2024年9月府議会閉会本会議|議案討論/森よしはる議員
閉会本会議 議案討論/森よしはる議員【京都市・南区】
日本共産党の森よしはるです。会派を代表いたしまして、ただいま議題となっております、議案6件のうち第10号議案「令和5年度京都府一般会計及び特別会計歳入歳出決算を認定に付する件」及び第12号議案「令和5年度京都府水道事業会計決算を認定に付する件」の2件に反対し、他の議案に賛成の立場から討論を行います。
まず、第10号議案「令和5年度京都府一般会計及び特別会計歳入歳出決算を認定に付する件」についてです。
2023年は新型コロナ感染症5類移行後も感染は収まりを見せず、加えて長引く物価高騰、社会保障や教育等に係る家計負担が重くのしかかり、暮らしと経営が極めて厳しい状況に追い込まれるもと、福祉の増進を図る本来の自治体の役割が問われました。しかし、総合計画の発射台として府が位置づけた2023年の府政の執行は、直面するくらしの危機や地域の疲弊に向き合うものになっておらず、決算には反対です。
第10号議案「令和5年度京都府一般会計及び特別会計歳入歳出決算を認定に付する件」について
反対の理由の第一は、コロナ対策の教訓がいかされず、保健所・医療機関等の体制や機能強化、医療機関・介護事業所等への支援がされていないことです。
コロナ感染症5類移行後の死者数が1年間において全国で3万2576人にのぼったことが明らかになりましたが、府としてその実態把握と対策はとられていません。新型コロナウイルス感染症対策の現場実態に即した検証が行われないまま、医療機関や介護施設等への支援が打ち切られ、現場と患者に重い負担が強いられています。総括質疑でも福祉施設への府独自の支援を求める意見が我が党以外の会派からも出されました。新型コロナ感染症対策に係る監査委員会の行政監査の所見では、保健所ヒアリングでの「ピーク時は、連日帰宅は真夜中だった」「自分たちが頑張らなければ亡くなる方がおかれるかもしれないという使命感のもとで頑張った」という声も紹介し最前線で対応する保健所職員をはじめとした職員を守る体制づくりを要請していますが、保健所をはじめとした公衆衛生に係る抜本的な体制強化は図られていません。
また、書面審査を通じて、医療機関の病床削減や在宅介護をはじめ介護の危機が委員からも指摘をされましたが、解決にむけての抜本的な対策が打ち出されていません。介護保険や国民健康保険等に係る国庫負担の拡大など国に対する働きかけは当然ですが、府独自での医療機関や介護事業所、社会福祉施設や労働者への支援は、人材確保の観点からも待ったなしの課題です。
第二は、物価・資材高騰の深刻な影響への対応、労働者の賃上げが社会的に要請されるもと、中小企業への賃上げのための直接支援に本格的に取り組んでいないためです。また、農林漁業では、官民連携のもとに企業に開発・生産・流通を委ねるフードテック構想を推進する一方、小規模農家や新規就農者も含めた農林漁業者への支援や農業振興が後景に置かれていることです。
書面審査では、府内企業の倒産・廃業が23年度10年ぶりに300件を超え27.3%増、負債額5000万円未満の小規模倒産が全体の7割を占める一方で、輸出大企業が利益を増やし格差が拡大していることが明らかになりました。中小企業を直接支援し、その底上げを図ることこそ求められています。コロナ融資の返済が本格化するもとで、最も効果的な物価高騰対策である消費税減税やインボイス中止の声には背を向け、産業リーディングゾーン加速化事業やスタートアップ企業への支援に重点が置かれる一方、中小企業経営改革支援事業の予算額が5億円に対し15億円規模の申請があったにもかかわらず、追加補正や今年度予算でも対応がされなかった問題が明らかになりました。また、コメ不足・価格高騰で明らかになった安定供給のための農業者への所得・価格保障、飼料・肥料や農機具等の生産費高騰や高齢化など農業者の困難に寄り添い支援する姿勢こそ必要です。鳥獣害対策では、今議会中に我が党が求めていた果樹カメムシ類の虫害に対する営農継続緊急支援事業が実施されることになりましたが、米も対象にすることや鳥獣捕獲に対する支援の充実が必要です。
第三は、子育て支援の肝ともいえる経済的負担軽減が、昨年度策定された子育て環境日本一推進戦略や同推進条例には中心課題に位置付けられず、風土づくりに固執しているからです。加えて教員不足をはじめ厳しさを増す学校現場や子どもたちの困難を解決する方向が示されていないからです。
