入されて14年間に国民が納めた消費税は総額136兆円、その一方で法人3税は同時期に131兆円も減っています。社会保障の財源にはなっていません。消費税導入と同時に、所得税の最高税率は75%から徐々に37%へと半分に引き下げられ、法人税も42%から30%へと引き下げられました。

過去最高益をあげている大企業や高額所得者には減税、一方、リストラで職を失った労働者や、就職先がない若者には増税を押し付け、わずかな年金が引き下げられた上に、医療費や介護保険料の負担増で将来が不安でたまらないお年寄りにも増税を押し付ける、こんな弱いものいじめが許されるでしょうか。

9月議会で知事は「租税負担の議論は、公的サービスのあり方と表裏一体の関係にある」とも答弁されましたが、弱者ほど負担の重い消費税を増税して、社会保障の財源にするというのは、そもそも、税の基本に反するのではありませんか。所得のある者には応分の負担を求め、生活費には課税しない、これが税制の基本ではありませんか。府民の暮らしの目線から、消費税の大増税計画にはキッパリと反対すべきです。知事の答弁を求めます。

なお、年金制度の改悪について、一言触れておきます。厚生労働省案は、保険料を2022年には現在の1・5倍に引き上げる一方、「給付は下げても現役の所得の50%を保障する」としています。しかし、50%を保障されるのは、40年加入し、妻が主婦のモデル世帯だけであり、厚生年金受給者の23・5%しか該当しません。先の国会で、わが党小池晃参議院議員の質問に、坂口厚生労働大臣は、給付額が、「共働きで現役の43%、単身者は39・3%」しか保障されないことを認めました。

国民年金の受給額はもっと低く、現在自営業者の平均受給額は月額4万5千円ですが、月3万円、4万円という年金の人はたくさんいます。これが1割、2割削減されて、どうやって生きていけるでしょうか。これで、「年金100年安心プラン」などといえますか。

日本共産党は、無駄な大型公共事業や軍事費を削ること、消費税増税や庶民増税ではなく、利益を上げている企業や所得の多い者に応分の負担を求め、社会保障を充実させることを提案しています。今、国民のくらし第一の政治への根本的な転換が求められています。

【知事】私は、以前から申し上げている通り、そもそも公的サービスの費用を賄う租税負担の水準の議論は、公的サービスの水準のあり方と表裏一体の関係にあり、少子高齢化の進展、企業活動や経済社会の構造的変化をふまえ、総合的に検討すべきものだと考えておりますし、逆進性の問題も、一税目だけをとりあげて判断することは適当ではなく、税制全体、さらには社会保障をふくめた歳出全体で判断する必要があると考えております。

 

介護保険の負担軽減を

 

【梅木】次に、介護保険についておたずねします。介護保険料が値上げされ、10月には、年金から天引きされているお年寄りからの苦情や問い合わせが市町村の窓口に殺到しました。私の義母もその一人で、8月までは4400円ですが10月は7390円に上がっています。また、ご近所のご夫婦は、ご主人が8100円から15280円に、奥さんが5900円から9690円に、二人合わせて10970円も負担が増えたとのことです。「区役所の説明では、『一年間の値上げ分が10月以降の3回分に集中するため』というけれど、負担が平準化されるだけではないか」と怒っておられました。

年金で暮らしておられる方々にとって、「医療費の負担は増える。受け取る年金は下がる。その上に介護保険料の負担増」で「将来が不安でたまらない。」というのは、府民の切実な声です。「これ以上消費税が増えても、介護保険料が増えても、年金が下げられても、どれかひとつでも、もうやっていけない。」と深刻です。とりわけ京都市は、全国の政令指定都市の中で上から二番目と保険料が高いのが、本当にこたえています。

その一方で、特別養護老人ホームへの入所待機者は、一昨年12月時点の調査では京都市以外で1570人、京都市内では自宅待機者だけで2033人、老人保健施設などに入所中の待機者をあわせれば3643人です。いつになったら希望どおりに入れるのか、全く見通しが立たない状況です。高い保険料を払っても入所できないというのでは、介護保険制度の基盤を危うくします。

また、サービス量が増えると保険料が上がるという今の仕組みのままでは、これも大変です。これ以上保険料負担を増やさないためには、制度導入時に25%に減らされた国の財政負担を、元の2分の1に戻すことが必要です。また、保険料・利用料の減免制度が必要です。これらを国に強く求めると同時に、府としても、軽減措置をとっている府内の自治体を支援し、府独自に保険料・利用料の減免制度をつくるべきです。知事のご所見をおうかがいします。

知事は、決算の総括質疑で、「高齢者の保険料が上がっているということは、まさに京都府の負担も上がっており、前年度より20億円増えている」と答えられました。私は唖然として、聞きました。まさに官僚的、府民の暮らしよりも、府の財政が問題なのですか。府民の暮らしの目線に立って、「国の負担を元に戻せ」となぜ言えないのですか。また、減免制度については「市町村の判断でやられていること」「府は市町村の援助団体ではない」と答えられました。府と市町村が力を合わせて、住民の福祉の向上をめざすのは当然ではありませんか。強く指摘しておきます。

【知事】介護保険制度においては、社会全体で介護が必要な高齢者を支えあうという主旨から、保険料や公費による負担割合が定められている中、京都府におきましても毎年負担が増加し、私どもも苦しい財政事情の中で、前年度より本年度も20億円増の約150億円を負担して制度を支えていることを申し上げたのでありまして、これが財政方針というようなことは、これはちょっと、梅木議員ともあろう方が、

という捻じ曲げでありまして、唖然とするのは私の方だなという感じがしております。まさに今、私どもはそういう中で、この制度を支えながら、さらに、国に対し国庫調整交付金を国庫負担金25パーセントと別枠で措置すべきであると積極的な提案を行っているところであります。保険料の低減につきましては、今回の見直しにあたって、京都府は、低所得者に配慮するため、通常5段階設定の保険料を6段階とする制度を市町村に促してまいりました。その結果、この制度を実施する全国230団体のうち京都府が34市町村を占めております。また、利用料の軽減措置につきましても、例えば社会福祉法人による利用料減免について、府内の約8割の社会福祉法人が制度を導入し、42市町村もこれに対し財政支援を行っているところであります。京都府も、少しでも財政負担が軽減されるように、こうして努力しているところですし、引き続き、現行制度の積極的な活用を市町村に促すとともに、高齢者の経済的負担や地方公共団体の財政負担が増とならないよう、国に対し積極的に求めてまいりたいと考えております。

