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議会報告

2023年9月定例議会を終えて|団長談話

2023/11/09 更新
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2023年9月定例議会を終えて

2023年11月9日

日本共産党京都府会議員団

団 長  島 田 敬 子

 

1、9月13日に開会した9月定例議会が、2022年度決算特別委員会をはさみ11月6日に閉会した。

今議会は、8月に発生した台風7号による甚大な被害や、コロナ禍に加え物価高による暮らしと経済への深刻な影響が出ているもとで、公共の役割が問われる中で開かれた。また、臨時国会が開かれたものの、経済対策の失政やインボイスの強行など国民的批判や、さらに目を覆いたくなるようなガザへのジェノサイドが行われ、その停止を求める国際世論の中で、審議が行われた。

わが党議員団は、台風被害調査や被災者救援、深刻な暮らしと賃金の実態を可視化しつつ、食料提供の取り組みや運動と連携し、京都府政の課題を浮き彫りにし、その大本の転換を浮き彫りとする立場から積極的に論戦した。また、議会中、緊急にガザ侵攻をやめ、即時停戦を求める宣伝にも団あげて取り組んだ。

  こうした中、閉会日には2024年度の予算要望を西脇知事に提出した。

 

2、今議会に提案された議案13件のうち、第8号議案「令和4年度京都府一般会計及び特別会計歳入歳出決算を認定に付する件」及び第10号議案「令和4年度京都府水道事業会計決算を認定に付する件」に反対し、他の議案は賛成した。

第8号議案「令和4年度京都府一般会計及び特別会計歳入歳出決算を認定に付する件」は、二期目を迎えた西脇知事最初の決算である。

反対の理由の第一は、今後の新興感染症対策を抜本的に強化する上で、コロナ禍による施設留め置き死者数の詳細や原因を明らかにせず、「必要な方は入院をしていただいてきた」とこれまで通りの答弁を繰り返し、今後の新興感染症対策を本格的にとるためにも、コロナ禍で浮彫となった保健所職員や体制、入院コントロールセンターの在り方、入院待機ステーションの運用をはじめ、課題を明らかにして総括していないためである。

第二は、欠損法人が顕著に減少している大手企業と、7割の中小企業が赤字などと格差の広がりが浮き彫りとなり、またコロナ倒産73件、コロナ特例融資などの返済ができず代位弁済が16件(4~8月)等、コロナ施策の打ち切りや物価高騰、インボイス強行が重なっているにも関わらず、中小企業等が事業継続できる直接支援策が、初期投資が必要な施策にとどまる一方、産業創造リーディングゾーンの本格実施が進められるなど、開発と一体の先端産業に偏重した施策が進められているためである。

第三は、書面審査で他会派からも学費負担軽減など子育てにかかる経済的負担軽減の要望や、体育館へのエアコン設置や教職員の増員等が出され、また遅きに失したとはいえ、京都府の子どもの医療費助成制度がこの九月から拡充されることになったとたん、市町村での拡充がいっそうすすんだように、子育て支援の柱に学校給食の実施と無償化や、給付制奨学金の拡充などの具体化が求められているにも関わらず、子育て環境や少子化対策の基本に「子育てにやさしい風土づくり」をあげ、自治体の公的役割をゆがめているためである。

第四は、あらゆる分野で人材不足が深刻となっており、賃上げの必要性が明確になっているにもかかわらず、最低賃金1500円の実現に西脇知事は「バランスのとれた賃上げが必要」と答弁し、人事院勧告を上回る賃上げについても「財源の範囲内で」と述べるなど、最低賃金1500円の速やかな決断と、京都府最低賃金審議会からも求められている中小企業に対する「賃金支払い能力を補完する具体的な支援策」を、国はもちろん、府でも実施するような公的役割を果たそうとしてないためである。

第五は、にぎわいや開発に重点が置かれ、府立大学内に1万人アリーナ建設など、府民の反対をよそに進めようとした結果、植物園整備や大学整備などが遅れてきた上に、今後北陸新幹線延伸をはじめとする新たな府債発行により、そのつけを将来に先送りするやり方が、身近な事業や施策を削減することにつながり、その矛盾が顕在化しているためである。

