2024年12月定例会一般質問(大要)│成宮まり子議員【京都市・西京区】
<主な質問テーマ>
●男女賃金格差の是正、非正規やケア労働者の賃上げについて
●本府における非正規職員の処遇改善と女性管理職割合の引上げについて
●男女賃金格差の是正、非正規やケア労働者の賃上げについて
●本府における非正規職員の処遇改善と女性管理職割合の引上げについて
●次の百年を展望した府立植物園のあり方について
●国民皆保険制度の今後について
12月2日に開会した京都府議会12月定例会は、6日に代表質問が行われ森よしはる議員が質疑に立ちました。
主な質問テーマ以下の通りです。質疑の大要は下記リンク(PDF)でご覧になれます。
○中小企業支援の財源を国に求め、本格的な賃上げの実現を
○あまりに乱暴な使用料・手数料の一斉引上げはやめるべき
○北陸新幹線延伸計画は中止・撤回を 知事は態度を明らかにせよ
○市民の意見も聞かない京都アリーナ計画強行は許されない
○不登校支援-子どもたちの声を聞ける学校づくり、フリースクール支援を
2024年11月15日
日本共産党京都府会議員団 団長 島田けい子
9月12日に開会した9月定例議会は、決算特別委員会、解散・総選挙をはさみ11月11日に閉会した。
今議会は、物価高や資材高騰、円安など、府民の暮らしと経済に深刻な影響が出ているもとで、裏金問題で国民の怒りに追い詰められた岸田首相が政権を投げ出し、その後、総理となった石破氏が、突然解散・総選挙を行い、その結果、自公過半数割れという歴史的大敗に追い込む中で開かれた。
わが党議員団は、自民党政治と西脇府政の行き詰まりを告発し、転換の必要性を浮き彫りにする立場から、自治と公共の再生を図るため、府民の暮らしの実態や要望、運動と連携し攻勢的な論戦を行った。
1、本議会に提案された議案17件のうち、第4号議案「建築基準法施行条例及び京都府福祉のまちづくり条例一部改正の件」、決算認定議案の第10号議案「令和5年度京都府一般会計及び特別会計歳入歳出決算を認定に付する件」、第12号議案「令和5年度京都府水道事業会計決算を認定に付する件」に反対し、他の議案に賛成した。
当初提案議案で反対した第4号議案は、国や府、宇治市など建築主事を有する公共団体について、建築基準法施行条例に基づき、京都府福祉のまちづくり条例の対象となる不特定多数の方が利用する一定規模以上の公共施設の建設などについて、建築主事が行うべき検査や審査を、民間の「指定確認検査機関」でもできるように変更するものである。これにより、公立学校や公立病院、公共庁舎などの公共施設が福祉のまちづくり条例の基準に見合っているのかどうかの審査や確認まで民間に門戸を開くことは、公共施設の安心安全への公の責任を後退させるものである。
当初提案議案のうち、第1号議案「令和6年度京都府一般会計補正予算(第2号)」には、6月議会に続き、大阪・関西万博に向けた準備としてイベントなどの予算が約1.9億円(債務負担行為含む)含まれている。その内容は、お茶の振興や小中高生の文化発表などのように必要な事業まで、大阪・関西万博の準備とすることで、万博以降はどうするのかが見通せないなど、本来行政の役割として求められるものとはかけ離れている。
また「植物園アートナイトウォーク事業費」4,500万円は、大阪・関西万博にかこつけて、府立植物園100周年記念事業として、観覧温室のライトアップ等、賑わい創出や呼び込み型のイベントのためのもので、極めて問題である。
2、決算特別委員会に付託された議案のうち、第10号議案「令和5年度京都府一般会計及び特別会計歳入歳出決算を認定に付する件」は反対した。
その理由の第一は、コロナ対策の教訓がいかされず、保健所・医療機関等の体制や機能強化、医療機関・介護事業所等への支援がされていないためである。
コロナ感染症5類移行後の死者数が1年間において全国で3万2576人にのぼるなど、引き続く厳しい事態があるにもかかわらず、検証や総括がまともに行われないままである。しかも、書面審査を通じ、医療機関の病床削減や在宅介護をはじめ介護の危機が他会派の委員からも指摘されたものの、解決にむけた取り組みはないままとなっている。
