2023年6月定例会を終えて|団長談話
2023年6月定例会を終えて
2023年7月14日
日本共産党京都府会議員団
団 長 島田けい子
6月16日に開会した6月定例会が、7月5日閉会した。
6月定例会は、4月の統一地方選挙後、初めての定例議会であり、維新国民議員団が新たに結成され、自民党に次ぐ第二会派となり、どういった立ち位置をとるのかを含め、注目を集める議会となった。また、長引くコロナ禍や物価高による府民の暮らしや京都経済への影響をはじめ、格差の広がりとともに、国会最終盤の岸田政権の暴走と国民的反撃のせめぎあいの中、開かれた。
わが党議員団は、統一地方選挙で掲げた要求も含め、くらしの願いに寄り添い、実現するために攻勢的に論戦するとともに、根本的転換の必要性を浮き彫りにする論戦を行った。
1、本議会に提案された、議案12件のうち、第2号議案「京都府ふるさと応援寄附基金条例制定の件」第3号議案「職員の特殊勤務手当に関する条例一部改正の件」第6号議案「京都府府税条例及び京都府産業廃棄物税条例一部改正の件」の3議案に反対し、他の議案には人事案件も含め賛成した。
第2号議案「京都府ふるさと応援寄附基金条例制定の件」は、ふるさと納税を本格実施することに伴い、寄附金を積み立てる基金を作るためである。そもそも、ふるさと納税制度は、地方交付税の削減などにより地方自治体の財政が厳しくなる中、自治体に自治体間競争で補填をさせようというもので、自治体間で返礼品の競争が加熱し、一部の自治体では寄付が集中する一方で、多くの自治体では減収が発生するという異常事態となっている。今回、返礼品を市町村と連携して提供し、寄付金の一部を市町村に還元するという「市町村連携型」として、地域間格差の拡大が指摘されるふるさと納税制度を使うなど、本末転倒であり反対した。なお、第1号議案「令和5年度京都府一般会計補正予算(第2号)」のうち、ふるさと納税推進にかかる部分は同様の理由で反対した。
第3号議案「職員の特殊勤務手当に関する条例一部改正の件」は、新型コロナウイルス感染症が、感染症法上「2類相当」を「5類」へと引き下げられたことにより、宿泊療養施設等で感染者への対応業務にあたる府職員の特殊勤務手当を廃止するものである。令和元年以降14000件という支給実績がある重要な制度であるにもかかわらず、また感染状況は9波の入り口にあるとの専門家の指摘もありる中で、府として必要な対策を打つためにも維持することが必要であり、廃止に反対した。
第6号議案「京都府府税条例および京都府産業廃棄物税条例一部改正の件」の軽油引取税については、日豪円滑化協定に基づき、今後オーストラリア国防軍と自衛隊の共同演習などが行われる際に、輸入される軽油などへの課税が免除されるものである。また、自動車税の環境性能割の税率区分見直し部分については、コロナ禍などによる半導体不足を理由に、燃費基準達成度を12月末まで現行の低い基準のまま据え置くとともに、今後3年間で段階的に引き上げるというものである。しかし、環境性能割は既に対策も一般化しており、その役割はもっぱら大手自動車メーカーの販売支援であり、温暖化対策など課題解決が喫緊の問題となっている中で、本来の見直しを先延ばしにしてまで、業界の要望に応えようとするものであり反対した。
2、統一地方選挙で掲げた要求や、コロナ禍・物価高に苦しむ府民の実態と要求を取り上げるとともに、その実現を迫る中、補正予算や論戦を通じ、前進を勝ち取った部分もあった。
わが党がいっかんして求めてきた、中小零細事業者への直接支援策について、不十分ながら当初予算で20万円から80万円まで支援する「金融・経営一体型支援体制強化事業費」に申し込みが殺到したため、追加補正が計上された。また農林水産業、医療・社会福祉施設、公衆浴場や伝統産業などへの物価高騰対策も盛り込まれたが、引き続き、固定費や原材料費高騰分補填など、直接助成を実施させるため、力をつくす。
また「子どもの給食費臨時支援事業」として、1食あたり20円程度の値上げ回避の予算や子ども食堂等への支援策も計上されたが、いっそうの拡充が必要である。
代表質問をはじめ、大学の学費負担軽減・子どもの医療費助成拡充・学校給食無償化など、統一地方選挙でかかげた切実な要求にもとづく積極提案を行い、実現を迫った。
南丹みやま診療所の中村所長が退職されるにあたり、6月27日から住民の皆さんによる「常勤医師を確保してほしい」とする一カ月間にもわたる要請行動と連帯し、京都府の医師確保の責任や、コロナで宿泊施設でお亡くなりになった事例をふまえ、総括のための検証や保健所の再配置など、厳しく求めた。
なお、わが党以外の会派の代表・一般質問では、改定された第二期京都府総合計画の具体化や、文化庁移転に伴う観光施策、西脇知事がかかげる「子育て環境日本一」の取り組みなどが中心で、深刻な暮らしの願いを取り上げたのは実質わが党だけであった。そのうえ、自民党府議が、自らの代表質問の傍聴者を見送るため、代表質問中にもかかわらず議場を抜け出し、また別の自民党議員が、代表質問で学校現場で起こった個別問題をわざわざ取り上げ、解決を遠ざけることに手をかすような事態も起こり、自民党は陳謝を繰り返すという劣化ぶりも表面化した。
