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申し入れ

「雇用・不況対策条例」制定についての申し入れ書

1987/03/16 更新
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「雇用・不況対策条例」制定についての申し入れ書

 わが議員団は二月定例府議会において、越中議員が自民党政府の進める「産業構造調整」政策と円高政策の結果、労働者の雇用問題と中小企業経営がかつてない厳しい状況に落ち込んでいることを指摘しました。その為に本府が思い切った施策を講じる必要があるとして、政府が進めている「経済構造調整」政策の中止を国に求めること、大企業の横暴を規制し、知事に調査・勧告権を与えるよう国に働きかけること、北部における不況指定地域への公共投資をおもいきって進めること、府下中小企業の体質強化への援助を強化することを内容とする、「雇用・不況対策条例」を制定し、労働者の諸権利と雇用を守り、中小企業の振興で地域の活性化をはかることを求めてきたところであります。
 府下における状況の進行は、わが議員団の提案の具体化の緊急性、必要性をあらためてもとめています。
 円高対策として大手企業は一ドル百五十円、あるいはもっと極端な円高を先取りした新しい「合理化」計画をつくり、生産効率の引き上げやコスト・ダウンの目標を割り出し、一層の人員削減の押しつけ、下請け中小企業への大幅単価の切り下げの押しつけなどを強化してきています。
 その一方では、最近の調査によっても、府内企業の七十七社がアメリカをはじめ東南アジアに拠点をもうけて海外進出し、一万七千人からの現地労動者を雇用しています。こうした状況のもとで、府内の機械金属関係を中心とした中小企業の経営悪化、西陣、丹後をはじめとする繊維産業の長期にわたる低迷の進行と、増え続ける失業者は六十年国勢調査時点でも、すでに四万六千四百人となっており、府民生活と経済はさらに活力を失いつつあります。
 そこでわが議員団は大企業の社会的責任を明確にし、労働者の不当な首切りや、出向、配置転換や、中小企業への単価切り下げや取り引きの縮小、または停止などを規制すること、同時に本府自ら地元中小企業へおもいきって官公需発注を行うなど本府経済の活性化をはかるべきであると考えます。
 以上によってここに、「雇用・不況対策条例」大綱を提案し、その実現を図られるよう、知事に強く求めるものであります。

一九八七年三月十六曰

京都府知事 荒巻禎一殿

日本共産党・革新共同京都府議会議員団

「雇用・不況対策条例」案大綱

一、総則
(一)目的
政府及び大企業が進めてきた異常な円高と「経済構造調整」政策のもと、不況の深刻化と産業の空洞化が進行し、府内の繊維産業、機械金属はじめ、西陣、丹後、友禅など地場産業、伝統産業は大きく影響を受けている。こうした状況のもとで、大企業の一方的な合理化、縮小、事業所移転、下請企業への単価切り下げなどが、失業者の増大、中小企業の倒産、廃業を招いている。従ってこの危機打開のために、大企業の社会的責任を明らかにし、必要な規制と雇用機会の拡大を図り、不況地域、産地、業種の振興をはかることを目的とする。このため
①大企業による重要な経営内容の変更および、一方的な人員整理、下請圧迫等を規制し、必要な動告等を行うとともに雇用の確保、仕事の創出、下請取引の改善をはかる。
②特定不況地域、及び協議会が指定する不況地域、産地、業種に対して、府、市、町、村は「振興計画」を作り、必要な援助をおこなう。
(二)雇用・不況対策協議会
・知事は雇用・不況対策協議会を設置し、必要な調査を行い協議の上決定する。
・協議会は府、市、町、村、労働者、経営者の代表及び学識経験者によって構成する。
・京都府下で事業を行う大企業(中小企業基本法にいう大企業)は労働者の解雇については知事にその旨報告すること。

二、大企業の行動に関する規制
(一)企業が行う事業の縮小、移転、工場閉鎖等、重要な経営内容の変更及び労働者解雇の規制にかかかる事項
・事業主の届け出義務、重要な経営内容の変更、及び労働者解雇については三ヵ月前までに①計画の内容、②実施の予定日、⑧理由について届け出なければならない。
・協議会による調査・勧告とその間の解雇の停止。
 協議会は当該企業にたいして必要な調査、勧告を行う。届け出や事前協議にもとづく調査、協議の期間中は解雇等を停止する。当該企業の経営上、さけることができないものであり、かつ他の手段によっては事業の継続が不可能と認められる場合を除き、重要な経営内容の変更、及び解雇について、知事はその事業主に、その全部または一部をやめさせること、又はその計画にかわる雇用確保など必要な措置をとることを勧告する。
(ニ)下請中小企業対策に関する事項
・親企業の不当な単価切り下げや、不払い、発注打切りなどが発生した時、下請企業はその旨、知事に報告することができる。報告を受けた知事は、当該する企業に対して必要な改善勧告を行う。知事はそのため、下請取引条件調査員をもうけ、大企業の下請企業などへの不当な行為に対して調査を行う。
(三)勧告の誠実実施の義務
勧告を受けた企業はこれを誠実に実行すること。事業主が勧告した内容を守らない場合は、勧告内容と企業名を公表し、自治体による助成措置があるときはこれを停止する。

三、不況指定地域、産地、業種の振興対策
(一)地域・産地・業種の指定
知事は協議会の意見を聞いて不況地域、産地、業種の指定を行う。
(二)不況地域、産地、業種の振興にかかわる事項(企業立地を合む)
・市町村、又は協議会はただちに振興計画を策定する。
・府は指定した地域に対しての財政上の公平を考慮しつつ一定額の公共投資を行い、雇用の創出、及び地域振興をはかる。
・府、市、町村の官公需発注の増大をはかる。各種の融資制度の改善と活用、技術指導の援助などによる近代化、新分野の開拓及び事業転換への助成。
・下請中小企業への指導と助成。
・情報の提供。
・京都中小企業振興公社の事業の拡大強化。
・不況指定地域内への企業立地と指定産地・業種の新分野・業種への進出、転換をする企業に対して府は次の事を行う。
①地元労働者を優先的に雇用する。
②労働者が求めるなら必要な技術教育を行う。
③公害防止協定を関係住民、及び当該市町村と締結する。
④以上の協定を結んだ企業にたいして、府は一定範囲内での減免措置及び融資を行い助成する。
四、財源にかかわる事項
財源としてはその事業を行うため、特別の財政基金制度を新設する。その財源としては一定規模以上の大企業の納付金及び府の財政を基に積み立てる。
以上


 この「雇用・不況対策条例」案、大綱は、共産党・革新共同府会議員団が三月十六日、知事に「雇用・不況対策条例」制定についての申し入れをおこなった際に発表したものです。

「雇用・不況対策条例」制定についての申し入れ書[PDFファイル 1ページ/330KB]