2023年12月定例会を終えて|団長談話
2023年12月定例会を終えて
2024年1月10日
日本共産党京都府会議員団
団 長 島田 けい子
1月1日に発生した、「令和6年能登半島地震」により、甚大な被害がもたらされました。道路が寸断されるなどにより、いまだ被害の全容が把握されているとはいえず、救援・被災者支援が急がれます。お亡くなりになられた皆さんに哀悼の意をささげるとともに、被災された皆さんにお見舞いを申し上げます。また、現地で救援・復旧のため昼夜を分かたず取り組まれている皆さんに感謝します。
党府議団としても、被災者救援募金に取り組むとともに、今こそ公の役割発揮が求められており、その立場から、京都府としての支援策がしっかりいきとどくよう強く求めていきます。
12月4日に開会した12月定例議会は、12月21日に閉会した。
今議会は、イスラエルのガザ地区への攻撃による凄惨な現実や自民党のパーティ券購入による裏金作りなど、国民の平和を望む声や運動、金権腐敗政治の根絶を求める世論の広がりと、物価高騰の深刻さの影響が暮らしに直撃しているにも関わらず、政府の経済対策があまりに無策であることに対し、国民的な怒りが広がる中で開かれた。
わが党議員団は、府民の夏以降に団挙げて取り組んできた、「暮らし・賃金アンケート」をはじめ、府民の厳しい暮らしの実態を可視化し、運動と結び、積極的に論戦した。
1、提案された議案25件のうち、第2号議案「子育て環境日本一・京都の実現に向けた取り組みの推進に関する条例制定の件」に反対し、政府の経済対策補正予算を踏まえた追加補正予算も含め、他の議案にはすべて賛成した。
第1号議案「令和5年度京都府一般会計補正予算(第5号)」及び、第24号議案「令和5年度京都府一般会計予算(第7号)案は、長引く物価高騰が事業活動や府民生活に深刻な影響を与える中で、6月補正予算、9月補正予算に続き、事業者の経営改善を推進するための施策や府民生活を守るための対策を講じるものであり、賛成した。
なお、府民の暮らしと営業は「このままでは年も越せない」という深刻な現状にあり、年末対策も含めた抜本的な経済的支援が必要である、と指摘した。
今回、追加で提案された「農林水産業経営改善支援事業費」は、補助対象が、これまでの省エネ機器の導入に加え、高温対策に資する品質向上に資する生産資材の導入も対象となったものの、個人農業者は対象になっておらず、猛暑や干ばつによる被害で減収となった農家が、次期作への展望が持てるよう、第2弾、第3弾の支援が必要である。
また、「和装需要喚起支援事業費」は、丹後の白生地はもちろん、産地を限定せず、製造から流通までの卸売事業者以外の事業者へも効果がでるように求めた。
さらに「宿泊業生産性向上対策事業費」は、生産性向上に資する取り組みに係る経費のみでなく、サービス向上の取組等にも広げるとともに、「LPガス価格高騰対策費」の支援額上限が、6月の補正予算は3000円だったのが、国の単価改定により1㎥30円から15円に引き下げられたために、1500円に減額されており、国に対し、少なくとも補助単価を1㎥30円に戻すよう強く求めた。
第2号議案「子育て環境日本一・京都の実現に向けた取り組みの推進に関する条例制定の件」は反対した。
府議団は、条例案が提案された直後に、見解を発表し、府民的論議を呼びかけるとともに、問題を浮き彫りにし、改善を求める立場から、積極的に論戦した。
反対理由の第1は、今回廃止される「京都府子育て支援条例」に規定されていた「子どもの権利条約」に基づく「子どもの権利」についての規定がなくなっているためである。貧困、虐待、いじめ、不登校、自殺など、子どもの権利侵害は極めて深刻で、条約が掲げた「子どもの最善の利益」「生命、生存及び発達に対する権利」「意見表明権」「差別の禁止」の4原則を軽視し、国連子どもの権利委員会から度重なる勧告を受けてきたにもかかわらず、「子どもの権利」の規定をなくすのは問題である。今、必要なことは、子どもを権利の主体として明確に位置付け、憲法の基本的人権と権利条約の4原則を保障する条例である。
反対理由の第2は、「京都府子育て支援条例」には、「子育て支援に関する施策」という章を起こし施策について規定していたものの、今回すべて削除したためである。今、必要なことは、「子育て保障」の概念を明記し、子どもの医療費助成、教育や学校給食の無償化、国保料の子供の均等割廃止など、「経済的負担の軽減」を重視した条例とすることである。
