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府営住宅の大量建設、家賃補助創設と融資制度抜本改善で、府民に良質の住宅を提供する

1993/02/01 更新
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資料
見解、申し入れ等

府営住宅の大量建設、家賃補助創設と融資制度抜本改善で、府民に良質の住宅を提供する
-日本共産党府議団の住宅政策-

1993年2月
日本共産党京都府議会議員団


はじめに

 荒巻府政の最終の本格予算案を審議する2月定例府議会に提案されている1993年度京都府一般会計予算案の中には、府営住宅建設戸数を263戸へと増やす予算も含まれている。
 これは、切実な府民の要求を一定反映するとともに、一昨年の予算特別委員会総括質疑で、日本共産党府議団の追及に、知事も「便利で安くてという所を探しているが、無い。住宅当局にも『ここ数年間たるんでいるのではないか』とまで言った。『借り上げなど
 いろいろ手を尽くせ』と言っている」と答弁せざるを得なかったほど、立ち遅れてきた京都府の住宅対策についての手直しである。
 しかし、府民の切実な要求にはもちろん、蜷川民主府政時代の年平均800戸には程遠いものである。また、1991年度を初年度とする、京都府の「京都府第六期住宅建設五箇年計画」(以下「五箇年計画」と略)の年平均320戸にも達せず、「五箇年計画」がすでに絵に描いた餅になりつつあることを示している。
 いまバブル経済の破綻で全風的にも住宅政策の矛盾がかつてなく噴きだしており、住宅政策の根本的な転換が求められている。この際、京都府の住宅施策の不十分さを解明し、日本共産党府議会議員団の住宅政策を提起する。


一、深刻な京都の住宅事惰と府民の要求

 自民党政府の「東京一極集中」「民活路線」導入政策の推進で地価は高騰し、マイホームの夢は消え去った。バブル崩壊後の現在も地価は高値で手の届かないままとなっている。府民は、家賃の高騰、住宅ローンの支払に苦しんでいる。また、高い住宅費が都心からの人口流出の要因となり、遠距離通勤・朝夕の通勤ラッシュを激化させている。
 京都では1987年、3.5万戸であった新築戸数が、地価の高騰の中で、90年には2.8万戸に減少した。京都府も「五箇年計画」のなかで「地価及び建設費の高騰、用地取得の困難性」をあげ、「住宅環境は依然として厳しい状況にある」ことを認めている。
 また、住宅の平均床面積は、持家で110㎡となっているが、借家では43㎡と持家の半分にも満たない広さとなっている。8200戸の公営住宅が最低居住水準以下であるなど、最低居住水準(4人世帯では50㎡)を割りている世帯は9.3%、7.8万世帯に及び、早急な改善が必要である。このような中で、住宅に対する不満率は、1983年の48.2%から、88年には53.2%と高まっている。
 京都府の住宅建設は、民主府政時代の14年間(1964~77)と自民党府政の14年間(1978~91)を比較すると、府営住宅は1万1911戸から4分の1の2835戸に、住宅供給公社の分譲住宅は2834戸から1627戸と半分に激減した。
 現在の府営住宅戸数は1万4294戸、京都市など市町村営住宅は2万5966戸、住宅公社の分譲・賃貸住宅も5000戸でしかない。これらを全部合わせた公営往宅比率は4.8%(1991年)ときわめて低く、府営住宅申込は第二種府営住宅、特別賃貸住宅では4倍を超え、絶対的に不足している。
 このおおもとは、自民党府政が府民の住宅権を保障する責任を放棄し、「市場原理」にまかせた政府の「持ち家政策」に追随してきたところにある。


二、京都府の二つの住宅計画の問題点

 京都府は、2000年度を目標年次とする十ヵ年計画「京都府の大都市地域における住宅及び住宅地の供給に関する計画」(以下「供給計画」と略)を1991年8月に、また、「京都府第六期住宅建設五箇年計画」を10月に一体のものとして策定した。