第二は、中小企業への賃上げのための直接支援に取り組んでいないためである。また、企業に開発・生産・流通を委ねるフードテック構想を推進する一方、小規模農家や新規就農者も含めた農林漁業者への支援や農業振興が後景に置かれているためである。
府内企業の倒産・廃業が23年度10年ぶりに300件を超え27.3%増、負債額5000万円未満の小規模倒産が全体の7割を占める一方、輸出大企業が利益を増やし、圧倒的多数を占める中小企業と一部大企業との格差が拡大していることが明らかになっているにもかかわらず、消費税減税やインボイス中止の声に応えず、産業リーディングゾーン加速化事業やスタートアップ企業への支援に重点が置かれている。その上、中小企業経営改革支援事業の予算額5億円に対し15億円規模の申請に追加補正や今年度予算でも対応しなかった。また、コメ不足と価格高騰に対する、農業者への本格的な所得補償・価格保障、飼料・肥料や農機具等の支援が必要であるにもかかわらず、まともに取り組まないままとなっている。
第三は、子育て支援の肝ともいえる経済的負担軽減が、昨年度策定された子育て環境日本一推進戦略や同推進条例には中心課題に位置付けられず、風土づくりに固執しているためである。
総括質疑、書面審査を通じ、子どもアンケート、パブリックコメントで要望として出されていた給食費無償化、学費・奨学金対策、賃上げなどの声に府として施策や姿勢がないことが明らかとなった。しかも、教員不足をはじめ厳しさを増す学校現場や子どもたちの困難を解決する方向が示されていないことは重大である。
第四は、北陸新幹線、北山エリア開発、京都アリーナ(仮称)、新名神高速道路、大阪・関西万博など住民や当事者の声を聞かずに進める一方、府立大学・府立医科大学病院はじめ必要な整備が先送りされ、府民の暮らしや地域を支える事業などに影響を与えるなど矛盾が拡大しているためである。
府債残高が46億円増え、2兆3652億円となり、1990年代の公共事業の府債の返済がピークを迎えるもとで、決算委員会現地調査で土砂災害警戒地域17000カ所に対し工事完了778カ所にとどまっており、さらに農林水産部所管の山地災害危険地区は、危険個所5072カ所に対し治山事業の着手は1768カ所にとどまっているなど、不要不急の開発より、府民の命と地域を守る対策の緊急性は明らかである。ましてや北陸新幹線延伸計画の推進の立場にあることは極めて重大である。
第五は、水道の広域化・民営化や消防指令の広域化、公務の民営化を強引にすすめ、公共の役割を後退させ、ゆがめているためである。
京都市も含む府南部の消防指令の広域化の計画では、人員削減が目的になっていることが明らかになった。また、長年にわたる職員削減と非正規雇用である会計年度任用職員を拡大してきたことの問題も書面審査を通じて浮き彫りとなった。また、府立勤労者福祉会館廃止に対する懸念が他会派からも出され、府税事務所の統廃合も含め、行政機構や公共施設の統廃合が行政サービスの後退につながり、その上、使用料・手数料の引き上げ計画が表明されたことは重大である。
第六は、自民党政治に、トップダウンの手法で追随し、国の出先機関のような府政運営をすすめ、くらしや地域の疲弊に向き合う府独自の役割を発揮していないためである。
ミサイル弾薬庫増設や司令部の地下化等自衛隊基地の強化、土地利用規制法等住民監視の動きがかなりの規模とスピードで、府民には事実上秘密裏にすすめられ、また書面審査では、能登地震災害をふまえ原発災害の避難対策の不備等が指摘されるなど、軍拡も原発再稼働もやめるべきである。
第12号議案「京都府水道事業会計決算を認定に付する件」については、受水市町との統廃合や民営化に道をつける水道事業の広域化をさらにすすめようとしており反対した。なお、第15号議案「令和5年度京都府流域下水道事業会計決算を認定に付する件」は、令和6年度に水道事業と一体で広域化・民営化の検討がすすめられており問題であることを指摘した。
3、党府議団がいっかんして取り組んできた、中小企業支援と一体の賃上げの課題について、府議団主催で9月16日に「いまこそ賃上げ!学習懇談会」を開催したところ、約200名の参加があり、この成果をふまえ、代表質問や一般質問、決算審議等で、中小企業への直接支援や賃上げについて論戦した。