第六は、長年にわたる職員削減と民間委託の増加により、あらゆる分野で人材不足の矛盾が噴出しており、書面審査でも明らかにした府営水道の技術職員41人のうち、30歳未満が3人となるなどあらゆる分野で技術継承が大きな課題に直面しているにも関わらず、公民連携や広域化で「生み出されるマンパワーを有効に活用できる」「仕事のやり方を変えていくことも大切」と答弁するなど、厳しい現実を口実として水道事業や消防指令など、公民連携や広域化を強引に進めようという公の役割を後退させているためである。

第七は、コロナの死亡者数とその原因、北山エリアの府民説明会、老朽原発の再稼働と原発敷地内に新たな貯蔵施設建設、米軍基地従事者の事故、有機フッ素化合物(PFOS)調査結果の情報非提供をはじめ、府政運営の基本である、情報提供や情報公開・府民参加などが極めて弱くなっているためである。

第10号議案「京都府水道事業会計決算を認定に付する件」は、過大な需要予測にもとづく建設負担水量を市町におしつけ、料金統一化により高い水道料金となり、前年比34.6%増の約8億3000万円と大幅な営業利益を生んでおり、さらに水道事業の維持に広域化への道のみを示し続けており反対した。

 

3、府域に甚大な被害をもたらした台風7号に対し、党府議団は発災直後から全員が分担して被災地調査を行い、3度にわたる申し入れを行うとともに論戦を積み重ねてきた。今回の被害は、谷筋の山が豪雨により流木とともに流れ出し、それにより河川や水路が土砂等であふれ、家に流入するというもので、災害救助法は速やかに適用されたものの、家屋の全壊件数の基準等を満たさないため被災者生活再建支援法が適用されず、そのため京都府の「地域再建被災者住宅支援事業」も活用できず、床上浸水79棟への支援策や床下浸水289棟の復旧にむけた支援策がないままとなっている。このため、被災者生活再建支援法の適用要件の見直しとともに、「京都府地域再建被災者住宅支援事業」は、地域そのものの存続にも重大な影響がでるため、被災者生活再建支援法適用にかかわらず適用できるよう決断を強く求めた。また、自宅敷地内に流入した土砂や流木の処理や農地の支援は、ボーダーレスな支援策を建設業協会や地元業者さんらの力を借りて取り組みを進めるとともに、農家や中小企業、自営業者への抜本的支援策を求めた。さらに、保安林でない山も含め土砂崩れの実態把握や抜本的な対策を市町や府、国と連携して取り組み、そのために広域振興局を元にもどすことと一体の体制強化の検討を求めた。今後も被災地のみならず、気候危機の新たな課題として法改正も含め対策の抜本的強化が必要である。

 

4、党議員団は、舞鶴の海上自衛隊基地への米国製長距離巡航ミサイル・トマホーク配備や司令部の地下化等の大軍拡の動きや、福島第一原発汚染水海洋放出と福井県の老朽原発再稼働や使用済核燃料保管施設建設、保険証廃止とマイナンバーカードへの一本化、大阪関西万博の強行など、岸田政権や維新の会が強引にすすめる方向の行き詰まりを明らかにし、その大本の転換の必要性を浮き彫りにしつつ西脇知事の姿勢を質した。いずれの問題でも西脇知事は、府民の不安や反対の声に耳をかさず、政府方針を丸ごと進める姿勢をあからさまに示した。

 一方、党議員団は物価高等暮らしの深刻さに反比例し、実質賃金が下がり続けている実態の対策を本格的に進めるため、9月から党議員団が呼びかけて、国政予定候補、後援会の皆さんらの皆さんと一緒に、街頭で「賃金・暮らしアンケート」に取り組み、そこでつかんだ実態を可視化するとともに、解決すべき課題を提起して論戦した。同時に、中小企業や農林水産業への直接支援策など提案し実現を求めた。中でも、高温障害の深刻な影響が農業等に出ており、緊急に丹後広域振興局に国政予定候補と市町議員団そろって申し入れを行うなど、12月議会での補正予算も含め現場の実態を踏まえた対策を迫った。こうした中、9月定例議会で追加された「農林水産業経営改善支援事業費」5億円に加え、12月定例議会にも、さらに追加提案される方向が示されたことは重要である。引き続き、調査にもとづく実態を可視化し、運動と共同を広げ、政策提案による施策の実現をすすめるものである。

