全府民の世論と運動で大型店の進出は規制できる(見解)
全府民の世論と運動で大型店の進出は規制できる(見解)
1993年2月26日
日本共産党京都府議会議員団
今京都では、JR京都駅ビルヘの伊勢丹の進出計画をけじめ、百貨店、スーパーの進出、増床計画が相ついでおり、このままいけば商店街・小売市場に壊滅的な打撃を与えることになる。また交通問題、環境破壊など府・市民の生活にも重大な影響をもたらすことになる。それだけにいま、府・市民、中小業者が団結してたたかう条件は十分あり、京都のまちづくりのために全力をつくすなら、大型店の進出は規制することができる。
大型店進出で、商店街・小売市場・小売業や街の破談が進む京都の現状
いま不況の上に、大型店の進出で京都の商店街・小売市場・小売店の悲鳴が渦巻いている。
JR京都駅ビルヘの伊勢丹の進出を引き金に、大丸、高島屋、京都近鉄などの百貨店の増床や六地蔵へのイトーヨーカ堂、近鉄百貨店、槇島に三津富トイザラス、亀岡市にニチイと平和堂、八幡市にイズミヤ、久御山町にジャスコなどと京都市内だけでなく、府下各地にスーパー、チェーンストアーをはじめ、コンビニエンスストア、洋服、書籍、酒類などのディスカウントショップなどの大型店の進出計画も相ついでいる。
91年7月の商業統計調査によれば、小売業の商店数は3万6757店で前回調査(88年6月)に比べ、3年間で1092店(2.9%)の減少となっている。一方、大規模小売店舗は、91年7月270店舗で、前回調査に比べ、12二店舗(4.7%)の増加となっている。また、京都市委託による小売市場連合会の調査でも、最近4年間で大型店の進出と地価高騰を主要な原囚として、小売市場4つに1つが閉店、廃止に追い込まれ、小売店、専門店の14%が廃業、倒産している現状である。
このように大型店の進出で、中小小売店、商店街、小売市場ではお客が大幅に減り、あちこちで店じまいに追い込まれている。また空き店舗が平均で一割を超え、歯抜け状態が広がっている。それが街の活気を奪い、消費者をも不便にし、街こわしへとつながっていく。いま計画されている第一種、第二種あわせて30店以上、増床面積約40万平方メートルを上回る出店、増床計画はこれを更に促進激化させるものである。
京都商店街振興組合連合会がおこなった「大規模小売店舗出店に伴う商店街への影響度調査」でも、このことが明確に予測されている。例えば、大型店の進出計画の面積が3割カットされても、6年後には、生鮮食品などの買物客が、北区新大宮商店街で38.6%減、下京区七条千本商店街で34.7%減、伏見区大手筋商店街で42.3%減となり、衣料・電気製品などでは、北区新大宮商店街で44.6%、七条千本商店街で、ほぼ100%、大手筋商店街では42.5%と更に大きく減少するという予測結果になっている。
今日の危機をもたらしたアメリカ言いなり、大資本中心の自民党政治これに追随してきた自民党府・市政
昨年11月の大規模小売店舗審議会(大店審)による京都の4百貨店の出店・増床計画に対する最終答申は、中小小売店、商店街の危機に追いうちをかけるものとなった。今までスーパーの出現、進出の中で、「流通革命」が叫ばれたりしたが、その度に団結の力と業者の努力で切りぬけてきた。
(一)危機は中曽根自民党政府の「民活路線」で加速
アメリカーレーガン大統領(当時)による「小さな政府」「強いアメリカ」、多国籍企業の猛烈な利潤追求を擁護する「自由放任主義」は、財政・貿易赤字の拡大、深刻な不況、中産階級の没落、貧富の差の拡大など、社会的矛盾の一層の激化をもたらしたが、アメリカに追随する中曽根内閣の臨調「行政改革」、「民間活力導入・規制緩和」の路線も、日本で同じ矛盾と危機を生み出した。