 

こどもの通院医療費無料化へ、知事の決断を

 

【梅木】次に、こどもの医療費無料化についておたずねします。9月に制度が拡充されましたが、通院で月8千円を超える例はきわめて稀です。私の地元の診療所でも3ヶ月間に例がないとのこと。比較的大きな病院の小児科でも、3ヶ月間に数例程度です。私のご近所のお母さんは、「風邪を引いて1回2千円程度、それでも、上の子と下の子が交互に病気をしたら家計のやりくりは大変です。」と話しておられます。

知事は「全国トップクラスの制度」と自慢します。また、「上限が8千円で安心」といいますが、お母さんたちの実感は、「3歳未満まで無料の時と変わらない」「絵に描いた餅みたい」ということです。

府内では26の市町が、府の制度に上乗せして、通院も小学校入学前まで無料になっています。「住んでいる町で違うのおかしい」と府内第二の都市、宇治市で、条例制定を求める直接請求運動が開始されました。京都市内でも切実な声になっています。荒巻前知事以来「京都市内では府政が見えない」からと「京の川づくり事業・京都府」と大書した看板を上げておられますが、京都市と協力して、通院についても小学校入学前まで無料にするならば、府政が京都市民に見えるのではないでしょうか。京都市内で実施してこそ、子育て支援の「京都モデル」と全国に発信できるのではないでしょうか。知事はやる気だが、京都市長にその気がないということなのでしょうか。お答えください。

【知事】この制度は、荒巻知事時代に作られたものであります。京都市を含む市町村や外部の有識者の方々に参画をいただいた福祉医療制度検討会におきまして、この荒巻知事時代に作られた制度を、私どもは様々な観点からご意見・ご提案をふまえまして、とくに経済的にも精神的にも大変負担の多い入院医療について、制度の対象を小学校就学前まで引き上げたところであり、これによりまして、全国的にも高い水準の支援を行っているところであります。こうした全国的レベルのとりくみとともに、通院医療につきましては、負担の上限を明らかにすることにより、親御さんに安心して医療を受けていただけるということで、一定の限度額を設けたところであります。私は、まずは安心ということを優先させたわけでありまして、今回の制度補充により、入院はもう心配要りません、通院でも安心してみていただけますよということを、まずこの制度として定着させて参りたいと考えております。

 

ずさんな畑川ダム計画の中止・見直しを

 

【梅木】府財政が大変であればなおさら、税金のムダ使いをあらため、府民の暮らし第一の府政運営が求められています。そこで、次の3つの事業について中止、凍結を求めます。

 まず、畑川ダムの問題です。決算特別委員会の書面審査で突然、「断層が発見され、事業費が40億円から大幅に膨らむ」と報告があり、ついで知事から「77億円」という数字が明らかにされました。

断層は平成8年のボーリング調査で発見され、平成11年3月に20m上流に移すことを決めていたとのことですが、府議会でも丹波・瑞穂両町議会でも、わが党が何度も畑川ダム計画について質問してきたにもかかわらず、一切報告されてきませんでした。丹波・瑞穂両町の負担は7億4千万円から14億2千万円に、6億8千万円も増えるのです。これでは、議会軽視、「情報隠し」ではありませんか。知事の説明を求めます。

ダムの建設費用は水道加入金や水道料金として住民に跳ね返ります。先にダム建設ありきでなく、最適な水確保策を、慎重に検討することを、私たちは求めているのです。

かつて丹波・瑞穂両町では、水源の小さな簡易水道が各地に散在し、渇水期に断水という事態もありましたが、平成9年に丹波町・瑞穂町水道事業組合が設立され、簡易水道事業を1本につなぎ、統合する事業が進み、既存水源、日量5484トンに加えて、新規に水原水源690トン、下山水源2925トンが完成し、合計9100トンが確保されています。

平成12年度から14年度の3年間、両町の給水実績は平均日量4500トンで推移しています。工場など事業所用も含め昨年給水実績の2倍以上が確保されています。これで十分ではないでしょうか。77億円もかけて、畑川ダムから5000トンの水を確保する必要があるでしょうか。7000区画の分譲宅地に人が住めるようにとか、工場の誘致のために必要だといいますが、丹波高原だけで今後爆発的に人口や工場が増えるでしょうか。

万が一、水が必要になったとしても、豚や牛の糞尿が混じる畑川ダムではなく、他に方法はあります。下山水源は3億円の事業費で、畑川ダムの3分の2、2925トンの水源を確保しているではありませんか。20倍以上、77億円もかける畑川ダム建設は中止し、代替案を含めて再検討すべきです。

【知事】公共事業のあり方については、知事就任直後から全面的な見直しに着手し、昨年、南丹ダムの事業中止を決め、また、丹後エコパークの大幅な見直しを行い、木津川右岸運動公園についても、現在、見直しに着手しているところである。こうした見直しをふまえ、見直すべきものは見直す、必要な事業は推進していく、ということで進んでいきたい。

畑川ダムについては、先日の公共事業再評価審査委員会において、利水及び治水から見た事業の必要性や事業費が増加した経緯などについて、利水者でもある丹波・瑞穂両町長からも現地の説明を行ってもらいまして、事業費の変更やダムの必要性について審議いただいた。ダム事業については、事業規模や地質の影響性も大きいことから、安全対策や環境にとくに万全を期す必要がありますが、今回まさに、安全の問題で検討に時間を要してしまったわけでして、実際、調査を重ね、十分な検討をして、それを私どもから公表し、議会にもその旨をお話した上で、再評価委員会にかけておりますので、ご指摘の点はあたらないのではないかと考えております。

