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西脇府政2期目の折り返し点にあたって

2024/05/27 更新
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日本共産党京都府会議員団は、西脇府政が発足して6年目、2期目の折り返し点を迎えるにあたり、以下の見解を発表しましたのでご紹介します。

西脇府政2期目の折り返し点にあたって

2024年5月27日

日本共産党京都府会議員団

ますます重要となる2026年京都府知事選挙

 現在、コロナ禍の深刻な影響と物価高や資材高騰による格差の広がり、賃金が上がらないことによる先行きの不透明さやさらなる異常円安等、「失われた30年」と言われる自民党政治の矛盾が噴出している。また、パーティー券・裏金問題にみられる自民党政治そのものの劣化を前に、国民的怒りが渦巻いている。その背景に、深刻さを増す府民の暮らしと京都経済の行き詰まりがあることは明らかである。そのことは、先に行われた衆議院補欠選挙で自民党も維新もいずれも議席を獲得できなかったことに如実に示された。さらに、京都市長選挙でも市民の切実な要求と政治が変わることへの期待が示された。

このように、今ほど行き詰まった自民党政治を大本から転換するとともに、「福祉の増進」をめざす自治体本来の今日的な役割と、具体的な施策をどうしていくのかが厳しく問われる時はない。

 2年後に迫った京都府知事選挙は、これら日本と京都の進路と自治体のあり方を府民的に問う、極めて重要な選挙となる。

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 (続き)

府民の声と運動が政治を大きく動かしはじめている歴史的チャンス―この方向にこそ、府民のいのちと暮らしを守る希望がある

 前回の京都府知事選挙や京都市長選挙でも、子育て支援策の充実の願いが大きな世論となり、府民の運動とあいまって、ようやく昨年9月より「京都子育て支援医療助成制度」(入院が中学校卒業まで月200円、通院が小学校卒業まで月200円、中学生は月1,500円)が拡充された。これまで西脇知事は「基礎的部分は京都府がつくる」と答弁してきたが、今回京丹後市の22歳まで無料をはじめ18歳まで無料が16市町村となるなど、同制度があいついで拡充された。率先して京都府が制度拡充していれば、府内どこに住んでも医療費負担軽減ができたことは明白である。同様に中学校給食でも、西脇知事は「学校給食法により、実施・運営等は市町村が担い、食材費である給食費は保護者負担」と一貫して述べてきたものの、各地の運動の力により、昨年度から学校給食費にも使える「子どもの教育のための総合交付金」を創設、さらに、もともと保護者の声や署名により実現してきた私立高校授業料負担軽減のための「私立高等学校あんしん修学支援事業」が拡充される等、文字通り運動とそのための共同の力が制度を一歩一歩前進させてきた。

 また、コロナ禍に各地で「食料無料提供」が取り組まれてきたが、「本来、行政が支援すべきではないか」との要望が出され、京都府に日本民主青年同盟や京都社保協等が申し入れ、生活困窮者への食料品等配布予算が盛り込まれ、昨年度から通年化予算として実施された。

昨年、わが党議員団は賃上げの実態を可視化するための街頭アンケートに取り組み、それをまとめるとともに、京都総評らが実施された賃上げシンポでも報告するなど、最低賃金時給1,500円以上をかかげた論戦と共同により、中小企業支援の制度として、わずかではあるが「賃金引き上げ」による補助額アップが盛り込まれた。また、昨年8月に府北部地域に甚大な被害をもたらした第7号台風や、令和6年能登半島地震の被害実相を踏まえ、時限的ではあるものの木造住宅等への耐震化支援の時限的拡充(令和6~7年度)が実施されることになった。

そして、「府立植物園を守れ」「府立大学内に1万人アリーナいらない」など、2020年から取り組まれてきた、「北山エリア整備基本計画」白紙撤回を求める運動と論戦により、今年100周年を迎えた京都府立植物園に「にぎわい」を持ち込む整備計画や、府立大学内に学生のためにはらない「1万人アリーナ建設」は頓挫することになった。

 このように、先の京都市長選挙でも示された、市民の共同した取り組みが政治を動かす大きな力であり、行き詰まりを転換し府民の願いを実現する確かな希望となりうることを示した。