反対理由の第3は、新条例では、社会的に行うべき子育てについて、保護者に「子育ての一義的責任」を強調し、各主体には「家庭を築き、こどもを生み育てる」という特定の生き方の押し付けになりかねないためである。「養育は家庭が基本」とすることは、歴代自民党政権が児童扶養手当や生活保護の改悪など子育て支援の後退を合理化する理由として強調し、虐待や貧困、ヤングケアラーなど、家庭の中で苦しむ子どもたちや保護者をさらに追い詰め、一層孤立させるものである。子どもや若者の多様性が尊重され、「自分の人生を選択できる」ことが実感できる社会こそ求められており、それらを踏まえた条例にすべきである。
第4号議案「旧総合資料館敷地活用事業契約締結の件」については、予算としては、旧総合資料館の解体のための契約であり、賛成したが、契約の内容には解体後の暫定活用も含まれているため、本来、解体と暫定活用は分けて提案し、暫定活用の内容については、広く府民や関係者と議論して進めるべきである。
第23号議案「職員の給与等に関する条例等一部改正の件」は、人事委員会勧告にもとづく職員給与等の引き上げには当然賛成である。しかし一方で、知事と副知事、府会議員の給与引き上げの部分には反対した。もともと京都府議会議員の報酬は他県と比べても高い水準にあり、わが会派は3割削減を求めてきた。コロナ禍に続く物価高騰で府民の暮らしが大変な困難にある時に、府会議員はもちろん、知事と副知事の給与も引き上げるべきではない。
2、「苦難解決の党」として全力をあげる中、一定の変化を生み出した。
12月4日の開会日に、府議団として、越年対策も含めた暮らし等の支援策について、追加補正予算の提案も含め、緊急に申し入れを行った。また地域の食糧支援に取り組む実行委員会からも京都府に申し入れがされた。その結果、わが党代表質問に対し、知事が「地域交響プロジェクトの枠組みを活用して、支援したい」と答弁がされ、党府議団として緊急ニュース発行を行い、越年対策の支援の具体化を呼びかけた。その結果、社会保障推進協議会や地域の食糧支援実行委員会などから積極的に利活用される具体化が行われた。本来、通年で実施できるよう予算化されたにも関わらず、それが行き届いていない実態と、党議員団が九月から取り組んだ「賃金アンケート」で浮き彫りとなった暮らしの実情等を取り上げ迫ったことで実現したが、緊急の取り組みであったことを考えると、通年で取り組めるよう今後改善が必要である。
なお、党府議団は、物価高や暮らしの実態をふまえ、役所が閉まる年末29日から31日まで、体制をとって相談活動に取り組み、11件の相談が寄せられた。
私立高校に通学する生徒の学費を実質無償化するための「あんしん就学支援制度」も、今回、所得制限の緩和や、他府県に通う生徒への支援も含め、拡充方針が示された。もともと、わが党議員団が、私学に通う保護者や労働組合等の皆さんらとともに、私学の無償化を求める中で実現してきた制度が、今回さらに拡充されることとなった。引き続き無償化に向けて取り組みを強めるものである。
党府議団が取り組んできた、「賃金と暮らし」アンケートの結果を踏まえ、山形県が令和3年から女性労働者の賃上げや正社員化に、県独自に支援する制度の具体例なども参考に、賃上げにむけた府独自の取り組みの具体化を強く求めた。さらに、閉会本会議の夜には、「暮らせる賃金と正業を自治体がつくる」シンポジウムが開かれ、党府議団も実行委員会に参加し、また「賃金と暮らし」アンケート結果のまとめと賃上げ政策について特別報告を行った。自治体が仕事をつくり、賃上げを政策的に引き上げていく意義は、きわめて大きく、引き続き中小企業支援と一体の賃上げ政策の実現に向けて力を尽くす。
3、大規模開発中心から府民の暮らし応援中心の府政への転換を求める立場から、大阪・関西万博中止や北陸新幹線延伸の中止、府立大学内1万人アリーナ建設計画の白紙撤回等を求めた。