82年11月に成立した中曽根内閣は、臨調「行革」の名で、福祉、教育から農林水産業、中小企業、地方自治体への全面的な「国家改造」とも云うべき攻撃を加えてきた。こうした中で、少なくとも82年まで、戦後一貫して増加してきた中小小売店が85年の商業統計では、全国的にも、京都でも、初めて減少に転じた。同じ年85年6月、プラザ合意による円高政策がとられ、円高不況が日本経済と中小企業を襲った。87年にはその対策として公
定歩合が史上最低の2.5%に下げられた。この超低金利政策がバブルをあおり、投機資金が株式、土地に殺到し、これを暴騰させた。大型店の進出に加え、地上げ、人手不足、後継者難から、営業不振に拍車がかかり、これが悪循環となって、中小小売店は目立って減少、商店街、小売市場に空地、空き店舗が増加しだしたのである。
(二)日米構造協議による大型店の規制緩和
社会的、経済的危機からの脱出と、多国籍企業の要求に基づくアメリカ政府の圧力によって、90年5月、自民党政府はそれまで無制限だった大型店の出店調整期間を1年半とする大店法の規制緩和通達を出し、6月の日米構造協議でこれを一層推進することを約束した。91年5五月には17年間にわたり中小小売業者やまちを守ってきた大店法が、①事前説明、地元合意、商調協による調整などの廃止、②出店調整は通産省直属の大店審に一本化し、期間は1年以内とする内容に改悪された。その結果1年余りの間の出店表明、届出、調整を終了した第一種大型店の合計は店舗、面積ともに過去10年間の実績を上回る出店ラッシュとなった。この改悪大店法は92年1月末に施行された。
奈良橿原に出店したトイザラスのオープニングに出席のため来日したブッシュ大統領(当時)がヘリコプターから御所に降りたった第一声が「大店法の改正を高く評価する」であったことがこれらの経過の本質を端的に示している。
(三)自民党府市政の露骨な大企業中心の商工行政
蜷川民主府政時代、京都の商工行政は、全国の商工行政の灯台として、無担保、無保証人融資制度や組合低利融資制度の創設、府中小企業総合指導所による経営・技術の総合的な相談指導や中小企業への官公需発注の拡大など、中小企業を主人公とした数々の施策によって全国をリードした。民主市政でも、七七年中ふ小売業者の要求に応えた大型店の進出を規制調整する指導要綱を実施、81年3月には京都市議会による「スーパーなど大規模小売店舗の出店凍結宣言」が、中小商工業者と住民の団結で実現された。更に民主府政と連携した中小企業本位の行政が積極的に進められた。
しかし78年林田自民党府政に変わり、京都市でも今川市政が変質して以後、京都の商工行政は一変した。89年の京都府「産業活性化ビジョン」は、大型店との共存共栄をうたうことで、大型店容認を鮮明にした。また無担保無保証人融資の限度額は、13年間も300万円に据え置かれるなど、全国の後進県になってしまった(新年度450万円に引き上げの予定)。その上、商店街振興組合連合会の「大型店出店による影響度調査」は、既存商店街のあまりにも大きな被害を明らかにしたため、府はその発表を中止させてしまった。これは府の商工行政が大企業、大型店中心の行政に転換していることを自ら暴露したものであった。府市が推進する伊勢丹百貨店の京都駅ビル出店が引き金となった大丸、高島屋、京都近鉄をまきこんだ百貨店戦争はこの中で始まった。
(四)自治体を取り込む大型店の新たな戦略
大型店は大量の商品を安く売ることを看板にして、消費者を集めていた段階から、ターミナルまたは大駐車場で集客力を高めるだけでなく、文化施設からスポーツ、遊技施設まで併設することで、より多くの客を全面的に吸収する戦略を展開するようになった。最近ではこれを一層大規模化させただけでなく、国や地方自治体の財源や施策もとりこみ利用しだした。府が国府跡につくられた丹後郷土資料館を阪急資本を誘致する文化施設として、丹後リゾート地に移築しようとした同じことが、いま都市部でもすすめられている。主要ターミナルには必ずスーパー、百貨店を核とした大規模商業施設を据えるとともに、地方自治体自身が文化、教育、福祉施設を併設して、大型店のための底上げを行おうとさえしているのである。住民の負担で地元住民や商工業者のためでなく、大型店のためにその集客力を高める施設をつくろうとする訳で、一体誰のための商工行政かと言わねばならない。