総括質疑、書面審査では、経済的負担軽減が子育て環境日本一戦略の20のプロジェクトの一つとしてしか位置づけず、戦略策定や条例制定にむけた条例検討会議、子どもアンケート、パブリックコメントで要望として出されていた給食費無償化、学費・奨学金対策、賃上げなどの声に府として具体的に応える施策や姿勢がないことが明らかになりました。また、総括質疑で、我が党は子育て支援医療制度が小学校卒業までに改善されたことを踏まえ、18歳まで医療費無償化に踏み切ることを求めました。速やかに着手すべきです。教育に関わっては、特別支援学校に通う児童・生徒が増え、学ぶ権利が保障されない教育環境の実態も明らかになりましたが、特別支援学校の新たな増設については慎重な姿勢に終始しました。教師不足は深刻で、1年の退職者199人のうち5割の93人が20歳代~30歳代の若手職員となっています。受け持つ授業時間数を減らし、教員の増員、定数改善を図ることは待ったなしです。
第四は、北陸新幹線、北山エリア開発、京都アリーナ(仮称)、新名神高速道路、大阪・関西万博などが住民や当事者の声を聞かずに進められる一方で、府立大学・府立医科大学病院はじめ必要な整備が先送りされ、府民の暮らしや地域を支える事業などに影響を与えるなど矛盾が拡大していることです。
書面審査では、府債残高が46億円増え、2兆3652億円となり、1990年代の公共事業の府債の返済がピークを迎えるもとで、財政運営のあり方が一層厳しく問われていることが明らかになりました。現地調査では土砂災害警戒地域が17000カ所に対し工事完了は778カ所で費用も時間も要すること、農林水産部所管の山地災害危険地区は危険個所5072カ所に対し治山事業の着手は1768カ所にとどまっていること、府民利用施設の維持管理の重要性も明らかになりました。しかし、府は京都アリーナや新名神高速道路、大阪・関西万博関連事業など大型開発を優先し推進しようとしており、加えて府財政を破綻に追い込み、豊かな自然や地下水など重大な京都破壊につながる北陸新幹線延伸計画に、現時点にたっても反対の意思を表明されていないことは重大です。
第五に、水道の広域化・民営化や消防指令の広域化、公務の民営化を強引にすすめ、公共の役割を後退させ、ゆがめているからです。
書面審査、総括質疑を通じて、すすめられている京都市も含む府南部の消防指令の広域化が指令台数や人員が現在の京都市の体制と変わらず、結局人員削減が目的になっていることが明らかになりました。長年にわたる職員削減と非正規雇用である会計年度任用職員を拡大してきたことの問題が明らかになり、会計年度任用職員の処遇改善とともに雇用の安定・継続を求める意見が相次ぎました。正規職員化も視野に抜本的な改善が求められます。また、府立勤労者福祉会館廃止に対する懸念が我が党以外の会派からも出され、府税事務所の統廃合も含め、行政機構や公共施設の統廃合が行政サービスの後退につながることも明らかになりました。また物価高騰が続き暮らしの厳しさが増すなか使用料・手数料の引き上げが表明されたことは問題です。
第六に、アメリカと大企業中心のゆきづまる国の政治に、トップダウンの手法で追随し、国の出先機関のような府政運営をすすめ、くらしや地域の疲弊に向き合う府独自の役割を発揮していないからです。
アメリカの軍事戦略に自衛隊を組み込む安保法制、安保3文書のもとで8兆円を超える大軍拡、核共有、総選挙中に強行された大規模な日米共同統合演習「キーンソード25」など京都でもミサイル弾薬庫増設や司令部の地下化等自衛隊基地の強化、土地利用規制法等住民監視の動きが具体的にすすんでおり、府民の生命、安心・安全を守る府としての役割が鋭く問われています。
書面審査では、老朽原発再稼働を強引にすすめる国や関西電力に対し、能登地震災害をうけて避難対策の不備や問題を指摘する意見も出されました。あらためて再稼働中止を求めるべきです。また、バス路線などの減便・縮小、医療機関の病床削減や入院中止、介護施設の倒産・廃業、買い物難民など地域を支える基盤が崩壊していることも明らかになりました。
くらしと地域の現場の実態や声をもとに、府が独自に役割を発揮し、国の政治を動かすことが今ほど求められる時はないのではないでしょうか。以上が反対の理由です。
第12号議案「京都府水道事業会計決算を認定に付する件」について
次に、第12号議案「京都府水道事業会計決算を認定に付する件」については、受水市町との統廃合や民営化に道をつける水道事業の広域化をさらにすすめようとしており反対です。また第15号議案「令和5年度京都府流域下水道事業会計決算を認定に付する件」については賛成するものですが、令和6年度では水道事業と一体で広域化・民営化の検討がすすめられており問題です。
以上で討論を終わります。ご清聴ありがとうございました。