(一)「十ヵ年27万戸」は民間住宅中心、政府の住宅政策に忠実な「供給計画」

 「供給計画」は、「大都市地域における住宅地等の供給の促進に関する特別措置法」に基づいて策定された。この法律の前提となっている国土利用計画法、土地基本法などの土地利用関係法は、「土地の高度利用」と称して高さ規制を緩和し、地価高騰・バブル経済の元凶の一つとなってきた。
 「供給計画」は、「府民の不安を解消するのが狙い」とうたっているが、政府の土地利用関係法に忠実に従っている限り、真に府民が望む住宅・宅地供給計画とはなりえず、自民党政府の「市場原理」に基づく住宅・宅地供給政策の忠実な実践舞台となることは明らかである。
 「供給計画」は、①市街化区域内の工場など低・未利用地、②市街化区域内の農地の計画的利用地、③計画的な新市街地の開発、④既存住宅地内の建替による住宅供給の促進の四つの柱を立て、京都市内、口丹地域、南山城地域の3地域に31箇所の重点供給地域を設定している。
 具体的には、都市再開発関連事業、土地区画整理事業、一般宅地開発事業などにより住宅・宅地供給の促進をはかろうとするものであるが、民間開発にまかせるのでは決して府民の住宅要求に応えるものにはならない。公共住宅建設を最重点に位置付け、自治体の行政責任を果たしていくことが必要である。
 しかし、乱開発との批判が強い関西文化学術研究都市については、木津地区(木津町)、南田辺・狛田地区(田辺町・精華町)などでの宅地開発計画を縮少すべきである。
 都市近郊の農地は、緑・環境の保全と野菜の供給基地であり、災害時の避難場所としても重大な役割を担っている。新生産緑地法でさえ第二条の二では、「農地等の適正な保全を図ることにより、より良好な都市環境の形成に資するよう努めねばならない」としている。無秩序な宅地化とならないよう慎重な対処が求められる。また、今後とも「保全する農地」への申込を受け付ける措置を継続すべきである。
 工場などの低利用地の活用については、産業の空洞化、中小企業や伝統産業の衰退、労働市場の混乱や町並み破壊をもたらすことのないようにしなければならない。


(二)公営住宅計画戸数はわずか4%、貧弱な内容の「五箇年計画」

 自民党府政は15年間、公営住宅の建設を削りに削っておきながら、なお「最重点課題の一つ」とうたっているが、今回の「五箇年計画」も自治体の公的責任を放棄した貧弱なものである。
 「五箇年計画」は、15万戸の住宅建設を目標としているが、そのうち公営住宅計画戸数は、4%の6000戸(府営1600戸、京都市営2400戸、市町村1000戸、改良住宅1000戸)に過ぎない。残りのほとんど、約14万戸は民間に依存している。
 住宅は生存の基盤であり国民の共通の財産でもある。社会保障政策の基本の一つは良質な公営住宅の供給にある。快適な住宅の確保は憲法に定められた〝基本的人権〟であり、世界人権宣言や国際人権規約が明記しているところである。社会保障と福祉の基本は住宅の保障にあるとの見地に立った施策の展開をはからねばならない。
 政府計画への追従から脱皮し、自治体の主体性・権能を生かして〝人権としての住宅政策〟の立場で「供給計画」「五箇年計画」を抜本的に見直すことが必要である。