3、運動と結んだ論戦を通じ、開発最優先の行き詰まりと、大本の転換が必要であることが浮き彫りとなった。
代表質問で、わが党は消費税減税やインボイス中止とともに、中小企業支援と賃上げについて、府内上場企業で内部留保上位10社合計10兆8千億円(昨年度決算)と10年間で2倍近くに膨らんでいることを指摘し、価格転嫁できない実態を示し、中小企業の賃上げにむけた構造的転換を求めた。西脇知事はこれらの問題にまともに答えないばかりか、消費税について「全世代型の社会保障財源として必要」との答弁を繰り返した。
6月26日、7月1日と連続して京丹後市経ケ岬米軍レーダー基地関係者の事故が発生した。京丹後市議団と連携し事実を明らかにすること等、常任委員会でも追及するとともに、近畿中部防衛局から何一つ明らかにされないというアメリカ言いなりぶりが改めて浮き彫りとなり、党府議団として議会最終日に緊急申し入れを行った。
北陸新幹線延伸について、事業認可ができず実現が見通せない中、京都府副知事も参加する「北陸新幹線事業推進調査に関する連絡会議」が設置され、事業認可ができず行き詰まる中で、ルートや新駅、施工方法、土砂の受け入れ、地下水調査、道路・河川管理者との設計事前協議など、今年無理やり措置した調査費12億円を処理する論議が非公開で行われた。党府議団は、福井県への調査も踏まえ、北陸新幹線延伸の行き詰まりを府民的に明らかにする論戦を行った。
5月9日朝、天ヶ瀬ダム直下で宇治川右岸の道路の法面崩落等の事故が発生したが、そもそも宇治川に1500トン放流をする計画そのものが根本的に無理があるもので、その見直しを求めた。また、消防や水道などの広域化、圏域行政化、公務の民間開放など、住民不在で結論ありきのやり方も厳しく批判した。
府立大学内の一万人規模のアリーナ建設計画は、学生と座長が論議して作り上げてきた学生用体育館案に、広く共感が寄せられる中、自民党議員から「府立大学内の共同体育館計画は、なかなか進んでおらず歯がゆい」としつつ、向日市長から向日町競輪場余剰地に「アリーナと呼ばれる屋根付きのスポーツ施設の誘致」表明がされ、どう対応するかとの質問がされた。西脇知事は府立大学内の施設について「多目的な検討を行っている」とし、向日町競輪場余剰地については、「屋内スポーツ施設の整備を検討」すると表明した。府立植物園の整備計画も、事実上とん挫しつつあり、また府立大学内アリーナ建設計画も、その後の党議員団の質疑で「共同体育館としてすみやかに整備したい」と答えたとおり、1万人規模のアリーナ建設計画も、行き詰ってきている。このため、北山エリア整備基本計画は白紙撤回し、大学生のための体育館や老朽施設の建て替え、府立植物園の充実をはじめ府民的論議を尽くすことこそ必要である。こうした中、国民・維新所属の議員が、府立植物園の正門付近に「にぎわいが必要」等として、民間活力の導入を迫る場面があった。本物の植物の博物館としての府立植物園の役割や16万筆を超える開発反対署名に耳を貸さない姿勢が明らかとなった。府民的にみて恥ずかしい限りである。
4、本議会には、「消費税引下げとインボイス制度の実施中止を求める請願」81件と、「城陽市水道の地下水利用継続と府営水負担軽減に関する請願」1件が提出されたが、わが党以外の自民・公明・府民・維国の会派がすべて反対し否決したことは重大である。
また、請願にもとづく意見書をはじめ、わが党が提案した6意見書案1決議案を、維国議員団も含め他会派すべてが否決した。
自民・公明・府民提案の「森林環境譲与税の譲与基準の見直しを求める意見書案」は、木材輸入自由化などを進めながら、一方で、林業予算を減らし続けてきた国の林業施策の根本的転換を後景に追いやるもので、また、維新・国民提案の「物価上昇を上回る労働者の賃上げと可処分所得の向上に向けた対策を求める意見書案」は、その内容に民主党政権時代に消費税の逆進性対策を口実に、消費税を税の中心にすえた上で、マイナンバー制度と一体に狙われてきた「給付付き税額控除」等が含まれており反対した。
5、今議会で新たに第二会派となった維新・国民議員団の本質的な役割が浮き彫りとなった。
本会議質問で、あれだけ地方選挙で訴えた「身を切る改革」という言葉も提案も一切なく、知事提案議案にすべて賛成した。選挙後、「是々非々で対応する」と述べた対応は、早くも崩れ去った。一方、わが党が提案した、消費税減税とインボイス中止など切実な府民の請願もふまえた意見書・決議案すべてに、維新国民議員団が反対した。これは、反共で一致したオール与党体制に与する会派であることが明らかとなった。そのうえ5月臨時会で選出された代表幹事が、政治資金収支報告書の未提出問題で、6月定例会をまたずに辞任したことにともない、維国会派の団長(国民民主党)が代表幹事に就任したため、新たに団長に国民民主党所属議員が就任することになった。
マイナンバーカードと保険証ひも付け問題を契機に、岸田政権への国民的批判が広がっている。わが党議員団は、物価高による暮らしの深刻な影響、コロナ第9波とも指摘される状況のもと、暮らしの願いによりそい、打開するため、また政治の歪みのおおもとの転換のため、いずれ行われる総選挙や来春の京都市長選挙に向け、広範な府民の皆さんと力を合わせ、共同の力で政治を動かす議員団として全力をあげる。