  さらに、コロナ禍や物価高の深刻な影響が出ている学生に対し、国制度が届かない学生を対象とした給付型奨学金制度創設、就労・奨学金返済一体支援事業の拡充、公共交通機関やJR・私鉄事業者に働きかけ「学生割引」の拡充をはかることなど具体化を迫った。

 

5、今議会、西脇府政による開発の行き詰まりが、より鮮明となったのが、北陸新幹線延伸計画や北山エリア再開発である。

  西脇知事が一貫して推進している北陸新幹線延伸計画は、鉄道運輸機構が強引に各地で調査を進め、自治会による説明会開催要望にも背を向けるなど何がなんでも延伸計画実施を狙っている。しかし、今年度のみならず来年度着工もできない事態に陥っており、大阪関西万博の批判とともに莫大な税金をつぎ込む計画への府民的批判の前に、中止以外にないことは明らかである。

また、北山エリアについては、職員等から示された植物園の配置図案、学生から示された体育館整備案などをもとに、100周年を迎える府立植物園が「生きた植物の博物館」として、次の100年に向かうふさわしい整備に着手することや、書面審査で府立大学学長が、「ダラダラと協議ばっかりするというわけじゃなくてですね、もう早いこと建ててくれよ、早いとこ増改築してくれよと、そういうところを非常に強く要求している」との答弁がでるなど、府の責任は重大であるにもかかわらず、府立大学内の一万人アリーナ建設断念と学生用体育館と老朽校舎の現場の願いに、府民説明会や情報開示も含め「検討を進める」と答えるばかりであった。

 

6、9月定例議会には、「健康保険証の廃止」撤回や、患者・利用者のいのち・暮らし支えるケア労働者の賃金改善と人員増のため、診療報酬・介護報酬・障害報酬の引き上げを求める請願等が提出され、党議員団は採択に全力をあげたが、他会派がすべて反対し否決した。また、「消費税減税とインボイス制度の中止を求める意見書」案、「患者・利用者のいのち・暮らしを支えるケア労働者の賃金改善と人員増を求める意見書」案、「健康保険証の廃止」撤回を求める意見書」案、「大阪・関西万博の中止を求める意見書」案をはじめ8件の意見書案を提案したが、他会派がすべて否決した。

一方、維新国民議員団から「患者からの看護職員へのハラスメント対策を求める意見書」案が提案されたが、これに対し党府議団は「看護職員に対するハラスメント対策の強化を求める意見書」案を提案し、ILOが採択したハラスメント包括的禁止条約を日本政府が批准していない問題等を指摘し採択を求めたが、維新国民議員団も他会派もすべて反対し否決した。

決算委員会書面審査でも、大阪の事例を「成功例」として、京都府に施策の実施を迫り、一方でまともな調査も根拠もないまま「もっと削れるのではないか」と理事者に迫り、必要性を答弁されて反論できないなど、まともに府民の暮らしに向き合わない姿勢が如実に示されるとともに、反共では他会派と一致するという、第二自民党の姿と議会における存在意義が疑われる事態に陥っている。また自民党会派から市長選挙に立候補するために離党し、「躍動京都」という新会派を一人で結成し、それを応援する自民党府議がいるなど、自民党の行き詰まりも浮き彫りとなった。

 

 暮らしの深刻さを前に、越年対策も含めた12月議会での補正予算の提案と暮らしと地域、営業等を守る公の役割を京都府が果たすことを引き続き求めるとともに、ガザやウクライナをめぐる事態にも関わらず、岸田首相が憲法改正と軍拡大増税を狙い、また日本維新の会が憲法改正の決断を首相に求めるなどの異常な流れに、国民的な厳しい批判がいっそう広がっており、広範な府民の皆さんと共同し、大本の政治の転換を図るため、解散総選挙に追い込むとともに、2月の京都市長選挙での福山和人市長に向け全力をあげる。

以上