三、府民の願いに応える住宅政策の展開を

 政府が一貫してとってきた住宅政策は「住宅は個人的である」として「自助論」に立ち、「市場原理」にまかせる「持家制」である。この「市場原理」に任されたため国民は良質の住宅に住むことができず、海外から「ウサギ小屋」と非難をうけている。
 ヨーロッパでは、「市場原理」に任せたのでは、低所得層や老人などは人間らしい住宅に住めなくなるので、イギリスは大量の公共住宅のストックと家賃補助、旧西ドイツは社会住宅、フランスはHLM住宅(適正家賃住宅)、北欧諸国では協同組合住宅などの形で社会政策の一環として住宅政策が実施してきた。アメリカでも低所得者への家賃補助を行っている。ヨーロッパでは、公共賃貸住宅が3~4割あるのが普通だが、日本では1割にも満たない。
 また、都市計画の中で住宅地が確保されるよう、パリ市では60%の面積が公共用地であり、旧西ドイツでは100万人以上の都市は市域の46%を市が所有している。住居を囲む環境もいたるところに緑豊な公園があり通勤時間も30分前後で、家族だんらんの夕食ができる。
 日本国憲法第二十五条は「すべての国民は健康で文化的な最低限の生活を営む権利を有する」と規定している。行政には、貧困な日本の住宅事情を改善し、民間を誘導して社会的財産としての良質な住宅を整備していくために、公営住宅および公共住宅の「量」と『質』の抜本的改善が必要であり、あわせて持ち家、民間賃貸住宅に対する手厚い支援を行うことが求められている。
 以下、①良質の公共・公営住宅の大量建設、②社会的弱者の住宅保障、③既存住宅・住宅地の再生と職住接近のまちづくりをすすめることを重点とする日本共産党府議会議員団の住宅政策を、具体的に提起する。


(一)住宅条例の制定

 すでに全国のすすんだ自治体では、その権能をいかして創意的な施策に取り組もうとしている。京都府も国のいいなりでなく府民本位の積極的な施策を推進するべきである。
 この基本的立場に立ち、基本的人権としての住宅権についての基本理念、住宅権を保障する行政の責務、整備すべき住宅・住宅地の水準、住宅整備目標、財源の保障などを柱とする「京都府住宅条例」を策定する。


(二)地価と住宅価格の抑制・職住接近のまちづくり

 いま地価は下落しているが、公定歩合の引き下げや不動産取引融資の総量規制緩和、日米構造協議による「内需拡大」が図られ、再び地価上昇の危険をはらんでいる。また、公共用地の確保のためには、住宅用地と」て自衛隊基地、旧国鉄用地、国有地や企業の保有している未利用地・公休地などの提供を求める府の対応が必要である。

①公有地拡大法の改正で自治体の先買い権を強化する。また、府の用地取得を行う分野の機構強化と予算を大幅に増額する。

②府の「供給計画」による「三地域32重点供給地域」を中心に地価の監視を強め、高騰のきざしが見えた場合は、大企業や政府に遠慮することなく国土法上の〝伝家の宝刀〟である「規制区域指定」や知事の権限による「取引許可制」を適用する。

③適正な価格で国公有地、旧国鉄用地などの自治体への提供を求める。また、自衛隊基地(大久保、黄檗、桂、長池など240ha)の撤去を国に要求」、住宅用地などへの転換をはかる。

④商業地の地価高騰が直接住宅の地価に波及することがないよう、住宅地の土地利用を都市計画で厳しく規制する。

⑤自・社・公・民の賛成によって成立した住民追い出」の「改悪借地借家法」については、借家人の権利と生活を守るため、少なくとも改悪前に戻すことを国に要求する。


(三)府営住宅の大量建設

 公共賃貸住宅の大量建設は住宅行政の要であり、地価動向にも重大な影響を与える。
 新たに創設された国の「特定優良賃貸住宅」や府がすすめている「タイアップ住宅」などは中所得者への一定の支援にはなっても、低所得者は対象外であり、「府営住宅の大量建設」に替わるものではない。
 「五箇年計画」の府営住宅1600戸(1年平均320戸)を少なくとも3倍の5000戸(年1000戸)に引き上げ、京都市や他の市町村の計画を大幅に引き上げる誘導的役割を果たす。