中でも、今年の京都府最低賃金審議会の答申で、公労使が一致して「中小企業・小規模事業者を対象とした消費税の減免措置や社会保険料の事業主負担分の免除・軽減等、賃上げの原資の確保につながる直接的な支援策を行政として実施するよう、政府に対し強く要望する」「業務改善助成金について、要件緩和を行うこと」「最低賃金の地域間格差による労働力流出の防止」などが盛り込まれたことは非常に重要である。これは、2021年に京都府議会で「最低賃金の改善」「中小企業・個人事業主に対する直接的に負担を軽減する方策の推進」を盛り込み全会一致で可決した「コロナ禍で影響を受ける中小企業、個人事業主、働くひとたちへの経済対策・緊急支援対策を求める意見書」が大きな影響を与え、立場の違いを超えた中小企業直接支援と一体の賃上げの重要性が明らかとなった。
しかし、西脇知事は、代表質問の答弁で、「賃金引き上げに向けた環境整備を要望」しているとし「中小企業が利益を確保し、持続的に賃金の引き上げができる体力をつけていただくための支援を、重点的に行うことが効果的」と、中小企業への直接支援の具体化には背を向け続けている。引き続き、国や京都府に対し賃上げにつながる直接支援策の具体化を強く求めるものである。
4、現場に足を運び、調査し運動を起こし連携をすすめる取り組みの強化に力を尽くす中で、定例議会を迎えたことが大きな力となった。
党議員団は、9月定例会中の9月24日に補正予算や議案を踏まえた論戦等の報告を兼ねて、決算特別委員会で府民の皆さんからお聞きした実態や要望を踏まえた審議を行うための議会報告会を開催するとともに、11月7日には予算要求・議会報告懇談会を開き、改めて広く府民の皆さんからご意見をうかがう等、暮らしの実態と要求に寄り添う姿勢に徹して取り組んだ。そこで出された意見も踏まえて11月11日に、「2025年度京都府予算に関する申し入れ」を知事に提出した。
代表質問や一般質問の準備に際しても、8月から9月にかけて議員団あげて現場調査に入り、また開会日前日に全議員で府中北部調査を行い、10月31日に行われた府市民総行動に議員団あげて参加するなど、現場調査と運動との連携を意識的に取り組み議会論戦に大いに生かした。また議会中の10月3、4日に能登の洪水被害へのボランティアも団あげて取り組んだ。
こうした中、8月に調査を踏まえ府北部各議員団と連名で丹後広域振興局へ申し入れた「深刻なコメ不足と害虫被害対策」について、カメムシによる農業被害への支援を営農継続緊急支援事業として農薬や肥料の購入経費への補助が、一部既決予算から実施されることとなり大変喜ばれた。また、8月23日には京都府に対して「コメの不足・価格高騰に対する緊急対策を求める申し入れ」を行った。
また新日本婦人の会をはじめ、長年にわたる取り組みにより、「女子差別撤廃条約選択議定書の批准に向けた検討を求める意見書案」が、今年10月にジュネーブで開催された女性差別撤廃条約締結国会議で「日本報告審議」が8年ぶりに行われるというタイミングで全会一致で可決したことは非常に重要である。
また、自民党の代表質問に答える形で、唐突に「子育て支援医療費の拡充」を、府市トップミーティングを踏まえ進める方向を示した。これは長年にわたる運動とまた先の知事選挙や京都市長選挙などでの論戦により、変化を作り出したものであるが、時期や内容については一切明らかにされておらず、速やかな実施を強く求めるものである。
5、西脇知事の国いいなりぶりがますます明確になる議会となった。
北陸新幹線延伸計画について、地元負担がどうなるのか等説明を求める声に対し、「国土交通大臣の指示による説明を待ちたい」とまともに向き合わず、また「負担のあり方につきましては、社会経済情勢の変化や給付と負担のバランスなどを踏まえまして、一義的には国において検討されるべきもの」とし、コメ不足に対しても「次年度以降の需給と価格の安定化に向けた対策につなげるよう要望」すると答弁し、また大学の学費値上げに対しては「大学生に対する修学支援につきましては、基本的には、高等教育を所管する国におきまして財源を確保し、全国で統一的に行われるべき」「大学生が経済的な理由で学業をあきらめることがないよう、国に求めてまいります」、また保険証の廃止とマイナ保険証の実質義務化に対しては「京都府といたしましては、府民や医療現場などに混乱をきたさない形で制度移行することが望ましいと考えており、国民に対して丁寧な説明と対策を行い、理解を得ながら進めていただくよう、引き続き国に求めてまいりたい」など、国の姿勢を容認した上で、制度の解説と、国への要望ばかりの答弁が繰り返される傾向がいっそう強まっており、自治と公共の再生にむけた府民的運動とそれにもとづく論戦がいよいよ必要になっている。