小売店の危機に追いうちをかけ、新たな矛盾を生む百貨店の新増設
大型店相互の競争の中での出店は、国や地方自治体を利用し、癒着した形で一層大規模化しようとしている。しかし大企業中心のこうした露骨なやり方は、中小企業だけでなく、地域住民、国民各層との矛盾を一層激化させようとしている。
(一)中小小売業者の駆逐は街こわしに
京振連による大型店の影響調査によれば、伊勢丹などいま進行中の出店、増床計画は、申請面積が3割力ッ卜された場合でも、全市平均で食品など最寄品で30%のお客が、衣料品、電化製品など買い廻り品では38%のお客が新増設の大型店にとられるという深刻な影響をもたらす。
すでに小売業者が廃業に追い込まれた商店街では空き店舗、空地が目立ち、まちの活気は目に見えて落ちている。それは小売店舗が街の顔であるとともに、京都産業の一つの特色である職住一体の地域の産業だからでもある。その小売店が空地となったり、ビルとなっては特色のない街となるどころか、街そのものが壊されていく。これでは住民も消費者もたまったものではない。
(二)大型店は活気どころか、交通混乱、生活環境の破壊、教育環境の悪化をもたらす
大型店の出店で、交通渋滞や事故の多発、生活道路への車の割込み、また、それによる大気汚染や騒音などの公害による生活環境の破壊、更に子どもの教育環境の悪化などで、住民を地域から追い出すことになる。このため、これを規制する動きが全国的にも具体化しつつある。例えば、政令指定都市仙台市のある宮城県は、既に「大型店出店に伴う交通処理要綱」を定め、「現状より交通状況を悪化させない」ことを原則に、三条申請の時点で事前調整を行い、強力な指導を行っている。このことも影響し、出店をとりやめた大型店もでているという。また、高槻市では環境影響評価指導要綱で、大型店の新増設もその対象に加えている。
(三)大型店の規制は世界の常識
いま大型店の出店自由化が時の流れのように宣伝されているが、全く逆である。フランスやイタリアでは出店許可制をとっており、イギリスや西ドイツでは都市計画で出店を規制している。日本に大型店の出店規制の緩和を強要するアメリカですら、州の環境保護法で、すべての大型建築物については、交通への影響、大気汚染など都市環境の影嚮についてのアセスメントが義務付けられている上、地方自治体のゾーニング(地域ごとに開発や用途を規制する地域制)規制が適用されている。日本ほど大資本にとっての天国はない
のである。
(四)商店街、小売市場こそまちづくりの先頭に
大企業の目に余る横暴の中で、「大店法の改悪に反対する気力さえ失った」との声もある。しかし大型店の出店、増床に伴う新たな矛盾の中で、住民の反発も高まっている。大型店は「便利でやすい」という消費者の期待も薄らぎ、交通環境問題などの苦情が強く出てきている。商店街、小売市場が消費者の立場にたった商業活動を再構築するとともに、各商店街、小売市場こそが積極的にそれぞれの特色ある魅力づくりの中で、核となる施設を地域の人々と共同して、府・市に要求し、新しい街づくりをすすめるべきである。文化、教育、スポーツ施設は、その街の顔であり、地元に密着した商店街、小売市場に併設されてこそ、似つかわしいし、地域の真の活性化にもつながる。小売業者や商店街、小売市場が地域住民の交通問題、生活、教育環境をよくしたいと言う要求と一体となって、大型店規制の運動をすすめるなら展望は必ず開かれる。
今、不況の下で百貨店の売り上げが大幅にダウンし、構造的不振と相まって、大丸が山科駅前、高島屋が京阪浜大津駅前への出店計画を断念するという状況も生まれている。同じ様に、全国各地で進出計画の変更が相ついでいる。商店街、小売業者、住民が団結の力を発揮するなら、大型店進出を阻止する絶好の機会でもある。