畑川ダムにかかわる利水計画についても、現在1日あたりの7180トンの給水実績がありますし、これは、再評価審査委員会は公開されておりますので、梅木議員も傍聴していただければ資料もすべて手に入りますし、見ていただけると思うのですが、ここでどういう議論があったかと申しますと、「人口増を見込まず」として大体12700トンくらいの需要が地元から出てきていると。それを精査して、大体11700トンくらいは、確かにかなり需要があると考えられると。その上で、両町の将来を見込んでいるのが15300トンくらいですけれども、大体11700トンと15000トンとの間くらいに需要が出てくるのではないかということを受けて、再評価審査委員会も決定を出しているわけでして、そういった中で、私どもも事業にあたってきたと考えています。

 

【梅木再質問】知事は「地元からの要望だ」とおっしゃってきましたが、まさに問題は、地元の水需要予測が適切かどうかということです。公共事業再評価審査委員会の資料を、私は、翌々日、河川課の方を通じていただきました。実際、傍聴して見たとしても、結果はそこで決まっているわけでしょう。ですから、府民的な議論をと言っているわけですが、それはさておいて、水需要予測についてどうなのかと聞いているのです。水道事業組合では、人口が今、1万3千人台に落ちていますが、当時、1万4千人から2万2千人に増える、そのために2600余トンが必要だと言っているわけです。知事は、人口が1・5倍に増えると考えておられるのかどうか、これが妥当かどうか。これが第1点です。2つ目は、既存の事業所が給水量の要望として4725トンあるというのです。地元の町議会で、丹波町でも瑞穂町で聞いても、その根拠を具体的に示すことはできない。本当に、4725トンも既存の事業所等から必要なのか、畑川ダムの5000トンに匹敵するものです。この4725トンのために、畑川ダムの5000トンが必要というのなら、142000万円を地元の住民に負担させることは、妥当なのかどうか。これが3つ目です。4つ目に、食品関係の工場が多いところに、畑川ダムの水を確保する。先ほども言いましたが、これが本当に食品関係の工場に適した水なのか。他に水源を求めるべきであると言っているのです。この点について、どう考えるのか。げんに、牛や豚の糞尿が混じるということで、そういう声が出ているのです。最後に、この水需要予測を京都府のどの部局がチェックしたのかをお聞かせください。これを見て、河川課に行きました。「これはおかしいのではないか。4725トンも増えると思いますか」と聞いても、河川課は「ダムをつくれということですから、つくるのが仕事です」「水需要予測をチェックするのは私どもの仕事ではありません」といいました。「それなら、どこなのか」と、保健福祉部の水道係がある生活衛生課に行きましたら、「平成9年度、事業計画をたてるときに、この事業計画が正しいかどうかチェックしました。4725トンが必要か。人口が1・5倍に増えるかどうかということを今の時点で点検する任にはありません」と答えました。それでは、誰がその当時、チェックしたのか。南丹ダムの時に、「南丹ダムが必要だ」と知事が言っていたときには、「地元の要望です」といい続け、「南丹ダムが必要でなくなった。地元がいらなくなったからだ」といったのと同じではありませんか。どこがチェックしているのか。これをしっかり答えてください。

【知事】人口増についてですが、これは、再評価審査委員会でも議論になっておりまして、人口増を見込まずに12700トンだと。人口増を見込んだ場合には、15297トンだという話をしている。そういった中での需要として、すでにあるのだということを考えているところです。あそこの水源は、地下水と一体のものが多く、非常に不安定であるということから、今の断水が起こっている。私は、そういった安心・安全というものをきっちりとやっていかなければならない。いつまで丹波のみなさんが、水不足におびえるような日々を続けるのか。それは、やはり行政を担うものとして百年のもとで将来を考えていかなければならないと思っている。まさに工業団地の造成についても、丹波・瑞穂がアンケートをとりながらやっている中で、再評価審査委員会の中でも、工業団地造成者からの要望については、「これは除いたほうがよい」という検討を経て、その中で、11747トンについて、確実な需要と考えられるというような見解を出しているのであります。私どもは、土木部・保健福祉部を通じて、全体として、水道の話もまず、消費者である瑞穂・丹波の両町から話を聞いて、その中でチェックをしてきているわけです。酪農家の方の問題について、私はちょっと言いすぎではないかと思います。それは、きちんと対応して、きれいな水が確保できるようにするのは、私どもの努めでありますが、酪農だから何とかという話は、ちょっと私は、少し表現として首をかしげざるを得ません。

 

破たんずみのリゾート建設でなく、丹後のよさを生かす観光振興を

 

【梅木】2番目は、丹後リゾート公園です。全国で破綻したリゾート計画の京都版の中核施設として計画されたリゾート公園計画ですが、ホテルの進出等は夢と消え、計画は縮小され、今回「丹後海と星のみえる丘公園」と名前を変えた計画が出されました。事業費も圧縮した計画の150億円からさらに半分以下に縮小するとのことですが、75億円かけて今緊急に必要な施設でしょうか。

すでに用地費等24億円を投入し、あとに戻れないということなのでしょうか。丹後あじわいの郷も、初年度こそ35万人の入場ですが、昨年、一昨年と14万人台に落ち込み、府と地元の弥栄町の負担が年間数千万円に膨らんでいます。リゾート公園もオープンすれば維持管理費として、新たに府民の負担が増えるのではないでしょうか。この際、中止凍結すべきです。

自然環境学習型、体験型の観光誘致というならば、天の橋立と阿蘇海、宮津湾から伊根の舟屋、カマヤ海岸から袖志の棚田、琴引浜、小天橋へと今ある丹後の自然と歴史をいかしてこそ丹後全体の観光振興、発展につながるのではないでしょうか。

そのために、今必要なことは、たとえば伊根バイパス、府中バイパスや蒲入トンネルなどの一日も早い完成、修学旅行生も宿泊できる施設として白南風荘の再建です。地域に今ある財産を生かし、地域の人々の暮らしを支える「内発的な開発」こそ求められています。