 わが党議員団は、京都でこそ立場の違いを超えた要求と政策で一致し、運動をおこし、それに応える論戦を行い、その力で知事選挙を闘うために、力を尽くすものである。

 

自治体の進路と京都府民の暮らしをめぐる新たな岐路に―いまこそ府民的転換を

 今年4月で西脇府政が発足して6年目を迎え、2期目の折り返し点となった。

 西脇知事は1期目に策定した「京都府総合計画」(2019年~2024年)で、2040年の京都府の将来像を描き、そこからバックキャスティングの手法(「自治体戦略2040構想」)を用いるとともに、京都府の役割を府民や市町村支援よりも、民間や府民等が自主的に活動する場や仕組みを提供する「プラットフォームビルダー」にあると歪めてえがき、「官民連携」や「広域化」などを進めてきた。

2022年の京都府知事選挙後、計画のおおよその考えはそのままに、2022年12月に京都府知事選挙で掲げた公約「安心」「温もり」「ゆめ実現」で「あたたかい京都づくり」として整理し、前倒しで計画を見直し、西脇知事色を出していく方向を示し、それを元に予算編成と具体的な施策を展開しようとしている。

 しかしその方向は、国の動きと一体に、自治体のあり方を根本的に歪める道を選択・推進する新たな段階になっており、以下示すとおり、一部修正ではなく方向の転換こそ、広範な府民の願いに沿うものである。

 

1、本当の「子育て環境日本一」への転換

 「子育て環境日本一」は西脇府政の看板政策だが、現在、京都府の合計特殊出生率は1.18と下落を続け、近畿では最下位、全国40番目となり、また人口減少や人口流出とあいまって、少子化に歯止めがかかっていない。

しかし、京都府の施策は「子育て環境日本一に向けた職場づくり行動宣言」「WEラブ赤ちゃんプロジェクト」をはじめとした「風土づくり」が軸となっている。また、賃上げのための中小企業支援については「直接的な賃上げ支援策は、短期的効果はあるが、賃上げ環境を整えることが重要」と背を向け、中学校給食実施や無償化の支援をはじめとした子育て世代の経済的負担の軽減は、市町村の努力に委ねられ、全国的にみても遅れたままとなっている。

そのうえ、子育てにかかる社会保障の制度では、政府が令和7年度から実施を計画し、問題が多いと指摘される「こども誰でも通園制度」を先取りし、全国初として「親子誰でも通園制度」を京都市と宇治市でモデル的に実施するなど、人材育成と確保のための処遇改善などより、国民的批判の大きい「異次元の少子化対策」を掲げる国施策の導入しようとしている。

 

2、直接支援より、府民には共助、大手・先端企業利益のための官民連携をすすめる「プラットフォームビルダー」化と新たな開発型の産業政策の転換

 党議員団の賃金アンケートでも「50歳で昇給ストップ」「残業が減って4万円減」など大手の春闘結果報道とは違う実態が浮かび上がっており、その改善はまさに政治の責任である。ところが再三にわたる公契約条例制定の要望や、設計労務単価の政策的引上げが現場技術者に行きわたっているかの実態調査や、賃上げのための中小企業直接支援にも背を向け続けている。

また中小企業や農業者から切望され、国のコロナ交付金を活用して実施した「中小企業経営改革事業費」「農林水産業経営改革支援事業費」の直接支援が無くなった。一方、「ZET‐valley」「太秦メディアパーク」「アート&テクノロジービレッジ」「けいはんなフードテックヒル」をはじめとした「産業創造リーディングゾーン事業」や「グローバル・スタートアップ・エコシステム構築事業」などの本格的展開策に見られる、一部の先端企業等を軸とし、新たな大規模開発と一体に進めようとしている。

また、先行きの見えない中小零細事業や、「米作って飯食えない」と叫ばれる極めて厳しい農林水産業への直接支援は背を向け、国と同様の施策をすすめる姿勢が露骨となってきており、京都府の産業政策は大きな行き詰まりと分岐点に直面している。

 