街壊し、環境破壊から『ふるさとの街』守る全府民的な運動で、大型店規制を
事態の進展はいまや、商店街・市場を中心とする中小小売商業者の死活の問題に留まらず、伝統、地場産業をはじめ、業態の如何にかかわらず、『まち』を構成してきた全ての住民にとって、『わがまち』『ふるさと』を大手企業にあけ渡すのかどうかに係る重大な問題である。
いまこそ、街こわし、環境破壊からふるさとの街を守る全府民的運動を展開し、大型店の進出を許さない闘いが求められている。
一、国に対し、中小企業に重点をおいた不況対策を要求するとともに、大型店を規制し、出店調整を実効あるものにするよう要求する
①大店法を抜本的に見直し、市場環境は勿論、交通環境、教育環境、都市計画などを考慮に入れた総合的規制強化をはかること。
②商業集積法の適用を地元商店街、小売市場を対象にしたものに改正すること。
③勤労者への2兆円所得減税を実施するとともに、消費税は廃止すること。さし当たり、飲食料品への消費税の廃止を即刻実施すること。
④商店街、小売市場などの近代化のための高度化資金貸付制度を大幅に拡充し、無利子枠、貸付限度額ともに拡大すること。無担保無保証人融資の裏付けとなる中小企業信用保険法の特別小口保険の限度額を1000万円に引き上げること。
⑤中小企業に対し、休業補償制度を創設すること。
二、京都府(市(市町村)に対して、いまこそ自民党の悪政から地域住民の営業と暮らしを守る〝防波堤〟の役割を発揮し、緊急対策を講じるよう要求する。
①大型店の出店及び増床に伴う「交通・環境指導要綱」の制定を求める。その際、大型店の新増床を環境影響評価の対象にし、周辺への消費影響に対応する行政指導方策を明確にさせる。また環境対策、教育問題などの総合的観点から適切な指導と対策を講じること。
②商店街、市場などに対して、共同施設補助を大巾に拡充し、空き店舗などについては、行政による先行取得貸与の制度で応えるよう要求する。商店街、地域住民が要求するカルチャーセンター、コミュニティーセンターなど文化・教育、スポーツ施設の建設を積極的に促進すること。
③中小業者支援の為、無担保無保証人融資の限度額を1000万円に、さし当たり600万円まで引き上げるとともに、不況対策緊急融資については、無担保、無保証、無利子、長期の制度として延長、拡大し、すべての業種を対象とすること。
④組織強化低利融資の金利を少なくとも不況対策緊急融資まで引き下げるとともに、融資枠、限度額を引き上げること。
⑤国民健康保険制度に、中小業者の休業補償制度を確立すること。また固定資産税、都市計画税や国保料の引き下げ、減免などを行うこと。
日本共産党府議会議員団は、大企業奉仕の自民党府(市)政から、府(市)民が主人公め地方政治を確立し、大型店の進出、横暴を抑え、商店街、小売市場を守り、京都の中小小売業の振興と日本の顔京都を守り発展させるため、引き続き全力で奮闘するものである。
大型店出店の計画が実施された場合の予測
計画の3割カットで出店された場合6年後に客足はどうなるか
生鮮食品など
衣料・電化製品など
北区・新大宮商店街
出店前は60,843人
←37,343人(38.6%減)
54,463人
←30,157人(44.6%減)
中京区・三条会商店街
出店前は24,152人
←19,837人(17.9%減)
17,903人
←12,472人(30.3%減)
下京区・七条千本商店街
出店前は27,220人
←17,765人(34.7%減)
4,172人
←0人(100%減)
伏見区・大手筋商店街
出店前は71.854人
←41,457人(42.3%減)
75,757人
←43,550人(42.5%減)
大型店の進出で商店街は大打撃
府会議員団が独自に入手した調査報告書による
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