【知事】昨年、当初の計画を大幅に見直して、丹後のよさを生かし、可能なかぎり、その可能性を広げ地域の発展をはかるとともに、府民、とくに子どもたちが丹後の自然の中で夢をふくらませることのできる施設として整備していきたいと考えている。維持管理についても、公の施設の管理制度として新しく導入された指定管理者制度も視野において、NPOなど民間が府民と一体となった運営ができるような公園づくりをしていきたい。丹後エコパークには、子どもたちが自然の中で遊びながら、環境の大切さを学ぶことができる「子どもの自然の森」や府民が自然と一緒になって公園づくりをすすめる「共生の森」などを核として、セミナーハウスや宿泊施設も整備することにしており、まさに修学旅行の生徒さんが公園で宿泊して環境学習を行うことも可能にしていきたいと考えている。太鼓山風力発電や弥栄町を中心にすすめられた新エネルギーの実証実験「京都エネルギープロジェクト」、さらには、天橋立や伊根の舟屋、丹後あじわいの郷など、丹後の数多くの魅力的な観光資源を伊根バイパスの整備と結びつけてルート化することにより、相乗効果が発揮できるものにしていきたい。

 

公共事業再評価審査委員会を改善し、府民参画の向上を

 

【梅木】3番目は、木津川右岸運動公園です。これまでの用地買収に56億円、残り24%の用地買収に、現在砂利採取をおこなっている企業のプラントの移転補償費などで50億円近い買収費が必要だと聞いております。現在整備計画検討委員会で検討されていますが、未買収地の買収を前提に議論がすすめられているようです。財政難というならば、50億円かけての用地買収は凍結し、当面はすでに買収した地域での公園計画として検討すべきです。

これらの公共事業については、公共事業再評価審査委員会が審査するシステムになっていますが、畑川ダム計画についても、結局は「継続は妥当」との結論です。

先ほど指摘したように水需要予測の適否、他に代替案がないのかなど疑問は残っています。私たち議員も、審査後にしか資料を見ることができませんでした。再評価審査委員会の結論を府民に押し付けるのではなく、再評価は、資料を全面的に公開し、府民的な議論で行うべきです。それでこそ「住民発・住民参画・住民協働」と言えるのではありませんか。知事の答弁を求めます。

【知事】本年5月に、有識者等による検討委員会を設置し、地元にも入っていただき、最近の社会経済情勢や交通事情もふまえた形で、また、広域的な防災や城陽市において問題となっている山砂利採取跡地をどうやって再生していくのかという観点から、公園像について議論していただいている。用地取得は、今年度ですでに8割をこえるものとなるが、検討委員会では、荒廃している山砂利採取跡地の復元・再生をはかるべきとの強い意見があり、将来の山砂利採取跡地全体の再生も視野に入れることが必要である。はたして、騒音や砂ぼこりを発する山砂利採取跡地を公園の中に残すことがいいのかということも含め、議論していきたい。当面は、その検討をすすめながら、南側の施設整備を先行していきたい。

再評価審査委員会については、対象事業と意見募集をホームページに掲載し、さらに一般傍聴の案内も行っているし、委員会は全面公開で、傍聴者には委員とおなじ資料を配布しており、委員会の審議内容についてはホームページで公表することとしているので、ぜひとも、ご覧になっていただきたい。

 

1日も早い舞鶴の高潮問題の解決を

 

【梅木】次に、舞鶴の高潮問題について質問します。今年8月23日の京都新聞の夕刊で、大きく報道されましたが、舞鶴では、1998年9月の台風7号で337戸が床上浸水したのを筆頭に、毎年20〜30回も床下浸水、道路の冠水など高潮被害の常習地帯となっています。

私は、この夏、高潮の時、何回か舞鶴に出かけて、現地を調査しました。私が子どものころ、岡山の実家でも、海水が側溝を逆流し、床下浸水の被害を受けた経験がありますが、とっくの昔に改善されています。舞鶴の実態をみて、40年前の私の実家と同じ状態であることに驚きました。

舞鶴市魚屋では、海水が河川と側溝を逆流し、床下と土間が海の状態の中で、飛び石のように置いたブロックの上でお年寄り夫婦のお話をお伺いしました。宅地をかさ上げしようにも、「お金がない」とのことです。湿気が多く健康によいわけがありません。

また、吉原では宅地はかさ上げしたものの、府道が冠水し、通過する自動車がはねる水で、窓ガラスが割れる、床下に海水が入る、玄関がさびるなど苦労されていました。「海水だから始末が悪い」と嘆いておられました。ここ数年は、特に被害がひどくなっているとのことです。

 舞鶴市は、「沿道のかさ上げができたところから、市道や府道のかさ上げしている」とのことですが、「沿道の宅地のかさ上げをまって」という姿勢では、魚屋のお年より夫婦のように「お金がない」場合、改善されないまま残されます。

被害の大半は、海水が側溝を逆流することによるものですから、まず第一の対策は、排水溝を逆流しないように「フラップゲート=逆流を防止する弁」をつけ、雨水・排水は何箇所かポンプを設置して強制排水することです。また河川の護岸のかさ上げが必要なところもあります。この対策を、直ちに行政の責任でおこなうべきです。

宅地のかさ上げについては、住宅改良資金融資制度がありますが、舞鶴市の融資実績はわずか1件です。本年8月に、府の融資制度が改善されましたが、舞鶴市の融資だけでは改善はすすみません。補助制度が必要です。静岡県三ヶ日町など、高潮対策の補助制度をもうけている自治体があります。舞鶴市と協議して、補助制度をつくらなければさらに先延ばしになります。

何百億円とかかる和田埠頭には熱心だが、高潮問題には知らん顔、こう言いたくなるではありませんか。他府県ではとっくに解決済みの問題です。解決に向けて、京都府が前に出る必要があります。知事の決意をお聞かせください。

【知事】港湾に近接した市街地において、通常は排水溝を通じて流出している排水や海水が高潮により限られた一部の低地にある家屋の床下や道路に逆流し、被害が生じているもの。逆流防止弁、排水ポンプの設置なども一つの方策ですが、その方策では対象範囲が広まり、大変莫大な費用となりますので、まちづくりの主体である舞鶴市において、効果的かつ経済的な方法として、個別住宅がかさ上げされた後に、道路のかさ上げをするとの方針により対応されてきた。その結果、宅地のかさ上げがすすみ、過去7年間に、西地区で約1・4キロ、東地区で約3・7キロの道路かさ上げが行われるなど、順次、成果が上がってきている。