3、コロナ禍の総括なき方針からの転換

 2020年から始まった新型コロナ感染症の対応の取りまとめが今年3月にようやく示された。そもそも改定された「京都府感染症予防計画」(令和6年度~11年度)は、この深刻な経験から深く教訓をくみ取ることが必要である。しかし府民的にも議会にも、新型コロナ感染症の取りまとめは示されないままの計画策定となった。しかも取りまとめの内容には、保健所の縮小再編による影響と体制の見直しや、施設・在宅留め置き死の問題に対応した、入院コントロールセンターや、宿泊療養施設、入院待機ステーションのあり方、さらには積極的情報提供等、重要な課題については、まともな総括がなされておらず、現場・民間まかせで京都府の公的責任を果たそうとしていない。

また、南丹みやま診療所や京北病院のあり方に見られる、医師をはじめとした人材確保への責任を果たすより、むしろ現場で医師確保等維持できなければ、縮小・再編やむなしの姿勢がうかがえる。これは、まさに国の社会保障給付費削減、医師養成削減方針そのものである。

さらに、京都府は、高すぎる国民健康保険料・税や介護保険料に対し悲鳴が上がっているもとで、国民健康保険の都道府県化を推進し、その結果、京都府が国民健康保険納付金を過去最高の12.8%値上げすることを市町村に示し、京都府は保険料引き下げへの支援を一円たりともしないため、市町村が値上げを余儀なくされるなど、国の狙いをこの分野でも先導的に実施していることは重大であり、根本的な転換が必要である。

 

4、行き詰まる開発・イベント行政からの転換

行き詰まった「北山エリア整備基本計画」は撤回するしかないにも関わらず、いまだ「にぎわい」を狙う動きを見直そうとしないばかりか、早急に取り組むべき府立大学の学生用体育館や老朽校舎の建設、府立植物園のバックヤードの充実、観覧温室の建て替え、標本庫の新設等の予算や計画も予算も全く示されていない。

北陸新幹線敦賀⁻大阪間延伸計画は、もともと2023年着工予定が、地元自治会をあげた住民の反対や、知事選挙での大きな争点となるなか、環境影響評価調査そのものができないもとで、脱法的に調査が始められるなど異常な状態が続けられている。また「京都の地下水がどうなるのか」など「京都問題」と言われるほど、府民的批判が広がっており、さらに能登半島地震をふまえ、「花折断層を横切る新幹線は大丈夫か」など、もはや着工できない事態に追い込まれている。にもかかわらず国交省出身の西脇知事は建設推進の立場を堅持している。さらに新名神高速道路建設と一体の城陽東部丘陵地に物流拠点、JR向日町駅周辺など、産業政策と一体の新たな大規模開発を「成長」として進めている。

また、カジノと一体の「大阪・関西万博」にいたっては、国と一体で「大阪・関西万博きょうとアクションプラン」を作成し、さらに参加者数確保のために、小中高生が一回参加するためのチケット代金3億3,400万円を予算化した上に、文化庁京都移転を名目に、大阪・関西万博のインバウンドを見込む等、いまだ開発やイベント頼みに「成長」を狙うあり方は転換すべきである。

 

5、住民の自治や安全を、民間に差し出す「広域化」「民間開放」の本格化から転換

 これまで京都府は、住民自治を壊す市町村合併や行革の名による人材不足に加え、滞納者からの取り立てを専門に行う特別地方公共団体「京都地方税機構」を設立し、市町村の課税自主権を実質的にうばう課税事務の共同化を推進してきた。さらに今年4月から府税事務所を統合するなど、取り立てに厳しく、府民によりそうことは弱め続けてきた。

また、国の水道事業の広域化や民営化を進める「改定水道法」にのっとり、昨年5月に策定した「京都府営水道ビジョン(第二期)」及び「京都水道グランドデザイン」には、計画策定中に示された「府南部10市町で最大12浄水場廃止」案は市町村や住民の反対の声により削除されたものの、公民連携・経営統合を進めるとする一つの道だけを示した。このように府民の命の根幹を支える水道事業の広域化と民営化を本格的に推進する段階に入っている。