6、本議会には、「長生園における不明朗な会計処理の解明を求めることに関する請願」「主食の米を増産し、安定供給することを国に求めることに関する請願」が提出された。しかし、他会派はまともな審議もせず、しかも請願者が趣旨説明を求めたにもかかわらず、それも正副委員長が拒否し、わが党以外のすべての会派が反対し簡単に否決したことは重大である。
また意見書案13件、決議案1件のうち、国民民主党・日本維新の会議員団提案の「北陸新幹線のルート検証を柔軟かつ積極的に行うことを求める意見書案」、自民党・公明党・府民クラブ3会派議員団提案の「自動運転移動サービス等の社会実装に向けた環境整備を求める意見書案」の2件に反対し、他の意見書案11件、決議案1件に賛成した。
今議会にあたり、府民的に最大の関心事である裏金問題について、党府議団が提案した「裏金問題の真相究明と企業団体献金禁止、統一協会と政治家の癒着根絶を求める意見書案」や、12月に迫った「健康保険証廃止の見直しを求める意見書案」等、わが会派提案の意見書・決議案には、他会派がすべて反対し否決した。
なお、「旧優生保護法による不妊手術の被害者救済を求める意見書案」について、旧優生保護法の下で不妊手術が強制された京都府内の被害者を支援する団体が9月28日に設立され、府内には被害者が500名以上おられると推定され府内で旧法の下、少なくとも152人が不妊手術を受けたとなっているものの、府内の認定数は18人であり、被害を受けられた方全員に対して救済されることを求めるもので、可決した意義は非常に大きいものである。
総選挙の結果、自民・公明の議席が過半数を割り込むという歴史的な節目に際し、わが党議員団は、金権腐敗政治の根絶、北陸新幹線延伸の中止など、国民のいのち暮らし守る政治の実現のために、多くの皆さんと力を尽くすとともに、深刻となる暮らしと地域経済の底上げを行う京都府の役割を発揮するよう、引き続き全力をあげるものである。
以上
●北陸新幹線延伸計画の中止について
●京都府立大学の施設整備について
●子育て支援のための経済的負担軽減について
質疑全文は以下の通りです。
「女子差別撤廃条約選択議定書の批准に向けた検討を求める意見書」・「旧優生保護法による不妊手術の被害者救済を求める意見書」を全会一致で採択!
京都府議会9月定例会は、10月3日の本会議で意見書案・決議案の討論・採決が行われ、党議員団を代表して田中ふじこ議員が提案された意見書案13件・決議案2件に対する討論を行いました。
新日本婦人の会をはじめ、さまざまなNGOや市民団体などが長年にわたり繰返し請願や陳情やなどで求めてきた「女性差別撤廃条約の選択議定書」の批准を求める意見書がついに府議会で採択されました。10月のジュネーブでの締約国会議に向けて弾みになるものです。
また、本年7月に「旧優生保護法」の違憲判決がだされ、9月28日には「旧優生保護法による被害者とともに歩む京都の会」が発足したもとで、京都府議会で「旧優生保護法による不妊手術の被害者救済を求める意見書」も全会一致で採択されました。
討論全文は以下の通りです
京都府議会9月定例会は、10月3日の本会議で補正予算など議案9件の討論・採決が行われ、党議員団を代表してばばこうへい議員が討論を行いました。
補正予算案には賛成したものの、異常な物価高、コメ不足、賃上げ対策など深刻な実態への対策が問われる中、国がどの問題でも十分な対策を示さないもとで、本来本府がその役割を果たさなければいけないが、そうした対策が不十分であることを指摘しました。
討論の全文は以下の通りです。
党府会議員団は9月24日「府立高校入学者選抜制度・高校改革制度の見直しにあたって」の見解を発表しました。