 住宅の浸水対策に対する支援については、本年8月に、府の住宅改良資金融資制度を改定して、宅地のかさ上げや排水ポンプの設置等の浸水対策についても、舞鶴市が実施している融資制度と協調して、もっとも低利な融資制度をもうけたところ。

 

【梅木再質問・要望】私は、これだけ遅れてきているのに、舞鶴市でいろいろやっているのだろうけれども、府が一緒に考えて、国の補助制度をどう使えるのか。補助制度がなかったら、こういう補助制度が必要だということを国に働きかける。現実に改善していくために、どう、府と市が協力していくのか努力をしてくださいと言っているので、ぜひとも、その点はしっかりと汲み取っていただきたいと思います。

 

市町村合併の強制でなく、自治の充実、「自立」への支援を

 

【梅木】次に、市町村合併と小規模自治体への支援についてうかがいます。

地方制度調査会は先の答申で、現行の合併特例法後も新しい法律で市町村合併を促進すること、新法では財政支援措置をとらず、都道府県が「人口一万人未満」を目安に小規模市町村を合併させる「構想」をつくり、知事が「合併協議会の設置」や「合併の勧告」を行う、としています。まさに、小規模市町村への合併強制です。

全国町村会も全国町村議長会も「小規模町村つぶし」と強く批判しています。議長会会長である園部町の中川議長は「町村あってこその日本だという誇りを持ち、町村の自治を無視する動きには組織を上げてたたかう」と宣言されました。

知事は、これまでから「合併は、自主的におこなわれるべきもの」と答弁されてきましたが、「小規模町村つぶし」「地方自治の否定」だとは思われませんか、多くの知事が、反対の意見を表明しています。知事の明快な見解を、お示しください。

9月27〜28日、全国145の市町村からの参加で、第2回「小さくても輝く自治体フォーラム」が長野県で開かれました。合併でなく、小規模町村が生き残る道を探ろうという自治体が全国にひろがっています。

その一つとして注目されているのが、長野県の栄村です。面積は270平方キロでほぼ福知山市と同じですが、人口は約2600人、3mを越す豪雪地帯の山村で高齢化率は41%です。この栄村の事業として有名なのが「田直し事業」です。国規格のほ場整備事業は10アール当たり200万円が基準になっていますが、栄村では補助を受けず40万円以下で「田直し事業」を実施しました。農家の負担は半分の20万円で、無利子の融資を受けて、毎年10アールあたり取れる8俵から10俵の米から、2俵分を返済にあて5年間で償還しています。農家の負担は軽くて済みますし、工事はすべて村の建設会社と村の人がおこないます。

下水道の整備も、除雪車が進入できる道路整備も同様に、国基準ではなく、地域基準で村人の手でおこなっています。

また、介護保険料が下がった村としても栄村は注目されています。介護を必要としない高齢者の健康づくりと、村民ヘルパーによる24時間在宅介護体制の充実で、介護費用がおさえられているからです。まさに、住民発・住民参画・住民協働の行政システムがあり、地域のお金を地域でまわす「地域循環型経済」が貫かれています。

京都大学の岡田教授は、「栄村の村づくりは、小規模自治体だからこそ地方自治の充実と持続的な地域発展が『効率的』に実現しうることを証明している」と評価しておられます。

長野県では、小規模自治体を支援するために、栄村など4町の職員と県職員とのプロジェクトチームを設置し、小さな市町村が「自立」していくための方策を研究しています。現下の財政事情に左右されるのではなく、真の「ふるさと自治」をめざす研究報告書を作り上げ、町ごとの自律プランを詳細に検討しています。この研究をもとに、小規模自治体では対応困難な専門的業務への職員派遣や過疎地域の集落活動を支援する「集落創生交付金」制度の創設など支援策を具体化しています。

知事は9月議会で「合併の有無にかかわらず、市町村を支援してきた」と答弁されましたが、どの町にどんな支援をしてこられたのか、今後どう支援するのか、具体的にお答えください。

【知事】地方制度調査会の答申についてですが、私は、舞鶴市よりも前に出るべきだとか、補助、補助というその共産党の今のお考えは、大変、中央集権的な考えだと思いまして、こうした面では、まさに地方自治の否定につながるようなお考えではないかなという風に考えているところですけれども、この答申では、平成17年4月以降の一定期間、さらに自主的な合併を促すための方途として、都道府県が合併の構想を策定し、その構想に基づいて勧告や斡旋等を行うことが示されたところですが、実際問題として、今でも自治法の中に計画に基づく合併勧告という制度がありまして、単にバリエーションを少し増やそうということなのかなという風に受け止めております。ですから、そういった制度の問題ということではなくて、どんな場合でも私は、都道府県が市町村の意向を踏まえないような合併の構想を策定して、勧告や斡旋等を行っても、うまくいくはずがないと考えています。ですから、都道府県がこれから考えるにあたっても、もちろん市町村の自主的とりくみを支援するべきものであって、そういった点から、私は今でも、京都府の場合には首尾一貫して、合併の支援の構想、そして、合併重点地域の支援から何から、町村会、市長会と連携してやってきたわけです。そういったことは、これからも貫いていきたいと思っています。

また、人口の問題ですが、私は、とくに人口にこだわる必要はないと考えており、問題は、これからの市町村として、人口規模をどういう形でメリット・デメリットとして加えるのかということで、そういう中から、住民の方々がどういう選択をしていくのかということだと思っています。小さいから支援するとか、小さくないから支援しないという問題ではなくて、支援という話になりますと、例えば、過疎化や高齢化、財政状況など各市町村が抱える個々の実情に応じて、この中で、効率的な立場から、都道府県はいかなる調整をしていくべきかという形から支援していくべきであり、こういう観点から京都府では、単独事業から医療補助にいたるまで、例えば財政力に応じるとか、そういったことについての補助を行っていますし、道路整備などについても、過疎代行等の中で、きちっと支援しております。また、市町村との人事交流等を通じまして人的支援を行うなど、きめ細かな支援にとりくんできた。

今後、地方振興局については、再編により、さらに地方機関に多くの権限を委譲する中で、現地で多くのことが解決できる仕組みづくりを行い、きめ細かな市町村支援を講じていきたいと考えています。

 