①毎年、府営住宅を1000戸程度建設する。その半数は第二種住宅と」、高齢者、障害者、ひとり親世帯には優先入居できる枠を拡大し、単身者での入居も認める。

②府営住宅の入居収入基準の最低を引き下げ、最高限度を引き上げて、幅の広い人々が居住できるように国に要求する。

③家賃は所得の1割以下に抑える措置をとり、減免制度の拡充と制度の周知徹底をはかる。

④最低居住水準を確保し、さらに都市型誘導水準を上回ることを目指して、該当する住民との合意に基づき、老朽府営住宅の住戸改善を計画的に行う。

⑤府営住宅の規模に見合った駐車場整備を促進するとともに、緑や憩いの空間を広げる。

⑥小規模な用地も確保し、地域の状況にあわせた多様な形態の公共住宅を建設する。

⑦公営住宅の建築費、用地費に対する助成を拡大するよう国に要求する。

⑧府営住宅の申込は、管轄する全ての土木事務所で行えるよう改善する。


(四)社会的弱者の住宅保障

 住居費の負担が所得と家族数からみて過大になっている世帯にたいして、適正な負担額を超える額を補助する家賃補助を本格的に導入することが求められている。
 東京世田谷区の「住宅条例」、中野区の高齢者や障害者に対する「福祉住宅条例」、台東区の「新婚者家賃補助制度」、大阪府の「マンション借り上げ」「新婚者家賃補助制度」などや、東久留米市の農民が低利の融資をうけて建てた老人向き住宅を市が借り受け賃誉している例を参考にすることができる

①高齢者、母子家庭、障害者、低所得者、新婚者に対する家賃補助制度を創設するとともに、民間の住宅やマンションを借り上げ、適正な家賃で提供する。

②高齢者および障害者にたいして、床のフラッ卜化、手摺りの設置、風呂・便所などの改造費用を補助する。

③障害者、高齢者のためのケア付き住宅を建設する。

④既設の中居住宅へのエレベーター設置を行う。


(五) 新築・増改築融資制度の抜本改善、木造住宅建てかえの促進

 「供給計画」で示されている27万戸計画のうち16万戸が建てかえ供給戸数である。生活基盤の整備されている都市部での建てかえや増改築は、自治体に道路や上下水道などの新たな公共投資の負担をかけることなく、職住接近のまちづくりに貢献する。住宅建設は、とくに経済的波及効果が大きく、不況克服のバネとなりうる。しかし、住宅の新築・増改築が促進されるためには、目に見えてローン返済の負担が軽減されるような融資制度の抜本的改善が必要である。
 京都は、戦災での焼失が少なく戦前からのものも含め、木造住宅が72%も存在する。京都市内の木造住宅については、建築基準法上の建ぺい率、日照権、消防法などの法的規制もあり、建てかえを促進するための施策が必要である。

①良質な住宅の建設を促進するために、住宅金融公庫の金利引き下げ、返済期間延長を求めるとともに、府の新築・改築融資制度の限度額を引上げ、金利を抜本的に引き下げる。

②京都らしさを保つために、木造での改築ができるよう建築基準法、消防法等の改正を国に要求する。

③小規模家主の持つ借家の建てかえに対しては、税制、融資、規制の緩和など総合的に支援措置を講ずる。

④傾斜家賃としているタイアップ住宅への家賃補助は、住宅公社が管理」ている間は初年度補助額を継続して補助する。


(六)民間分譲マンション対策

 都市型住宅として増えてきた分譲マンションは、京都で。も16.7万戸、住宅総数の19.9%に達している。分譲マンションは新しい居住形態であるが、開発業者は売ったあとの管理には責任を持だないため、入居者に負担を押しつける手法を安易にとってきた。たとえば、従来の住宅では当然のこととなっている各戸への送電設備、水道施設や消防用通路・防犯灯・ゴミ置場などの公共性の強い部分の維持管理費が入居者の負担とされている。
 自治体は固定資産税などを通じて実態把握ができるにもかかわらず、分譲マンションの戸数さえ集計していない。管理組合の大規模修繕への適切な援助、業者への建設や瑕疵問題での指導、不平等な負担の解消など、京都府には、分譲マンションに対する対策を新たな行政分野として確立し、担当部門を設置して積極的な施策を展開することが求められている。

①マンション管理のルールや大規模修繕の解説パンフレッ卜を発行し、マンション管理セミナーなど居住者への情報提供を行う。

②特殊建築物定期調査報告がされるように府の体制を整備する。

③マンション実態調査を府として早急に実施するとともに、マンション総合窓口を設置する。

④府住宅改良融資制度を、マンション共用部分修繕にも適用できるようにする。

⑤共用部分の固定資産税減免について、制度の周知徹底と市町村指導を行う。

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