ところが西脇知事は、大阪・関西万博について「京都は『命輝く未来社会のデザイン』という万博のテーマにふさわしい場所」と述べ、「経済の活性化や地域振興につなげてまいりたい」とするなど、何がなんでも推進する立場であることを示した。北陸新幹線延伸計画は、事業認可もされてないのに京都府と鉄道運輸機構がトンネル残土・発生土受け入れの協議を始め、ました。また住民や関係自治体も知らない間に、京都府と鉄道運輸機構が、河川や道路等との交差について協議を始めるなど、完全に行き詰まっているにもかかわらず、推進を強引に求めている。府立大学の1万人アリーナについては「幅広く意見を聞いている」と、あいかわらず同じ答弁を繰り返した。引き続き、運動と世論を広げるために力を尽くす。
4、府議団は、平和にかかわる重要な国際的課題である、「パレスチナ・ガザ地区での平和実現のために役割を発揮することを求める意見書」案、「米軍と自衛隊のオスプレイ配備撤回及び日米地位協定の抜本的見直しを求める意見書」案、「核兵器禁止条約の早期批准を求める意見書」案を提案するとともに、370名の方々が年金支給改善を求める請願書を提出され、それらに応えるための意見書や、「子どもと教育・文化を守る京都府民会議」が12,590人の署名を添えて提案された請願を踏まえた意見書や決議を提案した。中でも「エアコン・トイレ等の学校施設・設備の改善を求める決議」案は、酷暑の経験をふまえ、すべての会派が質疑で取り上げたにもかかわらず、道理なく否決した。
「大阪・関西万博の中止を求める意見書」案、「北陸新幹線敦賀?新大阪間の延伸中止を求める意見書」案も、世論に背き、いずれもいとも簡単に否決した。
なお、わが党議員団が提案した「政治資金問題の真相究明並びに企業・団体によるパーティー券購入及び政治献金の全面禁止を求める意見書」案に対し、対案として、自民、公明、府民の3会派が提案した「政治資金規正法に基づく制度の厳格化や透明化等に向けた議論を求める意見書」案は、政治資金規正法に基づく厳格化や透明化の議論をするだけのもので、同法をそのまま温存してこれからも金権政治を続けようとするものであり反対した。またわが党提案の意見書案への対案として提案された国民民主党・日本維新の会府議団提案の「企業・団体献金の全面禁止を含めた政治資金規正法の改正を求める意見書」案は、政党・政党支部への企業団体献金禁止を求めており、賛成したが、一大焦点になっている企業・団体のパーティー券購入について全く触れておらず問題がある。
5、自民党の深刻な行き詰まりとともに、古いオール与党体制の矛盾の激化、維新政治の矛盾が浮き彫りとなった議会であった。
議会開会直後に、二之湯議員が辞職した。もともと京都市長選挙に立候補を表明し、自民党会派を離脱し一人会派を結成し、12月まで議員に居座り続け、ボーナスも全額受け取り辞職したことは、府民的にとうてい理解を得られないものである。
維新・国民議員団は、人事委員会勧告を踏まえ、府職員と知事、副知事、議員の報酬引き上げ議案に対し、国民民主党所属議員4人が賛成し、維新所属の9人が反対した。しかも、維新・国民議員団は、「人事院の給与勧告に関する課題への早期対応を求める意見書」案を提案したが、その内容は、「多様な働き方」と連動させ、非正規労働者の給与実態も反映させるよう求めるもので、労働者に低賃金と劣悪な労働条件を押し付けようとする内容で重大である。その上、維新・国民議員団は、「緊急事態条項創設の議論の促進を求める意見書」案を提案した。これは、自民・公明・立民が提案し2ケ月前の10月4日可決された「緊急事態に対応できる法令等の整備を促進する取組を求める意見書」とほぼ同主旨であり、これに提案者も賛成したにもかかわらず、再度、維新・国民主導で同様の意見書を提案するなど、憲法改正を狙う動きをいっそうすすめようとしていることが浮き彫りとなった。
さらに、京都市長選挙をめぐり、維新・国民会派所属で、国民民主党の梶原府議が、連合労組への配慮から、国民民主党を離党し、会派も離脱し、一人会派を結成するなど、オール与党体制が崩れ、また維新・国民議員団の矛盾も相次いだ。
いよいよ京都市長選挙が目前にせまっている。わが党議員団は、無所属市民派の弁護士・福山和人京都市長実現にむけ、幅広い共同を広げながら、政治のゆがみをただし、苦難に寄り添い解決する自治体の役割を果たさせるため全力をあげる。
以上
府議会の会派構成
自民党議員団/27名、
維国(国民民主党―3名・日本維新の会議員団―9名)/12名
日本共産党議員団/9名
府民クラブ議員団(立憲民主党―3名・無所属―2名)
公明党議員団/5名
京都が好きだ/1名