確かな実績の広がる住宅改修助成制度の創設を

 

【梅木】次に不況にあえぐ地元建設業者への支援について質問します。不況が長期化する中で、建設業関係者は仕事がない、あっても労賃をたたかれる、と本当に大変な状況に追い込まれています。この不況対策として住宅改修助成制度の創設を繰り返し求めてきました。「地元の業者への発注」を条件としたこの制度は、地域循環型経済の不況対策として、網野町・京田辺市・加悦町で実施されています。

網野町では、昨年度71件、628万円の補助で1億4400万円の工事が町内の業者に発注されました。今年度は現在までに、すでに昨年度を上回って101件、891万円の補助で1億5800万円の工事が決定しています。京田辺市では昨年度122件、1062万円の補助で2億1300万円の実績ですが、今年度も現在までに134件の助成が決定し、昨年度実績を上回っています。今年度から実施した加悦町では現在までに94件、1046万円の補助で1億9716万円、およそ2億円の仕事が起こっています。いずれも補助金のおよそ20倍の仕事が、地元の業者に発注されているのです。

さらに地元の商店にも波及することから、地元経済に即効性のある不況対策として喜ばれています。知事は「8月から融資制度を充実した」と答弁されていますが、「地元業者への発注」を条件に、「融資」ではなく「補助」をすることが、重要なのです。

府内で進みつつある下水道工事の宅地内工事への補助、耐震補強工事への補助、バリアフリー化への補助など住民に歓迎されるものです。京都市とも協力して、直ちに実施するよう、あらためて要求します。いかがですか。

【知事】各市町村においては、それぞれの地域における経済事情や財政状況をふまえて、様々な不況・雇用対策に取り組まれている。これが、地方自治だ。この制度について、府としては、総合的な雇用・不況対策を今年も全面的に講じており、その中で、府営住宅ストック総合活用事業などに取り組んでいる。こうした施策が、市町村の施策とあいまって、府内中小企業の仕事確保につながるよう努めている。

 

「公契約条例」で、建設現場労働者の賃金保障を

 

【梅木】地元業者への発注を増やすために、公共事業を生活密着型、福祉型に転換することを提案してきましたが、生活関連公共事業の予算が組まれるようになりました。ところが、請負金額や労賃がたたかれて、その主旨が十分いかされていないという状況になっています。

私の知人の話では、「府営住宅の塗装の仕事を、以前は70万円で請け負っていたが、今は50万円に値切られる。大阪の業者は日当5〜6千円で若い子を雇って入ってくる。競争にならない。」とのことです。日当6千円では25日働いたとしても月15万円の収入です。これで熟練労働者が、子どもや家族を養うことができるでしょうか。公共事業の質を保つためにも、適正な賃金が労働者に保障されなければなりません。

府発注の公共事業で、末端の労働者に支払われている賃金はいくらか、京都府として、実態調査をおこなうよう求めます。答弁をお願いします。府職員が、建設現場に出向いて、そこに働く労働者の賃金を聞いて調査してください。それだけでも、事態は変化します。

労働者の賃金を確保するために「公契約条例」すなわち「公共事業における賃金等確保条例」の制定を求める運動が広がっています。

企業で働く多くの労働者は、「就業規則」「労働協約」で、最低限の賃金と労働条件が守られる仕組みがあります。ところが、建設業の場合、何層にも重なった下請け構造などが原因で他の産業では考えられない状況が続いています。建設労働者の生活と公共事業の質を保つために「公契約条例」の制定について検討すべきと考えますが、知事の考えをお聞かせください。

【知事】深刻なデフレ経済の中で、企業間の競争が激化しており、現場の労働者の方々にはきびしい状況があるが、賃金問題は、本来、労働関係法令により対応すべき問題であり、その上で、府としては、現場における品質確保のための施工体系の設計の取組みとあわせ、下請け不払いや賃金不払い等の相談など、それを補う対応に努めている。府としては、今後とも、府内中小建設業者の受注機会が確保されるよう、最大限、努力していきたい。

 

過密労働の解消で雇用の拡大を

 

【梅木】次に、過密労働の解消と雇用拡大についてうかがいます。

11月22日、過労死弁護団全国会議が全国9都道府県で実施した「残業・過労死110番」に、1日で304件、深刻な相談が相次いだとのことです。長時間・過蜜労働の実態はいよいよ深刻になっています。

総務省の「労働力調査」でも、過労死する危険性が高い年間労働時間が3000時間に達する層は30代の男性では、ほぼ4人に一人の割合になっています。ドイツやフランスでは、およそ1500時間ですから、大変な働かされようです。こうした実態を反映して、仕事上の過労が原因でうつ病などの精神障害を発症し労災に請求した件数が、今年度上半期は昨年同期を4割近く上回っています。

労働者の命と健康を守ることはもちろん、人間らしい家庭生活を取り戻すことは、子供たちの健やかな成長の上でも解決されなければならない課題です。同時に、長時間・過密労働を解消することによって、雇用が拡大します。

第一生命経済研究所の試算では、サービス残業をなくすだけで161万人の雇用が生まれます。また、日本の労働者の有給休暇取得率は昨年度48・4%で過去最悪になっていますが、政府機関の調査でも有給休暇を完全に取得すれば、雇用効果は148万人です。失業問題を解決し、雇用を拡大させるためには企業が社会的な責任を果たすことが求められています。この観点から、府として、府内企業の残業実態や有給休暇の取得状況などの調査を求めてきましたが、答弁は「権限を有する労働基準監督署において調査、勧告がなされている」との繰り返しで、まったく残念です。

権限の問題に逃げるのではなく、府民のくらしと健康を守り、子供たちの家庭教育環境を改善させつつ、雇用を拡大させるこのために府ができることを研究すべきです。権限を有する労働基準督署や国に働きかけること、また府内企業に実態調査の協力を求めることはできます。「できること」から発想するとおっしゃる知事の答弁をお願いします。

