宮津火力発電所の建設に同意しないように求める申し入れ
宮津火力発電所の建設に同意しないよう求める申し入れ
一九八四年四月二十七日
日本共産党京都府委員会委員長 田中 弘
日本共産党・革新共同京都府会議員団団長 西山秀尚
京都府知事 林田悠紀夫殿
(一)関西電力は、さる三月三十日、宮津市小田宿野に建設を計画している宮津火力発電所(出力七十五万㌔㍗、通称・宮津エネルギー研究所)の「環境影響調査書」(アセスメント)を提出し、京都府と宮津市にたいし、火電建設についての同意を申し入れた。
関電によるこの計画は「エネルギー研究所」とは名ばかりで、実体は、七十五万㌔㍗の大型火力発電所の建設にある。しかも、この火力発電所からは、関電の説明によっても、年間一、五〇〇㌧の硫黄酸化物(SOX)、六〇〇㌧の窒素酸化物(NOX)、一六〇㌧のばいじんが排出され、地元宮津市はもちろん隣接市町にいたるきわめて広範囲にわたり大気汚染の公害をもたらすものである。また、発電所から出される温排水の量は毎秒三三・二㌧と由良川の水量にほぼ匹敵し、大型タンカーの運行や海水の大量取水による卵・稚魚、プランクトンの死滅などもあいまって沿岸漁業に重大な影響をおよぼすものである。 しかも、この宮津火力発電所計画は、あとにつづく久美浜原発や舞鶴石炭火力、宮津・舞鶴への原発計画など、京都府北部を一大エネルギー基地にする計画の突破口として位置づけられているものである。
わが党は、美しく豊かな自然とふるさとを守るため、宮津火力発電所の建設計画に断固として反対する立場を改めて表明するものである。
(ニ)関電による環境影響調査(アセスメント)の提出後、地元宮津市で関電による住民説明会が開かれ、宮津市議会のエネ研対策特別委員会を中心に論議が行われてきたが、この中で、住民の声や不安を無視してゴリ押しで火電建設をすすめようとする関電の非民主的な態度が浮きぼりになり、関電によるアセスメントの問題点も明らかになってきた。
たとえば、関電は、宮津市での住民説明会(四月八日)で、参加者から公害問題を中心に調査への疑問が次々と出されたにもかかわらず、質疑を一時間でうち切り、「多くの疑問を積み残したまま閉会」(「朝日」四月九日付)した。その後も、大気汚染公害が心配される隣接市町での住民説明会の開催要求を突っぱね、住民による立入り調査も拒否するとの姿勢を示している。また、〝公害の責任は関電にあり〟との判決を下した最近の多奈川火電公害訴訟について、関電は「判決に不服である」と居直りの態度を示し、裁判の中で最大の争点となった〝ピーク型汚染〟(特別の地形などにより瞬間的に発生する高濃度の汚染)の存在についても「判決は認められない」と、不当な態度を示している。さらに温排水などによる漁業への影響について、関電のアセスメントは「影響がない」とは断定しておらず、隣接する府営・国営の栽培漁業センターや府立海洋センターの機能への影響については、アセスメントすら行っていない。
もともと、関電による環境調査は、調査期間がわずか一年と短いうえに、今、最も重要視されている酸性雨の調査や植林の活力度、住民の健康調査などが欠落している欠陥だらけの調査であるが、今回出された環境影響調査(アセスメント)は、この調査をもとにしたものであり、きわめて不充分なものである。
(三)林田知事は、この宮津火力発電所建設計画にたいし、「調査と建設は別である」との態度を再三にわたり表明して、調査を受け入れてきた。そして、今回、関電から建設への同意の申し入れがあったさいに「環境保全と漁業振興の立場から専門家の意見も聞いて慎重に検討したい」、「府も独自に環境影響調査などにとりくんでおり、地元の意見も聞いた上で判断したい」との立場を表明されている。
ところが、林田知事は、以後、今日にいたるまで、府独自の環境影響調査の結果を府民の前に公表しておらず、関電によるアセスメントの検討についても、検討をゆだねる専門家の氏名すら明らかにされていない。これでは、府民が納得できる科学的かつ慎重な検討とはいえないことは明らかである。
(四)わが党は、以上の理由により、建設の可否決定に特別大きな権限をもっている林田知事が、府民のくらしと健康を守り、美しく豊かな自然と漁業を守るため、関電による宮津火力発笛所の建設に同意しないよう、つよく申し入れるものである。
また、府が独自に行った環境影響調査の結果や関電によるアセスメントにたいする京都府としての検討内容について、ただちに府民の前に明らかにされるよう要求するものである。
宮津火力発電所の建設に同意しないように求める申し入れ[PDFファイル 1ページ/176KB]