全文は以下のとおりです。
2024年9月24日
府立高校入学者選抜制度・高校改革制度の見直しにあたって(見解)
日本共産党京都府議会議員団
団長 島田けい子
9月18日、9月定例会府議会本会議で、前川教育長が、府内の公立高校の入学者選抜制度について、2027年度(令和9年度)入学から、前期選抜と中期選抜を一本化して2月中旬に実施する方針を正式表明した。教育長は、前回見直しである2004年度(平成26年度)入学者選抜から10年以上が経過し、中学生や保護者の学校選択のニーズが変化したとの理由を述べ、課題として、前期選抜と中期選抜ともに、同じ学校を志願している生徒が多く、同一校を二度受験することによる中学生の負担軽減を望む声があることや、「早くに合格を決めたい」という中学生や保護者が多くなっていることが進路選択に影響を及ぼしていること、選抜ごとで学科等によって募集割合が複数設定されており、複雑であることなどを挙げた。
これは、遅きに失したとは言え、府民や学校現場からの声に押され、見直しをせざるをえなくなったものである。
我が党議員団は、現行入試制度の問題点について繰り返し指摘してきた。1つは、「何回もチャレンジできる」をうたい文句にして改編した三段階選抜の結果、初年度から「前期」選抜不合格者が7112人、翌年は6436人など、合格者より不合格者がはるかに多い異常な入試制度になっていることである。また、保護者からは「前期選抜で不合格になった生徒が中期選抜で同じ高校を受験し合格するのなら、なぜ何回も選抜を行う必要があるのか」との疑問や批判の声があることである。さらに、前期で不合格の生徒は中期を受けることができるが、「もう落ちたくない」と出願辞退や受験辞退が相次ぎ、私学へ流れる生徒があることである。加えて、「だめで、もともと」と受験するが予想以上のショックを受けて不調をおこし家に引きこもってしまうなど、生徒に重い精神的負担を与えていることである。我が党議員団は、こうした実態を示し、15歳の思春期の子どもの心を傷つけ、振り落とすための入試制度、競争主義と自己責任を押し付ける入学選抜は、一刻も早く見直すことを求め続けてきた。
振り返って、京都の高校制度は、1985年に「高校三原則」が廃止され、普通科に「類・類型制度」を設置し、「通学圏制度」が設定されたが、進路を早い段階で固定化し差別・選別するなどの矛盾が、定員割れなどを引き起こし、2014年に、京都市・乙訓通学圏を最後に、すべての通学圏で「類・類型制度」が廃止に追い込まれた。その一方で、中高一貫校や難関大学を目指す普通科系専門学科などには、国の重点支援枠指定で一校に1000万円などの特別の予算を配分、教職員を多く配置するなどの教育格差を作って特別な高校づくりをすすめてきた。そのうえで、「行きたい学校を選べる」ことをうたい文句に通学圏を拡大し、全府から生徒を集められる普通科型専門学科では前期選抜で100%合格など、生徒獲得競争を生み、学校間格差を広げてきた。こうした高校序列化と通学圏の拡大により、遠距離と長時間通学による保護者負担も増大した。この間も、毎年、前期選抜で合格者とほぼ同数の不合格者(約5000人)をだし、その弊害として、中期選抜で、残り定員が少ない職業系専門学科を敬遠したり、公立の受験をやめて私学受験を決める、あるいは、交通の便が悪い高校を避ける生徒など、公立高校の「定員割れ」が起こる事態となっている。
府教育委員会が2023年に「魅力ある府立高校づくり推進基本計画」策定に際して、高校生に行ったアンケートでは「学校選択の理由」として「自宅に近く、通いやすい」、「部活ができる」などの回答が多く、これらを踏まえた学校配置が必要である。府立高校の格差と序列化、低年齢からの学力競争や進学実績を競う受験競争の激化は子どもたちの人格形成もゆがめるものであり、競争教育ではなく、「どの子も人間として豊かに成長、発達することができる」教育、「希望するすべての子どもたちに豊かな高校教育を保障する」という基本に立ち返った高校制度改革と一体に、入学者選抜制度の見直しを具体化するべきである。また、これまでの制度の総括と制度の具体的見直しにあっては、現場教職や保護者、生徒の声を丁寧に聞いて進めることが必要である。
以上