【知事】京都府は従来から、労働経済事情を把握するための基礎資料とするため、労働時間制度や休暇取得状況について調査を計画的に実施してきた。この結果により、労使関係者等にたいし、法制度にかかる周知・啓発を行ってきた。また、所定外労働時間の実態について、国において抽出調査により啓発しているが、サービス残業については、法令に違反する行為であり、その任にあたる労働基準監督署が適正に処理されるよう要請している。この問題については、事の良し悪しは別にして、役割分担が明確であり、府としては、京都労働局と連携し、各種セミナーや労働ニュース等により、労働時間にかかる法制度の事業主への周知・啓発等につとめてきた。今後とも、府内企業への働きかけを強めていきたい。

 

 

常用雇用促進のため、ハローワークに「コーディネーター」配置を

 

 

【梅木】次に、常用雇用の拡大についてうかがいます。中小企業に職業訓練を委託し、委託先での常用雇用につなげる「委託職業訓練事業」が国の制度としてあります。昨年度全国実績をみますと、長野県が全国一で、受講者272人、全国の受講者の67%を占めています。また、国が実施している30歳未満を対象とした「雇用トライアル事業」に加えて、30歳以上を対象にした「長野雇用トライアル事業」を県独自に実施し、常用雇用の拡大に力を入れ、実績を上げています。

これらの事業が有効に働く上で、県独自の「職業能力開発コーディネーター」が大きな役割を果たしています。長野県内14のハローワーク全てに経験のある「コーディネーター」を県の費用で配置し、求職者と企業の橋渡し役を行い、高校生や若年者の就業斡旋でも活躍しています。

本府の「雇用創出・就業支援事業」での雇用実績、1万4千人に占める6ヶ月以上の常用雇用者は、パート・アルバイトを含めて2300人程度にとどまっています。仕事づくり、斡旋は、人と人、人と組織を結びつけるデリケートなものです。企業の求める人材、求職者の希望、能力をつかみ、国の雇用促進のための制度を有効に活用し、必要な場合府の制度もつくる、現地現場主義を実践できるコーディネーターを、京都でも全てのハローワークや「若年者就業支援センター」などに配置してはいかがでしょうか。知事の考えをお聞かせください。

【知事】限られた人員・予算を有効に活用し、きびしい雇用情勢に適切に対応していくためには、全国統一的に職業紹介や相談などを実施するハローワークに対し、府は、若年者等の求職者や地域の実情に即したきめ細かな相談や助言を行うという役割分担を明確にする中で連携して相互に補完しあうような形で就業支援を効果的にできたらと考えている。こうした観点から、府においては、独自に府北部の地方振興局にUターンアドバイザー5名を、また、高等技術専門学校に専門就職指導員8名を配置し、きめ細かな雇用対策を進めている。また、とくに厳しい雇用情勢にある若年者に対応するため、本年8月に、全国に先駆けて「若年者就業支援センター」を開設し、キャリアカウンセラーを配置して、ハローワークや「私のしごと館」とも十分に連携して、就職者の適性に応じた仕事探しや相談を実施している。すでに、50人をこえる就職内定者が出ている。これから、職業安定法の改定にともない、来年度からは地方自治体においても一定の分野で職業紹介の実施ができるので、こうしたことをふまえ、「若年者就業支援センター」において、相談から職業紹介まで一貫して行うワンストップサービスの実施や北部の巡回相談について、検討しているところ。こういう試みを通じて、これからも、厳しい雇用情勢の中で、ハローワークや「私のしごと館」とも十分に連携しながら、効果的な就業支援につとめ、常時雇用の拡大にいっそう努めていきたい。

 

サラ金に走らなくていいように、離職者支援資金の改善を

 

【梅木】次に、離職者支援資金について質問します。昨年6月の代表質問で制度の改善を求め、年末には連帯保証人の要件緩和や返済期間が5年から7年になるなど若干改善されましたが、まだまだ課題があります。昨年制度ができてから、今年9月末までの貸出し実績は530件ですが、申し込みに来られたが制度が利用できなかったという方がおおよそ300人おられます。

その理由は、まず第1に連帯保証人がつくれないことです。失業し、生活費を借りるのですから保証人を探すのは大変です。第2に、離職2年以内の期間に限るという条件です。失業保険が切れ、貯金を崩して凌いで来たが仕事がない、借りようと思ったら失業から2年が過ぎていた、という例です。第3に金利が3%と高いことです。満額240万円借りた場合、7年返済で25万5千円の利子、返済額は無利息の場合に比べて月3千円増え、3万2千円近くの返済になります。また、自営業者は、完全に廃業していなければ利用できないという問題もあります。

離職者支援資金を借りられなければ、ヤミ金、サラ金にということになってしまいます。連帯保証人を不要とすること、せめて家族保証を認めること、離職2年以内の制限をなくすこと、修学資金や生活福祉資金と同様に金利をゼロにすること。また、自営業者も利用し易い制度へと改善するよう、国に強く求めるべきではありませんか。また、府独自に利子補給を実施すべきです。答弁をお願いします。

【知事】府としては、制度当初から、国に対し貸付条件の緩和について要望を行い、平成14年12月から、本府等からの要望もふまえ、償還期間の5年から7年への延長、連帯保証人を原則2名から1名にする等の条件緩和が行われ、多くの人に利用いただいている。その結果、貸付実績は、平成15年10月現在で561件、8億7800万円となっている。これは、全国トップレベルの状況にある。貸付条件のさらなる緩和について、失業者に対して無担保で最大240万円まで生活資金を貸し付ける本システムの趣旨をふまえながら、利率の見直しなど、必要な要望を行っていきたい。今後とも、社会福祉協議会や民生委員、関係機関と連携し、制度の周知につとめるとともに、失業された方に資金を活用していただき、再就職までの生活のお役に立てるよう努めていきたい。

 

本格的に少人数学級へ踏み出すべきとき

 

【梅木】最後に教育問題について質問します。今回の総選挙では、民主党も「政権公約」で4年以内に少なくとも小学校3年生以下のクラスはすべて30人以下学級にする、と宣言しました。また、少人数学級を求める運動が広がる中、全国で、少人数学級を実施する自治体が次々と増えていますが、大阪府でも来年度からの実施を検討しているとのことです。まさに、大きな世論と運動の広がりを反映したものであります。

わが党は、繰り返し、30人学級の実施を求めてきましたが、府教育委員会は、少人数学級よりも小学校1・2年生は複数の先生による指導の方が効果的であり、中学年・高学年では少人数授業の方が効果的であるとして、少人数学級に踏み出そうとしてきませんでした。