 また、消防広域化を目指し、まず消防指令業務を亀岡市以北の北中部と京都市を含む南部の2か所の集約を計画し、すでに北中部は今年4月から福知山市で運用を開始し、府南部消防指令センターは、京都府・市消防学校に、府民や議会への報告もないまま設置を進めようとしている。

令和6年能登半島地震では、市町村合併、人員削減、広域化が、迅速な救援や復興に大きな問題となっており、府の進める方向は、住み続けられる条件とそのための住民的努力を弱めるもので、見直すことこそ必要である。

 

6、国そのまま、トップダウンから、ボトムアップ府政・府民に頼られる府政へ転換

 コロナ禍や物価高等による消費税引き下げの願いが切実に求められているにも関わらず、西脇知事は「全世代型社会保障に必要なものとして、法律で税率の引上げが行われたものであり、少子・高齢化社会における我が国全体の社会保障財源の問題として国において検討されるべきもの」との答弁を続け、消費税引き上げは当然視し、事業者やフリーランスをはじめ大反対の声が上がっているにもかかわらず「複数税率の下での適正な課税を担保するための仕組み」であり、京都府として「制度の円滑な導入に向けて引き続き支援してまいりたい」と国と同じ対応をしていることは、これだけ府民的な声が上がっている中で、異常である。

 また、能登半島地震を通じ、原発の危険性や避難計画の実効性がないことが明らかになったにもかかわらず、原発再稼働を容認し、さらに政府の稼働延長や新増設については、何も言わない対応に終始している。

 そのうえ、改憲論議については「そのあるべき姿を議論することは憲法において予定されている」と是認し、また京丹後市経ケ岬の米軍基地の強化や日米地位協定の見直し、自衛隊の基地強化と一体に土地利用規制法特別地域指定についても、外交と防衛は「国の専権事項」として、国と歩調を合わせ続けている。しかも、現在審議されている地方自治法改正案は、国に地方自治体への広範な「指示権」を与え、自治体を国に従属させる仕組みをつくるもので、憲法を事実上蔑ろにし、5年で43兆円もの防衛費を予定する等、戦争できる国づくりと一体に狙われている。こうした国と自治体の進路をめぐる分岐点に対し、国に従いモノ言わぬ知事から、府民によりそい、府民のいのちと財産、地方自治を守り生かす府政へと転換が必要である。

 さらに、コロナ対策や北山エリア問題と向日市へのアリーナ建設でも、北陸新幹線や大阪・関西万博でも、まともな情報提供と府民的意見を聞くことないトップダウンの運営が顕著になっており、ボトムアップ型府政への転換が急いで求められる。

 

自民党政治の実施機関から、府民のいのちと暮らしによりそう府政へ

以上述べてきたとおり、もはや西脇府政はゆきづまった自民党政治の京都における実施機関となっており、この方向では疲弊した地域や暮らしの再生は見通せない。

同時に、二元代表制の一翼を担うはずの京都府議会も重大な問題を抱えている。

西脇府政を支えると自認する自民、公明、府民クラブ(立民、無所属)に加え、維新・国民、京都が好きだ(維新・国民を離脱)の会派全てが、この一年で府議会に提出された府民からの請願8件13,025団体・個人すべてに背を向けてきた。

また、自民党青年局が和歌山で開いた懇親会に、三名の京都府議が参加して陳謝したことや、維新の会に所属する府議が、昨年5月に政治資金収支報告書未提出問題で会派代表幹事を辞任し、また、政務活動費を選挙等に流用していた問題で謝罪、さらに別の府議が予算特別委員会で、「生活保護が手厚く優遇されており、年収300万円の世帯からすると、働く意欲が無くなって、モラルハザードが起きる」などと繰り返し発言し、謝罪し予算特別委員会幹事を辞任することになるなど、府民的にみてあまりに劣化した姿が浮き彫りとなる一年でもあった。

それだけに、ますます問われるわが党議員団の議会内外での役割の重要性をいっそう自覚し、西脇府政2期目の折り返し点にあたり、府政転換の必要性を府民的に明らかにするとともに、府民の暮らしと願いに寄り添い、府民的運動や共同の輪を広げ、その実現に全力をあげるものである。

以上