私は、少人数学級と複数指導や少人数授業を対立させて考えるのはおかしいのではないか、同時並行的に実施すればいいではないかと疑問を呈してきましたが、実際に山形県でも長野県でも同時並行的に実施しています。文部科学省も、来年度から加配教員の対象に、少人数授業だけでなく、少人数学級のための教員配置も対象とすることを明らかにしました。これを受けて、教育長は昨日「少人数学級も選択して実施できるよう検討している」と答弁されましたが、本格的に、少人数学級に踏み出すべきです。教育長の答弁をお願いします。

なんとも中途半端な昨日の答弁の裏には、「複数指導より少人数学級の方が、お金がかかる」という財政問題があります。少人数学級を実施する長野県では217学級で、およそ30億円の上積み、本府の複数指導は、1年生352学級でおよそ7億円の上積みです。

少人数学級に踏み出すには、知事の決断が必要です。知事の教育や子どもに対する意気込みの差が表に出てくるのです。本府では、マニフェストに30人学級を掲げる民主党も知事を支える側にあるのですが、少人数学級の実施について、知事の考えをあらためておうかがいします。

【知事】教育はわが国の存立基盤といえるものであり、最も重要な府政の課題と位置付け、専門家により「アクションプラン」を策定していただき、その検討結果をふまえ、今年度予算においても、ティームティーチングの本格的導入のために、その費用を思い切って投入した。基本的な考え方としては、一律にああしろ、こうしろというのではなく、できる限り学校現場の状況に即した柔軟な少人数教育が必要であると考えている。「学び教育推進プラン」の検討にあたっても、そうした考え方を基本に進めていただくよう、教育委員会に要請している。こうした中で、昨日、教育長から答弁があったように、少人数学級についても選択できるような検討を進めているところであり、今後、教育委員会の意見も十分に聞きながら、未来をになうたくましい人づくりに積極的にとりくんでまいりたい。

【教育長】昨日、家元議員の質問に答えたとおり、「学び教育推進プラン」において、義務教育9年間を見通して、学年の特性や児童・生徒の発達段階に則した効果的な指導方法や柔軟な指導体制により、一人ひとりをいっそう大切にした、きめ細かな指導のあり方について検討を行ってきたところである。

 その基本的な考え方としては、小学校低学年では、2人の先生による指導体制の充実、中・高学年では、興味・関心や理解の程度に応じた少人数授業の充実、中学校では、習熟度別の少人数授業のいっそうの推進、さらに、小学校中学年以上においては、少人数授業に加え、少人数学級などを組み合わせて、学校や児童・生徒の実態に応じたいっそう効果的な教育が行われるようにすることとしている。

このような考え方をもとに、少人数学級については、画一的に導入するのではなく、少人数授業に加え、少人数学級も選択して実施できるよう検討している。

 

傍聴者との懇談会、インターネットでの議事録公開など、
情報公開と府民参画を

 

【梅木】教育委員会の情報公開、府民参画のあり方について質問します。長野県では、今年度から教育委員会定例会を年数回県下の府立学校などで開催しています。傍聴は自由でかなりの人数が傍聴できるように配慮されており、会議後1時間程度、教育委員と傍聴者との懇談会が開かれています。また、毎定例会・臨時会の議事録はインターネットで見ることができます。本府においても、移動教育委員会や傍聴者との懇談会、議事録のインターネット公開をされてはいかがでしょうか。教育委員長の考えをお聞かせください。

知事は、「京都府行財政改革指針」で「住民発・住民参画・住民協働の行政システム」に転換していかなければならないと強調していますが、教育委員会においても例外ではないと思います。

長野県では、教員評価検討委員会の9人の委員のうち県教職員組合の委員長と県高等学校教職員組合の委員長の2人が入っています。委員会の議事録や配布資料はすべてインターネットで公開されています。また、県立稲荷山養護学校の改築に当たって、PTAや同窓会、親の会や運動団体の代表も参加する校舎改築研究会を開いて検討しています。そして、研究会の内容は、インターネットで、議事録はもちろん、速報として会議の録音が「音声議事録」として県民に公開されています。

本府の場合、舞鶴の養護学校の建設にあたって、保護者や先生方から、市の中心部での建設や機能強化について要望が出されましたが、要望が聞き入れられたでしょうか。議論される機会さえありませんでした。南部に養護学校を開設する方向が示されていますが、保護者や教職員の意見をしっかり聞くべきです。意見が異なる府民や団体代表を含め、多様な府民の参加で、議論は活発化し、府民の関心も高まるのではないでしょうか。「住民発・住民参画・住民協働の行政システム」への転換について、教育委員会はどう取り組まれる方針か、教育委員長の答弁を求め、私の質問を終わります。

【教育委員長】京都府教育委員会では、法律で公開が義務づけられる以前から、会議の公開を行ってきた。会議開催にあたっては、ホームページに開催日時を掲載し、広く府民に知らせている。ほとんど毎回、傍聴者があり、開催の周知は徹底していると考えている。委員会の会議は、人事案件など公開できないものを除き、すべて公開している。会議録は、求めに応じて開示している。各都道府県では、いろいろ工夫して、住民意見の反映に努めており、府教育委員会では、できる限り、地域や学校などを訪問して現場の様子を見たり、関係者と意見交換を行うなどの方法により、府民の意見の反映に努めている。住民の参画については、これまでから各界代表の方々に審議会や検討会議などに参画していただき、保護者・教職員の意見についても、学校長や市町村教育委員会を通じて、聞かせていただいている。「学び教育推進プラン」などの策定にあたっては、「府民参画行動指針」をふまえ、パブリックコメントやアンケート調査などを実施している。これまでも広く、府民の意見をお聞きしながら、教育行政を進める方針で運営してきたし、これからも、府民の意見をよりよく反映するような教育行政を進めていきたい。

 

【梅木再質問・要望】今、インターネット時代で、知りたい情報をみなさんが見ていて比較されているわけです。ぜひとも、教育委員会として、知りたい府民の方に情報を提供していくということで、積極的に改善していただきたい。